説明

車両用灯具

【課題】 ミリ波レーダを光源の発熱から保護でき、かつ見栄えよく搭載できる車両用灯具を提供する。
【解決手段】 リアコンビネーションランプ1において、灯具ボディ2と前面カバー3との間に灯室6を形成し、灯室6の内部に光源7,8を設け、灯室6の下側外部にミリ波レーダ14を設置する。前面カバー3の下部に遮蔽部19を形成し、遮蔽部19の内面にマイクロステップ形状のリフレックスリフレクタ20を装着する。リフレックスリフレクタ20でミリ波レーダ14を車両後方から覆い隠すとともに、平滑な再帰性反射面で遮蔽部19の厚みを均一にし、電波Wの減衰を抑制する。点灯頻度の高い光源7を灯室6の上部に配置し、灯室6からミリ波レーダ14に伝わる熱量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の物体を検知するミリ波レーダを搭載した車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミリ波レーダを光源と一緒に灯室内に設置した車両用灯具が知られている。例えば、特許文献1には、灯具ボディと前面カバーとの間に灯室を形成し、灯室内に光源とミリ波レーダを並設し、双方をレベリング機構によって一体的に角度調整する前照灯が記載されている。
【特許文献1】特開2001−260777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の車両用灯具によると、ミリ波レーダを灯室内に設置しているので、光源の発熱で灯室内が高温になると、マイコン等の電子部品が損傷し、ミリ波レーダの動作が不安定になるという問題点があった。また、灯室内のミリ波レーダは、光源の消灯時に前面カバーから透視されるため、車両用灯具の外観の見栄えを損なうという不都合もあった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ミリ波レーダを光源の発熱から保護でき、かつ見栄えよく搭載できる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用灯具は、灯具ボディと前面カバーの間に灯室を形成し、灯室の内部に光源を設け、灯室の外部にミリ波レーダを設置し、前面カバーにミリ波レーダを前方から覆う遮蔽部を形成したことを特徴とする。
【0006】
上記車両用灯具において、好ましくは、前面カバーの遮蔽部に外部入射光を反射するマイクロステップ形状のリフレックスリフレクタを設けることができる。このリフレクタによれば、多数の微細なプリズムが遮蔽部に平滑な再帰性反射面を形成するので、ミリ波レーダを完全に覆い隠すことができるとともに、遮蔽部の厚みを均一にし、凹凸による電波の減衰を抑え、ミリ波レーダの感度を向上できる利点がある。
【0007】
また、本発明の車両用灯具は、灯室内に点灯頻度が異なる複数の光源を設け、高頻度の光源を低頻度の光源よりもミリ波レーダから離して配置したことを特徴とする。この構成によれば、ミリ波レーダを高熱源から遠ざけ、灯室からの伝熱量を減少させることができる。
【0008】
特に、縦型の車両用灯具では、灯室内の温度分布が上部ほど高くなるので、ミリ波レーダを灯室の下側に設置し、遮蔽部をミリ波レーダの前面側に延ばして形成するのが好ましい。より好ましくは、点灯頻度の高い光源を灯室の上部に配置し、点灯頻度の低い光源を灯室の下部に配置するとよい。
【0009】
ミリ波レーダは、灯室の外部において、車体パネル、灯具ボディまたは前面カバーに取り付けることができる。何れの場合も、取付手段として、ミリ波レーダの発熱を車体パネルに逃がす金属製の取付部材を好ましく使用できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用灯具によれば、ミリ波レーダを灯室の外部に設置し、前面カバーの遮蔽部によって覆うので、ミリ波レーダを光源の発熱から保護し、かつ見栄えよく搭載できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は本発明を縦型リアコンビネーションランプに具体化した実施例1を示す。図4は本発明を横型リアコンビネーションランプに具体化した実施例2を示す。図5は本発明を前照灯に具体化した実施例3を示す。図6はリフレクタの変更例を示し、図7はミリ波レーダの変更例を示す。
【実施例1】
【0012】
図1に示すように、このリアコンビネーションランプ1は、灯具ボディ2と前面カバー3とから縦長に形成されている。灯具ボディ2は車体パネル4に取り付けられ、前面カバー3が灯具ボディ2の周壁5に着脱可能に装着されている。灯具ボディ2と前面カバー3との間には灯室6が形成され、灯室6の内部に上下2つの光源(バルブまたはLED光源)7,8とリフレクタ9とが配設されている。
【0013】
上側の光源7は相対的に点灯頻度が高く、例えば、テールランプまたはストップランプとして使用される。下側の光源8は相対的に点灯頻度が低く、例えば、ターンシグナルランプまたはバックアップランプとして使用される。前面カバー3は、光源7,8からの光を別々に透過させるレンズ部10,11と、灯室6を仕切る隔壁12と、灯室6の底面を覆う底壁13とを備え、全体が樹脂で成形されている。
【0014】
灯室6の外部において灯具ボディ2の下側には、車両後方の物体を検知するミリ波レーダ14が設置されている。ミリ波レーダ14は、送受信回路を内蔵したケース15と、アンテナ部を覆うリッド16とを備え、ケース15がネジ17によりブラケット18を介して車体パネル4に取り付けられている。ネジ17およびブラケット18は金属製の取付部材であり、ミリ波レーダ14の発熱を車体パネル4に逃がすように機能する。
【0015】
前面カバー3の下部には、遮蔽部19がミリ波レーダ14の前面側に延びるように一体形成され、ミリ波レーダ14が遮蔽部19によってリアコンビネーションランプ1の前方(車両の後方)から覆われている。遮蔽部19はレンズ10,11と同様に透明樹脂で形成され、遮蔽部19の内面に外部入射光を反射するマイクロステップ形状のリフレックスリフレクタ20が接着されている。
【0016】
リフレックスリフレクタ20は、接着層21とフィルム層22との間に多数の微細なプリズム23(またはビーズ)を微小ピッチで密集させ、厚さ0.5mm以下の薄肉シート状に形成されている。そして、遮蔽部19の内側に平滑な再帰性反射面を形成し、外部入射光Lをプリズム23で全反射させ、ミリ波レーダ14を完全に覆い隠すとともに、遮蔽部19の厚さを各部均一にして、電波Wの減衰を抑制できるようになっている。
【0017】
上記構成のリアコンビネーションランプ1では、ミリ波レーダ14が灯室6の下側外部に設置され、灯具ボディ2の周壁5と前面カバー3の底壁13によって灯室6から隔離されている。また、点灯頻度の高い光源7が点灯頻度の低い光源8よりも灯室6の上側に配置され、ミリ波レーダ14が灯室6の高温域から最も離れた位置に設置されている。したがって、灯室6からミリ波レーダ14に伝わる熱量を減少させ、送受信回路上のマイコン等の電子部品を保護し、ミリ波レーダ14の動作を安定させ、寿命を延ばすことができる。
【0018】
また、ミリ波レーダ14は、前面カバー3の遮蔽部19で車両後方から覆われ、リフレックスリフレクタ20によって外部から透視できなくなっている。このため、外観の見栄えを損なうことなく、ミリ波レーダ14をリアコンビネーションランプ1に搭載できるうえ、リフレックスリフレクタ20をレンズ部9,10の下側に配置し、前面カバー3に複数の光輝部を機能的にレイアウトできる利点もある。
【0019】
一方、ミリ波レーダ14の取付構造に着目すると、ケース15が金属製のネジ17とブラケット18により車体パネル4に取り付けられている。このため、ミリ波レーダ14自体の発熱を車体パネル4に効率よく逃がし、ミリ波レーダ14の温度を常時一定に保ち、検知精度を安定させることができる。また、前面カバー3を取り外せば、ミリ波レーダ14が車体外部に露出するので、点検または交換作業を容易に行うこともできる。
【0020】
図2に示すリアコンビネーションランプ1では、ミリ波レーダ14が灯室6の外部において灯具ボディ2に取り付けられている。灯具ボディ2は灯室6の下側に延びる装着部25を備え、ミリ波レーダ14が装着部25の前面に装着され、金属製のネジ17で車体パネル4に締め付けられている。この取付構造によっても、ミリ波レーダ14自体の発熱を車体パネル4に逃がし、検知精度を安定させることができる。
【0021】
図3に示すリアコンビネーションランプ1では、ミリ波レーダ14が灯室6の外部において前面カバー3に上向きに取り付けられている。前面カバー3は遮蔽部19の下側に装着部27を備え、ミリ波レーダ14の取付ベース28と電波反射板29とがネジ17によりパッキン30を介して装着部27に締め付けられている。そして、金属製の取付ベース28が広い面積で車体パネル4に接合し、ミリ波レーダ14の発熱を車体パネル4に効率よく放散できるようになっている。
【実施例2】
【0022】
図4に示すリアコンビネーションランプ31は、灯具ボディ32と前面カバー33とから横長に形成されている。灯具ボディ32と前面カバー33との間には灯室34が形成され、灯室34の内部に左右3つの光源35とリフレクタ36とが配設されている。光源35は点灯頻度の高い順に図4の左から右へ配列され、ミリ波レーダ14が前面カバー33の側壁37の右側においてネジ17によりブラケット18を介して車体パネル4に取り付けられている。
【0023】
遮蔽部38はミリ波レーダ14の前面側に延びるように前面カバー33に一体形成され、ミリ波レーダ14が遮蔽部38によって車両後方から覆われている。そして、遮蔽部38の内面にマイクロステップ形状(図1参照)のリフレックスリフレクタ20が装着され、ミリ波レーダ14を隠し、電波Wの減衰を抑制する。したがって、横型のリアコンビネーションランプ31において、実施例1と同様に、ミリ波レーダ14を光源35の発熱から保護し、見栄えよく搭載できるという効果が得られる。
【実施例3】
【0024】
図5に示す前照灯41では、灯具ボディ42と前面カバー43との間に灯室44が形成され、灯室44の内部に光源ユニット45が配置され、灯室44の下側外部にミリ波レーダ14が設置されている。ミリ波レーダ14は、図3と同様の取付構造により前面カバー43の装着部46に取り付けられ、取付ベース28がミリ波レーダ14の発熱を車体パネル4に逃がす。そして、前面カバー43の下部に底壁47と遮蔽部48が形成され、遮蔽部48のリフレックスリフレクタ20によってミリ波レーダ14が車両前方から覆い隠されている。したがって、前照灯41において、実施例1と同様の効果が得られる。
【0025】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、以下に例示するように、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)図6に示すように、灯室50の内部に複数のLEDを配列した光源ユニット51と、そのリフレクタ52とを配置し、灯室50の外部にミリ波レーダ14を上向きに設置し、電波反射部53をリフレクタ52の一部に形成し、光源ユニット51とミリ波レーダ14がリフレクタ52を共用できるように構成すること。
(2)図7に示すように、ミリ波レーダ14のリッド16に透明部55を設け、透明部55の内面にマイクロステップ形状のリフレックスリフレクタ20を装着し、ミリ波レーダ14自体に平滑な再帰性反射面を形成し、電波の減衰をより効果的に抑制できるように構成すること。
(3)前面カバーの樹脂成形時に、金型のマイクロステップ形状を遮蔽部に転写し、リフレックスリフレクタを前面カバーと一体的に設けること。
(4)前面カバーからリフレックスリフレクタを省き、ミリ波レーダを外部から透視できないように、遮蔽部を不透明樹脂で成形すること。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1を示す縦型リアコンビネーションランプの断面図である。
【図2】ミリ波レーダの取付構造を示す図1の部分断面図である。
【図3】ミリ波レーダの別の取付構造を示す図1の部分断面図である。
【図4】本発明の実施例2を示す横型リアコンビネーションランプの断面図である。
【図5】本発明の実施例3を示す前照灯の断面図である。
【図6】リフレクタの変更例を示す正面図である。
【図7】ミリ波レーダの変更例を示す一部破断側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 リアコンビネーションランプ
2 灯具ボディ
3 前面カバー
4 車体パネル
6 灯室
7,8 光源
14 ミリ波レーダ
17 ネジ
18 ブラケット
19 遮蔽部
20 リフレックスリフレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具ボディと前面カバーの間に灯室を形成し、灯室の内部に光源を設け、灯室の外部にミリ波レーダを設置し、前面カバーにミリ波レーダを前方から覆う遮蔽部を形成したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記遮蔽部に外部入射光を反射するマイクロステップ形状のリフレックスリフレクタを設けた請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記灯室内に点灯頻度が異なる複数の光源を設け、高頻度の光源を低頻度の光源よりもミリ波レーダから離して配置した請求項1又は2記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記ミリ波レーダを灯室の下側に設置し、遮蔽部をミリ波レーダの前面側に延ばして形成した請求項1、2又は3記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記ミリ波レーダの発熱を車体パネルに逃がす金属製の取付部材を備えた請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−135087(P2010−135087A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307197(P2008−307197)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】