説明

車両用制御装置

【課題】この発明は、車輪速から操舵角を推定することができ、舵角検出手段を搭載していない車両でも操舵角を推定して、操舵角情報を必要とする全ての制御を実行することが可能な車両用制御装置を実現することを目的とする。
【解決手段】この発明は、左車輪速を検出する左車輪速検出手段と、右車輪速を検出する右車輪速検出手段と、左車輪速と右車輪速とから左右輪回転差を算出する左右輪差算出手段と、左車輪速と右車輪速とから車速を算出する車速算出手段と、左右輪回転差と車速とに基づいて推定操舵角を演算する推定操舵角演算手段と、推定操舵角を更新するかどうかを判定する推定操舵角更新判定手段とを備えた推定操舵角計算手段を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用制御装置に係り、特に、舵角検出手段を搭載していない車両において操舵角を推定して、操舵角情報を必要とする全ての制御を実行することが可能な車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主駆動輪に対し副駆動輪の駆動力を制御する四輪駆動方式の車両においては、車両用制御装置により前後輪回転速度差(ΔN)に応じて主駆動輪に対する副駆動軸の駆動力配分量の決定(フィードバック制御)が行われている場合が多い(特開2007−131193号公報)。
四輪駆動性能を向上させるためには、エンジントルクに応じた駆動力配分量の決定(フィードフォワード制御)を追加して行う必要があるが、フィードフォワード制御を採用するためには操舵角を検出する必要がある。これは、操舵角が大きいときには駆動力配分量を減少させ、タイトコーナーブレーキング発生を抑制し、タイトコーナーブレーキングに伴う旋回性能の低下、騒音、振動の発生及び駆動系への過負荷を防止するためである(特開2011−57154号公報、特開平6−87342号公報)。
上記のように操舵角情報が必要な制御を行う場合、操舵角情報を取得するために舵角検出手段を設ける必要がある。しかし、舵角検出手段を搭載していない車両では、操舵角情報を取得することができないため、操舵角情報を必要とする制御を実施することができない。舵角検出手段を用いずに他の検出手段の検出情報から操舵角を推定して取得する技術としては、以下に示すものがある。
【0003】
特開2003−276635号公報には、車両が直進状態にあるときの、電動パワーステアリング用モータの回転角からの回転変化量に1/(減速比)を乗じて、操舵角を推定する技術が開示されている。特開2008−49914号公報には、ステアリング機構が操舵限界状態または中立状態にあるときに、既知の絶対舵角とこの時点における電動パワーステアリング用モータの回転角から算出した相対舵角を対応づけて、操舵角を推定する技術が開示されている。特開2010−58661号公報には、電動パワーステアリング用モータの回転角から算出した最大相対舵角・最小相対舵角と予め設定した全舵角範囲とで絶対舵角を算出して、操舵角を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−131193号公報
【特許文献2】特開2011−57154号公報
【特許文献3】特開平6−87342号公報
【特許文献4】特開2003−276635号公報
【特許文献5】特開2008−49914号公報
【特許文献6】特開2010−58661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献4〜6の技術は、以下のような問題がある。
特開2003−276635号公報の技術は、車両の直進状態と中立位置を条件としているので、車両の直進状態を判定して中立位置を検出するまでは、操舵角を検出できない。特開2008−49914号公報の技術は、必要とする検出手段数が多く、予めラックエンド絶対舵角と中立絶対舵角を設定しておく必要があり、操舵限界状態か中立状態を判定するまでは操舵角を検出できない。特開2010−58661号公報の技術は、予め全舵角範囲を設定しておく必要があり、始動後ステアリングをあまり切らない状態では操舵角を検出できない。
【0006】
この発明は、車輪速から操舵角を推定することができ、舵角検出手段を搭載していない車両でも操舵角を推定して、操舵角情報を必要とする全ての制御を実行することが可能な車両用制御装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両の左車輪速を検出する左車輪速検出手段と、車両の右車輪速を検出する右車輪速検出手段と、前記左車輪速検出手段により検出された左車輪速と前記右車輪速検出手段により検出された右車輪速とから左右輪回転差を算出する左右輪差算出手段と、前記左車輪速検出手段により検出された左車輪速と前記右車輪速検出手段により検出された右車輪速とから車速を算出する車速算出手段と、前記左右輪差算出手段により算出された左右輪回転差と前記車速算出手段により算出された車速とに基づいて推定操舵角を演算する推定操舵角演算手段と、前記推定操舵角演算手段により演算された推定操舵角を更新するかどうかを判定する推定操舵角更新判定手段とを備えた推定操舵角計算手段を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、舵角検出手段を用いずに、車輪速から操舵角を推定することができる。したがって、舵角検出手段を搭載していない車両でも操舵角を推定して、操舵角情報を必要とする全ての制御を実行することが可能となる。
車輪速を検出する車輪速検出手段は、ほとんど全ての車両に搭載されているため、新たな検出手段を搭載することなく、操舵角を推定することができる。車輪速から操舵角を推定しているので、簡単な演算処理のみで操舵角を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両用制御装置の操舵角推定制御のブロック図である。(実施例1)
【図2】図2は推定操舵角更新判定処理のフローチャートである。(実施例1)
【図3】図3は推定操舵角更新条件を示す表である。(実施例1)
【図4】図4は四輪駆動方式の車両用制御装置のシステムブロック図である。(実施例1)
【図5】図5は四輪駆動方式の車両用制御装置のシステム入出力図である。(実施例1)
【図6】図6は車両用制御装置の操舵角処理のブロック図である。(実施例2)
【図7】図7は車両用制御装置の操舵角推定制御のブロック図である。(実施例2)
【図8】図8は推定操舵角更新判定処理のフローチャートである。(実施例2)
【図9】図9は推定操舵角更新条件を示す表である。(実施例2)
【図10】図10は中点学習処理のフローチャートである。(実施例2)
【図11】図11は中点学習条件を示す表である。(実施例2)
【図12】図12はイグニションスイッチオン時(IGON)における電気角とレゾルバ信号の関係を示す図である。(実施例2)
【図13】図13は四輪駆動方式の車両用制御装置のシステム入出力図である。(実施例2)
【図14】図14は中点学習処理のフローチャートである。(変形例1)
【図15】図15は中点学習条件を示す表である。(変形例1)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図5は、この発明の実施例1を示すものである。図4において、1は四輪駆動方式の車両である。この車両1は、前部にエンジン2とトランスミッション3とを横置き状態に搭載し、フロントディファレンシャル4に主駆動軸である前側左車軸5及び前側右車軸6の内端を連結し、前側左車軸5及び前側右車軸6の外端にそれぞれ主駆動輪である前側左車輪7及び前側右車輪8を取り付けている。
また、車両1は、前記トランスミッション3にトランスファ9を連結し、トランスファ9にプロペラシャフト10の前端を連結している。プロペラシャフト10は、後端をトルク配分用クラッチ11を介してリアディファレンシャル12に連結している。リアディファレンシャル12には、副駆動軸である後側左車軸13及び後側右車軸14の内端を連結し、後側左車軸13及び後側右車軸14の外端にそれぞれ副駆動輪である後側左車輪15及び後側右車輪16を取り付けている。
前記エンジン2の発生する駆動トルクは、トランスミッション3、フロントディファレンシャル4を介して前側左車軸5及び前側右車軸6に伝達され、前側左車輪7及び前側右車輪8を主駆動輪として駆動する。エンジン2の発生する駆動トルクは、トランスファ9で取り出され、プロペラシャフト10により駆動力配分手段であるトルク配分用クラッチ11に伝達される。トルク配分用クラッチ11は、エンジン2からの駆動力を車両1の走行状態に応じて、前側左車輪7及び前側右車輪8と後側左車輪15及び後側右車輪16へと配分する。トルク配分用クラッチ11により後側左車輪15及び後側右車輪16へと配分された駆動力は、リアディファレンシャル12を介して後側左車軸13及び後側右車軸14に伝達され、後側左車輪15及び後側右車輪16を副駆動輪として駆動する。
【0012】
前記トルク配分用クラッチ11は、図5に示すように、車両用制御装置17に接続している。車両用制御装置17には、駆動力配分制御手段18と、駆動系保護制御手段19と、車両運動協調制御手段20と、CAN(車内LAN)通信機能手段21と、フェールセーフ制御手段22と、セルフダイアグノーシス手段23とを有している。車両用制御装置17には、駆動選択スイッチ24が直接に接続され、また、エンジン制御装置25と、トランスミッション制御装置26と、アンチロックブレーキ制御装置27と、電動パワーステアリング制御装置28と、コンビネーションメータ29とが、CAN通信(車内LAN)で接続されている。
前記駆動選択スイッチ24からは、四輪駆動スイッチ30の操作による四輪駆動情報及びロックスイッチ31の操作によるロック情報が入力される。前記エンジン制御装置25からは、アクセルペダル32に設けたアクセル開度検出手段33によるアクセル開度情報、ブレーキペダル34に設けたストップランプスイッチ35によるストップランプスイッチ情報(図4参照)、エンジン2のエンジン回転速度情報が入力される。トランスミッション制御装置26からは、シフトポジション情報が入力される。
前記アンチロックブレーキ制御装置27からは、前側左車輪速検出手段36が検出した前側左車輪7の回転速度を示す前側左車輪速情報と、前側右車輪速検出手段37が検出した前側右車輪8の回転速度を示す前側右車輪速情報と、後側左車輪速検出手段38が検出した後側左車輪15の回転速度を示す後側左車輪速情報と、後側右車輪速検出手段39が検出した後側右車輪16の回転速度を示す後側右車輪速情報とが入力され、また、アンチロックブレーキ制御実行中情報が入力される。
前記電動パワーステアリング制御装置28(EPS:エレクトロニックパワーステアリング)は、車両1の操舵力をモータによって軽減するように制御するものであり、運転者によるステアリングホイール40の操舵をアシストするモータ41の回転角を検出するレゾルバ42からの回転角情報が入力される。
前記車両用制御装置17は、入力する各種情報に基づいて、駆動力配分制御手段18により決定された駆動力配分量となるようトルク配分用クラッチ11の締結力を制御し、前側左車輪7及び前側右車輪8と後側左車輪15及び後側右車輪16へエンジン2の駆動力を走行状態に応じて配分する。また、車両用制御装置17は、車両運動協調制御手段20により操舵をアシストするモータ41の駆動力・ブレーキやエンジン出力・トルク配分用クラッチ11の締結力を協調制御し、車両1の走行を安定させる。さらに、車両用制御装置17は、CAN通信機能手段21によってエンジン制御装置25に駆動モード情報を出力し、コンビネーションメータ29に四輪駆動表示灯・ロック表示警告灯の点火要求情報を出力し、駆動系保護制御手段19とフェールセーフ制御手段22とセルフダイアグノーシス手段23とによる処理を行う。
【0013】
前記車両用制御装置17は、舵角検出手段を用いずに、車輪速から操舵角を推定する推定操舵角計算手段43を備えている。推定操舵角計算手段43は、図1に示すように、前側左車輪7の前側左車輪速を検出する前記前側左車輪速検出手段36と、前側右車輪8の前側右車輪速を検出する前記前側右車輪速検出手段37と、後側左車輪15の後側左車輪速を検出する前記後側左車輪速検出手段38と、後側右車輪16の後側右車輪速を検出する前記後側右車輪速検出手段39とを備えている。
推定操舵角計算手段43は、前側左右輪差算出手段44と、後側左右輪差算出手段45と、車速算出手段46と、推定操舵角演算手段47と、推定操舵角更新判定手段48とを備えている。
前側左右輪差算出手段44は、前記前側左車輪速検出手段36により検出された前側左車輪速と、前記前側右車輪速検出手段37により検出された前側右車輪速とから、前側左右輪回転差を算出する。前記後側左右輪差算出手段45は、前記後側左車輪速検出手段38により検出された後側左車輪速と、前記後側右車輪速検出手段39により検出された後側右車輪速とから、後側左右輪回転差を算出する。
前記車速算出手段46は、前記後側左車輪速検出手段38により検出された後側左車輪速と、前記後側右車輪速検出手段39により検出された後側右車輪速とから、後側車輪15・16の車速を算出する。前記推定操舵角演算手段47は、前記後側左右輪差算出手段45により算出された後側左右輪回転差と、前記車速算出手段46により算出された車速とに基づいて、
・推定操舵角=後側左右輪回転差/(変換係数*車速)
の式より推定操舵角を演算する。なお、式中の変換係数は、車両1によって決まる定数値である。
前記推定操舵角更新判定手段48は、前記推定操舵角演算手段47により演算された推定操舵角を更新するかどうかを判定する。
前記推定操舵角更新判定手段48は、車両1が極低速走行状態であるかどうかを判定する極低速判定手段49を備えている。推定操舵角更新判定手段48は、極低速判定手段49により車両1が極低速走行状態であると判定された時には推定操舵角を更新しない。
また、前記推定操舵角更新判定手段48は、車両1がグリップ限界であるかどうかを判定するグリップ限界判定手段50を備えている。推定操舵角更新判定手段48は、グリップ限界判定手段50により車両1がグリップ限界であると判定された時には推定操舵角を更新しない。
さらに、前記推定操舵角更新判定手段48は、前記推定操舵角演算手段47により演算された推定操舵角の変化率が予め設定された値よりも大きい時には推定操舵角を更新しない。
【0014】
次に作用を説明する。
車両用制御装置17は、前側左右輪差算出手段44により前側左右輪回転差を算出し、後側左右輪差算出手段45により後側左右輪回転差を算出し、車速算出手段46により車速を算出し、推定操舵角演算手段47により推定操舵角を演算し、推定操舵角更新判定手段48により推定操舵角更新判定の処理を行う。
車両用制御装置17は、図2に示すように、推定操舵角更新判定手段48による推定操舵角更新判定処理がスタートすると(A01)、極低速の判定を行い(A02)、推定操舵角信頼性の判定を行い(A03)、グリップ限界の判定を行い(A04)、推定操舵角更新条件が成立しているかを判断する(A05)。
前記極低速の判定(A02)では、車速が閾値以下であるかどうかを判定する(閾値以下である場合、極低速走行状態と判定)。前記推定操舵角信頼性の判定(A03)では、推定操舵角の変化率が閾値以上であるかどうかを判定する(閾値以上である場合、信頼性がないと判定)。前記グリップ限界の判定(A04)では、前側左右輪回転差と後側左右輪回転差の差分が閾値以上であるかどうかを判定する(閾値以上である場合、グリップ限界と判定)。
推定操舵角更新条件の判定(A05)では、図3に示すように、極低速判定と推定操舵角信頼性判定とグリップ限界判定との、全ての条件が成立したかを判断する。(極低速でない、推定操舵角不信でない、且つグリップ限界でない場合、条件成立)
前記判断(A05)がYESの場合は、推定操舵角を更新し(A06)、推定操舵角更新判定処理を終了する(A07)。前記判断(A05)がNOの場合は、推定操舵角を更新せずに前回の値を保持し(A08)、推定操舵角更新判定処理を終了する(A07)。
推定操舵角計算手段43は、推定操舵角更新判定手段48の判定処理により得られた推定操舵角を車両1の操舵角として次段に出力する。
【0015】
このように、車両用制御装置17は、前側左車輪速検出手段36と、前側右車輪速検出手段37と、後側左車輪速検出手段38と、後側右車輪速検出手段39とが検出する車輪速から操舵角を推定することができる。したがって、この車両用制御装置17は、舵角検出手段を搭載していない車両でも操舵角を推定して、四輪駆動制御のフィードフォワード制御を行うことができる。また、四輪駆動制御に限らず、操舵角情報を必要とする全ての制御を実行することが可能となる。
車輪速を検出する車輪速検出手段は、ほとんど全ての車両に搭載されているため、新たな検出手段を搭載することなく、操舵角を推定することができる。この車両用制御装置17は、車輪速から操舵角を推定しているので、図1に示すように簡単な演算処理のみで操舵角を推定することができる。
この車両用制御装置17は、車両1の極低速走行時には、操舵角推定の精度が悪くなる(推定操舵角算出式の分母(変換係数*車速)が零に近づくので計算値が発散傾向になる)ため、推定操舵角を更新しない。この結果、操舵角を精度良く推定することができる。
また、この車両用制御装置17は、車両がグリップ限界である時には、操舵角推定の精度が悪くなるため、推定操舵角を更新しない。この結果、操舵角を精度良く推定することができる。
さらに、この車両用制御装置17は、推定操舵角の変化率が予め設定された値(通常の操舵による変化率)よりも大きい時には、操舵以外の要因(スリップ等)で後側車輪速が変化したと考えられるため、推定操舵角を更新しない。この結果、操舵角を精度良く推定することができる。
【0016】
なお、車両用制御装置17は、推定操舵角更新判定手段48の判定処理により得られた推定操舵角情報を用いることでフィードフォワード制御等が可能になり、駆動力配分制御手段18によりエンジントルクに応じた駆動力配分量を決定でき、四輪駆動性能を向上させることができる。
また、車両用制御装置17は、前記推定操舵角情報を用いることで、エンジン制御装置25によるアイドルストップ制御のON/OFF制御等が可能になり、アイドルストップ性能の向上を図ることができ、パワーステアリング装置による路面反力制御向上等が可能になり、モータ41によるステアリングホイール40の操舵アシスト性能を向上することができる。
さらに、車両用制御装置17は、前記推定操舵角情報を用いることで、操舵角情報がないと制御が成り立たない、横滑り防止装置、車両運動協調制御部20、コーナーリングランプシステム制御等の制御を実施することが可能になる。
【実施例2】
【0017】
図6〜図13は、この発明の実施例2を示すものである。この実施例2において、車両は、前述図4に示す車両1の構成と同様に構成されているので、図4の符号を参照して詳細な説明は省略する。また、車両用制御装置は、前述図5に示す車両用制御装置17の構成と同様に構成される部分については図5の符号を参照して詳細な説明は省略するとともに、相違する構成については図13により符号を付して説明する。
図4に示すように、車両1は、エンジン2からの駆動力を走行状態に応じてトルク配分用クラッチ11により前側左車輪7及び前側右車輪8と後側左車輪15及び後側右車輪16へと配分し、前側左車輪7及び前側右車輪8を主駆動輪として駆動し、後側左車輪15及び後側右車輪16を副駆動輪として駆動する。
図5に示すように、前記トルク配分用クラッチ11は、車両用制御装置17に接続している。車両用制御装置17は、駆動選択スイッチ24、エンジン制御装置25、トランスミッション制御装置26、アンチロックブレーキ制御装置27、電動パワーステアリング制御装置28、コンビネーションメータ29から入力する各種情報に基づいて、駆動力配分制御手段18により決定された駆動力配分量となるようトルク配分用クラッチ11の締結力を制御し、前側左車輪7及び前側右車輪8と後側左車輪15及び後側右車輪16へエンジン2の駆動力を走行状態に応じて配分する。
また、車両用制御装置17は、車両運動協調制御手段20により操舵をアシストするモータ41の駆動力・ブレーキやエンジン出力・トルク配分用クラッチ11の締結力を協調制御し、車両1の走行を安定させる。さらに、車両用制御装置17は、CAN通信機能手段21によってエンジン制御装置25に駆動モード情報を出力し、コンビネーションメータ29に四輪駆動表示灯・ロック表示警告灯の点火要求情報を出力し、駆動系保護制御手段19とフェールセーフ制御手段22とセルフダイアグノーシス手段23とによる処理を行う。
【0018】
前記車両用制御装置17は、図13に示すように、舵角検出手段を用いずに、車輪速から操舵角を推定する推定操舵角計算手段43を備えている。推定操舵角計算手段43は、図7に示すように、前側左車輪7の前側左車輪速を検出する前側左車輪速検出手段36と、前側右車輪8の前側右車輪速を検出する前側右車輪速検出手段37と、後側左車輪15の後側左車輪速を検出する後側左車輪速検出手段38と、後側右車輪16の後側右車輪速を検出する後側右車輪速検出手段39とを備えている。
推定操舵角計算手段43は、前側左右輪差算出手段44と、後側左右輪差算出手段45と、車速算出手段46と、推定操舵角演算手段47と、推定操舵角更新判定手段48とを備えている。
前側左右輪差算出手段44は、前記前側左車輪速検出手段36により検出された前側左車輪速と、前記前側右車輪速検出手段37により検出された前側右車輪速とから、前側左右輪回転差を算出する。前記後側左右輪差算出手段45は、前記後側左車輪速検出手段38により検出された後側左車輪速と、前記後側右車輪速検出手段39により検出された後側右車輪速とから、後側左右輪回転差を算出する。
前記車速算出手段46は、前記後側左車輪速検出手段38により検出された後側左車輪速と、前記後側右車輪速検出手段39により検出された後側右車輪速とから、後側車輪15・16の車速を算出する。前記推定操舵角演算手段47は、前記後側左右輪差算出手段45により算出された後側左右輪回転差と、前記車速算出手段46により算出された車速とに基づいて、
・推定操舵角=後側左右輪回転差/(変換係数*車速)
の式より推定操舵角を演算する。なお、式中の変換係数は、車両1によって決まる定数値である。
前記推定操舵角更新判定手段48は、前記推定操舵角演算手段47により演算された推定操舵角を更新するかどうかを判定する。
前記推定操舵角更新判定手段48は、車両1が極低速走行状態であるかどうかを判定する極低速判定手段49を備えている。推定操舵角更新判定手段48は、極低速判定手段49により車両1が極低速走行状態であると判定された時には推定操舵角を更新しない。
また、前記推定操舵角更新判定手段48は、車両1がグリップ限界であるかどうかを判定するグリップ限界判定手段50を備えている。推定操舵角更新判定手段48は、グリップ限界判定手段50により車両1がグリップ限界であると判定された時には推定操舵角を更新しない。
さらに、前記推定操舵角更新判定手段48は、前記推定操舵角演算手段47により演算された推定操舵角の変化率が予め設定された値よりも大きい時には推定操舵角を更新しない。
【0019】
前記電動パワーステアリング制御装置28は、ステアリングホイール40の操舵をアシストするモータ41の、回転角を検出するレゾルバ42を備えている。電動パワーステアリング制御装置28は、図12に示すように、レゾルバ42の電気角に対応して、モータ41の回転角に相当するレゾルバ信号を出力する。車両用制御装置17は、図13に示すように、前記推定操舵角計算手段43に加えて、オフセット量計算手段51と、中点学習手段52と、レゾルバ信号舵角計算手段53とを備えている。
前記オフセット量計算手段51は、レゾルバ42により検出された回転角と、推定操舵角計算手段43により計算された推定操舵角との差分をオフセット量として算出する。前記中点学習手段52は、オフセット量算出手段51により算出されたオフセット量に基づいて補正量を算出する。前記レゾルバ信号舵角計算手段53は、レゾルバ42により検出された回転角と中点学習手段52により算出された補正量とから操舵角を算出する。
前記中点学習手段52は、推定操舵角更新判定手段48により推定操舵角を更新しないと判定された時にオフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いない。前記中点学習手段52は、レゾルバ42により検出された回転角の変化率が予め設定された値よりも大きい時にオフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いない。前記中点学習手段52は、レゾルバ信号舵角計算手段53により算出された操舵角の変化率が予め設定された値よりも大きい時にオフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いない。
また、前記中点学習手段52は、レゾルバ42により検出された回転角の変化率と推定操舵角計算手段43により計算された推定操舵角の変化率との差が予め設定された値よりも大きい時にオフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いない。前記中点学習手段52は、レゾルバ信号舵角計算手段53により算出された操舵角の変化率と推定操舵角計算手段43により計算された推定操舵角の変化率との差が予め設定された値よりも大きい時にオフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いない。
【0020】
次に作用を説明する。
車両用制御装置17は、前側左右輪差算出手段44により前側左右輪回転差を算出し、後側左右輪差算出手段45により後側左右輪回転差を算出し、車速算出手段47により車速を算出し、推定操舵角演算手段47により推定操舵角を演算し、推定操舵角更新判定手段48により推定操舵角更新判定の処理を行う。
車両用制御装置17は、図8に示すように、推定操舵角更新判定手段48による推定操舵角更新判定処理がスタートすると(A01)、極低速の判定を行い(A02)、推定操舵角信頼性の判定を行い(A03)、グリップ限界の判定を行い(A04)、推定操舵角更新条件が成立しているかを判断する(A05)。
前記極低速の判定(A02)では、車速が閾値以下であるかどうかを判定する(閾値以下である場合、極低速走行状態と判定)。前記推定操舵角信頼性の判定(A03)では、推定操舵角の変化率が閾値以上であるかどうかを判定する(閾値以上である場合、信頼性がないと判定)。前記グリップ限界の判定(A04)では、前側左右輪回転差と後側左右輪回転差の差分が閾値以上であるかどうかを判定する(閾値以上である場合、グリップ限界と判定)。
推定操舵角更新条件の判定(A05)では、図9に示すように、極低速判定と推定操舵角信頼性判定とグリップ限界判定との、全ての条件が成立したかを判断する。(極低速でない、推定操舵角不信でない、且つグリップ限界でない場合、条件成立)
前記判断(A05)がYESの場合は、推定操舵角を更新し(A06)、推定操舵角更新判定処理を終了する(A07)。前記判断(A05)がNOの場合は、推定操舵角を更新せずに前回の値を保持し(A08)、推定操舵角更新判定処理を終了する(A07)。
【0021】
前記車両用制御装置17は、推定操舵角計算手段43による推定操舵角の計算に続いて、レゾルバ42により検出された回転角と、推定操舵角計算手段43により計算された推定操舵角との差分を、オフセット量計算手段51によりオフセット量として算出し、オフセット量算出手段51により算出されたオフセット量に基づいて中点学習手段52により以下のように補正量を算出する。
車両用制御装置17は、図10に示すように、中点学習手段52による中点学習処理がスタートすると(B01)、前記図8の極低速の判定(A02)、推定操舵角信頼性の判定(A03)、グリップ限界の判定(A04)に加えて、レゾルバ信号舵角信頼性の判定を行い(B02)、中点学習条件が成立しているかを判断する(B03)。
前記レゾルバ信号舵角信頼性の判定(B03)は、レゾルバ信号舵角の変化率と推定操舵角の変化率との差が閾値以下であるかどうかを判定する。
前記中点学習条件の判定(B03)では、図11に示すように、極低速判定と推定操舵角信頼性判定とグリップ限界判定とレゾルバ信号舵角信頼性判定との、全ての条件が成立したかを判断する。(極低速でない、推定操舵角不信でない、グリップ限界でない、且つレゾルバ信号舵角不信でない場合、条件成立)
前記判断(B03)がNOの場合は、補正量を算出せずに中点学習処理を終了する(B08)。前記判断(B03)がYESの場合は、レゾルバ信号(回転角)と推定操舵角との差分から算出したオフセット量を積算し(B04)、オフセット量を所定回数積算したかを判断する(B05)。
この判断(B05)がNOの場合は、補正量を算出せずに中点学習処理を終了する(B08)。この判断(B05)がYESの場合は、オフセット量を平均し(B06)、オフセット量の平均値からフィルタリングにより補正量を算出し、この算出した補正量により補正量の更新を行い(B07)、中点学習処理を終了する(B08)。
レゾルバ信号舵角計算手段53は、この中点学習手段52により算出された補正量と前記レゾルバ42により検出された回転角とから操舵角を算出して次段に出力する。
なお、補正量を算出する中点学習手段52は、推定操舵角更新判定手段48により推定操舵角を更新しないと判定された時、また、レゾルバ42により検出された回転角の変化率が予め設定された値よりも大きい時、あるいは、レゾルバ信号舵角計算手段53により算出された操舵角の変化率が予め設定された値よりも大きい時には、オフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を補正量算出に用いない。
また、中点学習手段52は、レゾルバ42により検出された回転角の変化率と推定操舵角計算手段43により計算された推定操舵角の変化率との差が予め設定された値よりも大きい時、あるいは、レゾルバ信号舵角計算手段53により算出された操舵角の変化率と推定操舵角計算手段43により計算された推定操舵角の変化率との差が予め設定された値よりも大きい時には、オフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を補正量算出に用いない。
【0022】
このように、車両用制御装置17は、操舵をアシストするモータ41の回転角を検出するレゾルバ42により検出された回転角と推定操舵角計算手段43により計算された推定操舵角とを用いて操舵角を算出するので、停車時やスリップ時でも操舵角を算出することができ、車輪速とレゾルバ信号とから操舵角を算出することができる。したがって、車両用制御装置17は、舵角検出手段を搭載していない車両でも操舵角を算出して、四輪駆動制御のフィードフォワード制御を行うことができる。また、四輪駆動制御に限らず、操舵角情報を必要とする全ての制御を実行することが可能となる。
車輪速を検出する車輪速検出手段36〜39とレゾルバ42は、多くの車両に搭載されているため、新たな検出手段を搭載することなく、操舵角を算出することができる。この車両用制御装置17は、車輪速とレゾルバ信号から操舵角を算出しているので、簡単な演算処理のみで補正量を算出して、操舵角を算出することができる。
この車両用制御装置17は、推定操舵角更新判定手段48により推定操舵角を更新しないと判定された時には、オフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を補正量算出に用いないので、車輪速から操舵角を精度が良く推定できる時に算出されたオフセット量を用いて学習することになるため、レゾルバ42により検出された回転角から操舵角を精度良く算出することができる。
また、この車両用制御装置17は、レゾルバ42により検出された回転角の変化率が予め設定された値よりも大きい時、あるいは、レゾルバ信号舵角計算手段53により算出された操舵角の変化率が予め設定された値よりも大きい時には、オフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を補正量算出に用いないので、レゾルバ42により検出された回転角から操舵角を精度良く算出することができる。
さらに、この車両用制御装置17は、レゾルバ42により検出された回転角の変化率と推定操舵角計算手段43により計算された推定操舵角の変化率との差が予め設定された値よりも大きい時、あるいは、レゾルバ信号舵角計算手段53により算出された操舵角の変化率と推定操舵角計算手段43により計算された推定操舵角の変化率との差が予め設定された値よりも大きい時には、オフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を補正量算出に用いないので、レゾルバ42により検出された回転角から操舵角を精度良く算出することができる。
【0023】
この車両用制御装置17は、レゾルバ42により検出された回転角と推定操舵角計算手段43により計算された推定操舵角とから計算された操舵角情報を用いることでフィードフォワード制御等が可能になり、駆動力配分制御手段18によりエンジントルクに応じた駆動力配分量を決定でき、四輪駆動性能を向上させることができる。
また、車両用制御装置17は、前記操舵角情報を用いることで、エンジン制御装置25によるアイドルストップ制御のON/OFF制御等が可能になり、アイドルストップ性能の向上を図ることができ、パワーステアリング装置による路面反力制御向上等が可能になり、モータ41によるステアリングホイール40の操舵アシスト性能を向上することができる。
さらに、車両用制御装置17は、前記操舵角情報を用いることで、操舵角情報がないと制御が成り立たない、横滑り防止装置、車両運動協調制御部20、コーナーリングランプシステム制御等の制御を実施することが可能になる。
【0024】
なお、車両用制御装置17は、図13に示すように、エンジン2からの駆動力を、車両の走行状態に応じて主駆動輪である前側左車輪7及び前側右車輪8及び副駆動輪である後側左車輪15及び後側右車輪16へと配分する駆動力配分手段であるトルク配分用クラッチ11を備え、レゾルバ信号舵角計算手段53により算出された操舵角に基づいてトルク配分用クラッチ11の駆動力配分量を決定する駆動力配分制御手段18を備えている。
これにより、車両用制御手段17は、舵角センサを搭載していない車両でも、操舵角を計算して、駆動力配分制御手段18においてエンジントルクに応じて駆動力配分量を決定することができ、決定された駆動力配分量になるようにトルク配分用クラッチ11の締結力を制御することができる。
この結果、この車両用制御装置17は、車両1のタイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制し、タイトコーナーブレーキング現象に伴う旋回性能の低下、騒音・振動の発生及び駆動系への過負荷を防止することができる。
【0025】
上述実施例2においては、図10・図11に示すように、中点学習条件として、極低速判定と推定操舵角信頼性判定とグリップ限界判定とレゾルバ信号舵角信頼性判定とを設定し、これら全ての条件が成立した場合に補正量を算出したが、これに限定されるものではない。
図14〜図15は、中点学習処理の変形例1を示すものである。車両用制御装置17は、車両1が直進状態であるかどうかを判定する直進判定手段54を備えている(図13参照)。直進判定手段54は、推定操舵角計算手段43が計算した推定操舵角から車両の直進走行状態を判定し、車輪速検出手段36〜39が検出した車輪速から車両の旋回走行状態を判定する。中点学習手段52は、直進判定手段54により車両1が直進状態ではないと判定された時にオフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いない。
車両用制御装置17は、図15に示すように、中点学習手段52による中点学習処理がスタートすると(C01)、前記図8の極低速の判定(A02)、推定操舵角信頼性の判定(A03)、グリップ限界の判定(A04)に加えて、直進状態の判定を行い(C02)、旋回状態の判定を行い(C03)、レゾルバ信号舵角信頼性の判定を行い(C04)、中点学習条件が成立しているかを判断する(C05)。
中点学習条件の判定(C05)では、図15に示すように、極低速判定と推定操舵角信頼性判定とグリップ限界判定と直進状態判定とレゾルバ信号舵角信頼性判定との、全ての条件が成立したかを判断する。(極低速でない、推定操舵角不信でない、グリップ限界でない、旋回状態でない(直進状態)、且つレゾルバ信号舵角不信でない場合、条件成立)
この判断(C05)がNOの場合は、補正量を算出せずに中点学習処理を終了する(C10)。この判断(C05)がYESの場合は、レゾルバ信号(回転角)と推定操舵角との差分から算出したオフセット量を積算し(C06)、オフセット量を所定回数積算したかを判断する(C07)。
この判断(C07)がNOの場合は、補正量を算出せずに中点学習処理を終了する(C10)。この判断(C07)がYESの場合は、オフセット量を平均し(C08)、オフセット量の平均値からフィルタリングにより補正量を算出し、この算出した補正量により補正量の更新を行い(C09)、中点学習処理を終了する(C10)。
レゾルバ信号舵角計算手段53は、この中点学習手段52により算出された補正量と前記レゾルバ42により検出された回転角とから操舵角を算出して次段に出力する。
このように、車両用制御装置17は、直進判定手段54により車両1が直進状態ではないと判定された時には、オフセット量計算手段51により算出されたオフセット量を補正量算出に用いないので、レゾルバ42により検出された回転角から操舵角を精度良く算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、舵角検出手段を搭載していない車両でも操舵角を推定することができ、操舵角情報を必要とする全ての車両用制御装置に応用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 車両
2 エンジン
3 トランスミッション
4 フロントディファレンシャル
7 前側左車輪
8 前側右車輪
9 トランスファ
10 プロペラシャフト
11 トルク配分用クラッチ
12 リアディファレンシャル
15 後側左車輪
16 後側右車輪
17 車両用制御装置
18 駆動力配分制御手段
25 エンジン制御装置
26 トランスミッション制御装置
27 アンチロックブレーキ制御装置
28 電動パワーステアリング制御装置
36 前側左車輪速検出手段
37 前側右車輪速検出手段
38 後側左車輪速検出手段
39 後側右車輪速検出手段
41 モータ
42 レゾルバ
43 推定操舵角計算手段
44 前側左右輪差算出手段
45 後側左右輪差算出手段
46 車速算出手段
47 推定操舵角演算手段
48 推定操舵角更新判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左車輪速を検出する左車輪速検出手段と、車両の右車輪速を検出する右車輪速検出手段と、前記左車輪速検出手段により検出された左車輪速と前記右車輪速検出手段により検出された右車輪速とから左右輪回転差を算出する左右輪差算出手段と、前記左車輪速検出手段により検出された左車輪速と前記右車輪速検出手段により検出された右車輪速とから車速を算出する車速算出手段と、前記左右輪差算出手段により算出された左右輪回転差と前記車速算出手段により算出された車速とに基づいて推定操舵角を演算する推定操舵角演算手段と、前記推定操舵角演算手段により演算された推定操舵角を更新するかどうかを判定する推定操舵角更新判定手段とを備えた推定操舵角計算手段を設けることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
車両が極低速走行状態であるかどうかを判定する極低速判定手段を備え、前記推定操舵角更新判定手段は、前記極低速判定手段により車両が極低速走行状態であると判定された時には推定操舵角を更新しないことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
車両がグリップ限界であるかどうかを判定するグリップ限界判定手段を備え、前記推定操舵角更新判定手段は、前記グリップ限界判定手段によりグリップ限界であると判定された時には推定操舵角を更新しないことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記推定操舵角更新判定手段は、前記推定操舵角演算手段により演算された推定操舵角の変化率が予め設定された値よりも大きい時には推定操舵角を更新しないことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
操舵をアシストするモータの回転角を検出するレゾルバと、前記レゾルバにより検出された回転角と前記推定操舵角計算手段により計算された推定操舵角との差分をオフセット量として算出するオフセット量計算手段と、前記オフセット量計算手段により算出されたオフセット量に基づいて補正量を算出する中点学習手段と、前記レゾルバにより検出された回転角と前記中点学習手段により算出された補正量とから操舵角を算出するレゾルバ信号舵角計算手段とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記中点学習手段は、前記推定操舵角更新判定手段により推定操舵角を更新しないと判定された時に前記オフセット量計算手段により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いないことを特徴とする請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記中点学習手段は、前記レゾルバにより検出された回転角の変化率が予め設定された値よりも大きい時に前記オフセット量計算手段により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いないことを特微とする請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項8】
前記中点学習手段は、前記レゾルバ信号舵角計算手段により算出された操舵角の変化率が予め設定された値よりも大きい時に前記オフセット量計算手段により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いないことを特徴とする請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項9】
前記中点学習手段は、前記レゾルバにより検出された回転角の変化率と前記推定操舵角計算手段により計算された推定操舵角の変化率との差が予め設定された値よりも大きい時に前記オフセット量計算手段により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いないことを特徴とする請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項10】
前記中点学習手段は、前記レゾルバ信号舵角計算手段により算出された操舵角の変化率と前記推定操舵角計算手段により計算された推定操舵角の変化率との差が予め設定された値よりも大きい時に前記オフセット量計算手段により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いないことを特徴とする請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項11】
前記車両が直進状態であるかどうかを判定する直進判定手段を備え、前記中点学習手段は、前記直進判定手段により直進状態ではないと判定された時に前記オフセット量計算手段により算出されたオフセット量を、補正量算出に用いないことを特徴とする請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項12】
前記エンジンからの駆動力を車両の走行状態に応じて主駆動輪及び副駆動輪へと配分する駆動力配分手段と、前記レゾルバ信号舵角計算手段により算出された操舵角に基づいて駆動力配分量を決定する駆動力配分制御手段を備えることを特徴とする請求項5〜請求項11のいずれか一項に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−28244(P2013−28244A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164962(P2011−164962)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】