説明

車両用収納装置

【課題】 ドアを開ける動作でボックスを突出させることができる車両用収納装置の提供。
【解決手段】 開口21を備える固定部材20と、固定部材20に対して回動可能とされ固定部材の開口21を開閉するドア30と、固定部材20内に全体が入り込む収納位置40bと収納位置40bよりも固定部材20の開口21側に移動した移動位置40aとに固定部材20に対して回動可能とされたボックス40と、ボックス40を収納位置40bから移動位置40aに向って回動付勢するボックス付勢バネと、を有する。ボックス40は、ドア30が閉位置にあるときドア30により固定部材20内に押し込まれて収納位置40bに位置し、ドア30が開位置にあるときボックス付勢バネの付勢力により移動位置40aに位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灰皿装置、車両用小物入れ装置等の、車両用収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図15は、固定部材2に対して回動可能なドア3と、固定部材2に着脱可能に取付けられたボックス4と、を有する車両用収納装置1を示している。ボックス4の開口は、固定部材2の開口2aより奥まった位置にある。
【0003】
しかし、従来の車両用収納装置には、次の問題点がある。
ボックス4の開口が固定部材2の開口2aより奥まった位置にあるので、ボックス4の使用性が悪い。
実開平3−121136号公報は、ドアを開けた後にボックスのロックを解除してボックスをバネ力で車室内に移動させる、車両用収納装置を開示している。
しかし、ドアを開けた後にロック解除してボックスを車室内に移動させるので、ボックスを車室内に移動させるのに、ドアを開ける動作とロックを解除する動作の両方の動作を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−121136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする第1の問題点は、ボックスの開口が意匠開口面より奥まった位置にあることである。
本発明が解決しようとする第2の問題点は、ボックスを移動させるのに、ドアを開ける動作とボックスを移動させる動作の両方の動作を要することである。
本発明の目的は、ドアを開ける動作でボックスを開口側に移動させることができる車両用収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) (a)固定部材と、(b)ドアと、(c)ボックスと、を有し、
(a)前記固定部材は、開口とガイド部を備えており、
(b)前記ドアは、前記固定部材に対して回動可能とされ前記固定部材の開口を開閉し、
(c)前記ボックスは、前記固定部材のガイド部に沿って可動なガイド突起と、前記ドアに回動可能に取付けられる回動軸部とを、備えており、前記固定部材内に全体が入り込む収納位置と該収納位置よりも前記固定部材の開口側に移動した移動位置とに前記固定部材に対して可動とされている、
車両用収納装置。
(2) 前記固定部材のガイド部は、前記固定部材の奥行き方向に直線状またはほぼ直線状に延びる第1のガイド部と、該第1のガイド部に連なり該第1のガイド部の延び方向と異なる方向に延びる第2のガイド部とを、有する、(1)記載の車両用収納装置。
(3) ドア付勢スプリングと、ロック装置と、をさらに有し、
前記ドア付勢スプリングは、前記ドアを開方向に回動付勢しており、
前記ロック装置は、前記ドアを前記ドア付勢スプリングの付勢力に抗して閉位置に保持する、
(1)記載の車両用収納装置。
(4) 開閉部材と、開閉部材付勢バネと、をさらに有し、
前記固定部材は、該固定部材の奥行き方向に延びる長溝部を備えており、
前記開閉部材は、前記固定部材の長溝部内を可動な軸部と、前記ボックスが収納位置にあるときに前記ボックスの開口を閉塞する板部と、前記ボックスが収納位置にあるときに前記ボックスの外壁面に当接する当接部とを、備えており、
前記開閉部材付勢バネは、前記開閉部材を、前記軸部が前記固定部材の開口に接近し前記板部が前記ボックスの開口を開放する方向に付勢する、
(3)記載の車両用収納装置。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の車両用収納装置では、ボックスがドアに回動可能に取付けられる回動軸部を備えるので、ドアを開けることでドアの開動作に連動してボックスを収納位置から移動位置まで出すことができる(引っ張りだすことができる)。そのため、ボックスの開口が固定部材の奥まった位置にある場合に比べてボックスの使用性が向上する。また、ドアを開ける動作でボックスを移動位置まで移動させることができるため、ボックスを固定部材の開口側に移動させるのにドアを開ける動作とボックスを移動させる動作の両方の動作を要する場合に比べて、収納装置の使用性が向上する。
上記(2)の車両用収納装置では、固定部材のガイド部が第1、第2のガイド部を有するので、ドアが開位置とその近傍に位置するときにボックスのガイド突起が第2のガイド部に位置するようにすることができる。そのため、ドアが開位置にあるときにボックスに収納位置側への荷重がかかった場合であっても、ボックスが移動位置から収納位置側に動くことを防止できる。
上記(3)の車両用収納装置では、ドア付勢スプリングとロック装置を有するので、ロック装置のロックを解除することで、ドアをドア付勢スプリングの付勢力で開けることができる。そのため、ドアを手で開ける場合に比べて操作性が向上する。
上記(4)の車両用収納装置では、開閉部材を有するので、車両用収納装置が車両用灰皿装置である場合に消化性が良い。
また、固定部材が長溝部を有しており、開閉部材の軸部が長溝部内を可動であるため、閉位置にあるドアをプッシュしてロック装置のロックを解除するときに、開閉部材が長溝に沿って移動できる。そのため、ロック装置のロックを解除するときに、開閉部材がつっぱることはない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の参考例の車両用収納装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の参考例の車両用収納装置の、ドアとボックスの動きを示す断面図である。
【図3】本発明の参考例の車両用収納装置の、ドアが閉位置にあるときの断面図である。
【図4】本発明の参考例の車両用収納装置の、閉位置にあるドアを押し込んでロック解除したときの断面図である。
【図5】本発明の参考例の車両用収納装置の、ドアが開位置にあるときの断面図である。
【図6】本発明の参考例の車両用収納装置の、開位置にあるドアを押し込んでドアがボックスに当ったときを示す断面図である。
【図7】本発明の参考例の車両用収納装置の、ドアが開位置と閉位置から押し込んだ位置と開位置にあるときの、係合部とボスとの位置関係を示す断面図である。
【図8】本発明実施例の車両用収納装置の分解斜視図である。
【図9】本発明実施例の車両用収納装置の、ドアとボックスの動きを示す断面図である。
【図10】本発明実施例の車両用収納装置の、ドアが閉位置にあるときの断面図である。
【図11】本発明実施例の車両用収納装置の、閉位置にあるドアを押し込んでロック解除したときの断面図である。
【図12】本発明実施例の車両用収納装置の、ドアが開位置にあるときの断面図である。
【図13】本発明実施例の車両用収納装置の、開位置にあるドアを押し込んでボックスが開閉部材に当ったときを示す断面図である。
【図14】本発明実施例の車両用収納装置の、ドアが閉位置にあるときの透視側面図である。
【図15】従来の車両用収納装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜図7は、本発明の参考例の車両用収納装置を示しており、図8〜図14は、本発明実施例の車両用収納装置を示している。
本発明の参考例と実施例では、本発明の車両用収納装置がプッシュオープン式のドアを備える車両用灰皿装置である場合を示している。ただし、本発明の車両用収納装置は、プッシュオープン式に限定されるものではなく、手動でドアを開けるマニュアル式であってもよい。また、車両用収納装置は、車両用灰皿装置に限定されるものではなく、たとえば、車両用小物入れ装置、車両用カップホルダ装置等であってもよい。
本発明の参考例と実施例にわたって共通する部分には、本発明の参考例と実施例にわたって同じ符号を付してある。
【0010】
[参考例](図1〜図7)
まず、本発明の参考例を、図1〜図7を参照して、説明する。
本発明の参考例の車両用収納装置10aは、図1、2に示すように、開口21を備える固定部材20と、固定部材20に対して回動可能とされ固定部材20の開口21を開閉するドア30と、固定部材20内に全体が入り込む収納位置40bと収納位置40bよりも固定部材20の開口21側に移動した移動位置40aとに固定部材20に対して回動可能とされたボックス40と、ボックス40を収納位置40bから移動位置40aに向って回動付勢するボックス付勢バネ50と、を有する。収納装置10aは、さらに、ドア30を開方向に回動付勢するドア付勢スプリング60と、ドア30を閉位置に保持するロック装置70と、係合部80と、ドア30が開位置とその近傍に位置するときのみ係合部80に係合するボス90と、を有する。
【0011】
固定部材20は、車両の内装部材と、該内装部材に固定して設けられるリテーナ20aとを、備える。リテーナ20aの左右両側壁には、図1に示すように、ドア30を回動可能に支持するドア軸部22と、ボックス40を回動可能に支持するボックス軸部23と、ロック装置70の後述のカムロック71を回動可能に支持するロック軸部24と、ボックス40の回動範囲を規制するボックスストッパ25が設けられている。
ドア軸部22とボックス軸部23とは、異なる位置に設けられている。ドア軸部22は、ボックス軸部23より固定部材20の開口21側に設けられている。
ボックスストッパ25は、リテーナ20aの内側壁に設けられている。ボックス40が固定部材20に対して収納位置40bから移動位置40aに向って所定量回転したときに、アウターボックス41がボックスストッパ25に当る。
【0012】
ドア30は、ビス33等でリテーナ20aに回動軸芯Pまわりに回動可能に取付けられる。ドア30の回動軸芯Pは、ボックス40の回動軸芯Qより、固定部材20の開口21側に設けられている。ドア30は、ドア本体31と、ドア本体31の両側端に設けられるドアアーム32を有する。
ドア本体31は、固定部材20の開口21を開閉する。ドア本体31は、一枚構成であってもよく、複数枚構成であってもよい。
ドアアーム32は、ドア本体31と一体に形成されていてもよく、ドア本体31と別体に形成されてドア本体31に固定して取付けられていてもよい。
【0013】
ボックス40は、アウターボックス41と、インナーボックス42とを、備える。
アウターボックス41は、ビス45等でリテーナ20aに回動可能に取付けられる。アウターボックス41がリテーナ20aに回動可能に取付けられるので、ボックス40は回動軸芯Qまわりにリテーナ20aに対して回動可能である。回動軸芯Qは、ドア回動軸芯Pとは、異なる位置にある。アウターボックス41には、インナーボックス42の開口と同じかほぼ同じ大きさの開口41aが形成されている。
インナーボックス42は、アウターボックス41と別体に形成されてアウターボックス41に着脱可能に取付けられている。インナーボックス42は、収納部42aと、収納部42aの開口の周囲の開口面42bを有する。開口面42bは、ドア本体31の裏面31aと当接可能である。開口面42bまたはドア本体31の裏面31aには、当接打音低減のため、図示略のクッションゴム等が設けられていてもよい。
【0014】
ボックス付勢バネ50は、ボックス40を固定部材20に対して収納位置40bから移動位置40aに向って回動付勢する。ボックス付勢バネ50は、たとえばコイルスプリングからなる。ボックス付勢バネ50の一端は、アウターボックス41に当てられており、ボックス付勢バネ50の他端は、リテーナ20aに当てられている。
【0015】
ドア付勢スプリング60は、ドア30を固定部材20に対して開方向に回動付勢する。ドア付勢スプリング60によるドア30の開動速度は、ダンパ34によって調節されている。ドア付勢スプリング60は、たとえばコイルスプリングからなる。ドア付勢スプリング60の一端は、ドア30に当てられており、ドア付勢スプリング60の他端は、リテーナ20aに当てられている。
【0016】
ロック装置70は、カムロック71と、カムロック71に係脱可能なロックピン72とを、有する。
カムロック71は、たとえばハートカムである。カムロック71は、リテーナ20aにビス73等で回動可能に取付けられている。
ロックピン72は、ドアアーム32の延び方向先端部に設けられている。ロックピン72は、ドア30が閉位置にあるとき、カムロック71に係合する。
【0017】
係合部80は、ドア30とボックス40の一方に設けられ、ボス90は、ドア30とボックス40の他方に設けられる(図示例では、係合部80がボックス40に設けられ、ボス90がドア30に設けられている場合を示している)。以下、本発明の参考例では、係合部80がボックス40に設けられ、ボス90がドア30に設けられる場合を例にとって 説明する。
係合部80は、アウターボックス41の一側壁外面に設けられる。係合部80は、アウターボックス41と一体に形成されていてもよく、アウターボックス41と別体に形成されてアウターボックス41に固定して取付けられていてもよい。係合部80は、ボックス40が固定部材20に対して回動したとき、固定部材20に対してボックス40の回動軸芯Qまわりに回動する。
係合部80の形状は、図7に示すように、ボックス40が収納位置40bにあるとき、上方(斜め上方を含む)に開口する、断面U字形である。ただし、係合部80の形状は、断面U字形に限定されるものではなく、断面コ字形であってもよく、断面L字形であってもよい。
【0018】
ボス90は、左右のドアアーム32の一方から、左右のドアアーム32の他方に向って突出して設けられている。ボス90は、ドアアーム32と一体に形成されていてもよく、ドアアーム32と別体に形成されてドアアーム32に固定して取付けられていてもよい。ボス90は、ドア30が固定部材20に対して回動したとき、固定部材20に対してドア30の回動軸芯Pまわりに回動する。
ボス90が係合部80に係合しているとき、ボス90は係合部80の移動軌跡内に入り込んでいる。ボス90が係合部80に係合しているとき、係合部80は、ボス90の移動軌跡外にある。ボス90が係合部80に係合しているとき、ドア30に対するボックス40の収納位置40b側への回動が規制される。
【0019】
ここで、本発明の参考例の作動を説明する。
(a)ドア30が閉位置にあるとき
ドア30は、図3に示すように、固定部材20の開口21を覆っている。ボックス40は、収納位置40bにある。インナーボックス42は、ボックス付勢バネ50の付勢力により、ドア30の裏面31aに押し付けられている。インナーボックス42の開口面42bは、全周にわたってドア30の裏面31aに接触している。ロックピン72がカムロック71に係合している。ボス90は、図7の実線で示すように、係合部80に係合していない。
【0020】
(b)閉位置にあるドア30を開けるとき
閉位置にあるドア30をプッシュしてドア30に図3のa方向に回転荷重を加えると、ロックピン72がカムロック71からはずれる。このとき、インナーボックス42の開口面42bがドア30の裏面31aと接触しているため、ボックス40がドア30によって押され固定部材20に対して図3のc方向に回転する。
ロックピン72がカムロック71からはずれると、ドア30は、ドア付勢スプリング60の付勢力により固定部材20に対して開方向に(図4のb方向に)回転する。このとき、ボックス40もボックス付勢バネ50の付勢力により開口面42bがドア30の裏面31aに接触しながら固定部材20に対して移動位置40aに向って(図4のd方向に)回転する。
アウターボックス40がボックスストッパ25に当るまでドア30とボックス40が回転したとき、ボックス40のそれ以上の移動位置40a側への回転はボックスストッパ25により規制される。その後、ドア30はインナーボックス42の開口面42bから離れドア付勢スプリング60の付勢力によりさらに開位置側に固定部材20に対して回転し、ボス90が係合部80に係合する。
【0021】
(c)ドア30が開位置にあるとき
ドア30は、図5に示すように、固定部材20の開口21とインナーボックス42の開口を開放している。ボックス40は、ボックスストッパ25に当接している。ボックス40は、移動位置40aにある。インナーボックス42の一部(下端部)は、固定部材20の開口21から車室内に突出していてもよく、固定部材20の開口21から車室内に突出していなくてもよい(図示例では、ボックス内の物品を取出し易くするために突出している場合を示している)。ロックピン72は、カムロック71からはずれている。ボス90は、図7の2点鎖線で示すように、係合部80に係合している。
【0022】
(d)開位置にあるドア30を押し込んで閉じるとき
開位置にあるドア30をプッシュしてドア30に閉位置側への回転荷重を加えると(図5のa方向に回動させると)、ドア30は、ドア付勢スプリング60の付勢力に抗して閉動し、ボス90が係合部80からはずれる(ボス90と係合部80との係合が解除される)。ドア30は、閉動途中でインナーボックス42の開口面42bに当る(図6の状態)。
さらにドア30をプッシュして閉動させると、ドア30とインナーボックス42の開口面42bとが接触しながら、ドア30とボックス40が回転する。
ロックピン72がカムロック71に係合できる位置までドア30を回転させた後にドア30を押していた手をドア30から離すと、ロックピン72がカムロック71に係合するまで、ドア30がドア付勢スプリング60の付勢力で開方向に回転しボックス40がボックス付勢バネ50の付勢力で移動位置40a側に回転する。
ロックピン72がカムロック71に係合したとき、ドア30は閉位置にある。
【0023】
本発明の参考例の作用を説明する。
本発明の参考例では、ドア30が開位置にあるときボックス40は移動位置40aに位置するので、ボックス40の開口が固定部材20の奥まった位置にある場合に比べて、ボックス40の使用性が向上する。また、ドア30を開けるとボックス付勢バネ50の付勢力で移動位置40aに位置するので、ドア30を開ける動作でボックス40をボックス付勢バネ50の付勢力で移動位置40aまで回動させることができる。そのため、ボックス40を固定部材20の開口21側に移動させるのにドア30を開ける動作とボックス40を移動させる動作の両方の動作を要する場合に比べて、収納装置10の使用性が向上する。
【0024】
ロック装置70のロックを解除することで、ドア30をドア付勢スプリング60の付勢力で開けることができる。そのため、ドアを手で開ける場合に比べて操作性が向上する。
ドア30が開位置とその近傍に位置するときのみボス90が係合部80に係合し、ボス90が係合部80に係合しているときにドア30に対するボックス40の収納位置40b側への回動が規制されるので、ドア30が開いた状態のまま、ボックス40が移動40aから収納位置40b側に移動することを防止できる。そのため、シガライターを押し込んだり煙草の火を揉み消したりするときに、ドア30が開いた状態のままボックス40が収納位置40b側に回転することを防止できる。
【0025】
ドア30が閉位置にあるとき、インナーボックス42の開口面42bとドア30の裏面31aとが接触しているため、ドア30でインナーボックス42の収納部42a内部を酸欠にすることができ、消化性がよい。
【0026】
[実施例](図8〜図14)
つぎに、本発明実施例を、図8〜図14を参照して、説明する。
本発明実施例の車両用収納装置10bは、図8に示すように、固定部材20と、ドア30と、ボックス40とを、有する。車両用収納装置10bは、さらに、ドア付勢スプリング60と、ロック装置70と、開閉部材100と、開閉部材付勢バネ110を有する。
【0027】
固定部材20は、図9に示すように、車両の内装部材と、該内装部材に固定して設けられるリテーナ20aとを、備える。固定部材20は、車室内に向って開放する開口21を備える。
リテーナ20aは、図14に示すように、ドア30を回動可能に支持するドア軸部22と、ボックス40の後述のガイド突起43が摺動可能なガイド部26と、ロック装置70のカムロック71を回動可能に支持するロック軸部24と、開閉部材100の軸部101が摺動可能な長溝部27を、有する。
ガイド部26は、リテーナ20aの左右両側壁に設けられている。ガイド部26は、固定部材20の奥行き方向(固定部材20の開口21に接近・離反する方向)に直線状またはほぼ直線状に延びる第1のガイド部26aと、第1のガイド部26aの開口21側端に連なり第1のガイド部26aの延び方向と異なる方向に延びる第2のガイド部26bとを、有する。
長溝部27は、リテーナ20aの左右両側壁に設けられている。長溝部27は、ガイド部26よりも固定部材20の奥側に設けられている。長溝部27の長さは、閉位置にあるドア30のロック解除に要するドアプッシュストロークと同じかそれより大とされている。
【0028】
ドア30は、図8に示すように、ビス33等でリテーナ20aに回動可能に取付けられる。ドア30は、固定部材20の開口21を開閉する。ドア30は、ドア本体31と、ドア本体31の両側端に設けられるドアアーム32を有する。
ドア本体31は、固定部材20の開口21を開閉する。ドア本体31は、一枚構成であってもよく、複数枚構成であってもよい。
ドアアーム32は、ドア本体31と一体に形成されていてもよく、ドア本体31と別体に形成されてドア本体31に固定して取付けられていてもよい。
【0029】
ボックス40は、固定部材20内に全体が入り込む収納位置40bと収納位置40bよりも固定部材20の開口21側に移動した移動位置40aとに固定部材20に対して可動とされている。
ボックス40は、アウターボックス41と、インナーボックス42とを、備える。
アウターボックス41には、インナーボックス42の開口と同じかほぼ同じ大きさの開口41aが形成されている。アウターボックス41は、リテーナ20aのガイド部26に沿って可動なガイド突起43と、ドア30に回動可能に取付けられる回動軸部44とを、有する。
ガイド突起43は、ガイド部26内をガイド部26に沿って移動可能である。ガイド突起43は、ガイド部26内を移動および/または回動可能である。ここで、移動および/または回動可能とは、移動、回動、移動と回動のいずれかからなることを意味する。ガイド突起43は、ドア30が開位置とその近傍に位置するときのみ第2のガイド部26bに位置し、ドア30が開位置とその近傍以外に位置するとき第1のガイド部26aに位置する。
【0030】
インナーボックス42は、アウターボックス41と別体に形成されてアウターボックス41に着脱可能に取付けられている。
インナーボックス42は、収納部42aと、収納部42aの開口の周囲の開口面42bを有する。開口面42bは、開閉部材100の板部102と当接可能である。開口面42bまたは板部102には、当接打音低減のため、クッションゴム104等が設けられていてもよい。
【0031】
ドア付勢スプリング60は、ドア30を固定部材20に対して開方向に回動付勢する。ドア付勢スプリング60によるドア30の開動速度は、ダンパ34によって調節されている。ドア付勢スプリング60は、たとえばコイルスプリングからなる。ドア付勢スプリング60の一端は、ドア30に当てられており、ドア付勢スプリング60の他端は、リテーナ20aに当てられている。
【0032】
ロック装置70は、ドア30をドア付勢スプリング60の付勢力に抗して閉位置に保持する。ロック装置70は、カムロック71と、カムロック71に係脱可能なロックピン72とを、有する。
カムロック71は、たとえばハートカムである。カムロック71は、リテーナ20aにビス73等で回動可能に取付けられている。
ロックピン72は、ドアアーム32の延び方向先端部に設けられている。ロックピン72は、ドア30が閉位置にあるとき、カムロック71に係合する。
【0033】
開閉部材100は、インナーボックス42の収納部42aの開口を開閉する。開閉部材100は、軸部101と、板部102と、当接部103を、備える。
軸部101は、リテーナ20aの長溝部27内を移動および/または回動可能である。ここで、移動および/または回動とは、移動、回動、移動と回動のいずれかからなることを意味する。
板部102は、軸部101と一体に形成されていてもよく、軸部101と別体に形成されて軸部101に固定して取付けられていてもよい。板部102は、図9に示すように、軸部101から開口21に向って延びている。板部102は、ボックス40が収納位置40bにあるときにインナーボックス42の開口面42bと接触し、収納部42aの開口を閉塞する。
当接部103は、軸部101と一体に形成されていてもよく、軸部101と別体に形成されて軸部101に固定して取付けられていてもよい。当接部103の形状は、軸部101から板部102の延び方向と直交する方向に所定量延び、延び方向先端で折れ曲がり板部102の延び方向と平行な方向に所定量延びる、断面L字形状である。当接部103の、板部102の延び方向と平行な方向に延びる部分の延び方向先端は、ボックス40が収納位置40bにあるときにボックス40の外壁面に当接する。
【0034】
開閉部材付勢バネ110は、1部材からなる。開閉部材付勢バネ110は、たとえば、コイルスプリングからなる。開閉部材付勢バネ110は、軸部101が開口21に接近し板部102がボックス40の収納部42aの開口を開放する方向に(図9において、e方向、g方向に)、開閉部材100を固定部材20に対して付勢する。
【0035】
ここで、本発明実施例の作動を説明する。
(a)ドア30が閉位置にあるとき
ドア30は、図10に示すように、固定部材20の開口21を覆っている。ボックス40は、収納位置40bにある。ガイド突起43は、図14に示すように、第1のガイド部26aにある。開閉部材100の軸部101は、開閉部材付勢バネ110の付勢力により長溝部27の長手方向一端部27aまたはその近傍に位置する。開閉部材100の当接部103は、図10に示すように、ボックス40の外壁面46に当接している。開閉部材100の板部102は、インナーボックス40の開口面42bに接触している。インナーボックス42の開口面42bは、全周にわたって板部102に接触している。ロックピン72がカムロック71に係合している。
【0036】
(b)閉位置にあるドア30を開けるとき
閉位置にあるドア30をプッシュしてドア30に回転荷重を加えると(図10のb方向に回転させると)、ロックピン72がカムロック71からはずれる。このとき、ボックス40は、回動軸部44でドア30に回動可能に取付けられているため、図11に示すように、固定部材20の奥側に(図10のd方向に)動く。ボックス40が動くため、開閉部材100は、当接部103がボックス外壁面46に接触し板部102がインナーボックス42の開口面42bに接触したまま、軸部101が開閉部材付勢バネ110の付勢力に抗して長溝部27の長手方向他端部27b側に(図10のf方向に)移動する。
ロックピン72がカムロック71からはずれると、ドア30は、ドア付勢スプリング60の付勢力によりリテーナ20aに対して開方向に(図11のa方向に)回転する。このとき、ボックス40は、回動軸部44でドア30に回動可能に取付けられているため、ドア30によって引張られる。ドア30によって引張られるので、ガイド突起43が第1のガイド部26a内を移動および/または回動しながら、ボックス40は移動位置40aに向って(図11のc方向に)移動する。ボックス40が移動位置40aに向って移動するため、開閉部材100の軸部101が開閉部材付勢バネ110の付勢力により長溝部27の長手方向一端部27aに向かって移動および/または回動し、開閉部材100の板部102が開閉部材付勢バネ110の付勢力により開口面42bから離れる方向(図11のg方向)に向って回動する。
【0037】
(c)ドア30が開位置にあるとき
ドア30は、図12に示すように、固定部材20の開口21を開放している。ボックス40は、移動位置40aにある。インナーボックス42の一部(少なくとも下端部)は、固定部材20の開口21から車室内に突出していてもよく、固定部材20の開口21から車室内に突出していなくてもよい(図示例では、ボックス内の物品を取出し易くするために突出している場合を示している)。ガイド突起43は、第2のガイド部26bにある。ロックピン72は、カムロック71からはずれている。開閉部材100の軸部101は、開閉部材付勢バネ110の付勢力により、長溝部27の長手方向一端部27aに位置する。開閉部材100の板部102は、開閉部材付勢バネ110の付勢力により、リテーナ20aの天井面に当っている。
【0038】
(d)開位置にあるドア30を押し込んで閉じるとき
開位置にあるドア30をプッシュしてドア30に閉位置側への回転荷重を加えると、ドア30は、ドア付勢スプリング60の付勢力に抗して図12のb方向に閉動する。このとき、ボックス40のガイド突起43が第2のガイド部26bから抜けて第1のガイド部26aに進入し、ボックス40は、収納位置40bに向って(図12のd方向に)移動する。ボックス40は、収納位置40bへの移動途中で開閉部材100の当接部103に当る(図13の状態)。
さらにドア30をプッシュして閉動させると、ボックス40で開閉部材100の当接部103を押し込み、板部102が開口面42bに接触するまで開閉部材100が図13のh方向に回転する。
ロックピン72がロック71に係合できる位置までドア30を回転させた後にドア30を押していた手をドア30から離すと、ロックピン72がカムロック71に係合するまで、ドア30がドア付勢スプリング60の付勢力で開方向に回転し、ボックス40がドア30により引張られる。
ロックピン72がロック71に係合したとき、ドア30は閉位置にある。
【0039】
本発明実施例の作用を説明する。
本発明実施例では、ボックス40がドア30に回動可能に取付けられる回動軸部44を備えるので、ドア30を開けることでドア30の開動作に連動してボックス40を収納位置40bから移動40aまで出すことができる(引っ張りだすことができる)。そのため、ボックス40の収納部42aの開口が固定部材20の奥まった位置にある場合に比べてボックス40の使用性が向上する。また、ドア30を開ける動作でボックス40を移動位置40aまで移動させることができるため、ボックス40を固定部材20の開口21側に移動させるのにドア30を開ける動作とボックス40を移動させる動作の両方の動作を要する場合に比べて、収納装置10bの使用性が向上する。
また、ドア30が開位置とその近傍に位置するときにボックス40のガイド突起43が第2のガイド部26bに位置するので、ドア30が開位置にあるときにボックス40に収納位置40b側への荷重がかかった場合であっても、ボックス40が移動位置40aから収納位置40b側に動くことを防止できる。開いているときにボックス40にリテーナ奥側への荷重がかかっても、この荷重によりボックス40が収納位置40b側に移動することを防止できる。そのため、シガライターを押し込んだり煙草の火を揉み消したりするときに、ドア30が開いた状態のままボックス40が収納位置40b側に動くことを防止できる。
【0040】
ドア付勢スプリング60とロック装置70を有するので、ロック装置70のロックを解除することで、ドア30をドア付勢スプリング60の付勢力で開けることができる。そのため、ドア30を手で開ける場合に比べて操作性が向上する。
開閉部材100を有するので、インナーボックス42の収納部42a内の煙草の火の消化性が良い。
また、リテーナ20aが長溝部27を有しており、開閉部材100の軸部101が長溝部27内を移動および/または回動可能とされているので、閉位置にあるドア30をプッシュしてロック装置70のロックを解除するときに、開閉部材100が長溝部27に沿って移動する。そのため、ロック装置70のロックを解除するときに、開閉部材100が突っ張ることはない。
【0041】
本発明実施例では、ボックス40はリテーナ20aのガイド部26に沿って動くので、ボックス40の動きは回動のみではない。よって、ボックス40を固定部材20からせり出したり、固定部材20内に収納したりするときにボックス40の傾き量を少なくできる。その結果、ボックス40の動きが回動のみの場合に比べて、インナーボックス42の収納部42aに収納された収納物がインナーボックス42からこぼれることを防止できる。
【符号の説明】
【0042】
10a、10b 車両用収納装置
20 固定部材
21 固定部材の開口
25 ボックスストッパ
26 ガイド部
26a 第1のガイド部
26b 第2のガイド部
27 長溝部
30 ドア
31 ドア本体
32 ドアアーム
40 ボックス
40a 移動位置
40b 収納位置
41 アウターボックス
42 インナーボックス
42a インナーボックスの収納部
42b インナーボックスの開口面
43 ガイド突起
44 回動軸部44
50 ボックス付勢バネ
60 ドア付勢スプリング60
70 ロック装置
71 カムロック
72 ロックピン
80 係合部
90 ボス
100 開閉部材
101 軸部
102 板部
103 当接部
110 開閉部材付勢バネ
P ドアの回動軸芯
Q ボックスの回動軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)固定部材と、(b)ドアと、(c)ボックスと、を有し、
(a)前記固定部材は、開口とガイド部を備えており、
(b)前記ドアは、前記固定部材に対して回動可能とされ前記固定部材の開口を開閉し、
(c)前記ボックスは、前記固定部材のガイド部に沿って可動なガイド突起と、前記ドアに回動可能に取付けられる回動軸部とを、備えており、前記固定部材内に全体が入り込む収納位置と該収納位置よりも前記固定部材の開口側に移動した移動位置とに前記固定部材に対して可動とされている、
車両用収納装置。
【請求項2】
前記固定部材のガイド部は、前記固定部材の奥行き方向に直線状またはほぼ直線状に延びる第1のガイド部と、該第1のガイド部に連なり該第1のガイド部の延び方向と異なる方向に延びる第2のガイド部とを、有する、請求項1記載の車両用収納装置。
【請求項3】
ドア付勢スプリングと、ロック装置と、をさらに有し、
前記ドア付勢スプリングは、前記ドアを開方向に回動付勢しており、
前記ロック装置は、前記ドアを前記ドア付勢スプリングの付勢力に抗して閉位置に保持する、
請求項1記載の車両用収納装置。
【請求項4】
開閉部材と、開閉部材付勢バネと、をさらに有し、
前記固定部材は、該固定部材の奥行き方向に延びる長溝部を備えており、
前記開閉部材は、前記固定部材の長溝部内を可動な軸部と、前記ボックスが収納位置にあるときに前記ボックスの開口を閉塞する板部と、前記ボックスが収納位置にあるときに前記ボックスの外壁面に当接する当接部とを、備えており、
前記開閉部材付勢バネは、前記開閉部材を、前記軸部が前記固定部材の開口に接近し前記板部が前記ボックスの開口を開放する方向に付勢する、
請求項3記載の車両用収納装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−173288(P2009−173288A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116181(P2009−116181)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【分割の表示】特願2004−349328(P2004−349328)の分割
【原出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(597035023)明和工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】