説明

車両用油圧制御装置

【課題】変速部の油圧制御において元圧が不足することを回避しつつ、その元圧が必要以上に高くなることを抑制することができる車両用油圧制御装置を提供する。
【解決手段】モジュレータ圧切替制御手段238は、上記元圧であるモジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧である時に、変速部入力トルクTatinが所定の入力トルク判定値未満から入力トルク判定値以上に増大すると推定される場合には、実際の変速部入力トルクTatinが増大する前に予めモジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧に切り換える。従って、実際の変速部入力トルクTatinが大きくなる前に、モジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧から高圧モジュレータ圧へと予め高くされるので、そのモジュレータ圧PLPMの上昇が変速部入力トルクTatinの増大に対して遅れることなく、変速部19の油圧制御においてモジュレータ圧PLPMが不足することを回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において、走行用駆動力源の動力を伝達する変速部の油圧制御機器へ供給する元圧を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用駆動力源の動力が入力される変速部の油圧制御機器へ油圧制御のための元圧を供給する車両用油圧制御装置が、従来から知られている。例えば、特許文献1の車両用自動変速機の制御装置がそれである。その特許文献1の制御装置は、上記走行用駆動力源であるエンジンに対する要求負荷に基づいてそのエンジンの推定トルクを算出する。上記要求負荷には、例えば、アクセル開度またはスロットル開度などが相当する。上記特許文献1の制御装置は、上記エンジンと前記変速部を構成する自動変速機との間に介装されたトルクコンバータから出力されるトルコン出力トルクを、上記算出したエンジン推定トルクを基に先読みし、その先読みしたトルコン出力トルクを基に上記自動変速機の油圧制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−285510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載のように、車両用の自動変速機は油圧制御で作動するものであり、その油圧制御のための元圧が上記自動変速機の油圧制御回路に供給されている。この元圧が高いほど、例えば自動変速機に含まれる係合装置の係合力を大きくできるので、自動変速機へのより大きな入力トルクを受け止めることができる。その一方で、上記元圧が、上記入力トルクを上記係合装置が受け止めるために必要な油圧と比較して格段に高いとすれば、その元圧を発生させる油圧ポンプが必要以上に駆動されていることに起因して、動力損失が増えて燃費が悪化する可能性があった。このような未公知の課題に対して、上記自動変速機への入力トルクに応じて上記元圧の大きさを段階的に又は連続的に切り換えるということが、発明者により想定された。しかしながら、例えば上記入力トルクが増大したことが検出された場合に上記元圧が上昇させられるとすると、その入力トルクの増大に対して上記元圧の上昇が遅れ、過渡的に上記元圧が不足し、前記係合装置のトルク容量不足などが生じる可能性が考えられた。なお、このような課題は未公知のことである。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、前記変速部の油圧制御において元圧が不足することを回避しつつ、その元圧が必要以上に高くなることを抑制することができる車両用油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、(a)走行用駆動力源の動力が入力される変速部の油圧制御機器へ供給する元圧を第1油圧とその第1油圧よりも高い第2油圧とに段階的に切り換える車両用油圧制御装置であって、(b)前記元圧が前記第1油圧である時に、前記変速部に入力される入力トルクが増大すると推定される場合には、前記元圧を予め前記第2油圧に切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、前記変速部への入力トルクが大きくなる前に、前記元圧が第1油圧から第2油圧へと予め高くされるので、上記元圧の上昇がその入力トルクの増大に対して遅れることなく、上記変速部の油圧制御において元圧が不足することを回避することができる。また、上記入力トルクが増大するほど、前記元圧は、前記第1油圧から第2油圧へと段階的に高くされことになるので、その元圧が必要以上に高くなることを抑制することができ、その結果として、燃費の悪化を抑制することが可能である。なお、燃費とは、例えば単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、車両全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。逆に、燃費の低下とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が短くなることであり、或いは、車両全体としての燃料消費率が大きくなることである。
【0008】
ここで、第2発明の要旨とするところは、前記第1発明の車両用油圧制御装置であって、(a)前記走行用駆動力源にはエンジンが含まれており、(b)そのエンジンのアイドリング状態が解除されることを表す信号が得られた場合、前記エンジンのスロットル開度が予め定められたスロットル開度判定値未満からそのスロットル開度判定値以上に増大した場合、または、前記エンジンに対する要求負荷に基づいて算出されるエンジン推定トルクが予め定められたエンジン推定トルク判定値未満からそのエンジン推定トルク判定値以上に増大した場合に、前記入力トルクが増大すると推定されることを特徴とする。このようにすれば、上記エンジンのアイドリング状態が解除されることを表す信号、上記スロットル開度、および上記エンジン推定トルクの何れも、上記入力トルクの実際の増大に先立って変化するものであり、その入力トルクが増大するか否かを簡単に推定することができるので、制御負荷を軽減することが可能である。
【0009】
また、第3発明の要旨とするところは、前記第1発明または前記第2発明の車両用油圧制御装置であって、(a)前記走行用駆動力源と前記変速部との間に介装されたトルクコンバータの入出力部材間を機械的に直結するロックアップクラッチが設けられており、(b)前記ロックアップクラッチが解放されている場合に、前記入力トルクが増大するか否かを判断することを特徴とする。ここで、前記ロックアップクラッチが解放されている非ロックアップ状態では前記トルクコンバータのトルク増幅作用が生じ、前記入力トルクがそのトルクコンバータにより増幅されるので、上記ロックアップクラッチが係合されているロックアップ状態と比較して、その入力トルクに対して前記元圧が不足し易くなる。前記第3発明では、前記ロックアップクラッチが解放されている場合に、前記入力トルクが増大するか否かを判断するので、上記のように元圧が比較的不足し易い上記非ロックアップ状態において、過不足のない大きさの元圧を前記油圧制御機器に供給することが可能である。
【0010】
また、第4発明の要旨とするところは、前記第1発明から第3発明の何れか一の車両用油圧制御装置であって、前記変速部の変速速度が小さいときほど、前記元圧を前記第2油圧に設定する機会を多くすることを特徴とする。ここで、上記元圧が高いほど例えば係合装置のトルク容量を高くすることができるなどの理由から、前記変速部がトルク伝達を行う上で有利になる。その一方で、上記元圧が高いほど、油路を構成する機械部品の相互間においてオイルの漏れが多くなり、オイルの流量を多く確保するという面では不利になる。すなわち、前記変速部の変速速度が大きいほど上記オイルの流量が多く必要となるので、上記元圧が高いということは、その変速部の変速速度を大きくする上で不利になる。例えば上記変速部がベルト式無段変速機から構成されているとすれば、上記元圧が高いことに起因して、ベルト戻り性能が悪化するおそれがある。前記第4発明によれば、前記変速部の変速速度が小さいときほど、前記元圧を前記第2油圧に設定する機会を多くするので、前記変速部の変速速度が損なわれないオイルの流量を確保しつつ、そのオイルの流量不足が生じ難い前記変速部の変速速度が小さいときには、前記元圧を前記第2油圧に設定して、前記入力トルクに対し元圧不足になることを回避するようにすることが可能である。
【0011】
また、第5発明の要旨とするところは、前記第4発明の車両用油圧制御装置であって、前記変速部の変速速度が予め定められた変速速度判定値以下の場合には、前記元圧を前記第2油圧に設定することを特徴とする。このようにすれば、前記第4発明と同様に、前記変速部の変速速度が損なわれないオイルの流量を確保しつつ、そのオイルの流量不足が生じ難い前記変速部の変速速度が小さいときには、前記元圧を前記第2油圧に設定して、前記入力トルクに対し元圧不足になることを回避するようにすることが可能である。
【0012】
ここで、好適には、(a)前記変速部は、変速比を連続的に変化させることができる無段変速機を含んでいる。例えば、その無段変速機とは、前記走行用駆動力源側の第1可変プーリと駆動輪側の第2可変プーリとそれらの可変プーリに巻き掛けられた伝動ベルトとを含むベルト式無段変速機である。
【0013】
また、好適には、前記変速部の変速速度とは、その変速部の変速比の単位時間当たりの変化量である。
【0014】
また、好適には、(a)前記変速部は前記無段変速機を含んでおり、(b)その無段変速機の変速比が、その無段変速機の変速における変速比変化範囲の上限または下限にある場合には、前記変速部の変速速度が前記変速速度判定値以下であると判断する。このようにすれば、前記変速部の変速速度が前記変速速度判定値以下であるか否かを簡単に判断できるので、制御負荷の軽減を図ることが可能である。
【0015】
また、好適には、前記エンジンに対する要求負荷は、アクセルペダルの踏込量であるアクセル操作量(アクセル開度)、又は、そのアクセル開度に応じた開き角とされる前記スロットル開度などで表される。
【0016】
また、好適には、前記変速部は、変速比が油圧制御で自動的に変更される自動変速部である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用された車両用動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の車両用動力伝達装置などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図3】図2の油圧制御回路のうち、主にロックアップクラッチのロックアップ制御、およびシフトレバーの操作に伴う前進用クラッチおよび後進用ブレーキの係合油圧制御に関連する要部を示す実施例1の油圧回路図である。
【図4】図3の第1ソレノイドバルブおよび第2ソレノイドバルブの切替圧の出力に応じた前進用クラッチおよび後進用ブレーキの係合状態、ロックアップクラッチの係合状態、クラッチ元圧の油圧およびリニア元圧の油圧の状態を示す対応表である。
【図5】図1の前後進切替装置に入力される入力トルクに対するモジュレータ圧の関係を示した図である。
【図6】図2の油圧制御回路において、順次切り替えられるソレノイドパターンの具体例を示した遷移図である。
【図7】図6のソレノイドパターンを具体的に示す一覧表である。
【図8】図2の電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。
【図9】図1のエンジンにおいて、スロットル開度をパラメータとしてエンジン回転速度とエンジン推定トルクとの予め実験的に求められた関係を例示した図である。
【図10】図2の電子制御装置の制御作動の要部、すなわち、モジュレータ圧を高圧モジュレータ圧または低圧モジュレータ圧に切り換える制御作動を説明するためのフローチャートである。
【図11】図1の無段変速機の変速速度と変速部入力トルクとの2次元座標系を、図2の油圧制御回路が元圧LOモードとされる領域と元圧HIモードとされる領域とに領域分けしたマップである。
【図12】本発明のさらに他の実施例である実施例2の油圧制御回路を簡略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明が適用された車両用動力伝達装置10の構成を説明する骨子図である。この車両用動力伝達装置10は横置き型自動変速機であって、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用駆動力源としてエンジン12を備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、エンジン12のクランク軸、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切替装置16、ベルト式の無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右一対の駆動輪24L,24R(特に区別しない場合は、駆動輪24と表す)へ分配される。上記前後進切替装置16および無段変速機18は、シフトレバー操作などに応じて車両用動力伝達装置10の変速状態を変更しエンジン12の動力が入力される変速部19を構成している。
【0020】
トルクコンバータ14は、エンジン12と前後進切替装置16との間に介装されて、入力部材に相当するポンプ翼車14pと、出力部材に相当するタービン翼車14tとを備えており、そのポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの間で流体を介して動力伝達を行う流体伝動装置として機能する。そのポンプ翼車14pはエンジン12のクランク軸に連結されており、そのタービン翼車14tはタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されている。また、トルクコンバータ14は、ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの間に、それらのポンプ翼車14pとタービン翼車14tとを機械的に直結するロックアップクラッチ26を備えている。そのロックアップクラッチ26は、油圧制御回路100(図3参照)内のロックアップリレーバルブ104(図3参照)などによって係合側油室および解放側油室と連通する油路が切り換えられることにより、係合または解放されるようになっている。たとえばロックアップクラッチ26が完全係合させられることによって、ポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tは一体回転させられる。また、ポンプ翼車14pには、無段変速機18の変速制御やベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ26の係合解放制御等を実施するための油圧を発生させる機械式のオイルポンプ28が連結されており、エンジンの回転と連動して作動させられる。
【0021】
前後進切替装置16は、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1とダブルピニオン型の遊星歯車装置16pとを主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介して非回転部材であるハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。その前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、及び、油圧制御回路100内のモジュレータ圧PLPMが供給されるバルブ類は、本発明の油圧制御機器に対応する。
【0022】
そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされることによりタービン軸34が入力軸36に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)になる。
【0023】
無段変速機18は、入力軸36に設けられた入力側部材である有効径が可変の駆動側プーリ(プライマリプーリ、プライマリシーブ)42すなわち走行用駆動力源側の第1可変プーリ42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の従動側プーリ(セカンダリプーリ、セカンダリシーブ)46すなわち駆動輪側の第2可変プーリ46と、それ等の可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えている。この無段変速機18では、それらの可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。
【0024】
可変プーリ42および46は、入力軸36および出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42aおよび46aと、入力軸36および出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42bおよび46bと、それらの間のV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとしての駆動側油圧アクチュエータ(プライマリプーリ側油圧アクチュエータ)42cおよび従動側油圧アクチュエータ(セカンダリプーリ側油圧アクチュエータ)46cとを備えて構成されており、駆動側油圧アクチュエータ42cへの作動油の油圧が油圧制御回路100によって制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変化させられる。
【0025】
図2は、図1の車両用動力伝達装置10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。そのCPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それにより、電子制御装置50は、エンジン12の出力制御や無段変速機18の変速制御およびベルト挟圧力制御やロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や無段変速機18およびロックアップクラッチ26の油圧制御用等に分けて構成される。
【0026】
電子制御装置50には、エンジン回転速度センサ52により検出されたクランク軸回転角度(位置)ACR(°)およびエンジン12の回転速度(エンジン回転速度)Neに対応するクランク軸回転速度を表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸34の回転速度(タービン回転速度)Ntを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された無段変速機18の入力回転速度である入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)Ninを表す信号、車速センサ(出力軸回転速度センサ)58により検出された無段変速機18の出力回転速度である出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)Noutすなわち出力軸回転速度Noutに対応する車速Vを表す車速信号、スロットルセンサ60により検出されたエンジン12の吸気配管32に備えられた電子スロットル弁30の開度θthすなわちスロットル開度θthを表すスロットル開度信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温TWを表す信号、CVT油温センサ64により検出された無段変速機18等の油圧回路の油温TCVTを表す信号、アクセル開度センサ66により検出されたアクセルペダル68の踏込量であるアクセル操作量Accすなわちアクセル開度Accを表すアクセル開度信号、フットブレーキスイッチ70により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無BONを表すブレーキ操作信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバー74のレバーポジション(操作位置)PSHを表す操作位置信号、油圧センサ75により検出される従動側油圧アクチュエータ46cのベルト狭圧Pdを表すベルト狭圧信号などが供給されている。なお、電子制御装置50は、予め定められた関係に従って、前記アクセル開度Accが増加するほどスロットル開度θthを増加させるスロットル制御を行い、そのスロットル開度θthの増加に伴いエンジン12に吸入される吸入空気量も増加する。また、スロットルセンサ60はスロットル開度θthに基づいてエンジン12のアイドリング状態を検出するアイドルスイッチを備えており、電子スロットル弁30がエンジン12をアイドリング状態とする開度θthであるときにはアイドルスイッチがオンになる。
【0027】
また、電子制御装置50からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SE、例えば電子スロットル弁30の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータ76を駆動するスロットル信号や燃料噴射装置78から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や点火装置80によるエンジン12の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。また、無段変速機18の変速比γを変化させる為の変速制御指令信号ST、伝動ベルト48の挟圧力を調整させる為の挟圧力制御指令信号S、ロックアップクラッチ26の係合、解放、スリップ量を制御させる為のロックアップ制御指令信号SLU、例えば油圧制御回路100内の前記ロックアップリレーバルブの弁位置を切り換える後述するソレノイドバルブ(第1ソレノイドバルブSL1、第2ソレノイドバルブSL2)を駆動するための指令信号やロックアップクラッチ26の係合力を調節するリニアソレノイドバルブSLUを駆動するための指令信号、ニュートラル制御時において前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1を解放乃至半係合させるための信号、ガレージシフト時において前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1の係合圧を調整するための信号などが油圧制御回路100へ出力される。上記ガレージシフトとは、シフトレバー74が例えばN→Dシフトのように非走行ポジションから走行ポジションへ操作されるシフトレバー操作のことである。そのガレージシフト時には、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1を係合させる際に過渡的に係合圧を調圧して係合ショックを抑えるガレージ制御が実行される。
【0028】
図3は、前記油圧制御回路100のうち、主にロックアップクラッチ26のロックアップ制御、およびシフトレバー74の操作に伴う前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の係合油圧制御に関連する要部を示す油圧回路図である。図3において、油圧制御回路100は、例えばエンジン12によって駆動されるオイルポンプ102から吐出された作動油の吐出圧を調圧してライン圧PLを出力するリリーフ式の第1レギュレータバルブ104、第1レギュレータバルブ104の調圧時に排出される余剰油を基にライン圧PLよりも低圧であるセカンダリ圧PL2を出力する第2レギュレータバルブ106、第1レギュレータバルブ104によって調圧されたライン圧PLを入力圧として、出力圧を高圧モジュレータ圧PLPMHおよび低圧モジュレータ圧PLPMLのいずれかに調圧する元圧調圧バルブ108、元圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMを元圧にソレノイドモジュレータ圧PSMを調圧するソレノイドモジュレータバルブ110、ソレノイドモジュレータバルブ110によって調圧されたソレノイドモジュレータ圧PSMを入力圧として第1切替圧PSL1を出力する第1ソレノイドバルブSL1、ソレノイドモジュレータバルブ110によって調圧されたソレノイドモジュレータ圧PSMを入力圧として第2切替圧PSL2を出力する第2ソレノイドバルブSL2、前記第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の出力状態に従って前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1へ供給される作動油を切替えるクラッチアプライコントロールバルブ112、前記第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の出力状態に従ってロックアップクラッチ26を解放状態(非作動状態)とする解放側位置(オフ側位置)およびロックアップクラッチ26を係合状態(作動状態)とする係合側位置(オン側位置)の何れか択一的に切り替えるロックアップリレーバルブ114、電子制御装置50から供給される駆動電流に対応した制御圧PSLUを出力するリニアソレノイドバルブSLU、ロックアップリレーバルブ114が係合側位置に切り替えられた状態でリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUに従ってロックアップクラッチ26の係合力を制御するためのロックアップコントロールバルブ116、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が選択的に係合或いは解放されるようにシフトレバー74の操作に従って油路が機械的に切り換えられるマニュアルバルブ118等を備えている。
【0029】
オイルポンプ102は、例えばベーンポンプや歯車ポンプで構成され、エンジン12の駆動に伴って駆動させられ、オイルパン120に貯留されている作動油を汲み上げて吐出ポートから吐出する。
【0030】
第1レギュレータバルブ104は、元圧調圧バルブ108、駆動側プーリ42の駆動側油圧アクチュエータ42c、および従動側プーリ46の従動側アクチュエータ46c等に供給されるライン圧PLを調圧するためのリリーフ式の調圧弁である。なお、第1レギュレータバルブ104は、図示しないリニアソレノイドバルブの制御圧PSLSを受け入れる油室を備えており、制御圧PSLSによってライン圧PLが最適な油圧に制御される。
【0031】
第2レギュレータバルブ106は、ロックアップクラッチ26等に供給されるセカンダリ圧PL2を調圧するためのリリーフ式の調圧弁である。なお、第2レギュレータバルブ106は、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUを受け入れる油室を備えており、制御圧PSLUによってセカンダリ圧PL2が最適な油圧に制御される。
【0032】
元圧調圧バルブ108は、第1レギュレータバルブ104によって調圧されたライン圧PLを入力圧として、出力圧を高圧モジュレータ圧PLPMHおよび低圧モジュレータ圧PLPMLのいずれか(以下、特に区別しない場合にはモジュレータ圧PLPMと記載する)に調圧する調圧弁である。元圧調圧バルブ108は、軸方向に移動させられることにより、高圧モジュレータ圧PLPMHを出力する高圧位置(図において左側)、低圧モジュレータ圧PLPMLを出力する低圧位置(図において右側)のいずれかに位置させられるスプール弁子122と、ライン圧PLが入力される入力ポート124と、スプール弁子122の切替位置に応じて選択的に入力ポート124と連通される出力ポート126と、出力されたモジュレータ圧PLPMを受け入れるフィードバックポート128と、第2ソレノイドバルブSL2からの第2切替圧PSL2を受け入れる油室130と、後進用ブレーキB1へ供給される油圧を受け入れる油室132と、スプール弁子122を高圧位置側に常時付勢するスプリング134とを、備えている。なお、モジュレータ圧PLPMが本発明の元圧に対応し、低圧モジュレータ圧PLPMLが本発明の第1油圧(低圧)に対応し、高圧モジュレータ圧PLPMHが本発明の第2油圧(高圧)に対応している。
【0033】
元圧調圧バルブ108では、下式(1)によって出力ポート126から出力されるモジュレータ圧PLPMが決定される。ここで、Fがスプリング134の付勢力を示し、PB1が後進用ブレーキB1に供給される作動油の油圧を示し、A1が油室132においてスプール弁子122が受ける受圧面積を示し、PSL2が第2ソレノイドバルブSL2から出力される第2切替圧PSL2を示し、A2が油室130においてスプール弁子122が受ける受圧面積を示し、ΔAがフィードバックポート128内の油室に形成されているスプール弁子122の受圧面積差を示している。
LPM=(F+PB1×A1-PSL2×A2)/ΔA ・・・・(1)
【0034】
ここで、シフトレバー74が後進ポジション以外のポジションにある場合、すなわち油室132に後進用ブレーキB1の油圧PB1が供給されない場合を前提とすると、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力されない場合には、モジュレータ圧PLPMは、式(1)より、F/ΔAとなる。このモジュレータ圧PLPM(=F/ΔA)が高圧モジュレータ圧PLPMHとなる。一方、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力される場合には、モジュレータ圧PLPMは、式(1)より、(F−PSL2×A2)/ΔAとなる。このモジュレータ圧PLPM(=F−PSL2×A2)/ΔAが低圧モジュレータ圧PLPMLとなる。したがって、第2ソレノイドバルブSL2から出力される第2切替圧PSL2によって、モジュレータ圧PLPMが高圧モジュレータ圧PLPMHおよび低圧モジュレータ圧PLPMLのいずれかに調圧される。具体的には、第2切替圧PSL2が出力される際には、低圧モジュレータ圧PLPMLに調圧される。なお、元圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMは、リニアソレノイドバルブSLUの元圧、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、駆動側油圧アクチュエータ42cの油圧を制御する図示しないリニアソレノイドバルブSLP、従動側油圧アクチュエータ46cの油圧を制御する図示しないリニアソレノイドバルブSLS等の元圧として使用される。
【0035】
ソレノイドモジュレータバルブ110は、元圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMを元圧にして、一定圧であるソレノイドモジュレータ圧PSMを調圧する。このソレノイドモジュレータバルブ110によって調圧されたソレノイドモジュレータ圧PSMが、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の入力圧として供給される。
【0036】
クラッチアプライコントロールバルブ112は、マニュアルバルブ118を介して前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1へ供給される作動油の供給状態を、元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMまたはリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUの何れかに切替える切替弁として機能する。クラッチアプライコントロールバルブ112は、軸方向に移動させられることにより、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1に供給される作動油を元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMとするnormal位置(図において、左側)、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUとするfail/ガレージ位置(図において右側)のいずれかに位置させられるスプール弁子140と、元圧調圧バルブ108によって調圧されたモジュレータ圧PLPMが入力される第1入力ポート142と、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが入力される第2入力ポート144と、マニュアルバルブ118の入力ポート160に接続され、スプール弁子140の切替位置に応じて第1入力ポート142および第2入力ポート144の何れかと連通される第1出力ポート146と、図示しない調圧弁によって調圧された制御圧PLPM2が入力される第3入力ポート148と、従動側油圧アクチュエータ46cの油圧Pdが入力される第4入力ポート150と、駆動側油圧アクチュエータ42cに接続され、スプール弁子140の切替位置に応じて第3入力ポート148および第4入力ポート150の何れかと連通される第2出力ポート152と、スプール弁子140をnormal位置側に常時付勢するスプリング154と、スプール弁子140にfail/ガレージ位置側に向かう推力を付与するために第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1を受け入れる油室156と、スプール弁子140にnormal位置側に向かう推力を付与するために第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2を受け入れる油室158とを、備えている。
【0037】
クラッチアプライコントロールバルブ112において、例えば第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が油室156に供給されると、スプール弁子140がスプリング154の付勢力に抗ってfail/ガレージ位置側(図において右側)に移動させられる。このとき、第2入力ポート144と第1出力ポート146とが連通させられ、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給される。また、第4入力ポート150と第2出力ポート152とが連通させられ、従動側油圧アクチュエータ46cの油圧Pdが駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。
【0038】
また、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が油室158に供給されると、スプール弁子140がnormal位置側(図において左側)に移動させられる。このとき、第1入力ポート142と第1出力ポート146とが連通させられ、モジュレータ圧PLPMがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給される。また、第3入力ポート148と第2出力ポート152とが連通させられ、制御圧PLPM2が駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。
【0039】
また、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力される場合、第2切替圧PSL2に基づく推進力およびスプリング154の付勢力によって、スプール弁子140が第1切替圧PSL1に基づく推進力に抗ってnormal位置側(図において左側)に移動させられる。したがって、モジュレータ圧PLPMがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給されると共に、制御圧PLPM2が駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。
【0040】
また、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力されない場合には、スプリング154の付勢力によって、スプール弁子140がnormal位置側(図において左側)に移動させられる。したがって、モジュレータ圧PLPMがマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給されると共に、制御圧PLPM2が駆動側油圧アクチュエータ42cに供給される。このように、クラッチアプライコントロールバルブ112は、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2に応じて、マニュアルバルブ118の入力ポート160すなわち前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に供給される係合圧を切り替える。
【0041】
マニュアルバルブ108において、入力ポート160には、クラッチアプライコントロールバルブ112の第1出力ポート146から出力された係合油圧Pa(制御圧PSLUまたはモジュレータ圧PLPM)が供給される。そして、シフトレバー74が「D」ポジション或いは「L」ポジションに操作されると、係合油圧Paが前進用出力ポート162を経て前進用クラッチC1に供給され、前進用クラッチC1が係合させられる。また、シフトレバー74が「R」ポジションに操作されると、係合油圧Paが後進用出力ポート164を経て後進用ブレーキB1に供給され、後進用ブレーキB1が係合させられる。また、シフトレバー74が「P」ポジションおよび「N」ポジションに操作されると、入力ポート160から前進用出力ポート162および後進用出力ポート164への油路がいずれも遮断され、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放させられる。
【0042】
トルクコンバータ14のロックアップクラッチ26は、係合側油路170を介して供給される係合側油室172内の油圧Ponと解放側油路174を介して供給される解放側油室176内の油圧Poffとの差圧ΔP(=Pon-Poff)によりフロントカバー178に摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチである。そして、トルクコンバータ14の運転条件としては、例えば差圧ΔPが負とされてロックアップクラッチ26が解放される所謂ロックアップオフ、差圧ΔPが零以上とされてロックアップクラッチ26が半係合される所謂スリップ状態、および差圧ΔPが最大値とされてロックアップクラッチ26が完全係合される所謂ロックアップオンの3条件に大別される。また、ロックアップクラッチ26のスリップ状態においては、差圧ΔPが零とされることによりロックアップクラッチ26のトルク分担がなくなって、トルクコンバータ14は、ロックアップオフと同様の運転状態とされる。
【0043】
ロックアップリレーバルブ114は、ロックアップクラッチ26を作動および非作動とするための作動側および非作動側に切り替えられる切替弁である。ロックアップリレーバルブ114は、ロックアップクラッチ26の係合位置(ON位置:図において右側)および解放位置(OFF位置:図において左側)を切替えるスプール弁子180と、そのスプール弁子180の一方の軸端側に設けられてスプール弁子180に解放位置(OFF位置)側へ向かう推力を付与するスプリング182と、スプール弁子180を解放位置(OFF位置)へ移動させるための第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1を受け入れる油室184と、スプール弁子180を係合位置(ON位置)側へ移動させるための第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2を受け入れる油室186と、第2レギュレータバルブ106によって調圧されたセカンダリ圧PL2が入力される入力ポート188と、ロックアップコントロールバルブ116の制御ポート212と連通される迂回ポート190と、係合側油路170と連通されている係合側ポート192と、解放側油路174と連通されている解放側ポート194とを、備えている。
【0044】
ロックアップコントロールバルブ116は、ロックアップクラッチ26を半係合状態とするスリップ位置(SLIP位置)、または完全係合状態とする完全係合位置(ON位置)の何れか切替えるためのスプール弁子200と、そのスプール弁子200にスリップ位置(SLIP位置)側へ向かう推力を付与するスプリング202と、そのスプール弁子200をスリップ側位置へ向かって付勢するためにトルクコンバータ14の係合側油室172内の油圧Ponを受け入れる油室204と、そのスプール弁子200を完全係合位置(ON位置)へ向かって付勢するためにトルクコンバータ14の解放側油室176内の油圧Poffを受け入れる油室206と、スプール弁子200を完全係合位置へ向かって付勢するために制御圧PSLUを受け入れる油室208と、セカンダリ圧PL2が入力される入力ポート210と、ロックアップリレーバルブ114の迂回ポート190と連通される制御ポート212とを、備えている。
【0045】
このように構成されたロックアップリレーバルブ114およびロックアップコントロールバルブ116により、係合側油室172および解放側油室174への作動油圧の供給状態が切り換えられてロックアップクラッチ26の作動状態が切り替えられる。
【0046】
まず、ロックアップクラッチ26が解放状態を含むスリップ状態乃至ロックアップオン状態に切り換えられた場合を説明する。ロックアップリレーバルブ114において、第2ソレノイドバルブSL2の切替圧PSL2が油室186に供給されてスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ移動させられ、入力ポート188に供給されたセカンダリ圧PL2が係合側ポート192から係合側油路1700を通り係合側油室172へ供給される。この係合側油室172へ供給されるセカンダリ圧PL2が油圧Ponとなる。同時に、解放側油室176は、解放側油路174を通り解放側ポート194から迂回ポート190を経てロックアップコントロールバルブ116の制御ポート212に連通させられる。そして、解放側油室176の油圧Poffがロックアップコントロールバルブ116によって調整されるに従い、差圧ΔP(=Pon-Poff)が調整されて、ロックアップクラッチ26の作動状態がスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り替えられる。
【0047】
具体的には、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ付勢されているときに、すなわちロックアップクラッチ26が係合側状態に切り換えられたときに、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200を完全係合位置(ON位置)へ付勢させるための制御圧PSLUが油室208へ供給されずスプリング202の推力によってそのスプール弁子200がスリップ位置(SLIP位置)とされると、入力ポート210に供給されたセカンダリ圧PL2が制御ポート212から迂回ポート190を経て解放側ポート194から解放側油路172を通り解放側油室176へ供給される。これにより、油圧Ponと油圧Poffとが同圧とされることから差圧ΔPが零とされて、ロックアップリレーバルブ114が係合位置へ切り換えられた状態であっても、ロックアップクラッチ26がロックアップオフと同等の状態とされる。
【0048】
また、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ付勢されているときに、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200を完全係合位置(ON位置)へ付勢するための予め定められた制御圧PSLUが(ロックアップオン時)が油室208へ供給されてスプール弁子200が完全係合位置へ付勢されると、入力ポート210から制御ポート212への油路が遮断され、解放側油室176にはセカンダリ圧PL2が供給されないと共に、解放側油室176内の作動油が制御ポート212を経てドレーンポートEXから排出される。これにより、油圧Poffが零とされることから差圧ΔPが最大とされてロックアップクラッチ26がロックアップオンとされる。
【0049】
また、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180が係合位置(ON位置)へ付勢されているときに、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200をスリップ位置(SLIP位置)と完全係合位置(ON位置)との間の状態へ位置させるための予め定められた制御圧PSLU が油室208へ供給されると、入力ポート210に供給されたセカンダリ圧PL2が制御ポート212を経て解放側油室176へ供給される状態と解放側油室176内の作動油が制御ポート212を経てドレーンポートEXから排出される状態とが、上記制御圧PSLUに基づいて調整される。つまり、油圧Poffは、ロックアップクラッチ26の回転速度差NSLP(Ne-Nt)が目標回転速度差NSLPとなる差圧ΔPとされるように制御圧PSLU に基づいてロックアップコントロールバルブ116によって調圧される。
【0050】
次に、ロックアップクラッチ26が解放状態に切り換えられた場合を説明する。ロックアップリレーバルブ114において、第2切替圧PSL2が油室186に供給されず、第1切替圧PSL1が油室184に供給されると、その第1切替圧PSL1に基づく推力およびスプリング172の付勢力によってスプール弁子180が解放位置(OFF位置)に移動させられ、入力ポート188に供給されたセカンダリ圧PL2が解放側ポート194からトルクコンバータ14の解放側油路174を通り、解放側油室176へ供給される。そして、係合側油室172を経てトルクコンバータ14の係合側油路170を通り係合側ポート192に排出された作動油が排出ポート214から潤滑回路216へ供給される。これにより、差圧ΔPが負とされてロックアップクラッチ26がロックアップオフとされる。
【0051】
上記のように構成される油圧制御回路100において、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力される一方、第2切替バルブSL2から第2切替圧PSL2が出力されない状態では、クラッチアプライコントロールバルブ112において、スプール弁子140がfail/ガレージ位置に移動させられる。なお、上記fail/ガレージ位置は、車両において何らかの故障が発生した場合、またはシフトレバー74を「N」ポジションから「D」、「R」、「L」ポジションのいずれかに切り替える際に実施されるガレージ制御時に切り替えられるものであり、この状態において、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが第2入力ポート144から第1出力ポート146を経てマニュアルバルブ118の入力ポート160に供給される。そして、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の一方にその制御圧PSLUが供給され、その制御圧PSLUに基づいて前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1が滑らかに係合される。また、駆動側油圧アクチュエータ42cには従動側油圧アクチュエータ46cの油圧Pdが供給されることで、予め設定されている変速比γaに調整される。
【0052】
このとき、ロックアップリレーバルブ114においては、第1ソレノイドバルブSL1の切替圧PSL1が油室184に供給されるに従い、スプール弁子180が解放位置(OFF位置)に切り替えられるため、ロックアップリレーバルブ114の迂回ポート190は遮断された状態となる。したがって、ロックアップリレーバルブ114とロックアップコントロールバルブ116とは、遮断された状態となり、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが油室208に供給されてもロックアップクラッチ26には影響が生じない。上記より、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力された状態では、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の係合圧となる。
【0053】
また、元圧調圧バルブ108では、油室130に第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が供給されないため、スプール弁子122が高圧位置(図において左側)に位置させられる。この状態では、上述したように、出力ポート126から高圧モジュレータ圧PLPMHが出力される。
【0054】
また、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力されない一方、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力される状態では、ロックアップリレーバルブ114において、スプール弁子180が係合位置(ON位置)側に位置させられる。この状態において、上述したように、ロックアップコントロールバルブ116の油室208にリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが供給されることで、スプール弁子200がSLIP位置乃至ON位置の範囲で制御され、ロックアップクラッチ26の係合状態(スリップ状態)が制御される。このとき、クラッチアプライコントロールバルブ112においては、第2切替圧PSL2が油室138に供給されることで、スプール弁子140がnormal位置に位置させられるため、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが供給される第2入力ポート144が遮断された状態となる。上記より、第2ソレノイドバルブSL2から切替圧PSL2が出力された状態では、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUは、ロックアップクラッチ26の係合状態を制御するための制御圧として機能する。
【0055】
また、元圧調圧バルブ108では、油室130に第2ソレノイドバルブSL2の切替圧PSL2が供給されるため、スプール弁子122が低圧位置(図において右側)に位置させられる。この状態では、上述したように、出力ポート126から低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される。すなわち、ロックアップクラッチ26の作動時では、モジュレータ圧PLPMとして低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される。この低圧モジュレータ圧PLPMLは、クラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進切替装置16の前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に供給されるが、ロックアップクラッチ26の作動状態では、トルクコンバータ14のトルク増幅作用が生じないため、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に伝達されるトルクはロックアップクラッチ26の非作動時に比べて小さくなる。したがって、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に低圧モジュレータ圧PLPMLが供給されても、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1に伝達されるトルクが小さいため、前進用クラッチC1または後進用ブレーキB1において油圧不足すなわちトルク容量不足による滑りが発生しない。
【0056】
上記低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される場合、オイルポンプ102の駆動に消費されるエネルギが小さくなる。また、リニアソレノイドバルブSLUやソレノイドモジュレータバルブ110の調圧時において油の排出による消費流量が低減されるため、オイルポンプ102のポンプサイズを小さくすることができるに従い、燃費を向上させることができる。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1で発生する作動油の漏れを防止するシールリングによる引き摺り(シールリングロストルク)も低減されることで燃費が向上する。なお、シールリングによる引き摺りは、油圧の大きさに比例して増加する。
【0057】
上記のように、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2の作動状態の切替に関連して、クラッチアプライコントロールバルブ112の連通状態が切り替えられて前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の作動状態が制御されると共に、ロックアップリレーバルブ114の連通状態が切り替えられてロックアップクラッチ26への作動状態が制御される。なお、この第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2は、電子制御装置50により励磁、非励磁され、車両の走行状態に応じて適宜作動状態が切り替えられる。
【0058】
ところで、上述したように、ロックアップクラッチ26が作動状態にある場合、元圧調圧バルブ108から低圧モジュレータ圧PLPMLが出力されることで、燃費を向上する効果が得られているが、ロックアップクラッチ26の非作動時であっても、高圧モジュレータ圧PLPMHを必要とする場合は、例えば車両を停止させた状態でアクセルペダルを踏み込む所謂フルストール時などに限定され、所定のモード走行を含めた大抵の走行状態では、モジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLで賄うことができる。そこで、本実施例の油圧制御回路100では、ロックアップクラッチ26の非作動時においても、モジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHおよび低圧モジュレータ圧PLPMLのいずれかに調圧可能に構成されている。
【0059】
図4は、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2の出力に応じた前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1(以下、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1を特に区別しない場合には、前後進クラッチと記載する)の係合状態、ロックアップクラッチ26の係合状態、クラッチ元圧の油圧、およびリニア元圧の油圧を示している。なお、本実施例において、クラッチ元圧とは、元圧調圧バルブ108からクラッチアプライコントロールバルブ112を介して前後進クラッチに供給される油圧、すなわちモジュレータ圧PLPMを示しており、リニア元圧とは、リニアソレノイドバルブSLUに供給される元圧すなわちモジュレータ圧PLPMを示している。したがって、本実施例では、クラッチ元圧およびリニア元圧は、共に元圧調圧バルブ108から出力されるモジュレータ圧PLPMに対応する。また、「○」は第1ソレノイドバルブSL1・第2ソレノイドバルブSL2から切替圧(PSL1、PSL2)が出力されていることを示しており、「×」が出力されていないことを示している。
【0060】
図4の一番上に示すように、例えば第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力されない場合、クラッチアプライコントロールバルブ112では、スプリング154の付勢力によってスプール弁子140がnormal位置(図において、左側)に移動させられる。したがって、第1入力ポート142と第1出力ポート146とが連通させられるため、元圧調圧バルブ108のモジュレータ圧PLPMがクラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給され、前後進クラッチの係合が保持される。ロックアップリレーバルブ114では、スプリング182の付勢力によってスプール弁子180が解放位置(OFF位置)に移動させられるため、ロックアップクラッチ26の係合制御が不可すなわちロックアップクラッチ26が解放される。元圧調圧バルブ108では、スプリング134の付勢力によってスプール弁子122が高圧位置(図において左側)に移動させられ、元圧調圧バルブ108から高圧モジュレータ圧PLPMHが出力される。すなわちクラッチ元圧およびリニア元圧が高圧となる。
【0061】
また、図4の上から2番目に示すように、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力される一方、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力されない場合、クラッチアプライコントロールバルブ112では、第1切替圧PSL1が油室156に供給されるため、スプール弁子140がスプリング154の付勢力に抗ってfail/ガレージ位置(図において右側)側に移動させられる。したがって、第2入力ポート144と第1出力ポート146とが連通させられるため、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUがクラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給され、前後進クラッチの係合過渡期の油圧がリニアソレノイドバルブSLUによって制御される。ロックアップリレーバルブ114では、第1切替圧PSL1が油室184に供給され、スプリング182の付勢力および第1切替圧PSL1による推力によって、スプール弁子180が解放位置(OFF位置)に移動させられるため、ロックアップクラッチ26が解放される。元圧調圧バルブ108では、スプリング134の付勢力によってスプール弁子122が高圧位置(図において左側)に移動させられ、元圧調圧バルブ108から高圧モジュレータ圧PLPMHが出力される。すなわちクラッチ元圧およびリニア元圧が高圧となる。
【0062】
また、図4の上から3番目に示すように、第1ソレノイドバルブSL1から第1切替圧PSL1が出力されない一方、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力される場合、クラッチアプライコントロールバルブ112では、第2切替圧PSL2が油室158に供給されるため、スプリング154の付勢力および第2切替圧PSL2による推力によって、スプール弁子140がnormal位置(図において、左側)に移動させられる。したがって、元圧調圧バルブ108のモジュレータ圧PLPMがクラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給され、前後進クラッチの係合が保持される。ロックアップリレーバルブ114では、第2切替圧PSL2が油室186に供給されるため、第2切替圧PSL2による推力によってスプール弁子180がスプリング182の付勢力に抗って係合位置(ON位置)側へ移動させられる。したがって、ロックアップクラッチ26の係合制御が実施可能となる。元圧調圧バルブ108では、油室130に第2切替圧PSL2が供給されるため、第2切替圧PSL2による推力によってスプール弁子122がスプリング134の付勢力に抗って低圧位置(図において右側)に移動させられるため、元圧調圧バルブ108から低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される。すなわちクラッチ元圧およびリニア元圧が低圧となる。
【0063】
さらに、図4の1番下に示すように、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力される場合、クラッチアプライコントロールバルブ112では、第1切替圧PSL1が油室156に供給されると共に、第2切替圧PSL2が油室158に供給されるため、第2切替圧PSL2による推力およびスプリング154の付勢力によってスプール弁子140が第1切替圧PSL1による推力に抗ってnormal位置(図において、左側)に移動させられる。したがって、したがって、元圧調圧バルブ108のモジュレータ圧PLPMがクラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給され、前後進クラッチの係合が保持される。ロックアップリレーバルブ114では、第1切替圧PSL1が油室184に供給されると共に第2切替圧PSL2が油室186に供給されるため、第1切替圧PSL1による推力およびスプリング182の付勢力によってスプール弁子180が第2切替圧PSL2による推力に抗って解放位置(OFF位置)に移動させられるため、ロックアップクラッチ26が解放される。元圧調圧バルブ108では、油室130に第2切替圧PSL2が供給されるため、第2切替圧PSL2による推力によってスプール弁子122がスプリング134の付勢力に抗って低圧位置(図において右側)に移動させられるため、元圧調圧バルブ108から低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される。すなわちクラッチ元圧およびリニア元圧が低圧となる。
【0064】
上記より、本実施例の油圧制御回路100では、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2に基づいて、ロックアップクラッチ26の係合時(作動時)において、クラッチ元圧およびリニア元圧(モジュレータ圧PLPM)が低圧に調圧され、ロックアップクラッチ26の解放時(非作動時)において、クラッチ元圧およびリニア元圧が高圧および低圧のいずれかに調圧可能に構成されている。具体的には、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力されない場合、ロックアップクラッチ26が非作動とされ、且つ、元圧調圧バルブ108から高圧ラインモジュレータ圧PLPMHが出力される一方、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2共に出力される場合、ロックアップクラッチ26が非作動とされ、且つ、元圧調圧バルブ108から低圧ラインモジュレータ圧PLPMLが出力される。
【0065】
図5は、前後進切替装置16に入力される入力トルクに対するモジュレータ圧PLPMの関係を示している。図5において、直線L1は、前後進切替装置16に入力される入力トルク(変速部入力トルクTatin)に対して最低限必要な油圧を示しており、その入力トルクに比例して必要な油圧が大きくなる。モジュレータ圧PLPMがこの直線L1の油圧よりも高い油圧に設定されることにより、前後進クラッチで発生する滑りが防止される。図5に示すように、本実施例では、低圧モジュレータ圧PLPML(低圧)が、エンジン12の定格的に予め設定されているエンジン最大トルクTemaxを伝達可能な油圧に設定され、高圧モジュレータ圧PLPMH(高圧)が、予め定格的に設定されているタービン最大トルクTtmaxを伝達可能な油圧に設定されている。なお、タービン最大トルクTtmaxは、エンジン12およびトルクコンバータ14の特性に基づいて求められる。
【0066】
このように低圧モジュレータ圧PLPMLが設定されると、ロックアップクラッチ26の作動時(係合時)では、前後進切替装置16に入力される入力トルクがエンジン最大トルクTemaxを越えることはないため、前後進クラッチの係合保持時において前後進クラッチの滑りが防止される。また、ロックアップクラッチ26の作動時おいて低圧モジュレータ圧PLPMLが出力されるに従い、リニアソレノイドバルブSLUやソレノイドモジュレータバルブ110等の調圧時の消費流量が低減され、また、前後進クラッチでの引き摺りが低減されるため燃費が向上する。
【0067】
また、ロックアップクラッチ26の非作動時(解放時)にあっても、前後進切替装置16に入力される入力トルクがエンジン最大トルクTemaxまでの領域では、低圧モジュレータ圧PLPMLが出力されることで、ロックアップクラッチ26の作動時と同様に燃費が向上する。一方、ロックアップクラッチ26の非作動時(解放時)に前後進切替装置16に入力される入力トルクがエンジン最大トルクTemaxを越えると、高圧モジュレータ圧PLPMHに切り替えられることで、前後進切替装置16に入力された入力トルクによる前後進クラッチの滑りが防止される。
【0068】
また、本実施例のベルト式の無段変速機18では、車両走行中に急停止させると、ロックアップクラッチ26が速やかに解放され、次回の車両発進に備えて減速中に無段変速機18の変速比が速やかに予め設定されている変速比γ(例えば最減速変速比γmax)に変速される。その予め設定されている変速比γに向けて変速されるとき、高圧モジュレータ圧PLPMHが出力されている場合、消費流量が増加するため、無段変速機18の変速比γを制御する駆動側油圧アクチュエータ42cおよび従動側油圧アクチュエータ46cに十分な作動油を供給することが困難となるおそれがある。したがって、無段変速機18の変速が間に合わず、無段変速機18が不完全な変速比γとなり、次回の再発進時において駆動力が不足が発生する可能性がある。これに対して、低圧モジュレータ圧PLPMLでは、消費流量が低減されて、無段変速機18の駆動側油圧アクチュエータ42cおよび従動側油圧アクチュエータ46cに供給される作動油が確保されるため、車両急停止時の速やかな変速が可能となり、次回の車両再発進時の駆動力不足が解消される。
【0069】
図6は、順次切り替えられるソレノイドパターンの具体例を示した遷移図である。その図6(a)は、ロックアップクラッチ26が作動状態(ロックアップオン)から非作動状態(ロックアップオフ)に切り替えられ、更にそのロックアップクラッチ26の非作動状態においてモジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLから高圧モジュレータ圧PLPMHに切り替えられるソレノイドパターンを示している。図6(b)は、ロックアップクラッチ26の非作動状態においてモジュレータ圧PLPMが高圧モジュレータ圧PLPMHから低圧モジュレータ圧PLPMLに切り替えられるソレノイドパターンを示している。また、図7は、第1ソレノイドバルブSL1と第2ソレノイドバルブSL2とリニアソレノイドバルブSLUとの作動状態に応じて切り替わる図6の上記ソレノイドパターンを具体的に示した一覧表である。なお、図7において、「○」は該当するソレノイドバルブ(第1ソレノイドバルブSL1、第2ソレノイドバルブSL2)が作動状態すなわち切替圧(PSL1、PSL2)が出力されることを示しており、「×」は該当するソレノイドバルブが非作動状態すなわち切替圧(PSL1、PSL2)が出力されないことを示している。また、「△」はリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUが出力されていることを示している。また、ガレージ欄の「調圧」は前後進クラッチの係合圧が調圧されることを示しており、「係合」は前後進クラッチが完全係合されることを示している。
【0070】
図6(a)に示すパターン2は、ロックアップクラッチ26を作動させた状態での走行時のソレノイドパターンに対応しており、具体的には、図7に示すように第2ソレノイドバルブSL2が作動される、すなわち第2切替圧PSL2が出力されると共に、リニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUが調圧されて出力されることで、ロックアップクラッチ26の係合状態が制御圧PSLUによって制御され、元圧調圧バルブ108からモジュレータ圧PLPM(クラッチ元圧)として低圧モジュレータ圧PLPMLが出力されている。
【0071】
また、パターン4は、図7に示すように、第1ソレノイドバルブSL1、第2ソレノイドバルブSL2、およびリニアソレノイドバルブSLUが非作動状態とされる。このとき、ロックアップクラッチ26が解放され、且つ、第2ソレノイドバルブSL2から第2切替圧PSL2が出力されないため、元圧調圧バルブ108から高圧モジュレータ圧PLPMHが出力される。
【0072】
上記パターン2からパターン4にソレノイドパターンを切り替える際、図6(a)に示すように、実線で示すパターン2’、パターン3、およびパターン2’を順次経由して切り替えられる。ここで、ロックアップクラッチ26を作動状態から非作動状態に切り替えモジュレータ圧PLPMを低圧モジュレータ圧PLPMLのまま継続するのであれば、上記ソレノイドパターンがパターン3に切り替えられたところでその切替を止めればよい。
【0073】
上記パターン2’は、図7に示すように、パターン2においてリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが停止された状態に対応している。リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが停止されると、ロックアップコントロールバルブ116において、スプール弁子200がスリップ位置に移動させられるため、セカンダリ圧PL2がロックアップコントロールバルブ116およびロックアップリレーバルブ114を介してロックアップクラッチ26の解放側油室176に供給される。したがって、解放側油室176と係合側油室172との差圧ΔPが零となり、実質的にロックアップクラッチ26が解放された状態となる。
【0074】
次いで、パターン2’からパターン3にソレノイドパターンが切り替えられる。パターン3は、図7に示すように、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が出力されるものであり、パターン2’の状態から第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が出力されることで切り替えられる。ここで、パターン2’からパターン3への切替は、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180をOFF位置側に切り替えるために実施される。パターン3では、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が出力されることによって、ロックアップリレーバルブ114のスプール弁子180がOFF位置側に移動させられることで、ロックアップクラッチ26の油路が切り替えられてロックアップクラッチ26が解放された状態となる。
【0075】
そして、パターン3からパターン4に切り替えるに際して、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1および第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が順次非作動に切り替えられるが、本実施例では、必ず実線で示すパターン3からパターン2’を経由してパターン4となるように制御される。具体的には、パターン3の状態から先ず第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が停止され(パターン2’)、次いで第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が停止される(パターン4)ように制御される。
【0076】
パターン3からパターン2’に切り替えられると、第1ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が停止されるが、実質的にはパターン2の状態と変わらない。すなわち、ロックアップクラッチ26は解放され、元圧調圧バルブ108からは低圧モジュレータ圧PLPMLが出力される。そして、パターン2’の状態から第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が停止されることにより、パターン4に移行する。このとき、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が停止されることで、元圧調圧バルブ108のモジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLから高圧モジュレータ圧PLPMHに切り替えられる。
【0077】
ここで、パターン3からパターン4に切り替えられる際、仮に図6(a)の破線で示すように、先に第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2が停止されると、図7に示すパターン1となる。このとき、クラッチアプライコントロールバルブ112では、第2切替圧PSL2が停止されることにより、過渡的にスプール弁子140がfail/ガレージ位置に移動させられるため、第2入力ポート144と第1出力ポート146とが連通される。すなわち、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが、クラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給される(ガレージ制御)ように油路が切り替えられる。このとき、既にリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが出力されないため、前後進クラッチに供給される油圧が低下するに従いトルク容量が大きく低下し、前後進クラッチにおいて滑りが発生してしまう。これに対して、本実施例では、ソレノイドパターンをパターン3からパターン4へ切り替えるに際して、その過渡期にパターン1に切り替わるのを回避することにより、ガレージ制御が防止されるため、前後進クラッチの滑りが回避される。
【0078】
図6(b)は、上記パターン4(第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2非作動)からパターン3(第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2作動)にソレノイドパターンを切り替える際の経路を示している。パターン4からパターン3に切り替える際には、パターン2’(第2ソレノイドバルブSL2作動)を経由して切り替えられる。そのパターン2’は、図7に示すように、パターン2においてリニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが停止された状態に対応している。そして、パターン2’からパターン3に切り替えられる。
【0079】
ここで、パターン4からパターン3に切り替えられる過渡期に、仮に図6(b)の破線で示すように、先に第2ソレノイドバルブSL1の第1切替圧PSL1が出力されると、図7に示すパターン1となる。このとき、リニアソレノイドバルブSLUの制御圧PSLUが、クラッチアプライコントロールバルブ112およびマニュアルバルブ118を介して前後進クラッチに供給される(ガレージ制御)ように油路が切り替えられる。このより、前後進クラッチに供給される油圧が低下して前後進クラッチにおいて滑りが発生する可能性がある。これに対して、本実施例では、ソレノイドパターンをパターン4からパターン3へ切り替えるに際して、その過渡期にパターン1に切り替わるのを回避することにより、ガレージ制御が防止されるため、前後進クラッチの滑りが回避される。
【0080】
図8は、電子制御装置50に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。図8に示すように、電子制御装置50は、ロックアップ制御判断部としてのロックアップ制御判断手段230と、ガレージ制御判断部としてのガレージ制御判断手段232と、入力トルク推定判断部としての入力トルク推定判断手段234と、変速速度判断部としての変速速度判断手段236と、モジュレータ圧切替制御部としてのモジュレータ圧切替制御手段(元圧切替制御手段)238とを機能的に備えている。
【0081】
ロックアップ制御判断手段230は、現在の車両状態に基づいて、ロックアップクラッチ26がロックアップオンにされるロックアップ制御が実行中であるか否かを判断する。例えば、スロットル弁開度θth及び車速Vを変数とする2次元座標において、ロックアップクラッチ26がロックアップオフにされるロックアップオフ領域とロックアップクラッチ26がロックアップオンにされるロックアップオン領域とに領域分けされた予め実験的に定められた関係、すなわちロックアップ制御マップを記憶している。そして、実際のスロットル弁開度θth及び車速Vを逐次検出し、その検出したスロットル弁開度θth及び車速Vで示される車両状態に基づいて、上記ロックアップ制御マップから、ロックアップクラッチ26がロックアップオンにされる車両状態か否か、すなわち、前記ロックアップ制御が実行中であるか否かを逐次判断する。具体的に、ロックアップ制御判断手段230は、上記検出したスロットル弁開度θth及び車速Vで示される車両状態が前記ロックアップオン領域に属していれば、その車両状態(現在の車両状態)がロックアップクラッチ26がロックアップオンにされる車両状態であると判断する。すなわち、前記ロックアップ制御が実行中であると判断する。その一方で、上記検出したスロットル弁開度θth及び車速Vで示される車両状態が前記ロックアップオフ領域に属していれば、ロックアップクラッチ26がロックアップオフにされる車両状態であると判断する。すなわち、前記ロックアップ制御が実行中ではないと判断する。
【0082】
ガレージ制御判断手段232は、前記ガレージ制御が実行中であるか否かを判断する。具体的には、シフトレバー74が非走行ポジションから走行ポジションへ操作された時から、前記前後進クラッチの係合圧を調圧する前記ガレージ制御が終了するまで、すなわちその前後進クラッチが完全係合に至るまで、前記ガレージ制御が実行中であると判断する。なお、上記ガレージ制御が実行中であると判断されているときには、通常、車速Vは極低速であるので、ロックアップクラッチ26はロックアップオフである。
【0083】
入力トルク推定判断手段234は、前記ロックアップ制御が実行中ではないとロックアップ制御判断手段230により判断され、且つ、前記ガレージ制御が実行中ではないとガレージ制御判断手段232により判断された場合に、車両が、前記変速部19に入力される入力トルクTatinが所定の入力トルク判定値T1atin以上の高トルクになることが推定(予想)され或いはその高トルクが継続することが推定(予想)される高トルク入力予想状態であるか否かを判断する。そのために、入力トルク推定判断手段234は、上記変速部19への入力トルクTatin(以下、変速部入力トルクTatinという)を推定するが、具体的には、その変速部入力トルクTatinに関連した入力トルク関連パラメータを検出することで、上記変速部入力トルクTatinを間接的に推定する。例えば、上記入力トルク関連パラメータには、スロットルセンサ60に設けられたアイドルスイッチのオン・オフ、スロットル開度θth、または、エンジン12に対する要求負荷に基づくエンジン推定トルクTesなどが相当するが、本実施例の入力トルク推定判断手段234は、上記入力トルク関連パラメータとして上記エンジン推定トルクTesを算出する。上記要求負荷は、アクセル開度Accまたはスロットル開度θthなどで表されるが、例えば、入力トルク推定判断手段234は、図9に示すようなスロットル開度θth(或いは吸入空気量)をパラメータとしてエンジン回転速度Neと上記エンジン推定トルクTesとの予め実験的に求められて記憶された関係(エンジントルクマップ)から、実際のエンジン回転速度Neおよびスロットル開度θth(或いは吸入空気量)に基づいて上記エンジン推定トルクTesを求める。なお、前記変速部入力トルクTatinとは、図1から判るように、前後進切替装置16に入力されるトルク、すなわち、タービン軸34にかかるタービントルクTtである。
【0084】
そして、入力トルク推定判断手段234は、上記算出したエンジン推定トルクTesが予め定められたエンジン推定トルク判定値T1es以上であるか否かを判断し、そのエンジン推定トルクTesがエンジン推定トルク判定値T1es以上であれば、車両が前記高トルク入力予想状態であると判断する。例えば、そのエンジン推定トルクTesを他の入力トルク関連パラメータである前記アイドルスイッチのオン・オフに置き換えるとすれば、入力トルク推定判断手段234は、そのアイドルスイッチがオンである場合に、車両が前記高トルク入力予想状態であると判断する。或いは、上記エンジン推定トルクTesを他の入力トルク関連パラメータであるスロットル開度θthに置き換えるとすれば、入力トルク推定判断手段234は、そのスロットル開度θthが予め定められたスロットル開度判定値θ1th以上である場合に、車両が前記高トルク入力予想状態であると判断する。ここで、エンジン推定トルク判定値T1esとは、モジュレータ圧PLPMができるだけ低圧モジュレータ圧PLPMLに維持されるように、且つ、変速部入力トルクTatinの増大に伴って前後進クラッチの係合力不足に起因したスリップが発生しないように、トルクコンバータ14のトルク増幅率を加味した上で、予め実験的に求められ設定されている。前記スロットル開度判定値θ1thもエンジン推定トルク判定値T1esと同様にして定められる。これらエンジン推定トルク判定値T1esおよびスロットル開度判定値θ1thは何れも前記入力トルク判定値T1atinに対応する判定値であり、その入力トルク判定値T1atinは、上記エンジン推定トルク判定値T1esまたはスロットル開度判定値θ1thが定められることで、間接的に定まるものである。例えば上記入力トルク判定値T1atinとしては、図5からすると、エンジン最大トルクTemaxまたはそれを少し下回るトルク値に設定されるのが好ましい。
【0085】
変速速度判断手段236は、前記ロックアップ制御が実行中ではないとロックアップ制御判断手段230により判断され、且つ、前記ガレージ制御が実行中ではないとガレージ制御判断手段232により判断された場合には、無段変速機18の変速比γの単位時間当たりの変化量である変速速度γspが予め定められた変速速度判定値γ1sp以下であるか否かを逐次判断する。上記変速速度γspは、可変プーリ42または46の可動回転体42bまたは46bの軸方向移動速度などから求められる。上記変速速度判定値γ1spは、可変プーリ42および46の駆動側油圧アクチュエータ42cおよび従動側油圧アクチュエータ46cに対する作動油の流量不足がモジュレータ圧PLPMの高圧に起因して生じないように、且つ、モジュレータ圧PLPMの不足に起因した前後進クラッチの係合力不足をできるだけ回避できるように、予め実験的に求められ設定されている。例えば、無段変速機18の変速比γが、無段変速機18の変速における変速比変化範囲の上限または下限すなわち最大変速比γmaxまたは最小変速比γminにある場合には、上記変速速度γspは零もしくは略零であるので、変速速度判断手段236は、前記変速速度γspが前記変速速度判定値γ1sp以下であると判断する。
【0086】
モジュレータ圧切替制御手段238は、ロックアップ制御判断手段230とガレージ制御判断手段232と入力トルク推定判断手段234と変速速度判断手段236との判断に基づいて、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2を作動状態または非作動状態に切り替える。それにより、モジュレータ圧PLPMを低圧モジュレータ圧PLPMLまたは高圧モジュレータ圧PLPMHに段階的に切り替える。具体的に、モジュレータ圧切替制御手段238は、ロックアップ制御判断手段230によって前記ロックアップ制御が実行中であると判断されている場合には、第1ソレノイドバルブSL1を非作動状態とする一方で、第2ソレノイドバルブSL2を作動状態とする。すなわち、第2ソレノイドバルブSL2に第2切替圧PSL2を出力させる(図7のパターン2)。これにより、モジュレータ圧PLPMは低圧モジュレータ圧PLPMLに設定される。
【0087】
また、モジュレータ圧切替制御手段238は、ロックアップ制御判断手段230によって前記ロックアップ制御が実行中ではないと判断されており、且つ、前記ガレージ制御が実行中であるとガレージ制御判断手段232によって判断された場合には、第2ソレノイドバルブSL2を非作動状態とする一方で、第1ソレノイドバルブSL1を作動状態とする。すなわち、第1ソレノイドバルブSL1に第1切替圧PSL1を出力させる(図7のパターン1)。これにより、モジュレータ圧PLPMは高圧モジュレータ圧PLPMHに設定される。
【0088】
また、モジュレータ圧切替制御手段238は、入力トルク推定判断手段234によって車両が前記高トルク入力予想状態であると判断された場合には、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2を共に非作動状態とする。すなわち、前記第1切替圧PSL1も第2切替圧PSL2も出力されない(図7のパターン4)。これにより、モジュレータ圧PLPMは高圧モジュレータ圧PLPMHに設定される。その一方で、モジュレータ圧切替制御手段238は、車両が前記高トルク入力予想状態ではないと判断された場合には、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2を共に作動状態とする。すなわち、第1ソレノイドバルブSL1に第1切替圧PSL1を出力させると共に、第2ソレノイドバルブSL2に第2切替圧PSL2を出力させる(図7のパターン3)。これにより、モジュレータ圧PLPMは低圧モジュレータ圧PLPMLに設定される。但し、モジュレータ圧切替制御手段238は、変速速度判断手段236によって無段変速機18の変速速度γspが前記変速速度判定値γ1sp以下であると判断された場合には、入力トルク推定判断手段234の判断に拘らず、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2を共に非作動状態とする(図7のパターン4)。すなわち、モジュレータ圧PLPMは高圧モジュレータ圧PLPMHに設定される。モジュレータ圧切替制御手段238は、このように変速速度判断手段236の判断に基づいてモジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに設定することで、上記変速速度γspが小さいときほど、モジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに設定する機会を多くしている。
【0089】
ここで、モジュレータ圧切替制御手段238は、上記のように、入力トルク推定判断手段234の判断に基づいてモジュレータ圧PLPMを低圧モジュレータ圧PLPMLまたは高圧モジュレータ圧PLPMHに切り替えるところ、前述したように、入力トルク推定判断手段234は、その判断を、具体的には前記入力トルク関連パラメータである前記エンジン推定トルクTesに基づいて行っている。また、その入力トルク関連パラメータはアイドルスイッチのオン・オフ、またはスロットル開度θthであっても差し支えない。そして、変速部入力トルクTatinが増大する過程では、実際の変速部入力トルクTatinは、エンジン推定トルクTesもしくはスロットル開度θthの増大に対し遅れて増大し、上記アイドルスイッチのオンからオフへの切換りに対し遅れて増大するものである。すなわち、入力トルク推定判断手段234は、変速部入力トルクTatinが増大する過程では、その変速部入力トルクTatinの増大を予測して判断していると言える。従って、例えば現時点のモジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLである時(図7のパターン3)に、変速部入力トルクTatinが現時点よりも増大すると推定(予測)される場合、詳細には、変速部入力トルクTatinが前記入力トルク判定値T1atin未満から入力トルク判定値T1atin以上に増大すると推定(予測)される場合には、入力トルク推定判断手段234は、車両が前記高トルク入力予想状態ではないという判断を前記高トルク入力予想状態であるという判断に切り替える。これにより、モジュレータ圧切替制御手段238は、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2を共に作動状態から非作動状態に切り換えることで、実際の変速部入力トルクTatinが増大する前に予めモジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに切り換える。
【0090】
また、前述したように、入力トルク推定判断手段234は、その判断を、前記入力トルク関連パラメータであるエンジン推定トルクTesに基づいて行っているが、そのエンジン推定トルクTesに替えて、前記アイドルスイッチのオン・オフ、またはスロットル開度θthが上記入力トルク関連パラメータとして入力トルク推定判断手段234の判断に用いられても差し支えない。従ってそれらの入力トルク関連パラメータを加味して表現すれば、例えば現時点のモジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLである時(図7のパターン3)に、前記アイドルスイッチがオンからオフに切り換えられた場合、前記スロットル開度θthが前記スロットル開度判定値θ1th未満からスロットル開度判定値θ1th以上に増大した場合、または、上記エンジン推定トルクTesが前記エンジン推定トルク判定値T1es未満からエンジン推定トルク判定値T1es以上に増大した場合には、入力トルク推定判断手段234によって、変速部入力トルクTatinが現時点よりも増大すると推定(予測)されるものと言える。詳細には、変速部入力トルクTatinが前記入力トルク判定値T1atin未満から入力トルク判定値T1atin以上に増大すると推定(予測)されるものと言える。なお、前記アイドルスイッチがオンからオフに切り換えられたということは、そのアイドルスイッチの切換わり後直ちにエンジン12のアイドリング状態は解除されることになるので、エンジン12のアイドリング状態が解除されることを表す信号が得られたということを意味している。
【0091】
また、入力トルク推定判断手段234は、前述したように、前記ロックアップ制御が実行中ではないとロックアップ制御判断手段230により判断された場合に、車両が前記高トルク入力予想状態であるか否かの判断を行う。従って、入力トルク推定判断手段234は、例えば現時点のモジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLである時(図7のパターン3)には、ロックアップクラッチ26が解放されている場合に、変速部入力トルクTatinが現時点よりも増大するか否か、詳細には、変速部入力トルクTatinが前記入力トルク判定値T1atin未満から入力トルク判定値T1atin以上に増大するか否かを判断するものである。
【0092】
図10は、電子制御装置50の制御作動の要部、すなわち、モジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHまたは低圧モジュレータ圧PLPMLに切り換える制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図10に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。
【0093】
図10において、先ず、ロックアップ制御判断手段230に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、車両状態に基づいて前記ロックアップ制御が実行中であるか否かが判断される。具体的には、スロットル弁開度θth及び車速Vで示される車両状態が前記ロックアップオン領域に属していれば、前記ロックアップ制御が実行中であると判断される。このSA1の判断が肯定された場合、すなわち、前記ロックアップ制御が実行中である場合には、SA9に移る。一方、このSA1の判断が否定された場合には、SA2に移る。
【0094】
ガレージ制御判断手段232に対応するSA2においては、前記ガレージ制御が実行中であるか否かが判断される。このSA2の判断が肯定された場合、すなわち、前記ガレージ制御が実行中である場合には、SA8に移る。一方、このSA2の判断が否定された場合には、SA3に移る。
【0095】
入力トルク推定判断手段234に対応するSA3においては、前記変速部入力トルクTatinが推定(予想)される。具体的には、その変速部入力トルクTatinに関連した前記入力トルク関連パラメータが検出又は算出され、その検出又は算出された入力トルク関連パラメータに基づいて、上記変速部入力トルクTatinが間接的に推定(予想)されることになる。その入力トルク関連パラメータとは、例えば、前記スロットル開度θth、前記エンジン推定トルクTes、または、前記アイドルスイッチのオン・オフなどである。SA3の次はSA4に移る。
【0096】
入力トルク推定判断手段234に対応するSA4においては、前記入力トルク判定値T1atin以上の高い変速部入力トルクTatinが予想される車両状態か否か、すなわち、車両が前記高トルク入力予想状態であるか否かが判断される。具体的には、スロットル開度θthが前記スロットル開度判定値θ1th以上である場合、前記エンジン推定トルクTesが前記エンジン推定トルク判定値T1es以上である場合、または、前記アイドルスイッチがオンである場合に、車両が前記高トルク入力予想状態であると判断される。このSA4の判断が肯定された場合、すなわち、車両が前記高トルク入力予想状態である場合には、SA7に移る。一方、このSA4の判断が否定された場合には、SA5に移る。
【0097】
変速速度判断手段236に対応するSA5においては、無段変速機18の変速速度γspが前記変速速度判定値γ1sp以下であるか否かが判断される。その変速速度γspは、可変プーリ42または46の可動回転体42bまたは46bの軸方向移動速度などから求められる。また、無段変速機18の変速比γが前記最大変速比γmaxまたは最小変速比γminにある場合には、上記変速速度γspは零もしくは略零であるので、その変速速度γspが求められるまでもなく、その変速速度γspが前記変速速度判定値γ1sp以下であると判断される。このSA5の判断が肯定された場合、すなわち、無段変速機18の変速速度γspが変速速度判定値γ1sp以下である場合には、SA7に移る。一方、このSA5の判断が否定された場合には、SA6に移る。
【0098】
SA6においては、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2が共に作動状態にされる。すなわち、油圧制御回路100が、図7のパターン3である元圧LOモードとされる。
【0099】
SA7においては、第1ソレノイドバルブSL1および第2ソレノイドバルブSL2が共に非作動状態にされる。すなわち、油圧制御回路100が、図7のパターン4である元圧HIモードとされる。
【0100】
SA8においては、第1ソレノイドバルブSL1が作動状態とされる一方で、第2ソレノイドバルブSL2が非作動状態とされる。すなわち、油圧制御回路100が、図7のパターン1であるガレージモードとされる。
【0101】
SA9においては、第1ソレノイドバルブSL1が非作動状態とされる一方で、第2ソレノイドバルブSL2が作動状態とされる。すなわち、油圧制御回路100が、図7のパターン2であるロックアップモードとされる。なお、SA6からSA9は、モジュレータ圧切替制御手段238に対応する。
【0102】
上述のように、本実施例によれば、電子制御装置50は、モジュレータ圧PLPMを前記第1油圧である低圧モジュレータ圧PLPMLと前記第2油圧である高圧モジュレータ圧PLPMHとに段階的に切り換え、前記変速部入力トルクTatinが前記入力トルク判定値T1atin以上である場合にはモジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに設定する車両用油圧制御装置として機能する。そして、その電子制御装置50に含まれるモジュレータ圧切替制御手段238は、モジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLである時に、変速部入力トルクTatinが前記入力トルク判定値T1atin未満から入力トルク判定値T1atin以上に増大すると推定(予測)される場合には、実際の変速部入力トルクTatinが増大する前に予めモジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに切り換える。従って、実際の変速部入力トルクTatinが大きくなる前に、モジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLから高圧モジュレータ圧PLPMHへと予め高くされるので、そのモジュレータ圧PLPMの上昇が変速部入力トルクTatinの増大に対して遅れることなく、変速部19の油圧制御においてモジュレータ圧PLPMが不足することを回避することができる。
【0103】
また、本実施例によれば、図10のフローチャートにおいて、油圧制御回路100は、SA4およびSA5の判断結果に応じて、SA6にて前記元圧LOモードとされ或いはSA7にて前記元圧HIモードとされる。これを無段変速機18の変速速度γspと変速部入力トルクTatinとの2次元座標にマップとして表せば、図11のように領域分けされる。この図11のマップにおける前記元圧HIモードを示す領域の広さと前記変速速度γspとの関係から判るように、モジュレータ圧PLPMが高圧モジュレータ圧PLPMHに設定される機会は、その変速速度γspが小さいときほど、多くされている。ここで、上記モジュレータ圧PLPMが高いほど例えば前後進クラッチのトルク容量を高くすることができるなどの理由から、変速部19がトルク伝達を行う上で有利になる。その一方で、上記モジュレータ圧PLPMが高いほど、油路を構成する機械部品の相互間においてオイルの漏れが多くなり、オイルの流量を多く確保するという面では不利になる。すなわち、無段変速機18の変速速度γspが大きいほど上記オイルの流量が多く必要となるので、上記モジュレータ圧PLPMが高いということは、その無段変速機18の変速速度γspを大きくする上で不利になる。例えば本実施例では無段変速機18はベルト式無段変速機であるので、上記モジュレータ圧PLPMが高いことに起因して、ベルト戻り性能が悪化するおそれがある。従って、本実施例では、無段変速機18の変速速度γspが損なわれないオイルの流量を確保しつつ、そのオイルの流量不足が生じ難い上記変速速度γspが小さいときには、モジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに設定して、変速部入力トルクTatinに対しモジュレータ圧PLPMが不足しないようにするようにすることが可能である。
【0104】
また、本実施例によれば、モジュレータ圧切替制御手段238は、変速速度判断手段236によって無段変速機18の変速速度γspが前記変速速度判定値γ1sp以下であると判断された場合には、入力トルク推定判断手段234の判断に拘らず、モジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに設定する。従って、無段変速機18の変速速度γspが損なわれないオイルの流量を確保しつつ、そのオイルの流量不足が生じ難い上記変速速度γspが小さいときには、モジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに設定して、変速部入力トルクTatinに対しモジュレータ圧PLPMが不足しないようにするようにすることが可能である。
【0105】
また、本実施例によれば、モジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLである時(図7のパターン3)に、前記アイドルスイッチがオンからオフに切り換えられた場合、前記スロットル開度θthが前記スロットル開度判定値θ1th未満からスロットル開度判定値θ1th以上に増大した場合、または、上記エンジン推定トルクTesが前記エンジン推定トルク判定値T1es未満からエンジン推定トルク判定値T1es以上に増大した場合には、入力トルク推定判断手段234によって、変速部入力トルクTatinが前記入力トルク判定値T1atin未満から入力トルク判定値T1atin以上に増大すると推定(予測)される。そして、前記アイドルスイッチのオン・オフ、上記スロットル開度θth、および上記エンジン推定トルクTesの何れも、上記変速部入力トルクTatinの実際の増大に先立って変化するものである。従って、その変速部入力トルクTatinが入力トルク判定値T1atin以上に増大するか否かを簡単に推定することができるので、例えば変速部入力トルクTatinを直接検出してその増大を予測する場合等と比較して、制御負荷を軽減することが可能である。
【0106】
また、本実施例によれば、入力トルク推定判断手段234は、モジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLである時(図7のパターン3)には、ロックアップクラッチ26が解放されている場合に、変速部入力トルクTatinが前記入力トルク判定値T1atin未満から入力トルク判定値T1atin以上に増大するか否かを判断する。ここで、ロックアップクラッチ26が解放されている非ロックアップ状態ではトルクコンバータ14のトルク増幅作用が生じ、変速部入力トルクTatinがトルクコンバータ14により増幅されるので、ロックアップクラッチ26が係合されているロックアップ状態と比較して、変速部入力トルクTatinに対しモジュレータ圧PLPMが不足し易くなる。このことから、本実施例では、上記のようにモジュレータ圧PLPMが比較的不足し易い上記非ロックアップ状態において、過不足のない大きさのモジュレータ圧PLPMを変速部19の前記油圧制御機器に供給することが可能である。
【0107】
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、実施例相互に重複する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【実施例2】
【0108】
前述の実施例1では、ベルト式の無段変速機18においてクラッチ元圧およびリニア元圧が前記第1油圧(低圧)と前記第2油圧(高圧)とに択一的に切り替えられるものであったが、本実施例では、有段式の自動変速機を油圧制御するための油圧制御回路340について説明する。本実施例の変速部19は、前記前後進切替装置16および無段変速機18に替えて、遊星歯車装置と複数の摩擦係合装置とから構成された上記有段式の自動変速機を含んでいる。そして、その有段式の自動変速機は、その摩擦係合装置の掴み替えにより変速する所謂クラッチ・ツー・クラッチ変速を行う。図12は、その有段式の自動変速機を油圧制御するための油圧制御回路340において、ライン圧を発生させる油路のみを簡略的に示している。本実施例では、プライマリレギュレータバルブ344が出力するライン圧PLが本発明の元圧に対応する。
【0109】
図12の油圧制御回路340において、例えばエンジン12によって駆動されるオイルポンプ342から吐出された油圧がプライマリレギュレータバルブ344に入力され、プライマリレギュレータバルブ344によって調圧されたライン圧PLが出力される。ここで、プライマリレギュレータバルブ344は、前述した元圧調圧バルブ108と同様に、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2を受け入れる油室を備えており、第2ソレノイドバルブSL2の第2切替圧PSL2に応じて前記第2油圧(高圧)または前記第1油圧(低圧)のライン圧PLが出力されるように構成されている。具体的には、第2切替圧PSL2がプライマリレギュレータバルブ344の油室に供給されると、その低圧のライン圧PLを出力するように構成されている。なお、プライマリレギュレータバルブ344の具体的な構成は、前述した元圧調圧バルブ108と略変わらないため、その説明を省略する。
【0110】
前記有段式の自動変速機の非変速中は、変速中と比較して、オイルの漏れ量が少ないので、前述の実施例1と同様に本実施例でも図10のフローチャートが実行され、前記ライン圧PL(元圧)が前記第2油圧(高圧)に設定される機会は、その変速速度γspが小さいときほど、多くされる。具体的には、上記非変速中では前記変速速度γspが零である一方で、上記変速中ではその変速速度γspがある程度の大きさであり、それら変速速度γspの差異から、上記有段式の自動変速機が非変速中であれば図10のフローチャートのSA5の判断は肯定され、変速中であればそのSA5の判断は否定される。
【0111】
上述のように、有段式の自動変速機であっても、前述の実施例1と同様に、ロックアップクラッチ26の非作動時において、車両の走行状態に応じてライン圧PLを高圧および低圧のいずれかに切り替えることで、燃費を向上させることができる。
【0112】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0113】
例えば、前述の実施例1では、低圧モジュレータ圧PLPMがエンジン12の最大トルクを伝達可能な油圧に設定されているが、必ずしもエンジン12の最大トルクを基準に設定する必要はなく、例えば車両を低トルクで走行させるモード走行では、低圧モジュレータ圧PLPMを更に低圧に設定するなど自由に変更することができる。
【0114】
また、前述の実施例1,2において、トルクコンバータ14はロックアップクラッチ26を備えているが、そのロックアップクラッチ26は必須であるというわけではない。
【0115】
また、前述の実施例1では、無段変速機18はベルト式の無段変速機であるが、例えばトロイダル式の無段変速機など他の形式の変速機であっても差し支えない。また、トルクコンバータ14を必要としない変速機であっても差し支えない。
【0116】
また、前述の実施例1において、モジュレータ圧PLPMは高圧モジュレータ圧PLPMHと低圧モジュレータ圧PLPMLとの2段切換えであるが、3段以上の切換えであっても差し支えない。また、図5において高圧モジュレータ圧PLPMHと低圧モジュレータ圧PLPMLとの各々は、変速部入力トルクTatinに対して一定圧であるように例示されているが、変速部入力トルクTatinまたはエンジントルクTeなどに対して一定圧である必要はない。
【0117】
また、前述の実施例1の図10に示すフローチャートにおいて、SA1およびSA2が設けられているが、そのSA1およびSA2は必須ではなく、例えば、そのSA1が設けられておらずSA2から開始されてもよいし、SA2が設けられておらずSA1の判断が否定された場合にSA3に移っても差し支えない。また、SA1およびSA2が設けられておらずSA3から開始されても差し支えない。
【0118】
また、前述の実施例1の図10に示すフローチャートにおいて、SA5が設けられているが、そのSA5が設けられておらずSA4の判断が否定された場合にSA6に移っても差し支えない。
【0119】
また、前述の実施例1,2において、図1に図示された車両はFF型車両であるが、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両や四輪駆動車両であっても差し支えない。
【0120】
また、前述の実施例1,2において、前記走行用駆動力源はエンジン12であるが、そのエンジン12に加えて又はそのエンジン12に替えて、電動機が含まれていてもよい。
【0121】
また、前述の実施例1,2において、モジュレータ圧切替制御手段238は、モジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLである時に、変速部入力トルクTatinが前記入力トルク判定値T1atin未満から入力トルク判定値T1atin以上に増大すると推定(予測)される場合には、実際の変速部入力トルクTatinが増大する前に予めモジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに切り換えるが、上記変速部入力トルクTatinに対し上記入力トルク判定値T1atinという閾値が設けられていることは必須ではない。すなわち、モジュレータ圧切替制御手段238は、モジュレータ圧PLPMが低圧モジュレータ圧PLPMLである時に、変速部入力トルクTatinが増大すると推定(予測)される場合には、実際の変速部入力トルクTatinが増大する前に予めモジュレータ圧PLPMを高圧モジュレータ圧PLPMHに切り換えるものであっても差し支えない。
【0122】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0123】
12:エンジン(走行用駆動力源)
14:トルクコンバータ
26:ロックアップクラッチ
19:変速部
50:電子制御装置(車両用油圧制御装置)
C1:前進用クラッチ(油圧制御機器)
B1:後進用クラッチ(油圧制御機器)
LPM:モジュレータ圧(元圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用駆動力源の動力が入力される変速部の油圧制御機器へ供給する元圧を第1油圧と該第1油圧よりも高い第2油圧とに段階的に切り換える車両用油圧制御装置であって、
前記元圧が前記第1油圧である時に、前記変速部に入力される入力トルクが増大すると推定される場合には、前記元圧を予め前記第2油圧に切り換える
ことを特徴とする車両用油圧制御装置。
【請求項2】
前記走行用駆動力源にはエンジンが含まれており、
該エンジンのアイドリング状態が解除されることを表す信号が得られた場合、前記エンジンのスロットル開度が予め定められたスロットル開度判定値未満から該スロットル開度判定値以上に増大した場合、または、前記エンジンに対する要求負荷に基づいて算出されるエンジン推定トルクが予め定められたエンジン推定トルク判定値未満から該エンジン推定トルク判定値以上に増大した場合に、前記入力トルクが増大すると推定される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用油圧制御装置。
【請求項3】
前記走行用駆動力源と前記変速部との間に介装されたトルクコンバータの入出力部材間を機械的に直結するロックアップクラッチが設けられており、
前記ロックアップクラッチが解放されている場合に、前記入力トルクが増大するか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用油圧制御装置。
【請求項4】
前記変速部の変速速度が小さいときほど、前記元圧を前記第2油圧に設定する機会を多くする
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両用油圧制御装置。
【請求項5】
前記変速部の変速速度が予め定められた変速速度判定値以下の場合には、前記元圧を前記第2油圧に設定する
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用油圧制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−2480(P2013−2480A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131644(P2011−131644)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】