説明

車両用冷却装置

【課題】外部動力を必要とせず、ホイルハウス内の空気をより効率的に排出することのできる車両用冷却装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両用冷却装置は、走行風3をホイルハウス5内に導風させる導風口6から発熱部2の上端部2Aへと流れる走行風3の速度ベクトルVの略延長線上に、ホイルハウス5内に開口する第1開口部7と、この第1開口部7と連通して通風経路を構成する、車体外周面8に設けた第2開口部9とを配置する。本発明では、ホイルハウス5内に導風された走行風3の速度ベクトルの妨げを極力抑制し、流速の速い流れを活かしてホイルハウス5内に滞留する熱を効率良く車外に排気させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却装置に関し、詳細には、ホイルハウス内の空気を効率的に排出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アクチュエータや空冷ファン等の外部動力を使用せずにリヤホイルハウス内の乱れた空気の流れ(乱流)を排出する車体構造として、リヤホイルハウス内と車体後方とを連通した車体構造が開示されている(例えば、特許文献1等に記載)。
【0003】
特許文献1に記載の車体構造では、リヤタイヤハウス内に開口した第1の開口部と、車体後方に延びるに従って車幅方向内側に絞り込んで形成した絞込面の車体後方に形成した第2の開口部とを通路部で連結し、その通路部を介してリヤタイヤハウス内の乱流を排出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−25369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術では、車体後方の負圧のみによりリヤホイルハウス内の空気を排出するため、実際には、ほとんど空気を排出することができない。
【0006】
そこで、本発明は、外部動力を必要とせず、ホイルハウス内の空気をより効率的に排出することのできる車両用冷却装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用冷却装置は、タイヤホイル内に設けられた発熱部に走行風を導いて吹き付けることで冷却し、該発熱部で発生した熱と熱交換された走行風を車両外へと排出させる冷却手段を備えている。
【0008】
冷却手段は、走行風をホイルハウス内に導風させる導風口から発熱部の上端部へと流れる走行風の速度ベクトルの略延長線上に、ホイルハウス内に開口する第1開口部と、この第1開口部と連通して通風経路を構成する、車体外周面に設けた第2開口部とを配置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用冷却装置によれば、導風口から発熱部の上端部へと流れる走行風の速度ベクトルの略延長線上に通風経路の第1開口部と第2開口部を配置することで、その速度ベクトルの向きに応じた導風口から発熱部を経由し車体後方へと走行風を排出させる流体経路を構築でき、外部動力を必要とすることなくホイルハウス内の空気を効率的に車外へ排出できる。また、本発明によれば、導風口からホイルハウス内に導風された走行風の流れを遮ることなく車体後方へと排出する流体経路が構築されるため、ホイルハウス内の走行風が増速しても、ホイルハウス内に発生する空気抵抗と揚力の増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施形態1の車両用冷却装置を示す概略構成図である。
【図2】図2は図1のA−A線断面図である。
【図3】図3は実施形態2の車両用冷却装置を示す概略構成図である。
【図4】図4は実施形態3の車両用冷却装置を示す概略構成図である。
【図5】図5は図4のB−B線断面図である。
【図6】図6は室内換気動作を加えた実施形態3の動作フローチャートである。
【図7】図7は実施形態4の車両用冷却装置を示す概略構成図である。
【図8】図8は図7のC−C線断面図である。
【図9】図9は室内換気動作及びバッテリー冷却動作を加えた実施形態4の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
「実施形態1」
図1は実施形態1の車両用冷却装置を示す概略構成図、図2は図1のA−A線断面図である。図1及び図2において、矢印FRは車両前方を表し、矢印RRは車両後方を表し、矢印Hは車両高さ方向を表す。
【0013】
車両用冷却装置は、図1に示すように、タイヤホイル1内に設けられた発熱部2に走行風3を導いて吹き付けることで冷却し、その発熱部2で発生した熱と熱交換された走行風3を車両外へと排出させる冷却手段を備えている。
【0014】
発熱部2としては、タイヤホイル1内に設けられるブレーキや駆動源となるモータ(ホイールインモータ)等が挙げられる。図1では、発熱部2を斜線で表している。発熱部2で発生した熱は、ホイルハウスパネル4で囲まれたホイルハウス5内の上部によどんで滞留し、車両外へ排出され難くなる。また、ホイルハウス5内に導風される走行風が増速すると、ホイルハウス5内の空気抵抗と揚力が増大し、車両がリフトされ易くなる。そこで、実施形態1では、ホイルハウス5内によどんで滞留する発熱部2で発生した熱を、ホイルハウス5内に導風された流速の早い走行風3の速度ベクトルの向きに応じて導風口から発熱部を経由し車体後方へと排出させる流体経路を構築して車両外へと排出する。
【0015】
冷却手段は、図1及び図2に示すように、走行風3をホイルハウス5内に導風させる導風口6と、ホイルハウス5内に開口する第1開口部7と、この第1開口部7に連通し、車体外周面8に設けられた第2開口部9と、第1開口部7と第2開口部9を連通する通風経路を構成するダクト10と、からなる。
【0016】
導風口6は、発熱部2より車両前方かつ下方に少なくとも一部を開口して設けられている。ここで定義する導風口6と発熱部2との位置関係は、車両高さ方向でのタイヤホイル1の中心線C上の発熱部2の上端部2Aの位置を基準とする。図1では、ホイルハウス5の車両前方下端部5Aとタイヤ11と間に、導風口6を開口させている。この他、ホイルハウス5の車両前方下端部5Aと対応する前記ホイルハウスパネル4に形成したスリットが導風口6であってもよい。
【0017】
第1開口部7の少なくとも一部は、発熱部2の上端部2Aより後方かつ上方に開口している。この第1開口部7は、ホイルハウスパネル4の一部を穿設した部位に前記ホイルハウス5内に向かって開口している。また、第1開口部7は、ホイルハウスパネル4の形状に応じた円弧形状とされている。第1開口部7の上端部7Aは、発熱部2の上端部2Aよりも斜め上方後方寄りの位置に設けられている。また、第1開口部7の下端部7Bは、発熱部2よりも後方であって該発熱部2の上端部2Aとほぼ同一高さ位置に設けられている。
【0018】
第2開口部9の少なくとも一部は、第1開口部7の後端部7Bより後方かつ第1開口部の上端部7Aより上方に開口している。この第2開口部9は、車両後方の車体外周面8に車外へ向かって開口し、車両高さ方向に沿って矩形状をなす開口として形成されている。かかる第2開口部9が設けられる部位は、車体外周面8に沿って流れる空気流がボディから剥離しない非剥離領域とされる。第2開口部9の上端部9Aは、第1開口部7の上端部7Aの斜め上方後方寄りの位置に設けられている。また、第2開口部9の下端部9Bは、車両高さ方向での上端部9Aと同一線上であって、前記第1開口部8の上端部7Aより若干上方の位置に設けられている。
【0019】
ダクト10は、第1開口部8と第2開口部9を連通する通風経路とされている。かかるダクト10は、第1開口部8の開口面積を第2開口部9の開口面積よりも大とした箱体状として形成されている。そのため、大開口面積とされた第1開口部8からその内部に流入する走行風3は、流速を速めて小開口面積とされた第2開口部9から車両外へ排出される。
【0020】
前記ダクト10の入口となる第1開口部8と出口となる第2開口部9は、前記導風口6から前記発熱部2の上端部2Aへと流れる走行風3の速度ベクトルV(図1の矢印Vで示す方向)の向きである略延長線上に配置されている。
【0021】
このように構成された冷却手段を持つ車両用冷却装置において、床下一般部に設置された図示を省略するディフレクターやエアガイド等のホイルハウス5内の風量を増大させる手段にて前記導風口6からホイルハウス5内に走行風3が導風されると、導風された走行風3はタイヤホイル1内に設けられた発熱部2から発せられる熱を奪って冷却する。そして、発熱部2で発生した熱と熱交換された走行風3は、前記導風口6から発熱部2の上端部2Aへと流れる走行風3の速度ベクトルVの延長線上に沿って流れ、ダクト入口である第1開口部7からその内部へと流れ込み、ダクト出口である第2開口部9から車両外へと排出される。
【0022】
実施形態1では、導風口6から発熱部2の上端部2Aへと流れる走行風3の速度ベクトルVの向きの略延長線上に通風経路の第1開口部7と第2開口部9を配置することで、その速度ベクトルVの向きに応じた導風口6から発熱部2を経由し車体後方へと走行風を排出させる新たな流体経路が構築される。そのため、ホイルハウス5内での動圧の損失を抑制できると共に、外部動力を必要とすることなくホイルハウス5内の空気を効率的に車両外へと排出することが可能となる。
【0023】
また、実施形態1では、導風口6からホイルハウス5内に導風された走行風3の流れを遮ることなく車体後方へと排出する流体経路が構築されるため、ホイルハウス5内の走行風3が増速しても、ホイルハウス5内に発生する空気抵抗と揚力の増大を抑えることができる。通常は、ホイルハウス5の上部5B(タイヤ11の上部とホイルハウスパネル4で挟まれる上部空間)に発熱部2で発した熱がこもり滞留することになり、なかなか車両外へと排出することは難しい。しかしながら、実施形態1では、ホイルハウス5内のよどみ域に走行風3が流れる流体経路が形成されるため、発熱部周りの対流熱伝達を促進することができる。
【0024】
しかしながら、実施形態1では、導風口6からホイルハウス5内に導風されて発熱部2で発した熱と熱交換した走行風3を、ホイルハウス5の上部5Bに滞留させることなくダクト10内の通風経路を介して車両外へとスムーズに排出させることができる。したがって、ホイルハウス5内の走行風3が増速してもホイルハウス5内に発生する空気抵抗と揚力の増大を抑えることができる。その結果、車体を持ち上げるリフト作用を低減でき、安定した走行状態を確保することが可能となる。
【0025】
また、実施形態1では、ホイルハウス5内の上部5Bに流体経路が構築されるため、発熱部2の上部における対流熱伝達を促進することができる。
【0026】
「実施形態2」
図3は実施形態2の車両用冷却装置を示す概略構成図である。実施形態2では、実施形態1と同一構成部材には同一の符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0027】
実施形態2の車両用冷却装置では、実施形態1に対して導風口6の位置と、第1開口部7及び第2開口部9の位置(ダクト10の位置)を異なる位置に設けている。
【0028】
具体的には、導風口6は、発熱部2より車両前方かつ上方に少なくとも一部を開口して設けられている。図3では、導風口6を、タイヤ11の斜め前方上方のホイルハウスパネル4に取り付けられたエアインテイクとしている。実施形態2では、タイヤ11の前方斜め上方から発熱部2に向かって走行風3を導風させる。このように、実施形態2では、車両床下から後方斜め上方に向かって発熱部2に走行風3を導風させる導風口6の配置位置を実施形態1とは異にしている。
【0029】
また、ダクト10の入口となる第1開口部7と出口となる第2開口部9の位置も実施形態2では、実施形態1の配置とは異にしている。実施形態2では、タイヤ11の前方斜め上方に設けた導風口6から発熱部2に対して後方斜め下方に向かって吹き下ろすように走行風3を導風させるため、その走行風3の速度ベクトルVの向きの略延長線上に、第1開口部7と第2開口部9を配置する。具体的な配置は、次の通りである。
【0030】
第1開口部7の少なくとも一部は、発熱部2の上端部2Aより後方かつ下方に開口している。この第1開口部7は、ホイルハウス5の車両後方下端部5B近傍のホイルハウスパネル4の一部を穿設した部位に前記ホイルハウス5内に向かって開口している。また、第1開口部7は、ホイルハウスパネル4の形状に応じた円弧形状とされている。第1開口部7の上端部7Aは、発熱部2の上端部2Aよりも若干斜め上方後方寄りの位置に設けられている。また、第1開口部7の下端部7Bは、発熱部2よりも後方であって該発熱部2の中心部2Bとほぼ同一高さ位置に設けられている。
【0031】
第2開口部9の少なくとも一部は、第1開口部7の後端部7Bより後方かつ第1開口部7の上端部7Aより上方に開口している。この第2開口部9は、車両後方の車体外周面8に車外へ向かって開口し、車両高さ方向に沿って矩形状をなす開口として形成されている。かかる第2開口部9が設けられる部位は、車体外周面8に沿って流れる空気流がボディから剥離しない非剥離領域とされる。第2開口部9の上端部9Aは、第1開口部7の上端部7Aの斜め上方後方寄りの位置に設けられている。また、第2開口部9の下端部9Bは、車両高さ方向での上端部9Aと同一線上であって、前記第1開口部7の上端部7Aより若干下方の位置に設けられている。つまり、第1開口部7と第2開口部9は、その開口部の一部を車両高さ方向でオーバーラップさせている。
【0032】
このように構成された冷却手段を持つ車両用冷却装置において、発熱部2の上端部2Aよりも斜め前方上方からホイルハウス5内に走行風3が導風されると、導風された走行風3はタイヤホイル1内に設けられた発熱部2から発せられる熱を奪って冷却する。そして、発熱部2で発生した熱と熱交換された走行風3は、前記導風口6から発熱部2の上端部2Aへと流れる走行風3の速度ベクトルVの延長線上に沿って流れ、導風口6よりも下に設けられたダクト入口である第1開口部7からその内部へと流れ込み、ダクト出口である第2開口部9から車両外へと排出される。
【0033】
実施形態2では、導風口6の位置を実施形態1とは異なる位置に設けているが、導風口6から発熱部2の上端部2Aへと流れる走行風3の速度ベクトルVの略延長線上に通風経路の第1開口部7と第2開口部9を配置した構造である点で実施形態1と兆通する。そのため、実施形態2によれば、速度ベクトルVの向きに応じた導風口6から発熱部2を経由し車体後方へと走行風3を排出させる流体経路が構築され、ホイルハウス5内での動圧の損失を抑制でき、また外部動力を必要とすることなくホイルハウス5内の空気を効率的に車両外へと排出することが可能となる。
【0034】
また、実施形態2によれば、車両外周面8の負圧に加え、ホイルハウス5内に導かれた空気の動圧を効果的に利用してホイルハウス5内の空気排出効率を向上させ、発熱2の冷却効率を向上させることができる。
【0035】
「実施形態3」
図4は実施形態3の車両用冷却装置を示す概略構成図、図5は図4のB−B線断面図、図6は室内換気動作を加えた実施形態3の動作フローチャートである。実施形態3では、実施形態1と同一構成部材には同一の符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0036】
実施形態3の車両用冷却装置では、ダクト10の途中から分岐して車両室内につながる室内換気通路12と、そのダクト10の途中から分岐する分岐部に一方向弁13と、を設けた点が実施形態1と異なっている。その他の構成は、実施形態1と同一である。
【0037】
室内換気通路12は、車両高さ方向におけるダクト10の上方部位に設けられ、車両室内とダクト10間を連結している。この室内換気通路12のダクト10に対する連結部には、車室内から車室外に開く(その逆は不可)一方向弁13が取り付けられている。一方向弁13としているのは、双方向弁とした場合に外部よりドアロックを解除される可能性があるため、防盗性を考慮してのことである。
【0038】
このように構成された実施形態3では、車室内に外気を導入する外気導入モード時には、一方向弁13が開となり、前記室内換気通路12から車室内の高湿空気がダクト10内に流れ込むことになる。この室内換気動作を図6のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
ステップS1の処理で、車両用ドアがドアロックオフ(施錠解除状態)となると、一方向弁13は室内換気通路12とダクト10とを連通可能となす弁フリー状態となる。つまり、一方向弁13は、開閉自由な状態になる。そして、次のステップS2の処理で、イグニッションキーがオンとなると、一方向弁13は室内換気通路12とダクト10間の連通状態を閉鎖する弁ノンフリー状態となる。つまり、一方向弁13は、閉じた状態となる。
【0040】
次に、ステップS3の処理で、車室内に外気を導入する外気導入モードが選択されたか否かを判断する。外気導入モードは、窓の曇りが発生した時或いは車室内を換気する必要があると判断したときに選択される。外気導入モードが選択された時は、ステップS4の処理で、一方向弁13が開く。外気導入モードが選択されない場合は、ステップS4の処理を行わずに次のステップS5の処理に進む。ステップS5の処理では、イグニッションキーがオフであるか否かを判断する。
【0041】
イグニッションキーがオフの場合は、ステップS6の処理で車両用ドアがドアロックオフとなり、一方向弁13が室内換気通路12とダクト10とを連通可能となす弁フリー状態となる。そして、次のステップS7の処理で、車両用ドアがドアロックオフとなると、一方向弁13は室内換気通路12とダクト10間の連通状態を閉鎖する弁ノンフリー状態となる。
【0042】
前記したように、車両室内換気時には、ダクト10と室内換気通路12との分岐部に設けた一方向弁13が開き、ホイルハウス5内からの走行風3による負圧と車室内からの正圧によって車両室内の気流がダクト10内に流出し、ダクト出口である第2開口部9から車両外へと排出される。これにより、車両室内の高湿空気が車両外へ排出されることで、車内の窓の曇りが取れる。
【0043】
実施形態3によれば、ホイルハウス5内から車体側方へと排気される冷却風の途中に室内換気通路12を設けたことにより、車室内換気が導風口6から発熱部2の上端部2Aを通り第1開口部7から第2開口部9へと流れる走行風3によって促進される。また、実施形態3では、室内換気通路12の出口を独立して持たせるのではなく、ダクト10にその出口を設けているため、部品点数を削減することができる。
【0044】
また、実施形態3によれば、一方向弁13によって車室内換気量を調整することが可能となる。また、実施形態3によれば、必要な時にのみ室内換気を行うので、空調装置(エアコン)の負荷を下げることができる。さらに、実施形態3によれば、車両のドアロックがオフ時にのみ一方向弁13が開閉自由となるため、ドア閉じ性能と防盗性能を犠牲にしない。
【0045】
「実施形態4」
図7は実施形態4の車両用冷却装置を示す概略構成図、図8は図7のC−C線断面図、図9は室内換気動作及びバッテリー冷却動作を加えた実施形態4の動作フローチャートである。実施形態4では、実施形態3と同一構成部材には同一の符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0046】
実施形態4では、実施形態3の構成に加えて、ダクト10の途中にバッテリーケース14からの排気に直接つながる排気経路15と、バッテリーケース14への連結部に開閉制御可能で風量調整可能な排気弁16と、を設けた点が実施形態3と異なっている。その他の構成は、実施形態3と同一である。
【0047】
排気経路15は、図示を省略するバッテリーを収容したバッテリーケース14とダクト10とを結んで設けられている。この排気経路15の出口は、前記した室内換気通路12の下方に開口されている。そして、この排気経路15のダクト10に対する連結部には、開閉制御可能で風量調整可能な排気弁16が取り付けられている。排気弁16は、防盗性を考慮して一方向のみに開く弁が採用される。また、排気弁16は、バッテリーケース14へ冷却風を吹き付けるバッテリー冷却ファンがオン(駆動時)のときのみ開となる。
【0048】
バッテリーケース14の内部では、バッテリーから発せられた熱が溜まる。そのため、図示を省略したバッテリー冷却ファンを作動させてバッテリーケース14内に冷却風を吹き付けるようにしている。バッテリーと熱交換された冷却風は、排気経路15を通ってダクト10内へと流れ込み、このダクト10内の通風経路を流れる走行風3によってダクト出口である第2開口部9から車室外へと排出される。
【0049】
このように構成された実施形態4では、実施形態3で説明した室内換気動作に加えてバッテリーケース内の熱を排気するバッテリーケース内排気動作を図9のフローチャートを参照して説明する。図9のフローチャートにおいて、室内換気動作は、実施形態3と同一であるため、異なる処理についてのみ説明するものとする。
【0050】
ステップS3の外気導入モードが選択されたか否かの判断時に、外気導入モードが選択されなかった場合は、ステップS8の処理を行う。ステップS8の処理では、バッテリー冷却ファンが駆動されたか否かを判断する。バッテリー冷却ファンが駆動された場合は、ステップS9の処理で排気弁16を開いてバッテリーケース14内の熱交換された冷却風を排気経路15を介してダクト10内へ排出させる。その結果、排気経路15からダクト10内へと出た冷却風は、導風口6からホイルハウス5内に導風されて発熱部2の上端部2Aへと流れ第1開口部7からダクト10内に流れ込む走行風3の流れに乗って第2開口部9から車室外へと排出される。
【0051】
ステップS8の処理において、バッテリー冷却ファンが駆動されなかった場合は、ステップS10の処理で排気弁16を閉じて排気経路15を遮断する。これにより、排気経路15からダクト10内への冷却風の流れが閉じられる。
【0052】
実施形態4によれば、ダクト10の途中にバッテリーケース14からの排気に直接つながる換気経路15を設けているので、ダクト入口である第1開口部7からダクト出口である第2開口部9へと流れる発熱部2で発せられた熱と熱交換された走行風3の流れを利用してバッテリーケース14からの冷却風を効率良く車室外へと排出することができる。また、実施形態4では、実施形態3と同様、換気経路15の出口を独立して持たせるのではなく、ダクト10にその出口を設けているため、部品点数を削減することができる。
【0053】
また、実施形態4によれば、バッテリーケース14とダクト10との連結部に開閉制御可能で風力調整可能な排気弁16を設けたので、バッテリーケース14内の排気に必要な換気量を調整することができ、バッテリー換気と室内換気を負荷に応じて個別に調整することができる。
【0054】
また、実施形態4によれば、バッテリーケース14へ冷却風を吹き付けるバッテリー冷却ファンがオンのときのみ排気弁16を開とすることで、バッテリー冷却時の換気効率を高めることができる。
【0055】
以上、上述の実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、前記実施形態に制限されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、ホイルハウス内の空気を効率的に排出するための車両用冷却装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…タイヤホイル
2…発熱部
3…走行風
4…ホイルハウスパネル
5…ホイルハウス
6…導風口
7…第1開口部
8…車体外周面
9…第2開口部
10…ダクト
11…タイヤ
12…室内換気通路
13…一方向弁
14…バッテリーケース
15…排気経路
16…排気弁(弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤホイル内に設けられた発熱部に走行風を導いて吹き付けることで冷却し、該発熱部で発生した熱と熱交換された走行風を車両外へと排出させる冷却手段を備えた車両用冷却装置において、
前記冷却手段は、
前記走行風をホイルハウス内に導風させる導風口と、
前記ホイルハウス内に開口する第1開口部と、
前記第1開口部と連通し、車体外周面に設けられた第2開口部と、
前記第1開口部と前記第2開口部を連通する通風経路と、を備え、
前記導風口から前記発熱部の上端部へと流れる走行風の速度ベクトルの略延長線上に、前記第1開口部及び前記第2開口部を配置した
ことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用冷却装置であって、
前記導風口は、前記発熱部より車両前方かつ下方に少なくとも一部を開口して設けられ、
前記第1開口部の少なくとも一部は、前記発熱部の上端部より後方かつ上方に開口し、
前記第2開口部の少なくとも一部は、前記第1開口部の後端部より後方かつ第1開口部の上端部より上方に開口する
ことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用冷却装置であって、
前記導風口は、前記発熱部より車両前方かつ上方に少なくとも一部を開口して設けられ、
前記第1開口部の少なくとも一部は、前記発熱部の上端部より後方かつ下方に開口し、
前記第2開口部の少なくとも一部は、前記第1開口部の後端部より後方かつ第1開口部の上端部より下方に開口する
ことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用冷却装置であって、
前記通風経路が箱体状をなすダクトにより形成され、
前記ダクトから分岐して車両室内につながる室内換気通路を有した
ことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用冷却装置であって、
前記ダクトと前記室内換気通路の連結部に一方向弁を設けた
ことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用冷却装置であって、
車両室内に外気を導入する外気導入モード時に、前記一方向弁が開となり、前記室内換気通路から車両室内の高湿空気が前記第2開口部より車両外へ排気される
ことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用冷却装置であって、
車両のドアロックがオフ時に、前記一方向弁が開閉自由となる
ことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項8】
請求項4に記載の車両用冷却装置であって、
前記ダクトの途中に、バッテリーケースからの排気に直接つながる換気経路を設けた
ことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用冷却装置であって、
前記換気経路と前記ダクトの連結部に、開閉制御可能で風量調整可能な弁を設けた
ことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用冷却装置であって、
前記弁は、前記バッテリーケースへ冷却風を吹き付けるバッテリー冷却ファンがオンのときのみ開となる
ことを特徴とする車両用冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−201946(P2010−201946A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46284(P2009−46284)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】