説明

車両用無線充電装置

【課題】車両用無線充電装置において、駐車場の一次側コイルと車両の二次側コイルとの間の相対位置の検出を、簡易な構成により実現できること。
【解決手段】本発明に係る車両用無線充電装置は、充電用一次側コイルと、充電用二次側コイルと、センサ用二次側コイルと、位置算出部とを備える。前記充電用一次側コイルは、駐車場に設けられ、磁力が変動する磁場を発する。前記充電用二次側コイルは、前記車両に設けられ、前記充電用一次側コイルから無線により電力を受電する。前記センサ用二次側コイルは、前記車両における前記充電用二次側コイルと異なる位置に設けられ、前記駐車場においてコイルから無線により電力を受電する。前記位置算出部は、前記充電用二次側コイル及び前記センサ用二次側コイル各々により得られる電力の強度の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイルと前記充電用二次側コイルとの間の相対位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた二次側コイルが、駐車場に設けられた一次側コイルから無線により電力を受電し、その電力を車両のバッテリへ充電する車両用無線充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、電気自動車及びハイブリッド自動車など、大容量のバッテリが搭載された電動車両が普及しつつある。また、電動車両の外部から電動車両のバッテリへ無線により充電を行う車両用無線充電装置が知られている。例えば、特許文献1には、共鳴法による送電を行う車両用無線充電装置が示されている。共鳴法による送電においては、車両に設けられた二次側コイルが、駐車場に設けられた一次側コイルに対し、磁場の共鳴によって磁気的に結合されることにより、一次側コイルから無線により電力を受電する。共鳴法による送電の詳細は、非特許文献1に示されている。前記共鳴法による送電を採用することにより、数キロワットの電力を数メートル先まで送電することが可能となる。
【0003】
一般に、車両用無線充電装置において、一次側コイルと二次側コイルとの間の位置関係が、理想的な位置関係から大きくずれるほど、充電の効率がより悪化する。ここで、前記共鳴法による送電は、一次側コイルと二次側コイルとの位置のずれの大きさに応じて送電効率が悪化する程度が、他の方法に対して比較的小さい。しかしながら、前記共鳴法による送電においても、一次側コイルと二次側コイルとの位置のずれは小さい方がより好ましい。
【0004】
従って、車両用無線充電装置が設けられた駐車場において、電動車両を目標位置へ誘導することは、充電時間の短縮及び省電力化のために重要である。そして、電動車両を目標位置へ誘導するためには、駐車場の一次側コイルと車両の二次側コイルとの間の相対位置を検出し、その相対位置の情報を運転者に通知することが有効である。
【0005】
一方、特許文献2には、路面に設けられた複数の磁気マーカと、車両に設けられた複数の磁気センサとを用いて、磁気マーカの位置を基準とする車両の位置を検出する技術について示されている。特許文献2に示される技術では、路面に配列された複数の磁気マーカが発する磁界各々の強度が、車両に配列された複数の磁気センサにより検出される。そして、検出された磁界の強度の分布を、予め用意された磁界の強度のマップと照合することにより、車両の位置が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−106136号公報
【特許文献2】特開平9−292236号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Andre Kurs 他、"Wireless Power Transfer via Strongly Coupled Magnetic Resonances"、Science Vol. 317. no. 5834、pp.83-86、2007年7月6日、URL: http://www.sciencemag.org/cgi/reprint/317/5834/83.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に示される車両の位置検出装置は、正しい位置検出のために、駐車場の地面に配列される多数の磁気マーカと、車両に配列される多数の磁気センサとが必要である。そのため、車両用無線充電装置に、特許文献2の技術が採用された場合、部品点数が増え、装置の構成が複雑になるという問題点があった。
【0009】
本発明は、車両用無線充電装置において、駐車場の一次側コイルと車両の二次側コイルとの間の相対位置の検出を、簡易な構成により実現できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る車両用無線充電装置は、充電用一次側コイルと、充電用二次側コイルと、充電部と、センサ用二次側コイルと、第1電力検出部と、第2電力検出部と、位置算出部と、情報出力部と、を備える。前記充電用一次側コイルは、駐車場に設けられ、磁力が変動する磁場を発するコイルである。前記充電用二次側コイルは、前記車両に設けられ、前記充電用一次側コイルから無線により電力を受電するコイルである。前記充電部は、前記車両に設けられ、前記充電用二次側コイルにより得られる電力を充電池へ充電する。前記センサ用二次側コイルは、前記車両における前記充電用二次側コイルと異なる位置に設けられ、前記駐車場において磁力が変動する磁場を発するコイルから無線により電力を受電するコイルである。前記第1電力検出部は、前記充電用二次側コイルにより得られる電力の強度を検出する。前記第2電力検出部は、前記センサ用二次側コイルにより得られる電力の強度を検出する。前記位置算出部は、前記第1電力検出部及び前記第2電力検出部各々の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイルと前記充電用二次側コイルとの間の相対位置を算出する。前記情報出力部は、前記位置算出部により算出された前記相対位置の情報を出力する。
【0011】
また、前記第1の発明に係る車両用無線充電装置は、センサ用一次側コイルと磁場出力切替部とを更に備えることが考えられる。前記センサ用一次側コイルは、前記駐車場における前記充電用一次側コイルと異なる位置に設けられ、磁力が変動する磁場を発するコイルである。また、前記磁場出力切替部は、前記充電用一次側コイルによる磁場の出力と前記センサ用一次側コイルによる磁場の出力とを切り替える。この場合、前記位置算出部は、前記磁場出力切替部により切り替えられた磁場に対応した前記第1電力検出部及び前記第2電力検出部各々の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイルと前記充電用二次側コイルとの間の相対位置を算出する。
【0012】
例えば、前記センサ用一次側コイルは、前記駐車場への前記車両の進入方向において前記充電用一次側コイルよりも上流側に配置される。また、前記センサ用二次側コイルは、前記車両が前記充電用二次側コイル及び前記充電用一次側コイルが相互に対向する目標位置に駐車されたときに、前記センサ用一次側コイルに対向する位置に配置される。そして、前記位置算出部は、前記充電用一次側コイルから磁場が出力されているときの前記第1電力検出部の検出結果と、前記センサ用一次側コイルから磁場が出力されているときの前記第1電力検出部及び前記第2電力検出部各々の検出結果と、を用いて前記相対位置を算出する。
【0013】
また、第2の発明に係る車両用無線充電装置は、前記充電用一次側コイルと、前記充電用二次側コイルと、前記充電部と、前記センサ用一次側コイルと、前記磁場出力切替部と、前記位置算出部と、前記情報出力部とを備える。第2の発明における前記位置算出部は、前記磁場出力切替部により切り替えられた磁場に対応した前記第1電力検出部の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイルと前記充電用二次側コイルとの間の相対位置を算出する。
【0014】
また、第2の発明に係る車両用無線充電装置も、前記第1の発明に係る車両用無線充電装置と同様に、前記センサ用二次側コイルと前記第2電力検出部とを、更に備えることが考えられる。この場合、前記位置算出部は、前記磁場出力切替部により切り替えられた磁場に対応した前記第1電力検出部及び前記第2電力検出部各々の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイルと前記充電用二次側コイルとの間の相対位置を算出する。
【0015】
また、第1の発明に係る車両用無線充電装置又は第2の発明に係る車両用無線充電装置が、動作モード切替部を更に備えることが考えられる。前記動作モード切替部は、当該車両用無線充電装置の動作モードを、前記充電部による前記充電池への充電が行われない状況下で、前記位置検出部が前記電力検出部の検出結果を用いて前記相対位置を算出する位置検出モードと、前記充電部による前記充電池への充電が行われる充電モードと、に切り替える。
【0016】
また、第1の発明及び第2の発明において、前記充電用二次側コイルが、二次側自己共振コイルと二次側電磁誘導コイルとを備えることが考えられる。前記二次側自己共振コイルは、前記充電用一次側コイルに対し磁場の共鳴により磁気的に結合されることによって前記充電用一次側コイルから電力を受電するコイルである。前記二次側電磁誘導コイルは、電磁誘導により前記二次自己共振コイルから電力を受電するコイルである。また、前記情報出力部は、前記位置算出部により算出された前記相対位置の情報の画像を前記車両に設けられた表示部に出力することが考えられる。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明及び第2の発明によれば、車両用無線充電装置が元々備えている駐車場の充電用一次側コイル及び車両の充電用二次側コイルが、前記充電用一次側コイルと前記充電用二次側コイルとの間の相対位置の検出にも兼用される。また、前記磁場出力切替部が採用されることにより、インバータ回路などを備えた電力供給部を、前記充電用一次側コイルに対する電力供給の用途と前記センサ用一次側コイルに対する電力供給の用途とに共用することが可能となる。その結果、車両用無線充電装置において、前記一次側充電用コイルと前記二次側充電用コイルとの間の相対位置の検出を、簡易な構成により実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用無線充電装置1の概略構成図である。
【図2】車両用無線充電装置1における2つの充電用コイルの位置検出方法を表す模式図である。
【図3】車両用無線充電装置1における車両誘導のための情報出力の画面を例示する図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る車両用無線充電装置2の概略構成図である。
【図5】車両用無線充電装置2における2つの充電用コイルの位置検出方法を表す模式図である。
【図6】車両用無線充電装置2における車両誘導のための情報出力の画面を例示する図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る車両用無線充電装置3の概略構成図である。
【図8】車両用無線充電装置3における2つの充電用コイルの位置検出方法を表す模式図である。
【図9】車両用無線充電装置3における車両誘導のための情報出力の画面を例示する図である。
【図10】車両用無線充電装置3におけるコイルの配置の一例を表す図である。
【図11】二次側コイルの電流と一次側コイルから二次側コイルまでの距離との関係を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の第1から第3までの実施形態に係る車両用無線充電装置1〜3は、車両に設けられた二次側コイルにより、駐車場に設けられた一次側コイルから無線によって電力を受電し、その電力を車両のバッテリへ充電する。また、前記車両用無線充電装置1〜3において、車両に設けられた二次側コイルは、駐車場に設けられた一次側コイルに対して磁場の共鳴によって磁気的に結合されることにより、一次側コイルから無線により電力を受電する。以下、第1実施形態に係る車両用無線充電装置1、第2実施形態に係る車両用無線充電装置2及び第3実施形態に係る車両用無線充電装置3は、それぞれ充電装置1、充電装置2及び充電装置3と略して記載されている。
【0020】
<第1実施形態>
まず、図1を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る充電装置1の構成について説明する。図1に示されるように、前記充電装置1は、車両8が進入する駐車場9及びその近くに設置された送電側装置10aと、車両8に設けられた受電側装置20aとを備えている。図1において、前記駐車場9への前記車両8の概ねの進入方向91が、矢印によって示されている。なお、図1に示される前記進入方向91は、矩形状の駐車場9の一方の短辺から他方の短辺へ向かう直線に沿う方向であるが、矩形状の駐車場9の長辺における一方の短辺に近い部分から他方の短辺へ向かう曲線に沿う方向であることも考えられる。
【0021】
前記送電側装置10aは、充電用一次側コイル11と、高周波電力生成部13と、給電制御部14とを備えている。また、前記受電側装置20aは、充電用二次側コイル21と、センサ用二次側コイル22と、充電回路23と、バッテリ24と、演算回路25と、第1電流計26と、第2電流計27とを備えている。また、前記車両8には、前記受電側装置20aの他に、情報出力用のデバイスとして表示パネル31及びスピーカ32が設けられている。なお、前記車両8は、動力源となるモータ及びそのモータの駆動回路などの他の構成要素も備えているが、それらの構成要素は図1において省略されている。
【0022】
前記高周波電力生成部13は、例えば商用電源などの交流電源15から供給される電力を高周波数の電力へ変換し、その高周波数の電力を前記充電用一次側コイル11へ供給する装置である。前記高周波電力生成部13は、駐車場9又はその近くに設置される。例えば、前記高周波電力生成部13は、1〜100MHz程度の周波数の交流電力を生成する。
【0023】
前記充電用一次側コイル11は、駐車場9内に設けられ、高周波数の電力が供給されることにより、高周波数で磁力が変動する磁場を発するコイルである。例えば、前記充電用一次側コイル11は、前記駐車場9の地面に埋設される。
【0024】
前記給電制御部14は、前記高周波電力生成部13の作動及び停止を切り替える制御を行う装置である。前記給電制御部14により、前記充電用一次側コイル11による磁場出力の開始及び停止が制御される。
【0025】
一方、前記充電用二次側コイル21は、前記車両8に搭載され、前記充電用一次側コイル11から無線により電力を受電するコイルである。図1は、車両8が駐車場9内の予め定められた目標位置に停止された状態を表している。車両8が駐車場9内の前記目標位置に停止された状態において、前記充電用二次側コイル21は、前記充電用一次側コイル11に対向して位置する。例えば、車両8が前記目標位置に停止された状態において、前記充電用二次側コイル21と前記充電用一次側コイル11とが同軸上に位置する。その状態が、前記充電用一次側コイル11から前記充電用二次側コイル21への送電の効率が最も高い状態である。
【0026】
前記充電回路23は、前記充電用二次側コイル21により得られる高周波数の電力を前記バッテリ24の仕様に合った直流電力へ変換し、その直流電力を前記バッテリ24に供給することにより、前記バッテリ24への充電を行う装置である。例えば、前記充電回路23は、前記高周波数の電力を整流する整流回路、又は前記充電用二次側コイル21により得られる高周波数の交流電圧を、前記バッテリ24の仕様に合った直流電圧へ変換するAC/DCコンバータ回路などである。
【0027】
また、前記バッテリ24は、例えば、リチウムイオン電池又はニッケル水素電池などの充電可能な二次電池である。前記バッテリ24に蓄えられた電力は、車両8の車輪駆動用のモータ、及びその他の電装部品に供給される。
【0028】
前記センサ用二次側コイル22は、駐車場9において高周波数で磁力が変動する磁場を発するコイルから無線により電力を受電するコイルである。本実施形態においては、前記センサ用二次側コイル22は、前記充電用一次側コイル11から電力を受電する。前記センサ用二次側コイル22は、車両8における前記充電用二次側コイル21と異なる位置に設けられる。
【0029】
前記充電用二次側コイル21は、車両8が駐車場9における予め定められた目標位置に駐車されたときに、前記充電用一次側コイル11と同軸上で対向する。図1に示される例では、前記充電用二次側コイル21は、車両8の底面における車幅方向の中央付近に固定されている。また、前記センサ用二次側コイル22は、車両8の底面における車幅方向の一方に偏った位置、即ち、前記充電用二次側コイル21の位置よりも左側面又は右側面に近い位置に固定されている。なお、図1に示されるコイルの配置は一例であり、前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22が、車両8における車幅方向の中心線に対して左右対称の位置に配置される場合など、他の配置が採用されることも考えられる。
【0030】
本実施形態において、前記充電用一次側コイル11から前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22各々への無線での電力の伝送は、共鳴法による送電である。そのため、前記充電用一次側コイル11、前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22は、それぞれ自己共振コイルと電磁誘導コイルとを備えている。
【0031】
即ち、前記充電用一次側コイル11は、前記高周波電力生成部13に接続された充電用の一次側電磁誘導コイル112と、その一次側電磁誘導コイル112から電磁誘導によって電力を受電する充電用の一次側自己共振コイル111とを備えている。
【0032】
また、前記充電用二次側コイル21は、充電用の二次側自己共振コイル211と充電用の二次側電磁誘導コイル212とを備えている。充電用の前記二次側自己共振コイル211は、充電用の前記一次側自己共振コイル111に対し磁場の共鳴により磁気的に結合されることによって前記一次側自己共振コイル111から電力を受電するコイルである。また、充電用の前記二次側電磁誘導コイル212は、電磁誘導により充電用の前記二次自己共振コイル211から電力を受電するコイルである。この二次側電磁誘導コイル212により得られた電力は、有線伝送により前記充電回路23へ供給される。
【0033】
同様に、前記センサ用二次側コイル22は、センサ用の二次側自己共振コイル221とセンサ用の二次側電磁誘導コイル222とを備えている。センサ用の前記二次側自己共振コイル221は、充電用の前記一次側自己共振コイル111に対し磁場の共鳴により磁気的に結合されることによって前記一次側自己共振コイル111から電力を受電するコイルである。また、センサ用の前記二次側電磁誘導コイル222は、電磁誘導によりセンサ用の前記二次自己共振コイル221から電力を受電するコイルである。
【0034】
前記共鳴法による送電が採用された場合、前記充電用一次側コイル11と前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22各々との位置のずれの大きさに応じて送電効率が悪化する程度は、他の方法が採用される場合よりも小さい。
【0035】
なお、電磁誘導による送電により、比較的大きな電力を数百ミリメートル先まで送電できる技術が実用化されつつある。そのような技術を用いることにより、電磁誘導による送電が、前記充電用一次側コイル11から前記充電用二次側コイル21への電力送電の手法として採用されることも考えられる。
【0036】
前記第1電流計26は、前記充電用二次側コイル21により得られる電力の強度を表す指標として、前記充電用二次側コイル21に流れる電流を検出する。この第1電流計26は、前記第1電力検出部の一例である。また、前記第2電流計27は、前記センサ用二次側コイル22により得られる電力の強度を表す指標として、前記センサ用二次側コイル22に流れる電流を検出する。この第2電流計27は、前記第2電力検出部の一例である。
【0037】
前記演算回路25は、車両8に設けられた各種センサの検出結果に基づいて各種の情報処理及びデバイスの制御を行う回路であり、ROM(Read Only Memory)などのメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、各種の演算を行うMPU(Micro Processor Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサを備えている。
【0038】
より具体的には、前記演算回路25は、前記第1電流計26及び前記第2電流計27各々の検出結果を入力し、それら検出結果を用いて、前記充電用一次側コイル11と前記充電用二次側コイル22との間の相対位置を算出する位置算出処理を実行する。さらに、前記演算回路25は、前記位置算出処理により算出された前記相対位置に関する情報を、車両誘導情報として前記表示パネル31及び前記スピーカ32を通じて出力する誘導情報出力処理を実行する。
【0039】
また、前記演算回路25は、前記充電回路23を制御することにより、前記充電回路23による前記バッテリ24への充電を行うか否かを切り替える機能を備えている。そして、前記演算回路25は、当該車両用無線充電装置1の動作モードを、前記充電回路23による前記バッテリ24への充電が行われない状況下で、前記第1電流計26及び前記第2電流計27の検出電流を用いて前記位置算出処理及び前記誘導情報出力処理を実行する位置検出モードと、前記充電回路23による前記バッテリ24への充電が行われる充電モードとに切り替える。
【0040】
例えば、前記演算回路25は、車両8の居室内に設けられた車両誘導開始ボタンなどの操作部に対する操作を検知した場合に、動作モードを前記位置検出モードへ移行させる。また、前記演算回路25は、車両8の居室内に設けられた充電開始ボタンなどの操作部に対する操作を検知した場合に、動作モードを前記充電モードへ移行させる。
【0041】
一方、車両8が駐車場9に進入し始めたことを検知する進入検知センサが、車両8に設けられている場合が考えられる。この場合、前記演算回路25が、前記進入検知センサの検知結果に応じて、自動的に動作モードを前記位置検出モードへ移行させることが考えられる。前記進入検知センサは、例えば、駐車場9に設けられた無線信号出力部から出力される無線信号を検知する無線信号受信装置などである。前記無線信号は、例えば、赤外線信号又は電波信号などである。
【0042】
また、前記進入検知センサ及びその進入検知センサの検知信号を車両8に無線送信する信号送信部が駐車場9に設けられ、前記信号送信部から送信される前記無線信号を受信する信号受信部が、車両8に設けられている場合も考えられる。この場合、前記演算回路25が、前記信号受信部で受信された前記進入検知センサの検知結果に応じて、自動的に動作モードを前記位置検出モードへ移行させることが考えられる。
【0043】
また、前記演算回路25が、以下に例示するように、前記位置検出モードにおいて算出された前記相対位置に基づいて、前記位置検出モードから前記充電モードへの動作モードの移行を自動的に行うことも考えられる。例えば、前記演算回路25は、前記位置検出処理により算出された前記相対値に基づいて、前記充電用二次側コイル21が前記充電用一次側コイル11に対して予め定められた許容範囲内に存在するか否かを判別する。そして、前記演算回路25は、前記充電用二次側コイル21が前記許容範囲内に存在すると判別し、かつ、車輪駆動用のモータが停止している場合に、動作モードを前記充電モードへ移行させる。
【0044】
以上に示したように、前記演算回路25が、各種センサの検知結果に基づいて動作モードを自動的に移行させる実施形態も考えられる。なお、前記演算回路25は、前記位置算出部、前記情報出力部及び前記動作モード切替部の一例である。
【0045】
次に、図11及び図2を参照しつつ、前記演算回路25による前記位置算出処理の具体例について説明する。図11は、一次側コイルとの磁場の共鳴により二次側コイルに発生する電流と、一次側コイルから二次側コイルまでの距離との関係を表す模式図である。なお、第1実施形態においては、前記充電用一次側コイル11が前記一次側コイルに相当し、前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22が、前記二次側コイルに相当する。
【0046】
図11に示されるように、前記二次側コイルに生じる電流は、前記二次側コイルが、前記一次側コイルに対して最も接近する目標状態から遠ざかるほど、レベルが低下する一定の特性を有している。そこで、前記演算回路25が備える不揮発性メモリには、前記二次側コイルに発生する電流と、前記一次側コイルから前記二次側コイルまでの距離との関係を表す距離換算情報を、数式データ又はルックアップテーブルなどの参照データとして、予め記憶される。なお、前記距離換算情報におけるコイル間の距離は、車両8が移動する平面内における前記一次側コイルから前記二次側コイルまでの距離である。
【0047】
図2は、車両8が駐車場9における前記目標位置へ向かう途中における、前記充電用一次側コイル11、前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22の位置関係の一例が模式的に表された図である。なお、図2は、上方から各コイルを見たときの模式図である。
【0048】
前記充電装置1における前記演算回路25は、前記第1電流計26及び前記第2電流計27により検出された電流値各々を前記距離換算情報に適用することにより、前記充電用二次側コイル21の中心位置21pを基点とする距離L11と、前記センサ用二次側コイル22の中心位置22pを基点とする距離L12とを算出する。前記距離L11は、前記中心位置21pから前記充電用一次側コイル11の中心位置31pまでの距離である。同様に、前記距離L12は、前記中心位置22pから前記充電用一次側コイル11の中心位置31pまでの距離である。また、車両8における2つの中心位置21p,22pの位置は既知である。
【0049】
そして、前記演算回路25は、車両8を基準とする2次元の座標系において、前記中心位置21pを中心とする半径L11の円弧21aと、前記中心位置22pを中心とする半径L12の円弧22aとの交点31pの座標を算出する。ここで、車両8を基準とする2次元の座標系は、車両8における前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22の位置を基準とする座標系であるとも言える。
【0050】
さらに、前記演算回路25は、車両8を基準とする2次元の座標系において、前記中心位置21pの座標と前記交点31pの座標との偏差を、前記相対位置として算出する。車両8を基準とする2次元の座標系は、例えば、前記中心位置21pを原点、車両8の車幅方向及び前後方向のうちの一方をX軸、他方をY軸とする座標系であることが考えられる。
【0051】
なお、理論上、2つの円弧21a,22aの交点は、2カ所存在し得る。しかしながら、前記充電用一次側コイル11は、前記充電用二次側コイル21の位置に対し、駐車場9へ進入する車両8の進行方向側に存在する。例えば、図1に示される例では、前記充電用一次側コイル11は、前記充電用二次側コイル21の位置に対し、車両8の後方側に存在する。従って、前記演算回路25は、前記円弧21a及び前記円弧22aの範囲を、前記充電用二次側コイル21の位置に対し、交点算出に用いる駐車場9へ進入する車両8の進行方向側に限定する。これにより、1つの前記充電用一次側コイル11の位置が特定される。
【0052】
図3は、前記充電装置1における車両誘導のための情報出力の画面の一例である。前記演算回路25は、前記誘導情報出力処理において、前記位置算出処理により算出された前記相対位置に関する情報を、車両誘導情報として前記表示パネル31に出力する。図3に例示される前記車両誘導情報は、車両8の画像8g、前記充電用二次側コイル21の画像21g及び前記充電用一次側コイル11の画像11gが、前記位置算出処理により算出された前記相対位置に対応するように配置された画像情報である。その画像情報において、各画像は、車両8における前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22を基準とする座標系の中で配置される。
【0053】
また、図3に示されるように、前記演算回路25は、前記誘導情報としての画像情報に、前記充電用二次側コイル21を前記充電用一次側コイル11に対向する目標位置まで移動させるための車両8の移動方向及び移動量を通知する情報を含めることもできる。なお、この場合の移動方向及び移動量の情報は、車両8における前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22を基準とする座標系に基づく情報である。
【0054】
また、前記演算回路25は、前記誘導情報出力処理において、前記充電用二次側コイル21を前記充電用一次側コイル11に対向する目標位置まで移動させるための車両8の移動方向及び移動量を通知する音声情報を、前記車両誘導情報として前記スピーカ32へ出力する。
【0055】
車両8の運転者は、前記誘導情報出力処理によって提示される前記誘導情報を参照することにより、車両8が円滑に前記目標位置へ向かうようにハンドル操作を行うことが容易となる。しかも、車両8の車輪に当接する位置決め用の車輪止めが、駐車場9に突設される必要がない。
【0056】
さらに、前記充電装置1においては、車両用無線充電装置が元々備えている前記充電用一次側コイル11、前記充電用二次側コイル22及び前記高周波電力生成部13が、前記相対位置の検出にも兼用される。その結果、前記車両用無線充電装置1は、前記相対位置の検出を簡易な構成により実現することができる。
【0057】
<第2実施形態>
次に、図4を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る充電装置2の構成について説明する。前記充電装置2は、図1に示された前記充電装置1と比較して、一部の構成要素のみが異なる。図4において、図1に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、前記充電装置2における前記充電装置1と異なる点についてのみ説明する。
【0058】
前記充電装置2は、前記充電装置1における前記受電側装置20aから前記センサ用二次側コイル22及び前記第2電流計27が取り除かれた受電側装置20bを備えている。さらに、前記充電装置2は、前記充電装置1における前記送電側装置10aに対し、センサ用一次側コイル12及び磁場出力切替部16が追加された送電側装置10bを備えている。これらの点が、前記充電装置2における前記充電装置1と異なる点である。なお、前記センサ用一次側コイル12は、前記充電用一次側コイル11と同様の構成を備えている。
【0059】
前記センサ用一次側コイル12は、駐車場9における前記充電用一次側コイル11と異なる位置に配置され、高周波数で磁力が変動する磁場を発するコイルである。また、前記磁場出力切替部16は、前記充電用一次側コイル11による磁場の出力と前記センサ用一次側コイル12による磁場の出力とを切り替える。
【0060】
より具体的には、前記磁場出力切替部16は、前記高周波電力生成部13から出力される高周波数の電力を、前記充電用一次側コイル11及び前記センサ用一次側コイル12のいずれに供給するかを切り替える。即ち、前記高周波電力生成部13は、前記充電用一次側コイル11に対する電力供給の用途と、前記センサ用一次側コイル12に対する電力供給の用途とに共用される。例えば、前記磁場出力切替部16は、前記給電制御部14からの制御信号に従って、電力の供給先の切り替えを行う。
【0061】
そして、前記充電装置2における前記演算回路25は、前記磁場出力切替部16により切り替えられた磁場に対応した前記第1電流計26の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイル11と前記充電用二次側コイル21との間の相対位置を算出する前記位置算出処理を行う。
【0062】
次に、図5を参照しつつ、前記充電装置2における前記演算回路25による前記位置算出処理の具体例について説明する。図5は、車両8が駐車場9における前記目標位置へ向かう途中における、前記充電用一次側コイル11、前記センサ用一次側コイル12及び前記充電用二次側コイル21の位置関係の一例が模式的に表された図である。なお、図5は、上方から各コイルを見たときの模式図である。
【0063】
前記充電装置2における前記演算回路25は、前記充電用一次側コイル11の磁場が出力されたとき、及び前記センサ用一次側コイル12の磁場が出力されたときの各々における前記第1電流計26の電流の検出値を、図11に基づき説明した前記距離換算情報に適用する。これにより、前記演算回路25は、前記充電用一次側コイル11の中心位置11pを基点とする距離L21と、前記センサ用一次側コイル12の中心位置12pを基点とする距離L22とを算出する。前記距離L21は、前記中心位置11pから前記充電用二次側コイル21の中心位置32pまでの距離である。同様に、前記距離L22は、前記中心位置12pから前記充電用二次側コイル21の中心位置32pまでの距離である。また、駐車場9における2つの中心位置11p,12pの相対位置は既知である。
【0064】
そして、前記演算回路25は、駐車場9を基準とする2次元の座標系において、前記中心位置11pを中心とする半径L21の円弧11aと、前記中心位置12pを中心とする半径L22の円弧12aとの交点32pの座標を算出する。ここで、駐車場9を基準とする2次元の座標系は、駐車場9における2つの一次側コイル11,12の位置を基準とする2次元の座標系であるとも言える。
【0065】
さらに、前記演算回路25は、駐車場9を基準とする2次元の座標系において、前記中心位置11pの座標と前記交点32pの座標との偏差を、前記相対位置として算出する。駐車場9を基準とする2次元の座標系は、例えば、前記中心位置11pを原点、駐車場9への車両8の進入方向91に平行な方向及びその方向に直行する方向のうちの一方をX軸、他方をY軸とする座標系であることが考えられる。
【0066】
ところで、車両8の位置は、前記磁場出力切替部16による磁場の出力の切り替えの期間に変化し得る。しかしながら、駐車動作中の車両8はごく低い速度で移動するため、前記磁場出力切替部16が、ごく短時間のうちに磁場の出力の切り替えを行えば、車両8の位置変化を無視できる。例えば、前記磁場出力切替部16が、磁場の出力の切り替えを5〜200ミリ秒程度の周期で行うことが考えられる。
【0067】
また、前記演算回路25が、車両8の移動速度と、車両8のステアリング角度とに基づいて、前記磁場出力切替部16による磁場の出力の切り替えの期間における車両8の前記進入方向91における位置の変化を推定することも考えられる。この場合、前記演算回路25は、前記距離換算情報に基づき得られる距離を、前記位置の変化の推定結果に基づいて補正する。
【0068】
なお、理論上、2つの円弧11a,12aの交点は、2カ所存在し得る。しかしながら、前記充電用二次側コイル21は、前記充電用一次側コイル11の位置に対し、前記進入方向91における上流側に存在する。従って、前記演算回路25は、交点算出に用いる前記円弧11a及び前記円弧12aの範囲を、前記充電用一次側コイル11の位置に対し、前記進入方向91の上流側の範囲に限定する。これにより、1つの前記充電用二次側コイル21の位置が特定される。
【0069】
図6は、前記充電装置2における車両誘導のための情報出力の画面の一例である。前記充電装置2における前記演算回路25は、前記誘導情報出力処理において、前記位置算出処理により算出された前記相対位置に関する情報を、車両誘導情報として前記表示パネル31に出力する。図5に例示される前記車両誘導情報は、前記充電用二次側コイル21の画像21g及び前記充電用一次側コイル11の画像11gが、前記位置算出処理により算出された前記相対位置に対応するように配置された画像情報である。その画像情報において、各画像は、駐車場9における前記充電用一次側コイル11及び前記センサ用一次側コイル12を基準とする座標系の中で配置される。
【0070】
また、図6に示されるように、前記演算回路25は、前記誘導情報としての画像情報に、前記充電用二次側コイル21を前記充電用一次側コイル11に対向する目標位置まで移動させるための車両8の移動方向及び移動量を通知する情報を含めることもできる。なお、この場合の移動方向及び移動量の情報は、駐車場9を基準とする座標系に基づく情報である。
【0071】
また、前記演算回路25は、前記誘導情報出力処理において、前記充電用二次側コイル21を前記充電用一次側コイル11に対向する目標位置まで移動させるための車両8の移動方向及び移動量を通知する音声情報を、前記車両誘導情報として前記スピーカ32へ出力する。
【0072】
前記充電装置2が採用された場合においても、車両8の運転者は、前記誘導情報出力処理によって提示される前記誘導情報を参照することにより、車両8が円滑に前記目標位置へ向かうようにハンドル操作を行うことが容易となる。しかも、車両8の車輪に当接する位置決め用の車輪止めが、駐車場9に突設される必要がない。
【0073】
さらに、前記充電装置2においても、車両用無線充電装置が元々備えている前記充電用一次側コイル11、前記充電用二次側コイル22及び前記高周波電力生成部13が、前記相対位置の検出にも兼用される。その結果、前記充電装置2は、前記相対位置の検出を簡易な構成により実現することができる。
【0074】
<第3実施形態>
次に、図7を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る充電装置3の構成について説明する。前記充電装置3は、図1に示された前記充電装置1及び図4に示された前記充電装置2と比較して、一部の構成要素のみが異なる。図7において、図1及び図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、前記充電装置3における前記充電装置1及び前記充電装置2と異なる点についてのみ説明する。
【0075】
前記充電装置3は、前記充電装置1における前記受電側装置20aと、前記充電装置2における前記送電側装置10bとを備えている。即ち、前記充電装置3は、前記充電装置1の構成において、前記送電側装置10aが、前記充電装置2の前記送電側装置10bに置き換えられた構成を備えていると言える。また、前記充電装置3は、前記充電装置2の構成において、前記受電側装置20bが、前記充電装置1の受電側装置20aに置き換えられた構成を備えているとも言える。
【0076】
前記センサ用一次側コイル12は、駐車場9における前記充電用一次側コイル11と異なる位置に配置され、高周波数で磁力が変動する磁場を発するコイルである。また、前記磁場出力切替部16は、前記充電用一次側コイル11による磁場の出力と前記センサ用一次側コイル12による磁場の出力とを切り替える。
【0077】
また、前記センサ用二次側コイル22は、車両8が前記充電用二次側コイル21及び前記充電用一次側コイル11が相互に対向する前記目標位置に駐車されたときに、前記センサ用一次側コイル12に対向する位置に配置される。そして、前記充電装置3における前記演算回路25は、前記磁場出力切替部16により切り替えられた磁場に対応した前記第1電流計26及び前記第2電流計27各々の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイル11と前記充電用二次側コイル21との間の前記相対位置を算出する。
【0078】
例えば、前記センサ用一次側コイル12は、駐車場9への車両8の進入方向91において前記充電用一次側コイル11よりも上流側に配置される。このように、前記センサ用一次側コイル12が、駐車場9への車両8の進入方向91において前記充電用一次側コイル11よりも上流側に配置され、かつ、車両8が前記目標位置に停止した状態において、前記充電用一次側コイル11と前記充電用二次側コイル21とが対向し、前記センサ用一次側コイル12と前記センサ用二次側コイル22とが対向する場合、以下に示すような状況が生じる。
【0079】
即ち、車両8が前記目標位置へ向けて進行する過程において、前記センサ用一次側コイル12の磁場の範囲内に、前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22の両方が存在し、かつ、前記充電用一次側コイル11の磁場の範囲内に、前記充電用二次側コイル21が存在する状況が、比較的早い時点で発生する。
【0080】
そこで、前記演算回路25は、前記充電用一次側コイル11から磁場が出力されているときの前記第1電流計26の検出結果と、前記センサ用一次側コイル12から磁場が出力されているときの前記第1電流計26及び前記第2電流計27各々の検出結果と、を用いて前記相対位置を算出する。これにより、車両8が前記目標位置へ向けて進行する過程において、比較的早い時点から前記相対位置の算出が可能となる。
【0081】
次に、図8を参照しつつ、前記充電装置3における前記演算回路25による前記位置算出処理の具体例について説明する。図8は、車両8が駐車場9における前記目標位置へ向かう途中における、前記充電用一次側コイル11、前記センサ用一次側コイル12、前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22の位置関係の一例が模式的に表された図である。なお、図8は、上方から各コイルを見たときの模式図である。
【0082】
前記充電装置2における前記演算回路25は、前記センサ用一次側コイル12の磁場が出力されたときの前記第1電流計26及び前記第2電流計27各々の電流の検出値を、図11に基づき説明した前記距離換算情報に適用する。これにより、前記演算回路25は、前記センサ用一次側コイル12の中心位置12pを基点とする2つの距離L31,L32を算出する。前記距離L31は、前記中心位置12pから前記充電用二次側コイル21の中心位置31pまでの距離である。同様に、前記距離L32は、前記中心位置12pから前記センサ用二次側コイル22の中心位置32pまでの距離である。
【0083】
また、前記充電装置2における前記演算回路25は、前記充電用一次側コイル11の磁場が出力されたときの前記第1電流計26の電流の検出値を、図11に基づき説明した前記距離換算情報に適用する。これにより、前記演算回路25は、前記充電用一次側コイル11の中心位置11pを基点とする距離L33を算出する。前記距離L33は、前記中心位置11pから前記充電用二次側コイル21の中心位置31pまでの距離である。また、駐車場9における2つの中心位置11p,12pの位置関係は既知である。ここで、2つの中心位置11p,12pの間の距離をL0とする。
【0084】
そして、前記演算回路25は、駐車場9を基準とする2次元の座標系において、前記中心位置11pを中心とする半径L33の円弧33aと、前記中心位置12pを中心とする半径L31の円弧31aとの交点31pの座標を、前記充電用二次側コイル21の中心位置として算出する。さらに、前記演算回路25は、駐車場9を基準とする2次元の座標系において、前記中心位置12pを中心とする半径L32の円弧32aと、前記交点31pを中心とする半径L0の円弧30aとの交点32pの座標を、前記センサ用二次側コイル22の中心位置として算出する。
【0085】
駐車場9を基準とする2次元の座標系は、例えば、前記中心位置11pを原点、駐車場9への車両8の進入方向91に平行な方向及びその方向に直行する方向のうちの一方をX軸、他方をY軸とする座標系であることが考えられる。
【0086】
なお、理論上、前記交点31p,32pは、2カ所存在し得る。しかしながら、前記充電装置1,2の場合と同様に、前記進入方向91と、一次側の2つのコイル11,12の位置関係と、二次側の2つのコイル21,22の位置関係とを考慮し、前記円弧30a,31a,32a,33の範囲を限定すれば、2つの前記交点31p,32pの位置は、それぞれ1カ所に特定される。また、磁場の切り替え期間における車両8の位置の変化の問題は、前記充電装置2において説明した方法により解消される。
【0087】
以上のようにして算出される前記充電用二次側コイル21の中心位置31p、及び前記センサ用二次側コイル22の中心位置32pは、駐車場9を基準とする座標系により表され、前記充電用一次側コイル11の中心位置11pとの相対的な位置を表しているといえる。前記充電装置3における前記演算回路25は、以上のようにして前記相対位置を算出する。しかも、前記充電装置3においては、前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22の両方の位置が算出される。そのため、前記充電装置3においては、駐車場9における車両8の向きも特定される。
【0088】
図9は、前記充電装置3における車両誘導のための情報出力の画面の一例である。前記充電装置3における前記演算回路25は、前記誘導情報出力処理において、前記位置算出処理により算出された充電用の2つのコイル11,21の位置及び駐車場9における車両8の向きに関する情報を、車両誘導情報として前記表示パネル31に出力する。
【0089】
図9に例示される前記車両誘導情報は、前記充電用二次側コイル21の画像21g及び前記充電用一次側コイル11の画像11gが、前記位置算出処理により算出された位置に対応するように配置された画像情報である。さらに、図9に例示される前記車両誘導情報においては、駐車場9の画像9g及び車両8の画像8gが、駐車場9における車両8の位置及び向きがわかるように表されている。なお、図9においては、各画像が、駐車場9を基準とする座標系の中で配置される。
【0090】
また、図9には示されていないが、前記充電装置3においても、前記演算回路25は、前記誘導情報としての画像情報に、前記充電用二次側コイル21を前記充電用一次側コイル11に対向する目標位置まで移動させるための車両8の移動方向及び移動量を通知する情報を含めることもできる。
【0091】
また、前記演算回路25は、前記誘導情報出力処理において、前記充電用二次側コイル21を前記充電用一次側コイル11に対向する目標位置まで移動させるための車両8の移動方向及び移動量を通知する音声情報を、前記車両誘導情報として前記スピーカ32へ出力する。また、前記充電装置3においては、前記演算回路25が、駐車場9の前記目標位置に停車された車両8に対する現状の車両8の左右方向の傾きの情報を出力することも可能である。
【0092】
前記充電装置3が採用された場合においても、車両8の運転者は、前記誘導情報出力処理によって提示される前記誘導情報を参照することにより、車両8が円滑に前記目標位置へ向かうようにハンドル操作を行うことが容易となる。しかも、車両8の車輪に当接する位置決め用の車輪止めが、駐車場9に突設される必要がない。
【0093】
さらに、前記充電装置3においても、車両用無線充電装置が元々備えている前記充電用一次側コイル11、前記充電用二次側コイル22及び前記高周波電力生成部13が、前記相対位置の検出にも兼用される。その結果、前記充電装置3は、前記相対位置の検出を簡易な構成により実現することができる。
【0094】
ところで、図7及び図8に示された例では、前記センサ用一次側コイル12は、前記進入方向91において前記充電用一次側コイル11よりも上流側に配置されているが、その他の配置が採用されることも考えられる。また、磁場の出力の切り替えに応じて得られる前記第1電流計26及び前記第2電流計27の検出結果の中から、前記位置算出処理に用いるものとして選択される前記検出結果の組合せは、他の組合せであってもよい。
【0095】
例えば、前記センサ用一次側コイル12が、前記進入方向91において前記充電用一次側コイル11と同等の位置に配置される場合が考えられる。そして、前記センサ用二次側コイル22は、車両8が前記目標位置に駐車されたときに、前記センサ用一次側コイル11に対向する位置に配置されているものとする。この場合、前記演算回路25は、前記充電用一次側コイル11から磁場が出力されているときの前記第1電流計26及び前記第2電流計27各々の検出結果と、前記センサ用一次側コイル12から磁場が出力されているときの前記第2電流計27の検出結果と、を用いて前記相対位置を算出できる。なお、この場合の前記相対位置の算出方法は、図8に示された例と同様である。
【0096】
また、図2,図5及び図7に基づき説明した前記相対位置の算出方法の例は、あくまで一例であり、基本的な幾何学的演算に基づく他の方法によっても、前記相対位置の算出が可能である。
【0097】
また、以上に示した各実施形態において、前記センサ用一次側コイル12及び前記センサ用二次側コイル22が、それぞれ1つずつ設けられた例が示されたが、他の例も考えられる。
【0098】
例えば、前記充電装置1において、2つ以上の前記センサ用二次側コイル22が、車両8における異なる位置に設けられ、前記相対位置が、車両8における3つ以上の二次側のコイル各々の電流検出値に基づいて算出される例が考えられる。この場合、前記演算回路25が、3つ以上の電流値検出値の中から、電流値の高いもの2つを選択し、選択した電流値を用いて前記位置算出処理を行うことが考えられる。或いは、前記演算回路25が、2つの電流値の組合せごとに算出される前記相対位置の平均値を、最終的な前記相対位置として算出することも考えられる。
【0099】
同様に、前記充電装置2において、2つ以上の前記センサ用一次側コイル12が、駐車場9における異なる位置に設けられ、前記相対位置が、駐車場9における3つ以上の一次側コイル各々の磁場に対応する前記第1電流計26の検出値に基づいて算出される例が考えられる。
【0100】
同様に、前記充電装置3において、2つ以上の前記センサ用一次側コイル12が、駐車場9における異なる位置に設けられ、それらに対応する2つ以上の前記センサ用二次側コイル22が、車両8における異なる位置に設けられた例も考えられる。この場合、前記相対位置は、駐車場9における3つ以上の一次側コイル各々の磁場の出力に対応して得られる3つ以上の二次側コイル各々の電流の検出値に基づいて算出される。
【0101】
前記充電装置1,3において、前記充電用二次側コイル21及び前記センサ用二次側コイル22の一方又は両方が、車両8のタイヤホイールに設けられることが考えられる。同様に、前記充電装置2において、前記充電用二次側コイル21が、車両8のタイヤホイールに設けられることが考えられる。
【0102】
図10は、前記充電装置3におけるコイルの配置の一例を表す図である。図10に示される例は、前記充電用二次側コイル21が車両8のタイヤホイールに配置され、前記センサ用二次側コイル22が、車両8の底面に配置された例である。この場合、前記充電用二次側コイル21は、タイヤホイールにおいて縦方向に起立した状態で配置される。また、前記センサ用二次側コイル22は、前述した実施形態と同様に、車両8の底面において横方向に寝かされた状態で配置される。
【0103】
前記充電用二次側コイル21がタイヤホイールに配置された構成としては、以下の構成が考えられる。例えば、前記充電用二次側コイル21全体がタイヤホイールに配置されることが考えられる。この場合、前記充電用二次側コイル21が、タイヤホイールに対して相対的に回転自在に支持されることが考えられる。これは、前記充電用二次側コイル21が、回転するタイヤホイールに対して従動しないように支持されることを意味する。これにより、タイヤホイールが回転しても、前記充電用二次側コイル21と前記充電回路23とが電気的に接続された状態が保持される。
【0104】
また、前記充電用二次側コイル21における前記二次側自己共振コイル211のみがタイヤホイールに支持され、前記二次側電磁誘導コイル212が、車両8の本体におけるタイヤホイールに対向する位置に支持されることも考えられる。
【0105】
一方、前記充電用二次側コイル21に対応する前記充電用一次側コイル11は、前記充電用二次側コイル21に対向するように、駐車場9において縦方向に起立した状態で保持されている。図10に示されるようなコイルの配置により、地面から車両8の底面までの高さが高い場合であっても、充電の際の前記充電用一次側コイル11と前記充電用二次側コイル21との間の距離を狭めることができる。その結果、充電の効率がより高まる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、車両用無線充電装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1〜3 車両用無線充電装置(充電装置)
8 車両
9 駐車場
10a,10b 送電側装置
11 充電用一次側コイル
12 センサ用一次側コイル
13 高周波電力生成部
14 給電制御部
15 交流電源
16 磁場出力切替部
20a,20b 受電側装置
21 充電用二次側コイル
22 センサ用二次側コイル
23 充電回路
24 バッテリ
25 演算回路
26 電流計
27 電流計
31 表示パネル
32 スピーカ
91 進入方向
111 一次側自己共振コイル
112 一次側電磁誘導コイル
211,221 二次側自己共振コイル
212,222 二次側電磁誘導コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場に設けられ、磁力が変動する磁場を発する充電用一次側コイルと、車両に設けられ、前記充電用一次側コイルから無線により電力を受電する充電用二次側コイルと、前記車両に設けられ、前記充電用二次側コイルにより得られる電力を充電池へ充電する充電部と、を備えた車両用無線充電装置であって、
前記車両における前記充電用二次側コイルと異なる位置に設けられ、前記駐車場において磁力が変動する磁場を発するコイルから無線により電力を受電するセンサ用二次側コイルと、
前記充電用二次側コイルにより得られる電力の強度を検出する第1電力検出部と、
前記センサ用二次側コイルにより得られる電力の強度を検出する第2電力検出部と、
前記第1電力検出部及び前記第2電力検出部各々の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイルと前記充電用二次側コイルとの間の相対位置を算出する位置算出部と、
前記位置算出部により算出された前記相対位置の情報を出力する情報出力部と、
を備えることを特徴とする車両用無線充電装置。
【請求項2】
前記駐車場における前記充電用一次側コイルと異なる位置に設けられ、磁力が変動する磁場を発するセンサ用一次側コイルと、
前記充電用一次側コイルによる磁場の出力と前記センサ用一次側コイルによる磁場の出力とを切り替える磁場出力切替部と、を更に備え、
前記位置算出部は、前記磁場出力切替部により切り替えられた磁場に対応した前記第1電力検出部及び前記第2電力検出部各々の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイルと前記充電用二次側コイルとの間の相対位置を算出する、
請求項1に記載の車両用無線充電装置。
【請求項3】
前記センサ用一次側コイルは、前記駐車場への前記車両の進入方向において前記充電用一次側コイルよりも上流側に配置され、
前記センサ用二次側コイルは、前記車両が前記充電用二次側コイル及び前記充電用一次側コイルが相互に対向する目標位置に駐車されたときに、前記センサ用一次側コイルに対向する位置に配置され、
前記位置算出部は、前記充電用一次側コイルから磁場が出力されているときの前記第1電力検出部の検出結果と、前記センサ用一次側コイルから磁場が出力されているときの前記第1電力検出部及び前記第2電力検出部各々の検出結果と、を用いて前記相対位置を算出する、
請求項2に記載の車両用無線充電装置。
【請求項4】
駐車場に設けられ、磁力が変動する磁場を発する充電用一次側コイルと、車両に設けられ、前記充電用一次側コイルから無線により電力を受電する充電用二次側コイルと、前記車両に設けられ、前記充電用二次側コイルにより得られる電力を充電池へ充電する充電部と、を備えた車両用無線充電装置であって、
前記駐車場における前記充電用一次側コイルと異なる位置に設けられ、磁力が変動する磁場を発するセンサ用一次側コイルと、
前記充電用一次側コイルによる磁場の出力と前記センサ用一次側コイルによる磁場の出力とを切り替える磁場出力切替部と、
前記充電用二次側コイルにより得られる電力の強度を検出する第1電力検出部と、
前記磁場出力切替部により切り替えられた磁場に対応した前記第1電力検出部の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイルと前記充電用二次側コイルとの間の相対位置を算出する位置算出部と、
前記位置算出部により算出された前記相対位置の情報を出力する情報出力部と、
を備えることを特徴とする車両用無線充電装置。
【請求項5】
前記車両における前記充電用二次側コイルと異なる位置に設けられ、前記駐車場において磁力が変動する磁場を発するコイルから無線により電力を受電するセンサ用二次側コイルと、
前記センサ用二次側コイルにより得られる電力の強度を検出する第2電力検出部と、を更に備え、
前記位置算出部は、前記磁場出力切替部により切り替えられた磁場に対応した前記第1電力検出部及び前記第2電力検出部各々の検出結果を用いて、前記充電用一次側コイルと前記充電用二次側コイルとの間の相対位置を算出する、
請求項4に記載の車両用無線充電装置。
【請求項6】
当該車両用無線充電装置の動作モードを、前記充電部による前記充電池への充電が行われない状況下で、前記位置検出部が前記電力検出部の検出結果を用いて前記相対位置を算出する位置検出モードと、前記充電部による前記充電池への充電が行われる充電モードと、に切り替える動作モード切替部を更に備える、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両用無線充電装置。
【請求項7】
前記充電用二次側コイルは、
前記充電用一次側コイルに対し磁場の共鳴により磁気的に結合されることによって前記充電用一次側コイルから電力を受電する二次側自己共振コイルと、
電磁誘導により前記二次自己共振コイルから電力を受電する二次側電磁誘導コイルと、を備える、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両用無線充電装置。
【請求項8】
前記情報出力部は、前記位置算出部により算出された前記相対位置の情報の画像を前記車両に設けられた表示部に出力する、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の車両用無線充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−160515(P2011−160515A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18381(P2010−18381)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】