車両用制御装置
【課題】 構成を複雑化・高コスト化することなく、なおかつ、カメラに無駄な電力を消費させて寿命低下を招かない形で、呼気中のアルコール濃度を検査する被験者の顔画像を確実に撮影できる車両用制御装置を提供する。
【解決手段】 車両の運転席に着座したユーザーの呼気に含まれるアルコール濃度を測定するための検出器2に対し、初期状態から予め定められた安定検出可能状態に移行させるための検出準備処理を実行させるとともに、当該検出準備処理中に定められた検出器2の検出情報に基づいて定められた中間状態を特定し、中間状態が特定されるに伴い撮影装置5の主電源を投入し、該撮影装置5を撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理を実行させることにより、撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了した後、直ちに検出器2の安定検出可能状態への移行が完了するようにする。
【解決手段】 車両の運転席に着座したユーザーの呼気に含まれるアルコール濃度を測定するための検出器2に対し、初期状態から予め定められた安定検出可能状態に移行させるための検出準備処理を実行させるとともに、当該検出準備処理中に定められた検出器2の検出情報に基づいて定められた中間状態を特定し、中間状態が特定されるに伴い撮影装置5の主電源を投入し、該撮影装置5を撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理を実行させることにより、撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了した後、直ちに検出器2の安定検出可能状態への移行が完了するようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用制御装置、特に飲酒運転防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(例えば自動車等)の飲酒運転は重大な社会問題となっていて、運転者が酒気帯び状態で車両を運転することは厳禁されている。こうした酒気帯び運転を防止するために、近年、車両にアルコール検知装置(アルコール濃度測定装置)を搭載し、運転者が酒気を帯びていないことを確認するためのシステムの開発が進んでいる。
【0003】
この場合に重要となるのが、車両のアルコール検知装置による酒気帯び検査の被験者が本当に運転者であるかどうかであり、別の人間が検査を行うという、いわゆる成りすまし検査ができないようにする必要がある。成りすまし検査を防ぐための技術として例えば、アルコール濃度検査中の人物をカメラによって撮影し、その撮影画像を用いて成りすましを判断する技術がある。この場合、撮影を呼気が検出されたタイミングで行うことにより、その撮影画像に被験者の顔画像を確実に映し出すことができ、上記の成りすまし検査を効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−255766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメラは、電源が投入された後、所定の初期処理を実施した後でなければ撮影可能状態とはならないため、呼気を検出してから実際に撮影がなされるまでにはタイムラグが存在する。呼気を吐き出し終わった者は別の方向を向いてしまうこともあるため、タイムラグがあると、正面を向いた顔画像ではなく、横顔や斜め顔、それ以外の画像等が撮影されてしまう可能性が高くなり、被験者を特定できなくなることがある。かといって、カメラを予め撮影可能状態に準備しておくことは、無駄な電力消費につながり、カメラ寿命が短くなるといった問題がある。
【0006】
特許文献1には、運転者判定を正確に行うことができる映像を取得するために、センサによる運転席の乗員検知と運転者のヘッドレストヘの接触検知を実施し、双方が検知された場合に撮影を行う技術が開示されている。この場合、確かに認証精度は増すものの、センサ数が多くなるため構成が複雑化・高コスト化するという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、構成を複雑化・高コスト化することなく、なおかつ、カメラに無駄な電力を消費させて寿命低下を招かない形で、呼気中のアルコール濃度を検査する被験者の顔画像を確実に撮影できる車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の車両用制御装置は、
測定対象気体中の予め定められたガス濃度を検出する検出手段と、検出されたガス濃度に基づいて測定対象気体に含まれるユーザーの呼気中のアルコール濃度を算出する算出手段と、検出手段に呼気を吹き込むユーザーを撮影する撮影手段と、算出手段の算出結果と撮影手段の撮影画像とに基づいて車両を制御する車両制御手段と、を備える車両用制御装置であって、
検出手段に対し、予め定められた安定検出可能状態に移行させるための検出準備処理を実行させる検出準備処理実行手段と、
検出準備処理中に、検出手段により検出されたガス濃度に基づいて、当該検出準備処理開始直後の初期状態から安定検出可能状態に至る途中の予め定められた中間状態を特定する中間状態特定手段と、
撮影手段に対し、中間状態が特定されるに伴い該撮影手段の主電源をONに切り替え、撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理を実行させる撮影準備処理実行手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
検出手段は、センサの加熱等の暖気処理といった検出前の準備処理があるために、撮影手段よりも準備処理に時間がかかる。上記本発明の構成によれば、検出手段が検出準備処理を開始した後に、依然として主電源OFF状態の撮影手段の主電源がONとされて撮影準備処理を開始するため、撮影手段を無駄に駆動する時間を短くすることができる。また、これにより、呼気を吹き込んでいる最中のユーザーを撮影し易くなる。
【0010】
本発明においては、撮影準備処理の開始トリガーとなる中間状態として、撮影手段の撮影可能状態への移行が完了した後に検出手段の安定検出可能状態への移行が完了するような検出手段の状態を定めることができる。撮影手段の準備処理を開始するきっかけとなる中間状態が、上記のように定められていれば、検出手段が検出可能状態となった後に直ちに検出と撮影の双方を実施可能となるので、ユーザーは待ち時間のストレスを感じることなく、スムーズに検出処理を行うことが可能となる。また、呼気を吹き込まれるに伴い直ちに撮影を行うことができるため、タイムラグもほとんど無く、呼気吹込み中のユーザーの顔を確実に撮影することができる。
【0011】
本発明における検出手段は、ユーザーの呼気を含む測定対象気体中のアルコールの濃度を検出するアルコール濃度検出部と、測定対象気体中の予め定められたアルコール成分以外の参考ガスの濃度を検出する参考ガス濃度検出部とを有して構成される。この場合、算出手段は、検出手段により検出されたアルコール濃度及び参考ガス濃度に基づいて呼気中のアルコール濃度を算出し、車両制御手段は、アルコール濃度算出手段の算出結果と判定手段の判定結果に基づいて車両を制御する。測定対象気体は、予め定められた測定空間内の気体(大気)に呼気を吹き込んだ混合気であるため、そこから検出される混合気中のアルコール濃度を、参考ガス濃度によって補正することにより、呼気中のアルコール濃度をより正確に得ることができる。
【0012】
その参考ガスは、その濃度により測定対象気体中の呼気の含有レベルを推定可能な呼気含有レベル推定可能ガスとすることができ、例えば、酸素及び二酸化炭素のいずれか又は双方とすることができる。検出用に吹き込まれる呼気の量は常に一定であるはずがなく、各測定タイミングにおいて異なる。このため、呼気含有レベル推定可能ガスの濃度に基づいて、測定空間内の気体(大気)に呼気を吹き込んだときの希釈率(大気と呼気の比率)を算出し、これにより、実際に検出されるアルコール濃度を補正することで、呼気中のアルコール濃度を正確に算出することができる。
【0013】
本発明における中間状態特定手段は、検出準備処理中に、検出手段が検出するアルコール濃度及び参考ガス濃度のいずれか又は双方の検出値に基づいて、初期状態から安定検出可能状態に至る途中の予め定められた中間状態を特定するものとできる。検出準備処理中に検出手段から出力される出力信号(検出値)は不安定な値で、この段階の値を用いて測定を行うことは精度上できないが、各検出部が安定検出可能状態に至る出力信号変化には一定の傾向が見られるため、その傾向に応じて中間状態を定めることにより、撮影手段の撮影準備処理の完了タイミングと、検出手段の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的により近くすることができ、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間を軽減することができる。
【0014】
本発明における中間状態特定手段は、中間状態として、アルコール濃度検出部が順次出力する検出値が初期においてはじめて減少変化から増加変化に転じた後の状態、あるいは初期においてはじめて増加変化から減少変化に転じた後の状態を特定するものとできる。アルコール濃度検出部は、検出準備処理中において、出力信号(検出値)が初期値から一端減少し、後に再び上昇して値が飽和し、安定状態(検出可能状態)となる傾向、あるいは、出力信号(検出値)が初期値から一端減少し、後に再び上昇して値が飽和し、安定状態(検出可能状態)となる傾向を有しており、検出値の差分が増加から減少へ、あるいは減少から増加へとはじめて転じた後の状態を中間状態として定めることにより、撮影手段の撮影準備処理の完了タイミングと、検出手段の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的に近くすることができ、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間を軽減することができる。
【0015】
本発明においては、安定検出可能状態として、少なくともアルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った状態を定めることができ、この場合、中間状態特定手段は、中間状態として、少なくともアルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が上記安定差分レベルよりも差分範囲が大きい中間差分レベルを下回った場合を特定するものとできる。アルコール濃度検出部は、検出準備処理中において、出力信号(検出値)が初期値から一端減少(又は増加)し、後に再び上昇(又は下降)して値が飽和し、安定状態(検出可能状態)となる傾向を有しており、検出値の差分(増分)が増加(又は減少)に転じ、さらに差分がある値を下回るような安定した段階に達した状態を中間状態として定めることにより、撮影手段の撮影準備処理の完了タイミングと、検出手段の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的により近くすることができ、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間を軽減することができる。
【0016】
本発明においては、安定検出可能状態として、少なくともアルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った状態を定めることができ、この場合、中間状態特定手段は、中間状態として、少なくとも参考ガス濃度検出部が順次出力する検出値が予め定められた濃度レベルを上回った場合を特定するものとできる。その参考ガスは、その濃度により測定対象気体中の呼気の含有レベルを推定可能な呼気含有レベル推定可能ガスとすることができ、例えば、酸素及び二酸化炭素のいずれか又は双方とすることができる。大気中に含まれる参考ガスを検出する検出部は、検出準備処理中において、出力信号(検出値)が初期値から増加していく傾向を有しており、その検出値が一定レベルを上回ったタイミングを中間状態として定めることにより、撮影手段の撮影準備処理の完了タイミングと、検出手段の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的により近くすることができ、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間を軽減することができる。
【0017】
本発明においては、安定検出可能状態を特定する安定検出可能状態特定手段と、安定検出可能状態が特定されるに伴い呼気の吹き込みを促す旨の報知を行う報知手段とを備えて構成できる。これにより、呼気吹き込みタイミングをユーザーが把握できるし、このとき既に、撮影手段も撮影可能状態になっているため、ユーザーを確実に撮影することもできる。
【0018】
本発明における中間状態特定手段は、アルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った場合を安定検出可能状態として特定する一方、参考ガス濃度検出部が順次出力する検出値が予め定められた濃度レベルを上回った場合を中間状態として特定するものとできる。
【0019】
本発明におけるアルコール濃度検出部は、測定対象気体中のアルコールの接触により電気抵抗が変化する半導体素子を有した半導体方式のアルコールセンサとすることができる。
【0020】
本発明による検出準備処理実行手段は、検出手段の開始操作部がユーザーにより操作されるに伴い検出手段に対し検出準備処理を実行させるものとできる。これにより、開始操作部が操作されたタイミングで検出手段の検出準備処理が実行され、さらにその後に、撮影手段の撮影準備処理が開始することになり、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間が軽減される。
【0021】
本発明においては、撮影手段の撮影画像に基づいて検出手段による不正行為の有無を判定する判定手段を備え、車両制御手段は、算出手段の算出結果と判定手段の判定結果とに基づいて車両を制御するものとできる。これにより、呼気中のアルコール濃度を検査する被験者の顔画像を確実に撮影することが可能となり、成りすまし検査を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の車両用制御装置の一実施形態である飲酒運転防止装置の構成を示すブロック図。
【図2】検出器本体の外観を簡略的に示す斜視図。
【図3】図1の飲酒運転防止装置を搭載した車両の車内図。
【図4】検出器本体の内部構成を簡略的に示す断面図。
【図5】アルコールセンサの電気的構成を説明するためのブロック図。
【図6】アルコールセンサの回路構成を示す図。
【図7】酸素センサモジュールの出力を示すグラフ。
【図8】酒気帯び判定プログラムの流れを示すフローチャート。
【図9】初期状態から安定検出可能状態、さらには呼気検出状態に至る検出器の出力例を示すグラフ。
【図10】成りすまし判定処理の流れを示すフリーチャート。
【図11】図1とは異なる本発明の車両用制御装置の実施形態の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の車両用制御装置の一実施形態である飲酒運転防止装置について図面を用いて説明する。
【0024】
図1は、本実施形態における飲酒運転防止装置の構成を示すブロック図、図3は、図1の飲酒運転防止装置が搭載された運転席の概略図、図2は、図1の検出器を簡略的に示す斜視図、図4は、図2の内部構成を簡略的に示す断面図、図5は、図2のアルコールセンサの機能を示す説明図である。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態における飲酒運転防止装置1は、車両(ここでは自動車)の運転席Sに着座したユーザー(運転者)Dの呼気に含まれるアルコール濃度を測定するために、測定対象気体G中の予め定められたガス濃度を検出する検出器(検出手段)2を有し、制御部10が、検出器2によって検出されたガス濃度に基づいて、ユーザーDの呼気中のアルコール濃度を算出する(算出手段)。また、飲酒運転防止装置1は、検出器2に呼気を吹き込む最中のユーザーDを撮影する撮影装置(撮影手段)5を有し、制御部10が、撮影装置5の撮影画像に基づいて検出器2による不正検出行為の有無を判定する(判定手段)。また、制御部10は、呼気中のアルコール濃度の算出結果と、不正検出行為の有無の判定結果とに基づいて、車両を制御する車両制御手段としても機能する。ここでは、上記の算出結果と判定結果とに基づいて、車両における予め定められた走行制限をインターロック装置3に実行させる。
【0026】
検出器2は、筐体26と、呼気中のアルコール濃度の測定を開始するタイミングでユーザー操作される検査スイッチ(開始操作部)20とを有し、制御部10に対し周知の通信手段(ここでは有線接続)により接続されている。検査スイッチ20は、呼気を取込口26aから筐体内部へ取り込むときにユーザーによりON操作され、ON操作されると制御部10に操作信号が入力される。そして、これに伴い制御部10は、検出器2に対し後述する検出準備処理を実行させる制御指令信号を出力する。
【0027】
検出器2の筐体26は、図2及び図4に示すように、運転者の呼気を取り込むための取込口26hと、取り込まれた呼気を外部へ排出するための排出口26bとを有する。運転者Dが筐体26を把持して取込口26aに口を近づけて呼気を吹きかけると、取り込まれた呼気が、筐体内部に形成された呼気流路26cを通って排出口26bへ向けて流動する。
【0028】
なお、本発明における測定対象気体Gとは、検出器2の筐体内部に存在する気体のことであり、呼気流路26cを通過する気体のことである。呼気中のアルコール濃度を測定する際には、筐体内部に吹き込まれた呼気と、呼気とは別に筐体内部に存在していた気体の混合気が測定対象気体Gである。
【0029】
呼気流路26cの内部には、図4に示すように、ユーザーUの呼気を含む測定対象気体G中のアルコールの濃度を検出するアルコールセンサ(アルコール濃度検出部)24と、測定対象気体G中の予め定められたアルコール成分以外のガスであって呼気中のアルコール算出に用いられる参考ガスの濃度を検出するガスセンサ(参考ガス濃度検出部)21〜23,25を有する。参考ガスは、その濃度により測定対象気体G中の呼気の含有レベルを推定可能な呼気含有レベル推定可能ガスとすることができ、例えば、酸素及び二酸化炭素のいずれか又は双方とすることができる。ここでは、呼気含有レベル推定可能ガスとして酸素の濃度を検出する酸素センサ25が設けられている。この他、参考ガスの濃度を検出するガスセンサとして、流路26c内の臭い(即ち、測定対象気体Gの臭い)を検出する臭いセンサ21、流路内の湿度(即ち、測定対象気体Gの湿度)を検出する湿気センサ22、流路内の温度(即ち、測定対象気体Gの温度)を検出する温度センサ23を備え、これらの検出値が制御部10に出力される。これらのセンサ21〜25はいずれも周知のものであり、呼気流路26c内に突出した形態で図示しない基板上に実装されている。
【0030】
ここでのアルコールセンサ24は、測定対象気体G中のアルコールの接触により電気抵抗が変化する半導体素子を有した半導体方式のアルコールセンサであり、具体的にいえば、白金製のコイル24Dに酸化スズ等の金属酸化物24Cをコーティングしてなる半導体センサである。金属酸化物24Cには検出回路24Bが接続され、コイル24Dには電源回路24Aが接続されている。アルコールセンサ24は制御部10からの制御指令信号を受けると、電源回路24Aのスイッチ24SがONとなってコイル24Dが通電され、これにより、金属酸化物24Cが所定温度に加熱され、金属酸化物24Cの表面に付着した水蒸気や異物が除去される(エージング)。
【0031】
ここでアルコールセンサ24の機能について説明する。大気中(アルコール成分を含まない又は非常に少ない空気状態)では、空気中の酸素原子と金属酸化物(酸化スズ)24C中の電子が結合しているため、金属酸化物24Cには電気が流れにくい状態となっている。このとき、コイル24Dに電流を流し、金属酸化物24Cを所定温度に加熱する検出準備処理を実施する。検出準備処理が完了した状態で金属酸化物24Cにアルコール分を含む呼気が接触すると、呼気中のアルコール分と表面の酸素原子とが反応し、金属酸化物24C中の電子と結合している酸素原子が剥ぎ取られる。これにより、金属酸化物24C中の電子が自由になって電気が流れるようになる。この変化を検出回路24Bにて検出し、金属酸化物24Cの電気抵抗値の変化を計測することにより、アルコール濃度が測定される。
【0032】
アルコールセンサ24は、アルコール成分以外の匂いに関するガス成分に反応してセンサ抵抗RSが変化することがある。このため、匂いの影響を回避するために、臭いセンサ21が用いられている。臭いセンサ21は、アルコールセンサ24のセンサ抵抗RSに影響を及ぼす妨害ガス濃度を検出し、その検出値としてのセンサ抵抗RSを出力する半導体センサである。なお、臭いセンサ21もアルコールセンサ24と同様の半導体センサであり、図3に示したアルコールセンサ24と同様に構成されている。
【0033】
温度センサ23は、例えば「サーミスタ」と称され、ニッケル、コバルト、マンガン等の酸化物よりなる半導体センサである。呼気の温度は、運転者による呼気の吹きかけ方法によって変化する。例えば、運転者が吹きかけた呼気が運転者の体内(肺)から生じたものである場合、その温度は高く、しかもアルコール成分を含んでいるか否かの判定が容易である。しかし、運転者の口腔内から生じたものであったり、風船等を使用した不正手段によって吹き付けたものであったりする場合、その温度は低い。また、外気温によっても変化する。このため、温度センサ23が検出する温度の変化をモニタすることにより、運転者の肺からの呼気であるか否かを判定することができる。
【0034】
湿気センサ22は、空気中の水分量に応じてセンサ素子の導電率や静電容量が変化することにより、当該空気の湿度を計測するもの(例えば、容量変化型湿気センサ)である。アルコールセンサ24は、大気中の湿度に反応する場合があり、酒気帯び状態でなくてもアルコールセンサ24は反応する。このため、湿気センサ22が検出する湿度の変化をモニタすることにより、アルコールセンサ24が大気中の湿度や通常状態の呼気中のアルコール成分を検出した場合でも、それらの検出値を採用しないようにすることができる。
【0035】
酸素センサ25は、車室内の大気と混ざり合うことによって希釈される呼気の酸素濃度を検出するものであり、アルコールセンサ24と同様の半導体センサである。図7は、その酸素センサの出力を示すグラフである。車室内の空気中の酸素濃度は、天候や乗員の数が変化してもほぼ一定である。呼気中の酸素濃度は、大気によって希釈された場合であっても大気の酸素濃度よりも低い。このため、酸素センサ25が検出する酸素濃度の変化をモニタすることにより、呼気であるか否かを判定することができる。
【0036】
この酸素センサ25は、運転者によって吹きかけられた呼気が大気で希釈された場合に、その希釈率(呼気含有レベル)を算出して、算出されたアルコール濃度を補正するために用いられる。以下、酸素センサ25を用いたアルコール濃度の補正の考え方について説明する。
【0037】
運転者によって吹きかけられた呼気は、検出器2内に取り込まれることになるが、その呼気と同時にいくらかの車室内の大気も取り込まれる。したがって、同時に取り込まれた大気によって呼気が希釈されるので、アルコールセンサ24のセンサ抵抗RSに基づいて計算されたアルコール濃度は、実際のアルコール濃度よりも小さな値となる。そこで、呼気の希釈率を算出し、その希釈率に応じて算出したアルコール濃度を補正するようにしている。
【0038】
大気中では、酸素濃度が約20.6%、二酸化炭素濃度が約0.03%を占め、水分量(水蒸気)は湿度や気温等で変化することに起因して不定となっている。一方、呼気中(大気により希釈されない場合)では、酸素濃度が約15.2%、二酸化炭素濃度が約5%を占め、水分量は呼吸深度や気温等で変化することに起因して不定となっている。このように、大気中と呼気中とでは各ガス濃度が異なっているため、検出器2内に取り込まれた混合気(空気と混ざり合った呼気)の各参考ガス濃度を測定することにより、呼気がどの程度大気で希釈されているのかを判断することができる。
【0039】
この場合、各ガス濃度のうち、酸素濃度は、大気中、呼気中ともに成分量が安定しているので、酸素濃度を比較すれば正確な希釈率を算出しやすいと考えられる。即ち、検出器2内に取り込まれた混合気の酸素濃度が、例えば15.2%であったとすると、大気により希釈されないときの呼気中の酸素濃度15.2%と同じであるので、大気による希釈がないものと判断することができる。
【0040】
そこで、検出器2においては、取り込まれた混合気の酸素濃度を酸素センサ25で測定し、測定した酸素濃度と大気中の酸素濃度(例えば20.6%)との差分b(図5ではb=2.7%を例示)を算出する。そして、大気中の酸素濃度(例えば20.6%)と希釈がないときの呼気中の酸素濃度(例えば15.2%)との差分をa(=5.4%)とすれば、希釈率はb/aで算出することができる。これにより、算出したアルコール濃度を希釈率(b/a)で除算すれば、アルコール濃度を補正することができる。
【0041】
さらに、臭いセンサ21の検出値に基づいて妨害ガスの影響を除去するとともに、温度センサ23及び湿気センサ22の各検出値に基づいて検出対象として不適切な呼気を除外することにより、算出されるアルコール濃度のばらつきが小さくなって、実際のアルコール濃度とほぼ同じ値が得られるようになる。なお、希釈率は、取り込まれた混合気の湿度によって求めることもできるので、酸素濃度と湿度の両方で希釈率を求めるようにしてもよい。
【0042】
撮影装置5は、例えばCCD(Charge Coupled Device)や、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサを備えた赤外線カメラである。ここでは、運転席に着座するユーザーの頭部を正面から撮影され、顔の正面が写るように撮影装置5が設置されている。具体的にいえば、検出器2に呼気を吹き込む最中の運転手Dの顔部を撮影できるよう、例えば図3に示すように、インストルメントパネルIの上部に設置されている。この撮影装置5は、制御部10からの起動信号の入力を受けて電源投入され、それまで継続されていた主電源OFF状態から主電源ON状態となり、これに続いて、撮影指令信号の入力に伴い直ちに撮影ができるような撮影可能状態に移行するための撮影準備処理(周知のオートゲイン制御や画像処理部(画像デバイス)の起動・初期化処理等)を実行する。本実施形態のようなリモートセキュリティシステムでは、撮影装置への通電は撮影時のみとなっており、暗電流が減じられている。
【0043】
報知装置4は、例えばスピーカと音声合成回路とを備えた音声出力装置とすることができる。音声出力装置は、制御部10からの報知出力指令に応じて、メモリ内に予め記憶された音声データに基づいて、計測されたアルコール濃度が予め定められた設定値以上であるか否か、即ち酒気帯び状態であるか否か、さらには、その計測結果に基づく走行制限状態について、音声メッセージにより出力する。また、報知装置4は、表示装置とすることも可能であり、例えば運転席の前方の速度メータやエンジン回転数メータ等の各種メータが配置されたメータパネルに設けることができる。表示装置は、制御部10からの報知出力指令に応じて、計測されたアルコール濃度が予め定められた設定値以上であるときは酒気帯び状態に該当するため車両の走行が禁止されている旨(例えばエンジンが始動不能となっている旨)のメッセージを表示する一方、設定値未満であるときは酒気帯び状態に該当しないため車両の走行が可能である旨(例えばエンジンが始動可能である旨)のメッセージを表示する。報知装置4としては、上記の音声出力装置と表示装置のいずれか又は双方であればよい。また、異なる色のLEDの点灯状態により、計測されたアルコール濃度が予め定められた設定値以上であるか否か(即ち酒気帯び状態であるか否か)を報知する簡易な構成のものでもよい。
【0044】
制御部10は、CPU、ROM、RAM、入出力部(I/O)、通信部等を主要構成部品とし、エンジンECU6を含む各種制御部に対し車載LAN7を介して接続する。制御部10は、ROM等のメモリに記憶されている酒気帯び判定プログラムを実行することにより、検出器2からの検出信号に基づいてアルコール濃度を算出するとともに、その算出結果が酒気帯び状態に該当する場合には、車両に走行制限(例えば走行禁止)を設けるためのとする走行制限信号を、車載LAN7を介して接続するインターロック装置3に出力する一方、その算出結果が酒気帯び状態に該当しない場合には、上記走行制限を解除するとする走行制限解除信号を、車載LAN7を介して接続するインターロック装置3に出力する。そして、上記報知装置4に対し上記算出結果に応じた車両制御が実施される旨を報知出力させる。
【0045】
インターロック装置3は、制御部10からの指令(走行制限信号/走行制限解除信号)に基づいて、ドライバによる運転操作が禁止又は制限されるように車両に対し予め定められた走行制限を設定・実行するものである。走行制限としては、少なくとも車両の走行速度を予め定められた速度レベルを下回るように制限したり、走行そのものが禁止されるような制限であればよい。ここでは、エンジンECU6に対し車両に搭載されたエンジンの始動を禁止させる制限設定を行うものとする。このため、ユーザーのIG−ON操作(イグニッションスイッチをONする操作)があり、その信号入力をエンジンECU6が受けたとしても、制御部10において酒気帯び状態に該当しないと判定されていなければ、インターロック装置3により、エンジンを始動することができない。
【0046】
ところで、本実施形態における飲酒運転防止装置1は、制御部10が酒気帯び判定プログラムを実行することにより、以下の処理が実行されることを特徴とする。即ち、検出器2に対し、初期状態から予め定められた安定検出可能状態に移行させるための検出準備処理を実行させるとともに(検出準備処理実行手段)、その検出準備処理中に、検出器2の検出情報(検出値)に基づいて、初期状態(検出準備処理開始直後の状態)から安定検出可能状態に至る途中の予め定められた中間状態を特定して(中間状態特定手段)、その中間状態が特定されるに伴い、検出準備処理が開始されても依然として主電源が投入されていない撮影装置に対し主電源を投入し、該撮影装置5を撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理を実行させるとともに、撮影及び撮影画像の保存が終了するに伴い直ちに、最終的に主電源OFFに至る電源オフ準備処理を実行させる(撮影制御手段)ように構成されている。そして、検出器2は、センサの加熱等の暖気処理等があるために、撮影手段よりも準備処理に時間がかかることを考慮し、撮影準備処理の開始トリガーとなる中間状態として、撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了した後に検出器2の安定検出可能状態への移行が完了するような状態を定めている。これにより、検出器2が検出可能状態となった後に直ちに検出と撮影の双方を実施可能となるので、ユーザーは待ち時間のストレスを感じることなく、スムーズに検出処理を行うことが可能となる。また、呼気を吹き込まれるに伴い直ちに撮影を行うことができるため、タイムラグもほとんど無く、呼気吹込み中のユーザーの顔を確実に撮影することができる。
【0047】
ここで、制御部10が実行する酒気帯び判定プログラムについて、図8を用いて説明する。
【0048】
まず、制御部10は、IGスイッチのON操作の有無を判定する(S1)。なお、この段階では、ON操作が検出されたからといってエンジンが始動することはなく、アクセサリ電源(ACC電源)のみがON状態となる。なお、このIGスイッチのON操作(IG−ONの信号入力)が、酒気帯び判定プログラムを開始するトリガー操作となっているが、これはIGスイッチのON操作に限られず、車両走行開始前に必須に実施される予め定められた走行準備操作(例えばシートベルトの装着等)であればよい。
【0049】
IGスイッチのON操作がなされると(IG−ONの信号入力があると)、制御部10は、検出器2の検査スイッチ(開始操作部)がユーザーにより操作されたか否かを判定する(S2)。検査スイッチ(開始操作部)が操作されると、制御部10は、検出器2に対し、初期状態から予め定められた安定検出可能状態に移行させるための検出準備処理を実行させる制御指令信号を出力する(S3:検出準備処理実行手段)。これにより、ここでは検出器2において、上述した加熱処理が開始される。この検出準備処理が開始されると、制御部10は、それが終わるよりも前に定められた所定のタイミングを特定し(S4:中間状態特定手段)、そのタイミングで撮影装置5の主電源を投入(ON)する制御指令信号を出力する(S5:撮影準備処理実行手段)。これにより、撮影装置5において主電源が投入され、撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理が開始される。
【0050】
ここで、撮影装置5の主電源を投入し、撮影準備処理を開始させるタイミングについて説明する。撮影準備処理を開始させるタイミングは、撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了した後に検出器2の安定検出可能状態への移行が完了するような、検出器2の中間状態が検出されたタイミングとして予め定められており、S4では、そのタイミングの到来の有無を判定している。ここでの中間状態は、検出準備処理中の検出器2の各センサ21〜25が出力する検出値のいずれか又は複数に基づくタイミングとして定められており、制御部10は、それらセンサ21〜25から順次出力されてくる検出値をモニタして、そのタイミングの到来を判断する。検出準備処理中に検出器2から出力される出力信号(検出値)は不安定な値であり、この段階の値を用いて測定を行うことは精度上できないが、各センサ21〜25が安定検出可能状態に至る出力信号変化には一定の傾向が見られるため、その傾向に応じて中間状態が予め定められている。これにより、撮影装置5の撮影準備処理の完了タイミングと、検出器2の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的により近くすることができ、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間を軽減することができる。
【0051】
本実施形態においては、アルコールセンサ24が所定周期で順次出力(モニタリング出力)する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った場合を安定検出可能状態として定める一方、同じくアルコールセンサ24が所定周期で順次出力(モニタリング出力)する検出値の差分が上記安定差分レベルよりも大きい中間差分レベルを下回った場合を中間状態として定めている。アルコールセンサ24の回路構成は図6に示すようになっており、初期においてはセンサ抵抗RSが非常に大きいため、図9(a)に示すように、アルコールセンサ24の出力値(AD値)の初期値は最終的な飽和値よりも大きな値から始まる。そして、初期の加熱処理が始まると、アルコールセンサ24の出力値(AD値)は一度大きく検出値が減少した後に増加に転じ、そこから徐々に増加する形で最終的に飽和値へと接近する傾向がある。このため、検出値の差分が増加に転じた後、その差分(増加変化量)がある値aを下回るような安定した段階となったタイミングを中間状態として定めている。これにより、撮影装置5の撮影準備処理の完了タイミングと、検出器2の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的により近くすることができ、検出器2が安定検出可能状態となったときに直ちに、撮影装置5による撮影も可能となる。なお、ここでの安定検出可能状態は、アルコールセンサ24の差分(増加変化量)aが上記の中間状態を定める値aを下回る値a’を下回った、より安定した状態(飽和状態)として定められ、なおかつ他のセンサ21〜23,25も、アルコールセンサ24が安定検出可能状態となった際には同じく安定検出可能状態となるような状態として定められている。
【0052】
なお、本実施形態においては、撮影装置5の主電源投入から撮影準備処理の完了までに約2秒を要するため、撮影装置5の主電源を投入し、撮影準備処理を開始させるタイミングは、検出器2の安定検出可能状態に移行完了するタイミングから2秒よりも前のタイミングとなるように、検出器2の中間状態が定められている。
【0053】
また、本実施形態においては、アルコールセンサ24の回路構成が図6に示すようにプルアップされているため、出力値(AD値)は図9に示すような傾向を示しますが、プルダウンの回路構成とすることも可能であり、この場合の出力値(AD値)は、図9を上下反転した傾向として現れる。即ち、アルコールセンサ24の出力値(AD値)の初期値は最終的な飽和値よりも小さな値から始まる。そして、初期の加熱処理が始まると、アルコールセンサ24の出力値(AD値)は一度大きく検出値が増加した後に減少に転じ、そこから徐々に減少する形で最終的に飽和値へと接近する傾向として現れる。この場合、検出値の差分が減少に転じた後、その差分(減少変化量)がある値を下回るような安定した段階となったタイミングを中間状態として定めることができる。
【0054】
図8のS5に戻る。撮影準備処理が開始した後(S5)、検出器2の安定検出可能状態を特定する、即ち検出器2の検出準備処理が完了すると(安定検出可能状態特定手段)、報知装置4によって検出準備が完了した旨を音声及び表示のいずれか又は双方により報知出力する(S6:報知手段)。ここでは、検出準備が完了したことを直接的に報知するのではなく、検出器2の取込口26aから呼気を吹きかけるよう促す旨の報知を行う。
【0055】
検出準備処理が完了すると、制御部10は、呼気が吹き込まれたか否かを判定する(S7)。呼気が吹き込まれたか否かは、酸素センサの検出値から判断することができ、検出値が予め定められた設定値以上となった場合に呼気が吹き込まれたと判断する。なお、呼気が吹き込まれたか否かの判定は、呼気が検出されるまで予め定められた一定期間の間繰り返し実施され(S14:Yes)、一定期間が経過しても呼気が検出されない場合は(S14:No)、報知装置4によってエラー終了の旨を音声及び表示のいずれか又は双方により報知出力し、本処理をエラー終了とする。
【0056】
制御部10は、呼気が吹き込まれたと判定すると、撮影装置5による撮影を実施させる制御信号を出力し、撮影装置5によって撮影された画像を取得して制御部10の所定メモリ内に保存する(S8)。そして、保存が完了するに伴い直ちに撮影装置5を電源OFFする制御指令信号を出力する(S9:電源オフ手段)。これにより、撮影装置5のシャットダウン処理(電源オフ準備処理)が開始し、最終的に撮影装置5の主電源がOFFされる。一方で、制御部10は、呼気が吹き込まれたと判定すると、このときに各ガスセンサ21〜26から入力された検出値をRAM等に記憶し、呼気中のアルコール濃度の算出を行う(S10)。
【0057】
S10のアルコール濃度の算出について説明する。検出器2の取込口26aに吹き込まれた呼気は、大気(車室内の空気)あるいは筐体11内の空気と混ざり合って内部流路26cへ流入する。取り込まれた混合気は、呼気流路26cの下流側へ送り出され、アルコールセンサ24、匂いセンサ21、温度センサ23、湿気センサ22及び酸素センサ25と接触しながら呼気流路26cを通過し、排出口26bから排出される。制御部10は、アルコールセンサ24の検出値に基づいて測定対象気体G中のアルコール濃度を算出し、算出したアルコール濃度を希釈率で除算することでアルコール濃度を補正し、これにより、ユーザーにより吹き込まれた呼気中のアルコール濃度を得る。
【0058】
S10に戻る。アルコール濃度の算出が完了すると、算出されたアルコール濃度に基づいて運転者の酒気帯び状態を判定する(S11)。酒気帯び状態に該当する場合には(S11:Yes)、車両に走行制限(例えば走行禁止)を設けるためのとする走行制限信号をインターロック装置3に出力し(S12)、インターロックを継続する一方、その算出結果が酒気帯び状態に該当しない場合には(S11:No)、上記走行制限を解除するとする走行制限解除信号をインターロック装置3に出力し、インターロックを解除する(S13)。ここでは、酒気帯び状態にあると判定した場合は、エンジン始動を禁止するインターロックを作動するとともに、報知装置4によってエンジンが始動不能である旨を音声及び表示のいずれか又は双方で報知出力させる一方、運転者が酒気帯び状態にないと判定した場合、エンジン始動が許可されるようインターロックを解除するとともに、報知装置4によってエンジンが始動可能である旨を音声及び表示のいずれか又は双方で報知出力させる。ここでは算出されたアルコール濃度の情報が、報知装置4をなす表示装置において表示される(S15:表示手段)。
【0059】
次に、制御部10が実行する成りすまし判定プログラム(判定手段)について、図10を用いて説明する。
【0060】
図8においてインターロックが解除されてエンジン始動操作した後、制御部10は、予め定められた監視撮影タイミングの到来の有無を判定する(S21)。ここでの監視撮影タイミングは、エンジン始動後、所定周期で到来するものとしてもよいし、エンジン始動後において予め定められた運転操作がなされたタイミングとしてもよい。監視撮影タイミングの到来があった場合には、制御部10は、撮影装置5の主電源を投入する制御指令信号を出力し、これにより、該撮影装置5を撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理を開始させる(S22:S5と同様)。
【0061】
撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了すると直ちに撮影が実施され、撮影された画像が、酒気帯び判定プログラムの実行時において撮影された画像とは別に保存される(S23)。そして、酒気帯び判定プログラムの実行時において事前に撮影された画像において特定されるユーザーと、今回撮影された画像において特定されるユーザーが同一人物であるか否かの判定処理、即ち成りすまし判定がなされる(S24)。ここでは、今回撮影された顔画像のデータから特徴部を抽出するとともに、これを事前に撮影された被験者本人の顔画像のデータから抽出される特徴部とを比較して、今回撮影されたユーザーが事前に撮影されたユーザーと同一人物であるか否かを判定する。同一人物であれば検査OK(成りすまし無し)となり、酒気帯び判定プログラムにおいて解除されたインターロックの解除状態が継続する一方、同一人物でなければ検査NG(成りすまし有り)となり、音声及び表示のいずれか又は双方により、警告出力と、酒気帯び判定プログラムに基づく再度の酒気帯び判定の実施を促す旨の報知出力とを報知装置4に実施させ、上述のインターロックを作動させる。
【0062】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。以下、上記実施形態とは異なる実施形態について説明する。なお、共通の構成部分いついては上記実施形態と同様の符号を付することで説明を省略する。
【0063】
例えば、上記実施形態においては、検出器2における安定検出可能状態を、アルコールセンサ24が順次出力(モニタリング出力)する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った状態と定める一方、撮影準備処理の開始トリガーとなる中間状態として、アルコールセンサ24が順次出力(モニタリング出力)する検出値の差分が上記安定差分レベルよりも差分幅が大きい中間差分レベルを下回った状態と定めているが、本発明はこれらに限られるものではなく、少なくとも安定検出可能状態と中間状態とが、検出器2が検出するアルコール濃度及び参考ガス濃度のいずれか又は双方の検出値に基づいて定められていればよい。ただし、中間状態は、検出器2の初期状態から安定検出可能状態に至る途中の状態(初期状態と安定検出可能状態とを含まない)として定められ、撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了した後に検出器2の安定検出可能状態への移行が完了するようなタイミングとなる状態と定めるとよい。
【0064】
ここで、上記実施形態における検出器2が有する各センサ21〜25の初期状態から安定検出可能状態に至るまでの傾向を、図9を用いて簡単に説明する。臭いセンサ21の検出値は、図9(b)に示すように、初期状態からある程度の増加を生じた後、急激に減少し、その後、徐々に増加する形で飽和値へと向かう変化を有する。湿気センサ22は、図9(c)に示すように、初期状態からわずかな急増を生じた後、わずかな増加を生ずる形で飽和値へと向かう変化を有する。温度センサ23は、図9(d)に示すように、初期状態から鋭く飽和値に近い値まで急増した後、ほんのわずかな減少を生ずる形で飽和値へと向かう変化を有する。アルコールセンサ24の検出値は、図9(a)に示すように、初期状態から急激に減少し、その後、臭いセンサ21よりも鋭く増加変化を生じる形で、徐々に飽和値へと向かう変化を有する。酸素センサ25の検出値は、図9(e)に示すように、初期状態からわずかな減少を生じた後、急激に増加し、その後、徐々にわずかな減少を生ずる形で飽和値へと向かう変化を有する。
【0065】
このような初期傾向を見せる各センサ21〜25を有する検出器2を備えるため、検出器2における安定検出可能状態と、撮影装置5の撮影準備処理の開始トリガーとなる中間状態とを、例えば以下のように定めることもできる。
【0066】
例えば、センサ21〜25のうち複数のセンサを用いて、安定検出可能状態と中間状態とを定めることができる。これにより、一種のセンサだけではなく、複数のセンサにより状態を判定するため、より確実な状態検出が可能となる。具体的にいえば、安定検出可能状態を、アルコールセンサ24が所定周期で順次出力する出力値の差分が増加に転じた後予め定められた安定差分レベル(値a)を下回り、かつ同時に酸素センサ(参考ガス濃度検出部)25が所定周期で順次出力する出力値の差分が予め定められた安定差分レベル(値b)を下回り、かつ同時に湿気センサ(参考ガス濃度検出部)23が所定周期で順次出力する出力値の差分が予め定められた安定差分レベル(値c)を下回る状態と定め、他方、中間状態として、アルコールセンサ24が所定周期で順次出力する検出値の差分が増加に転じた後上記安定差分レベルよりも差分幅が大きい中間差分レベル(値a’)を下回り、かつ同時に酸素センサ(参考ガス濃度検出部)25が所定周期で順次出力する出力値の差分が上記安定差分レベルよりも差分幅が大きい中間差分レベル(値b’)を下回り、かつ同時に湿気センサ(参考ガス濃度検出部)23が所定周期で順次出力する出力値の差分が上記安定差分レベルよりも差分幅が大きい中間差分レベル(値c’)を下回る状態と定めることができる。
【0067】
また、中間状態として、アルコールセンサ24が所定周期で順次出力する検出値が初期の減少変化から増加変化に転じた状態を定めてもよい。また、中間状態として、アルコールセンサ24が所定周期で順次出力する出力値の差分が増加に転じた後、酸素センサ(参考ガス濃度検出部)25が所定周期で順次出力する検出値が予め定められた濃度レベルを上回った状態と定めてもよい。このように、中間状態は、検出器2の初期状態から安定検出可能状態に至る途中の状態で、なおかつ検出器2が検出するアルコール濃度及び参考ガス濃度のいずれか又は双方の検出値に基づいて定められる状態と定めることができ、さらに、撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了した後に検出器2の安定検出可能状態への移行が完了するタイミングとなり、なおかつ撮影装置5の撮影可能状態への移行完了タイミングと検出器2の安定検出可能状態への移行完了タイミングとが時間的にできるだけ近くなるように定めることが望ましい。これにより、撮影装置5における無駄な通電状態(撮影待ち待機時間)を軽減することができる。
【0068】
また、上記実施形態においては、成りすまし判定プログラムにおいて、酒気帯び判定プログラム実行時に撮影された顔画像と、その後に撮影された顔画像とが同一人物の顔画像であるか否かで判定を行っているが、本発明は、酒気帯び判定プログラム実行時に、呼気の検出に伴い顔画像の撮影が実施され、その撮影画像に一定以上の精度が要求される態様を有するような車両用制御装置であれば適用可能である。
【0069】
例えば、車両のユーザーと、その顔画像とを対応付ける形で、予め定められた登録顔画像記憶部(例えば制御部10が有する不揮発性メモリ等)に予め事前登録しておき、酒気帯び判定プログラム実行時に撮影された顔画像と、事前登録されている顔画像とを比較して、アルコール濃度測定時に撮影された顔画像が登録ユーザーであるか否かを判定するユーザー認証を行う車両用ユーザー認証装置のような車両用制御装置にも適用することができる。この場合、酒気帯び判定プログラム実行時に撮影されたユーザーが、事前登録されたユーザーである場合に上記インターロックを解除させ、事前登録されたユーザーではない場合に上記インターロックを作動させるようにしてもよい。事前登録されたユーザーであった場合には、その後に成りすまし判定プログラムを実行しても当然よい。
【0070】
また、酒気帯び判定プログラム実行時に、酒気帯び検出における不正行為の有無の判定(判定手段)を行うようにし、その判定結果と、呼気中のアルコール濃度の算出結果とに基づいて、インターロック装置3による上記インターロックの解除・作動(車両制御手段)を行うようにしてもよい。例えば、酒気帯び判定プログラム実行時に撮影された画像が、運転席Sに着座するユーザーDが検出器2に呼気を吹き込んでいるシーンを写した画像である場合、即ち、運転席Sの一部(例えばヘッドレストの一部)と、そこに着座するユーザーDの顔画像と、検出器2とが同時に特定可能な画像である場合を、酒気帯び検出は不正無く、適切に実施されたと判定し、その判定結果と、酒気帯び判定の結果とに基づいて車両制御を行うようにしてもよい。撮影画像に、運転席Sに着座するユーザーDが検出器2に呼気を吹き込んでいるシーンが撮影されていれば、酒気帯び検出に不正行為は無く、適切に実施されたと判定できるから上記インターロックは解除し、運転席Sに着座するユーザーDが検出器2に呼気を吹き込んでいるシーンが撮影されていなければ、酒気帯び検出に不正行為があった可能性があるとして、上記インターロックを作動させるようにすることができる。
【0071】
また、本発明は、タクシーやトラック、バスなど商用車等において、運行時間中の走行速度などの変化をモニタし、搭載車両の稼動状況を把握可能とする運行記録装置(例えばデジタルタコグラフ)にも適用可能である。この場合、上記実施形態と同様、ドライバに対し酒気帯び判定や成りすまし判定の処理を実施するが、その検査結果情報、さらには判定結果情報は、図11のように、制御部10と通信可能に接続する運行記録装置9の所定記憶部に記憶される。このとき、撮影装置5により撮影される画像についても同様に記録するとよい。アルコール濃度が規定値を上回って検査NGと判定された場合や、不正行為(成りすまし)があったとされた場合には、上記実施形態と同様にインターロックが作動する。そして、音声及び表示のいずれか又は双方にて警告出力も実施し、ドライバに結果を認識させる。インターロックが作動した場合には、ドライバが管理者に連絡して対応を仰ぎ、指示に従い安全確保のための対策がとれるようにする。なお、検査結果情報や判定結果情報を記憶する記憶部は、運行記録装置本体であってもよいし、搬送可能な記憶メディアに記憶して、運行後に記録メディアを運行管理者に提出し、運行管理者が日常の運行管理の一環として検査履歴を確認するようにしてもよい。あるいは図11のように、運行記録装置が搭載する周知の無線通信手段により検査NGや不正行為といった結果情報(NGに限らなくともよい:撮影装置5の撮影画像も含むとよい)を管理端末装置(サーバー等)に自動通報する手段を車両側が備える構成としてもよく、これらを受信する管理端末装置側では、それらの通報情報とドライバ情報とを対応付けて所定記憶部に記憶・蓄積する手段を備えていてもよい。
【0072】
なお、本発明における検出器2は、酒気帯び判定(アルコール濃度測定)を開始するに際し、初期状態から予め定められた安定作動状態に移行させるための検出準備処理を要するものであればよい。例えば、アルコールセンサ24は、半導体センサに限らず、電気化学反応による起電力の変化を利用したものや、アルコール蒸気の分子が特定の波長の赤外線を吸収する特性を利用したものを用いてもよい。本発明の検出準備処理は、加熱等のような、アルコールセンサに対する直接的な処理だけでなく、筐体内部に形成された呼気流路26cの排気処理のような、測定環境を安定化させる処理も検出準備処理に含むことができる。本実施形態のアルコールセンサ24のように、検出準備処理にヒータの加熱処理が含まれる半導体センサのようなセンサあれば、本発明を適用する効果は極めて高い。
【0073】
また、本発明における酒気帯び判定(アルコール濃度測定)の結果に基づく走行制限は、上記実施形態のようなエンジン始動操作の無効化に限られるものではなく、車両に対し少なくとも予め定められた車速レベルを上回る走行を禁止する走行制限であればよい。例えば、エンジンECU6が、車速検出部(図示なし)の検出結果に基づいて、車両の所定速度以上での走行を禁止するようなエンジン駆動制御(噴射制御等)を実施するようにしてもよいし、シフトポジションをドライブポジション(さらにはリバースポジション)に切り替える操作を無効化したり、あるいはパーキングポジションに固定保持されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 飲酒運転防止装置(車両用制御装置)
10 制御部(算出手段、判定手段、車両制御手段、検出準備処理実行手段、中間状態特定手段、撮影準備処理実行手段)
2 検出器(検出手段)
20 検査スイッチ(開始操作部)
21 臭いセンサ
22 湿気センサ
24 アルコールセンサ(アルコール濃度検出部)
23 温度センサ
25 酸素センサ
26 筐体
26a 取込口
26c 呼気流路
26b 排出口
3 インターロック装置
4 報知装置
5 撮影装置(撮影手段)
S 運転席
D ユーザー
G 測定対象気体
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用制御装置、特に飲酒運転防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(例えば自動車等)の飲酒運転は重大な社会問題となっていて、運転者が酒気帯び状態で車両を運転することは厳禁されている。こうした酒気帯び運転を防止するために、近年、車両にアルコール検知装置(アルコール濃度測定装置)を搭載し、運転者が酒気を帯びていないことを確認するためのシステムの開発が進んでいる。
【0003】
この場合に重要となるのが、車両のアルコール検知装置による酒気帯び検査の被験者が本当に運転者であるかどうかであり、別の人間が検査を行うという、いわゆる成りすまし検査ができないようにする必要がある。成りすまし検査を防ぐための技術として例えば、アルコール濃度検査中の人物をカメラによって撮影し、その撮影画像を用いて成りすましを判断する技術がある。この場合、撮影を呼気が検出されたタイミングで行うことにより、その撮影画像に被験者の顔画像を確実に映し出すことができ、上記の成りすまし検査を効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−255766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメラは、電源が投入された後、所定の初期処理を実施した後でなければ撮影可能状態とはならないため、呼気を検出してから実際に撮影がなされるまでにはタイムラグが存在する。呼気を吐き出し終わった者は別の方向を向いてしまうこともあるため、タイムラグがあると、正面を向いた顔画像ではなく、横顔や斜め顔、それ以外の画像等が撮影されてしまう可能性が高くなり、被験者を特定できなくなることがある。かといって、カメラを予め撮影可能状態に準備しておくことは、無駄な電力消費につながり、カメラ寿命が短くなるといった問題がある。
【0006】
特許文献1には、運転者判定を正確に行うことができる映像を取得するために、センサによる運転席の乗員検知と運転者のヘッドレストヘの接触検知を実施し、双方が検知された場合に撮影を行う技術が開示されている。この場合、確かに認証精度は増すものの、センサ数が多くなるため構成が複雑化・高コスト化するという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、構成を複雑化・高コスト化することなく、なおかつ、カメラに無駄な電力を消費させて寿命低下を招かない形で、呼気中のアルコール濃度を検査する被験者の顔画像を確実に撮影できる車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の車両用制御装置は、
測定対象気体中の予め定められたガス濃度を検出する検出手段と、検出されたガス濃度に基づいて測定対象気体に含まれるユーザーの呼気中のアルコール濃度を算出する算出手段と、検出手段に呼気を吹き込むユーザーを撮影する撮影手段と、算出手段の算出結果と撮影手段の撮影画像とに基づいて車両を制御する車両制御手段と、を備える車両用制御装置であって、
検出手段に対し、予め定められた安定検出可能状態に移行させるための検出準備処理を実行させる検出準備処理実行手段と、
検出準備処理中に、検出手段により検出されたガス濃度に基づいて、当該検出準備処理開始直後の初期状態から安定検出可能状態に至る途中の予め定められた中間状態を特定する中間状態特定手段と、
撮影手段に対し、中間状態が特定されるに伴い該撮影手段の主電源をONに切り替え、撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理を実行させる撮影準備処理実行手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
検出手段は、センサの加熱等の暖気処理といった検出前の準備処理があるために、撮影手段よりも準備処理に時間がかかる。上記本発明の構成によれば、検出手段が検出準備処理を開始した後に、依然として主電源OFF状態の撮影手段の主電源がONとされて撮影準備処理を開始するため、撮影手段を無駄に駆動する時間を短くすることができる。また、これにより、呼気を吹き込んでいる最中のユーザーを撮影し易くなる。
【0010】
本発明においては、撮影準備処理の開始トリガーとなる中間状態として、撮影手段の撮影可能状態への移行が完了した後に検出手段の安定検出可能状態への移行が完了するような検出手段の状態を定めることができる。撮影手段の準備処理を開始するきっかけとなる中間状態が、上記のように定められていれば、検出手段が検出可能状態となった後に直ちに検出と撮影の双方を実施可能となるので、ユーザーは待ち時間のストレスを感じることなく、スムーズに検出処理を行うことが可能となる。また、呼気を吹き込まれるに伴い直ちに撮影を行うことができるため、タイムラグもほとんど無く、呼気吹込み中のユーザーの顔を確実に撮影することができる。
【0011】
本発明における検出手段は、ユーザーの呼気を含む測定対象気体中のアルコールの濃度を検出するアルコール濃度検出部と、測定対象気体中の予め定められたアルコール成分以外の参考ガスの濃度を検出する参考ガス濃度検出部とを有して構成される。この場合、算出手段は、検出手段により検出されたアルコール濃度及び参考ガス濃度に基づいて呼気中のアルコール濃度を算出し、車両制御手段は、アルコール濃度算出手段の算出結果と判定手段の判定結果に基づいて車両を制御する。測定対象気体は、予め定められた測定空間内の気体(大気)に呼気を吹き込んだ混合気であるため、そこから検出される混合気中のアルコール濃度を、参考ガス濃度によって補正することにより、呼気中のアルコール濃度をより正確に得ることができる。
【0012】
その参考ガスは、その濃度により測定対象気体中の呼気の含有レベルを推定可能な呼気含有レベル推定可能ガスとすることができ、例えば、酸素及び二酸化炭素のいずれか又は双方とすることができる。検出用に吹き込まれる呼気の量は常に一定であるはずがなく、各測定タイミングにおいて異なる。このため、呼気含有レベル推定可能ガスの濃度に基づいて、測定空間内の気体(大気)に呼気を吹き込んだときの希釈率(大気と呼気の比率)を算出し、これにより、実際に検出されるアルコール濃度を補正することで、呼気中のアルコール濃度を正確に算出することができる。
【0013】
本発明における中間状態特定手段は、検出準備処理中に、検出手段が検出するアルコール濃度及び参考ガス濃度のいずれか又は双方の検出値に基づいて、初期状態から安定検出可能状態に至る途中の予め定められた中間状態を特定するものとできる。検出準備処理中に検出手段から出力される出力信号(検出値)は不安定な値で、この段階の値を用いて測定を行うことは精度上できないが、各検出部が安定検出可能状態に至る出力信号変化には一定の傾向が見られるため、その傾向に応じて中間状態を定めることにより、撮影手段の撮影準備処理の完了タイミングと、検出手段の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的により近くすることができ、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間を軽減することができる。
【0014】
本発明における中間状態特定手段は、中間状態として、アルコール濃度検出部が順次出力する検出値が初期においてはじめて減少変化から増加変化に転じた後の状態、あるいは初期においてはじめて増加変化から減少変化に転じた後の状態を特定するものとできる。アルコール濃度検出部は、検出準備処理中において、出力信号(検出値)が初期値から一端減少し、後に再び上昇して値が飽和し、安定状態(検出可能状態)となる傾向、あるいは、出力信号(検出値)が初期値から一端減少し、後に再び上昇して値が飽和し、安定状態(検出可能状態)となる傾向を有しており、検出値の差分が増加から減少へ、あるいは減少から増加へとはじめて転じた後の状態を中間状態として定めることにより、撮影手段の撮影準備処理の完了タイミングと、検出手段の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的に近くすることができ、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間を軽減することができる。
【0015】
本発明においては、安定検出可能状態として、少なくともアルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った状態を定めることができ、この場合、中間状態特定手段は、中間状態として、少なくともアルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が上記安定差分レベルよりも差分範囲が大きい中間差分レベルを下回った場合を特定するものとできる。アルコール濃度検出部は、検出準備処理中において、出力信号(検出値)が初期値から一端減少(又は増加)し、後に再び上昇(又は下降)して値が飽和し、安定状態(検出可能状態)となる傾向を有しており、検出値の差分(増分)が増加(又は減少)に転じ、さらに差分がある値を下回るような安定した段階に達した状態を中間状態として定めることにより、撮影手段の撮影準備処理の完了タイミングと、検出手段の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的により近くすることができ、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間を軽減することができる。
【0016】
本発明においては、安定検出可能状態として、少なくともアルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った状態を定めることができ、この場合、中間状態特定手段は、中間状態として、少なくとも参考ガス濃度検出部が順次出力する検出値が予め定められた濃度レベルを上回った場合を特定するものとできる。その参考ガスは、その濃度により測定対象気体中の呼気の含有レベルを推定可能な呼気含有レベル推定可能ガスとすることができ、例えば、酸素及び二酸化炭素のいずれか又は双方とすることができる。大気中に含まれる参考ガスを検出する検出部は、検出準備処理中において、出力信号(検出値)が初期値から増加していく傾向を有しており、その検出値が一定レベルを上回ったタイミングを中間状態として定めることにより、撮影手段の撮影準備処理の完了タイミングと、検出手段の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的により近くすることができ、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間を軽減することができる。
【0017】
本発明においては、安定検出可能状態を特定する安定検出可能状態特定手段と、安定検出可能状態が特定されるに伴い呼気の吹き込みを促す旨の報知を行う報知手段とを備えて構成できる。これにより、呼気吹き込みタイミングをユーザーが把握できるし、このとき既に、撮影手段も撮影可能状態になっているため、ユーザーを確実に撮影することもできる。
【0018】
本発明における中間状態特定手段は、アルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った場合を安定検出可能状態として特定する一方、参考ガス濃度検出部が順次出力する検出値が予め定められた濃度レベルを上回った場合を中間状態として特定するものとできる。
【0019】
本発明におけるアルコール濃度検出部は、測定対象気体中のアルコールの接触により電気抵抗が変化する半導体素子を有した半導体方式のアルコールセンサとすることができる。
【0020】
本発明による検出準備処理実行手段は、検出手段の開始操作部がユーザーにより操作されるに伴い検出手段に対し検出準備処理を実行させるものとできる。これにより、開始操作部が操作されたタイミングで検出手段の検出準備処理が実行され、さらにその後に、撮影手段の撮影準備処理が開始することになり、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間が軽減される。
【0021】
本発明においては、撮影手段の撮影画像に基づいて検出手段による不正行為の有無を判定する判定手段を備え、車両制御手段は、算出手段の算出結果と判定手段の判定結果とに基づいて車両を制御するものとできる。これにより、呼気中のアルコール濃度を検査する被験者の顔画像を確実に撮影することが可能となり、成りすまし検査を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の車両用制御装置の一実施形態である飲酒運転防止装置の構成を示すブロック図。
【図2】検出器本体の外観を簡略的に示す斜視図。
【図3】図1の飲酒運転防止装置を搭載した車両の車内図。
【図4】検出器本体の内部構成を簡略的に示す断面図。
【図5】アルコールセンサの電気的構成を説明するためのブロック図。
【図6】アルコールセンサの回路構成を示す図。
【図7】酸素センサモジュールの出力を示すグラフ。
【図8】酒気帯び判定プログラムの流れを示すフローチャート。
【図9】初期状態から安定検出可能状態、さらには呼気検出状態に至る検出器の出力例を示すグラフ。
【図10】成りすまし判定処理の流れを示すフリーチャート。
【図11】図1とは異なる本発明の車両用制御装置の実施形態の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の車両用制御装置の一実施形態である飲酒運転防止装置について図面を用いて説明する。
【0024】
図1は、本実施形態における飲酒運転防止装置の構成を示すブロック図、図3は、図1の飲酒運転防止装置が搭載された運転席の概略図、図2は、図1の検出器を簡略的に示す斜視図、図4は、図2の内部構成を簡略的に示す断面図、図5は、図2のアルコールセンサの機能を示す説明図である。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態における飲酒運転防止装置1は、車両(ここでは自動車)の運転席Sに着座したユーザー(運転者)Dの呼気に含まれるアルコール濃度を測定するために、測定対象気体G中の予め定められたガス濃度を検出する検出器(検出手段)2を有し、制御部10が、検出器2によって検出されたガス濃度に基づいて、ユーザーDの呼気中のアルコール濃度を算出する(算出手段)。また、飲酒運転防止装置1は、検出器2に呼気を吹き込む最中のユーザーDを撮影する撮影装置(撮影手段)5を有し、制御部10が、撮影装置5の撮影画像に基づいて検出器2による不正検出行為の有無を判定する(判定手段)。また、制御部10は、呼気中のアルコール濃度の算出結果と、不正検出行為の有無の判定結果とに基づいて、車両を制御する車両制御手段としても機能する。ここでは、上記の算出結果と判定結果とに基づいて、車両における予め定められた走行制限をインターロック装置3に実行させる。
【0026】
検出器2は、筐体26と、呼気中のアルコール濃度の測定を開始するタイミングでユーザー操作される検査スイッチ(開始操作部)20とを有し、制御部10に対し周知の通信手段(ここでは有線接続)により接続されている。検査スイッチ20は、呼気を取込口26aから筐体内部へ取り込むときにユーザーによりON操作され、ON操作されると制御部10に操作信号が入力される。そして、これに伴い制御部10は、検出器2に対し後述する検出準備処理を実行させる制御指令信号を出力する。
【0027】
検出器2の筐体26は、図2及び図4に示すように、運転者の呼気を取り込むための取込口26hと、取り込まれた呼気を外部へ排出するための排出口26bとを有する。運転者Dが筐体26を把持して取込口26aに口を近づけて呼気を吹きかけると、取り込まれた呼気が、筐体内部に形成された呼気流路26cを通って排出口26bへ向けて流動する。
【0028】
なお、本発明における測定対象気体Gとは、検出器2の筐体内部に存在する気体のことであり、呼気流路26cを通過する気体のことである。呼気中のアルコール濃度を測定する際には、筐体内部に吹き込まれた呼気と、呼気とは別に筐体内部に存在していた気体の混合気が測定対象気体Gである。
【0029】
呼気流路26cの内部には、図4に示すように、ユーザーUの呼気を含む測定対象気体G中のアルコールの濃度を検出するアルコールセンサ(アルコール濃度検出部)24と、測定対象気体G中の予め定められたアルコール成分以外のガスであって呼気中のアルコール算出に用いられる参考ガスの濃度を検出するガスセンサ(参考ガス濃度検出部)21〜23,25を有する。参考ガスは、その濃度により測定対象気体G中の呼気の含有レベルを推定可能な呼気含有レベル推定可能ガスとすることができ、例えば、酸素及び二酸化炭素のいずれか又は双方とすることができる。ここでは、呼気含有レベル推定可能ガスとして酸素の濃度を検出する酸素センサ25が設けられている。この他、参考ガスの濃度を検出するガスセンサとして、流路26c内の臭い(即ち、測定対象気体Gの臭い)を検出する臭いセンサ21、流路内の湿度(即ち、測定対象気体Gの湿度)を検出する湿気センサ22、流路内の温度(即ち、測定対象気体Gの温度)を検出する温度センサ23を備え、これらの検出値が制御部10に出力される。これらのセンサ21〜25はいずれも周知のものであり、呼気流路26c内に突出した形態で図示しない基板上に実装されている。
【0030】
ここでのアルコールセンサ24は、測定対象気体G中のアルコールの接触により電気抵抗が変化する半導体素子を有した半導体方式のアルコールセンサであり、具体的にいえば、白金製のコイル24Dに酸化スズ等の金属酸化物24Cをコーティングしてなる半導体センサである。金属酸化物24Cには検出回路24Bが接続され、コイル24Dには電源回路24Aが接続されている。アルコールセンサ24は制御部10からの制御指令信号を受けると、電源回路24Aのスイッチ24SがONとなってコイル24Dが通電され、これにより、金属酸化物24Cが所定温度に加熱され、金属酸化物24Cの表面に付着した水蒸気や異物が除去される(エージング)。
【0031】
ここでアルコールセンサ24の機能について説明する。大気中(アルコール成分を含まない又は非常に少ない空気状態)では、空気中の酸素原子と金属酸化物(酸化スズ)24C中の電子が結合しているため、金属酸化物24Cには電気が流れにくい状態となっている。このとき、コイル24Dに電流を流し、金属酸化物24Cを所定温度に加熱する検出準備処理を実施する。検出準備処理が完了した状態で金属酸化物24Cにアルコール分を含む呼気が接触すると、呼気中のアルコール分と表面の酸素原子とが反応し、金属酸化物24C中の電子と結合している酸素原子が剥ぎ取られる。これにより、金属酸化物24C中の電子が自由になって電気が流れるようになる。この変化を検出回路24Bにて検出し、金属酸化物24Cの電気抵抗値の変化を計測することにより、アルコール濃度が測定される。
【0032】
アルコールセンサ24は、アルコール成分以外の匂いに関するガス成分に反応してセンサ抵抗RSが変化することがある。このため、匂いの影響を回避するために、臭いセンサ21が用いられている。臭いセンサ21は、アルコールセンサ24のセンサ抵抗RSに影響を及ぼす妨害ガス濃度を検出し、その検出値としてのセンサ抵抗RSを出力する半導体センサである。なお、臭いセンサ21もアルコールセンサ24と同様の半導体センサであり、図3に示したアルコールセンサ24と同様に構成されている。
【0033】
温度センサ23は、例えば「サーミスタ」と称され、ニッケル、コバルト、マンガン等の酸化物よりなる半導体センサである。呼気の温度は、運転者による呼気の吹きかけ方法によって変化する。例えば、運転者が吹きかけた呼気が運転者の体内(肺)から生じたものである場合、その温度は高く、しかもアルコール成分を含んでいるか否かの判定が容易である。しかし、運転者の口腔内から生じたものであったり、風船等を使用した不正手段によって吹き付けたものであったりする場合、その温度は低い。また、外気温によっても変化する。このため、温度センサ23が検出する温度の変化をモニタすることにより、運転者の肺からの呼気であるか否かを判定することができる。
【0034】
湿気センサ22は、空気中の水分量に応じてセンサ素子の導電率や静電容量が変化することにより、当該空気の湿度を計測するもの(例えば、容量変化型湿気センサ)である。アルコールセンサ24は、大気中の湿度に反応する場合があり、酒気帯び状態でなくてもアルコールセンサ24は反応する。このため、湿気センサ22が検出する湿度の変化をモニタすることにより、アルコールセンサ24が大気中の湿度や通常状態の呼気中のアルコール成分を検出した場合でも、それらの検出値を採用しないようにすることができる。
【0035】
酸素センサ25は、車室内の大気と混ざり合うことによって希釈される呼気の酸素濃度を検出するものであり、アルコールセンサ24と同様の半導体センサである。図7は、その酸素センサの出力を示すグラフである。車室内の空気中の酸素濃度は、天候や乗員の数が変化してもほぼ一定である。呼気中の酸素濃度は、大気によって希釈された場合であっても大気の酸素濃度よりも低い。このため、酸素センサ25が検出する酸素濃度の変化をモニタすることにより、呼気であるか否かを判定することができる。
【0036】
この酸素センサ25は、運転者によって吹きかけられた呼気が大気で希釈された場合に、その希釈率(呼気含有レベル)を算出して、算出されたアルコール濃度を補正するために用いられる。以下、酸素センサ25を用いたアルコール濃度の補正の考え方について説明する。
【0037】
運転者によって吹きかけられた呼気は、検出器2内に取り込まれることになるが、その呼気と同時にいくらかの車室内の大気も取り込まれる。したがって、同時に取り込まれた大気によって呼気が希釈されるので、アルコールセンサ24のセンサ抵抗RSに基づいて計算されたアルコール濃度は、実際のアルコール濃度よりも小さな値となる。そこで、呼気の希釈率を算出し、その希釈率に応じて算出したアルコール濃度を補正するようにしている。
【0038】
大気中では、酸素濃度が約20.6%、二酸化炭素濃度が約0.03%を占め、水分量(水蒸気)は湿度や気温等で変化することに起因して不定となっている。一方、呼気中(大気により希釈されない場合)では、酸素濃度が約15.2%、二酸化炭素濃度が約5%を占め、水分量は呼吸深度や気温等で変化することに起因して不定となっている。このように、大気中と呼気中とでは各ガス濃度が異なっているため、検出器2内に取り込まれた混合気(空気と混ざり合った呼気)の各参考ガス濃度を測定することにより、呼気がどの程度大気で希釈されているのかを判断することができる。
【0039】
この場合、各ガス濃度のうち、酸素濃度は、大気中、呼気中ともに成分量が安定しているので、酸素濃度を比較すれば正確な希釈率を算出しやすいと考えられる。即ち、検出器2内に取り込まれた混合気の酸素濃度が、例えば15.2%であったとすると、大気により希釈されないときの呼気中の酸素濃度15.2%と同じであるので、大気による希釈がないものと判断することができる。
【0040】
そこで、検出器2においては、取り込まれた混合気の酸素濃度を酸素センサ25で測定し、測定した酸素濃度と大気中の酸素濃度(例えば20.6%)との差分b(図5ではb=2.7%を例示)を算出する。そして、大気中の酸素濃度(例えば20.6%)と希釈がないときの呼気中の酸素濃度(例えば15.2%)との差分をa(=5.4%)とすれば、希釈率はb/aで算出することができる。これにより、算出したアルコール濃度を希釈率(b/a)で除算すれば、アルコール濃度を補正することができる。
【0041】
さらに、臭いセンサ21の検出値に基づいて妨害ガスの影響を除去するとともに、温度センサ23及び湿気センサ22の各検出値に基づいて検出対象として不適切な呼気を除外することにより、算出されるアルコール濃度のばらつきが小さくなって、実際のアルコール濃度とほぼ同じ値が得られるようになる。なお、希釈率は、取り込まれた混合気の湿度によって求めることもできるので、酸素濃度と湿度の両方で希釈率を求めるようにしてもよい。
【0042】
撮影装置5は、例えばCCD(Charge Coupled Device)や、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサを備えた赤外線カメラである。ここでは、運転席に着座するユーザーの頭部を正面から撮影され、顔の正面が写るように撮影装置5が設置されている。具体的にいえば、検出器2に呼気を吹き込む最中の運転手Dの顔部を撮影できるよう、例えば図3に示すように、インストルメントパネルIの上部に設置されている。この撮影装置5は、制御部10からの起動信号の入力を受けて電源投入され、それまで継続されていた主電源OFF状態から主電源ON状態となり、これに続いて、撮影指令信号の入力に伴い直ちに撮影ができるような撮影可能状態に移行するための撮影準備処理(周知のオートゲイン制御や画像処理部(画像デバイス)の起動・初期化処理等)を実行する。本実施形態のようなリモートセキュリティシステムでは、撮影装置への通電は撮影時のみとなっており、暗電流が減じられている。
【0043】
報知装置4は、例えばスピーカと音声合成回路とを備えた音声出力装置とすることができる。音声出力装置は、制御部10からの報知出力指令に応じて、メモリ内に予め記憶された音声データに基づいて、計測されたアルコール濃度が予め定められた設定値以上であるか否か、即ち酒気帯び状態であるか否か、さらには、その計測結果に基づく走行制限状態について、音声メッセージにより出力する。また、報知装置4は、表示装置とすることも可能であり、例えば運転席の前方の速度メータやエンジン回転数メータ等の各種メータが配置されたメータパネルに設けることができる。表示装置は、制御部10からの報知出力指令に応じて、計測されたアルコール濃度が予め定められた設定値以上であるときは酒気帯び状態に該当するため車両の走行が禁止されている旨(例えばエンジンが始動不能となっている旨)のメッセージを表示する一方、設定値未満であるときは酒気帯び状態に該当しないため車両の走行が可能である旨(例えばエンジンが始動可能である旨)のメッセージを表示する。報知装置4としては、上記の音声出力装置と表示装置のいずれか又は双方であればよい。また、異なる色のLEDの点灯状態により、計測されたアルコール濃度が予め定められた設定値以上であるか否か(即ち酒気帯び状態であるか否か)を報知する簡易な構成のものでもよい。
【0044】
制御部10は、CPU、ROM、RAM、入出力部(I/O)、通信部等を主要構成部品とし、エンジンECU6を含む各種制御部に対し車載LAN7を介して接続する。制御部10は、ROM等のメモリに記憶されている酒気帯び判定プログラムを実行することにより、検出器2からの検出信号に基づいてアルコール濃度を算出するとともに、その算出結果が酒気帯び状態に該当する場合には、車両に走行制限(例えば走行禁止)を設けるためのとする走行制限信号を、車載LAN7を介して接続するインターロック装置3に出力する一方、その算出結果が酒気帯び状態に該当しない場合には、上記走行制限を解除するとする走行制限解除信号を、車載LAN7を介して接続するインターロック装置3に出力する。そして、上記報知装置4に対し上記算出結果に応じた車両制御が実施される旨を報知出力させる。
【0045】
インターロック装置3は、制御部10からの指令(走行制限信号/走行制限解除信号)に基づいて、ドライバによる運転操作が禁止又は制限されるように車両に対し予め定められた走行制限を設定・実行するものである。走行制限としては、少なくとも車両の走行速度を予め定められた速度レベルを下回るように制限したり、走行そのものが禁止されるような制限であればよい。ここでは、エンジンECU6に対し車両に搭載されたエンジンの始動を禁止させる制限設定を行うものとする。このため、ユーザーのIG−ON操作(イグニッションスイッチをONする操作)があり、その信号入力をエンジンECU6が受けたとしても、制御部10において酒気帯び状態に該当しないと判定されていなければ、インターロック装置3により、エンジンを始動することができない。
【0046】
ところで、本実施形態における飲酒運転防止装置1は、制御部10が酒気帯び判定プログラムを実行することにより、以下の処理が実行されることを特徴とする。即ち、検出器2に対し、初期状態から予め定められた安定検出可能状態に移行させるための検出準備処理を実行させるとともに(検出準備処理実行手段)、その検出準備処理中に、検出器2の検出情報(検出値)に基づいて、初期状態(検出準備処理開始直後の状態)から安定検出可能状態に至る途中の予め定められた中間状態を特定して(中間状態特定手段)、その中間状態が特定されるに伴い、検出準備処理が開始されても依然として主電源が投入されていない撮影装置に対し主電源を投入し、該撮影装置5を撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理を実行させるとともに、撮影及び撮影画像の保存が終了するに伴い直ちに、最終的に主電源OFFに至る電源オフ準備処理を実行させる(撮影制御手段)ように構成されている。そして、検出器2は、センサの加熱等の暖気処理等があるために、撮影手段よりも準備処理に時間がかかることを考慮し、撮影準備処理の開始トリガーとなる中間状態として、撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了した後に検出器2の安定検出可能状態への移行が完了するような状態を定めている。これにより、検出器2が検出可能状態となった後に直ちに検出と撮影の双方を実施可能となるので、ユーザーは待ち時間のストレスを感じることなく、スムーズに検出処理を行うことが可能となる。また、呼気を吹き込まれるに伴い直ちに撮影を行うことができるため、タイムラグもほとんど無く、呼気吹込み中のユーザーの顔を確実に撮影することができる。
【0047】
ここで、制御部10が実行する酒気帯び判定プログラムについて、図8を用いて説明する。
【0048】
まず、制御部10は、IGスイッチのON操作の有無を判定する(S1)。なお、この段階では、ON操作が検出されたからといってエンジンが始動することはなく、アクセサリ電源(ACC電源)のみがON状態となる。なお、このIGスイッチのON操作(IG−ONの信号入力)が、酒気帯び判定プログラムを開始するトリガー操作となっているが、これはIGスイッチのON操作に限られず、車両走行開始前に必須に実施される予め定められた走行準備操作(例えばシートベルトの装着等)であればよい。
【0049】
IGスイッチのON操作がなされると(IG−ONの信号入力があると)、制御部10は、検出器2の検査スイッチ(開始操作部)がユーザーにより操作されたか否かを判定する(S2)。検査スイッチ(開始操作部)が操作されると、制御部10は、検出器2に対し、初期状態から予め定められた安定検出可能状態に移行させるための検出準備処理を実行させる制御指令信号を出力する(S3:検出準備処理実行手段)。これにより、ここでは検出器2において、上述した加熱処理が開始される。この検出準備処理が開始されると、制御部10は、それが終わるよりも前に定められた所定のタイミングを特定し(S4:中間状態特定手段)、そのタイミングで撮影装置5の主電源を投入(ON)する制御指令信号を出力する(S5:撮影準備処理実行手段)。これにより、撮影装置5において主電源が投入され、撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理が開始される。
【0050】
ここで、撮影装置5の主電源を投入し、撮影準備処理を開始させるタイミングについて説明する。撮影準備処理を開始させるタイミングは、撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了した後に検出器2の安定検出可能状態への移行が完了するような、検出器2の中間状態が検出されたタイミングとして予め定められており、S4では、そのタイミングの到来の有無を判定している。ここでの中間状態は、検出準備処理中の検出器2の各センサ21〜25が出力する検出値のいずれか又は複数に基づくタイミングとして定められており、制御部10は、それらセンサ21〜25から順次出力されてくる検出値をモニタして、そのタイミングの到来を判断する。検出準備処理中に検出器2から出力される出力信号(検出値)は不安定な値であり、この段階の値を用いて測定を行うことは精度上できないが、各センサ21〜25が安定検出可能状態に至る出力信号変化には一定の傾向が見られるため、その傾向に応じて中間状態が予め定められている。これにより、撮影装置5の撮影準備処理の完了タイミングと、検出器2の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的により近くすることができ、撮影手段における無駄な撮影準備待ち待機時間を軽減することができる。
【0051】
本実施形態においては、アルコールセンサ24が所定周期で順次出力(モニタリング出力)する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った場合を安定検出可能状態として定める一方、同じくアルコールセンサ24が所定周期で順次出力(モニタリング出力)する検出値の差分が上記安定差分レベルよりも大きい中間差分レベルを下回った場合を中間状態として定めている。アルコールセンサ24の回路構成は図6に示すようになっており、初期においてはセンサ抵抗RSが非常に大きいため、図9(a)に示すように、アルコールセンサ24の出力値(AD値)の初期値は最終的な飽和値よりも大きな値から始まる。そして、初期の加熱処理が始まると、アルコールセンサ24の出力値(AD値)は一度大きく検出値が減少した後に増加に転じ、そこから徐々に増加する形で最終的に飽和値へと接近する傾向がある。このため、検出値の差分が増加に転じた後、その差分(増加変化量)がある値aを下回るような安定した段階となったタイミングを中間状態として定めている。これにより、撮影装置5の撮影準備処理の完了タイミングと、検出器2の安定検出可能状態に移行完了するタイミングとを、時間的により近くすることができ、検出器2が安定検出可能状態となったときに直ちに、撮影装置5による撮影も可能となる。なお、ここでの安定検出可能状態は、アルコールセンサ24の差分(増加変化量)aが上記の中間状態を定める値aを下回る値a’を下回った、より安定した状態(飽和状態)として定められ、なおかつ他のセンサ21〜23,25も、アルコールセンサ24が安定検出可能状態となった際には同じく安定検出可能状態となるような状態として定められている。
【0052】
なお、本実施形態においては、撮影装置5の主電源投入から撮影準備処理の完了までに約2秒を要するため、撮影装置5の主電源を投入し、撮影準備処理を開始させるタイミングは、検出器2の安定検出可能状態に移行完了するタイミングから2秒よりも前のタイミングとなるように、検出器2の中間状態が定められている。
【0053】
また、本実施形態においては、アルコールセンサ24の回路構成が図6に示すようにプルアップされているため、出力値(AD値)は図9に示すような傾向を示しますが、プルダウンの回路構成とすることも可能であり、この場合の出力値(AD値)は、図9を上下反転した傾向として現れる。即ち、アルコールセンサ24の出力値(AD値)の初期値は最終的な飽和値よりも小さな値から始まる。そして、初期の加熱処理が始まると、アルコールセンサ24の出力値(AD値)は一度大きく検出値が増加した後に減少に転じ、そこから徐々に減少する形で最終的に飽和値へと接近する傾向として現れる。この場合、検出値の差分が減少に転じた後、その差分(減少変化量)がある値を下回るような安定した段階となったタイミングを中間状態として定めることができる。
【0054】
図8のS5に戻る。撮影準備処理が開始した後(S5)、検出器2の安定検出可能状態を特定する、即ち検出器2の検出準備処理が完了すると(安定検出可能状態特定手段)、報知装置4によって検出準備が完了した旨を音声及び表示のいずれか又は双方により報知出力する(S6:報知手段)。ここでは、検出準備が完了したことを直接的に報知するのではなく、検出器2の取込口26aから呼気を吹きかけるよう促す旨の報知を行う。
【0055】
検出準備処理が完了すると、制御部10は、呼気が吹き込まれたか否かを判定する(S7)。呼気が吹き込まれたか否かは、酸素センサの検出値から判断することができ、検出値が予め定められた設定値以上となった場合に呼気が吹き込まれたと判断する。なお、呼気が吹き込まれたか否かの判定は、呼気が検出されるまで予め定められた一定期間の間繰り返し実施され(S14:Yes)、一定期間が経過しても呼気が検出されない場合は(S14:No)、報知装置4によってエラー終了の旨を音声及び表示のいずれか又は双方により報知出力し、本処理をエラー終了とする。
【0056】
制御部10は、呼気が吹き込まれたと判定すると、撮影装置5による撮影を実施させる制御信号を出力し、撮影装置5によって撮影された画像を取得して制御部10の所定メモリ内に保存する(S8)。そして、保存が完了するに伴い直ちに撮影装置5を電源OFFする制御指令信号を出力する(S9:電源オフ手段)。これにより、撮影装置5のシャットダウン処理(電源オフ準備処理)が開始し、最終的に撮影装置5の主電源がOFFされる。一方で、制御部10は、呼気が吹き込まれたと判定すると、このときに各ガスセンサ21〜26から入力された検出値をRAM等に記憶し、呼気中のアルコール濃度の算出を行う(S10)。
【0057】
S10のアルコール濃度の算出について説明する。検出器2の取込口26aに吹き込まれた呼気は、大気(車室内の空気)あるいは筐体11内の空気と混ざり合って内部流路26cへ流入する。取り込まれた混合気は、呼気流路26cの下流側へ送り出され、アルコールセンサ24、匂いセンサ21、温度センサ23、湿気センサ22及び酸素センサ25と接触しながら呼気流路26cを通過し、排出口26bから排出される。制御部10は、アルコールセンサ24の検出値に基づいて測定対象気体G中のアルコール濃度を算出し、算出したアルコール濃度を希釈率で除算することでアルコール濃度を補正し、これにより、ユーザーにより吹き込まれた呼気中のアルコール濃度を得る。
【0058】
S10に戻る。アルコール濃度の算出が完了すると、算出されたアルコール濃度に基づいて運転者の酒気帯び状態を判定する(S11)。酒気帯び状態に該当する場合には(S11:Yes)、車両に走行制限(例えば走行禁止)を設けるためのとする走行制限信号をインターロック装置3に出力し(S12)、インターロックを継続する一方、その算出結果が酒気帯び状態に該当しない場合には(S11:No)、上記走行制限を解除するとする走行制限解除信号をインターロック装置3に出力し、インターロックを解除する(S13)。ここでは、酒気帯び状態にあると判定した場合は、エンジン始動を禁止するインターロックを作動するとともに、報知装置4によってエンジンが始動不能である旨を音声及び表示のいずれか又は双方で報知出力させる一方、運転者が酒気帯び状態にないと判定した場合、エンジン始動が許可されるようインターロックを解除するとともに、報知装置4によってエンジンが始動可能である旨を音声及び表示のいずれか又は双方で報知出力させる。ここでは算出されたアルコール濃度の情報が、報知装置4をなす表示装置において表示される(S15:表示手段)。
【0059】
次に、制御部10が実行する成りすまし判定プログラム(判定手段)について、図10を用いて説明する。
【0060】
図8においてインターロックが解除されてエンジン始動操作した後、制御部10は、予め定められた監視撮影タイミングの到来の有無を判定する(S21)。ここでの監視撮影タイミングは、エンジン始動後、所定周期で到来するものとしてもよいし、エンジン始動後において予め定められた運転操作がなされたタイミングとしてもよい。監視撮影タイミングの到来があった場合には、制御部10は、撮影装置5の主電源を投入する制御指令信号を出力し、これにより、該撮影装置5を撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理を開始させる(S22:S5と同様)。
【0061】
撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了すると直ちに撮影が実施され、撮影された画像が、酒気帯び判定プログラムの実行時において撮影された画像とは別に保存される(S23)。そして、酒気帯び判定プログラムの実行時において事前に撮影された画像において特定されるユーザーと、今回撮影された画像において特定されるユーザーが同一人物であるか否かの判定処理、即ち成りすまし判定がなされる(S24)。ここでは、今回撮影された顔画像のデータから特徴部を抽出するとともに、これを事前に撮影された被験者本人の顔画像のデータから抽出される特徴部とを比較して、今回撮影されたユーザーが事前に撮影されたユーザーと同一人物であるか否かを判定する。同一人物であれば検査OK(成りすまし無し)となり、酒気帯び判定プログラムにおいて解除されたインターロックの解除状態が継続する一方、同一人物でなければ検査NG(成りすまし有り)となり、音声及び表示のいずれか又は双方により、警告出力と、酒気帯び判定プログラムに基づく再度の酒気帯び判定の実施を促す旨の報知出力とを報知装置4に実施させ、上述のインターロックを作動させる。
【0062】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。以下、上記実施形態とは異なる実施形態について説明する。なお、共通の構成部分いついては上記実施形態と同様の符号を付することで説明を省略する。
【0063】
例えば、上記実施形態においては、検出器2における安定検出可能状態を、アルコールセンサ24が順次出力(モニタリング出力)する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った状態と定める一方、撮影準備処理の開始トリガーとなる中間状態として、アルコールセンサ24が順次出力(モニタリング出力)する検出値の差分が上記安定差分レベルよりも差分幅が大きい中間差分レベルを下回った状態と定めているが、本発明はこれらに限られるものではなく、少なくとも安定検出可能状態と中間状態とが、検出器2が検出するアルコール濃度及び参考ガス濃度のいずれか又は双方の検出値に基づいて定められていればよい。ただし、中間状態は、検出器2の初期状態から安定検出可能状態に至る途中の状態(初期状態と安定検出可能状態とを含まない)として定められ、撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了した後に検出器2の安定検出可能状態への移行が完了するようなタイミングとなる状態と定めるとよい。
【0064】
ここで、上記実施形態における検出器2が有する各センサ21〜25の初期状態から安定検出可能状態に至るまでの傾向を、図9を用いて簡単に説明する。臭いセンサ21の検出値は、図9(b)に示すように、初期状態からある程度の増加を生じた後、急激に減少し、その後、徐々に増加する形で飽和値へと向かう変化を有する。湿気センサ22は、図9(c)に示すように、初期状態からわずかな急増を生じた後、わずかな増加を生ずる形で飽和値へと向かう変化を有する。温度センサ23は、図9(d)に示すように、初期状態から鋭く飽和値に近い値まで急増した後、ほんのわずかな減少を生ずる形で飽和値へと向かう変化を有する。アルコールセンサ24の検出値は、図9(a)に示すように、初期状態から急激に減少し、その後、臭いセンサ21よりも鋭く増加変化を生じる形で、徐々に飽和値へと向かう変化を有する。酸素センサ25の検出値は、図9(e)に示すように、初期状態からわずかな減少を生じた後、急激に増加し、その後、徐々にわずかな減少を生ずる形で飽和値へと向かう変化を有する。
【0065】
このような初期傾向を見せる各センサ21〜25を有する検出器2を備えるため、検出器2における安定検出可能状態と、撮影装置5の撮影準備処理の開始トリガーとなる中間状態とを、例えば以下のように定めることもできる。
【0066】
例えば、センサ21〜25のうち複数のセンサを用いて、安定検出可能状態と中間状態とを定めることができる。これにより、一種のセンサだけではなく、複数のセンサにより状態を判定するため、より確実な状態検出が可能となる。具体的にいえば、安定検出可能状態を、アルコールセンサ24が所定周期で順次出力する出力値の差分が増加に転じた後予め定められた安定差分レベル(値a)を下回り、かつ同時に酸素センサ(参考ガス濃度検出部)25が所定周期で順次出力する出力値の差分が予め定められた安定差分レベル(値b)を下回り、かつ同時に湿気センサ(参考ガス濃度検出部)23が所定周期で順次出力する出力値の差分が予め定められた安定差分レベル(値c)を下回る状態と定め、他方、中間状態として、アルコールセンサ24が所定周期で順次出力する検出値の差分が増加に転じた後上記安定差分レベルよりも差分幅が大きい中間差分レベル(値a’)を下回り、かつ同時に酸素センサ(参考ガス濃度検出部)25が所定周期で順次出力する出力値の差分が上記安定差分レベルよりも差分幅が大きい中間差分レベル(値b’)を下回り、かつ同時に湿気センサ(参考ガス濃度検出部)23が所定周期で順次出力する出力値の差分が上記安定差分レベルよりも差分幅が大きい中間差分レベル(値c’)を下回る状態と定めることができる。
【0067】
また、中間状態として、アルコールセンサ24が所定周期で順次出力する検出値が初期の減少変化から増加変化に転じた状態を定めてもよい。また、中間状態として、アルコールセンサ24が所定周期で順次出力する出力値の差分が増加に転じた後、酸素センサ(参考ガス濃度検出部)25が所定周期で順次出力する検出値が予め定められた濃度レベルを上回った状態と定めてもよい。このように、中間状態は、検出器2の初期状態から安定検出可能状態に至る途中の状態で、なおかつ検出器2が検出するアルコール濃度及び参考ガス濃度のいずれか又は双方の検出値に基づいて定められる状態と定めることができ、さらに、撮影装置5の撮影可能状態への移行が完了した後に検出器2の安定検出可能状態への移行が完了するタイミングとなり、なおかつ撮影装置5の撮影可能状態への移行完了タイミングと検出器2の安定検出可能状態への移行完了タイミングとが時間的にできるだけ近くなるように定めることが望ましい。これにより、撮影装置5における無駄な通電状態(撮影待ち待機時間)を軽減することができる。
【0068】
また、上記実施形態においては、成りすまし判定プログラムにおいて、酒気帯び判定プログラム実行時に撮影された顔画像と、その後に撮影された顔画像とが同一人物の顔画像であるか否かで判定を行っているが、本発明は、酒気帯び判定プログラム実行時に、呼気の検出に伴い顔画像の撮影が実施され、その撮影画像に一定以上の精度が要求される態様を有するような車両用制御装置であれば適用可能である。
【0069】
例えば、車両のユーザーと、その顔画像とを対応付ける形で、予め定められた登録顔画像記憶部(例えば制御部10が有する不揮発性メモリ等)に予め事前登録しておき、酒気帯び判定プログラム実行時に撮影された顔画像と、事前登録されている顔画像とを比較して、アルコール濃度測定時に撮影された顔画像が登録ユーザーであるか否かを判定するユーザー認証を行う車両用ユーザー認証装置のような車両用制御装置にも適用することができる。この場合、酒気帯び判定プログラム実行時に撮影されたユーザーが、事前登録されたユーザーである場合に上記インターロックを解除させ、事前登録されたユーザーではない場合に上記インターロックを作動させるようにしてもよい。事前登録されたユーザーであった場合には、その後に成りすまし判定プログラムを実行しても当然よい。
【0070】
また、酒気帯び判定プログラム実行時に、酒気帯び検出における不正行為の有無の判定(判定手段)を行うようにし、その判定結果と、呼気中のアルコール濃度の算出結果とに基づいて、インターロック装置3による上記インターロックの解除・作動(車両制御手段)を行うようにしてもよい。例えば、酒気帯び判定プログラム実行時に撮影された画像が、運転席Sに着座するユーザーDが検出器2に呼気を吹き込んでいるシーンを写した画像である場合、即ち、運転席Sの一部(例えばヘッドレストの一部)と、そこに着座するユーザーDの顔画像と、検出器2とが同時に特定可能な画像である場合を、酒気帯び検出は不正無く、適切に実施されたと判定し、その判定結果と、酒気帯び判定の結果とに基づいて車両制御を行うようにしてもよい。撮影画像に、運転席Sに着座するユーザーDが検出器2に呼気を吹き込んでいるシーンが撮影されていれば、酒気帯び検出に不正行為は無く、適切に実施されたと判定できるから上記インターロックは解除し、運転席Sに着座するユーザーDが検出器2に呼気を吹き込んでいるシーンが撮影されていなければ、酒気帯び検出に不正行為があった可能性があるとして、上記インターロックを作動させるようにすることができる。
【0071】
また、本発明は、タクシーやトラック、バスなど商用車等において、運行時間中の走行速度などの変化をモニタし、搭載車両の稼動状況を把握可能とする運行記録装置(例えばデジタルタコグラフ)にも適用可能である。この場合、上記実施形態と同様、ドライバに対し酒気帯び判定や成りすまし判定の処理を実施するが、その検査結果情報、さらには判定結果情報は、図11のように、制御部10と通信可能に接続する運行記録装置9の所定記憶部に記憶される。このとき、撮影装置5により撮影される画像についても同様に記録するとよい。アルコール濃度が規定値を上回って検査NGと判定された場合や、不正行為(成りすまし)があったとされた場合には、上記実施形態と同様にインターロックが作動する。そして、音声及び表示のいずれか又は双方にて警告出力も実施し、ドライバに結果を認識させる。インターロックが作動した場合には、ドライバが管理者に連絡して対応を仰ぎ、指示に従い安全確保のための対策がとれるようにする。なお、検査結果情報や判定結果情報を記憶する記憶部は、運行記録装置本体であってもよいし、搬送可能な記憶メディアに記憶して、運行後に記録メディアを運行管理者に提出し、運行管理者が日常の運行管理の一環として検査履歴を確認するようにしてもよい。あるいは図11のように、運行記録装置が搭載する周知の無線通信手段により検査NGや不正行為といった結果情報(NGに限らなくともよい:撮影装置5の撮影画像も含むとよい)を管理端末装置(サーバー等)に自動通報する手段を車両側が備える構成としてもよく、これらを受信する管理端末装置側では、それらの通報情報とドライバ情報とを対応付けて所定記憶部に記憶・蓄積する手段を備えていてもよい。
【0072】
なお、本発明における検出器2は、酒気帯び判定(アルコール濃度測定)を開始するに際し、初期状態から予め定められた安定作動状態に移行させるための検出準備処理を要するものであればよい。例えば、アルコールセンサ24は、半導体センサに限らず、電気化学反応による起電力の変化を利用したものや、アルコール蒸気の分子が特定の波長の赤外線を吸収する特性を利用したものを用いてもよい。本発明の検出準備処理は、加熱等のような、アルコールセンサに対する直接的な処理だけでなく、筐体内部に形成された呼気流路26cの排気処理のような、測定環境を安定化させる処理も検出準備処理に含むことができる。本実施形態のアルコールセンサ24のように、検出準備処理にヒータの加熱処理が含まれる半導体センサのようなセンサあれば、本発明を適用する効果は極めて高い。
【0073】
また、本発明における酒気帯び判定(アルコール濃度測定)の結果に基づく走行制限は、上記実施形態のようなエンジン始動操作の無効化に限られるものではなく、車両に対し少なくとも予め定められた車速レベルを上回る走行を禁止する走行制限であればよい。例えば、エンジンECU6が、車速検出部(図示なし)の検出結果に基づいて、車両の所定速度以上での走行を禁止するようなエンジン駆動制御(噴射制御等)を実施するようにしてもよいし、シフトポジションをドライブポジション(さらにはリバースポジション)に切り替える操作を無効化したり、あるいはパーキングポジションに固定保持されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 飲酒運転防止装置(車両用制御装置)
10 制御部(算出手段、判定手段、車両制御手段、検出準備処理実行手段、中間状態特定手段、撮影準備処理実行手段)
2 検出器(検出手段)
20 検査スイッチ(開始操作部)
21 臭いセンサ
22 湿気センサ
24 アルコールセンサ(アルコール濃度検出部)
23 温度センサ
25 酸素センサ
26 筐体
26a 取込口
26c 呼気流路
26b 排出口
3 インターロック装置
4 報知装置
5 撮影装置(撮影手段)
S 運転席
D ユーザー
G 測定対象気体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象気体中の予め定められたガス濃度を検出する検出手段と、検出されたガス濃度に基づいて前記測定対象気体に含まれるユーザーの呼気中のアルコール濃度を算出する算出手段と、前記検出手段に前記呼気を吹き込む前記ユーザーを撮影する撮影手段と、前記算出手段の算出結果と前記撮影手段の撮影画像とに基づいて前記車両を制御する車両制御手段と、を備える車両用制御装置であって、
前記検出手段に対し、予め定められた安定検出可能状態に移行させるための検出準備処理を実行させる検出準備処理実行手段と、
前記検出準備処理中に、前記検出手段により検出されたガス濃度に基づいて、当該検出準備処理開始直後の初期状態から前記安定検出可能状態に至る途中の予め定められた中間状態を特定する中間状態特定手段と、
前記撮影手段に対し、前記中間状態が特定されるに伴い該撮影手段の主電源をONに切り替え、撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理を実行させる撮影準備処理実行手段と、
を備えることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記中間状態として、前記撮影手段の前記撮影可能状態への移行が完了した後に前記検出手段の前記安定検出可能状態への移行が完了するような前記検出手段の状態が定められている請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記ユーザーの呼気を含む測定対象気体中のアルコールの濃度を検出するアルコール濃度検出部と、前記測定対象気体中の予め定められた参考ガスの濃度を検出する参考ガス濃度検出部とを有し、
前記中間状態特定手段は、前記検出準備処理中に、前記検出手段が検出する前記アルコール濃度及び前記参考ガス濃度のいずれか又は双方の検出値に基づいて前記中間状態を特定するものである請求項2記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記中間状態特定手段は、前記中間状態として、前記アルコール濃度検出部が順次出力する検出値が初期においてはじめて減少変化から増加変化に転じた後の状態、あるいは初期においてはじめて増加変化から減少変化に転じた後の状態を特定するものである請求項3記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記安定検出可能状態として、少なくとも前記アルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った状態を特定する安定検出可能状態特定手段を備え、
前記中間状態特定手段は、前記中間状態として、少なくとも前記アルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が前記安定差分レベルよりも差分範囲が大きい中間差分レベルを下回った場合を特定するものである請求項4記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記安定検出可能状態として、少なくとも前記アルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った状態を特定する安定検出可能状態特定手段を備え、
前記中間状態特定手段は、前記中間状態として、少なくとも前記参考ガス濃度検出部が順次出力する検出値が予め定められた濃度レベルを上回った場合を特定するものである請求項4又は請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記参考ガスは、その濃度により前記測定対象気体中の呼気の含有レベルを推定可能な呼気含有レベル推定可能ガスである請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項8】
前記呼気含有レベル推定可能ガスは、酸素及び二酸化炭素のいずれか又は双方である請求項7記載の車両用制御装置。
【請求項9】
前記アルコール濃度検出部は、前記測定対象気体中のアルコールの接触により電気抵抗が変化する半導体素子を有した半導体方式のアルコールセンサである請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項10】
前記検出準備処理実行手段は、前記検出手段の開始操作部がユーザーにより操作されるに伴い前記検出手段に対し前記検出準備処理を実行させるものである請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項11】
前記撮影手段の撮影画像に基づいて前記検出手段による不正行為の有無を判定する判定手段を備え、前記車両制御手段は、前記算出手段の算出結果と前記判定手段の判定結果とに基づいて前記車両を制御するものである請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項1】
測定対象気体中の予め定められたガス濃度を検出する検出手段と、検出されたガス濃度に基づいて前記測定対象気体に含まれるユーザーの呼気中のアルコール濃度を算出する算出手段と、前記検出手段に前記呼気を吹き込む前記ユーザーを撮影する撮影手段と、前記算出手段の算出結果と前記撮影手段の撮影画像とに基づいて前記車両を制御する車両制御手段と、を備える車両用制御装置であって、
前記検出手段に対し、予め定められた安定検出可能状態に移行させるための検出準備処理を実行させる検出準備処理実行手段と、
前記検出準備処理中に、前記検出手段により検出されたガス濃度に基づいて、当該検出準備処理開始直後の初期状態から前記安定検出可能状態に至る途中の予め定められた中間状態を特定する中間状態特定手段と、
前記撮影手段に対し、前記中間状態が特定されるに伴い該撮影手段の主電源をONに切り替え、撮影可能状態に移行させるための撮影準備処理を実行させる撮影準備処理実行手段と、
を備えることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記中間状態として、前記撮影手段の前記撮影可能状態への移行が完了した後に前記検出手段の前記安定検出可能状態への移行が完了するような前記検出手段の状態が定められている請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記ユーザーの呼気を含む測定対象気体中のアルコールの濃度を検出するアルコール濃度検出部と、前記測定対象気体中の予め定められた参考ガスの濃度を検出する参考ガス濃度検出部とを有し、
前記中間状態特定手段は、前記検出準備処理中に、前記検出手段が検出する前記アルコール濃度及び前記参考ガス濃度のいずれか又は双方の検出値に基づいて前記中間状態を特定するものである請求項2記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記中間状態特定手段は、前記中間状態として、前記アルコール濃度検出部が順次出力する検出値が初期においてはじめて減少変化から増加変化に転じた後の状態、あるいは初期においてはじめて増加変化から減少変化に転じた後の状態を特定するものである請求項3記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記安定検出可能状態として、少なくとも前記アルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った状態を特定する安定検出可能状態特定手段を備え、
前記中間状態特定手段は、前記中間状態として、少なくとも前記アルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が前記安定差分レベルよりも差分範囲が大きい中間差分レベルを下回った場合を特定するものである請求項4記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記安定検出可能状態として、少なくとも前記アルコール濃度検出部が順次出力する検出値の差分が予め定められた安定差分レベルを下回った状態を特定する安定検出可能状態特定手段を備え、
前記中間状態特定手段は、前記中間状態として、少なくとも前記参考ガス濃度検出部が順次出力する検出値が予め定められた濃度レベルを上回った場合を特定するものである請求項4又は請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記参考ガスは、その濃度により前記測定対象気体中の呼気の含有レベルを推定可能な呼気含有レベル推定可能ガスである請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項8】
前記呼気含有レベル推定可能ガスは、酸素及び二酸化炭素のいずれか又は双方である請求項7記載の車両用制御装置。
【請求項9】
前記アルコール濃度検出部は、前記測定対象気体中のアルコールの接触により電気抵抗が変化する半導体素子を有した半導体方式のアルコールセンサである請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項10】
前記検出準備処理実行手段は、前記検出手段の開始操作部がユーザーにより操作されるに伴い前記検出手段に対し前記検出準備処理を実行させるものである請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項11】
前記撮影手段の撮影画像に基づいて前記検出手段による不正行為の有無を判定する判定手段を備え、前記車両制御手段は、前記算出手段の算出結果と前記判定手段の判定結果とに基づいて前記車両を制御するものである請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図9】
【公開番号】特開2011−173445(P2011−173445A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37046(P2010−37046)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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