説明

車両用排気ガスセンサの冷却装置

【課題】車両用排気ガスセンサの冷却装置において、排気ガスセンサを積極的に冷却して排気ガスセンサの冷却性を向上することにある。
【解決手段】排気マニホルド(20)の集合部(23)に排気ガスセンサ(26)を排気マニホルドカバー(25)から外方に突出する状態で配置し、エンジンルーム(6)内に走行風が導入される開口部(33)を排気ガスセンサ(26)の配置位置よりも鉛直方向で下側に設け、開口部(33)から導入された走行風を排気ガスセンサ(26)に案内する断面ハット型のガイド部材(35)を排気マニホルドカバー(25)に取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用排気ガスセンサの冷却装置に係り、排気ガスセンサを熱害から保護する車両用排気ガスセンサの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンにおいて、排気マニホルド内の排気ガス中の空燃比を検出するために、排気マニホルドに排気ガスセンサを排気マニホルドカバーから外方に突出する状態で配置しているものがある。
この場合、排気マニホルドや触媒コンバータが放熱部となることから、排気ガスセンサを熱害から保護するために、排気ガスセンサを冷却する冷却装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−37854号公報
【特許文献2】特開平10−331632号公報
【0004】
特許文献1に係るエンジンの排気系構造は、排気管の取付穴部に排気ガスセンサを設ける際に、排気ガスセンサを軸線が略水平方向に指向するように挿入するとともにオイルパンの浅底部の下方に配設し、排気マニホルドカバーから外部に突出した状態で排気ガスセンサを排気マニホルドに取り付いている。
特許文献2に係る内燃機関の排気マニホルド装置は、排気マニホルドを1点集合形式にするとともに集合部位に容量部を設けたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の特許文献1では、車両前方から導入される走行風が集中的に排気ガスセンサに導かれるような構造になっておらず、走行風は、排気マニホルドカバーの表面に沿ってエンジンルームの上方に上昇して、エンジンルームの上方で拡散してしまう。このため、走行風が排気ガスセンサに直接当たらず、排気ガスセンサの冷却性が低下するというおそれがあった。
また、上記の特許文献2では、排気マニホルドを覆う排気マニホルドカバーは、排気マニホルドや触媒コンバータの熱気によって高温になる。そのため、排気マニホルドカバーには、高温時における使用者の手指による接触を警告するコーションマーク等の各種表示を刻印したコーションプレートを取り付けている。しかし、このコーションプレートは、警告用としての機能しか持っていなく、排気ガスセンサの冷却に用いることができなかった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、排気ガスセンサを積極的に冷却して排気ガスセンサの冷却性を向上する車両用排気ガスセンサの冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、エンジンの車両前側に複数の排気分岐管とこれら排気分岐管が集合する集合部とを有する排気マニホルドを取り付け、この排気マニホルドの車両下方側に触媒コンバータを配置し、前記排気マニホルドと前記触媒コンバータとを覆う排気マニホルドカバーを設け、前記排気マニホルドの集合部には排気ガスセンサを前記排気マニホルドカバーから外方に突出する状態で配置し、エンジンルーム内に走行風が導入される開口部を前記排気ガスセンサの配置位置よりも鉛直方向で下側に設けた車両用排気ガスセンサの冷却装置において、前記開口部から導入された走行風を前記排気ガスセンサに案内する断面ハット型のガイド部材を前記排気マニホルドカバーに取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用排気ガスセンサの冷却装置は、走行風を利用して排気ガスセンサを積極的に冷却し、排気ガスセンサの冷却性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両の前部の平面図である。(実施例)
【図2】図2は車両の前部の正面図である。(実施例)
【図3】図3は車両の前部の側面図である。(実施例)
【図4】図4は排気ガスセンサの冷却装置の拡大図である。(実施例)
【図5】図5は冷却装置を省略したエンジンの斜視図である。(実施例)
【図6】図6は図1のVI−VI線による車両の前部の断面図である。(実施例)
【図7】図7は排気ガスセンサの冷却装置の正面図である。(実施例)
【図8】図8は図6のVIII−VIII線による排気ガスセンサ及びセンサハーネスの一部断面図である。(実施例)
【図9】図9は車両の前部の断面図である。(変形例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、排気ガスセンサを積極的に冷却して排気ガスセンサの冷却性を向上する目的を、車両の走行風をガイド部材によって排気ガスセンサまで案内して実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図8は、この発明の実施例を示すものである。
図1〜図3において、1は車両、2はエンジンフード、3はフロントバンパ、4Lは左前輪、4Rは右前輪、5はダッシュパネル、6は車両1の前部のエンジンルームである。
このエンジンルーム6には、多気筒用(3気筒)のエンジン7が搭載される。
このエンジン7は、シリンダブロック8とシリンダヘッド9とシリンダヘッドカバー10とオイルパン11とを備え、シリンダブロック8に備えられたクランク軸12が車両前後方向Xと直交する方向である車両幅方向Yに向けた横置きに配置されている。
シリンダブロック8の左部には、変速機13が連結されている。また、この変速機13の車両前方には、ラジエータ14が配置されている。
エンジン7の上部には、吸気装置15を構成するように、エアクリーナ16とレゾネータ17と吸気マニホルド18とが配置されている。この吸気マニホルド18は、エンジン7の後部側に配置されている。
【0012】
車両1の前側で、エンジン7の前側には、排気装置19を構成するように、排気マニホルド20が取り付けられる。
この排気マニホルド20は、図5に示すように、マニホルド取付フランジ21によってシリンダヘッド9に接続される複数の排気分岐管として、3本の排気分岐管22A〜22Cと、これら排気分岐管22A〜22Cが集合する集合部23とを有する。
この排気マニホルド20の車両下方側には、集合部23に連結した触媒コンバータ24が配置される。
また、エンジン7には、放熱部となる排気マニホルド20と触媒コンバータ24とを覆うように排気マニホルドカバー25が取り付けられる。この排気マニホルドカバー25は、排気マニホルド20と触媒コンバータ24との全体を車両前方側から覆う形状に形成されている。
図4、図6に示すように、排気マニホルド20の集合部23には、排気ガスセンサ26を排気マニホルドカバー25から外方に突出する状態で配置される。
この排気ガスセンサ26は、図4〜図6に示すように、排気ガス中の空燃比を検出するものであって、排気マニホルド20の集合部23に固定されるセンシング部27と、このセンシング部27に連設した筒状部28とからなる。この筒状部28は、内部にハーネス用中空部29を形成し、排気マニホルドカバー25に形成されたセンサ挿通用孔30から上方に延びて配置される。センシング部27には、排気ガスセンサ26の上端部となる筒状部28の上端部28Aからハーネス用中空部29に挿入されたセンサハーネス31が接続している。
また、図8に示すように、筒状部28の上端部28Aのハーネス用中空部29内には、センサハーネス31の外周面と筒状部28の内周面との隙間を塞いでシールする環状のシール部材32が配置されている。このシール部材32は、耐熱性の低い材質によって形成されている。
図3に示すように、フロントバンパ3には、エンジンルーム6内に車両前方からの走行風が導入される開口部33を、排気ガスセンサ26の配置位置よりも鉛直方向で下側に設けている。
【0013】
この車両1には、排気ガスセンサ26を冷却する冷却装置34が設けられる。
この冷却装置34においては、開口部33から導入された走行風を排気ガスセンサ26に案内する断面ハット型のガイド部材35を、排気ガスセンサ26よりも車両前方で排気マニホルドカバー25の表面に取り付けている。
このガイド部材35は、図4、図7に示すように、排気マニホルドカバー25の上部の表面に配置され、排気マニホルドカバー25の表面から立ち上がる一壁部36・他壁部37と、この一壁部36・他壁部37の上端に連設した上壁部38とを備え、走行風の流通系路を形成する。
【0014】
そして、図2、図3、図6に示すように、車両1の走行時に、排気ガスセンサ26よりも低い位置にある開口部33からエンジンルーム6に導入された走行風は、排気マニホルドカバー25にあたってこの排気マニホルドカバー25の表面に沿ってエンジンルーム6の上方へと流れる。
そのとき、ガイド部材35の空気取入口40において、上壁部38の先端部38Aが排気マニホルドカバー25よりも車両前方に突出しているため、排気マニホルドカバー25の表面に沿って上方に流れようとする走行風は、上壁部38の先端部38Aに当たる。
そして、ガイド部材35によって、上壁部38の先端部38Aに当たった走行風を、排気マニホルドカバー25の前端部より車両後方に配置される排気ガスセンサ26ヘと案内することができる。
これにより、開口部33から導入される走行風をガイド部材35で積極的に排気ガスセンサ26ヘと案内でき、走行風を排気ガスセンサ26に吹きかけることができ、排気ガスセンサ26を効率良く冷却できる。
この結果、排気マニホルド20と触媒コンバータ24との放熱部からの熱害による排気ガスセンサ26の劣化や性能低下を防止できる。
【0015】
また、図6、図7に示すように、ガイド部材35は、内側に車両前後方向Xに延びるトンネル部39を、排気マニホルドカバー25の表面との間で形成している。このトンネル部39は、上記の走行風の流通系路を形成するものであって、走行風を取り入れるように車両前方に開口した空気取入口40と、排気ガスセンサ26に向けて車両後方に開口する空気排出口41とを有している。空気取入口40は、排気マニホルドカバー25よりも車両前方に突出するとともに、下方に向けて開口している。
このような構造により、ガイド部材35は、開口部33から導入される走行風を、空気取入口40から導入させてトンネル部39を介して空気排出口41から排出して排気ガスセンサ26に吹きかけることができる。
また、空気取入口40が排気マニホルドカバー25よりも車両前方に突出し且つ下方に向けて開口しているため、開口部33から導入されて、排気マニホルドカバー25に当たって車両上方に抜けようとする走行風を、トンネル部39の空気取入口40に確実に流入でき、そして、トンネル部39で車両後方に案内して空気排出口41から排気ガスセンサ26に集中的に吹きかけることができる。
これにより、開口部33からエンジンルーム6に導入される走行風を、ガイド部材35で排気ガスセンサ26まで導くことができ、排気ガスセンサ26を冷却できる。
【0016】
更に、図2、図4、図7に示すように、ガイド部材35は、空気取入口40から空気排出口41に向かうにつれてトンネル部39の通路断面積を漸次小さくするような形状に形成される。つまり、空気取入口40の幅W1は、空気排出口41の幅W2よりも大きく形成されている。
これにより、空気取入口40に流入した走行風が空気排出口41に流れるにつれて、走行風の流速を小さな通路断面積の部位で上げることができる。よって、空気排出口41から流速が上昇した走行風を排出し、この走行風をて排気ガスセンサ26に吹きかけることができ、排気ガスセンサ26をより効率良く冷却できる。
【0017】
また、図1、図4に示すように、ガイド部材35の上壁部38には、警告等のコーションマーク42が刻印によって設けられる。
これにより、ガイド部材35をコーションプレートと兼用でき、コーションプレートを別途設ける必要がなくなり、部品点数の増加を抑制できる。
また、ガイド部材35は排気マニホルドカバー25の表面から上方に突出しており、ガイド部材35の上壁部38にコーションマーク42を備えたことで、排気マニホルドカバー25の表面よりも突出した位置にコーションマーク42を配置できる。
これにより、使用者からコーションマーク42を見易くすることができ、使用者に対してコーションマーク42の視認性を高めることができる。
【0018】
図9は、この発明の変形例を示すものである。
図9に示すように、トンネル部39の空気排出口41は、排気ガスセンサ26の筒状部28の軸線方向に沿って上方に延びる縦長形状に形成されるとともに、その上端部41Aが排気ガスセンサ26の上端部となる筒状部28の上端部28Aまで延びるように形成される。
これにより、トンネル部39の空気取入口40から導入して排気マニホルドカバー25の表面に沿って上方に流れる走行風は、ガイド部材35の上壁部38に沿って流れて、筒状部28の上端部28Aのシール部材32に集中的に吹きかけられるとともにシール部材32を含んだ排気ガスセンサ26の筒状部28の全長全体に吹きかけられる。よって、走行風が排気ガスセンサ26に接触する接触面積を増加でき、耐熱性の低いシール部材32にも走行風を十分に流すことができる。この結果、シール部材32を含む排気ガスセンサ26全体に亘って冷却でき、排気マニホルド20と触媒コンバータ24との放熱部から発する熱害から排気ガスセンサ6全体を保護することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明に係る車両用排気ガスセンサの冷却装置を、各種エンジンに適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 車両
6 エンジンルーム
7 エンジン
20 排気マニホルド
22A〜22C 排気分岐管
23 集合部
24 触媒コンバータ
25 排気マニホルドカバー
26 排気ガスセンサ
27 センシング部
28 筒状部
28A 筒状部の上端部(排気ガスセンサの上端部)
29 ハーネス用中空部
30 センサ挿通用孔
31 センサハーネス
32 シール部材
33 開口部
34 冷却装置
35 ガイド部材
38 上壁部
38A 上壁部の先端部
39 トンネル部
40 空気取入口
41 空気排出口
41A 空気排出口の上端部
42 コーションマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの車両前側に複数の排気分岐管とこれら排気分岐管が集合する集合部とを有する排気マニホルドを取り付け、この排気マニホルドの車両下方側に触媒コンバータを配置し、前記排気マニホルドと前記触媒コンバータとを覆う排気マニホルドカバーを設け、前記排気マニホルドの集合部には排気ガスセンサを前記排気マニホルドカバーから外方に突出する状態で配置し、エンジンルーム内に走行風が導入される開口部を前記排気ガスセンサの配置位置よりも鉛直方向で下側に設けた車両用排気ガスセンサの冷却装置において、前記開口部から導入された走行風を前記排気ガスセンサに案内する断面ハット型のガイド部材を前記排気マニホルドカバーに取り付けたことを特徴とする車両用排気ガスセンサの冷却装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は内側に車両前後方向に延びるトンネル部を有し、このトンネル部は空気を取り入れる空気取入口と前記排気ガスセンサに向けて車両後方に開口する空気排出口とを有し、前記空気取入口は前記気マニホルドカバーよりも車両前方に突出するとともに車両下方に向けて開口することを特徴とする請求項1に記載の車両用排気ガスセンサの冷却装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記空気取入口から前記空気排出口に向かうにつれて前記トンネル部の通路断面積が漸次小さくなるように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の車両用排気ガスセンサの冷却装置。
【請求項4】
前記空気排出口は、前記排気ガスセンサの軸線方向に沿って延びる縦長形状に形成されるとともに、上端部が前記排気ガスセンサの上端部まで延びるように形成されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用排気ガスセンサの冷却装置。
【請求項5】
前記ガイド部材の上壁部には、警告等のコーションマークが刻印によって設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用排気ガスセンサの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−127202(P2012−127202A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276755(P2010−276755)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】