説明

車両用照明調光装置

【課題】グレーフィルムによって照明の明るさの補正を行うと、明るさの補正は、昼夜いずれか一方にしか適用できない。
【解決手段】前照灯点消灯判定部40の判定結果に基づいて、調光量指示部30において、複数の照明用光源10の発光波長の光に対する明所視比視感度、または暗所視比視感度に基づいて、複数の照明用光源10の明るさが等しくなる調光量を算出し、算出した調光を行う点消灯信号を生成して、生成した点消灯信号を駆動回路20に送信し、照明用光源10の調光を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用メータ装置や車両用表示操作装置の照明の輝度を自動的に調整(調光)することができる車両用照明調光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両用メータ装置や、カーナビゲーション装置、オーディオ装置、エアコン等の車載機器の表示操作を行う車両用表示操作装置として、自発光式のメータや自発光式の操作パネル、あるいはバックライトで照明された液晶ディスプレイなどが実用化されている。このような自発光式のメータや自発光式の操作パネルでは、キーをオンにしていると、昼夜を問わず、メータや操作パネルが点灯している。また、液晶ディスプレイでは、ディスプレイを使用中は、昼夜を問わずバックライトが点灯している。
【0003】
このような自発光式のメータや操作パネルにおいて、多色表示を行うときには、人間の目の感度(視感度)が色(光の波長)によって異なるため、異なる色の表示が同じ明るさに見えるよう、光量の補正(調光)が行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−100679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人間の視感度は、光の波長、および周囲の明るさによって異なることが知られている。したがって、表示色による表示の見え方の差をなくすため、異なる色で発光している表示体の明るさは、発光波長や周囲の明るさに応じて補正する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明によると、グレーフィルム(減光フィルタ)によって照明の明るさの補正を行っているため、明るさの補正は、使用する光源の波長の光に対してしか適用できないものであった。また、明るさの補正は、昼夜いずれか一方にしか適用できないものであった。
【0007】
すなわち、異なる発光波長の光源を用いると補正のバランスが崩れてしまうため、減光フィルタの仕様を変更しなければならず、これによって設計の手間が増加してしまう。
【0008】
また、人間の視感度は、周囲の明るさによって異なるため、昼間の環境で明るさの補正を行うと、夜間の環境では補正のバランスが崩れてしまい、逆に、夜間の環境で明るさの補正を行うと、昼間の環境では補正のバランスが崩れてしまう。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、複数の発光波長の照明用光源が存在するとき、照明用光源の発光波長や昼夜に拘わらず、それらの照明用光源の明るさが等しくなるように調光することができる車両用照明調光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車両用照明調光装置は、照明用光源の発光波長や昼夜に拘わらず、複数の発光波長が異なる照明用光源の明るさが等しくなるように調光を行うものである。
【0011】
すなわち、本発明に係る車両用照明調光装置は、発光波長が異なる複数の照明用光源と、前記複数の照明用光源を各々駆動する複数の駆動回路と、前記複数の照明用光源の、各々の発光波長の光に対する比視感度に基づいて、前記複数の照明用光源の明るさが等しくなるように調光する調光量指示部とを備え、前記調光量指示部は、前記駆動回路に対して、車両の前照灯が点灯しているときは暗所視比視感度を用いて算出した調光量を指示し、車両の前照灯が点灯していないときは明所視比視感度を用いて算出した調光量を指示するものであることを特徴とする。
【0012】
このように構成された車両用照明調光装置によれば、調光量指示部が、車両の前照灯が点灯しているときは、複数の照明用光源の各々の発光波長の光の暗所視比視感度に基づいて調光量を算出し、また、車両の前照灯が点灯していないときは、複数の照明用光源の各々の発光波長の光の明所視比視感度に基づいて調光量を算出して、こうして算出された調光量に応じて、駆動回路が照明用光源を点消灯するため、昼夜に拘わらず、また、減光フィルタのような構成物を用いることなく、発光波長が異なる複数の照明用光源の明るさが等しくなるように調光することができる。さらに、比視感度に基づいて調光量を算出しているため、使用する照明用光源の発光波長に拘わらずに調光することができる。
【0013】
また、本発明に係る車両用照明調光装置の前記調光量指示部は、前記発光波長が異なる複数の照明用光源の明るさを、前記発光波長が異なる複数の照明用光源の各々の発光波長の光に対する比視感度のうち、最も小さい比視感度を有する発光波長の前記照明用光源の明るさと等しくなるように調光することを指示するものであることを特徴とする。
【0014】
このように構成された車両用照明調光装置によれば、調光量指示部が、複数の照明用光源の発光波長の光の比視感度の大きさに基づいて、最も小さい比視感度を有する発光波長の照明用光源の明るさと等しくなるように算出された調光量を指示するため、使用する照明用光源の発光波長に拘わらず、調光量を簡便に算出することができる。
【0015】
また、本発明に係る車両用照明調光装置の前記調光量指示部は、前記複数の照明用光源の各々に対して、前記複数の照明用光源の各々の発光波長の光の比視感度と、前記複数の照明用光源の発光波長の光の比視感度のうち最も小さい比視感度との差に応じた減光を行うデューティ比の点消灯信号を生成し、生成した前記点消灯信号を、前記複数の駆動回路のうち、対応する照明用光源を駆動する前記駆動回路に対して送信するものであることを特徴とする。
【0016】
このように構成された車両用照明調光装置によれば、調光量指示部が、複数の照明用光源の各々の発光波長の光の比視感度に基づいて、各照明用光源の発光波長の光の比視感度と、複数の照明用光源の中で、最も小さい比視感度との差分値に応じた減光を行うデューティ比の点消灯信号を生成し、こうして生成された点消灯信号を、対応する照明用光源を駆動する駆動回路に送信して照明用光源の点消灯を行うため、従来のPWM制御を用いた照明用光源の駆動回路をそのまま流用して、照明用光源の調光を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る車両用照明調光装置の前記調光量指示部は、前記駆動回路に対して、前記複数の照明用光源の点消灯タイミングが互いに異なる複数の点消灯信号を送信するものであることを特徴とする。
【0018】
このように構成された車両用照明調光装置によれば、調光量指示部が、複数の照明用光源の点消灯タイミングが互いに異なる複数の点消灯信号を生成し、この生成された複数の点消灯信号によって照明用光源の点消灯が行われるため、複数の照明用光源の点灯タイミング、あるいは消灯タイミングが一致することによる、電流の集中を防止することができる。さらに、複数の照明用光源の点灯タイミング、あるいは消灯タイミングが一致することによるノイズの発生を軽減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る車両用照明調光装置によれば、照明用光源の発光波長や昼夜に拘わらず、発光波長が異なる複数の照明用光源の明るさが等しくなるように調光することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用照明調光装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(1)視感度を説明する図である。(2)明所視比視感度と暗所視比視感度を説明する図である。
【図3】本発明の実施例の動作の流れを示したフローチャートである。
【図4】点消灯信号の1例を示す図である。
【図5】(1)点消灯信号の別の例を示す図である。(2)〔図5〕(1)の点消灯タイミングをずらした例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る車両用照明調光装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
本実施例は、本発明を、車両のメータパネルや、カーナビゲーション装置、オーディオ装置、エアコンなどの表示操作パネル、あるいは液晶ディスプレイの照明と調光を行う、車両用照明調光装置に適用したものである。以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0023】
図1に、本発明の実施形態のブロック図を示す。車両用照明調光装置1は、図示しない車両5に設置され、発光ダイオード(LED)からなり、発光波長が互いに異なる(発光色が異なる)複数の照明用光源10と、トランジスタ等のスイッチング素子と電源によって構成され、電源電圧に基づいて設定される電流値で照明用光源10を点消灯する駆動回路20と、駆動回路20に入力される、照明用光源10の点消灯タイミングを指示する調光量指示部30と、車両5の前照灯が点灯しているか否かを判定する前照灯点消灯判定部40と、車両5のイグニッションスイッチの状態を判断するイグニッションスイッチ状態判断部50とを備えている。
【0024】
なお、調光量指示部30は、照明用光源10の発光波長の仕様が格納された照明用光源情報格納部34と、複数の照明用光源10を調光するため、各々の照明用光源の減光率を算出する減光率算出部36と、照明用光源10を点消灯させるパルス列を生成する点消灯信号生成部38とからなる。
【0025】
さらに、調光量指示部30と駆動回路20とは、一定周期で通信を行い、所定周期毎に、調光量指示部30から、所定時間τの点灯信号、もしくは、所定時間τの消灯信号が、駆動回路に送信されるものとする。
【0026】
また、照明用光源10は、1例として、発光波長λ=460nm(青色)を有する第1の照明用光源12と、発光波長λ=610nm(オレンジ色)を有する第2の照明用光源14とからなるものとし、駆動回路20は、第1の照明用光源12を点消灯する第1の駆動回路22と、第2の照明用光源14を点消灯する第2の駆動回路24とからなるものとする。
【0027】
ここで、本実施例の作用を説明する前に、人間の目の視感度について説明する。図2(1)は、人間の目の視感度を示す図である。図2(1)の横軸は光の波長を示し、図2(1)の縦軸は、人間の目が明るさを感じる強さ(視感度)を示す。
【0028】
また、図2(1)において、暗所視と書かれた特性は、暗い環境に順応した状態における視感度を示し、明所視と書かれた特性は、明るい環境に順応した状態における視感度を示す。
【0029】
図2(1)から、人間の目の感度は、光の波長によって異なり、さらに、暗い環境と明るい環境とでも異なることがわかる。
【0030】
なお、最大視感度を示す波長(暗所視507nm、明所視555nm)における視感度をそれぞれ1.0としたとき、それに対する各波長の視感度の比率を比視感度Vと呼ぶ。比視感度Vは、明暗それぞれの視環境に対して、明所視比視感度Vp(λ)と暗所視比視感度Vs(λ)が定義され、それぞれ、0から1の間の数値で表される。
【0031】
図2(2)は、この明所視比視感度Vp(λ)と暗所視比視感度Vs(λ)を示すグラフである。
【0032】
以下、本実施例に係る車両用照明調光装置1の作用について、図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0033】
イグニッションスイッチ状態判断部50によって、車両5のイグニッションスイッチがONになっていることが確認され(図3のステップS1)、以降の処理が開始される。
【0034】
まず、点消灯信号生成部38の指示によって、照明用光源情報格納部34に格納された照明用光源10の発光波長が読み出される(図3のステップS2)。
【0035】
次に、減光率算出部36において、暗所視状態と明所視状態の双方について、発光波長λ=460nmの第1の照明用光源12と、λ=610nmの第2の照明用光源14の明るさを等しくするために、各々の照明用光源をどれだけ減光すればよいかが算出される(図3のステップS3)。
【0036】
照明用光源10の発光波長における暗所視比視感度と明所視比視感度は、図2(2)から、発光波長λ=460nmの光については、暗所視状態でVs(λ)=約0.53、明所視状態でVp(λ)=約0.06であること、また、発光波長λ=610nmの光については、暗所視状態でVs(λ2)=約0.02、明所視状態でVp(λ2)=約0.47であることがわかる。
【0037】
即ち、明所視状態においては、発光波長λの比視感度が、発光波長λの比視感度よりも大きいから、発光波長λの第2の照明用光源14を減光して、発光波長λの第1の照明用光源12の明るさと等しくなるように調光される。
【0038】
さらに、暗所視状態においては、発光波長λの比視感度が、発光波長λの比視感度よりも大きいから、発光波長λの第1の照明用光源12を減光して、発光波長λの第2の照明用光源14の明るさと等しくなるように調光される。
【0039】
減光率算出部36には、予め、明所視状態と暗所視状態の双方において、複数の発光波長の照明用光源を並べて観測し、各々の照明用光源をどれ位減光すると、両方の照明用光源の明るさが等しくなるかを計測した結果が格納されている。
【0040】
図3のステップS3において、照明用光源情報格納部34から読み出した、第1の照明用光源12の発光波長λと、第2の照明用光源14の発光波長λに対応する2つの照明用光源の明るさを等しくするための減光率dが、減光率算出部36から読み出される。
【0041】
本実施例においては、減光率算出部36から読み出された結果に基づいて、明所視状態にあっては、第1の照明用光源12をd=8.3%減光し、第2の照明用光源14をd=20%減光すると2つの照明用光源の明るさがほぼ一致し、暗所視状態にあっては、第1の照明用光源12をd=33.3%減光し、第2の照明用光源14をd=8.3%減光すると2つの照明用光源の明るさがほぼ一致すると算出されたものとする。
【0042】
照明用光源10を、ステップS3で算出した量だけ減光するには様々な方法がある。本実施例では、点消灯信号生成部38で生成され、駆動回路20に送信される点消灯信号のデューティ比を小さくし、点消灯信号を構成するパルスを間引くことによって、LEDを減光する手法を採る。
【0043】
そこで、まずは、図3のステップS4において、前照灯点消灯判定部40の作用によって、車両5の前照灯が点灯しているか否かが判定される。
【0044】
前照灯が点灯していると判定される(図3のステップS4がYesのとき)と、図3のステップS5において、暗所視状態における、照明用光源10の点消灯信号が生成される。
【0045】
ここでは、減光率をd%、xを超えない最大整数を表す関数をINT[x]としたとき、(式1)から(式3)で算出される定数Kに基づいて、点消灯信号が生成され、生成された点消灯信号は、駆動回路20に入力され、照明用光源10を点消灯させる。
【0046】
K=1(d=0のとき) (式1)
K=INT[100/d](0<d<50のとき) (式2)
K=INT[100/(100−d)](50≦d<100のとき)(式3)
ここで、d=0のときは、(式1)によって算出されるK=1を用いて、図3のステップS6において、点消灯信号生成部38から駆動回路20に対して、予め設定された、所定時間τの点灯信号を常時送信し続けることによって、照明用光源10を常時点灯させる。
【0047】
また、0<d<50のときは、(式2)によって算出される定数Kを用いて、図3のステップS6において、点消灯信号生成部38から駆動回路20に対して、所定時間τの点灯信号を(K−1)回送信した後、所定時間τの消灯信号(無信号)を1回送信して、この送信された点消灯信号によって照明用光源10を点消灯させる。
【0048】
d≧50のときは、(式3)によって算出される定数Kを用いて、図3のステップS6において、点消灯信号生成部38から駆動回路20に対して、所定時間τの点灯信号を1回送信した後、所定時間τの消灯信号(無信号)を(K−1)回送信して、この送信された点消灯信号によって照明用光源10を点消灯させる。
【0049】
このようにして生成された点消灯波形の例を図4に示す。図4の縦軸は電圧eを、横軸は時間tを表している。
【0050】
次に、図3のステップS7にて、イグニッションスイッチ状態判断部50の作用によって、車両5のイグニッションスイッチの状態が判定される。
【0051】
もし、車両5のイグニッションスイッチがOFFになっていたら、ステップS20に移行して処理を終了する。
【0052】
一方、車両5のイグニッションスイッチがONになっていたら、ステップS8に移行して、車両5の前照灯が点灯していることを確認して、ステップS6に移行し、暗所視状態における照明用光源の点消灯を繰り返す。
【0053】
ステップS8にて、車両5の前照灯が消灯していると判定されると、ステップS10に移行して、後述する明所視状態における処理が行われる。
【0054】
一方、図3のステップS4において、前照灯が点灯していないと判定されると、図3のステップS10に移行して、明所視状態における、照明用光源10の点消灯信号が生成される。
【0055】
図3のステップS10では、ステップS5と同様にして、ステップS3で算出した減光率に基づいて(式1)から(式3)に則って定数Kの値が算出され、算出されたKの値に基づいて第1照明用光源12と第2照明用光源14の点消灯信号が、それぞれ生成される。
【0056】
さらに、図3のステップS11において、生成された点消灯信号は、駆動回路20を介して照明用光源10に印加され、照明用光源10の点消灯が行われる。
【0057】
次に、図3のステップS12にて、イグニッションスイッチ状態判断部50の作用によって、車両5のイグニッションスイッチの状態が判定される。
【0058】
もし、車両5のイグニッションスイッチがOFFになっていたら、ステップS20に移行して処理を終了する。
【0059】
一方、車両5のイグニッションスイッチがONになっていたら、ステップS13に移行して、車両5の前照灯が点灯していないことを確認して、ステップS11に移行し、明所視状態における照明用光源の点消灯を繰り返す。
【0060】
ステップS13にて、車両5の前照灯が点灯していると判定されると、ステップS5に移行して、暗所視状態における、照明用光源10の点消灯信号が生成される。
【0061】
このようにして構成された本実施形態に係る車両用照明調光装置1によれば、照明用光源の発光波長の光に対する、明所視比視感度と暗所視比視感度とに基づいて、照明用光源の明るさが等しくなるように調光するようにしたため、照明用光源の発光波長や昼夜に拘わらず、発光波長が異なる複数の照明用光源の明るさが等しくなるように調光することができる。
【0062】
なお、本実施例では、予め減光率算出部36に格納された減光率に基づいて、照明用光源10の調光量を算出したが、その構成に限定される訳ではない。
【0063】
即ち、減光率算出部36の中に、図2(2)に示した比視感度のグラフを格納しておき、設置された照明用光源の発光波長に対応する比視感度の値を読み取って、点消灯信号生成部38において、各照明用光源の発光波長の比視感度と、設置された照明用光源の中で、最も小さい比視感度を有する照明用光源の比視感度との差分値の大きさに応じた減光率を有する点消灯信号を生成して、こうして生成した点消灯信号を、各照明用光源の点消灯信号として、対応する照明用光源を駆動する駆動回路20に入力して照明用光源10を点消灯させても、同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
即ち、例えば第1の照明用光源12の比視感度V(λ)と第2の照明用光源14の比視感度V(λ)が、V(λ)>V(λ)の関係にあって、その差(V(λ)−V(λ))がδVであるときは、差の大きさδVに応じた減光率dを実現するデューティ比Dの点消灯信号を生成して、第1の照明用光源12を駆動することにより、第1の照明用光源12と第2の照明用光源14の明るさを等しくすることができる。なお、比視感度の差の大きさδVとデューティ比Dとの関係は、予めテーブル化して、減光率算出部36に格納しておけばよい。
【0065】
なお、上述した実施例によると、照明用光源が複数個あるとき、それらの照明用光源が同時に点灯状態になることによって、照明用光源の点消灯回路に電流の集中が発生する場合がある。また、さらに、複数の照明用光源が同時に点消灯することによって、ノイズが発生する場合がある。
【0066】
このような場合、個々の照明用光源に対する点消灯波形の形状を補正して、複数の照明用光源が同時に点灯状態になる頻度を下げることができる。また、複数の照明用光源が同時に点消灯することを防止することができる。
【0067】
点消灯タイミングがずれた複数の点消灯信号を生成するには、例えば、点消灯信号生成部38の中で、実施例に記載した方法で各照明用光源の点消灯信号を生成した後、その各々の点消灯信号の先頭に、所定時間τの消灯信号(無信号)をb個(b=0、1、2、3、…)接続することによって、点消灯信号の点消灯タイミングにオフセットをつけ、互いに点灯・消灯タイミングが異なる複数の点消灯信号を生成して、駆動回路20に対して、それらを送信する構成を採ればよい。
【0068】
図5(1)に点消灯信号の1例を示すが、この例では、時刻t、t、t、…において、2つの点消灯信号のパルスの立ち上がりタイミングが一致している。さらに、1周期(4τ)毎に、時間2τに渡って、両方の照明用光源に同時に電流が流れる構成になっている。
【0069】
図5(1)の第1の照明用光源12の点消灯タイミングをずらした点消灯信号の例を、図5(2)に示す。図5(2)は、第1の照明用光源12の点消灯信号を、所定時間τだけずらしたものである。
【0070】
図5(2)の点消灯信号では、2つの照明用光源の点灯タイミング、消灯タイミングは共にずれており、さらに、2つの照明用光源に同時に電流が流れる時間は、1周期(4τ)中、2τ−τとなり、図5(1)に比べて小さくなっている。
【0071】
このように、複数の照明用光源の点消灯のタイミングをずらすことによって、複数の照明用光源が同時に点消灯することを防止することができる。また、複数の照明用光源が同時に点灯状態になる時間を減らすことができる。これによって、照明用光源の点消灯回路のノイズの発生を緩和でき、さらに電流の集中を防止することができる。
【0072】
ここで、所定時間τの値は、任意に設定してよいが、複数の照明用光源の点消灯タイミングが、なるべく一致しないように、また、複数の照明用光源に同時に電流が流れる時間がなるべく短くなるように、予め調整した上で決定するのが望ましい。
【0073】
また、照明用光源毎に点消灯タイミングをずらす手法は、第1の照明用光源12、もしくは第2の照明用光源14が、それぞれ複数個の照明用光源から構成されている場合に、第1の照明用光源12を構成するそれぞれの照明用光源に与える点消灯信号のタイミング、また、第2の照明用光源14を構成するそれぞれの照明用光源に与える点消灯信号のタイミングをずらすことにも適用することができる。
【0074】
以上、本実施例では、点消灯信号生成部38に内蔵したソフトウェアによって、照明用光源10を点消灯するための点消灯信号を生成したが、この形態に限定されるものではなく、例えば、点消灯信号生成部38に分周回路を内蔵し、その分周回路によって、所定時間τのパルス列を分周して、減光率算出部36で算出された所定の減光率dを実現するデューティ比の点消灯信号を生成する構成を採っても、先に説明した実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0075】
さらに、本実施例にあっては、照明用光源にLEDを用いる構成で説明したが、照明用光源はLEDに限定されず、例えばEL素子のように、パルス信号で点消灯を制御できる照明用光源であれば、利用することができる。
【0076】
また、本実施例によると、照明用光源を減光した際、点消灯信号のパルスの間引き量が多すぎる(デューティ比が低すぎる)と、照明用光源にちらつきが生じる可能性がある。したがって、事前に動作検証を行った上で、ちらつきが生じないことを確認しておく必要がある。もし、照明用光源にちらつきが生じた場合は、点消灯信号の周期を変更して、ちらつきを生じない設定に調整すればよい。
【符号の説明】
【0077】
1 車両用照明調光装置
10 照明用光源
12 第1の照明用光源
14 第2の照明用光源
20 駆動回路
22 第1の駆動回路
24 第2の駆動回路
30 調光量指示部
32 点消灯信号生成部
34 比視感度情報格納部
36 照明用光源情報格納部
40 前照灯点消灯判定部
50 イグニッションスイッチ状態判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光波長が異なる複数の照明用光源と、
前記複数の照明用光源を各々駆動する複数の駆動回路と、
前記複数の照明用光源の、各々の発光波長の光に対する比視感度に基づいて、前記複数の照明用光源の明るさが等しくなるように調光する調光量指示部とを備え、
前記調光量指示部は、前記駆動回路に対して、車両の前照灯が点灯しているときは暗所視比視感度を用いて算出した調光量を指示し、車両の前照灯が点灯していないときは明所視比視感度を用いて算出した調光量を指示するものであることを特徴とする車両用照明調光装置。
【請求項2】
前記調光量指示部は、前記発光波長が異なる複数の照明用光源の明るさを、前記発光波長が異なる複数の照明用光源の各々の発光波長の光に対する比視感度のうち、最も小さい比視感度を有する発光波長の前記照明用光源の明るさと等しくなるように調光することを指示するものであることを特徴とする請求項1記載の車両用照明調光装置。
【請求項3】
前記調光量指示部は、前記複数の照明用光源の各々に対して、前記複数の照明用光源の各々の発光波長の光の比視感度と、前記複数の照明用光源の発光波長の光の比視感度のうち最も小さい比視感度との差に応じた減光を行うデューティ比の点消灯信号を生成し、生成した前記点消灯信号を、前記複数の駆動回路のうち、対応する照明用光源を駆動する前記駆動回路に対して送信するものであることを特徴とする請求項1または2記載の車両用照明調光装置。
【請求項4】
前記調光量指示部は、前記駆動回路に対して、前記複数の照明用光源の点消灯タイミングが互いに異なる複数の点消灯信号を送信するものであることを特徴とする請求項1から3のうち1項に記載の車両用照明調光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66605(P2012−66605A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210599(P2010−210599)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】