説明

車両用発電制御装置

【課題】大容量のコンデンサ(キャパシタ)等を備えることなく、低コストの構成で車両のバッテリの急放電によるバッテリ寿命の低下を防止する。
【解決手段】制御処理部12の判断部12cにより、バッテリ5の所定時間内の放電量が所定の許容値を超えたか否かを判断し、前記放電量が所定の許容値を超えたと判断された場合に、制御指令部12dにより、オルタネータ10の発電制御を開始してバッテリ5を充電し、電装品の使用開始等によってバッテリ5の急放電が発生したときにオルタネータ10の発電出力によりバッテリ5を充電し、大容量のコンデンサ(キャパシタ)等を備えることなく、低コストの構成でバッテリ寿命の低下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の駆動源により駆動される発電機を制御する車両用発電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばエンジンを駆動源とするアイドルストップ車等の車両(自動車)は、エンジンにベルトを介してオルタネータ(本発明の発電機に対応)が繋がれ、イグニッションキー(以下、IGキーという)のオンによりエンジンがスタートすると、オルタネータは、IGオフ等でエンジンが停止するまで発電可能な状態に維持され、エンジンが回転すると、オルタネータが発電して発電出力が生じる。
【0003】
また、車両が備えるバッテリ(例えば12Vの鉛蓄電池)の蓄積エネルギおよび、前記オルタネータの発電出力は、車両の電装品(ヘッドランプ等のランプ類やエアコン、オーディオ機器等)等の電気負荷に給電される。
【0004】
さらに、前記バッテリは、充電電流(流入電流)と放電電流(流出電流)の積算により、充電容量に対する充電残量の比率を示すSOC(state of charge)が監視(モニタ)され、SOCがしきい値以下に小さくなってSOC低下が検出されると、オルタネータの発電出力で充電されるようになっているが、例えば電装品の使用により電力消費が急増したりしてバッテリの急放電が発生すると、その急放電がSOC低下を検出しない程度の放電であっても、そのような急放電のくり返しでバッテリ寿命は短くなる。
【0005】
そして、バッテリとして容量の大きな鉛バッテリを搭載している車両の場合は、前記の急放電のバッテリ寿命に対する影響は小さいが、容量の大きなバッテリを採用することが困難な軽自動車等の車両の場合は、急放電のバッテリ寿命に対する影響は大きい。
【0006】
一方、車両にバッテリとともに大容量のコンデンサ(キャパシタ)を備え、車両減速時(ブレーキ時)に発生する一時的な大きな回生エネルギをオルタネータにより電気エネルギに変換して前記コンデンサに回収し、電気負荷が必要とする電力をバッテリとコンデンサとで分担し、回生エネルギを有効に利用してバッテリの急放電によるバッテリ寿命の低下(劣化)を防止することが提案されている(例えば、特許文献1(要約書、段落[0007]−[0016]、図1等)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−113407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アイドルストップ車等の車両において、燃費の一層の向上を図るため、極力、車両走行中にもオルタネータの発電を完全に止めることが考えられるが、この場合は、車両の電装品の使用状況等によって、バッテリの急放電が発生する可能性が高くなる。
【0009】
そして、特許文献1に記載のように車両にバッテリとともに大容量のコンデンサ(キャパシタ)を備えてバッテリの急放電を防止しようとすれば、コンデンサを備える分、車両コストが増大する。
【0010】
本発明は、大容量のコンデンサ(キャパシタ)等を備えることなく、低コストの構成で車両のバッテリの急放電によるバッテリ寿命の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明の車両用発電制御装置は、車両の駆動源により駆動されて該車両のバッテリを充電するとともに電装品に給電する発電機を制御する車両用発電制御装置であって、前記バッテリの所定時間内の放電量が所定の許容値を超えたか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記放電量が前記所定の許容値を超えたと判断された場合に前記発電機の発電制御を開始して前記バッテリを充電する制御手段とを備えたことを特徴としている(請求項1)。
【0012】
そして、前記制御手段は、前記発電機の発電制御を開始した後、前記所定時間の放電量が前記所定の許容値以下の所定の解除値を超えなくなった場合に、前記発電機の発電制御を終了することが好ましい(請求項2)。
【0013】
さらに、前記制御手段は、前記判断手段により前記放電量が前記所定の許容値を超えたと判断された場合に、前記所定時間が経過したときの前記バッテリの放電量の前記所定の許容値からの超過量に応じて、前記判断手段により前記放電量が前記所定の許容値を超えたと判断されやすくする補正手段を備えることがさらに好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の本発明によれば、バッテリの所定時間内の放電量がバッテリの急放電等によって所定の許容値を超えるようになると、判断手段の所定の許容値を超えたとの判断に基づき、制御手段が発電機(オルタネータ)の発電制御を開始してバッテリを充電する。
【0015】
したがって、燃費の向上を図るため、車両の走行中等に発電機を完全に止めるようにした場合でも、電装品の使用開始等によってバッテリの急放電が発生し、バッテリの所定時間内の放電量が所定の許容値を超えるようになると、自動的に発電機が発電に制御されてバッテリの充電を直ちに開始することができ、バッテリの蓄積エネルギ(残存エネルギ)の急激な持ち出しが防止されて急放電によるバッテリ劣化を防止できる。そのため、大容量のコンデンサ(キャパシタ)等を備えることなく、低コストの構成で急放電によるバッテリ寿命の低下を防止することができ、とくに容量の大きなバッテリを採用することが困難な軽自動車等の車両のバッテリ寿命の低下(劣化)防止に本発明は好適である。
【0016】
請求項2に記載の本発明によれば、発電機の発電制御が開始された後、バッテリの所定時間内の放電量が減少して所定の解除値を超えなくなり、急放電のおそれがなくなると、制御手段が発電機の発電制御を自動的に終了するので、発電機による電力消費が一層減少し、バッテリ劣化を防止しつつ燃費をさらに向上させることができる。
【0017】
請求項3に記載の本発明によれば、急放電等によってバッテリの放電量が所定の許容値を超えるタイミングが早まる程、所定時間が経過したときのバッテリの放電量の前記所定の許容値に対する超過量が多くなり、この超過量に応じて、補正手段により前記判断手段が所定の許容値を超えたと判断しやすくするので、バッテリの放電が大きい程充電が長く継続されてバッテリ劣化を一層確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の車両用発電制御装置の一実施形態のブロック図である。
【図2】図1の放電積算量の時間変化例の説明図である。
【図3】図1の動作説明用のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、本発明の一実施形態について、図1〜図3を参照して詳述する。
【0020】
図1はアイドルストップ車1に適用した本発明の車両用発電制御装置の一例のブロック図を示す。アイドルストップ車1は例えば軽自動車であって、駆動源としてエンジン2が搭載され、エンジン2のトランスミッション側にはCVT3が配置され、エンジン2とのCVT3との間にトルクコンバータ(ロックアップクラッチの機構を含む)4が介在する。
【0021】
また、アイドルストップ車1は、軽量化、小型化等を図るため、車載電源として例えば12Vの比較的小容量の1個の鉛バッテリからなる車載のバッテリ(本発明のバッテリ)5を備える。
【0022】
バッテリ5の正極(+)端子はアイドルストップ車1の電気負荷6への給電線7に接続され、電気負荷6とバッテリ5の負極(−)端子との間には電流センサ8が設けられている。電気負荷6はアイドルストップ車1の各種電装品(ヘッドランプ等のランプ類やエアコン、オーディオ機器等)や各種制御のECU等を代表して示したものである。電流センサ8はバッテリ5を出入りする充電電流(流入電流)と放電電流(流出電流)と区別して検出する。
【0023】
9はエンジン2を始動するスタータ、10はエンジン2の回転力がベルト11を介して伝達されるオルタネータ(本発明の発電機)であり、周知のオルタネータと同様、3相ステータコイル、フィールドコイル(ロータコイル)、電圧調整器、整流器等を備え、本実施形態においては、燃費の向上を図るため、極力、車両走行中にもフィールドコイルの通電が停止されて発電が完全に止められ、後述する発電指令が入力される間だけフィールドコイルが通電されて発電し、発電出力(直流)を給電線7を介して電気負荷8およびバッテリ5に給電する。
【0024】
12はオルタネータ10の制御ECUが形成する制御処理部であり、マイクロコンピュータのソフトウェア処理(設定された制御処理プログラムの実行)により、SOC監視部12a、放電積算量算出部12b、判断部(本発明の判断手段を形成する)12c、制御指令部12d、補正部(本発明の補正手段を形成する)12eおよび、走行状態判定部12fを形成する。なお、制御指令部12dおよび補正部12eが本発明の補正手段を形成する。
【0025】
SOC監視部12aは、電流センサ8の充電電流(流入電流)と放電電流(流出電流)を積算し、バッテリ5の充電容量に対する充電残量の時々刻々の比率(SOC)を算出して監視し、SOCが所定の充電要求しきい値より低下した時点で充電要求フラグを立て(セットし)、SOCが充電要求しきい値より高い所定の解除要求しきい値に上昇した時点で充電要求フラグをリセットする。
【0026】
放電積算量算出部12bは、(1)IGオンからIGオフまでの間、内蔵の時間カウンタ(図示せず)により、バッテリ5の充放電特性および充電容量等に基づいて設定された所定時間(例えば15分間)Tをくり返し計時する。(2)前記時間カウンタで計時される毎所定時間Tに電流センサ8の放電電流を積算してバッテリ5の所定時間Tの放電積算量(放電量)をくり返し算出する。すなわち、本実施形態では、前記所定時間内の放電量を放電電流の積算で得るようにしている。
【0027】
判断部12cは、(1)放電積算量算出部12bが所定時間Tに算出する時々刻々の放電積算量と、バッテリ5の充放電特性および充電容量等に基づいて設定された所定の許容値(急放電検出のしきい値)Wa[A・s]とを比較し、所定時間T内の放電積算量が許容値Waを超えたか否かを判断し、例えば超えた時点で充電要求フラグを立てる。(2)充電要求フラグが発生して制御指令部10によりオルタネータ10の発電制御が開始された後、所定時間Tの時々刻々の放電積算量と、許容値Wa以下に設定された所定の解除値Wb[A・s]を比較し、所定時間Tの放電積算量が解除値Wbを超えなくなったか否か、換言すれば、所定時間Tの放電積算量が解除値Wbより小さくなったか否かを判断し、所定時間Tの放電積算量が解除値Wbより小さくなった時点で充電要求フラグをリセットして充電解除要求フラグを立てる。なお、本実施形態の場合、解除値Wbは許容値Waより所定値以上小さい値に設定され、制御の安定性が図られる。また、充電要求フラグ、充電解除要求フラグは、直ちに制御指令部12dに送ってもよいが、本実施形態の場合、所定時間Tが経過したときに制御指令部12dに送る。
【0028】
制御指令部12dは、(1)SOC監視部12a、判断部12c、走行状態判定部12fのいずれかから充電要求フラグが入力されると、オルタネータ10に発電指令を出力してオルタネータ10を発電出力が得られる発電状態に制御する。具体的には、バッテリ5が急放電して判断部12cにより放電積算量が許容値Waを超えたと判断された場合には判断部12cの充電要求フラグによりオルタネータ10のフィールドコイルを通電し、オルタネータ10の発電制御を開始してバッテリ5を充電する。また、バッテリ5が放電してSOC監視部12aによりバッテリ5のSOC低下が検出された場合にはSOC監視部12aの充電要求フラグにより前記フィールドコイルを通電し、オルタネータ10の発電制御を開始してバッテリ5を充電する。さらに、アイドルストップ車1のブレーキ時(回生時)には走行状態監視部12fの充電要求フラグにより前記フィールドコイルを通電し、オルタネータ10の発電制御を開始してバッテリ5を充電する。なお、アイドルストップ車1の通常の走行中はいずれの充電要求フラグも制御指令部12dに入力されないのでオルタネータ10は発電制御されず、オルタネータ10はエンジン2に繋がった状態で発電を完全に停止する。(2)SOC監視部12a、走行状態判定部12fの充電要求フラグのリセットや判断部12cの充電解除要求フラグの入力により、オルタネータ10に出力していた発電指令をオフし、前記フィールドコイルの通電をオフしてオルタネータ10の発電を停止する。
【0029】
補正部12eは、判断部12cにより放電積算量が許容値Waを超えたと判断されて充電要求フラグがセットされた場合に、所定時間Tが経過したときのバッテリ5の放電積算量の許容値Waからの超過量ΔW(=W−Wa、Wは今回の所定時間Tのバッテリ5の放電積算量)に応じて、次回の所定時間Tのバッテリ5の放電積算量を超過量ΔW嵩上げするか、許容値Waを超過量ΔW小さくし、判断部12cにより放電積算量が許容値Waを超えたと判断されやすくする。なお、本実施形態の場合、補正部12eは、次回の所定時間Tのバッテリ5の放電積算量を超過量ΔW嵩上げして判断部12cにより放電積算量が許容値Waを超えたと判断されやすくする。
【0030】
走行状態判定部12fは、例えばエンジンECUやブレーキECU等の他の制御ECUからの走行状態の情報に基づき、アイドルストップ車1のブレーキ(エンジンブレーキ)を検出し、アイドルストップ車1の走行中のブレーキ時(回生時)に充電要求フラグがセットされる。
【0031】
したがって、バッテリ5の放電が少ないアイドルストップ車1の通常の走行時等には、充電要求フラグが発生しな限り、走行中は勿論、アイドルストップ中にも、オルタネータ10が完全に止められ、その間はバッテリ5から電気負荷6に給電され、オルタネータ10での電力消費が防止されて燃費が向上する。
【0032】
つぎに、アイドルストップ車1のブレーキ時には、走行状態監視部12fの充電要求フラグが発生し、エンジン2の大きな回生エネルギでオルタネータ10が発電し、その発電出力でバッテリ5が充電される。そのため、回生エネルギを無駄なく有効に利用してバッテリ5の充電が行なわれる。
【0033】
つぎに、バッテリ5が次第に放電して充電が必要なSOC低下が発生すると、SOC監視部12aの充電要求フラグが発生してオルタネータ10が発電し、その発電出力でバッテリ5が充電される。なお、このSOC低下に基づく充電は、従来のSOC低下に基づく充電と同様である。
【0034】
つぎに、IGオンからIGオフまでの間にアイドルストップ後のエンジン再始動のくり返しや大電力の電装品の使用によってバッテリ5が急放電すると、SOC低下が発生しなくても、放電積算量算出部12bの比較的短い所定時間Tの放電積算量の算出結果に基づき、判断部12cが所定時間T内に放電積算量が許容値Waを超えることにより、判断部12cが充電要求フラグを立てる。この充電要求フラグに基づき、制御指令部12dによりオルタネータ10が発電制御され、オルタネータ10の発電出力で電気負荷6に給電するとともにバッテリ5が充電される。そのため、急放電によるバッテリ寿命の低下(劣化)が防止される。
【0035】
ところで、放電積算量が許容値Waを超えるタイミングは急放電の状態によって変化し、放電電流が多い程、短い時間で放電積算量が許容値Waを超えるので、このような場合には充電をより長く継続することが望ましい。
【0036】
そこで、本実施形態の場合、補正部12eにより、超過量ΔWに応じて次回の所定時間Tのバッテリ5の放電積算量を超過量ΔW嵩上げして放電積算量が許容値Waを超えたと判断されやすくして充電が継続されやすくする。
【0037】
図2は所定時間Tの放電積算量の変化の一例を示し、t0〜t1の所定時間Tには放電積算量が実線aに示すように時間とともに0から直線的に増加するが、t1時になっても許容値Waより小さいので、次のt1〜t2の所定時間Tにも放電積算量が実線bに示すように0から時間とともに直線的に増加する。
【0038】
そして、t1〜t2の時間T内でバッテリ5の急放電が発生して、t2時前のt21時に放電積算量が許容値Waを超えると、t2時からオルタネータ10が発電制御されてバッテリ5が充電される。また、t21〜t2の間の超過量ΔWで次のt2〜t3の所定時間Tの放電積算量が嵩上げされ、t2〜t3の所定時間Tの放電積算量は実線cに示すように時間とともに超過量ΔWから直線的に増加して上昇する。
【0039】
ところで、図2の場合、t2時以降にはバッテリ5の放電が少なくなり、仮にt2〜t3の所定時間Tの放電積算量が0から変化するとすれば、t3時には放電積算量が解除値Wbを下回り、バッテリ5の充電がt3時で終了する可能性が高いが、超過量ΔWの嵩上げにより、t3時の放電積算量が、許容値Waより小さいが、解除値Wbより大きくなる。この場合、充電要求は維持され、次のt3〜t4にもバッテリ5の充電が継続される。
【0040】
なお、t3時の放電積算量は許容値Waより小さくなるので、次のt3〜t4の所定時間Tの放電積算量は、超過量ΔWの嵩上げがなく、実線dに示すように時間とともに0から直線的に増加する。このとき、バッテリ5の放電が少なく、t4時の放電積算量が解除値Wbを下回ると、充電要求フラグがリセットされて充電解除要求フラグが発生し、t4時はオルタネータ10の発電制御が終了してバッテリ5の充電が終了する。
【0041】
図3はバッテリ5の急放電に対する制御処理部12の一層具体的な処理手順例を示し、IGオンにより図3の処理が開始されると、放電積算量算出部12bは、時間カウンタを0に初期リセットする(ステップS1)。また、電流センサ8の検出からバッテリ5の電流を監視する(ステップS2)。
【0042】
そして、バッテリ5の電流方向からバッテリ5が放電しているか否かを判断し(ステップS3)、通常の走行時等でバッテリ5が放電していなければ(ステップS3のNO)、現在の放電積算量(n)を直前の放電積算量(n−1)とする(ステップS4)。なお、積算の時間間隔はこの処理の周期の間隔であって極めて短い。また、スタート時は直前の放電積算量(n−1)が0であるので、現在の放電積算量(n)も0に維持される。
【0043】
つぎに、時間カウンタが所定時間Tを計時したか否かを判定するが(ステップS5)、バッテリ5が放電状態になるまでは、時間カウンタは0であり、ステップS5をNOで通過してステップS2にもどり、ステップS2から処理をくり返す。
【0044】
そして、バッテリ5の放電が発生すると、バッテリ5が放電しているので、ステップS3をYESで通過し、このとき、時間カウンタの計時を開始し、さらに、現在の放電積算量(n)を、直前の放電積算量(n−1)に電流センサ8が検出した放電電流を加算した値にして放電電流を積算する(ステップS6)。
【0045】
この積算をくり返して時間カウンタが所定時間Tを計時すると、ステップS5をYESで通過し、判断部12cにより、所定時間Tの放電積算量である現在の放電積算量(n)が解除値Wb以上か否かを判断し(ステップS7)、放電積算量(n)が解除値Wb以上であれば、ステップS7をYESで通過し、さらに、判断部12cにより、現在の放電積算量(n)が許容値Wa以上か否かを判断する(ステップS8)。
【0046】
ここで、バッテリ5の放電量が少なく、所定時間T経過しても放電積算量が許容値Waに達しなければ、この処理ではバッテリ5の充電要求を行なわないので、ステップS8をNOで通過し、放電積算量(n)を0にリセットしてステップS1に戻る(ステップS9)。なお、放電積算量(n−1)もリセットする。
【0047】
一方、バッテリ5の急放電が発生してバッテリ5の放電量が多く、放電積算量が許容値Waに達した時点でバッテリ5の充電要求フラグがセットされた場合は、所定時間Tが経過したときに、放電積算量が許容値Wa以上であるので、ステップS8をYESで通過し、充電要求フラグを制御指令部12dに送り、オルタネータ10を発電制御してバッテリ5を充電する(ステップS10)。さらに、次回のバッテリ5の放電積算量に超過量ΔWを嵩上げするため、次回の初期放電積算量(n−1)を放電積算量(n)として、この放電積算量(n)を、現在の放電積算量(n−1)から許容値Waを減算して求めた超過量ΔWに設定し(ステップS11)、ステップS1に戻って次回の処理に移る。
【0048】
このようにして、急放電が発生したバッテリ5を充電し、その間に、所定時間Tの放電積算量である現在の放電積算量(n)が解除値を下回るようになると、ステップS7をNOで通過し、判断部12cにより充電要求フラグをリセットして充電解除要求フラグをセットし、充電解除要求フラグを制御指令部12dに送り、オルタネータ10の発電制御を終了してしてバッテリ5の充電を終了する(ステップS12)。この場合、ステップS12からステップS8をNOで通過し、ステップS9で放電積算量(n)を0にリセットしてステップS1に戻る。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の場合、バッテリ5の所定時間T内の放電電流の積算で得られた放電積算量がバッテリ5の急放電等によって許容値Waを超えると、制御処理部12の判断部12cの許容値Waを超えたとの判断に基づき、制御指令部12dがオルタネータ10の発電制御を開始してバッテリ5を充電するため、アイドルストップ車1の走行中等にオルタネータ10を完全に止めて燃費の向上を図るようにした場合でも、電装品の使用開始等によってバッテリ5の急放電が発生し、バッテリ5の所定時間T内の放電積算量が許容値Waを超えると、自動的にオルタネータ10が発電に制御されてバッテリ5の充電を直ちに開始することができ、バッテリ5の蓄積エネルギ(残存エネルギ)の急激な持ち出しが防止されて急放電によるバッテリ劣化を防止できる。
【0050】
したがって、大容量のコンデンサ(キャパシタ)等を備えることなく、低コストの構成で急放電によるバッテリ寿命の低下を防止することができ、とくに、アイドルストップ車1が容量の大きなバッテリを採用することが困難な軽自動車等の場合に、そのバッテリ5のバッテリ寿命の低下(劣化)を防止することができる。
【0051】
また、オルタネータ10の発電制御が開始された後、バッテリ5の所定時間T内の放電積算量が減少して解除値Wbを超えなくなり、急放電のおそれがなくなると、判断部12cの充電解除要求に基づき、制御指令部12dがオルタネータ10の発電制御を自動的に終了するので、オルタネータ10による電力消費が一層減少し、バッテリ劣化を防止しつつアイドルストップ車1の燃費をさらに向上させることができる。
【0052】
さらに、急放電等によってバッテリ5の放電積算量が許容値Waを超えるタイミングが早まる程、所定時間Tが経過したときのバッテリ5の放電積算量の許容値Waに対する超過量ΔWが多くなり、この超過量ΔWに応じて、補正部12eにより放電積算量算出部12aの放電積算量を嵩上げして判断部12cが許容値Waを超えたと判断しやすくするので、バッテリ5の放電が大きい程充電が長く継続されてバッテリ劣化を一層確実に防止することができる利点もある。
【0053】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、前記実施形態においては、補正部12eにより放電積算量算出部12aの放電積算量を嵩上げして判断部12cが許容値Waを超えたと判断しやすくしたが、補正部12eにより許容値Waを超過量ΔWに応じて小さくし、判断部12cが許容値Waを超えたと判断しやすくするようにしてもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、バッテリ5の所定時間T内の放電電流の積算で得られた放電積算量がバッテリ5の急放電等によって許容値Waを超えたときに、所定時間Tの経過を待ってオルタネータ10を発電制御してバッテリ5の充電を開始するようにしたが、前記放電積算量が許容値Waを超えたタイミングで直ちにオルタネータ10を発電制御してバッテリ5の充電を開始するようにしてもよく、この場合、所定時間Tは放電積算量が許容値Waを超えたタイミングに応じて変化する時間であってよい。
【0055】
さらに、本発明の発電機はオルタネータ10に限るものではなく、車両の種々の構造の発電機であってよいのは勿論であり、また、本発明の駆動源はエンジンに限るものではなく、モータ等であってもよい。
【0056】
つぎに、前記実施形態では、燃費の向上を図るため、走行中等にはオルタネータ10の発電を極力止める場合に適用したが、本発明は、従来と同様に走行中等にオルタネータ10の発電を止めることがなく、SOC低下の検出によりバッテリ5を充電する場合にも適用することができる。この場合も、SOC低下の検出に至らないバッテリ5の急放電に基づくバッテリ寿命劣化を防止することができる。
【0057】
つぎに、制御処理部12の構成や処理手順が図1、図3と異なっていてもよいのは勿論である。
【0058】
また、図1のSOC監視部12aや走行状態判定部12fは必要に応じて設ければよく、充電率に基づくバッテリ5の充電を行なわない場合は、SOC監視部12aを省くことができる。また、ブレーキ時の回生エネルギによるバッテリ5の充電を行なわない場合は、走行状態判定部12fを省くことができる。
【0059】
そして、本発明は、アイドルストップ車1だけでなく、種々の駆動源により発電機を駆動する種々の車両の車両用発電制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 アイドルストップ車
2 エンジン
5 バッテリ
6 電気負荷
8 電流センサ
10 オルタネータ
12 制御処理部
12c 判断部
12d 制御指令部
12e 補正部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源により駆動されて該車両のバッテリを充電するとともに電装品に給電する発電機を制御する車両用発電制御装置であって、
前記バッテリの所定時間内の放電量が所定の許容値を超えたか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記放電量が前記所定の許容値を超えたと判断された場合に前記発電機の発電制御を開始して前記バッテリを充電する制御手段とを備えたことを特徴とする車両用発電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用発電制御装置において、
前記制御手段は、前記発電機の発電制御を開始した後、前記所定時間の放電量が前記所定の許容値以下の所定の解除値を超えなくなった場合に、前記発電機の発電制御を終了することを特徴とする車両用発電制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用発電制御装置において、
前記制御手段は、前記判断手段により前記放電量が前記所定の許容値を超えたと判断された場合に、前記所定時間が経過したときの前記バッテリの放電量の前記所定の許容値からの超過量に応じて、前記判断手段により前記放電量が前記所定の許容値を超えたと判断されやすくする補正手段を備えることを特徴とする車両用発電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−210016(P2012−210016A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72456(P2011−72456)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】