説明

車両用空気質成分供給装置

【課題】装置の小型化を図るとともに、供給する空気質成分の高濃度化を図ることができる車両用空気質成分供給装置を提供すること。
【解決手段】筐体110内に空気質成分チャンバ130と循環経路140とに分割する隔壁120を設け、循環経路140に空気質成分発生手段160を配置する。隔壁120には、吸入口170及び吐出口180を形成し、吸入口170の近傍に循環ファン190を配置する。循環ファン190を作動させることにより、筐体110内の空気を空気質成分チャンバ130と循環経路140との間で循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気質成分を所定の領域に供給する車両用空気質成分供給装置に関し、特に、装置の小型化及び供給する空気質成分の高濃度化を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の空気質成分を保持した空気砲を放出することでこの空気質成分を所定の領域に供給する装置として、例えば、特許文献1に記載されているものが知られている。これは、芳香ユニット内の芳香成分を注入ダクトを介してケース内に供給し、ケース内に設けられた圧縮手段を作動させることで、ケース内に溜められた芳香成分を保持する空気を圧縮し、放出口から空気砲を放出する構成である。
【特許文献1】特開2004−298607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来装置では、芳香ユニットからケース内に芳香成分を供給する際には、芳香ユニット内に外気を導入し、この外気に芳香成分を含有させてケース内に供給するようにしている。従って、外気に含有される芳香成分の濃度がケース内の芳香成分の濃度とされるため、ケース内の芳香成分の濃度を高濃度化することが困難であった。従って、高濃度の芳香成分を車内に供給したい場合には所望の濃度の芳香成分を供給することができない。
【0004】
また、芳香ユニットとケースとが別ユニットで構成されているために装置全体として大型化するという問題もある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、装置の小型化を図るとともに、供給する空気質成分の高濃度化を図ることができる車両用空気質成分供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、外観を構成する筐体部と、筐体部に収容され、空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、筐体部に形成され、空気質成分チャンバから空気砲を放出する放出部と、空気質成分チャンバに保持された空気質成分を圧縮し、放出部から空気砲を放出させる圧縮手段と、筐体部に空気質成分チャンバと共に一括収容されるとともに、空気質成分を発生する空気質成分発生手段と、筐体部内の空気を空気質成分チャンバと空気質成分発生手段との間で循環させる循環手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明では、循環手段にて筐体部内の空気を、この空気質成分チャンバと空気質成分発生手段との間で循環させるようにした。即ち、筐体部内の空気を、当該空気質成分チャンバと空気質成分発生手段との間で内気循環させるようにした。この内気循環が発生している状態では、空気質成分チャンバを流出した空気に空気質成分発生手段で発生した空気質成分が加えられて再び空気質成分チャンバ内に戻されることとなる。従って、空気質成分発生手段を介して空気質成分チャンバに流入する空気の空気質成分濃度は空気質成分チャンバを流出する空気の空気質成分濃度よりも高濃度となる。このため、筐体内の空気を循環させることでこの空気質成分チャンバ内の空気質成分濃度を高濃度化することができる。
【0008】
また、空気質成分チャンバと空気質成分発生手段とを筐体部内に一括収容しているため、筐体部内の空気を循環させるために必要となるの循環手段の取り回しが簡素化され、装置の小型化を図ることができる。
【0009】
請求項2の発明では、循環手段は、筐体部内に収容され、空気質成分発生手段が配置される循環経路と、筐体部内を循環経路と空気質成分チャンバとに分割する隔壁と、隔壁に形成され、空気質成分チャンバ内の空気を循環経路内に吸入する吸入部と、隔壁に形成され、循環経路内の空気を空気質成分チャンバに吐き出す吐出部と、空気質成分チャンバ内の空気を吸入部から循環経路内に吸入させるとともに、循環経路内の空気を吐出部から空気質成分チャンバに吐き出させる循環ファンと、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明によれば、隔壁によって筐体部内を空気質成分チャンバと循環経路とに分割する構成としているため、空気を循環させるための構成を簡素化することができる。また、循環ファンを用いて筐体部内の空気を空気質成分チャンバと循環経路との間で循環させるようにしているため、筐体部内の空気を効率よく循環させることができる。
【0011】
請求項3の発明では、循環ファンは、吐出部よりも吸入部に近い位置に配置されていることを特徴としている。このようにすれば、空気質成分チャンバ内の空気が循環経路内に流入し易くなるため、空気質成分チャンバ内の空気質成分濃度を一層高濃度化することができる。
【0012】
請求項4の発明では、吸入部は、吐出部に対して相対的に放出部に近い位置に配置されていることを特徴としている。このようにすれば、空気質成分チャンバ内の空気質成分が放出部から漏出することが防止されるため、空気質成分チャンバ内の空気質成分濃度を高濃度に維持することができる。
【0013】
請求項5の発明では、空気質成分発生手段は、空気質成分を保有する空気質成分保有手段と、空気質成分保有手段が保有する空気質成分を加熱することで蒸発させる加熱手段とから構成されており、空気質成分チャンバ内における空気質成分の濃度(チャンバ内濃度)を検出するチャンバ内検出センサと、チャンバ内濃度が所定のチャンバ内基準濃度よりも低いときには加熱手段をオンする一方、チャンバ内濃度がチャンバ内基準濃度よりも高いときには、加熱手段をオフする制御手段とを備えることを特徴としている。
【0014】
請求項5の発明では、チャンバ内濃度がチャンバ内基準濃度よりも低いときには加熱手段をオンして空気質成分保有手段から蒸発する空気質成分の量を増加させることで、チャンバ内濃度をチャンバ内基準濃度に近づける。一方、チャンバ内濃度がチャンバ内基準濃度よりも高いときには加熱手段をオフして空気質成分保有手段から蒸発する空気質成分の量を減少させることで、チャンバ内濃度をチャンバ内基準濃度に近づける。即ち、空気質成分チャンバ内の濃度が所定の濃度となるように加熱手段の動作を制御するようにしているから、車内に供給される空気質成分の濃度を所望の濃度に調整することができる。
【0015】
請求項6の発明によれば、空気質成分発生手段は、空気質成分を保有する空気質成分保有手段と、空気質成分保有手段が保有する空気質成分を加熱することで蒸発させる加熱手段とから構成されており、車内の空気質成分の濃度(車内濃度)を検出する車内検出センサと、車内濃度が所定の車内基準濃度よりも低いときには加熱手段をオンする一方、車内濃度が車内基準濃度よりも高いときには、加熱手段をオフする制御手段とを備えることを特徴としている。
【0016】
請求項6の発明では、車内濃度が車内基準濃度よりも低いときには加熱手段をオンして空気質成分保有手段から蒸発する空気質成分の量を増加させることで、車内濃度を車内基準濃度に近づける。一方、車内濃度が車内基準濃度よりも高いときには加熱手段をオフして空気質成分保有手段から蒸発する空気質成分の量を減少させることで、車内濃度を車内基準濃度に近づける。即ち、車内の濃度が所定の濃度となるように加熱手段の動作を制御するようにしているから、車内に供給される空気質成分の濃度を所望の濃度に調整することができる。尚、車内濃度の検出領域としては、例えば、乗員が存在し得る領域があり、この領域の空気質成分の濃度を検出するようにすれば、乗員に供給する空気質成分の濃度を所望の濃度に調整することができる。
【0017】
請求項7の発明では、オン状態で放出部を開き、オフ状態で放出部を閉じる放出シャッタと、車内の空気質成分の濃度(車内濃度)を検出する車内検出センサと、車内濃度が所定の車内基準濃度よりも低いときには、放出シャッタをオンする一方、車内濃度が車内基準濃度よりも高いときには、放出シャッタをオフする制御手段とを備えることを特徴としている。
【0018】
請求項7の発明では、車内濃度が車内基準濃度よりも低いときには放出シャッタをオンして車内への空気質成分の放出を許容することで車内濃度を車内基準濃度に近づける。一方、車内濃度が車内基準濃度よりも高いときには放出シャッタをオフして、放出部から空気質成分が漏出することに起因する車内濃度の無用な高濃度化を防止する。これにより、車内の空気質成分の濃度を適切な濃度に維持することができる。
【0019】
請求項8の発明では、オン状態で吸入部又は/及び吐出部を開き、オフ状態で吸入部又は/及び吐出部を閉じる吸入吐出シャッタと、空気質成分チャンバ内の空気質成分の濃度(チャンバ内濃度)を検出するチャンバ内検出センサと、チャンバ内濃度が所定のチャンバ内基準濃度よりも低いときには吸入吐出シャッタをオンする一方、チャンバ内濃度がチャンバ内基準濃度よりも高いときには吸入吐出シャッタをオフする制御手段とを備えることを特徴としている。
【0020】
請求項8の発明では、車内濃度が車内基準濃度よりも低いときには吸入吐出シャッタをオンして空気質成分チャンバ内への空気質成分の供給を許容することでチャンバ内濃度をチャンバ内基準濃度に近づける。一方、チャンバ内濃度がチャンバ内基準濃度よりも高いときには放出シャッタをオフして、空気質成分チャンバ内への空気質成分の供給を禁止することでチャンバ内濃度をチャンバ内基準濃度に近づける。これにより、チャンバ内濃度をチャンバ内基準濃度とすることができるため、放出される空気砲の空気質成分濃度を所望の濃度に維持することが可能となり、車内の空気質成分の濃度を適切に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<第1の実施形態>
本発明に係る車両用空気質成分供給装置の一実施形態について図1又は図2を参照して説明する。本実施形態の車両用空気質成分供給装置は、自動車1の車内2に備えられた空気質成分放出手段10A〜10Cから所定の空気質成分を含んだ空気砲Fを放出することで、乗員3,4に対して個別に空気質成分を供給するものである。
【0022】
各空気質成分放出手段10A〜10Cは、図1に示すように、乗員3,4に向けて空気砲Fを放出可能な位置に配置されており、このうち、放出手段10Aはインストルメントパネル70内に、放出手段10Bは前席側天井部分に形成されるオーバーヘッドモジュール80内にそれぞれ配置されており、前席乗員3の方向に空気砲Fを放出する。また、放出手段10Cは、後席側天井部に配置されており、後席乗員4に対して空気砲Fを放出する。
【0023】
尚、本実施形態における空気砲Fは、ある空間に貯められた流体が圧縮されることにより、その空間に形成された放出口から押し出されて、流体の塊となって放出されるものを意図している。空気砲Fの形態としては、例えば、渦輪状、球体状などの形状の塊となって放出されるもの全般をいう。この空気砲Fは、乗員3,4に到達して顔や肩などに当たると、空気砲Fの塊が崩れるとともに含有されている空気質成分が拡散領域7,8内で拡散する。
【0024】
各空気質成分放出手段10A〜10Cの外観を構成する筐体110(筐体部)の内部には、空間を2分割する隔壁120が形成されている、一方の空間には空気質成分を含んだ空気を保持するための空気質成分チャンバ130が形成されており、他方の空間は空気質成分チャンバ130内の空気を筐体110内で循環させるための循環経路140が形成されている。
【0025】
筐体110前面のうち空気質成分チャンバ130に対応する位置には、放出穴110A(放出部)が形成されている。この放出穴110Aは円形に形成されており、空気質成分チャンバ130内の空気が圧縮されることで形成される空気砲Fが放出されるようになっている。
【0026】
筐体110後端のうち空気質成分チャンバ130を介して放出穴110Aと対向する位置に、空気質成分チャンバ130内の空気を圧縮するための圧縮手段150が配置されている。この圧縮手段150は放出穴110Aに対して接離方向に変位可能な膜状の圧縮部材151が設けられており、圧縮部材151が放出穴110Aに対して接近方向に変位することで空気質成分チャンバ130内の空気を圧縮するようになっている。
【0027】
循環経路140内には、芳香成分、湿度成分等の所定の空気質成分を発生する空気質成分発生手段160が配置されている。この空気質成分発生手段160は、例えば液体、固体あるいはゲル状態の空気質成分をフィルタ、あるいはケース内に保持して構成されている。
【0028】
空気質成分チャンバ130と循環経路140とを分割する隔壁120には、空気質成分チャンバ130と循環経路140との間で空気の流動を許容する吸入口170(吸入部)及び吐出口180(吐出部)が形成されている。吸入口170は、隔壁120の前側に形成されており、空気質成分チャンバ130内の空気を吸入するためのものである。吐出口180は、隔壁120の後側に形成されており循環経路140内の空気を空気質成分チャンバ130へ吐き出すためのものである。
【0029】
また、循環経路140内のうち、吸入口170の近傍(吐出口180よりも吸入口170に近い位置)には循環ファン190が設けられている。この循環ファン190が動作することにより、吸入口170から空気質成分チャンバ130内の空気を循環経路140内に送風することができる。
【0030】
尚、本実施形態における、隔壁120、循環経路140、吸入口170、吐出口180、及び循環ファン190が請求項に記載の循環手段を構成している。
【0031】
従って、循環ファン190が動作すると、空気質成分チャンバ130内の空気が吸入口170から循環経路140へ流出し、この循環経路140を通過して吐出口180から空気質成分チャンバ130内に再び流入するという内気循環が発生する。
【0032】
この内気循環が発生している状態では、空気質成分チャンバ130を流出した空気に空気質成分発生手段160で発生した空気質成分が加えられて再び空気質成分チャンバ130内に戻されることとなる。従って、空気質成分発生手段160を介して空気質成分チャンバ130に流入する空気の空気質成分濃度は空気質成分チャンバ130を流出する空気の空気質成分濃度よりも高濃度となる。このため、空気質成分チャンバ130内の空気を循環させることでこの空気質成分チャンバ130内の空気質成分濃度が高濃度化される。
【0033】
本実施形態では、循環経路140、吸入口170、吐出口180、及び循環ファン190にて空気質成分チャンバ130内の空気を、この空気質成分チャンバ130と空気質成分発生手段160との間で内気循環させるようにしているから、空気質成分チャンバ130内の空気質成分濃度を高濃度化することができる。さらに、筐体110内を、隔壁120によって空気質成分チャンバ130と循環経路140とに分割し、空気質成分発生手段160を循環経路140に配することで、両者130、160を筐体110内に一括収容しているから、筐体110内の空気を循環させるための構成を簡素化することができるとともに、装置全体を小型化することができる。
【0034】
また、循環ファン190にて筐体110内の空気を空気質成分チャンバ130と循環経路140との間で循環させるようにしているため、筐体110内の空気を効率よく循環させることができる。
【0035】
また、循環ファン190は、吐出部180よりも吸入部170に近い位置に配置されているため、空気質成分チャンバ130内の空気が循環経路140内に流入し易くなり、空気質成分チャンバ130内の空気質成分濃度を一層高濃度化することができる。
【0036】
また、吸入口170を吐出口180よりも放出穴110Aに近い位置に設けているから、空気砲Fの放出を停止しているときに空気質成分チャンバ130内の空気質成分が放出穴110Aから漏出することが防止されるため、空気質成分チャンバ130内の空気質成分の濃度を高濃度に維持することができる。
【0037】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について図3または図4を参照して説明する。尚、上記実施形態と同一部分の説明は省略し、相違点のみを説明する。
【0038】
本実施形態では、空気質成分発生手段160が、空気質成分を保有する空気質成分保有手段161と、保有されている空気質成分を加熱することで蒸発させるヒータ162(加熱手段)とで構成されている。このヒータ162は後述する制御手段220によってオン・オフ制御されるようになっており、ヒータ162がオンされることにより、保有されている空気質成分が蒸発し、より多くの空気質成分が発生するようになっている。
【0039】
また、車内2のうち乗員が存在しえる領域の空気質成分の濃度(車内濃度Da)を検出する車内検出センサ200が備えられている。この車内検出センサ200は、例えばシートバック上端位置に配置されており、乗員3,4の顔部付近の空気質成分の濃度を検出可能とされている。また、筐体110内には空気質成分チャンバ130内の空気質成分の濃度(チャンバ内濃度Db)を検出するチャンバ内検出センサ210が備えられている。
【0040】
制御手段220は、検出センサ200,210により検出された車内濃度Da及びチャンバ内濃度Dbに基づいて図4に示すようにヒータ162のオン・オフを制御する。
【0041】
まず、車内検出センサ200により検出された車内濃度Daを取得し(ステップS100)、車内濃度Daを予め設定されている車内基準濃度Dsaと比較する(ステップS110)。ここで、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaよりも高い場合には(ステップS110でYes)、ヒータ162をオフする(ステップS120)。
【0042】
一方、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaよりも低い場合には(ステップS110でNo)、チャンバ内検出センサ210により検出されたチャンバ内濃度Dbを取得し(ステップS130)、チャンバ内濃度Dbを予め設定されているチャンバ内基準濃度Dsb(放出される空気砲Fにより車内検出センサ200で検出される車内濃度Daが車内基準濃度Dsaになると予測される濃度)と比較する(ステップS140)。ここで、チャンバ内濃度Dbがチャンバ内基準濃度Dsbよりも高い場合には(ステップS140でYes)、ヒータ162をオフする(ステップS120)。
【0043】
逆に、チャンバ内濃度Dbがチャンバ内基準濃度Dsbよりも低い場合には(ステップS140でNo)、ヒータ162をオンする(ステップS120)。
【0044】
即ち、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaよりも高い場合、あるいはチャンバ内濃度Dbがチャンバ内基準濃度Dsbよりも高い場合のいずれかの場合には、ヒータ162がオフされる。従って、このときには、空気質成分発生手段160から発生する空気質成分量が減少するため、チャンバ内濃度Dbが低下し、放出される空気砲Fに含まれる空気質成分量が減少することで、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaに調整される。
【0045】
逆に、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaよりも低い場合であって、且つ、チャンバ内濃度Dbがチャンバ内基準濃度Dsbよりも低い場合には、ヒータ162がオンされる。従って、このときには、空気質成分発生手段160から発生する空気質成分量が増加するため、チャンバ内濃度Dbが増加し、放出される空気砲Fに含まれる空気質成分量が増加することで、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaに調整される。
【0046】
従って、本実施形態によれば、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaとなるようにヒータ162のオン・オフを制御するようにしているから、車内2が車内基準濃度Dsaに調整され、車内2の空気質成分の濃度を適切に維持することができる。
【0047】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について図5または図6を参照して説明する。尚、上記第2の実施形態と同一部分の説明は省略し、相違点のみを説明する。
【0048】
本実施形態では、放出穴110Aを開閉する放出シャッタ300及び、吸入口170及び吐出口180を開閉する吸入吐出シャッタ310が設けられている。これらのシャッタ300,310は、通常はオンしていることで放出穴110A、吸入口170、吐出口180を開いており、制御手段220の制御によってオフすることで放出穴110A、吸入口170、吐出口180を閉じるようになっている。
【0049】
制御手段220は、車内検出センサ200により検出された車内濃度Da及びチャンバ内検出センサ210で検出されたチャンバ内濃度Dbに基づいて図6に示すようにシャッタ300,310のオン・オフを制御する。
【0050】
まず、車内検出センサ200により検出された車内濃度Daを取得し(ステップS200)、取得した車内濃度Daを予め設定されている車内基準濃度Dsaと比較する(ステップS210)。ここで、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaよりも高い場合には(ステップS210でYes)、放出シャッタ300をオフして放出穴110Aを閉じる(ステップS220)。
【0051】
次に、チャンバ内検出センサ210により検出されたチャンバ内濃度Dbを取得し(ステップS230)、取得したチャンバ内濃度Dbを予め設定されているチャンバ内基準濃度Dsbと比較する(ステップS240)。ここで、チャン内濃度Dbがチャンバ内基準濃度Dsbよりも高い場合には(ステップS240でYes)、吸入吐出シャッタ310をオフして吸入口170及び吐出口180を閉じる(ステップS250)。
【0052】
尚、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaよりも低い場合には(ステップS210でNo)、放出シャッタ300はオンされ続けるため、放出穴110Aは開いた状態となっている。また、チャンバ内濃度Dbがチャンバ内基準濃度Dsbよりも低い場合には(ステップS240でNo)、吸入吐出シャッタ310はオンされ続けるため、吸入口170及び吐出口180は開いた状態となっている。
【0053】
従って、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaよりも低いときには放出シャッタ300がオンされて車内2への空気質成分の放出が許容される一方、車内濃度Daが車内基準濃度Dsaよりも高いときには放出シャッタ300がオフされて、放出穴110Aから空気質成分が漏出することに起因する車内濃度Daの無用な高濃度化が防止される。これにより、車内2の空気質成分の濃度を適切な濃度に維持することができる。
【0054】
また、チャンバ内濃度Dbが車内基準濃度Dsbよりも低いときには吸入吐出シャッタ310がオンされて空気質成分チャンバ130内への空気質成分の供給が許容される一方、チャンバ内濃度Dbがチャンバ内基準濃度Dsbよりも高いときには吸入吐出シャッタ310がオフされて、空気質成分チャンバ130内への空気質成分の供給が禁止される。これにより、チャンバ内濃度Dbをチャンバ内基準濃度Dsbとすることができるため、放出される空気砲Fの空気質成分濃度を所望の濃度に維持することが可能となり、車内の空気質成分の濃度を適切に維持することができる。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0056】
第1の実施形態では、循環ファン190を吸入口170の近傍に配置した構成を示したが、この循環ファン190を吐出口180の近傍に配置した構成としても良い。
【0057】
また、第1の実施形態では、吸入口170を吐出口180に対して相対的に放出穴110Aに近い位置に設けた構成を示したが、例えば、吐出口180を吸入口170に対して相対的に放出穴110Aに近い位置に設けた構成としても良い。
【0058】
第2の実施形態では、車内濃度Da及びチャンバ内濃度Dbの双方を検出し、これらの濃度Da,Dbに基づいてヒータ162のオン・オフを制御するようにしていたが、車内濃度Da及びチャンバ内濃度Dbのうちいずれか一方に基づいてヒータ162のオン・オフを制御するようにしても良い。
【0059】
また、第2の実施形態では、ヒータ162をオン・オフ制御するように構成したが、例えば、車内濃度Daと車内基準濃度Dsaとの差分、あるいはチャンバ内濃度Dbとチャンバ内基準濃度Dsbとの差分に応じてヒータ162の加熱能力を段階的に制御するようにしても良い。
【0060】
また、第3の実施形態では、放出穴110Aを開放・閉塞するシャッタ300と、吸入口170及び吐出口180を開放・閉塞するシャッタ310を設けた構成を示したが、いずれか一方を備える構成であっても良い。
【0061】
また、第3の実施形態では、吸入口170と吐出口180とをシャッタ310により開閉する構成を示したが、それぞれ別のシャッタにより開放・閉塞する構成であっても良い。また、吸入口170及び吐出口180の双方にシャッタを設ける構成を示したが、吸入口170又は吐出口180のいずれか一方にシャッタを設ける構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1の実施形態における車両空気質成分供給装置の構成を示した概略図である。
【図2】空気質成分放出手段の内部構成を示した概略図である。
【図3】第2の実施形態における空気質成分放出手段の内部構成を示した概略図である。
【図4】制御手段の処理内容を示したフローチャートである。
【図5】第3の実施形態における空気質成分放出手段の内部構成を示した概略図である。
【図6】制御手段の処理内容を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
110…筐体(筐体部)
110A…放出穴(放出部)
120…隔壁
130…空気質成分チャンバ
140…循環経路(循環手段)
150…圧縮手段
160…空気質成分発生手段
161…空気質成分保有手段
162…ヒータ(加熱手段)
170…吸入口(吸入部、循環手段)
180…吐出口(吐出部、循環手段)
190…循環ファン(循環手段)
200…車内検出センサ
210…チャンバ内検出センサ
220…制御手段
300…放出シャッタ
310…吸入吐出シャッタ
F…空気砲
Da…車内濃度
Db…チャンバ内濃度
Dsa…車内基準濃度
Dsb…チャンバ内基準濃度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空気質成分を含んだ空気砲を放出することで車内に当該空気質成分を供給する車両用空気質成分供給装置であって、
外観を構成する筐体部と、
前記筐体部に収容され、前記空気質成分を保持する空気質成分チャンバと、
前記筐体部に形成され、前記空気質成分チャンバから前記空気砲を放出する放出部と、
前記空気質成分チャンバに保持された前記空気質成分を圧縮し、前記放出部から前記空気砲を放出させる圧縮手段と、
前記筐体部に前記空気質成分チャンバと共に一括収容されるとともに、前記空気質成分を発生する空気質成分発生手段と、
前記筐体部内の空気を前記空気質成分チャンバと前記空気質成分発生手段との間で循環させる循環手段とを備えることを特徴とする車両用空気質成分供給装置。
【請求項2】
前記循環手段は、
前記筐体部内に収容され、前記空気質成分発生手段が配置される循環経路と、
前記筐体部内を前記循環経路と前記空気質成分チャンバとに分割する隔壁と、
前記隔壁に形成され、前記空気質成分チャンバ内の空気を前記循環経路内に吸入する吸入部と、
前記隔壁に形成され、前記循環経路内の空気を前記空気質成分チャンバに吐き出す吐出部と、
前記空気質成分チャンバ内の空気を前記吸入部から前記循環経路内に吸入させるとともに、前記循環経路内の空気を前記吐出部から前記空気質成分チャンバに吐き出させる循環ファンとを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項3】
前記循環ファンは、前記吐出部よりも前記吸入部に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項4】
前記吸入部は、前記吐出部に対して相対的に前記放出部に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項5】
前記空気質成分発生手段は、前記空気質成分を保有する空気質成分保有手段と、前記空気質成分保有手段が保有する前記空気質成分を加熱することで蒸発させる加熱手段とから構成されており、
前記空気質成分チャンバ内における前記空気質成分の濃度(チャンバ内濃度)を検出するチャンバ内検出センサと、
前記チャンバ内濃度が所定のチャンバ内基準濃度よりも低いときには前記加熱手段をオンする一方、前記チャンバ内濃度が前記チャンバ内基準濃度よりも高いときには、前記加熱手段をオフする制御手段とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項6】
前記空気質成分発生手段は、前記空気質成分を保有する空気質成分保有手段と、前記空気質成分保有手段が保有する前記空気質成分を加熱することで蒸発させる加熱手段とから構成されており、
前記車内の前記空気質成分の濃度(車内濃度)を検出する車内検出センサと、
前記車内濃度が所定の車内基準濃度よりも低いときには前記加熱手段オンする一方、前記車内濃度が前記車内基準濃度よりも高いときには、前記加熱手段をオフする制御手段とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項7】
オン状態で前記放出部を開き、オフ状態で前記放出部を閉じる放出シャッタと、
前記車内の前記空気質成分の濃度(車内濃度)を検出する車内検出センサと、
前記車内濃度が所定の車内基準濃度よりも低いときには、前記放出シャッタをオンする一方、前記車内濃度が前記車内基準濃度よりも高いときには、前記放出シャッタをオフする制御手段とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用空気質成分供給装置。
【請求項8】
オン状態で前記吸入部又は/及び前記吐出部を開き、オフ状態で前記吸入部又は/及び前記吐出部を閉じる吸入吐出シャッタと、
前記空気質成分チャンバ内の前記空気質成分の濃度(チャンバ内濃度)を検出するチャンバ内検出センサと、
前記チャンバ内濃度が所定のチャンバ内基準濃度よりも低いときには前記吸入吐出シャッタをオンする一方、前記チャンバ内濃度が前記チャンバ内基準濃度よりも高いときには前記吸入吐出シャッタをオフする制御手段とを備えることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の車両用空気質成分供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−261320(P2007−261320A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86198(P2006−86198)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】