説明

車両用熱交換器の配置構造

【課題】 エンジン冷却媒体を冷却するラジエータの大型化やサイドフレームメンバーの強度低下を招くことなく、しかもラジエータの冷却媒体温度よりも高温の被冷却流体の供給を受ける熱交換器の配置の省スペース化を実現し得る車両用熱交換器の配置構造を提供する。
【解決手段】 車両10には、該車両の前方へ向けて配置される空気取り入れ面17aを有し、エンジン冷却水の冷却のために車両10に搭載されるラジエータ15と、該ラジエータの冷却水温度よりも高温の被冷却流体であるオイルを冷却するための熱交換器であるオイルクーラ20とが設けられる。オイルクーラ20は、その空気取り入れ面21aが車両10の前後方向に沿うように、ラジエータ15の後方側部に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジン冷却媒体を冷却するための熱交換器であるラジエータと、トランスミッションオイルあるいはパワーステアリングオイルのような高温のオイルを冷却するオイルクーラや過給器で圧縮を受けた高温の給気を冷却するインタークーラのような熱交換器との組み合わせで構成される車両用熱交換器の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
水冷式エンジンを駆動源とする車両には、エンジン冷却水を冷却するための熱交換器であるラジエータ(以下、単にラジエータと称す。)の他、例えば、自動変速機のトランスミッションオイル(以下、単にATオイルと称す。)あるいはパワーステアリングオイル(以下、単にPSオイルと称す。)のようなオイルを冷却するオイルクーラ、過給器のインタークーラ等の種々の熱交換器が必要に応じて組み合わせて搭載されている。
【0003】
前記したラジエータは、前記したオイルクーラあるいはインタークーラのような他の熱交換器(以下、単に熱交換器と称す。)の空気取り入れ面よりも大きな空気取り入れ面を有し、この大型の熱交換器であるラジエータは、一般的に、効率的な空気の取り入れを可能とするために、車両の前部でその空気取り入れ面を車両の前方へ向けて配置されている。
【0004】
ラジエータよりも空気取り入れ面が小さな前記した小型の熱交換器は、例えばラジエータの前方に配置され、あるいは車両の前輪の前方でフロントバンパーフェイシャーとフェンダプロテクタとの間に配置されている。
【0005】
また、前記した小型の熱交換器の一つであるインタークーラを車両のサイドフレームメンバーの外側に配置し、このインタークーラのための冷却用空気ダクトとして前記サイドフレームメンバーを利用することが提案されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平6−67145号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ラジエータに供給されるエンジン冷却水は、約100℃であるのに対し、このラジエータの前方に配置されるオイルクーラに供給されるオイルやインタクーラに供給される給気の温度は約120℃に達する。そのため、冷却水よりも高温の被冷却流体の供給を受ける熱交換器を通過した冷却空気は、ラジエータに供給されるエンジン冷却水温度よりも高くあるいはこれにほぼ等しい温度となる。
【0007】
そのため、これら高温の被冷却流体の供給を受ける熱交換器が例えラジエータよりも小型であったとしても、このような高温の被冷却流体の供給を受ける熱交換器がラジエータの前方に配置されると、この熱交換器を経ることにより、エンジン冷却水温度よりも高くあるいはこれにほぼ等しい温度に暖められた高温の空気がラジエータに流れることから、該ラジエータの冷却効率が著しく低下する。この冷却効率の低下を補償するには、ラジエータが大型化する。また、車両の前後方向にラジエータと熱交換器が平行に配置されることから、少なくとも熱交換の厚さ寸法分、車両の全長の増大を招く虞がある。
【0008】
そこで、特許文献1に記載の従来技術は、ラジエータの冷却効率が低下することがないように、サイドフレームメンバーにインタークーラへの冷却空気導出口を形成したものだが、サイドフレームメンバーの強度低下によって車両の衝突安全性能が悪化する。また、サイドフレームメンバーの空気導出口と、該サイドフレームメンバー外側に配置されたインタークーラとは分岐ダクトで接続されており、この分岐ダクトを配置する分、車幅方向への設置スペースが拡大する。また分岐ダクトを不可欠とすることから、分岐ダクトおよびこれに関連して部品点数が増加する。また、インタクーラが一対のサイドフレームメンバー間よりもその外方に配置されることから、両サイドフレームメンバー間に配置されたエンジンとインタークーラとを接続する配管が長くなり、その分、コストおよび重量が増加する。
【0009】
これらの点に鑑み、本発明の目的は、エンジン冷却媒体を冷却するラジエータの大型化やサイドフレームメンバーの強度低下を招くことなく、しかもラジエータの冷却媒体温度よりも高温の被冷却流体の供給を受ける熱交換器の配置の省スペース化を実現し得る車両用熱交換器の配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車両の前方へ向けて配置される空気取り入れ面を有し、エンジン冷却媒体の冷却のために前記車両に搭載されるラジエータと、該ラジエータに供給される前記冷却媒体の温度よりも高い温度の被冷却流体が供給され、該被冷却流体の冷却のための空気取り入れ面を有する熱交換器とを備え、該熱交換器の前記空気取り入れ面が前記車両の前後方向に沿うように、前記熱交換器を前記ラジエータの後方側部に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ラジエータの後方側部に熱交換器を配置し、しかも該熱交換器の空気取り入れ面が車両の前後方向に沿うように前記熱交換器を配置することにより、ラジエータの後方のスペースを熱交換器の配置スペースとして有効に利用することができるので、熱交換器を経たラジエータの冷却媒体温度より高温の空気がラジエータに送風されることなく、この高温の冷却空気の送風によるラジエータの冷却効率の低下を防止することができ、熱交換器の配置に伴う他部品との干渉問題を解消することができ、また熱交換器への冷却空気のダクトとしてサイドフレームメンバーを利用する必要がないので、サイドフレームメンバーに冷却空気導出口を設けることによる強度低下をもたらすことはない。従って、従来の問題点を解消して、ラジエータおよび熱交換器を適正に配置することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図示の実施例に沿って詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1および図2は、本発明に係る第1実施例の車両の左前半部をそれぞれ概略的に示す平面図および斜視図であり、図示の例では自動車が示されている。
【0014】
本発明に係る車両で10は、図1に示すように、車両10の幅方向に互いに間隔をおいて該車両の前後方向に沿って配置された一対のフロントサイドメンバー11(図には、左方のフロントサイドメンバーが示されている。)を備える。両サイドメンバー11間には、図示しないエンジンを搭載するためのエンジンルーム12が形成されており、また両サイドメンバー11の前方には、車両10の幅方向に伸びる衝撃緩衝のためのフロントバンパーフェイシャ13が配置されている。フロントサイドメンバー11の側方に張り出すフロントバンパーフェイシャ13の両端部の後方には、サイドフレームメンバー11に支持された従来よく知られたフェンダプロテクタ14が配置されている。
【0015】
エンジンルーム12の前方には、フロントバンパーフェイシャ13に沿って該バンパーフェイシャの後方に前記エンジンの冷却水を冷却するための熱交換器であるラジエータ15が配置されている。フロントバンパーフェイシャ13のラジエータ15に対応する部分には、ラジエータ15へ向けての空気取入開口13aが形成されている。また、ラジエータ15とフロントバンパーフェイシャ13との間には、空気取入開口13aからの空気流をラジエータ15へ案内するための一対のガイド板16(図にはその一方が示されている。)が配置されている。
【0016】
ラジエータ15は、図2に示されているように、矩形平面形状を有するラジエータコア15aと、該ラジエータコアの上下に設けられ、冷却水を保留するための一対のタンク15b、15cとを備える従来よく知られたダウンフロータイプのラジエータである。ラジエータ15は、空気取り入れ面となるラジエータコア15aの前面17aが空気取入開口13aに対向するように、その空気取り入れ面17aを車両の前方へ向けて車両10の幅方向に沿って配置されている。
【0017】
ラジエータ15のアッパータンク15bおよびロアータンク15cは、それぞれ前記エンジン内部に形成された冷却水通路(図示せず)に接続されており、従来よく知られているように、前記エンジンからラジエータ15の一方のタンク15bまたは15cに案内される冷却水は、ラジエータコア15aを経て他方のタンク15cまたは15bに流れるとき、このラジエータコア15aの前面17aから後面17bへ向けて通り抜ける空気流との熱交換により、冷却される。この冷却により、前記エンジンで例えば100℃に加熱された冷却水は、例えば80℃に冷却された後、他方のタンク15cまたは15bから再び該エンジンに戻され、この冷却水の循環によって前記エンジンが適正に冷却される。
【0018】
ラジエータ15の後面側には、図1に示すように、例えばアイドリング運転時にラジエータコア15aを通り抜ける空気流の増大を図るための従来よく知られた冷却ファン18が配置されている。また、ラジエータ15の前方には、該ラジエータと平行に空調システムの冷媒ガスを冷却するための熱交換器である凝縮器(コンデンサー)19が配置されている。この凝縮器19は、従来よく知られているように、ラジエータ15とほぼ同様な構成および大きさを有する。凝縮器19は、図示しない空調システムの従来よく知られた冷媒コンプレッサと膨張弁とに接続され、前記冷媒コンプレッサで加圧されることにより例えば90℃に加熱された冷媒を例えば約50℃に冷却する。
【0019】
ラジエータ15の後面側には、自動変速機のトランスミッションオイルであるATオイルを冷却するための空冷式オイルクーラ20が配置されている。オイルクーラ20は、ラジエータ15におけると同様な基本構成を有し、前記したと同様な空冷作用によりトランスミッションオイルを冷却するために、ラジエータ15の空気取り入れ面17aよりも小型の空気取り入れ面21aを有する。
【0020】
オイルクーラ20は、一対のフロントサイドメンバー11間で左方のフロントサイドメンバー11の下方でこれに近接するように、ラジエータ15の一側部の後面に配置されている。また、オイルクーラ20は、その空気取り入れ面21aを左方のフロントサイドメンバー11に向けて、すなわち車両10の左側方へ向けかつ空気取り入れ面21aが車両10の前後方向に沿って配置されている。図示の例では、空気取り入れ面21aがラジエータ15の空気取り入れ面17aとほぼ直角をなす。
【0021】
オイルクーラ20の空気取り入れ面21aには、給気ダクト22が設けられている。給気ダクト22は、オイルクーラ20の空気取り入れ面21aから車両前方へ向けて伸び、フロントバンパーフェイシャ13に形成された補助空気取入口13bに開放する。また、オイルクーラ20の後面21bには車両10の内方へ開放する空気排気口23aを規定する排気枠23が設けられており、排気枠23には、空気排気口23aを開閉するための逆止弁24が設けられている。
【0022】
逆止弁24は、弾性を有する板状の弁部材24aと、該弁部材を排気枠23に固定する固定ピン24bとを有し、該固定ピンは、弁部材24aの車両の前方側に位置する一側を排気枠23に固定する。弁部材24aは、その弾性により、図1に実線で示すように空気排気口23aを閉鎖する位置に保持される。この弁部材24aは、給気ダクト22を経て空気取り入れ面21aから取り入れられる空気流の風圧が弁部材24aの弾性に打ち勝つと、この風圧によって図1に破線で示す開放位置へ押し開かれる。弁部材24aは、この開放姿勢で、オイルクーラ20を通過した空気流を空気排気口23aから車両10の後方側に位置するエンジンルーム12に向けて案内する作用をなす。また、弁部材24aは、冷却ファン18の作動による風圧またはエンジンルーム12からの風圧により空気排気口23aを閉鎖する閉鎖位置に作動されることから、空気排気口23aから空気取り入れ面21aへ向けての空気流の逆流を防止する。
【0023】
ラジエータ15の後方側部で空気取り入れ面21aを車両10の前後方向に沿って配置されたオイルクーラ20は、従来よく知られているように、図示しない自動変速機からのATオイルを受け、このATオイルを冷却する。オイルクーラ20が受けるATオイルは約120℃に達するが、このATオイルはオイルクーラ20で冷却され、前記自動変速機に戻される。
【0024】
本発明に係る前記車両10では、ラジエータ15に供給される冷却水温度よりも高温のATオイルが供給されるオイルクーラ20は、ラジエータ15の後方側部で、その空気取り入れ面21aを車両10の外側へ向けて配置されており、オイルクーラ20を通過した高温の空気がラジエータ15に流れることはなく、ラジエータ15はオイルクーラ20を通過した高温の空気によってその冷却効果を損なわれることはない。
【0025】
図示の例では、ラジエータ15の前方に凝縮器19が配置されているが、この凝縮器19に供給される冷媒はオイルクーラ20に供給されるATオイルの温度程に高温ではなく、ラジエータ15に供給される冷却水温度よりも充分に低い温度であることから、凝縮器19を経た空気によってラジエータ15の大型化を必要とする程に該ラジエータの冷却効果が大きく損なわれることはない。
【0026】
また、オイルクーラ20は、その空気取り入れ面21aを車両10の外側へ向けて配置されており、図示の例では、車両10の前面のフロントバンパーフェイシャ13に開放する給気ダクト22を経て冷却空気が空気取り入れ面21aから取り入れられるので、効果的にATオイルを冷却することができる。そのため、フロントサイドメンバー11を冷却空気のダクトとして利用する必要がないので、フロントサイドメンバー11に冷却空気の導出口を設ける必要はなく、これによるフロントサイドメンバー11の強度低下が防止される。
【0027】
また、オイルクーラ20のための冷却空気は給気ダクト22を経てオイルクーラ20に案内されることから、給気ダクト22の形状あるいは配置を適宜選択することにより、該給気ダクトが開口する補助空気取入口13bをフォグランプ(図示せず)と干渉しない位置に形成することができる。
【0028】
オイルクーラ20の空気取り入れ面21aが車両10の外側へ向けて配置されていることから、この空気取り入れ面21aを車両10の外方より車両10の外気に晒すことができるので、給気ダクト22を不要とした場合であってもオイルクーラ20によるATオイルの冷却効果を得ることができる。しかしながら、オイルクーラ20の冷却効果を高める上で、図示のとおり、給気ダクト22を設けることが望ましい。
【0029】
この給気ダクト22は、前輪のタイヤハウス後方のスペースの一部を占めるが、フロントバンパーフェイシャ13とフェンダプロテクタ14との間にオイルクーラ20が配置されておらず、しかも給気ダクト22がラジエータ15の側方で車両10の前方に開放することから、この給気ダクト22によっては、オイルクーラをフロントバンパーフェイシャ13とフェンダプロテクタ14との間に配置する従来技術における程に、前記プレーンキャンバが制限を受けることはない。
【0030】
他方、前輪の前方に小型の熱交換器を配置する前記した従来技術では、ラジエータの冷却効率が低下することがないものの、フロントバンパーフェイシャーとフェンダプロテクタとの間に、熱交換器と該熱交換器から排出される冷却空気をタイヤハウスの後方に導くための導風路ダクトとを配置する必要が生じ、フロントバンパーフェイシャーの端部形状に所望の湾曲を与えようとすると、熱交換器やそのための導風路ダクトにフロントバンパーフェイシャーが干渉することがある。この干渉を防止するためにフロントバンパーフェイシャーの形態を部分的に変更する必要が生じ、そのためにフロントバンパーフェイシャーの曲げ形状(プレーンキャンバ)に制限を受ける。またフロントバンパーフェイシャーの前記熱交換器に対応した位置に該熱交換器への空気取入口が設けられるが、この空気取入口がフォグランプの取付け位置に重なると、フォグランプを搭載できなくなる。
【0031】
これに対し、本発明に係る熱交換器の配置構造によれば、前記したように、給気ダクトが開口する補助空気取入口13bをフォグランプと干渉しない位置に形成することができ、また、前記プレーンキャンバが従来技術における程に制限を受けることはない。
【0032】
また、本発明に係る熱交換器の配置では、ラジエータ15を経た空気流に加えて、この空気流と並行してオイルクーラ20を経た空気流をエンジンルーム12の向けることができるので、より多量の空気流でエンジンルーム12内を冷却することができ、効率良くエンジンルーム12の雰囲気温度を下げることができる。
【0033】
オイルクーラ20に設けられた逆止弁24は、アイドリング運転時におけるエンジンルーム12からオイルクーラ20への熱風の吹き返しを確実に防止する。この熱風が給気ダクト22を経てラジエータ15の前面に配置された凝縮器19に向けて逆流すると、該凝縮器による冷媒冷却効果が低下するが、逆止弁24の前記した熱風の吹き返し防止作用により、凝縮器19での冷媒冷却効果の低下を防止し、これによる冷房効率の低下が防止される。
【0034】
また、冷却ファン18は、アイドリングの運転時のように、主として車両10が停止しているときに作動し、ATオイル用のオイルクーラ20は車両10の走行時に被冷却流体であるATオイルの冷却を必要とする。この冷却ファン18の作動による冷却ファン18からの正圧は、前記したように、逆止弁24の弁部材24aに、該弁部材24aを空気排気口23aの閉鎖位置へ向ける力として作用することから、車両10の停止時に前記した熱風の給気ダクト22を経る逆流をより確実に防止することができる。これとは逆に、車両10の走行時には、冷却ファン18が非作動状態におかれることから、逆止弁24は確実に開放動作することにより、オイルクーラ20を経た空気流を確実にエンジンルーム12に向けて案内することができる。
【0035】
さらに、前記オイルクーラ20は、一対のサイドフレームメンバー11間に配置されていることから、このサイドフレームメンバー11間のエンジンルーム12内に配置された前記エンジンの自動変速機への配管をサイドフレームメンバー11の外側に配置した場合に比較して短くすることでき、その分、コストの低減および重量軽減を図ることができる。
【実施例2】
【0036】
図3および図4に示すように、給気ダクト22の車両中心部側に位置する一側22aに図1に示したガイド板16と同様な案内作用を担わせることができる。この場合、図4に示すように、給気ダクト22の一側22aはラジエータ15の一側に近接して配置され、またその一側22aには、ラジエータ15の一側に沿って上方に伸長する伸長部22bが一体的に形成される。これにより、一対のガイド板16のうちの一方を不要とすることができ、コストおよび重量の低減を図ることができ、また配置スペースの低減を図ることができる。
【実施例3】
【0037】
ラジエータコア15aの上下に一対のタンク15b、15cが設けられたラジエータ15に代えて、図5および図6に示すように、ラジエータコア15aの両側に一対のサイドタンク15d(図にはその一方が示されている。)を有する、いわゆるクロスフロータイプのラジエータを用いることができる。このクロスフロータイプのラジエータ15では、一側のサイドタンク15dの車両後方側に位置する後面に、オイルクーラ20を取り付けることができる。このオイルクーラ20の空気取り入れ面21aがラジエータ15の空気取り入れ面17aと直角になるように、オイルクーラ20をラジエータ15dの後面に取り付けることにより、オイルクーラ20に取り付けられる排気枠23がラジエータ15のラジエータコア15aに大きくはみ出すことを防止することができ、オイルクーラ20によるラジエータ15の通風の妨げによる冷却効率の低下への影響を最小限とすることができる。
【実施例4】
【0038】
図7に示すように、ラジエータ15の一方のサイドタンク15d内の冷却水を利用してATオイルを冷却するための水冷式ATクーラ25がこのサイドタンク15d内に収容されている場合、この一方のサイドタンク15dに固定された空冷式オイルクーラ20を水冷式ATクーラ25と連結することができる。
【0039】
水冷式ATクーラ25には、サイドタンク15dから突出する接続金具25aが設けられている。また、水冷式ATクーラ25には、サイドタンク15dから突出する接続金具25bが設けられている。空冷式オイルクーラ20は、アッパータンク20aおよびロアータンク20bを有し、アッパータンク20aには前記自動変速機に接続される接続金具20cが設けられている。
【0040】
両オイルクーラ20および25が互いに直列的に接続されるように、水冷式ATクーラ25の一方の接続金具25aおよび空冷式オイルクーラ20の接続金具20cが図示しない接続ホースを経てそれぞれ前記自動変速機に接続され、水冷式ATクーラ25の他方の接続金具25bが空冷式オイルクーラ20のロアータンク20bに接続されている。この接続のために、図8に示すように、水冷式オイルクーラ20のロアータンク20bには、接続開口20dが形成され、該接続開口には円形シール部材26が装着されている。水冷式ATクーラ25の他方の接続金具25bは円形シール部材26を貫通して挿入されており、これにより両クーラ20および25は、円形シール部材26を介して気密的に直結されている。
【0041】
両オイルクーラ20および25間を図示しない中継ホースを介して相互に直列接続することができるが、前記したように、両オイルクーラ20および25を接続金具25bで直結することにより、中継ホースを廃止することができ、これによるコストの削減および重量の低減を図ることができる。
【実施例5】
【0042】
また、図9に示すように、給気ダクト22が設けられた空冷式オイルクーラ20およびラジエータ15を保持する支持部材27で、これらラジエータ15およびオイルクーラ20をフロントエンドモジュール28として予め一体化しておくことができる。これにより給気ダクト22を有するオイルクーラ20を単体で車両10に搭載する必要はなく、フロントエンドモジュール28を車両10に搭載した後、必要な配管のための接続作業の完了によってラジエータ15およびオイルクーラ20の車両10への搭載作業が終了することから、作業時間の短縮化および作業性能の向上を図ることができる。
【0043】
前記したところでは、ラジエータ15の後方側部で空気取り入れ面21aが車両10の前後方向に沿って配置される熱交換器として、ATオイルクーラ20を示し、このATオイルクーラ20の例に沿って説明したが、ATオイルクーラから成る熱交換器に代えて、ラジエータ15に供給される冷却水温度よりも高温の被冷却流体であるPSオイルを冷却するオイルクーラあるいはラジエータ15に供給される冷却水温度よりも高温の被冷却流体である高温給気を冷却するインタクーラのような熱交換器をラジエータの後方側部でそれらの空気取り入れ面を車両の前後方向に沿って配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る熱交換器の配置についての第1の実施例を概略的に示す平面図である。
【図2】図1に示した第1の実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る熱交換器の配置についての第2の実施例を概略的に示す平面図である。
【図4】図3に示した第2の実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る熱交換器の配置についての第3の実施例を概略的に示す平面図である。
【図6】図5に示した第3の実施例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る熱交換器の配置についてのモジュール化された第4の実施例を概略的に示す斜視図である。
【図8】本発明に係る熱交換器の配置についての第5の実施例を概略的に示す側面図である。
【図9】図8に示した水冷式ATオイルクーラと空冷式ATオイルクーラとの接続部を拡大して示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 車両
12 エンジンルーム
15 ラジエータ
15d サイドタンク
17a ラジエータの空気取り入れ面
18 冷却ファン
20 空冷式オイルクーラ(熱交換器)
21a オイルクーラの空気取り入れ面
22 給気ダクト
23a オイルクーラの空気排気口
24 逆止弁
25 水冷式ATオイルクーラ
27 支持部材
28 フロントエンドモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンを冷却する冷却媒体の冷却のために該冷却媒体が供給され、該冷却媒体の冷却のための空気取り入れ面を前記車両の前方へ向けて該車両に搭載されるラジエータと、該ラジエータに供給される前記冷却媒体の温度よりも高い温度の被冷却流体が供給され、該被冷却流体の冷却のための空気取り入れ面を有する熱交換器とを備え、該熱交換器は、その前記空気取り入れ面を前記車両の前後方向に沿わせて前記ラジエータの後方側部に配置されていることを特徴とする車両用熱交換器の配置構造。
【請求項2】
前記熱交換器は、その前記空気取り入れ面が前記ラジエータの前記空気取り入れ面よりも小さい小型の熱交換器である請求項1に記載の車両用熱交換器の配置構造。
【請求項3】
前記熱交換器は、その前記空気取り入れ面が前記ラジエータの前記空気取り入れ面に関してほぼ直角に配置されている請求項1または2に記載の車両用熱交換器の配置構造。
【請求項4】
前記熱交換器は、その前記空気取り入れ面を前記車両の両側面のうちの前記熱交換器に近接する一方の側面へ向けて配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用熱交換器の配置構造。
【請求項5】
前記ラジエータは前記車両の前部に設けられ、前記熱交換器は前記車両の前部かつフロントサイドメンバーの下方に設けられ、前記熱交換器には、前記ラジエータの側方で前記車両の前部に空気取入口が開放する給気ダクトが設けられ、該給気ダクトを経て前記熱交換器に冷却空気が案内される請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用熱交換器の配置構造。
【請求項6】
前記熱交換器を経た冷却空気は該熱交換器に設けられた排気口から前記車両のエンジンルームに向けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用熱交換器の配置構造。
【請求項7】
前記排気口には、空気の逆流を防止する逆止弁が設けられている請求項6に記載の車両用熱交換器の配置構造。
【請求項8】
前記ラジエータは該ラジエータの前記空気取り入れ面を経る空気の取り入れを促進するための冷却ファンをその後面側に有し、該冷却ファンの後方に前記熱交換器の前記排気口が開口する請求項7に記載の車両用熱交換器の配置構造。
【請求項9】
前記吸気ダクトの壁面の一部を前記ラジエータへの空気案内壁として利用したことを特徴とする請求項5に記載の車両用熱交換器の配置構造。
【請求項10】
前記ラジエータはそのラジエータコアの両側に冷却水を保留するための一対のサイドタンクを有し、該両サイドタンクの少なくとも一方のサイドタンクの後面に前記熱交換器が取り付けられている請求項1乃至9のいずれか一項に記載の車両用熱交換器の配置構造。
【請求項11】
前記ラジエータの前記一方のサイドタンクには自動変速機用オイルを冷却するための水冷式オイルクーラが設けられており、前記熱交換器は自動変速機用オイルを冷却するための空冷式オイルクーラであり、該空冷式オイルクーラは前記水冷式オイルクーラに接続されている請求項10に記載の車両用熱交換器の配置構造。
【請求項12】
前記ラジエータおよび前記熱交換器は支持部材に取り付けられてモジュール化されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の車両用熱交換器の配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−123579(P2006−123579A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310676(P2004−310676)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】