説明

車両用制御装置

【課題】車両窓や車両ルーフ等からの電子キーの持ち出しに伴う電子キーの置き忘れを予防して、電子キーを置き忘れた状態での車両走行を禁止する。
【解決手段】車両用制御装置は、電子キーと車両側無線機との間で車両情報の照合を行い、車両内照合が正当な場合に、車両のエンジンを始動するものである。具体的には、車速が時速0kmである車両において、電子キーが車両外に搬出される可能性の存在を前提とし、運転者が車両を発進させる発進意思があることを契機として、車両情報の照合を行うものである。そして、その車両内照合が不当な場合には、車両を発進禁止にするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側無線機とその車両の運転者が所持する電子キーとの間で無線通信をして車両情報の照合を行い、エンジン始動を許可する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両側無線機とその車両の運転者が所持する電子キーとの間で無線通信をして車両情報の照合を行い、エンジン始動を許可する車両用制御装置が知られる。従来、かかる車両用制御装置では、エンジン始動後は、車両情報の照合を行わず、電子キーの電池を節約していた。
【0003】
そのため、外出の際、運転者が電子キーを上着のポケット等に入れたままエンジンを始動させ、エンジン始動後に、運転者自らが電子キーの入った上着等を車両外に搬出させた場合には、電子キーを車両外に置き忘れた状態で、運転者が車両を発進させることがあった。その結果、運転者は電子キーを所持せずに、出先に着くことが可能となるが、運転者は電子キーを所持していないので、エンジンを再び始動させることができないという問題があった。
【0004】
そこで、電子キーの置き忘れを防止するために、エンジン作動中における車両ドアの開放を契機として車両情報の照合を行い、電子キーの入った上着等を車両外に搬出することにより照合が不当の場合には、警報を鳴らす車両用制御装置が提案され、電子キーの車両外への置き忘れを予防していた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4525367号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の発明は、車両のドアの開放を契機として照合を行うため、車両窓等から電子キーが入った荷物を搬出した場合には、照合がされず、電子キーの置き忘れを十分に予防することができない。
【0007】
本発明の課題は、車両窓や車両ルーフ等からの電子キーの持ち出しに伴う電子キーの置き忘れを予防して、電子キーを置き忘れた状態での車両走行を禁止する車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の車両用制御装置は、以下の構成を有する。
電子キーと車両側無線機との間で無線通信をして車両情報の照合を行う照合手段と、
照合手段の車両内照合が正当な場合に、車両のエンジンを始動するエンジン始動手段と、
を有する車両用制御装置において、
車両の車速を判定する車速判定手段と、
電子キーが車両外に搬出される搬出可能性の有無を判定する搬出判定手段と、
運転者が車両を発進させる発進意思の有無を判定する意思判定手段と、
車両を発進禁止状態にする発進禁止手段と、を備え、
車速判定手段が車両の車速が時速0kmと判定してから、発進意思が有ると判定されるまでの間に、搬出可能性が有ると判定される場合に車両内照合を行い、車両内照合が不当な場合に、発進禁止状態にすることを特徴とする。
【0009】
車両の車速が時速0kmである停車中の車両において、運転者がその車両を発進させる意思を判定する。
エンジン始動時もしくは車両が停車時に、車両の車速が時速0kmと判定した時から運転者が車両を発進させる意思が有ると判定するまでの間で、電子キーが車両窓や車両ルーフ等から車両外に搬出される可能性がある場合に、電子キーの搬出可能性を前提とし、車両を発進させる意思が有ることを契機として、電子キーの車両内照合を行う。よって、運転者が車両を発進させようとする時点で、電子キーが車両内に存在するかを判定できる。
そして、車両内照合が不当な場合には、車両が発進しないので、車両窓や車両ルーフ等からの電子キーの持ち出しに伴う電子キーの置き忘れを防止できる。
【0010】
また、発進禁止手段は、意思判定手段が運転者の発進意思が有ると判定した場合、照合手段が照合を行い、車両外照合が正当な場合も、発進禁止状態にすることができる。
【0011】
車両外照合が正当な場合には、電子キーが確実に車両外に存在するため、電子キーが車両内に存在しない状況で車両の発進を禁止することができる。
【0012】
そして、車速判定手段が車両の車速が時速0kmと判定してから、発進意思が有ると判定されるまでの間に、搬出可能性があると判定される場合に、車両内照合を行い、車両内照合が正当な場合に、車両の発進を許可する発進許可手段と、
車両の発進許可後に、照合手段の照合を停止する照合停止手段と、
を有することできる。
【0013】
そのため、車両発進許可手段により車両の発進を許可した後は、車両情報の照合を停止する。よって、照合に伴う電子キーの電池消耗を防止できる。
【0014】
また、発進禁止状態を解除し車両の発進を許可する解除手段を有することができる。よって、電子キーと車両側無線機との間の電波状況が悪い場合や、電子キーの電池が切れた場合等、電子キーが車両内に存在するにも関わらず、車両内照合が不当とされた場合でも、車両を発進させることができる。
【0015】
更に、車速判定手段が車両の車速が時速0kmと判定してから、発進意思が有ると判定されるまでの間に、搬出可能性があると判定される場合に、照合手段が照合を行い、
該照合手段の照合結果により車両が発進禁止状態となる場合は、発進禁止手段に先立ち、車両が発進禁止状態となることを報知する報知手段を備えることができる。
【0016】
そのため、報知手段により車両が発進禁止であることを報知することで、電子キーの持ち出しに伴う電子キーの置き忘れを運転者に報知することができる。
【0017】
エンジン始動手段によるエンジン始動後により、車速判定手段が車両の車速が時速0kmと判定してから、発進意思が有ると判定されるまでの間に、搬出可能性があると判定される場合に、
車両内照合を行い、車両内照合が不当な場合に、発進禁止状態にすることができる。
【0018】
エンジンが停止して駐車している車両を発車させる場合、つまり、荷物等の搬入及び搬出の可能性の最も高く、かかる荷物の搬出にともない電子キーが搬出される可能性の高い状況での、電子キーの置き忘れを防止することができる。
【0019】
更に、車両が赤信号により停止しているか否かを判定するカーナビを備え、
車両が赤信号により停止している場合には、搬出判定手段が搬出可能性の有無の判定を行わないことができる。
【0020】
赤信号により車両の車速が時速0kmとなる場合は、搬出判定手段が搬出可能性の有無を判定しないので、発進禁止手段の作動の契機となる車内照合が行われないので、電子キーの電池の消耗を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の車両用制御装置のブロック図。
【図2】実施例の処理手順を示すフローチャート。
【図3】搬出操作の判定処理手順を示すフローチャート。
【図4】発進意思の判定処理手順を示すフローチャート。
【図5】変形例1の処理手順を示すフローチャート。
【図6】変形例2の処理手順を示すフローチャート。
【図7】変形例3の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は本発明の車両用制御装置1を示すブロック図であり、図1を用いて車両用制御装置1の概要を説明する。
本発明の車両用制御装置1は、電子キー3と車両側無線機4との間で車両情報の照合を行い、車両内照合が正当な場合に、車両6のエンジン7を始動するものである。
具体的には、車速が時速0kmである車両6において、電子キー3が車両外に搬出される可能性の存在を前提とし、運転者が車両6を発進させる発進意思があることを契機として、車両情報の照合を行うものである。そして、その車両内照合が不当な場合には、車両6を発進禁止にするものである。
【0023】
より詳細には、本発明の車両用制御装置1は、電子キー3と車両側無線機4との間で送受信される車両情報に基づき、制御ECU2(ECU:Electronic Control Unit)がエンジン7の始動を許可する。そのエンジン7の始動後に、制御ECU2は、車両6の車速に応じて、電子キー3の搬出可能性と運転者の発進意思(車両6を発進させようとする意思)とを判定して、電子キー3と車両側無線機4との間において車両情報の照合を行う。そして、制御ECU2は、照合結果に応じて車両6の発進を禁止する。
【0024】
この制御ECU2は、通常のコンピュータと同様の構造を有して、図1に図示されていないが、各種演算や情報処理を司るCPU、CPUの作業領域としての一時記憶部であるRAM、各種情報を記憶する不揮発性のメモリを備える。
【0025】
具体的には、制御ECU2は、図1に示すように、照合手段5と、照合停止手段15と、車速判定手段9と、搬出判定手段10と、意思判定手段12と、発進禁止手段13と、発進許可手段14と、解除手段16とを有する。
【0026】
照合手段5は電子キー3と車両側無線機4との間における無線通信にて得られた車両情報の照合を行う。一方、照合停止手段15は、車両6の発進許可後に、照合手段5の照合を停止する。
【0027】
車速判定手段9は、車両6の車速を判定する。該車速判定手段9が車速を時速0kmと判定してから車両6の運転者の発進意思が有ると判定されるまでの間、搬出判定手段10は電子キー3が車両外に搬出される搬出可能性の有無を判定する。
【0028】
この搬出判定手段10は、図1に図示されるように搬出環境判定手段10aと搬出操作判定手段10bとを有する。
搬出環境判定手段10aは、電子キー3が車両外に搬出される可能性がある車両環境であるか否かを判定するものである。具体的には、車速判定手段9が車両6の車速を時速0kmと判定した場合に、車両6の車両窓又は車両ルーフが開放されているかを判定する。車両6の車両窓又は車両ルーフの少なくとも一方が開放されている場合は、電子キー3が車両外に搬出される恐れがある搬出環境であるため、電子キー3が車両外に搬出される搬出可能性が有ると判定する。一方、車両6の車両窓と車両ルーフの何れも開放されていない場合(搬出環境でない場合)は、搬出操作判定手段10bが、電子キー3を車両外に搬出する搬出操作がされたか否かを判定する。
【0029】
搬出操作判定手段10bは、電子キー3が車両外に搬出される搬出操作がされたか否かを判定するものである。具体的には、車両6の何れかの車両窓を開放する操作、車両6の車両ルーフを開放する操作、車両6の何れかの車両ドアを開放する操作、の何れかの操作を搬出操作判定手段10bが検出した場合に、搬出操作がされた(搬出可能性が有り)と判定する。一方、車両6の何れかの車両窓を開放する操作、車両6の車両ルーフを開放する操作、車両6の何れかの車両ドアを開放する操作、の何れかの操作も検出されない場合は、搬出操作がされていない(搬出可能性がない)と判定する。
【0030】
かかる搬出環境判定手段10aと搬出操作判定手段10bにより搬出判定手段10が電子キー3の搬出可能性が有ると判定した場合には、運転者が車両6を発進させる発進意思があることを契機として、照合手段5が車両内照合を行う。
【0031】
かかる発進意思は意思判定手段12が判定し、該意思判定手段12が、運転者が車両6を発進させる発進意思の有無を判定する。
具体的には、意思判定手段12は、次の操作などを検出すると運転者の発進意思があると判断するものである。つまり、車速が時速0kmでなくなった場合、車両6のハンドルの舵角が変化した場合、車両6のシフトレバーのシフトポジションを「P」(パーキング)、「R」(後退)、「N」(ニュートラル)以外に切り替えた場合、シフトレバーのシフトポジションが「P」、「R」、「N」以外でパーキングブレーキ(サイドブレーキ)を解除した場合、シフトレバーのシフトポジションが「P」、「R」、「N」以外でフットブレーキを解除した場合、の何れかの操作を検出した場合には、運転者の発進意思が有ると、意思判定手段12が判定するものである。逆に、かかる操作などが検出されない場合は、意思判定手段12は、運転者の発進意思がないと判定する。
【0032】
意思判定手段12が運転者の発進意思が有ると判定した場合は、照合手段5が車両内照合を行う。該車両内照合が不当な場合、発進禁止手段13が車両6を発進禁止状態にする。また、発進禁止手段13は、車両外照合が正当な場合も、車両6を発進禁止状態にする。
この発進禁止状態は、解除手段16により解除することができ、解除手段16は、車両6の発進禁止状態を解除し車両6の発進を許可する。
一方、発進意思の判定後の照合手段5による車両内照合が正当な場合には、車両6の発進を許可し、発進許可手段14が車両6の発進を許可する。
【0033】
上記各手段を備える制御ECU2は、図1に示すように車両側無線機4と、エンジンと7と、エンジン始動手段8と、報知手段17と、カーナビ18と、解除ボタン16aが連結される。
車両側無線機4は、車両6に関与する人員が所持する電子キー3との間で車両情報の無線通信をするものである。
エンジン始動手段8は、照合手段5の車両内照合が正当な場合に、車両6のエンジン7を始動するエンジン始動ボタンである。
報知手段17は、照合手段5の照合結果が不当な場合、発進禁止手段13に先立ち、車両6が発進禁止状態となることを報知するスピーカ等である。具体的には、車速が時速0kmである車両6において、電子キー3が車両外に搬出される可能性の存在を前提とし、運転者が車両6を発進させる発進意思があることを契機として、照合手段5が車両情報の照合を行い、その照合結果が不当な場合には、車両6が発進禁止状態となることを報知するものである。
解除ボタン16aは、車両6の走行禁止状態を解除するスイッチである。
【0034】
カーナビ18は、制御ECU2と同様にCPU、RAM、ROM及び入出力部を有し、入出力部には自動車の現在位置を特定するためのGPS、道路案内情報などのナビ情報を出力するためのモニタ、音声案内情報を出力するスピーカ、及びタッチパネが接続されている。
また、道路上の信号機データや地図データやカーナビの操作支援データを格納するためのディスク記憶装置と、制御EUC2の車速判定手段9により入力された車速から、車両6が赤信号により停止しているか否かを判定する赤信号停止判定手段18aを有する。
【0035】
以上の構成のもとで、車両用制御装置1は、車両窓や車両ルーフなどからの電子キー3の持ち出しに伴う電子キー3の置き忘れを防止して、電子キー3を置き忘れた状態での車両6の走行を禁止する処理を実行する。
その処理手順が図2のフローチャートに示されている。かかる車両走行禁止制御の処理手順を予めプログラム化して、例えば、制御ECU2のメモリに記憶しておき、制御ECU2が呼び出して自動的に実行する。
【0036】
図2を用いて、電子キー3を置き忘れた状態での車両6の走行を禁止する処理を説明する。図2の処理は、電子キー3の車両内照合により車両6のエンジン7が起動したことを条件として処理を開始する。
具体的には、車両側無線機4が車両内に存在する電子キー3と無線通信をして、送受信する車両情報を照合手段5が照合(車両内照合)をして、その照合結果が正当であることに基づき、エンジン始動手段8によりエンジン7が起動したことを条件として処理を開始する。
【0037】
先ず、S1において、車速判定手段9が車両6の車速を判定する。
具体的には、車速判定手段9は、車両6の車速が時速0kmであるか否かを判定する。車速が時速0kmである場合(S1:YES)は、S2に進み、車速が時速0km以外である場合(S1:NO)は、S1の処理を繰り返す。よって、電子キー3が車両外に持ち出されて運転者が車両外に電子キー3を置き忘れる可能性が最も高い、車両6の駐停車中(車速が時速0kmの場合)に、車両6の走行を禁止する制御を実行できる。
【0038】
S2に進むと、S2ないしS4において、搬出判定手段10は電子キー3が搬出される可能性(搬出可能性)があるか否かを判定する。
S2に進むと、搬出判定手段10の搬出環境判定手段10aは、電子キー3が車両外に搬出される車両6の環境(搬出環境)であるか否かを判定する。具体的には、車両窓又は車両ルーフが開放されているか否かを判定する。車両窓又は車両ルーフの少なくとも一方が開放されている場合(S2:YES)は、電子キー3が車両外に搬出される搬出可能性があるとして、S5に進み、車両窓及び車両ルーフが開放されていない場合(S2:NO)は、S3に進む。よって、エンジン始動前に、車両窓又は車両ルーフが開放されている場合でも、その開放された車両窓又は車両ルーフから電子キー3が搬出される可能性を考慮して、制御を実行できる。
【0039】
S3に進むと、搬出判定手段10の搬出操作判定手段10bは、電子キー3が車両外に搬出させる恐れがある搬出操作が行われたか否かを判定する。
具体的には、図3における電子キー3を搬出する恐れがある搬出操作の判定のフローチャートに示される。即ち、車両6の何れかの車両窓を開放する操作、車両6の車両ルーフを開放する操作、車両6の何れかの車両ドアを開放する操作、の何れかの操作を搬出操作判定手段10bが検出した場合(S101:YES)は、S102に進み、電子キー3が車両外に搬出される恐れがある搬出操作が行われたと判定する。
一方、上記搬出操作が検出されない場合(S101:NO)は、S103に進み、電子キー3が車両外に搬出される恐れがある搬出操作が行われていないと判断する。
以上のように、搬出操作判定手段10bが、電子キー3が車両外に搬出される恐れがある搬出操作が行われたか否かの判定がされると、図2のS3の工程を終えて、S4に進む。そのため、電子キー3が車両外に搬出される、あらゆる可能性を考慮して制御することができる。よって、従来は考慮されていない車両窓及び車両ルーフから電子キー3が搬出をされる可能性を考慮して制御することが可能となる。
【0040】
S4に進むと、搬出操作判定手段10bは、電子キー3が車両外に搬出される恐れが有るか否かを判定する。
具体的には、電子キー3を車両外に搬出する恐れがある搬出操作がある場合(S4:YES)は、S5に進み、電子キー3を車両外に搬出する恐れがある搬出動作がない場合(S4:NO)は、S1に戻る。したがって、S2〜S4において、搬出判定手段10により、電子キー3が車両外に搬出される可能な限りの可能性を判定できる。
【0041】
S5に進むと、S5及びS6において、意思判定手段12が車両6の運転者が車両6を発進させる発進意思があるか否かを判定する。
具体的には、図4における車両6を発進させようとする運転者の車両発進の意思を判定するフローチャートに示される。S5に進むと、図4に示すS201に移る。そこで、意思判定手段12は、S1により車両6の車速が時速0kmである判定してからS5における車両6を発進させる発進意思を判定するまでに、時間を要することを考慮して再度、車両6の車速が時速0kmであるか否かを判定する。車両6の車速が時速0kmの場合(S201:YES)は、S202に進み、車両6の車速が時速0km以外の場合(S201:NO)は、車両6の発進意思があるとしてS210に進む。
【0042】
S202に進むと、意思判定手段12は、エンジン始動中において、車両6のハンドル角度に変化があったか否かを判定する。車両6のハンドル角度に変化がある場合(S202:YES)は、車両6の発進意思があるとしてS210に進み、車両6のハンドル角度に変化がない場合(S202:NO)は、S203に進む。
【0043】
S203に進むと、意思判定手段12は、エンジン始動中において、車両6のシフトレバーにおけるシフトポジションが「P」、「R」、「N」以外に変化したか否かを判定する。車両6のシフトポジションが「P」、「R」、「N」以外に変化した場合(S203:YES)は、車両6の発進意思があるとしてS210に進み、車両6のシフトポジションが「P」、「R」、「N」以外に変化しない場合(S203:NO)は、S204に進む。
なお、シフトポジションが「R」、「N」の場合は、状況によっては、車両6が発車することもあるが、シフトポジションが「R」、「N」の状態で遠出する状況は生じにくいため、シフトポジションが「P」、「R」、「N」以外に変化する場合を、本実施例では発進意思があるとしてS210に進むとする。本実施例では、エンジン始動中において、シフトポジションが「P」、「R」、「N」以外に変化したか否かを判定するが、「P」以外に変化したか否か、「P」、「N」以外に変化したか否かなどを判定する場合でもよい。
【0044】
S204に進むと、意思判定手段12は、車両6のシフトレバーにおけるシフトポジションが「P」のポジションであるか否かを判定する。車両6のシフトポジションが「P」である場合(S204:YES)は、車両6の発進意思がないとしてS209に進み、車両6のシフトポジションが「P」でない場合(S204:NO)は、S205に進む。
【0045】
S205に進むと、意思判定手段12は、車両6のシフトレバーにおけるシフトポジションが「R」のポジションであるか否かを判定する。車両6のシフトポジションが「R」である場合(S205:YES)は、車両6の発進意思がないとしてS209に進み、車両6のシフトポジションが「R」でない場合(S205:NO)は、S206に進む。
【0046】
S206に進むと、意思判定手段12は、車両6のシフトレバーにおけるシフトポジションが「N」のポジションであるか否かを判定する。車両6のシフトポジションが「N」である場合(S206:YES)は、車両6の発進意思がないとしてS209に進み、車両6のシフトポジションが「N」でない場合(S206:NO)は、S207に進む。
【0047】
S207に進むと、意思判定手段12は、車両6のパーキングブレーキが解除されているか否かを判定する。車両6のパーキングブレーキが解除されている場合(S207:YES)は、車両6の発進意思があるとしてS210に進み、車両6のパーキングブレーキが解除されていない場合(S207:NO)は、S208に進む。
【0048】
S208に進むと、意思判定手段12は、車両6のフットブレーキが解除されているか否かを判定する。車両6のフットブレーキが解除されている場合(S208:YES)は、車両6の発進意思があるとしてS210に進み、車両6のフットブレーキが解除されていない場合(S208:NO)は、車両6の発進意思がないとしてS209に進む。
【0049】
S209に進むと、意思判定手段12は、車両6の運転者が車両6を発進させようとする発進意思がないと判定する。一方、S210においては、意思判定手段12は、車両6の運転者が車両6を発進させようとする発進意思があると判定する。そのため、意思判定手段12は、運転者の各操作により運転者の発進意思を判定することができる。
以上のように、意思判定手段12が、車両6の運転者が車両6を発進させようとする意思があるか否かの判定をすると、図2のS5の工程を終えて、S6に進む。
【0050】
S6に進むと、意思判定手段12は、車両6の運転者が車両6を発進させようとする意思があるか否かを判定する。
具体的には、運転者の発進意思がある場合(S6:YES)は、図2のS7に進み、運転者の発進意思がない場合(S6:NO)は、S1に戻る。
【0051】
S7に進むと、照合手段5は、電子キー3と車両側無線機4との間による無線通信により車両情報の照合を行う。
具体的には、車両側無線機4が車両内に存在する電子キー3と無線通信をして、送受信する車両情報を照合手段5が照合(車両内照合)をして、その照合結果を判定して、S8に進む。S8に進むと、照合手段5が、S7における電子キー3の車両内照合の照合結果が正当であるか否かを判定する。車両内照合が不当(失敗)である場合(S8:YES)は、S9に進み、車両内照合が不当(失敗)でない場合(S8:NO)は、S1に戻る。よって、運転者が正に車両を発進させようとする時点で、電子キー3が車両内に存在するかを判定することができる。
【0052】
S9に進むと、報知手段17は、電子キー3が車両外に持ち出されたことを運転者に報知するための警報処理を行い、S10に進む。よって、電子キー3の持ち出しに伴う電子キー3の置き忘れを運転者に報知できる。
【0053】
S10に進むと、発進禁止手段13が、車両6の発進が許可される発進許可状態から、車両6の発進を禁止する発進禁止状態にして、車両6の発進を禁止し、S1に戻る。
【0054】
車両6が発進禁止状態となりS1に戻ると、所定の間隔でS1からS10の処理が繰り返される。そのため、S9の電子キー3の持ち出し警報により、電子キー3の置き忘れに気づいた運転者が、置き忘れた電子キー3を再度、車両内に搬入すると、上記S7の電子キー3の車両内照合処理が行われ、車両内照合が不当(失敗)でない場合(S8:NO)には、車両6の発進を許可する発進許可手段14が、車両6を発進禁止状態から発進許可状態に移行させて、車両6の発進を許可して、S1に戻る。よって、そのまま車両6を走行させることが可能となる。
また、発進許可手段14により車両の発進を許可した後は、車両6が発進する等により、S7の電子キー3の車両内照合を処理に至るまでの間にて、処理を繰り返すことが可能となるため、S7における電子キー3の車両内照合の処理が行われず、車両情報の照合を停止することで、照合に伴う電子キー3の電池消耗を防止できる。
【0055】
以上の構成のもとで、車両用制御装置1は、車両窓や車両ルーフなどからの電子キー3の持ち出しに伴う電子キー3の置き忘れを防止して、電子キー3を置き忘れた状態での車両6の走行を禁止する処理を実行する。
【0056】
次に、本発明の車両用制御装置1の変形例1を説明する。実施例と同様の構成は、実施例と同様の符号を付して、実施例の説明を流用して説明を省略する。図5は、変形例1の処理手順を示すフローチャートであり、図5を用いて変形例1を説明する。
図2に示す実施例のフローチャートでは、車速判定手段9が、車両6の車速が時速0kmであると判定した場合に、搬出判定手段10が電子キー3の搬出可能性を判定するものである。しかし、変形例1では、車速判定手段10が車両6の車速を時速0kmと判定した場合に、カーナビ18の赤信号停止判定手段18aにより、車両6が赤信号により停止しているか否かを判定するものである。
【0057】
次に、変形例1のカーナビ18の赤信号停止判定手段18aが、車両6が赤信号により停止しているか否かを判定する処理手順を図5のフローチャートから説明する。図5は、図2の実施例のフローチャートにおけるS1とS2との間にS1´として、赤信号停止判定手段18aにおける判定処理を追加したフローチャートである。そのため、S1´以外の処理は、図2におけるフローチャートの処理と同様である。
図5におけるS1において、車速判定手段9が車両6の車速を判定する。そして、車速が時速0km以外である場合(S1:NO)は、S1に戻り、車速が時速0kmである場合(S1:YES)は、S1´に進む。S1´に進むと、カーナビ18の赤信号停止判定手段18aが、車両6が赤信号により停止しているか否かを判定する。車両6が赤信号により停止している場合(S1´:YES)は、S1に戻る。また、車両6が赤信号により停止していない場合(S1´:NO)は、S3に進む。そのため、赤信号により車両6の車速が時速0kmとなる場合は、発進禁止手段13の作動の契機となる車両内照合が行われない。よって、赤信号で車両6が停止しても照合が行わず、電子キー3の電池の消耗を防止できる。
【0058】
次に、本発明の車両用制御装置1の変形例2を説明する。実施例と同様の構成は、実施例と同様の符号を付して、実施例の説明を流用して説明を省略する。図6は、変形例2の処理手順を示すフローチャートであり、図6を用いて変形例2を説明する。
図2に示す実施例のフローチャートでは、意思判定手段12が、S6で、運転者の車両6の発進意思があると判断した場合に、照合手段5が、S7及びS8で、車両内照合処理を行い、車両内に電子キー3が存在するか否かを判定するものである。しかし、変形例2では、意思判定手段12が運転者の車両6の発進意思があるか否かを判定した場合に、照合手段5が先ず車両外照合処理を行い、車両外に電子キー3が存在するか否かを判定し、車両外照合処理の後に、照合手段5が車両内照合処理を行い、車両内に電子キー3が存在するか否かを判定するものである。
【0059】
次に、変形例2の照合手段5が、車両外照合と車両内照合を行うことで、電子キー3が車両内に存在するか否かを判定する処理手順を図6のフローチャートから説明する。図6は、図2の実施例のフローチャートにおけるS6とS7との間に、電子キー3の車両外照合処理としてS6´及び電子キー3の車両外照合結果が正当(成功)であるか否かを判定するS6´´を追加したフローチャートである。そのため、S6´及びS6´´以外の処理は、図2におけるフローチャートの処理と同様である。
図6におけるS6において、意思判定手段12が車両6の運手者の発進意思を判定する。そして、運転者が車両6の発進意思がない場合(S6:NO)は、S1に戻り、運転者が車両6の発進意思がある場合(S6:YES)は、S6´に進む。S6´に進むと、照合手段5は、電子キー3と車両側無線機4との間による無線通信により車両情報の照合を行う。具体的には、車両側無線機4が車両外に存在する電子キー3と無線通信をして、送受信する車両情報を照合手段5が照合(車両外照合)をして、S6´´に進む。S6´´に進むと、照合手段5が、S6´における電子キー3の車両外照合の照合結果が正当(成功)であるか否かを判定する。車両外照合が正当(成功)である場合(S6´´:YES)は、車両内に電子キー3が存在しないためS9に進み、車両外照合が不当(失敗)である場合(S6´´:NO)は、S7に進む。そのため、車両外照合が正当な場合には、電子キー3が確実に車両外に存在するため、電子キー3が車両内に存在しない状況で車両の発進を禁止することができる。
【0060】
次に、本発明の車両用制御装置1の変形例3を説明する。実施例と同様の構成は、実施例と同様の符号を付して、実施例の説明を流用して説明を省略する。図7は、変形例3の処理手順を示すフローチャートであり、図7を用いて変形例3を説明する。
図2に示す実施例のフローチャートでは、S10の処理を終えるとS1に戻るものであるが、変形例3では、解除手段16が、車両6の発進禁止状態を解除し、車両6を発進許可状態にするものである。
【0061】
次に、変形例3の解除手段16が車両6の発進禁止状態を発進許可状態にすることで、車両6を発進することを可能にする処理手順を図7のフローチャートから説明する。図7は、図2の実施例のフローチャートにS11〜S13の処理を追加したフローチャートである。よって、S10までの処理は、図2におけるフローチャートの処理と同様である。
図7におけるS10において、発進禁止手段13が車両6を発進許可状態から発進禁止状態にして、S11に進む。そして、S11において、解除手段16は、発進禁止状態を解除する解除ボタン16aにより解除信号が入力されたか否かを判定して、S12に進む。S12に進むと、S11におけるの解除信号の有無を判定して、解除信号がある場合(S12:YES)は、S13に進み、解除信号がない場合(S12:NO)は、S1に戻る。
そして、S13に進むと、解除手段16は、車両6の発進禁止状態を発進禁止状態から発進許可状態に移行させて、車両6の発進を許可して、S1に戻る。よって、電子キー3が車両内に存在するにも関わらず、車両内照合が不当とされた場合でも、車両を発進させることができる。また、解除手段16により車両の発進を許可した後は、車両6が発進する等により、S7の電子キー3の車両内照合を処理に至るまでの間にて、処理を繰り返すことが可能となるため、S7における電子キー3の車両内照合の処理が行われず、車両情報の照合を停止することで、照合に伴う電子キー3の電池消耗を防止できる。
以上の説明において、実施例及び各変形例は適宜組み合せることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 車両用制御装置 2 制御ECU
3 電子キー 4 車両側無線機
5 照合手段 6 車両
7 エンジン 8 エンジン始動手段
9 車速判定手段 10 搬出判定手段
12 意思判定手段 13 発進禁止手段
14 発進許可手段 15 照合停止手段
16 解除手段 17 報知手段
18 カーナビ 18a 赤信号停止判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キーと車両側無線機との間で無線通信をして車両情報の照合を行う照合手段と、
前記照合手段の車両内照合が正当な場合に、車両のエンジンを始動するエンジン始動手段と、
を有する車両用制御装置において、
前記車両の車速を判定する車速判定手段と、
前記電子キーが前記車両外に搬出される搬出可能性の有無を判定する搬出判定手段と、
運転者が前記車両を発進させる発進意思の有無を判定する意思判定手段と、
前記車両を発進禁止状態にする発進禁止手段と、を備え、
前記車速判定手段が前記車両の車速が時速0kmと判定してから、前記発進意思が有ると判定されるまでの間に、前記搬出可能性が有ると判定される場合に前記車両内照合を行い、前記車両内照合が不当な場合に、前記発進禁止状態にすることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記発進禁止手段は、前記意思判定手段が前記運転者の前記発進意思が有ると判定した場合、前記照合手段が照合を行い、車両外照合が正当な場合も、前記発進禁止状態にすることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車速判定手段が前記車両の車速が時速0kmと判定してから、前記発進意思が有ると判定されるまでの間に、前記搬出可能性があると判定される場合に、前記車両内照合を行い、前記車両内照合が正当な場合に、前記車両の発進を許可する発進許可手段と、
前記車両の発進許可後に、前記照合手段の照合を停止する照合停止手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記発進禁止状態を解除し前記車両の発進を許可する解除手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記車速判定手段が前記車両の車速が時速0kmと判定してから、前記発進意思が有ると判定されるまでの間に、前記搬出可能性があると判定される場合に、前記照合手段が照合を行い、
該照合手段の照合結果により前記車両が前記発進禁止状態となる場合は、前記発進禁止手段に先立ち、前記車両が前記発進禁止状態となることを報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記エンジン始動手段による前記エンジン始動後により、前記車速判定手段が前記車両の車速が時速0kmと判定してから、前記発進意思が有ると判定されるまでの間に、前記搬出可能性があると判定される場合に、
前記車両内照合を行い、前記車両内照合が不当な場合に、前記発進禁止状態にすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記車両が赤信号により停止しているか否かを判定するカーナビを備え、
前記車両が赤信号により停止している場合には、前記搬出判定手段が搬出可能性の有無の判定を行わないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−158280(P2012−158280A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20454(P2011−20454)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】