車両用無段変速機
【課題】車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる車両用無段変速機を提供する。
【解決手段】出力軸40と出力側可動シーブ94とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、出力軸40において軸心C2方向の移動可能な部材としての出力側可動シーブ94に設けられ、車両の減速方向のトルクが出力側可動シーブ94に伝達されたときにその出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力(スラスト方向成分F12)を付与する噛合機構122を含む。
【解決手段】出力軸40と出力側可動シーブ94とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、出力軸40において軸心C2方向の移動可能な部材としての出力側可動シーブ94に設けられ、車両の減速方向のトルクが出力側可動シーブ94に伝達されたときにその出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力(スラスト方向成分F12)を付与する噛合機構122を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用無段変速機に係り、特に、車両の減速時にエンジンが停止されてオイルポンプからの油圧供給が停止されたときに伝動ベルトのスリップを抑制するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに平行に設けられた入力軸および出力軸と、その入力軸の外周面に固設された入力側固定シーブ、およびその入力側固定シーブとの間にV溝を形成するように前記入力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された入力側可動シーブを有する入力側溝幅可変プーリと、前記出力軸の外周面に固設された出力側固定シーブ、およびその出力側固定シーブとの間にV溝を形成するように前記出力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された出力側可動シーブを有する出力側溝幅可変プーリと、前記入力側溝幅可変プーリおよび出力側溝幅可変プーリのV溝にそれぞれ巻き掛けられた無端環状の伝動ベルトとを備え、前記V溝の溝幅を変化させて前記伝動ベルトの巻掛半径を変化させることにより変速比を無段階に変化させる車両用無段変速機が知られている。例えば、特許文献1および2に記載されたものがそれである。
【0003】
特許文献1の車両用無段変速機では、入力側可動シーブと入力軸とがスプライン嵌合されることにより、それらが軸心まわりの相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能に設けられており、また、出力側可動シーブと出力軸とがスプライン嵌合されることにより、それらが軸心まわりの相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能に設けられている。
【0004】
特許文献2の車両用無段変速機は、出力軸に軸心まわりの相対回転可能且つ軸心方向の相対移動可能に設けられて出力側可動シーブに連結された第1ヘリカルギヤと、その第1ヘリカルギヤと噛み合わされて出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤとを、有する伝達歯車装置を備えている。この車両用無段変速機では、車両の加速方向のトルクが上記伝達歯車装置に伝達されたときに、出力側可動シーブが第1ヘリカルギヤと第2ヘリカルギヤとの噛合反力を受けて出力側固定シーブ側へ付勢されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−309462号公報
【特許文献2】特開2007−298139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の車両用無段変速機では、溝幅可変プーリの可動シーブに伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与するためのアクチュエータとして、例えば油圧式のものが用いられている。この油圧式アクチュエータは、エンジンまたはそれに連結された回転部材により回転駆動される機械式オイルポンプを発生源とする油圧が供給されることにより、作動するようになっている。ここで、車両の燃費を向上させることを目的として減速走行中にエンジンの作動を停止する制御が行われる場合には、上記機械式オイルポンプの作動が停止するために、溝幅可変プーリに伝動ベルトを挟圧する方向の推力が付与されず、伝動ベルトの滑りが発生する可能性がある。そのため、上記伝動ベルトの滑りを防止するために、上記エンジン以外の動力で駆動されるオイルポンプ例えば電動式オイルポンプが追加で必要となり、車両用無段変速機の部品点数および製造コストが増加するという問題があった。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる車両用無段変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a-1) 互いに平行に設けられた入力軸および出力軸と、(a-2) その入力軸の外周面に固設された入力側固定シーブ、およびその入力側固定シーブとの間にV溝を形成するように前記入力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された入力側可動シーブを有する入力側溝幅可変プーリと、(a-3) 前記出力軸の外周面に固設された出力側固定シーブ、およびその出力側固定シーブとの間にV溝を形成するように前記出力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された出力側可動シーブを有する出力側溝幅可変プーリと、(a-4) 前記入力側溝幅可変プーリおよび出力側溝幅可変プーリのV溝にそれぞれ巻き掛けられた無端環状の伝動ベルトとを備え、(a-5) 前記V溝の溝幅を変化させて前記伝動ベルトの巻掛半径を変化させることにより変速比を無段階に変化させる車両用無段変速機であって、(b) 前記出力軸と前記出力側可動シーブとを相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能とするために、前記出力軸において軸心方向の移動可能な部材に設けられ、車両の減速方向のトルクがその部材に伝達されたときに前記出力側可動シーブに前記伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与する噛合機構を含むことにある。
【0009】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記噛合機構は、前記出力軸と前記出力側可動シーブとの間に設けられ、その出力軸と出力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに前記出力側可動シーブに前記出力側固定シーブへ向かう推力を発生させるものであることにある。
【0010】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2にかかる発明において、(a) 前記噛合機構は、前記出力軸の外周面および前記出力側可動シーブの内周面に、前記出力側可動シーブから前記出力側固定シーブ側へ向かうにつれて前記出力側可動シーブの軸心まわりの反時計方向へねじれるようにそれぞれ形成されて、互いに噛み合わされた複数のヘリカルスプライン外歯およびヘリカルスプライン内歯を備え、(b) 前記出力側可動シーブは、車両の減速時に、前記出力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯が前記出力軸のヘリカルスプライン外歯から受ける力のスラスト方向成分を受けて、前記出力側固定シーブ側へ付勢されることにある。
【0011】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、(a) 前記噛合機構は、前記出力軸において軸心方向の移動可能な部材として、前記出力側可動シーブの前記出力側固定シーブとは反対側に設けられ、前記出力側可動シーブ側へ向かうにつれて前記軸心まわりの反時計方向へねじれるように形成された第1ヘリカルギヤと、その第1ヘリカルギヤと噛み合わされて出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤとを備え、(b) 前記出力側可動シーブは、車両の減速時に、前記第1ヘリカルギヤが前記第2ヘリカルギヤから受ける力のスラスト方向成分を前記第1ヘリカルギヤを介して受けて、前記出力側固定シーブ側へ付勢されることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明の車両用無段変速機によれば、出力軸と出力側可動シーブとを相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能とするために、出力軸において軸心方向の移動可能な部材に設けられ、車両の減速方向のトルクがその部材に伝達されたときに出力側可動シーブに伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与する噛合機構を含むことから、車両の減速走行中には、出力側溝幅可変プーリの出力側可動シーブを出力側固定シーブ側へ押圧するための油圧式アクチュエータによらずとも噛合機構により出力側可動シーブに伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与することができるので、車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明の車両用無段変速機によれば、前記噛合機構は、出力軸と出力側可動シーブとの間に設けられ、その出力軸と出力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブに出力側固定シーブへ向かう推力を発生させるものであることから、車両の減速走行中には、出力側溝幅可変プーリの出力側可動シーブを出力側固定シーブ側へ押圧するための油圧式アクチュエータによらずとも噛合機構により出力側可動シーブに出力側固定シーブへ向かう推力を発生させることができるので、車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる。
【0014】
また、請求項3にかかる発明の車両用無段変速機によれば、前記噛合機構は、出力軸の外周面および出力側可動シーブの内周面に、出力側可動シーブから出力側固定シーブ側へ向かうにつれて出力側可動シーブの軸心まわりの反時計方向へねじれるようにそれぞれ形成されて、互いに噛み合わされた複数のヘリカルスプライン外歯およびヘリカルスプライン内歯を備え、出力側可動シーブは、車両の減速時に、その出力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯が出力軸のヘリカルスプライン外歯から受ける力のスラスト方向成分を受けて、出力側固定シーブ側へ付勢されることから、車両の減速走行中には、出力側溝幅可変プーリの出力側可動シーブを出力側固定シーブ側へ押圧するための油圧式アクチュエータによらずとも噛合機構のヘリカルスプライン内歯がヘリカルスプライン外歯から受ける力のスラスト方向成分により出力側可動シーブに伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与することができるので、車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明の車両用無段変速機によれば、前記噛合機構は、出力軸において軸心方向の移動可能な部材として、出力側可動シーブの出力側固定シーブとは反対側に設けられ、出力側可動シーブ側へ向かうにつれて軸心まわりの反時計方向へねじれるように形成された第1ヘリカルギヤと、その第1ヘリカルギヤと噛み合わされて出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤとを備え、出力側可動シーブは、車両の減速時に、第1ヘリカルギヤが第2ヘリカルギヤから受ける力のスラスト方向成分を第1ヘリカルギヤを介して受けて、出力側固定シーブ側へ付勢されることから、車両の減速走行中には、出力側溝幅可変プーリの出力側可動シーブを出力側固定シーブ側へ押圧するための油圧式アクチュエータによらずとも噛合機構の第1ヘリカルギヤが第2ヘリカルギヤから受ける力のスラスト方向成分により出力側可動シーブに伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与することができるので、車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が好適に適用された車両用動力伝達装置の骨子図である。
【図2】図1に示す車両用動力伝達装置の一部を示す断面図である。
【図3】図2の無段変速機のうち出力軸および出力側固定シーブを示す図である。
【図4】図2に示す出力軸と出力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、出力軸のヘリカルスプライン外歯から出力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯へ作用する力を示す図である。
【図5】本発明の他の実施例の無段変速機を示す骨子図である。
【図6】図5の無段変速機の出力軸を示す図である。
【図7】図5の出力軸と図2の出力側可動シーブとの間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、出力軸のヘリカルスプライン外歯から出力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯へ作用する力を示す図である。
【図8】本発明の他の実施例の無段変速機の入力軸を示す図である。
【図9】図8の入力軸と図2の入力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸のヘリカルスプライン外歯から入力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯へ作用する力を示す図である。
【図10】図8の入力軸と図2の入力側可動シーブとの間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸のヘリカルスプライン外歯から入力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯へ作用する力を示す図である。
【図11】本発明の他の実施例の無段変速機の入力軸を示す図である。
【図12】図11の入力軸と図2の入力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸のヘリカルスプライン外歯から入力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯へ作用する力を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明が好適に適用された車両用動力伝達装置10の骨子図である。図1において、車両用動力伝達装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用のものであり、車両用の駆動源として良く知られたエンジン12に連結されている。この車両用動力伝達装置10は、流体を媒体としてエンジン12のトルクを伝達する流体伝動装置として良く知られたトルクコンバータ14と、そのトルクコンバータ14から伝達されたトルクの回転方向を、車両前進用の回転方向とその反対向きである車両後進用の逆回転方向との間で切り換える前後進切換装置16と、その前後進切換装置16を介して伝達されたトルクを負荷に応じたトルクに変換する車両用ベルト式無段変速機(以下、無段変速機と記載する)18と、その無段変速機18の出力側に連結された減速歯車装置20と、その減速歯車装置20を介して伝達されたトルクを、左右一対の車輪22に対してそれらの回転差を許容しつつ伝達する良く知られた所謂傘歯車式の差動歯車装置24とを備えている。上記トルクコンバータ14のポンプ翼車26には、例えば無段変速機18の変速制御や前後進切換装置16の前後進切換制御に用いられる油圧等を発生させる機械式のオイルポンプ28が設けられている。
【0019】
上記前後進切換装置16は、トルクコンバータ14のタービン軸30に連結されたサンギヤ32と、無段変速機18の入力軸56に連結され且つタービン軸30に対して前進用クラッチCを介して選択的に連結されるキャリヤ34と、非回転部材としてのトランスアクスルケース36に対して後進用ブレーキBを介して選択的に連結されるリングギヤ38とを、含むダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されている。上記前進用クラッチCおよび後進用ブレーキBは、何れもオイルポンプ28から油圧が供給されることによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。このような前後進切換装置16では、前進用クラッチCが係合されると共に後進用ブレーキBが解放されることにより、前記遊星歯車装置が一体回転状態とされて前進用動力伝達経路が成立するようになっている。上記前進用動力伝達経路が成立した場合には、トルクコンバータ14から伝達されたトルクがそのままの回転方向で無段変速機18に出力される。また、前後進切換装置16では、後進用ブレーキBが係合させられると共に前進用クラッチCが解放されることにより、前記遊星歯車装置が入出力逆回転状態とされて後進用動力伝達経路が成立するようになっている。上記後進用動力伝達経路が成立した場合には、トルクコンバータ14から伝達されたトルクが、その回転方向が逆回転にされて無段変速機18に出力される。また、前後進切換装置16は、前進用クラッチCおよび後進用ブレーキBが共に解放されることにより、動力伝達を遮断するニュートラル状態(遮断状態)とされる。
【0020】
前記減速歯車装置20は、無段変速機18の出力軸40の外周面に相対回転不能に嵌合された第1ドライブギヤ42と、出力軸40と平行に設けられ且つ回転可能に支持された伝達軸44と、その伝達軸44の外周面に相対回転不能に嵌合されて第1ドライブギヤ42に噛み合わされた第1ドリブンギヤ46と、伝達軸44の外周面から外周側へ突設された第2ドライブギヤ48と、伝達軸44と平行に設けられ且つ回転可能に支持された差動歯車装置24のデフケース50の外周面に相対回転不能に嵌合されて、第2ドライブギヤ48に噛み合わされた第2ドリブンギヤ(デフリングギヤ)52とを、備えている。上記第1ドライブギヤ42および第2ドライブギヤ48は、上記第1ドリブンギヤ46および第2ドリブンギヤ52よりも小径に形成されている。このような減速歯車装置20では、車両の加速時には、無段変速機18の出力軸40から第1ドライブギヤ42に伝達されたトルクが、第1ドリブンギヤ46、伝達軸44、第2ドライブギヤ48、および第2ドリブンギヤ52をそれぞれ介して差動歯車装置24のデフケース50に出力される。また、減速歯車装置20では、車両の減速時には、差動歯車装置24のデフケース50から、第2ドリブンギヤ52、第2ドライブギヤ48、伝達軸44、および第1ドリブンギヤ46をそれぞれ介して第1ドライブギヤ42に伝達されたトルクが、無段変速機18の出力軸40に出力される。
【0021】
図2は、図1に示す車両用動力伝達装置10の一部を示す断面図である。図2において、無段変速機18は、一対の軸受54を介してトランスアクスルケース36によって軸心C1まわりの回転可能に支持された入力軸56と、その入力軸56の外周側に設けられたプライマリプーリ(入力側溝幅可変プーリ)58と、入力軸56と平行に設けられ、一対の軸受60を介してトランスアクスルケース36によって軸心C2まわりの回転可能に支持された出力軸40と、その出力軸40の外周側に設けられたセカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)62と、プライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62のV溝64にそれぞれ巻き掛けられて両プーリ間において摩擦力により動力伝達を行う良く知られた無端環状の伝動ベルト66とを備えている。上記一対の軸受54および一対の軸受60のうち、図1に示すエンジン12とは反対側においてトランスアクスルケース36の内側に嵌め入れられた軸受54および軸受60は、トランスアクスルケース36にボルトによりそれぞれ固定された円環板状の固定プレート68および70によって軸心C1およびC2方向の移動がそれぞれ阻止されている。
【0022】
上記プライマリプーリ58は、入力軸56の外周側に固設された入力側固定シーブ72と、その入力側固定シーブ72との間に前記V溝64を形成するように、入力軸56に相対回転不能且つ軸心C1方向に相対移動可能に設けられた入力側可動シーブ74と、供給される油圧に応じて入力側可動シーブ74を軸心C1方向に移動させて入力側可動シーブ74と入力側固定シーブ72とを接近または離間させることにより、V溝64の溝幅を変化させる入力側油圧アクチュエータ76とを備えている。
【0023】
上記入力側固定シーブ72は、入力軸56の外周面から外周側に突き出して入力軸56に一体に設けられた円環板状部材である。この入力側固定シーブ72には、外周側に向かうほど入力側可動シーブ74から離間する円錐状のテーパ面78が入力側可動シーブ74との対向面に形成されている。
【0024】
前記入力側可動シーブ74は、入力軸56に軸心C1方向の相対移動可能且つ軸心C2まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部74aと、その内側筒部74aの入力側固定シーブ72側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円板部74bと、その円板部74bの外周部から入力側固定シーブ72とは反対側に向けて軸心C2方向に突設された外側筒部74cとを有している。上記円板部74bには、外周側に向かうほど入力側固定シーブ72から離間する円錐状のテーパ面80が入力側固定シーブ72との対向面に形成されている。上記テーパ面80は、入力側固定シーブ72のテーパ面78とともにV溝64を形成している。
【0025】
前記入力側油圧アクチュエータ76は、入力軸56の入力側可動シーブ74に対する入力側固定シーブ72とは反対側の一端部において、その一端部の段付端面と軸受54との間に内周部が固定された壁部82aと、その壁部82aの外周部から入力側可動シーブ74の外側筒部74cの外周側に周方向に連続して突設され、入力側可動シーブ74の外側筒部74cの外周面に対してオイルシールを介して摺動する筒部82bとを、有するシリンダ部材82を備えている。このシリンダ部材82と入力側可動シーブ74と入力軸56とによって油密に囲まれる空間には、油圧室84が形成されている。この油圧室84には、トランスアクスルケース36に形成された第1油路86と、入力軸56の内周側に形成されて第1油路86に連通された第2油路88と、その第2油路88から入力軸56を径方向に貫通して形成された第3油路90とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。
【0026】
このようなプライマリプーリ58では、油圧室84に供給される油圧に応じて入力側可動シーブ74が軸心C1方向において入力側固定シーブ72に接近または離間して、V溝64の幅が変化させられるようになっている。図2において、軸心C1の下側に実線で示す入力側可動シーブ74は、入力側固定シーブ72との間に形成されるV溝64が最小幅とされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最大となる。また、軸心C1の上側に実線で示す入力側可動シーブ74は、入力側固定シーブ72との間に形成されるV溝64が最大幅とされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最小となる。
【0027】
前記セカンダリプーリ62は、出力軸40の外周側に固設された出力側固定シーブ92と、その出力側固定シーブ92との間に前記V溝64を形成するように、出力軸40に相対回転不能且つ軸心C2方向に相対移動可能に設けられた出力側可動シーブ94と、供給される油圧に応じて出力側可動シーブ94を軸心C2方向に移動させて出力側可動シーブ94と出力側固定シーブ92とを接近または離間させることにより、V溝64の溝幅を変化させる出力側油圧アクチュエータ96とを備えている。
【0028】
上記出力側固定シーブ92は、出力軸40の外周面から外周側に突き出して出力軸40に一体に設けられた円環板状部材である。この出力側固定シーブ92には、外周側に向かうほど入力側可動シーブ74から離間する円錐状のテーパ面98が入力側可動シーブ74との対向面に形成されている。また、出力側固定シーブ92には、出力軸40を回転不能に固定するためのパーキングギヤ100がテーパ面98とは反対側の面に一体に設けられている。
【0029】
前記出力側可動シーブ94は、出力軸40に対して軸心C2方向の相対移動可能且つ軸心C2まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部94aと、その内側筒部94aの出力側固定シーブ92側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円環板状の円板部94bと、その円板部94bの外周部から出力側固定シーブ92とは反対側に向けて軸心C2方向に突設された外側筒部94cとを有している。上記円板部94bには、外周側に向かうほど出力側固定シーブ92から離間する円錐状のテーパ面102が出力側固定シーブ92との対向面に形成されている。上記テーパ面102は、出力側固定シーブ92のテーパ面98とともにV溝64を形成している。
【0030】
前記出力側油圧アクチュエータ96は、出力軸40の出力側可動シーブ94に対する出力側固定シーブ92とは反対側の一端部において、その一端部の段付端面と円筒部材104との間に固定された内周壁部106aと、その内周壁部106aの外周部から出力側可動シーブ94の円板部94b側に向けて延設された106bと、その筒部106bの出力側可動シーブ94側の一端部から周方向に連続して外周側に突設され、出力側可動シーブ94の外側筒部94cの内周面に対してオイルシールを介して摺動する外周壁部106cとを有するシリンダ部材106を備えている。このシリンダ部材106と出力側可動シーブ94と出力軸40とによって油密に囲まれる空間には、油圧室108が形成されている。この油圧室108には、トランスアクスルケース36に形成された第4油路110と、出力軸40の内周側に形成されて第4油路110に連通された第5油路112と、その第5油路112から出力軸40を径方向に貫通して形成された第6油路114とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。また、出力側可動シーブ94の内側筒部94aの外周面に形成された段付端面とシリンダ部材82の内側筒部76aとの間には、出力側可動シーブ94を出力側固定シーブ92側へ付勢するコイルスプリング116が設けられている。
【0031】
このようなセカンダリプーリ62では、油圧室108に供給される油圧に応じて出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ92へ向かう推力すなわち伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるようになっている。図2において、軸心C1の下側に実線で示すセカンダリプーリ62は、プライマリプーリ58のV溝64が最大幅とされることで、出力側固定シーブ92と出力側可動シーブ94との間に形成されるV溝64が最小幅とされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ62への巻掛半径が最大となる。また、軸心C1の上側に実線で示すセカンダリプーリ62は、プライマリプーリ58のV溝64が最小さい幅とされることで、出力側固定シーブ92と出力側可動シーブ94との間に形成されるV溝64が最大幅とされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ62への巻掛半径が最小となる。
【0032】
以上のように構成された無段変速機18では、プライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62のV溝64をそれぞれ変化させて、伝動ベルト66のプライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62における巻掛半径をそれぞれ変化させることにより、変速比(入力軸56の回転速度/出力軸40の回転速度)が無段階に変化するようになっている。伝動ベルト66のプライマリプーリ58における巻掛半径が比較的小さくされ且つセカンダリプーリ62における巻掛半径が比較的大きくされた場合には、変速比が比較的小さくされる。また、伝動ベルト66のプライマリプーリ58における巻掛半径が比較的大きくされ且つセカンダリプーリ62における巻掛半径が比較的小さくされた場合には、変速比が比較的大きくされる。
【0033】
図3は、図2の無段変速機18のうち出力軸40および出力側固定シーブ92を示す図である。図3に示すように、出力軸40の外周面のうち前記出力側可動シーブ94との嵌合部には、出力側固定シーブ92側へ向かうにつれて軸心C2まわりの反時計方向へねじれる即ち左ねじれのねじれ角βを有する複数のヘリカルスプライン外歯118がそれぞれ形成されている。また、図2において、出力側可動シーブ94の内側筒部94aの内周面には、上記複数のヘリカルスプライン外歯118にそれぞれ噛み合わされた左ねじれの複数のヘリカルスプライン内歯120がそれぞれ形成されている。上記複数のヘリカルスプライン外歯118および複数のヘリカルスプライン内歯120は、出力軸40と出力側可動シーブ94とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に設けられ、その出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ94へ向かう推力を発生させる噛合機構122を構成するものである。上記車両の減速方向のトルクとは、車両の前進時の減速に際してエンジン12が車輪22により回転駆動される状態とされたときに、車輪22からエンジン12へ伝達されるトルクのことである。車両の前進時における出力軸40の回転方向は、図2の矢印aで示すように、出力軸40を軸心C2方向において出力側固定シーブ92に対して出力側可動シーブ94が手前となるように見たときに、時計まわり(右まわり)となる方向である。なお、上記出力側固定シーブ92は、本発明における出力軸において軸心方向の移動可能な部材に相当するものである。
【0034】
図4は、図2に示す出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、出力軸40のヘリカルスプライン外歯118から出力側可動シーブ94のヘリカルスプライン内歯120へ作用する力F1、すなわちヘリカルスプライン内歯120がヘリカルスプライン外歯118から受ける力F1を示す図である。図4に示すように、ヘリカルスプライン外歯118から前記ヘリカルスプライン内歯120へは、上記車両の減速方向のトルクが噛合機構122に伝達されたときにヘリカルスプライン外歯118の歯面に垂直な方向の力F1が作用する。この力F1の軸心C2に直交する方向の分力すなわち円周方向成分F11は、上記車両の減速方向のトルクによりヘリカルスプライン外歯118とヘリカルスプライン内歯120との噛合点に作用する円周方向の力である。この円周方向成分F11は、上記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0035】
また、図4に示すようにねじれ角βを有するヘリカルスプライン外歯118からは、前記車両の減速方向のトルクが噛合機構122に伝達されたときに、前記力F1の軸心C2に平行な方向のスラスト方向成分F12(=F11tanβ)がヘリカルスプライン内歯120へ作用する。そのため、出力側可動シーブ94は、車両の減速時に、ヘリカルスプライン内歯120がヘリカルスプライン外歯118から受ける力F1のスラスト方向成分F12を受けて、出力側固定シーブ92へ付勢されるようになっている。噛合機構122は、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に上記車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ92へ向かう推力として上記スラスト方向成分F12を付与するものである。上記出力側固定シーブ92へ向かう推力は、伝動ベルト66を挟圧する方向の推力でもある。上記スラスト方向成分F12は、前記円周方向成分F11の大きさに比例して大きくなるとともに、前記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0036】
なお、本実施例のヘリカルスプライン外歯118およびヘリカルスプライン内歯120のねじれ角βは、例えば、セカンダリプーリ62のV溝64が最大幅とされて伝動ベルト66の巻掛半径が最小とされた状態において前記車両の減速方向のトルクが伝動ベルト66を介してセカンダリプーリ62からプライマリプーリ58へ伝達される際に、伝動ベルト66がセカンダリプーリ62のテーパ面98および102に対してスリップすることのないように設定される。具体的には、セカンダリプーリ62のV溝64が最大幅とされて伝動ベルト66の巻掛半径が最小とされた状態において前記車両の減速方向のトルクが伝動ベルト66を介してセカンダリプーリ62からプライマリプーリ58へ伝達される際に、前記スラスト方向成分F12(=F11tanβ)および前記コイルスプリング116の付勢力が、伝動ベルト66がセカンダリプーリ62のテーパ面98および102に対して滑らないために必要とされる伝動ベルト66を挟圧する方向の推力以上となるように、例えば予め実験的に求められて設定される。
【0037】
上述のように、本実施例の無段変速機18によれば、出力軸40と出力側可動シーブ94とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、出力軸40において軸心C2方向の移動可能な部材としての出力側可動シーブ94に設けられ、車両の減速方向のトルクが出力側可動シーブ94に伝達されたときにその出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力(スラスト方向成分F12)を付与する噛合機構122を含む。この噛合機構122は、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に設けられ、その出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ92へ向かう推力(スラスト方向成分F12)を発生させるものである。そのため、車両の減速走行中には、セカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)62の出力側可動シーブ94を出力側固定シーブ側92へ押圧するための出力側油圧アクチュエータ96によらずとも噛合機構122により出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力すなわち出力側固定シーブ92へ向かう推力を付与することができるので、車両の減速走行中にオイルポンプ28からセカンダリプーリ62の出力側油圧アクチュエータ96への油圧供給が停止しても伝動ベルト66のスリップを抑制することができる。
【0038】
また、本実施例の無段変速機18によれば、噛合機構122は、出力軸40の外周面および出力側可動シーブ94の内周面に、出力側可動シーブ94から出力側固定シーブ側92へ向かうにつれて軸心C2まわりの反時計方向へねじれるようにそれぞれ形成されて、互いに噛み合わされた複数のヘリカルスプライン外歯118およびヘリカルスプライン内歯120を備え、出力側可動シーブ94は、車両の減速時に、ヘリカルスプライン内歯120がヘリカルスプライン外歯118から受ける力F1のスラスト方向成分F12を受けて、出力側固定シーブ92へ付勢されることから、車両の減速走行中には、セカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)62の出力側可動シーブ94を出力側固定シーブ側92へ押圧するための出力側油圧アクチュエータ96によらずとも、噛合機構122のヘリカルスプライン内歯120がヘリカルスプライン外歯118から受ける力F1のスラスト方向成分F12により出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力を付与することができるので、車両の減速走行中にオイルポンプ28からセカンダリプーリ62の出力側油圧アクチュエータ96への油圧供給が停止しても伝動ベルト66のスリップを抑制することができる。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、実施例相互に重複する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図5は、本発明の他の実施例の無段変速機200および減速歯車装置202を示す骨子図である。本実施例の減速歯車装置202は、無段変速機200の出力軸40に相対回転不能且つ軸心C2方向の移動可能に例えばスプライン嵌合された第1ヘリカルギヤ204と、その第1ヘリカルギヤ204に噛み合わされると共に回転軸44に相対回転不能に固設され、出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤ206とを備えている。上記第1ヘリカルギヤ204は、出力軸40において軸心C2方向の移動可能な部材として、セカンダリプーリ62の出力側可動シーブ94の出力側固定シーブ92とは反対側に設けられており、出力側可動シーブ94側へ向かうにつれて軸心C2まわりの反時計方向へねじれるように形成された外歯(斜歯)を有している。また、第1ヘリカルギヤ204は、出力側可動シーブ94に伝達部材208を介して連結されている。上記第1ヘリカルギヤ204および第2ヘリカルギヤ206は、車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力を付与する噛合機構210を構成するものである。出力側可動シーブ94は、車両の減速時に、第1ヘリカルギヤ204が第2ヘリカルギヤ206から受ける力のスラスト方向成分を伝達部材208を介して受けて、出力側固定シーブ92側へ付勢される。なお、図5において、軸心C2の下側に示す出力側可動シーブ94は、出力側固定シーブ92との間に形成されるV溝64が最大幅とされた状態を示しており、軸心C2の上側に示す出力側可動シーブ94は、出力側固定シーブ92との間に形成されるV溝64が最小幅とされた状態を示している。
【0041】
本実施例の無段変速機200によれば、出力軸40に相対回転不能且つ軸心C2方向の移動可能に例えばスプライン嵌合された第1ヘリカルギヤ204と、その第1ヘリカルギヤ204に噛み合わされると共に回転軸44に相対回転不能に固設され、出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤ206とを備える噛合機構210が設けられ、セカンダリプーリ62の出力側可動シーブ94は、車両の減速時に、第1ヘリカルギヤ204が第2ヘリカルギヤ206から受ける力のスラスト方向成分を伝達部材208を介して受けて、出力側固定シーブ92側へ付勢される。上記噛合機構210は、車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力を付与するものである。そのため、車両の減速走行中には、出力側可動シーブ94を出力側固定シーブ92側へ押圧するための出力側油圧アクチュエータ96によらずとも噛合機構122により出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力を付与することができるので、実施例1と同様に、車両の減速走行中にオイルポンプ28からセカンダリプーリ62の出力側油圧アクチュエータ96への油圧供給が停止しても伝動ベルト66のスリップを抑制することができる。
【実施例3】
【0042】
図6は、本発明の他の実施例の無段変速機300(図2参照)の出力軸40を示す図である。図6に示すように、出力軸40の外周面のうち出力側可動シーブ94(図2参照)との嵌合部には、出力側固定シーブ92側へ向かうにつれて軸心C2まわりの時計方向へねじれる即ち右ねじれの複数のヘリカルスプライン外歯302が形成されている。また、図2において、出力側可動シーブ94の内側筒部94aの内周面には、上記複数のヘリカルスプライン外歯302にそれぞれ噛み合わされた右ねじれの複数のヘリカルスプライン内歯304がそれぞれ形成されている。上記複数のヘリカルスプライン外歯302およびヘリカルスプライン内歯304は、出力軸40と出力側可動シーブ94とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に設けられ、その出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ94へ向かう推力を発生させる噛合機構306を構成するものである。上記車両の加速方向のトルクとは、車両の前進時の加速に際してエンジン12が駆動状態とされたときに、エンジン12から車輪22へ伝達されるトルクのことである。
【0043】
図7は、図2に示す本実施例の出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、出力軸40のヘリカルスプライン外歯302から出力側可動シーブ94のヘリカルスプライン内歯304へ作用する力F2、すなわちヘリカルスプライン内歯304がヘリカルスプライン外歯302から受ける力F2を示す図である。図7に示すように、ヘリカルスプライン外歯302から前記ヘリカルスプライン内歯304へは、上記車両の加速方向のトルクが噛合機構306に伝達されたときにヘリカルスプライン外歯302の歯面に垂直な方向の力F2が作用する。この力F2の軸心C2に直交する方向の分力すなわち円周方向成分F21は、上記車両の加速方向のトルクによりヘリカルスプライン外歯302とヘリカルスプライン内歯304との噛合点に作用する円周方向の力である。この円周方向成分F21は、上記車両の加速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0044】
また、図7に示すようにねじれ角βを有するヘリカルスプライン外歯302からは、前記車両の加速方向のトルクが噛合機構306に伝達されたときに、前記力F2の軸心C2に平行な方向のスラスト方向成分F22(=F21tanβ)がヘリカルスプライン内歯304へ作用する。そのため、出力側可動シーブ94は、車両の加速時に、ヘリカルスプライン内歯304がヘリカルスプライン外歯302から受ける力F2のスラスト方向成分F22を受けて、出力側固定シーブ92へ付勢されるようになっている。噛合機構306は、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に上記車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ92へ向かう推力として上記スラスト方向成分F22を付与するものである。上記スラスト方向成分F22は、前記円周方向成分F21の大きさに比例して大きくなるとともに、前記車両の加速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0045】
上述のように、本実施例の無段変速機300によれば、出力軸40と出力側可動シーブ94とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、出力軸40において軸心C2方向の移動可能な部材としての出力側可動シーブ94に設けられ、車両の加速方向のトルクが出力側可動シーブ94に伝達されたときにその出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力(スラスト方向成分F22)を付与する噛合機構306を含む。この噛合機構306は、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に設けられ、その出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、そのトルクの大きさに応じて出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ92へ向かう推力(スラスト方向成分F22)を発生させるものである。そのため、車両の加速走行中には、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に伝達される車両の加速方向のトルクの大きさに応じて出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるので、伝動ベルト66をスリップさせないために出力側可動シーブ94を出力側固定シーブ側92へ押圧するための出力側油圧アクチュエータ96に供給すべき油圧を、低減することができる。そのため、出力側油圧アクチュエータ96の耐圧仕様を簡素化することができ、無段変速機300の製造コストを削減することができる。また、上記油圧低減によってオイルポンプ28の駆動トルクが減少させられることにより、無段変速機300の動力伝達効率が上昇するため、車両燃費を向上することができる。
【実施例4】
【0046】
図8は、本発明の他の実施例の無段変速機400(図2参照)の入力軸56を示す図である。図8に示すように、入力軸56の外周面のうち入力側可動シーブ74(図2参照)との嵌合部には、入力側固定シーブ74側へ向かうにつれて軸心C1まわりの時計方向へねじれる即ち右ねじれの複数のヘリカルスプライン外歯402が形成されている。また、図2において、入力側可動シーブ74の内側筒部72aの内周面には、上記複数のヘリカルスプライン外歯402にそれぞれ噛み合わされた右ねじれの複数のヘリカルスプライン内歯404がそれぞれ形成されている。上記複数のヘリカルスプライン外歯402およびヘリカルスプライン内歯404は、入力軸56と入力側可動シーブ74とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に設けられ、その入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達された場合には、入力側油圧アクチュエータ76の遠心油圧が作用することにより入力側可動シーブ74に生じる入力側固定シーブ72へ向かう推力に抗する推力として、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72とは反対側へ向かう推力を発生させ、また入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の加速方向のトルクが伝達された場合には、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力を発生させる噛合機構406を構成するものである。
【0047】
図9は、図2に示す本実施例の入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸56のヘリカルスプライン外歯402から入力側可動シーブ74のヘリカルスプライン内歯404へ作用する力F3、すなわちヘリカルスプライン内歯404がヘリカルスプライン外歯402から受ける力F3を示す図である。図9に示すように、ヘリカルスプライン外歯402から前記ヘリカルスプライン内歯404へは、上記車両の減速方向のトルクが噛合機構406に伝達されたときにヘリカルスプライン外歯402の歯面に垂直な方向の力F3が作用する。この力F3の軸心C2に直交する方向の分力すなわち円周方向成分F31は、上記車両の減速方向のトルクによりヘリカルスプライン外歯402とヘリカルスプライン内歯404との噛合点に作用する円周方向の力である。この円周方向成分F31は、上記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0048】
また、図9に示すようにねじれ角βを有するヘリカルスプライン外歯402からは、前記車両の減速方向のトルクが噛合機構406に伝達されたときに、前記力F3の軸心C2に平行な方向のスラスト方向成分F32(=F31tanβ)がヘリカルスプライン内歯404へ作用する。そのため、入力側可動シーブ74は、車両の減速時に、ヘリカルスプライン内歯404がヘリカルスプライン外歯402から受ける力F3のスラスト方向成分F32を受けて、入力側固定シーブ72とは反対側へ付勢されるようになっている。噛合機構406は、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に上記車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72とは反対側へ向かう推力として上記スラスト方向成分F32を付与するものである。上記スラスト方向成分F32は、前記円周方向成分F31の大きさに比例して大きくなるとともに、前記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0049】
図10は、図2に示す本実施例の入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸56のヘリカルスプライン外歯402から入力側可動シーブ74のヘリカルスプライン内歯404へ作用する力F4、すなわちヘリカルスプライン内歯404がヘリカルスプライン外歯402から受ける力F4を示す図である。図10に示すように、ヘリカルスプライン外歯402から前記ヘリカルスプライン内歯404へは、上記車両の加速方向のトルクが噛合機構406に伝達されたときにヘリカルスプライン外歯402の歯面に垂直な方向の力F4が作用する。この力F4の軸心C2に直交する方向の分力すなわち円周方向成分F41は、上記車両の加速方向のトルクによりヘリカルスプライン外歯402とヘリカルスプライン内歯404との噛合点に作用する円周方向の力である。この円周方向成分F41は、上記車両の加速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0050】
また、図10に示すようにねじれ角βを有するヘリカルスプライン外歯402からは、前記車両の加速方向のトルクが噛合機構406に伝達されたときに、前記力F4の軸心C2に平行な方向のスラスト方向成分F42(=F41tanβ)がヘリカルスプライン内歯404へ作用する。そのため、入力側可動シーブ74は、車両の加速時に、ヘリカルスプライン内歯404がヘリカルスプライン外歯402から受ける力F4のスラスト方向成分F42を受けて、入力側固定シーブ72へ付勢されるようになっている。噛合機構406は、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に上記車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力として上記スラスト方向成分F42を付与するものである。上記スラスト方向成分F42は、前記円周方向成分F41の大きさに比例して大きくなるとともに、前記車両の加速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0051】
上述のように、本実施例の無段変速機400によれば、入力軸56と入力側可動シーブ74とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に設けられ、その入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達された場合には、入力側油圧アクチュエータ76の遠心油圧が作用することにより入力側可動シーブ74に生じる入力側固定シーブ72へ向かう推力に抗する推力として、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72とは反対側へ向かう推力(スラスト方向成分F32)を発生させ、また入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の加速方向のトルクが伝達された場合には、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力(スラスト方向成分F42)を発生させる噛合機構406を含む。そのため、車両の減速走行中には、車両の減速方向のトルクの大きさに応じて入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72とは反対側へ向かう推力が付与されるので、入力側油圧アクチュエータ76の遠心油圧に起因して入力側可動シーブ74に生じる入力側固定シーブ72へ向かう推力を相殺することができる。それ故に、車両の減速走行中にオイルポンプ28から入力側油圧アクチュエータ76への油圧供給が停止したときに、入力側油圧アクチュエータ76の遠心油圧に起因して入力側可動シーブ74が入力側固定シーブ72へ移動させられて無段変速機の変速比が大きくなることを抑制することができる。上記のように無段変速機の変速比が大きくなると、エンジン再起動後の発進性および加速性が低下するという問題が生じる。
【0052】
また、車両の加速走行中には、車両の加速方向のトルクの大きさに応じて入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力が付与されるので、変速時に入力側可動シーブ74を移動させるために入力側油圧アクチュエータ76に供給すべき油圧を低減することができる。そのため、入力側油圧アクチュエータ76の耐圧仕様を簡素化することができ、無段変速機400の製造コストを削減することができる。また、上記油圧低減によってオイルポンプ28の駆動トルクが減少させられることにより、無段変速機400の動力伝達効率が上昇するため、車両燃費を向上することができる。
【実施例5】
【0053】
図11は、本発明の他の実施例の無段変速機500(図2参照)の入力軸56を示す図である。図11に示すように、入力軸56の外周面のうち入力側可動シーブ74(図2参照)との嵌合部には、入力側固定シーブ74側へ向かうにつれて軸心C1まわりの反時計方向へねじれる即ち左ねじれの複数のヘリカルスプライン外歯502が形成されている。また、図2において、入力側可動シーブ74の内側筒部72aの内周面には、上記複数のヘリカルスプライン外歯502にそれぞれ噛み合わされた右ねじれの複数のヘリカルスプライン内歯504がそれぞれ形成されている。上記複数のヘリカルスプライン外歯502およびヘリカルスプライン内歯504は、入力軸56と入力側可動シーブ74とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に設けられ、その入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達された場合には、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力を発生させる噛合機構506を構成するものである。
【0054】
図12は、図2に示す本実施例の入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸56のヘリカルスプライン外歯502から入力側可動シーブ74のヘリカルスプライン内歯504へ作用する力F5、すなわちヘリカルスプライン内歯504がヘリカルスプライン外歯502から受ける力F5を示す図である。図12に示すように、ヘリカルスプライン外歯502から前記ヘリカルスプライン内歯504へは、上記車両の減速方向のトルクが噛合機構506に伝達されたときにヘリカルスプライン外歯502の歯面に垂直な方向の力F5が作用する。この力F5の軸心C2に直交する方向の分力すなわち円周方向成分F51は、上記車両の減速方向のトルクによりヘリカルスプライン外歯502とヘリカルスプライン内歯504との噛合点に作用する円周方向の力である。この円周方向成分F51は、上記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0055】
また、図12に示すようにねじれ角βを有するヘリカルスプライン外歯502からは、前記車両の減速方向のトルクが噛合機構506に伝達されたときに、前記力F5の軸心C2に平行な方向のスラスト方向成分F52(=F51tanβ)がヘリカルスプライン内歯504へ作用する。そのため、入力側可動シーブ74は、車両の減速時に、ヘリカルスプライン内歯504がヘリカルスプライン外歯502から受ける力F5のスラスト方向成分F52を受けて、入力側固定シーブ72側へ付勢されるようになっている。噛合機構506は、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に上記車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力として上記スラスト方向成分F52を付与するものである。上記スラスト方向成分F52は、前記円周方向成分F51の大きさに比例して大きくなるとともに、前記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0056】
上述のように、本実施例の無段変速機500によれば、入力軸56と入力側可動シーブ74とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に設けられ、その入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達された場合には、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力(スラスト方向成分F52)を発生させる噛合機構506を含むことから、車両の減速走行中には、車両の減速方向のトルクの大きさに応じて入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力が付与されるので、変速時に入力側可動シーブ74を移動させるために入力側油圧アクチュエータ76に供給すべき油圧を低減することができる。そのため、入力側油圧アクチュエータ76の耐圧仕様を簡素化することができ、無段変速機500の製造コストを削減することができる。また、上記油圧低減によってオイルポンプ28の駆動トルクが減少させられることにより、無段変速機500の動力伝達効率が上昇するため、車両燃費を向上することができる。
【0057】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0058】
たとえば、噛合機構122(210、306、406、506)は、出力軸40と出力側可動シーブ94との間、および第1ドライブギヤ42と第1ドリブンギヤ46との間に限らず、例えば、出力軸40と出力軸40において軸心C2方向の移動可能な部材たとえば第1ドライブギヤ42との間に設けられてもよい。
【0059】
また、ヘリカルスプライン外歯118およびヘリカルスプライン内歯120のねじれ角βは、セカンダリプーリ62における伝動ベルト66の巻掛半径が最小とされた状態において車両の減速方向のトルクが伝動ベルト66を介してセカンダリプーリ62からプライマリプーリ58へ伝達される際に、伝動ベルト66がセカンダリプーリ62のテーパ面98および102に対してスリップすることのないように設定されていたが、これに限らない。すなわち、スラスト方向成分F12(=F11tanβ)およびコイルスプリング116の付勢力が、伝動ベルト66がセカンダリプーリ62のテーパ面98および102に対して滑らないために必要とされる伝動ベルト66を挟圧する方向の推力よりも小さくなるように設定されてもよい。それでも、伝動ベルト66のスリップを抑制することができるという効果は得られる。
【0060】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
18:車両用無段変速機
40:出力軸
56:入力軸
58:プライマリプーリ(入力側溝幅可変プーリ)
62:セカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)
64:V溝
66:伝動ベルト
72:入力側固定シーブ
74:入力側可動シーブ
92:出力側固定シーブ
94:出力側可動シーブ(出力軸において軸心方向の移動可能な部材)
118:ヘリカルスプライン外歯
120:ヘリカルスプライン内歯
122,210:噛合機構
204:第1ヘリカルギヤ(出力軸において軸心方向の移動可能な部材)
206:第2ヘリカルギヤ
F1:ヘリカルスプライン内歯がヘリカルスプライン外歯から受ける力
F12:推力、スラスト方向成分
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用無段変速機に係り、特に、車両の減速時にエンジンが停止されてオイルポンプからの油圧供給が停止されたときに伝動ベルトのスリップを抑制するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに平行に設けられた入力軸および出力軸と、その入力軸の外周面に固設された入力側固定シーブ、およびその入力側固定シーブとの間にV溝を形成するように前記入力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された入力側可動シーブを有する入力側溝幅可変プーリと、前記出力軸の外周面に固設された出力側固定シーブ、およびその出力側固定シーブとの間にV溝を形成するように前記出力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された出力側可動シーブを有する出力側溝幅可変プーリと、前記入力側溝幅可変プーリおよび出力側溝幅可変プーリのV溝にそれぞれ巻き掛けられた無端環状の伝動ベルトとを備え、前記V溝の溝幅を変化させて前記伝動ベルトの巻掛半径を変化させることにより変速比を無段階に変化させる車両用無段変速機が知られている。例えば、特許文献1および2に記載されたものがそれである。
【0003】
特許文献1の車両用無段変速機では、入力側可動シーブと入力軸とがスプライン嵌合されることにより、それらが軸心まわりの相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能に設けられており、また、出力側可動シーブと出力軸とがスプライン嵌合されることにより、それらが軸心まわりの相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能に設けられている。
【0004】
特許文献2の車両用無段変速機は、出力軸に軸心まわりの相対回転可能且つ軸心方向の相対移動可能に設けられて出力側可動シーブに連結された第1ヘリカルギヤと、その第1ヘリカルギヤと噛み合わされて出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤとを、有する伝達歯車装置を備えている。この車両用無段変速機では、車両の加速方向のトルクが上記伝達歯車装置に伝達されたときに、出力側可動シーブが第1ヘリカルギヤと第2ヘリカルギヤとの噛合反力を受けて出力側固定シーブ側へ付勢されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−309462号公報
【特許文献2】特開2007−298139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の車両用無段変速機では、溝幅可変プーリの可動シーブに伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与するためのアクチュエータとして、例えば油圧式のものが用いられている。この油圧式アクチュエータは、エンジンまたはそれに連結された回転部材により回転駆動される機械式オイルポンプを発生源とする油圧が供給されることにより、作動するようになっている。ここで、車両の燃費を向上させることを目的として減速走行中にエンジンの作動を停止する制御が行われる場合には、上記機械式オイルポンプの作動が停止するために、溝幅可変プーリに伝動ベルトを挟圧する方向の推力が付与されず、伝動ベルトの滑りが発生する可能性がある。そのため、上記伝動ベルトの滑りを防止するために、上記エンジン以外の動力で駆動されるオイルポンプ例えば電動式オイルポンプが追加で必要となり、車両用無段変速機の部品点数および製造コストが増加するという問題があった。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる車両用無段変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a-1) 互いに平行に設けられた入力軸および出力軸と、(a-2) その入力軸の外周面に固設された入力側固定シーブ、およびその入力側固定シーブとの間にV溝を形成するように前記入力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された入力側可動シーブを有する入力側溝幅可変プーリと、(a-3) 前記出力軸の外周面に固設された出力側固定シーブ、およびその出力側固定シーブとの間にV溝を形成するように前記出力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された出力側可動シーブを有する出力側溝幅可変プーリと、(a-4) 前記入力側溝幅可変プーリおよび出力側溝幅可変プーリのV溝にそれぞれ巻き掛けられた無端環状の伝動ベルトとを備え、(a-5) 前記V溝の溝幅を変化させて前記伝動ベルトの巻掛半径を変化させることにより変速比を無段階に変化させる車両用無段変速機であって、(b) 前記出力軸と前記出力側可動シーブとを相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能とするために、前記出力軸において軸心方向の移動可能な部材に設けられ、車両の減速方向のトルクがその部材に伝達されたときに前記出力側可動シーブに前記伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与する噛合機構を含むことにある。
【0009】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記噛合機構は、前記出力軸と前記出力側可動シーブとの間に設けられ、その出力軸と出力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに前記出力側可動シーブに前記出力側固定シーブへ向かう推力を発生させるものであることにある。
【0010】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2にかかる発明において、(a) 前記噛合機構は、前記出力軸の外周面および前記出力側可動シーブの内周面に、前記出力側可動シーブから前記出力側固定シーブ側へ向かうにつれて前記出力側可動シーブの軸心まわりの反時計方向へねじれるようにそれぞれ形成されて、互いに噛み合わされた複数のヘリカルスプライン外歯およびヘリカルスプライン内歯を備え、(b) 前記出力側可動シーブは、車両の減速時に、前記出力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯が前記出力軸のヘリカルスプライン外歯から受ける力のスラスト方向成分を受けて、前記出力側固定シーブ側へ付勢されることにある。
【0011】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、(a) 前記噛合機構は、前記出力軸において軸心方向の移動可能な部材として、前記出力側可動シーブの前記出力側固定シーブとは反対側に設けられ、前記出力側可動シーブ側へ向かうにつれて前記軸心まわりの反時計方向へねじれるように形成された第1ヘリカルギヤと、その第1ヘリカルギヤと噛み合わされて出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤとを備え、(b) 前記出力側可動シーブは、車両の減速時に、前記第1ヘリカルギヤが前記第2ヘリカルギヤから受ける力のスラスト方向成分を前記第1ヘリカルギヤを介して受けて、前記出力側固定シーブ側へ付勢されることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明の車両用無段変速機によれば、出力軸と出力側可動シーブとを相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能とするために、出力軸において軸心方向の移動可能な部材に設けられ、車両の減速方向のトルクがその部材に伝達されたときに出力側可動シーブに伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与する噛合機構を含むことから、車両の減速走行中には、出力側溝幅可変プーリの出力側可動シーブを出力側固定シーブ側へ押圧するための油圧式アクチュエータによらずとも噛合機構により出力側可動シーブに伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与することができるので、車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明の車両用無段変速機によれば、前記噛合機構は、出力軸と出力側可動シーブとの間に設けられ、その出力軸と出力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブに出力側固定シーブへ向かう推力を発生させるものであることから、車両の減速走行中には、出力側溝幅可変プーリの出力側可動シーブを出力側固定シーブ側へ押圧するための油圧式アクチュエータによらずとも噛合機構により出力側可動シーブに出力側固定シーブへ向かう推力を発生させることができるので、車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる。
【0014】
また、請求項3にかかる発明の車両用無段変速機によれば、前記噛合機構は、出力軸の外周面および出力側可動シーブの内周面に、出力側可動シーブから出力側固定シーブ側へ向かうにつれて出力側可動シーブの軸心まわりの反時計方向へねじれるようにそれぞれ形成されて、互いに噛み合わされた複数のヘリカルスプライン外歯およびヘリカルスプライン内歯を備え、出力側可動シーブは、車両の減速時に、その出力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯が出力軸のヘリカルスプライン外歯から受ける力のスラスト方向成分を受けて、出力側固定シーブ側へ付勢されることから、車両の減速走行中には、出力側溝幅可変プーリの出力側可動シーブを出力側固定シーブ側へ押圧するための油圧式アクチュエータによらずとも噛合機構のヘリカルスプライン内歯がヘリカルスプライン外歯から受ける力のスラスト方向成分により出力側可動シーブに伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与することができるので、車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明の車両用無段変速機によれば、前記噛合機構は、出力軸において軸心方向の移動可能な部材として、出力側可動シーブの出力側固定シーブとは反対側に設けられ、出力側可動シーブ側へ向かうにつれて軸心まわりの反時計方向へねじれるように形成された第1ヘリカルギヤと、その第1ヘリカルギヤと噛み合わされて出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤとを備え、出力側可動シーブは、車両の減速時に、第1ヘリカルギヤが第2ヘリカルギヤから受ける力のスラスト方向成分を第1ヘリカルギヤを介して受けて、出力側固定シーブ側へ付勢されることから、車両の減速走行中には、出力側溝幅可変プーリの出力側可動シーブを出力側固定シーブ側へ押圧するための油圧式アクチュエータによらずとも噛合機構の第1ヘリカルギヤが第2ヘリカルギヤから受ける力のスラスト方向成分により出力側可動シーブに伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与することができるので、車両の減速走行中にオイルポンプから溝幅可変プーリの油圧式アクチュエータへの油圧供給が停止しても伝動ベルトのスリップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が好適に適用された車両用動力伝達装置の骨子図である。
【図2】図1に示す車両用動力伝達装置の一部を示す断面図である。
【図3】図2の無段変速機のうち出力軸および出力側固定シーブを示す図である。
【図4】図2に示す出力軸と出力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、出力軸のヘリカルスプライン外歯から出力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯へ作用する力を示す図である。
【図5】本発明の他の実施例の無段変速機を示す骨子図である。
【図6】図5の無段変速機の出力軸を示す図である。
【図7】図5の出力軸と図2の出力側可動シーブとの間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、出力軸のヘリカルスプライン外歯から出力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯へ作用する力を示す図である。
【図8】本発明の他の実施例の無段変速機の入力軸を示す図である。
【図9】図8の入力軸と図2の入力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸のヘリカルスプライン外歯から入力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯へ作用する力を示す図である。
【図10】図8の入力軸と図2の入力側可動シーブとの間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸のヘリカルスプライン外歯から入力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯へ作用する力を示す図である。
【図11】本発明の他の実施例の無段変速機の入力軸を示す図である。
【図12】図11の入力軸と図2の入力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸のヘリカルスプライン外歯から入力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯へ作用する力を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明が好適に適用された車両用動力伝達装置10の骨子図である。図1において、車両用動力伝達装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用のものであり、車両用の駆動源として良く知られたエンジン12に連結されている。この車両用動力伝達装置10は、流体を媒体としてエンジン12のトルクを伝達する流体伝動装置として良く知られたトルクコンバータ14と、そのトルクコンバータ14から伝達されたトルクの回転方向を、車両前進用の回転方向とその反対向きである車両後進用の逆回転方向との間で切り換える前後進切換装置16と、その前後進切換装置16を介して伝達されたトルクを負荷に応じたトルクに変換する車両用ベルト式無段変速機(以下、無段変速機と記載する)18と、その無段変速機18の出力側に連結された減速歯車装置20と、その減速歯車装置20を介して伝達されたトルクを、左右一対の車輪22に対してそれらの回転差を許容しつつ伝達する良く知られた所謂傘歯車式の差動歯車装置24とを備えている。上記トルクコンバータ14のポンプ翼車26には、例えば無段変速機18の変速制御や前後進切換装置16の前後進切換制御に用いられる油圧等を発生させる機械式のオイルポンプ28が設けられている。
【0019】
上記前後進切換装置16は、トルクコンバータ14のタービン軸30に連結されたサンギヤ32と、無段変速機18の入力軸56に連結され且つタービン軸30に対して前進用クラッチCを介して選択的に連結されるキャリヤ34と、非回転部材としてのトランスアクスルケース36に対して後進用ブレーキBを介して選択的に連結されるリングギヤ38とを、含むダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されている。上記前進用クラッチCおよび後進用ブレーキBは、何れもオイルポンプ28から油圧が供給されることによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。このような前後進切換装置16では、前進用クラッチCが係合されると共に後進用ブレーキBが解放されることにより、前記遊星歯車装置が一体回転状態とされて前進用動力伝達経路が成立するようになっている。上記前進用動力伝達経路が成立した場合には、トルクコンバータ14から伝達されたトルクがそのままの回転方向で無段変速機18に出力される。また、前後進切換装置16では、後進用ブレーキBが係合させられると共に前進用クラッチCが解放されることにより、前記遊星歯車装置が入出力逆回転状態とされて後進用動力伝達経路が成立するようになっている。上記後進用動力伝達経路が成立した場合には、トルクコンバータ14から伝達されたトルクが、その回転方向が逆回転にされて無段変速機18に出力される。また、前後進切換装置16は、前進用クラッチCおよび後進用ブレーキBが共に解放されることにより、動力伝達を遮断するニュートラル状態(遮断状態)とされる。
【0020】
前記減速歯車装置20は、無段変速機18の出力軸40の外周面に相対回転不能に嵌合された第1ドライブギヤ42と、出力軸40と平行に設けられ且つ回転可能に支持された伝達軸44と、その伝達軸44の外周面に相対回転不能に嵌合されて第1ドライブギヤ42に噛み合わされた第1ドリブンギヤ46と、伝達軸44の外周面から外周側へ突設された第2ドライブギヤ48と、伝達軸44と平行に設けられ且つ回転可能に支持された差動歯車装置24のデフケース50の外周面に相対回転不能に嵌合されて、第2ドライブギヤ48に噛み合わされた第2ドリブンギヤ(デフリングギヤ)52とを、備えている。上記第1ドライブギヤ42および第2ドライブギヤ48は、上記第1ドリブンギヤ46および第2ドリブンギヤ52よりも小径に形成されている。このような減速歯車装置20では、車両の加速時には、無段変速機18の出力軸40から第1ドライブギヤ42に伝達されたトルクが、第1ドリブンギヤ46、伝達軸44、第2ドライブギヤ48、および第2ドリブンギヤ52をそれぞれ介して差動歯車装置24のデフケース50に出力される。また、減速歯車装置20では、車両の減速時には、差動歯車装置24のデフケース50から、第2ドリブンギヤ52、第2ドライブギヤ48、伝達軸44、および第1ドリブンギヤ46をそれぞれ介して第1ドライブギヤ42に伝達されたトルクが、無段変速機18の出力軸40に出力される。
【0021】
図2は、図1に示す車両用動力伝達装置10の一部を示す断面図である。図2において、無段変速機18は、一対の軸受54を介してトランスアクスルケース36によって軸心C1まわりの回転可能に支持された入力軸56と、その入力軸56の外周側に設けられたプライマリプーリ(入力側溝幅可変プーリ)58と、入力軸56と平行に設けられ、一対の軸受60を介してトランスアクスルケース36によって軸心C2まわりの回転可能に支持された出力軸40と、その出力軸40の外周側に設けられたセカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)62と、プライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62のV溝64にそれぞれ巻き掛けられて両プーリ間において摩擦力により動力伝達を行う良く知られた無端環状の伝動ベルト66とを備えている。上記一対の軸受54および一対の軸受60のうち、図1に示すエンジン12とは反対側においてトランスアクスルケース36の内側に嵌め入れられた軸受54および軸受60は、トランスアクスルケース36にボルトによりそれぞれ固定された円環板状の固定プレート68および70によって軸心C1およびC2方向の移動がそれぞれ阻止されている。
【0022】
上記プライマリプーリ58は、入力軸56の外周側に固設された入力側固定シーブ72と、その入力側固定シーブ72との間に前記V溝64を形成するように、入力軸56に相対回転不能且つ軸心C1方向に相対移動可能に設けられた入力側可動シーブ74と、供給される油圧に応じて入力側可動シーブ74を軸心C1方向に移動させて入力側可動シーブ74と入力側固定シーブ72とを接近または離間させることにより、V溝64の溝幅を変化させる入力側油圧アクチュエータ76とを備えている。
【0023】
上記入力側固定シーブ72は、入力軸56の外周面から外周側に突き出して入力軸56に一体に設けられた円環板状部材である。この入力側固定シーブ72には、外周側に向かうほど入力側可動シーブ74から離間する円錐状のテーパ面78が入力側可動シーブ74との対向面に形成されている。
【0024】
前記入力側可動シーブ74は、入力軸56に軸心C1方向の相対移動可能且つ軸心C2まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部74aと、その内側筒部74aの入力側固定シーブ72側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円板部74bと、その円板部74bの外周部から入力側固定シーブ72とは反対側に向けて軸心C2方向に突設された外側筒部74cとを有している。上記円板部74bには、外周側に向かうほど入力側固定シーブ72から離間する円錐状のテーパ面80が入力側固定シーブ72との対向面に形成されている。上記テーパ面80は、入力側固定シーブ72のテーパ面78とともにV溝64を形成している。
【0025】
前記入力側油圧アクチュエータ76は、入力軸56の入力側可動シーブ74に対する入力側固定シーブ72とは反対側の一端部において、その一端部の段付端面と軸受54との間に内周部が固定された壁部82aと、その壁部82aの外周部から入力側可動シーブ74の外側筒部74cの外周側に周方向に連続して突設され、入力側可動シーブ74の外側筒部74cの外周面に対してオイルシールを介して摺動する筒部82bとを、有するシリンダ部材82を備えている。このシリンダ部材82と入力側可動シーブ74と入力軸56とによって油密に囲まれる空間には、油圧室84が形成されている。この油圧室84には、トランスアクスルケース36に形成された第1油路86と、入力軸56の内周側に形成されて第1油路86に連通された第2油路88と、その第2油路88から入力軸56を径方向に貫通して形成された第3油路90とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。
【0026】
このようなプライマリプーリ58では、油圧室84に供給される油圧に応じて入力側可動シーブ74が軸心C1方向において入力側固定シーブ72に接近または離間して、V溝64の幅が変化させられるようになっている。図2において、軸心C1の下側に実線で示す入力側可動シーブ74は、入力側固定シーブ72との間に形成されるV溝64が最小幅とされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最大となる。また、軸心C1の上側に実線で示す入力側可動シーブ74は、入力側固定シーブ72との間に形成されるV溝64が最大幅とされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66の巻掛半径が最小となる。
【0027】
前記セカンダリプーリ62は、出力軸40の外周側に固設された出力側固定シーブ92と、その出力側固定シーブ92との間に前記V溝64を形成するように、出力軸40に相対回転不能且つ軸心C2方向に相対移動可能に設けられた出力側可動シーブ94と、供給される油圧に応じて出力側可動シーブ94を軸心C2方向に移動させて出力側可動シーブ94と出力側固定シーブ92とを接近または離間させることにより、V溝64の溝幅を変化させる出力側油圧アクチュエータ96とを備えている。
【0028】
上記出力側固定シーブ92は、出力軸40の外周面から外周側に突き出して出力軸40に一体に設けられた円環板状部材である。この出力側固定シーブ92には、外周側に向かうほど入力側可動シーブ74から離間する円錐状のテーパ面98が入力側可動シーブ74との対向面に形成されている。また、出力側固定シーブ92には、出力軸40を回転不能に固定するためのパーキングギヤ100がテーパ面98とは反対側の面に一体に設けられている。
【0029】
前記出力側可動シーブ94は、出力軸40に対して軸心C2方向の相対移動可能且つ軸心C2まわりの相対回転不能にスプライン嵌合された内側筒部94aと、その内側筒部94aの出力側固定シーブ92側の一端部から外周側に突き出して一体に設けられた円環板状の円板部94bと、その円板部94bの外周部から出力側固定シーブ92とは反対側に向けて軸心C2方向に突設された外側筒部94cとを有している。上記円板部94bには、外周側に向かうほど出力側固定シーブ92から離間する円錐状のテーパ面102が出力側固定シーブ92との対向面に形成されている。上記テーパ面102は、出力側固定シーブ92のテーパ面98とともにV溝64を形成している。
【0030】
前記出力側油圧アクチュエータ96は、出力軸40の出力側可動シーブ94に対する出力側固定シーブ92とは反対側の一端部において、その一端部の段付端面と円筒部材104との間に固定された内周壁部106aと、その内周壁部106aの外周部から出力側可動シーブ94の円板部94b側に向けて延設された106bと、その筒部106bの出力側可動シーブ94側の一端部から周方向に連続して外周側に突設され、出力側可動シーブ94の外側筒部94cの内周面に対してオイルシールを介して摺動する外周壁部106cとを有するシリンダ部材106を備えている。このシリンダ部材106と出力側可動シーブ94と出力軸40とによって油密に囲まれる空間には、油圧室108が形成されている。この油圧室108には、トランスアクスルケース36に形成された第4油路110と、出力軸40の内周側に形成されて第4油路110に連通された第5油路112と、その第5油路112から出力軸40を径方向に貫通して形成された第6油路114とをそれぞれ通じて、前記オイルポンプ28から圧送された油圧が図示しない油圧制御回路により適宜調圧されて供給されるようになっている。また、出力側可動シーブ94の内側筒部94aの外周面に形成された段付端面とシリンダ部材82の内側筒部76aとの間には、出力側可動シーブ94を出力側固定シーブ92側へ付勢するコイルスプリング116が設けられている。
【0031】
このようなセカンダリプーリ62では、油圧室108に供給される油圧に応じて出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ92へ向かう推力すなわち伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるようになっている。図2において、軸心C1の下側に実線で示すセカンダリプーリ62は、プライマリプーリ58のV溝64が最大幅とされることで、出力側固定シーブ92と出力側可動シーブ94との間に形成されるV溝64が最小幅とされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ62への巻掛半径が最大となる。また、軸心C1の上側に実線で示すセカンダリプーリ62は、プライマリプーリ58のV溝64が最小さい幅とされることで、出力側固定シーブ92と出力側可動シーブ94との間に形成されるV溝64が最大幅とされた状態を示している。この状態においては、伝動ベルト66のセカンダリプーリ62への巻掛半径が最小となる。
【0032】
以上のように構成された無段変速機18では、プライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62のV溝64をそれぞれ変化させて、伝動ベルト66のプライマリプーリ58およびセカンダリプーリ62における巻掛半径をそれぞれ変化させることにより、変速比(入力軸56の回転速度/出力軸40の回転速度)が無段階に変化するようになっている。伝動ベルト66のプライマリプーリ58における巻掛半径が比較的小さくされ且つセカンダリプーリ62における巻掛半径が比較的大きくされた場合には、変速比が比較的小さくされる。また、伝動ベルト66のプライマリプーリ58における巻掛半径が比較的大きくされ且つセカンダリプーリ62における巻掛半径が比較的小さくされた場合には、変速比が比較的大きくされる。
【0033】
図3は、図2の無段変速機18のうち出力軸40および出力側固定シーブ92を示す図である。図3に示すように、出力軸40の外周面のうち前記出力側可動シーブ94との嵌合部には、出力側固定シーブ92側へ向かうにつれて軸心C2まわりの反時計方向へねじれる即ち左ねじれのねじれ角βを有する複数のヘリカルスプライン外歯118がそれぞれ形成されている。また、図2において、出力側可動シーブ94の内側筒部94aの内周面には、上記複数のヘリカルスプライン外歯118にそれぞれ噛み合わされた左ねじれの複数のヘリカルスプライン内歯120がそれぞれ形成されている。上記複数のヘリカルスプライン外歯118および複数のヘリカルスプライン内歯120は、出力軸40と出力側可動シーブ94とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に設けられ、その出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ94へ向かう推力を発生させる噛合機構122を構成するものである。上記車両の減速方向のトルクとは、車両の前進時の減速に際してエンジン12が車輪22により回転駆動される状態とされたときに、車輪22からエンジン12へ伝達されるトルクのことである。車両の前進時における出力軸40の回転方向は、図2の矢印aで示すように、出力軸40を軸心C2方向において出力側固定シーブ92に対して出力側可動シーブ94が手前となるように見たときに、時計まわり(右まわり)となる方向である。なお、上記出力側固定シーブ92は、本発明における出力軸において軸心方向の移動可能な部材に相当するものである。
【0034】
図4は、図2に示す出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、出力軸40のヘリカルスプライン外歯118から出力側可動シーブ94のヘリカルスプライン内歯120へ作用する力F1、すなわちヘリカルスプライン内歯120がヘリカルスプライン外歯118から受ける力F1を示す図である。図4に示すように、ヘリカルスプライン外歯118から前記ヘリカルスプライン内歯120へは、上記車両の減速方向のトルクが噛合機構122に伝達されたときにヘリカルスプライン外歯118の歯面に垂直な方向の力F1が作用する。この力F1の軸心C2に直交する方向の分力すなわち円周方向成分F11は、上記車両の減速方向のトルクによりヘリカルスプライン外歯118とヘリカルスプライン内歯120との噛合点に作用する円周方向の力である。この円周方向成分F11は、上記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0035】
また、図4に示すようにねじれ角βを有するヘリカルスプライン外歯118からは、前記車両の減速方向のトルクが噛合機構122に伝達されたときに、前記力F1の軸心C2に平行な方向のスラスト方向成分F12(=F11tanβ)がヘリカルスプライン内歯120へ作用する。そのため、出力側可動シーブ94は、車両の減速時に、ヘリカルスプライン内歯120がヘリカルスプライン外歯118から受ける力F1のスラスト方向成分F12を受けて、出力側固定シーブ92へ付勢されるようになっている。噛合機構122は、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に上記車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ92へ向かう推力として上記スラスト方向成分F12を付与するものである。上記出力側固定シーブ92へ向かう推力は、伝動ベルト66を挟圧する方向の推力でもある。上記スラスト方向成分F12は、前記円周方向成分F11の大きさに比例して大きくなるとともに、前記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0036】
なお、本実施例のヘリカルスプライン外歯118およびヘリカルスプライン内歯120のねじれ角βは、例えば、セカンダリプーリ62のV溝64が最大幅とされて伝動ベルト66の巻掛半径が最小とされた状態において前記車両の減速方向のトルクが伝動ベルト66を介してセカンダリプーリ62からプライマリプーリ58へ伝達される際に、伝動ベルト66がセカンダリプーリ62のテーパ面98および102に対してスリップすることのないように設定される。具体的には、セカンダリプーリ62のV溝64が最大幅とされて伝動ベルト66の巻掛半径が最小とされた状態において前記車両の減速方向のトルクが伝動ベルト66を介してセカンダリプーリ62からプライマリプーリ58へ伝達される際に、前記スラスト方向成分F12(=F11tanβ)および前記コイルスプリング116の付勢力が、伝動ベルト66がセカンダリプーリ62のテーパ面98および102に対して滑らないために必要とされる伝動ベルト66を挟圧する方向の推力以上となるように、例えば予め実験的に求められて設定される。
【0037】
上述のように、本実施例の無段変速機18によれば、出力軸40と出力側可動シーブ94とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、出力軸40において軸心C2方向の移動可能な部材としての出力側可動シーブ94に設けられ、車両の減速方向のトルクが出力側可動シーブ94に伝達されたときにその出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力(スラスト方向成分F12)を付与する噛合機構122を含む。この噛合機構122は、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に設けられ、その出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ92へ向かう推力(スラスト方向成分F12)を発生させるものである。そのため、車両の減速走行中には、セカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)62の出力側可動シーブ94を出力側固定シーブ側92へ押圧するための出力側油圧アクチュエータ96によらずとも噛合機構122により出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力すなわち出力側固定シーブ92へ向かう推力を付与することができるので、車両の減速走行中にオイルポンプ28からセカンダリプーリ62の出力側油圧アクチュエータ96への油圧供給が停止しても伝動ベルト66のスリップを抑制することができる。
【0038】
また、本実施例の無段変速機18によれば、噛合機構122は、出力軸40の外周面および出力側可動シーブ94の内周面に、出力側可動シーブ94から出力側固定シーブ側92へ向かうにつれて軸心C2まわりの反時計方向へねじれるようにそれぞれ形成されて、互いに噛み合わされた複数のヘリカルスプライン外歯118およびヘリカルスプライン内歯120を備え、出力側可動シーブ94は、車両の減速時に、ヘリカルスプライン内歯120がヘリカルスプライン外歯118から受ける力F1のスラスト方向成分F12を受けて、出力側固定シーブ92へ付勢されることから、車両の減速走行中には、セカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)62の出力側可動シーブ94を出力側固定シーブ側92へ押圧するための出力側油圧アクチュエータ96によらずとも、噛合機構122のヘリカルスプライン内歯120がヘリカルスプライン外歯118から受ける力F1のスラスト方向成分F12により出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力を付与することができるので、車両の減速走行中にオイルポンプ28からセカンダリプーリ62の出力側油圧アクチュエータ96への油圧供給が停止しても伝動ベルト66のスリップを抑制することができる。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、実施例相互に重複する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図5は、本発明の他の実施例の無段変速機200および減速歯車装置202を示す骨子図である。本実施例の減速歯車装置202は、無段変速機200の出力軸40に相対回転不能且つ軸心C2方向の移動可能に例えばスプライン嵌合された第1ヘリカルギヤ204と、その第1ヘリカルギヤ204に噛み合わされると共に回転軸44に相対回転不能に固設され、出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤ206とを備えている。上記第1ヘリカルギヤ204は、出力軸40において軸心C2方向の移動可能な部材として、セカンダリプーリ62の出力側可動シーブ94の出力側固定シーブ92とは反対側に設けられており、出力側可動シーブ94側へ向かうにつれて軸心C2まわりの反時計方向へねじれるように形成された外歯(斜歯)を有している。また、第1ヘリカルギヤ204は、出力側可動シーブ94に伝達部材208を介して連結されている。上記第1ヘリカルギヤ204および第2ヘリカルギヤ206は、車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力を付与する噛合機構210を構成するものである。出力側可動シーブ94は、車両の減速時に、第1ヘリカルギヤ204が第2ヘリカルギヤ206から受ける力のスラスト方向成分を伝達部材208を介して受けて、出力側固定シーブ92側へ付勢される。なお、図5において、軸心C2の下側に示す出力側可動シーブ94は、出力側固定シーブ92との間に形成されるV溝64が最大幅とされた状態を示しており、軸心C2の上側に示す出力側可動シーブ94は、出力側固定シーブ92との間に形成されるV溝64が最小幅とされた状態を示している。
【0041】
本実施例の無段変速機200によれば、出力軸40に相対回転不能且つ軸心C2方向の移動可能に例えばスプライン嵌合された第1ヘリカルギヤ204と、その第1ヘリカルギヤ204に噛み合わされると共に回転軸44に相対回転不能に固設され、出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤ206とを備える噛合機構210が設けられ、セカンダリプーリ62の出力側可動シーブ94は、車両の減速時に、第1ヘリカルギヤ204が第2ヘリカルギヤ206から受ける力のスラスト方向成分を伝達部材208を介して受けて、出力側固定シーブ92側へ付勢される。上記噛合機構210は、車両の減速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力を付与するものである。そのため、車両の減速走行中には、出力側可動シーブ94を出力側固定シーブ92側へ押圧するための出力側油圧アクチュエータ96によらずとも噛合機構122により出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力を付与することができるので、実施例1と同様に、車両の減速走行中にオイルポンプ28からセカンダリプーリ62の出力側油圧アクチュエータ96への油圧供給が停止しても伝動ベルト66のスリップを抑制することができる。
【実施例3】
【0042】
図6は、本発明の他の実施例の無段変速機300(図2参照)の出力軸40を示す図である。図6に示すように、出力軸40の外周面のうち出力側可動シーブ94(図2参照)との嵌合部には、出力側固定シーブ92側へ向かうにつれて軸心C2まわりの時計方向へねじれる即ち右ねじれの複数のヘリカルスプライン外歯302が形成されている。また、図2において、出力側可動シーブ94の内側筒部94aの内周面には、上記複数のヘリカルスプライン外歯302にそれぞれ噛み合わされた右ねじれの複数のヘリカルスプライン内歯304がそれぞれ形成されている。上記複数のヘリカルスプライン外歯302およびヘリカルスプライン内歯304は、出力軸40と出力側可動シーブ94とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に設けられ、その出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ94へ向かう推力を発生させる噛合機構306を構成するものである。上記車両の加速方向のトルクとは、車両の前進時の加速に際してエンジン12が駆動状態とされたときに、エンジン12から車輪22へ伝達されるトルクのことである。
【0043】
図7は、図2に示す本実施例の出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、出力軸40のヘリカルスプライン外歯302から出力側可動シーブ94のヘリカルスプライン内歯304へ作用する力F2、すなわちヘリカルスプライン内歯304がヘリカルスプライン外歯302から受ける力F2を示す図である。図7に示すように、ヘリカルスプライン外歯302から前記ヘリカルスプライン内歯304へは、上記車両の加速方向のトルクが噛合機構306に伝達されたときにヘリカルスプライン外歯302の歯面に垂直な方向の力F2が作用する。この力F2の軸心C2に直交する方向の分力すなわち円周方向成分F21は、上記車両の加速方向のトルクによりヘリカルスプライン外歯302とヘリカルスプライン内歯304との噛合点に作用する円周方向の力である。この円周方向成分F21は、上記車両の加速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0044】
また、図7に示すようにねじれ角βを有するヘリカルスプライン外歯302からは、前記車両の加速方向のトルクが噛合機構306に伝達されたときに、前記力F2の軸心C2に平行な方向のスラスト方向成分F22(=F21tanβ)がヘリカルスプライン内歯304へ作用する。そのため、出力側可動シーブ94は、車両の加速時に、ヘリカルスプライン内歯304がヘリカルスプライン外歯302から受ける力F2のスラスト方向成分F22を受けて、出力側固定シーブ92へ付勢されるようになっている。噛合機構306は、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に上記車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ92へ向かう推力として上記スラスト方向成分F22を付与するものである。上記スラスト方向成分F22は、前記円周方向成分F21の大きさに比例して大きくなるとともに、前記車両の加速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0045】
上述のように、本実施例の無段変速機300によれば、出力軸40と出力側可動シーブ94とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、出力軸40において軸心C2方向の移動可能な部材としての出力側可動シーブ94に設けられ、車両の加速方向のトルクが出力側可動シーブ94に伝達されたときにその出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力(スラスト方向成分F22)を付与する噛合機構306を含む。この噛合機構306は、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に設けられ、その出力軸40と出力側可動シーブ94との間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、そのトルクの大きさに応じて出力側可動シーブ94に出力側固定シーブ92へ向かう推力(スラスト方向成分F22)を発生させるものである。そのため、車両の加速走行中には、出力軸40と出力側可動シーブ94との間に伝達される車両の加速方向のトルクの大きさに応じて出力側可動シーブ94に伝動ベルト66を挟圧する方向の推力が付与されるので、伝動ベルト66をスリップさせないために出力側可動シーブ94を出力側固定シーブ側92へ押圧するための出力側油圧アクチュエータ96に供給すべき油圧を、低減することができる。そのため、出力側油圧アクチュエータ96の耐圧仕様を簡素化することができ、無段変速機300の製造コストを削減することができる。また、上記油圧低減によってオイルポンプ28の駆動トルクが減少させられることにより、無段変速機300の動力伝達効率が上昇するため、車両燃費を向上することができる。
【実施例4】
【0046】
図8は、本発明の他の実施例の無段変速機400(図2参照)の入力軸56を示す図である。図8に示すように、入力軸56の外周面のうち入力側可動シーブ74(図2参照)との嵌合部には、入力側固定シーブ74側へ向かうにつれて軸心C1まわりの時計方向へねじれる即ち右ねじれの複数のヘリカルスプライン外歯402が形成されている。また、図2において、入力側可動シーブ74の内側筒部72aの内周面には、上記複数のヘリカルスプライン外歯402にそれぞれ噛み合わされた右ねじれの複数のヘリカルスプライン内歯404がそれぞれ形成されている。上記複数のヘリカルスプライン外歯402およびヘリカルスプライン内歯404は、入力軸56と入力側可動シーブ74とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に設けられ、その入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達された場合には、入力側油圧アクチュエータ76の遠心油圧が作用することにより入力側可動シーブ74に生じる入力側固定シーブ72へ向かう推力に抗する推力として、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72とは反対側へ向かう推力を発生させ、また入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の加速方向のトルクが伝達された場合には、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力を発生させる噛合機構406を構成するものである。
【0047】
図9は、図2に示す本実施例の入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸56のヘリカルスプライン外歯402から入力側可動シーブ74のヘリカルスプライン内歯404へ作用する力F3、すなわちヘリカルスプライン内歯404がヘリカルスプライン外歯402から受ける力F3を示す図である。図9に示すように、ヘリカルスプライン外歯402から前記ヘリカルスプライン内歯404へは、上記車両の減速方向のトルクが噛合機構406に伝達されたときにヘリカルスプライン外歯402の歯面に垂直な方向の力F3が作用する。この力F3の軸心C2に直交する方向の分力すなわち円周方向成分F31は、上記車両の減速方向のトルクによりヘリカルスプライン外歯402とヘリカルスプライン内歯404との噛合点に作用する円周方向の力である。この円周方向成分F31は、上記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0048】
また、図9に示すようにねじれ角βを有するヘリカルスプライン外歯402からは、前記車両の減速方向のトルクが噛合機構406に伝達されたときに、前記力F3の軸心C2に平行な方向のスラスト方向成分F32(=F31tanβ)がヘリカルスプライン内歯404へ作用する。そのため、入力側可動シーブ74は、車両の減速時に、ヘリカルスプライン内歯404がヘリカルスプライン外歯402から受ける力F3のスラスト方向成分F32を受けて、入力側固定シーブ72とは反対側へ付勢されるようになっている。噛合機構406は、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に上記車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72とは反対側へ向かう推力として上記スラスト方向成分F32を付与するものである。上記スラスト方向成分F32は、前記円周方向成分F31の大きさに比例して大きくなるとともに、前記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0049】
図10は、図2に示す本実施例の入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸56のヘリカルスプライン外歯402から入力側可動シーブ74のヘリカルスプライン内歯404へ作用する力F4、すなわちヘリカルスプライン内歯404がヘリカルスプライン外歯402から受ける力F4を示す図である。図10に示すように、ヘリカルスプライン外歯402から前記ヘリカルスプライン内歯404へは、上記車両の加速方向のトルクが噛合機構406に伝達されたときにヘリカルスプライン外歯402の歯面に垂直な方向の力F4が作用する。この力F4の軸心C2に直交する方向の分力すなわち円周方向成分F41は、上記車両の加速方向のトルクによりヘリカルスプライン外歯402とヘリカルスプライン内歯404との噛合点に作用する円周方向の力である。この円周方向成分F41は、上記車両の加速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0050】
また、図10に示すようにねじれ角βを有するヘリカルスプライン外歯402からは、前記車両の加速方向のトルクが噛合機構406に伝達されたときに、前記力F4の軸心C2に平行な方向のスラスト方向成分F42(=F41tanβ)がヘリカルスプライン内歯404へ作用する。そのため、入力側可動シーブ74は、車両の加速時に、ヘリカルスプライン内歯404がヘリカルスプライン外歯402から受ける力F4のスラスト方向成分F42を受けて、入力側固定シーブ72へ付勢されるようになっている。噛合機構406は、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に上記車両の加速方向のトルクが伝達されたときに、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力として上記スラスト方向成分F42を付与するものである。上記スラスト方向成分F42は、前記円周方向成分F41の大きさに比例して大きくなるとともに、前記車両の加速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0051】
上述のように、本実施例の無段変速機400によれば、入力軸56と入力側可動シーブ74とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に設けられ、その入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達された場合には、入力側油圧アクチュエータ76の遠心油圧が作用することにより入力側可動シーブ74に生じる入力側固定シーブ72へ向かう推力に抗する推力として、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72とは反対側へ向かう推力(スラスト方向成分F32)を発生させ、また入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の加速方向のトルクが伝達された場合には、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力(スラスト方向成分F42)を発生させる噛合機構406を含む。そのため、車両の減速走行中には、車両の減速方向のトルクの大きさに応じて入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72とは反対側へ向かう推力が付与されるので、入力側油圧アクチュエータ76の遠心油圧に起因して入力側可動シーブ74に生じる入力側固定シーブ72へ向かう推力を相殺することができる。それ故に、車両の減速走行中にオイルポンプ28から入力側油圧アクチュエータ76への油圧供給が停止したときに、入力側油圧アクチュエータ76の遠心油圧に起因して入力側可動シーブ74が入力側固定シーブ72へ移動させられて無段変速機の変速比が大きくなることを抑制することができる。上記のように無段変速機の変速比が大きくなると、エンジン再起動後の発進性および加速性が低下するという問題が生じる。
【0052】
また、車両の加速走行中には、車両の加速方向のトルクの大きさに応じて入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力が付与されるので、変速時に入力側可動シーブ74を移動させるために入力側油圧アクチュエータ76に供給すべき油圧を低減することができる。そのため、入力側油圧アクチュエータ76の耐圧仕様を簡素化することができ、無段変速機400の製造コストを削減することができる。また、上記油圧低減によってオイルポンプ28の駆動トルクが減少させられることにより、無段変速機400の動力伝達効率が上昇するため、車両燃費を向上することができる。
【実施例5】
【0053】
図11は、本発明の他の実施例の無段変速機500(図2参照)の入力軸56を示す図である。図11に示すように、入力軸56の外周面のうち入力側可動シーブ74(図2参照)との嵌合部には、入力側固定シーブ74側へ向かうにつれて軸心C1まわりの反時計方向へねじれる即ち左ねじれの複数のヘリカルスプライン外歯502が形成されている。また、図2において、入力側可動シーブ74の内側筒部72aの内周面には、上記複数のヘリカルスプライン外歯502にそれぞれ噛み合わされた右ねじれの複数のヘリカルスプライン内歯504がそれぞれ形成されている。上記複数のヘリカルスプライン外歯502およびヘリカルスプライン内歯504は、入力軸56と入力側可動シーブ74とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に設けられ、その入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達された場合には、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力を発生させる噛合機構506を構成するものである。
【0054】
図12は、図2に示す本実施例の入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力軸56のヘリカルスプライン外歯502から入力側可動シーブ74のヘリカルスプライン内歯504へ作用する力F5、すなわちヘリカルスプライン内歯504がヘリカルスプライン外歯502から受ける力F5を示す図である。図12に示すように、ヘリカルスプライン外歯502から前記ヘリカルスプライン内歯504へは、上記車両の減速方向のトルクが噛合機構506に伝達されたときにヘリカルスプライン外歯502の歯面に垂直な方向の力F5が作用する。この力F5の軸心C2に直交する方向の分力すなわち円周方向成分F51は、上記車両の減速方向のトルクによりヘリカルスプライン外歯502とヘリカルスプライン内歯504との噛合点に作用する円周方向の力である。この円周方向成分F51は、上記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0055】
また、図12に示すようにねじれ角βを有するヘリカルスプライン外歯502からは、前記車両の減速方向のトルクが噛合機構506に伝達されたときに、前記力F5の軸心C2に平行な方向のスラスト方向成分F52(=F51tanβ)がヘリカルスプライン内歯504へ作用する。そのため、入力側可動シーブ74は、車両の減速時に、ヘリカルスプライン内歯504がヘリカルスプライン外歯502から受ける力F5のスラスト方向成分F52を受けて、入力側固定シーブ72側へ付勢されるようになっている。噛合機構506は、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に上記車両の減速方向のトルクが伝達されたときに、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力として上記スラスト方向成分F52を付与するものである。上記スラスト方向成分F52は、前記円周方向成分F51の大きさに比例して大きくなるとともに、前記車両の減速方向のトルクの大きさに比例して大きくなる。
【0056】
上述のように、本実施例の無段変速機500によれば、入力軸56と入力側可動シーブ74とを相対回転不能且つ軸心C2方向の相対移動可能とするために、入力軸56と入力側可動シーブ74との間に設けられ、その入力軸56と入力側可動シーブ74との間に車両の減速方向のトルクが伝達された場合には、入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力(スラスト方向成分F52)を発生させる噛合機構506を含むことから、車両の減速走行中には、車両の減速方向のトルクの大きさに応じて入力側可動シーブ74に入力側固定シーブ72へ向かう推力が付与されるので、変速時に入力側可動シーブ74を移動させるために入力側油圧アクチュエータ76に供給すべき油圧を低減することができる。そのため、入力側油圧アクチュエータ76の耐圧仕様を簡素化することができ、無段変速機500の製造コストを削減することができる。また、上記油圧低減によってオイルポンプ28の駆動トルクが減少させられることにより、無段変速機500の動力伝達効率が上昇するため、車両燃費を向上することができる。
【0057】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0058】
たとえば、噛合機構122(210、306、406、506)は、出力軸40と出力側可動シーブ94との間、および第1ドライブギヤ42と第1ドリブンギヤ46との間に限らず、例えば、出力軸40と出力軸40において軸心C2方向の移動可能な部材たとえば第1ドライブギヤ42との間に設けられてもよい。
【0059】
また、ヘリカルスプライン外歯118およびヘリカルスプライン内歯120のねじれ角βは、セカンダリプーリ62における伝動ベルト66の巻掛半径が最小とされた状態において車両の減速方向のトルクが伝動ベルト66を介してセカンダリプーリ62からプライマリプーリ58へ伝達される際に、伝動ベルト66がセカンダリプーリ62のテーパ面98および102に対してスリップすることのないように設定されていたが、これに限らない。すなわち、スラスト方向成分F12(=F11tanβ)およびコイルスプリング116の付勢力が、伝動ベルト66がセカンダリプーリ62のテーパ面98および102に対して滑らないために必要とされる伝動ベルト66を挟圧する方向の推力よりも小さくなるように設定されてもよい。それでも、伝動ベルト66のスリップを抑制することができるという効果は得られる。
【0060】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
18:車両用無段変速機
40:出力軸
56:入力軸
58:プライマリプーリ(入力側溝幅可変プーリ)
62:セカンダリプーリ(出力側溝幅可変プーリ)
64:V溝
66:伝動ベルト
72:入力側固定シーブ
74:入力側可動シーブ
92:出力側固定シーブ
94:出力側可動シーブ(出力軸において軸心方向の移動可能な部材)
118:ヘリカルスプライン外歯
120:ヘリカルスプライン内歯
122,210:噛合機構
204:第1ヘリカルギヤ(出力軸において軸心方向の移動可能な部材)
206:第2ヘリカルギヤ
F1:ヘリカルスプライン内歯がヘリカルスプライン外歯から受ける力
F12:推力、スラスト方向成分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に設けられた入力軸および出力軸と、
該入力軸の外周面に固設された入力側固定シーブ、および該入力側固定シーブとの間にV溝を形成するように該入力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された入力側可動シーブを有する入力側溝幅可変プーリと、
前記出力軸の外周面に固設された出力側固定シーブ、および該出力側固定シーブとの間にV溝を形成するように該出力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された出力側可動シーブを有する出力側溝幅可変プーリと、
前記入力側溝幅可変プーリおよび出力側溝幅可変プーリのV溝にそれぞれ巻き掛けられた無端環状の伝動ベルトと
を備え、該V溝の溝幅を変化させて該伝動ベルトの巻掛半径を変化させることにより変速比を無段階に変化させる車両用無段変速機であって、
前記出力軸と前記出力側可動シーブとを相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能とするために、該出力軸において軸心方向の移動可能な部材に設けられ、車両の減速方向のトルクが該部材に伝達されたときに前記出力側可動シーブに前記伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与する噛合機構を含むことを特徴とする車両用無段変速機。
【請求項2】
前記噛合機構は、前記出力軸と前記出力側可動シーブとの間に設けられ、該出力軸と該出力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに該出力側可動シーブに前記出力側固定シーブへ向かう推力を発生させるものであることを特徴とする請求項1の車両用無段変速機。
【請求項3】
前記噛合機構は、前記出力軸の外周面および前記出力側可動シーブの内周面に、該出力側可動シーブから前記出力側固定シーブ側へ向かうにつれて該出力側可動シーブの軸心まわりの反時計方向へねじれるようにそれぞれ形成されて、互いに噛み合わされた複数のヘリカルスプライン外歯およびヘリカルスプライン内歯を備え、
前記出力側可動シーブは、車両の減速時に、該出力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯が前記出力軸のヘリカルスプライン外歯から受ける力のスラスト方向成分を受けて、前記出力側固定シーブ側へ付勢されることを特徴とする請求項2の車両用無段変速機。
【請求項4】
前記噛合機構は、前記出力軸において軸心方向の移動可能な部材として、前記出力側可動シーブの前記出力側固定シーブとは反対側に設けられ、該出力側可動シーブ側へ向かうにつれて前記軸心まわりの反時計方向へねじれるように形成された第1ヘリカルギヤと、該第1ヘリカルギヤと噛み合わされて出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤとを備え、
前記出力側可動シーブは、車両の減速時に、前記第1ヘリカルギヤが前記第2ヘリカルギヤから受ける力のスラスト方向成分を該第1ヘリカルギヤを介して受けて、前記出力側固定シーブ側へ付勢されることを特徴とする請求項1の車両用無段変速機。
【請求項1】
互いに平行に設けられた入力軸および出力軸と、
該入力軸の外周面に固設された入力側固定シーブ、および該入力側固定シーブとの間にV溝を形成するように該入力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された入力側可動シーブを有する入力側溝幅可変プーリと、
前記出力軸の外周面に固設された出力側固定シーブ、および該出力側固定シーブとの間にV溝を形成するように該出力軸に相対回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に嵌合された出力側可動シーブを有する出力側溝幅可変プーリと、
前記入力側溝幅可変プーリおよび出力側溝幅可変プーリのV溝にそれぞれ巻き掛けられた無端環状の伝動ベルトと
を備え、該V溝の溝幅を変化させて該伝動ベルトの巻掛半径を変化させることにより変速比を無段階に変化させる車両用無段変速機であって、
前記出力軸と前記出力側可動シーブとを相対回転不能且つ軸心方向の相対移動可能とするために、該出力軸において軸心方向の移動可能な部材に設けられ、車両の減速方向のトルクが該部材に伝達されたときに前記出力側可動シーブに前記伝動ベルトを挟圧する方向の推力を付与する噛合機構を含むことを特徴とする車両用無段変速機。
【請求項2】
前記噛合機構は、前記出力軸と前記出力側可動シーブとの間に設けられ、該出力軸と該出力側可動シーブとの間に車両の減速方向のトルクが伝達されたときに該出力側可動シーブに前記出力側固定シーブへ向かう推力を発生させるものであることを特徴とする請求項1の車両用無段変速機。
【請求項3】
前記噛合機構は、前記出力軸の外周面および前記出力側可動シーブの内周面に、該出力側可動シーブから前記出力側固定シーブ側へ向かうにつれて該出力側可動シーブの軸心まわりの反時計方向へねじれるようにそれぞれ形成されて、互いに噛み合わされた複数のヘリカルスプライン外歯およびヘリカルスプライン内歯を備え、
前記出力側可動シーブは、車両の減速時に、該出力側可動シーブのヘリカルスプライン内歯が前記出力軸のヘリカルスプライン外歯から受ける力のスラスト方向成分を受けて、前記出力側固定シーブ側へ付勢されることを特徴とする請求項2の車両用無段変速機。
【請求項4】
前記噛合機構は、前記出力軸において軸心方向の移動可能な部材として、前記出力側可動シーブの前記出力側固定シーブとは反対側に設けられ、該出力側可動シーブ側へ向かうにつれて前記軸心まわりの反時計方向へねじれるように形成された第1ヘリカルギヤと、該第1ヘリカルギヤと噛み合わされて出力側へ動力を伝達するための第2ヘリカルギヤとを備え、
前記出力側可動シーブは、車両の減速時に、前記第1ヘリカルギヤが前記第2ヘリカルギヤから受ける力のスラスト方向成分を該第1ヘリカルギヤを介して受けて、前記出力側固定シーブ側へ付勢されることを特徴とする請求項1の車両用無段変速機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−237021(P2011−237021A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111407(P2010−111407)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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