説明

車両用圧縮空気供給装置

【課題】空気圧縮機から吐出された圧縮空気の水分を除去するための乾燥剤の交換時期を、正確に判断できるようにする。
【解決手段】車両に搭載するコンプレッサー4を備え、コンプレッサー4から吐出した圧縮空気を車両の負荷に供給するエアードライヤーモジュール10は、コンプレッサー4の吐出ラインに該圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するエアードライヤー11を設け、該エアードライヤー11にオイル検知センサー14を設け、該オイル検知センサー14の検知結果を出力する表示部3を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された空気圧縮機により圧縮空気を供給する車両用圧縮空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された空気圧縮機から吐出された圧縮空気をタンクに貯留して負荷に供給する構成において、空気圧縮機とタンクの間に、圧縮空気の水分を吸着する吸着剤(乾燥剤)を有する乾燥器を設けた装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された装置は、空気圧縮機のアンロード中に吸着剤の再生を行い、これにより、継続して圧縮空気の水分を除去できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−194717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の装置においては、継続使用に伴って吸着剤の劣化が進むと、上記のように再生を行っても吸着能が回復しにくくなるので、吸着剤を定期的に交換することが一般的である。吸着剤の交換時期の見極めは、車両の走行距離を目安とする方法や、乾燥器における気圧及び通気量に基づいて吸着剤の状態を推定する手法が用いられてきたが、いずれも吸着剤の状態を推定する方法であるため、吸着剤の交換時期を必要な時期よりも早めてしまうことがあった。
そこで本発明は、空気圧縮機から吐出された圧縮空気の水分を除去するための乾燥剤の交換時期を、正確に判断できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、車両に搭載する空気圧縮機を備え、該空気圧縮機から吐出した圧縮空気を車両の負荷に供給する車両用圧縮空気供給装置において、前記空気圧縮機の吐出ラインに、圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するエアードライヤーを設け、該エアードライヤーにオイル検知センサーを設け、該オイル検知センサーの検知結果を出力する出力部を備えたこと、を特徴とする車両用圧縮空気供給装置を提供する。
【0006】
また本発明は、上記車両用圧縮空気供給装置において、前記オイル検知センサーは、前記エアードライヤーのケース内部に配置されることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記車両用圧縮空気供給装置において、前記オイル検知センサーは、前記エアードライヤーが有する乾燥剤へ圧縮空気を導く導入部近傍に設置されることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記車両用圧縮空気供給装置において、前記オイル検知センサーは、オイルミスト濃度を検知する濃度センサーで構成されることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記車両用圧縮空気供給装置において、前記オイル検知センサーは、前記エアードライヤーにおけるケース底部のオイル溜り部に設けられた電極で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気圧縮機からの圧縮空気から水分等を除去するエアードライヤーにおける油分を検知し、その検知結果が出力されるので、水分等を除去する吸着材の吸着性能を劣化させる油分の存在を直接的に監視して、吸着剤の状態を判断することができ、吸着材を適正な時期に交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る圧縮空気供給システムの構成を示す図である。
【図2】エアードライヤーの構成を示す断面図である。
【図3】第2の実施の形態に係る圧縮空気供給システムの構成を示す図である。
【図4】第3の実施の形態に係るエアードライヤーの構成を示す断面図である。
【図5】油面検知センサーの構成を詳細に示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した第1の実施の形態に係る圧縮空気供給システム1の構成を示す図である。
図1に示す圧縮空気供給システム1(車両用圧縮空気供給装置)は、コンプレッサー4(空気圧縮機)と、コンプレッサー4を制御するECU2と、コンプレッサー4から吐出された圧縮空気の水分を除去して、上記車両の負荷に圧縮空気を供給するエアードライヤーモジュール10と、を備えて構成される。
ECU2は、圧縮空気供給システム1を搭載する車両の車速等に基づいて、上記車両のエンジンを制御するとともに、コンプレッサー4及びエアードライヤーモジュール10の動作を制御する。
【0013】
エアードライヤーモジュール10には、上記車両が備える負荷51〜54が接続されている。負荷51は主ブレーキ(前輪)、負荷52は主ブレーキ(後輪)、負荷53はパーキングブレーキであり、負荷54は、ホーンやクラッチ駆動機構等の圧縮空気で駆動されるアクセサリー類である。負荷51〜54はそれぞれ圧縮空気が流れる圧縮空気回路を備え、負荷51はエアータンク51aを備え、負荷52はエアータンク52aを備える。
エアードライヤーモジュール10は、ECU2の制御によって開閉される電磁弁101、102、103、及び、エアードライヤーモジュール10の各部における空気圧を検出して、検出値をECU2に出力する圧力センサー121、122、123、124を備えている。ECU2は、圧力センサー121〜123の検出値に基づいて、電磁弁101〜103を開閉させる。
【0014】
コンプレッサー4は、図示しない補機ベルトを介してエンジンに連結され、エンジンの駆動力によって空気を圧縮する。コンプレッサー4は空気圧で制御され、この制御ラインには電磁弁101が接続されており、電磁弁101の開閉によって、コンプレッサー4が空気を圧縮するロード状態と、圧縮を行わないアンロード状態とが切り替えられる。
【0015】
コンプレッサー4の吐出管41はエアードライヤーモジュール10の流入管111に接続され、流入管111にはエアードライヤー11が接続されている。エアードライヤー11は、ケース20に乾燥剤231を収容しており、この乾燥剤231によってコンプレッサー4から吐出された圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去する。
エアードライヤー11には排気バルブ12が設けられ、この排気バルブ12が開くとエアードライヤー11の本体内の圧縮空気が排気口112から直接外部へ排出される。排気バルブ12は空気圧で制御され、その制御ラインにはダブルチェックバルブ104が接続されている。排気バルブ12は通常時は閉鎖され、ダブルチェックバルブ104から空気圧が加わった場合のみ開弁する。
【0016】
エアードライヤーモジュール10は、空気圧により機械的に動作して排気バルブ12の開閉を制御するガバナ13を備えている。ガバナ13は、エアードライヤー11の下流側の供給路106における空気圧に従って動作し、この空気圧が所定の値を超えた場合にダブルチェックバルブ104に空気圧を与える。
一方、電磁弁102は、ECU2の制御により開閉され、開弁状態において供給路106の空気圧をダブルチェックバルブ104に与える。
ダブルチェックバルブ104は、ガバナ13または電磁弁102のいずれか一方が開いた場合に排気バルブ12に空気圧を与えて開弁させる。従って、排気バルブ12は、供給路106の空気圧が所定の値より高い場合、及び、電磁弁102が開いた場合に開弁して、圧縮空気を排気口112から放出する。
【0017】
ここで、エアードライヤーモジュール10内の空気圧が十分に高い状態で、排気バルブ12が開弁すると、エアードライヤー11よりも下流側の圧縮空気がエアードライヤー11のケース20内を逆流して排気口112から放出される。このときケース20を通る空気は急速な減圧によってスーパードライとなり、ケース20内の乾燥剤231から水分を奪うので、乾燥剤231が再生される。再生後の乾燥剤231は、水分を吸着する吸着能が回復しており、圧縮空気の水分を除去可能となっている。この再生動作は、ECU2によって電磁弁102を開弁させることで、予め設定された時間毎、或いは、エアードライヤーモジュール10内の空気圧等が予め設定された条件を満たした場合に実行される。
【0018】
エアードライヤーモジュール10は、負荷51(前輪の主ブレーキ)が接続される出力ポート113、負荷52(後輪の主ブレーキ)が接続される出力ポート114、負荷53(パーキングブレーキ)が接続される出力ポート115、及び、負荷54(アクセサリー類)が接続される出力ポート116を備えている。
【0019】
エアードライヤー11より下流の供給路106には、減圧弁131を介して分岐室135が接続されている。分岐室135には、出力ポート113に繋がる供給路及び出力ポート114に繋がる供給路が接続され、出力ポート113に繋がる供給路には保護弁141が設けられ、出力ポート114に繋がる供給路には保護弁142が設けられている。また、分岐室135には減圧弁132が接続され、減圧弁132の下流は出力ポート115に繋がる供給路と出力ポート116に繋がる供給路とに分岐し、それぞれ、保護弁143、144が設けられている。各保護弁141〜144は、絞り及びチェック弁と並列に配置され、それぞれ対応する出力ポート113〜116に接続された負荷51〜54において圧縮空気が流れる回路が失陥したときに閉鎖する。
【0020】
また、減圧弁132から出力ポート116に繋がる供給路には、保護弁144の下流側に減圧弁133が配置され、負荷54に対して減圧した圧縮空気を供給する構成である。
さらに、減圧弁132と保護弁143との間の供給路には、保護弁143をバイパスして出力ポート115に繋がる供給路136が延びている。供給路136には、出力ポート115から分岐室135への圧縮空気の逆流を防止する逆止弁137と、逆止弁137に対して直列に配された絞り138とを有する。
【0021】
圧力センサー121は供給路106の空気圧を検出し、圧力センサー122は保護弁141の下流側、すなわち出力ポート113の空気圧を検出し、圧力センサー123は出力ポート114の空気圧を検出し、圧力センサー124は出力ポート116の空気圧を検出する。これらの検出値は各圧力センサー121〜124からECU2へ随時出力される。
【0022】
ところで、負荷53に相当する上記車両のパーキングブレーキ装置は、空気圧により制動力が解除されて走行可能となる。具体的には、上記パーキングブレーキは駐車時にスプリングの力でブレーキシューを拡げて制動力を発揮し、解除時にはエアードライヤーモジュール10から供給される空気圧によりスプリングの力に抗してブレーキシューを閉じる構成となっている。本第1の実施の形態の負荷53は圧縮空気を貯留するエアータンクを備えていないが、エアードライヤーモジュール10は、エアータンクなしで負荷53を確実に動作させることが可能である。
【0023】
すなわち、保護弁141、142は、それぞれ、対応する負荷51、52の圧縮空気回路に圧縮空気が充分に満たされているとき、開弁状態にある。従って、主ブレーキ用のエアータンク51a、52aの圧縮空気を、分岐室135から減圧弁132を経て、供給路136を通して出力ポート115に供給できる。このため、エアータンク51a、52aの空気圧が十分に高い状態では、負荷53へ圧縮空気を供給してパーキングブレーキを解除できる。
【0024】
一方、エアータンク51a、52aの空気圧が十分でない場合、ECU2は電磁弁103を開弁し、電磁弁103の指令圧は逆止弁137に与えられ、逆止弁137により供給路136が閉鎖され、出力ポート115への圧縮空気の供給経路が遮断される。この場合、パーキングブレーキは解除不能となるが、主ブレーキに使用するエアータンク51a、52aの空気圧が不十分な場合はパーキングブレーキを解除しない方が好ましい。また、エアータンク51a、52aの空気圧が回復すればパーキングブレーキを解除できるようになる。従って、負荷53用のエアータンクが無くても、圧縮空気により安定してパーキングブレーキを動作させることができる。
【0025】
さらに、図1に示す圧縮空気供給システム1は、エアードライヤー11におけるオイルを検知するオイル検知センサー14を備えている。
エアードライヤー11の乾燥剤231は使用に伴って劣化し、再生を行った後の吸着能が次第に低下する。乾燥剤231の吸着能が不十分になると新しいものに交換されるが、コスト及び工数の面で、適正な交換時期を見極め、交換頻度を必要最小限に抑えることが望ましい。そこで、本第1の実施の形態の圧縮空気供給システム1は、エアードライヤーモジュール10にオイル検知センサー14を設け、このオイル検知センサー14によってケース20内のオイルを検知し、その検知結果に基づいて乾燥剤231の交換時期を判定できるようになっている。
すなわち、発明者らは、コンプレッサー4の吐出管41からエアードライヤー11に流れ込むコンプレッサーオイルが乾燥剤231の表面に付着すると、乾燥剤231の表面における吸着能が低下するとの知見を得、この知見に基づき、ケース20に流入したオイルを検知することで、乾燥剤231の状態をいわば直接的に検出する構成とした。この構成によれば、ケース20に流入したオイルを検知することで、乾燥剤231の表面におけるオイルの付着状態を検知できるので、乾燥剤231の劣化の度合いを適正に判断できる。
【0026】
そして、図1の圧縮空気供給システム1では、オイル検知センサー14はECU2に接続され、オイル検知センサー14においてオイルを検知した検知結果を示す信号がECU2に入力され、ECU2は、入力された信号に基づいて検知結果を取得する。さらに、ECU2には、オイル検知センサー14の検知結果を表示する表示部3(出力部)を備えている。表示部3の具体的な構成としては、検知結果に応じて点灯/消灯/点滅が切り替わるLEDや、検知結果を文字や記号等により表示する液晶表示パネルが挙げられる。この表示部3は、上記車両のスピードメータとともに実装されてもよいし、上記車両においてコンプレッサー4やエアードライヤー11の近傍に配置されてもよい。この表示部3により、運転者や、上記車両を整備する整備士、上記車両を管理する管理者等が、ケース20におけるオイルの検知状態を視認することができ、乾燥剤231の交換時期を適正に判断できる。例えば、表示部3において乾燥剤231の交換を推奨する表示がなされ、この表示に基づいて乾燥剤231が交換される。
【0027】
図2は、エアードライヤー11の具体的な構成例を示す断面図である。
図2には、オイル検知センサー14(図1)の一具体例として、オイルミストセンサー141を設けた構成を図示する。図2に示すように、エアードライヤー11のケース20は、ドライヤー本体21と、ドライヤー本体21に被さってボルト221により固定されたカートリッジカバー22とで構成される。ドライヤー本体21は、流入管111(図1)に接続され、コンプレッサー4の吐出管41から吐出された圧縮空気が流入する流入口211と、ケース20から供給路106(図1)とを有する。
【0028】
ドライヤー本体21の上部に固定された中空のカートリッジカバー22には、カートリッジ23が収容される。カートリッジ23は、ボルト235によって、カートリッジ23の外に圧縮空気が漏れないようにドライヤー本体21に固定されている。
カートリッジ23の内部には空間が形成され、この空間に粒状の乾燥剤231が充填されている。また、カートリッジ23の上端部には、圧縮空気をカートリッジ23外へ排出するチェック弁232が設けられ、チェック弁232の下方には、乾燥剤231をチェック弁232側から押さえるフィルター234及びスプリング233が配設されている。
また、カートリッジ23の下部には、乾燥剤231が収容された空間へのオイルの進入を防ぐため、流通する空気中のオイルミストを捕集するオイルフィルター24が配置されている。
【0029】
乾燥剤231の流入口211から流入した圧縮空気は、ドライヤー本体21に設けられた流入側気室213(導入部)に入り、さらにドライヤー本体21内に形成された流路(図示略)を通ってカートリッジ23に流入する。ここで、ドライヤー本体21内の流路はオイルフィルター24に繋がっており、オイルフィルター24を通った圧縮空気が乾燥剤231に到達する構成となっている。
そして、オイルフィルター24により油分を除去され、カートリッジ23の乾燥剤231によって水分が吸着除去された圧縮空気は、チェック弁232を通ってカートリッジ23の外に出て、カートリッジカバー22内に設けられた流路(図示略)を通り、流出口212からドライヤー本体21の外に流出する。
【0030】
ドライヤー本体21において、流入口211からカートリッジ23へ圧縮空気が流れる流路には、排気バルブ12が設けられている。排気バルブ12は、上述したようにケース20内の圧縮空気を外部へ排出する弁である。排気バルブ12の下部には排気管215が接続され、排気管215内には消音器217が収容されている。また、排気管215の下端にはカラー216が連結されており、カラー216の内部にも消音器218が収容されている。上述した再生動作により排気バルブ12が開弁すると、ケース20内の圧縮空気は排気管215とカラー216を通って、カラー216の下端に開口する排気口112から排出される。このとき圧縮空気は勢いよく排気口112から外気中に排出されるので、周囲に大きな騒音をもたらさないように、消音器217、218によって気流音を抑制している。
【0031】
そして、図2に示す構成においては、流入側気室213に、オイルミストセンサー141が配置されている。オイルミストセンサー141は、流入側気室213内を漂う油滴(オイルミスト)の濃度を光学的に計測するセンサーである。具体的には、オイルミストセンサー141は、LED等の発光部(図示略)と、この発光部が発した光を受光する受光部(図示略)と、受光部が受光した光量を示す検知信号を出力する信号出力部(図示略)とを有する。オイルミストセンサー141は、流入口211から流入していったん流入側気室213に貯留される圧縮空気におけるオイルミストの濃度を計測して、計測値を示す信号を、ECU2(図1)に出力する。
【0032】
ECU2は、オイルミストセンサー141から入力される信号に基づいて、オイルミストの濃度の積算値を算出し、所定時間内の積算値に応じて、表示部3に表示出力する。
この表示出力の形態としては、例えば、オイルミストセンサー141の計測値を数値やバーグラフ等により表示する形態のほか、オイルミストセンサー141の計測値が予め設定された閾値を超えた場合に、記号の表示やLEDの点灯・点滅により警告表示を行う形態等がある。
好ましい例としては、ECU2は、所定時間内におけるオイルミストの濃度の積算値が、予め設定された閾値を超えた場合に、表示部3による表示出力を行う。この場合の閾値は、オイルミストによって乾燥剤231の吸着能が劣化した場合に相当するオイルミストの積算値として、予め設定された量である。この閾値は、例えば、ECU2が内蔵するメモリーに格納されている。
【0033】
このように、圧縮空気供給システム1は、車両に搭載されたコンプレッサー4を備え、コンプレッサー4から吐出した圧縮空気を車両の負荷に供給するエアードライヤーモジュール10をコンプレッサー4に接続し、コンプレッサー4の吐出ラインに、圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するエアードライヤー11を設け、エアードライヤー11にオイル検知センサー14を設け、オイル検知センサー14の検知結果を出力する表示部3を備えたので、エアードライヤー11に流入したオイルを検知することで、乾燥剤231の表面におけるオイルの付着状態を直接的に検知できる。そして、その検知結果を出力することで、上記車両の運転者や整備者が、オイルの付着による乾燥剤231の劣化の度合いを正確に知ることができ、乾燥剤231の交換の要否を適切に判断でき、適切な時期に乾燥剤231を交換できる。
また、オイル検知センサー14は、エアードライヤー11のケース20内部に配置されるので、エアードライヤー11に流入したオイルを高精度で確実に検知できる。
さらにまた、オイル検知センサー14は、エアードライヤー11が有する乾燥剤231へ圧縮空気を導く導入部近傍の流入側気室213に設置されるので、外部からケース20に流入し、乾燥剤231の劣化の原因となるオイルを確実に検出できる。
さらにまた、上記圧縮空気供給システム1においては、オイル検知センサー14として、オイルミスト濃度を検知するオイルミストセンサー141で構成されるので、ケース20に流入したミスト状のオイルを確実に検知できる。
【0034】
[第2の実施の形態]
図3は、第2の実施の形態における圧縮空気供給システム1の構成を示す図である。
この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される各部には同符号を付して説明を省略する。
第2の実施の形態の圧縮空気供給システム1では、上述した第1の実施の形態とは異なり、オイル検知センサー14が、エアードライヤー11の下流側に接続された圧縮空気の配管に設けられている。
すなわち、オイル検知センサー14は、エアードライヤー11のケース20の外に位置して、ケース20内の乾燥剤231を通り抜けた圧縮空気におけるオイルミスト量を検出する。オイル検知センサー14は、例えば、第1の実施の形態で説明したオイルミストセンサー141であり、ECU2に接続され、上記配管におけるオイルミストの濃度を計測し、計測値を示す信号をECU2に出力する。
【0035】
この第2の実施の形態で、ECU2は、オイル検知センサー14から入力される情報または信号に基づいて、表示部3に出力を行う。具体的な出力形態は第1の実施の形態で説明したように種々あるが、好ましい例としては、ECU2は、所定時間内におけるオイルミストの濃度が、予め設定された閾値を超えた場合に、表示部3による表示出力を行う。
上述のように、乾燥剤231にコンプレッサーオイルが付着すると、乾燥剤231の表面における水分の吸着を阻害し、結果として乾燥剤231の吸着能が低下する。この減少が進行すると、カートリッジ23を通過した圧縮空気に、乾燥剤231に付着したコンプレッサーオイルが混ざるので、下流に設けたオイル検知センサー14によってオイルミストとして検出される。そこで、本第2の実施の形態では、オイル検知センサー14によって検出されたオイルミストの濃度が、予め設定された閾値を超えたか否かをECU2によって判別し、この判別結果を表示部3により表示出力する。この閾値は、例えば、ECU2が内蔵するメモリーに格納されている。
この第2の実施の形態によれば、エアードライヤー11の下流側において圧縮空気に混ざるコンプレッサーオイルの量から、乾燥剤231の状態を直接検知することができ、検知した乾燥剤231の状態を出力できる。また、乾燥剤231の下流側においては通常は漏れ出ないコンプレッサーオイルを、乾燥剤231の下流側に設けたオイル検知センサー14により検出するので、確実かつ高精度で乾燥剤231の状態を検知できる。さらに、このオイル検知センサー14は、オイルフィルター24及び乾燥剤231を通った圧縮空気中のオイルミストを測定するので、この測定値は、実際に乾燥剤231に付着したオイルの量を直接観測したに等しい。このため、オイル検知センサー14を乾燥剤231の下流側に設けることで、乾燥剤231の状態をより直接的に検知できる。
【0036】
なお、この第2の実施の形態では、図3に示すようにエアードライヤー11のすぐ下流側の配管にオイル検知センサー14を設けた構成を例示したが、オイル検知センサー14の位置は、エアードライヤー11の乾燥剤231よりも下流側であれば特に限定されない。例えば、エアードライヤー11の流出口212(図2)の近傍にオイル検知センサー14(オイルミストセンサー141)を設けてもよいし、供給路106や、供給路106に設けたエアータンク(図示略)の中にオイル検知センサー14を設けてもよい。
【0037】
また、上記の第1及び第2の実施の形態では、オイル検知センサー14としてオイルミストセンサー141を備えた構成を例に挙げて説明したが、例えば、液状のオイルに接触することを検知するセンサーを設けてもよい。
以下、この場合について第3の実施の形態として説明する。
【0038】
[第3の実施の形態]
図4は、第3の実施の形態に係るエアードライヤー11Aの構成例を示す断面図である。本第3の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分には同符号を付して説明を省略する。
図4に示すエアードライヤー11Aは、上述したエアードライヤー11に代えて用いられる装置である。エアードライヤー11Aは、ドライヤー本体21Aにカートリッジカバー22を固定して構成されるケース20Aを有し、ドライヤー本体21Aに設けられた流入口211から流入する圧縮空気をカートリッジカバー22内のカートリッジ23に通すことで、圧縮空気の水分を除去する。また、流入口211からカートリッジ23へ至る圧縮空気の流路にはオイルフィルター24が配置され、圧縮空気に含まれるオイルはオイルフィルター24によって捕集される。
【0039】
エアードライヤー11Aのドライヤー本体21Aには、オイルパン251(オイル溜り部)が設けられている。オイルパン251は、オイルフィルター24の下方に位置して、オイルフィルター24により捕集されて落下したオイルを貯留する凹部である。オイルパン251は、流入口211から流入した圧縮空気を貯留する流入側気室252の下部に形成されている。オイルパン251の底部にはドレインボルト253が配設され、このドレインボルト253を開放することでオイルパン251のオイルを排出できる。
そして、オイルパン251には、オイルパン251に貯留されたオイルの液面が所定の位置まで上昇したことを検知する油面検知センサー26が配置されている。油面検知センサー26は、図1に示すオイル検知センサー14に相当するセンサーである。
【0040】
図5は、油面検知センサー26の構成を詳細に示す要部拡大断面図である。
油面検知センサー26は、略箱形のセンサー本体261と、絶縁体により構成される電極支持部262とを備え、この電極支持部262から2本の電極263、264が立設されている。電極263、264は棒状の導体により構成され、所定の間隔を開けて平行に下方に延びている。センサー本体261には、電極263、264間の電気抵抗値に基づき、電極263と電極264とが導通したことを検知する検知回路(図示略)が内蔵されている。また、センサー本体261には、ドライヤー本体21Aの壁を貫通して外に延びるリード線267、268が接続され、これらリード線267、268は、ECU2(図1)に接続される。
【0041】
オイルフィルター24から落下したオイル27がオイルパン251に貯留される間、油面検知センサー26は電極263、264間の電気抵抗値の監視を行い、オイル27の液面が上昇して図中の位置Lまで上昇すると、電極263、264がともにオイル27に浸って、電極263、264間の電気抵抗値が顕著に変化する。従って、油面検知センサー26は、電極263、264間の電気抵抗値に基づいてオイル27の液面が位置Lまで上昇したことを検知し、その検知結果を、リード線267、268を介してECU2に出力する。
この場合、流入口211から流入して乾燥剤231へ流れた圧縮空気に含まれていたオイルの量を直接検知することができ、乾燥剤231の表面におけるオイルの付着状態を直接的に検知できる。そして、その検知結果をECU2によって表示部3から出力することで、上記車両の運転者や整備者が、オイルの付着による乾燥剤231の劣化の度合いを正確に知ることができ、乾燥剤231の交換の要否を適切に判断できる。
【0042】
また、エアードライヤー11におけるケース20Aの底部に設けられたオイルパン251に、電極263、264を有する油面検知センサー26を設け、この油面検知センサー26によってオイル27の液面の高さを検知するので、オイルの量を確実に検知できる。
なお、本第3の実施の形態において、油面検知センサー26が電極263、264間の電気抵抗値を監視する構成とせず、電極263とリード線267、及び、電極264とリード線268とを接続して、ECU2において電極263、264間の電気抵抗値を検出してもよい。
【0043】
また、上述した各実施の形態は、本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されない。例えば、上記実施の形態では、オイル検知センサー14としてのオイルミストセンサー141及び油面検知センサー26を、ケース20、20Aの内部に設けた構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、エアードライヤー11の流入管111内部にオイル検知センサー14を設けてもよく、その配設位置は、乾燥剤231に向けて流れる圧縮空気に含まれるオイルを検知できる位置であれば、特に限定されない。また、上記実施の形態では、オイル検知センサー14の検知結果を出力する表示部3を備えた構成を例に挙げて説明したが、出力形態は任意に変更可能であり、例えば、オイル検知センサー14の検知結果を音声や構造物の動作または位置により出力してもよく、ECU2から外部の装置に対してオイル検知センサー14の検知結果を示す信号を有線または無線により出力してもよく、プリンターをECU2に接続した場合に、ECU2の制御によってオイル検知センサー14の検知結果が印刷出力されるようにしてもよい。さらに、上記実施の形態において、オイル検知センサー14の例としてオイルミストセンサー141及び油面検知センサー26を例に挙げて説明したが、この他に、ケース20Aに流入する圧縮空気を吸い込んで該圧縮空気中のオイルをフィルターにより捕集し、捕集したオイル量を検出するセンサーを、オイル検知センサー14として用いることも可能であり、オイルを検知できるものであれば特に限定されない。
【0044】
さらにまた、エアードライヤーモジュール10に接続される負荷は、主ブレーキ装置、パーキングブレーキ、及び、アクセサリー類に限定されず、圧縮空気を使用する機器類であれば何を接続してもよく、その他の細部構成についても任意に変更可能である。また、本発明の車両用圧縮空気供給装置の適用対象となる車両についても特に限定は無く、大型車両、小型車両、特殊車両、牽引車両、二輪車あるいは三輪車のいずれであってもよく、その規模及び形態は任意である。
【符号の説明】
【0045】
1 圧縮空気供給システム(車両用圧縮空気供給装置)
2 ECU
3 表示部(出力部)
4 コンプレッサー(空気圧縮機)
11 エアードライヤー
141 オイルミストセンサー(濃度センサー)
213 流入側気室(導入部)
251 オイルパン(オイル溜り部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載する空気圧縮機を備え、該空気圧縮機から吐出した圧縮空気を車両の負荷に供給する車両用圧縮空気供給装置において、
前記空気圧縮機の吐出ラインに、圧縮空気に含まれる水分等の異物を除去するエアードライヤーを設け、該エアードライヤーにオイル検知センサーを設け、該オイル検知センサーの検知結果を出力する出力部を備えたこと、
を特徴とする車両用圧縮空気供給装置。
【請求項2】
前記オイル検知センサーは、前記エアードライヤーのケース内部に配置されることを特徴とする請求項1記載の車両用圧縮空気供給装置。
【請求項3】
前記オイル検知センサーは、前記エアードライヤーが有する乾燥剤へ圧縮空気を導く導入部近傍に設置されることを特徴とする請求項1または2記載の車両用圧縮空気供給装置。
【請求項4】
前記オイル検知センサーは、オイルミスト濃度を検知する濃度センサーで構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用圧縮空気供給装置。
【請求項5】
前記オイル検知センサーは、前記エアードライヤーにおけるケース底部のオイル溜り部に設けられた電極で構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用圧縮空気供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−195171(P2010−195171A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41671(P2009−41671)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(510063502)ナブテスコオートモーティブ株式会社 (34)
【Fターム(参考)】