説明

車両用空調システム

【課題】自動車の車室内の空気汚れを効率的に浄化する。
【解決手段】外気吸引口を開閉するダンパを備えると共にルーフ2内に延在させた空気通路11と、空気通路と連通してルーフの室内側面に開口し、空気清浄用のフィルタ13を付設した車室内空気の吸引口12と、
空気通路と連通し、フィルタを通した清浄空気を車室内に吹き出す送風口9と、送風口から清浄空気を車室内へ送風するファン17と、車室内に付設する汚染空気検知センサ16と、
汚染空気検知センサからの検知信号を受信すると、ファンおよびダンパを駆動制御する制御手段20、21を備え、制御手段が汚染空気検知センサからの汚染検知信号を受信すると、ダンパを閉作動させると共に、ファンを駆動して清浄空気を送風口から車室内に送風する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関し、特に、車室内での喫煙等で汚れた空気を浄化した後に清浄空気として車室内に循環できるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車内で喫煙した場合に車室内の空気を浄化する車両用空調装置が提案されており、例えば、特開平5−278458号公報(特許文献1)の車両用空調装置では、自動車の灰皿の開閉をトリガとして動作する構成としている。具体的には、空気清浄フィルタを有する灰皿の上部に設けたタバコ吸込口と、自動車の外部の外気を導入する状態と車室内の空気を循環させる状態とを切り替えるダンパと、該ダンパを介して車室内に空気を吹き込むファンと、灰皿の開閉状態を判定する灰皿状態判定手段と、ファン及びダンパを制御する制御手段を備えている。該空調装置では、自動車の乗員が喫煙時に灰皿を開くと、灰皿状態判定手段は灰皿が開とされたことを判定して判定信号を制御手段に送信し、制御手段はダンパを閉じて空気循環状態とすると共に自動的にファンを動作させている。車室内の汚れた空気はタバコ吸込口に吸い込まれ、空気清浄フィルタで清浄にされ、吹出口を介して車室内に放出される。
【0003】
しかし、特許文献1においては、灰皿の開閉が車両用空調装置の動作開始のトリガとなっているため、タバコを吸い始めてから灰皿を開くまでの間は空調装置が動作しないという問題がある。
また、コンソールパネルの灰皿の上部にタバコ吸込口を設けているため、例えば後部座席に着座した乗員がタバコを吸った場合には、タバコの煙は運転席又は助手席の乗員を介してタバコ吸込口に吸い込まれてしまい、運転席又は助手席の乗員に不快感を与えるという問題がある。
【0004】
さらに、乗員がタバコを吸った場合にタバコの煙は上方へ流れていくが、タバコ吸込口は灰皿の上部に設けられており、乗員の喫煙位置よりも下方となるため、タバコの煙を効率的にタバコ吸込口に吸い込むことができない。
さらにまた、特許文献1の車両用空調装置は灰皿の開閉により動作するため、例えば排気ガスが車室内に充満した場合など、タバコの煙以外の灰皿を開閉する必要のない空気汚れの場合には車両用空調装置が動作しない問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平5−278458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、自動車の車室内の空気汚れを効率的に浄化することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、外気吸引口を開閉するダンパを備えると共にルーフ内に延在させた空気通路と、
前記空気通路と連通してルーフの室内側面に開口し、空気清浄用のフィルタを付設した車室内空気の吸引口と、
前記空気通路と連通し、前記フィルタを通した清浄空気を車室内に吹き出す送風口と、 前記送風口から清浄空気を車室内へ送風するファンと、
車室内に付設する汚染空気検知センサと、
前記汚染空気検知センサからの検知信号を受信して前記ファンおよびダンパを駆動制御する制御手段を備え、
前記制御手段は汚染空気検知センサからの前記に基づいて前記ダンパを閉作動させると共に、前記ファンを駆動して清浄空気を前記送風口から車室内に送風することを特徴とする車両用空調システムを提供している。
【0008】
前記車室内に設ける汚染空気検知センサとしては主として臭気センサ、煙センサが用いられるが、喫煙時の空気汚染に限らず、特定した空気成分の含有量が設定値以上となると検知信号を送信するセンサでもよい。
前記汚染空気検知センサは、測定した検知値を検知信号として連続的に制御手段へ送信し、制御手段で予め設定した閾値に達すると前記ファンやダンパを動作させる構成としている。なお、センサ自体に閾値をもたせ、閾値以上になると制御手段へ検知信号を送信する構成としてもよい。該制御手段としては、電子制御ユニット(ECU)を用いることが好ましい。
【0009】
本発明の空調システムでは、ルーフ内の空気通路と連通させてルーフの室内側面に車室内空気の吸引口を設けているため、喫煙時に煙が上昇すると吸引口に吸い込まれ、かつ、吸引口には空気清浄用のフィルタを取り付けているため、上昇した煙はフィルタで浄化されてルーフ内の空気通路内に吸引することができる。即ち、喫煙開始時に空調システムが作動する前から、車室内で上昇する煙を吸引口から吸い込み、フィルタを通し清浄空気としてルーフ内の空気通路内に溜めておくことができる。
【0010】
前記特許文献1の従来技術では、灰皿の開閉状態を車両用空調装置の動作開始のトリガとしていたが、本発明の車両用の空調システムは、車室内に設けた汚染空気検知センサの検知信号をトリガとしている。即ち、自動車の車室内の空気が汚れると制御手段での制御によりダンパを閉じると共に前記ファンの作動が開始し、フィルタを通して浄化された空気通路内に清浄空気を車室内に吹き出し、この吹き出しにより、空気通路内に負圧が発生して前記吸込口に車室内の汚染空気を効率よく吸い込むことができる。即ち、車室内の汚染空気を吸込口で浄化して空気通路に吸い込み、この清浄空気を車室内へと吹き出す循環経路を形成でき、車室内の汚染空気を清浄空気に置換していくことができる。
このように、タバコを吸い始めてから灰皿を開ける間であっても車室内の空気が汚染すると空調システムを動作させて、車室内の空気を清浄化することができる。
なお、本発明の汚染空気を吸い込んで清浄空気として吹き出す前記空気通路は、自動車内に既に配管されているエアコン通風用の空気通路を兼用して用いてもよい。
【0011】
本発明では、さらに、ウィンドウおよび/またはドアの開閉センサを備え、該開閉センサを前記制御手段と接続し、
前記制御手段は、汚染空気検知センサからの汚染検知信号を受信すると共に前記開閉センサからの開放信号を受信すると、開放しているウィンドウおよび/またはドアの閉鎖指示表示を出し、車室内と前記空気通路との間で空気を循環させることが好ましい。
【0012】
即ち、車室内の汚染空気を吸込口で浄化して空気通路内に吸い込み、この清浄空気を車室内に吹き出す循環作動時には、汚染している恐れがある外気を導入しない状態で行うと車室内の空気を迅速に浄化することができる。よって、開放しているウィンドウおよび/またはドアの閉鎖指示表示を出すようにしている。
なお、ウィンドウは自動閉鎖するように制御しても良いが、自動閉鎖すると乗員に不測の損傷を与える恐れがあるため、閉鎖指示表示を出して、乗員がウィンドウ等を閉作動する方が好ましい。
【0013】
あるいは、ウィンドウおよび/またはドアの開閉センサと、車外空気の汚染を検知する車外汚染空気検知センサとを備え、これらセンサを前記制御手段と接続し、
前記制御手段は、汚染空気検知センサからの汚染検知信号、前記開閉センサからの閉鎖信号および前記車外汚染空気検知センサから非汚染信号を受信すると、前記閉鎖しているウィンドウおよび/またはドアの開放指示表示を出し、開放したウィンドウおよび/またはドアより車室内の空気を外部へ放出させてもよい。
【0014】
前記のように、外部空気検知センサを設けて外気の空気の汚れを検知できる構成とすると、外気に汚れがなく且つ車室内が空気汚れの場合には、ウィンドウおよび/またはドアを開放し、車室内の汚染された空気を外部に放出する作動も組み合わせることで、車室内の空気を迅速に清浄化することができる。
【0015】
また、本発明の空調システムでは前記空気通路と連通する前記吸引口および送風口を、各座席毎に上方のルーフの室内側面に開口し、各送風口の上記ファンを取り付けると共に、前記汚染空気検知センサを各座席毎に取り付け、
前記制御手段は、汚染検知信号が出された汚染空気検知センサを設置した座席上方のファンを除く他の座席上方のファンを駆動し、汚染空気を発生する座席側から前記吸引口で吸引すると共に、他の座席の上方の送風口から清浄空気を吹き出す構成としてもよい。
【0016】
該構成とすると、例えば、後部座席の乗員がタバコを吸った場合、タバコの煙は上方の吸引口に吸い込ませることができ、タバコを吸わない他の乗員に煙が流れることを抑制でき、他の乗員に不快感を与えない。
また、汚染空気検知センサも各座席毎に設けると、喫煙した乗員の着座位置を検知でき、検知した座席以外の上方に設けた送風口のファンを動作させることで、喫煙座席上方の吸込口に大きな負圧を発生させて、効率よく煙を吸い込ませることができる。
このように、各座席毎にフィルタ付きの吸込口、汚染空気検知センサ及びファンを設けることで、各座席回りの空気の制御ができ、言わば、分煙と同様の作用を奏することができる。
【発明の効果】
【0017】
前述したように、本発明の車両用の空調システムによれば、汚染空気検知センサの検知をトリガとして作動させているため、自動車の車室内の空気が汚れるとタバコを吸い始めてから灰皿を開ける間であっても自動的に空調システムを動作させることができる。
また、汚染空気検知センサを用いているため、タバコによる車室内の空気汚れだけでなく、排気ガスなどによる空気汚れも検知することができる。
さらに、空気清浄フィルタ付きの吸込口はルーフに設けているため、前記汚染空気検知センサによる汚染検知前であっても、喫煙時の上昇する煙を吸込口で吸引し、該吸引口の付設したフィルタで清浄化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の自動車に設けた空調システムの実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図6に本発明の第1実施形態を示す。
【0019】
空調システム10は、図1、図2に示すように、自動車1の前部のエンジンルーム(X)に搭載した空調装置Aの空気吸引ユニット7の空気通路形成ダクト(以下空気ダクトと称す)11Aと連通した空気ダクト11Bを、車室のフロア8の左右両側に沿って配管し、該空気ダクト11Bを左右両側のセンターピラー3の内部に設けた空気ダクト11Cを通してルーフ2へと配管し、ルーフ2の内部で空気ダクト11Dを各座席4A〜4Dの上方に位置するように延在させている。
【0020】
前記空調装置Aの空気吸引ユニット7の空気ダクト11Aの先端には図3(B)に示すように開閉用のダンパ15が付設されており、ダンパ15の閉鎖時には外気の導入が遮断される。
図3(A)に示すように、前記ルーフ2の内部に配管した空気ダクト11Dには、各座席4の上方に車室内空気の吸引口12を室内側に開口し、各吸引口12を空気ダクト11Dと連通している。本実施形態では前後左右に4つ座席4A〜4Dを備えたものとしているため、ルーフ2には4カ所に吸引口12を設けている。各吸引口12には空気清浄用のフィルタ13を付設している。
【0021】
また、ルーフの室内側面に開口した送風口9を前記吸引口12に隣接して設け、これら送風口9を前記空気ダクト11Dと連通し、空気ダクト11Dを介して吸引口12と送風口9とを連通している。各送風口9の内部側にファン17を取り付け、各座席4の上方から清浄空気を吹き出すようにしている。
さらに、各座席4毎に設けた吸引口12に隣接したルーフの車室内面に汚染空気検知センサを構成する臭気センサ16A〜16Dを設けている。なお、臭気センサ16に代えて、煙センサ、空気成分から空気の汚れを検知するセンサを用いてもよい。
【0022】
さらに、自動車1のインストルメントパネル内に、前記臭気センサ16、ドア開閉センサ5及びウィンドウ開閉センサ6と接続されたボディECU20と、ファン17及びダンパ15と接続したエアコンECU21を配置している。ボディECU20及びエアコンECU21は制御手段を構成し、LANにより接続している。
【0023】
前記ボディECU20は図4に示すように、空気状態検知部22と、ドア制御部23と、ウィンドウ制御部24を備えている。
空気状態検知部22は各座席4に設けた臭気センサ16と接続し、各臭気センサ16からの測定値を予め備えた閾値と比較して、車室内の空気の状態を判断している。また、メモリ(図示せず)を備え、車室内の空気の状態の前回の判断結果を記憶しており、空気がきれいな状態であるときはフラグを「0」、空気汚れを検知したときはフラグを「1」として記憶している。
【0024】
前記ドア制御部23及びウィンドウ制御部24は空気状態検知部22と接続している。ドア制御部23は、自動車1の各ドア開閉センサ5及びインテリアライト18(マップライト)と接続し、ドア開閉センサ5からの開放信号または閉鎖信号からドアの開閉状態を記憶するメモリ23aを備えている。該ドア制御部23はドアの開閉を検知してメモリ23aに記憶すると共に、ドアの開時には閉鎖警告表示であるインテリアライト18を点灯させて、ドアが開であることを乗員に警告表示している。
ウィンドウ制御部24は、自動車1の各ウィンドウ開閉センサ6と接続しており、ウィンドウ開閉センサ6の開閉状態を記憶するメモリ24aを備えている。該ウィンドウ制御部24はウィンドウ開閉センサ6からの開放信号または閉鎖信号により開閉状態を検知してメモリ24aに記憶すると共に、ウィンドウの開閉を自動的に行っている。なお、ウィンドウを開閉させる警告表示を出し、乗員に開閉作動させるようにしてもよい。
【0025】
エアコンECU21は、ファン制御部25とダンパ制御部26を備えている。
ファン制御部25はボディECU20の空気状態検知部22と接続すると共に各座席4のルーフ2に設けたファン17と接続しており、ファン17の動作と停止を制御している。また、ファン17の動作状態を検知して記憶するメモリ25aを備えている。
ダンパ制御部26はボディECU20の空気状態検知部22と接続すると共に空気ダクト11Aに設けたダンパ15と接続してダンパ15の開閉を行っている。また、ダンパ15の開閉状態を検知して記憶するメモリ26aを備えている。
【0026】
次に、本発明の空調システム10の動作を説明する。
まず、車室内の空気が汚れた場合の空調システム10の動作について説明する。
空調システム10の起動時は、空気状態検知部22に記憶した車室内の空気の状態を示すフラグは「0」である。
図5(A)に示すように、ステップS10では、ボディECU20の空気状態検知部22はルーフ2に設けた4つの臭気センサ16の測定値を取得している。
ステップS11では、臭気センサ16の測定値と予め記憶した閾値と比較して、車室内の空気の状態を判断している。4つの臭気センサ16のうち、1つでも車室内の空気が汚れていると判断した場合にはステップS12に進む。
ステップS12では、フラグが「0」か否かを判断している。「0」の場合はステップS13に進む。「1」の場合はステップS10に戻る。
ステップS13では、空気状態検知部22がエアコンECU21のファン制御部25、ダンパ制御部26及びボディECU20のドア制御部23、ウィンドウ制御部24に動作信号を送信している。
ステップS14ではフラグを「1」として空気状態検知部22のメモリに記憶している。
【0027】
この後、ファン制御部25、ダンパ制御部26、ドア制御部23、ウィンドウ制御部24は並列に以下の動作を行う。
図5(B)はファン制御部25の動作を示しており、ステップS20では、ファン制御部25は各ファン17の現在の状態が動作または停止かを検知し、ファン制御部25内のメモリ25aに記憶する。すなわち、メモリ25aが記憶するファン17の状態とは、空調システム10が動作する直前のファン17の状態と同じである。
ステップS21では、臭気センサ16により空気汚れが検知された座席4に設けたファン17を停止させると共に、空気汚れが検知されていない座席4に設けたファン17を動作させる。例えば座席4Aの空気汚れを臭気センサ16Aが検知すると、座席4Aに設けたファン17Aを停止すると共に、ファン17B〜17Dを動作させる。
すなわち、空気汚れが検知された座席4に設けたファン17が動作している場合には該ファン17を停止させ、停止している場合には停止を継続させる。また、空気汚れが検知されていない座席4に設けたファン17が動作している場合には動作を継続させ、停止している場合には動作させる。
【0028】
図6(A)はダンパ制御部26の動作を示し、ステップS30では、ダンパ制御部26はダンパ15の現在の状態が開または閉であるかを検知し、ダンパ制御部26内のメモリ26aに記憶する。
ステップS31では、ダンパ15が開か否かを判断している。開の場合はステップS32へ進む。閉の場合はスタートに戻る。
ステップS32では、ダンパ15を閉としている。
【0029】
図6(B)はドア制御部23の動作を示し、ステップS40では、ドア制御部23はドア開閉センサ5の現在の状態が開または閉であるかを検知し、ドア制御部23内のメモリ23aに記憶する。
ステップS41では、ドア開閉センサ5からドアの開または閉を判断している。開の場合はステップS42へ進む。閉の場合はスタートに戻る。
ステップS42では、インテリアライト18を点灯させて乗員にドアが開であることを警告している。乗員は該警告により手動でドアを閉める。
また、インテリアライト18に限らず、音声や表示からなる警告手段を備えてドアが開であることを警告してもよい。
【0030】
図6(C)はウィンドウ制御部24の動作を示し、ステップS50では、ウィンドウ制御部24はウィンドウの現在の状態が開または閉であるかを検知し、ウィンドウ制御部24内のメモリ24aに記憶する。
ステップS51では、ウィンドウ開閉センサ6からの信号により開または閉を判断している。ウィンドウが開の場合はステップS52へ進む。閉の場合はスタートに戻る。
ステップS52では、ウィンドウ制御部24はパワーウィンドウによりウィンドウを自動で閉じている。
なお、音声や表示からなる警告手段を備えて、ウィンドウを閉じる場合に警告音を鳴らしてウィンドウが閉じることを乗員に知らせてもよい。また、ウィンドウは自動的には閉じず、ウィンドウが開であることを音声や表示によって乗員へ警告し、乗員が手動又はパワーウィンドウのボタン操作によりウィンドウを閉としてもよい。
【0031】
空調システム10は図5、図6に示すフローチャートの動作を所定の周期毎に行い、例えば1分に1回の周期で行う。
また、空調システム10にスイッチを設けてもよく、乗員がスイッチをオンした場合のみ空調システム10を動作させている場合には、例えば10msecの周期で該フローチャートの動作を行ってもよい。
さらにまた、臭気センサ16が検知した臭気や煙が予め設定した閾値に達すると、汚染検知信号を空気状態検知部22に送信するものである場合には、空気状態検知部22に汚染検知信号が送信されると空気状態検知部22を動作させ、該フローチャートの動作を行ってもよい。
【0032】
このように、ダンパ15を閉じて車室内の空気を循環させる状態とし、ウィンドウ及びドアが開の場合にはウィンドウ及びドアを閉じて車室内を密閉状態とする。また、該状態で臭気センサ16により空気汚れが検知された座席4に設けたファン17を停止させると共に、空気汚れが検知されていない座席4に設けたファン17を動作させる。
このとき、空気汚れが検知されていない座席4のファン17から該座席4に下向きの風が出されることにより、空気汚れが検知された座席4の空気は上昇し、吸引口12に吸い込まれる。吸引口12の空気清浄フィルタ13により汚れた空気は浄化されてきれいな空気となり、空気ダクト11を通って動作しているファン17から再び車室内へ送られる。
【0033】
空調システム10が動作して車室内空気が浄化され、図5(A)のステップS11で臭気センサ16の測定値から車室内が空気汚れでないと判断された場合、図7に示すように、ステップ60では、空気状態検知部22がファン制御部25、ダンパ制御部26、ドア制御部23、ウィンドウ制御部24に停止信号を出している。
ステップS61では、空気状態検知部22のメモリのフラグを「0」としている。
【0034】
ステップS62、S63はファン制御部25の動作を示し、ステップS62では、ファン制御部25はステップS13でメモリ25aに記憶したファン17の状態を読み出す。
ステップS63では、ファン制御部25はファン17を読み出した状態に戻す。すなわち、メモリ25aに記憶されているのは空調システム10の動作直前のファン17の状態であり、ファン17が停止状態であったことが記憶されていればファン17を停止させ、ファン17が動作状態であったことが記憶されていればファン17の動作を継続させる。
【0035】
ダンパ制御部26、ドア制御部23、ウィンドウ制御部24においても、ステップS31、S32に示すファン制御部25の動作と同様に、メモリ26a、23a、24aに記憶したダンパ15、ドア開閉センサ5、ウィンドウ開閉センサ6の空調システム10の動作直前の状態を読み出し、該読み出した状態に戻している。
【0036】
前記構成によれば、汚染空気検知センサで検知される検知値が閾値に達したことをトリガとして、ファンおよびダンパを作動させているため、自動車1の車室内の空気が汚れると、従来技術のように乗員が灰皿を開ける等の動作を行わなくても空調システムの動作を自動的に開始させることができる。かつ、灰皿の開閉でなく、かつ、喫煙による車室内の空気汚れだけでなく他の要因による車室内空気の汚れに対しても対応して車室内空気を浄化できる。
さらに、空気清浄フィルタ13付きの吸引口12をルーフ2に設けているので、車室内空気の汚染度が閾値に達する前においても、喫煙で生じる上向きの煙を吸引口12から吸い込むことができる。
また、ファンを駆動すると共にダンパを閉じて、車室内の汚染空気を吸引口12から吸引し、清浄空気として車室内に吹き出して空気循環を図る際に、ドア又はウィンドウが開かれている場合には閉作動する警告表示をだすため、乗員はドア又はウィンドウを手動で閉じて車室内を密閉状態して循環させ、迅速に車室内の空気の清浄化を図ることができる。
【0037】
なお、ウィンドウ制御部24はウィンドウ開閉センサ6の開放信号および閉鎖信号からウィンドウの開または閉だけを検知するのではなく、ウィンドウの開口度を検知してメモリ24aに記憶し、空調システム10が動作して車室内の空気が浄化された場合には、閉鎖したウィンドウをメモリ24aに記憶された状態にまで戻す構成としてもよい。
また、本発明では汚染空気検知センサの測定値をトリガとして空調システムが動作を開始しているが、汚染空気検知センサに加え、灰皿の開閉状態の検知センサ、またはシガレットライタのオンオフ状態の検知センサの測定値をトリガとしてもよい。
【0038】
さらに、各吸引口12に開閉蓋を設け、通常は閉状態とし、空気状態検知部22が臭気センサ16により空気汚れを検知すると閉状態としてもよい。この場合、空気汚れを検知した座席上方の吸引口12の開閉蓋のみを開とし、その他の座席4の吸引口12の開閉蓋は閉のままとする。空気汚れが検知された座席4の吸引口12のみ開となっているので、汚れた空気を早く確実に吸い込むことができる。
【0039】
また、ファン制御部25はファン17の風量を制御する機能を備えていてもよい。ファン制御部25は、空気状態検知部22が臭気センサ16により検知した空気の汚れの度合いに応じ、ファン17の風量を変化させる。空気の汚れ度合いが大きい場合には、ファン17の風量を大きくして吸引口12に早く汚れた空気を吸い込ませる。
【0040】
図8は第1実施形態の変形例を示す。
送風口9及びファン17をルーフ2の各座席4上方に設けるのではなく、ルーフ2の空気ダクト11Dの中央に一箇所設けている。
ファン制御部25は、空気状態検知部22から動作信号を受信すると、ファン17の現在の状態が動作または停止かを検知すると共にファン制御部25内のメモリ25aに記憶する。ファン17が停止している場合はファン17を動作させ、各座席4の吸引口12から車室内の空気を吸い込ませる。
該構成によれば、ファン17を1つだけ設けているので、各座席にファンを設ける場合に比べて空調システム10の構成を簡単にすることができる。
【0041】
なお、ファン17をルーフ2に設けるのではなく、エアコンの動作と連動して動作するコンソールパネルに備えたエアコンファンと兼用してもよい。この場合、空気ダクト11はコンソールパネルまで延在させ、吸引口12から吸い込んだ空気ダクト11の空気はエアコンファンから車室内に戻している。このとき、エアコンファンのかが向きを変化させて、空気汚れが検知された座席4の吸引口12に風向きを向け、汚れた空気を早く吸引口12に吸い込ませてもよい。
また、ルーフ2の各座席4毎に設けられたファン17とエアコンファンの両方を設けてもよい。
なお、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
図9は本発明の第1実施形態の第2変形例を示す。
前記フロア8に配管する左右の空気ダクト11Bには、前後左右の各座席4と対応する側部位置に清浄空気の送風口9を設け、該送風口9の内部側にファン17を取り付け、各座席4の足元に清浄空気を吹き出すようにしている。
なお、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
図10は第2実施形態を示す。
第1実施形態の構成に加えて、車室外であって車両の運転席側のドアウィンドウガラスの雨よけ部に車外汚染空気検知センサである外部臭気センサ19を設け、車両の外部の空気の状態を検知している。
空気状態検知部22は外部臭気センサ19と接続しており、外部臭気センサ19の測定値と閾値を比較して空気汚れでないことを判断し、かつ、車室内の臭気センサ16の測定値と閾値を比較して空気汚れを判断した場合には、動作信号Bをファン制御部25、ダンパ制御部26、ドア制御部23、ウィンドウ制御部24に出す。
動作信号Bを受信したダンパ制御部26はダンパ15を開とし、ウィンドウ制御部24はウィンドウを全開として車室を開放状態とし、ファン制御部25はファン17を動作させる。また、ドア制御部23は乗員にドアを開とするように音声又は表示等で警告を出す。
このため、ドア又はウィンドウから車室内の汚れた空気を出し、外部のきれいな空気と入れ換えることができる。
【0044】
各座席4のルーフ2に取り付けたファン17が風向を変えることができる場合には、ウィンドウに向けて各ファン17の風向を調整して動作させ、より早く車室内の空気を外部に出すようにしてもよい。
【0045】
また、外部臭気センサ19及び臭気センサ16の測定値と閾値を比較して車室内及び車両の外部が空気汚れであると判断した場合には、動作信号Aをファン制御部25、ダンパ制御部26、ドア制御部23、ウィンドウ制御部24に出す。
第1実施形態と同様に、ドア又は/及びウィンドウを閉とすると共に前記ダンパ15を閉として車室内を密閉状態として空気を循環させて空気を浄化させる。
なお、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明である空調システムの第1実施形態の空気ダクトの配管を示す図であり、(A)は自動車の側面における空気ダクトの配管説明図、(B)はフロアにおける空気ダクトの配管説明図である。
【図2】ルーフの空気ダクト、臭気センサ、吸引口、ファンの配置図である。
【図3】(A)はルーフの空気ダクトの断面図であり、(B)はダンパを備えた空気ダクトの断面図である。
【図4】空調システムの構成図である。
【図5】空調システムの動作を示すフローチャートであり、(A)は空気状態検知部の動作、(B)はファン制御部の動作である。
【図6】空調システムの動作を示すフローチャートであり、(A)はダンパ制御部の動作、(B)はドア制御部の動作、(C)はウィンドウ制御部の動作である。
【図7】空調システムの空気汚れを検知しない場合の動作を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態の変形例の説明図である。
【図9】第1実施形態の第2変形例の説明図である。
【図10】第2実施形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動車
2 ルーフ
3 ピラー
4(4A〜4D) 座席
5 ドア開閉センサ
6 ウィンドウ開閉センサ
9 送風口
10 空調システム
11 空気ダクト
12 吸引口
13 空気清浄フィルタ
15 ダンパ
16(16A〜16D) 臭気センサ
17(17A〜17D) ファン
18 インテリアライト
20 ボディECU
21 エアコンECU
22 空気状態検知部
23 ドア制御部
24 ウィンドウ制御部
25 ファン制御部
26 ダンパ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気吸引口を開閉するダンパを備えると共にルーフ内に延在させた空気通路と、
前記空気通路と連通してルーフの室内側面に開口し、空気清浄用のフィルタを付設した車室内空気の吸引口と、
前記空気通路と連通し、前記フィルタを通した清浄空気を車室内に吹き出す送風口と、
前記送風口から清浄空気を車室内へ送風するファンと、
車室内に付設する汚染空気検知センサと、
前記汚染空気検知センサからの検知信号を受信して前記ファンおよびダンパを駆動制御する制御手段を備え、
前記制御手段は汚染空気検知センサからの前記検知信号に基づいて前記ダンパを閉作動させると共に、前記ファンを駆動して清浄空気を前記送風口から車室内に送風することを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
前記車室内に設ける汚染空気検知センサは、臭気センサあるいは/および煙センサからなる請求項1に記載の車両用空調システム。
【請求項3】
ウィンドウおよび/またはドアの開閉センサを備え、該開閉センサを前記制御手段と接続し、
前記制御手段は、汚染空気検知センサからの汚染検知信号を受信すると共に前記開閉センサからの開放信号を受信すると、開放しているウィンドウおよび/またはドアの閉鎖指示表示を出し、車室内と前記空気通路との間で空気を循環させる請求項1または請求項2に記載の車両用空調システム。
【請求項4】
ウィンドウおよび/またはドアの開閉センサと、車外空気の汚染を検知する車外汚染空気検知センサとを備え、これらセンサを前記制御手段と接続し、
前記制御手段は、汚染空気検知センサからの汚染検知信号、前記開閉センサからの閉鎖信号および前記車外汚染空気検知センサから非汚染信号を受信すると、前記閉鎖しているウィンドウおよび/またはドアの開放指示表示を出し、開放したウィンドウおよび/またはドアより車室内の空気を外部へ放出する請求項1または請求項2に記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記空気通路と連通する前記吸引口および送風口を、各座席毎に上方のルーフの室内側面に開口し、各送風口の上記ファンを取り付けると共に、前記汚染空気検知センサを各座席毎に取り付け、
前記制御手段は、汚染検知信号が出された汚染空気検知センサを設置した座席上方のファンを除く他の座席上方のファンを駆動し、汚染空気を発生する座席側から前記吸引口で吸引すると共に、他の座席の上方の送風口から清浄空気を吹き出す請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−35173(P2009−35173A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202152(P2007−202152)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】