説明

車両用空調システム

【課題】 イグニッションオフ時においても、車両内の残熱を利用してできる限り室内温度を快適に保つことができる車両用空調システムを提供する。
【解決手段】 車両用空調システム1において、エンジン駆動時に加熱されたヒータコア26が、IGスイッチ76がOFFされた場合に残熱保持状態にある場合に、車載空調装置90に車載バッテリーから駆動電源を投入することにより、車室内へ向かう空調風を発生させ、エアミックスダンパ24の開度をヒータコア26を通過する空気が多くなるよう側の通路がを通過する気流が調整して、車内温度が車外温度に近づくことを妨げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のような従来の車両用空調システムは、一般的に以下のような構成を有する。即ち、空調ケーシング内の最上流側にはブロワが配置され、空気(外気、内気)を空調ケーシング内下流側へと導く。その下流側にはエバポレータ(冷却用熱交換器)が配置されており、さらにその下流側には、ヒータコア(加熱用熱交換器)が設けられた第一通路と、このヒータコアをバイパスする第二通路とが併設されている。これらの通路の下流には混合室が設けられており、第一通路と第二通路はこの混合室と連通する。この混合室内にて、第一通路から流れてくる加熱空気と、第二通路から流れてくる冷却空気とが混合され、混合された空気がフェイス吹出口とデフロスタ吹出口とフット吹出口のいずれか又は複数から車室内へと吹出される。第一通路から流れてくる加熱空気と第二通路から流れてくる冷却空気の通過量は、エアミックスダンパの開度により決定され、これにより加熱空気と冷却空気との混合割合が調整される。エアミックスダンパはエアミックスダンパ用モータにより駆動し、その駆動制御がなされることにより所望の温度の空気が車室内に吹出される。
【0003】
ヒータコアには、車両エンジンの冷却水が循環する。ヒータコアを循環する冷却水はエンジンを冷却した後の温水であるため、この温水(冷却水)とヒータコアを通過する空気との間で熱交換して、ヒータコアを通過する空気を加熱する。つまり、ヒータコアは、エンジン駆動時に発生するエンジンの熱を利用して加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−314719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両のエンジンを停止して乗員が車両を離れる際には、イグニッションスイッチがOFF状態とされて空調装置が停止する。このため、車内温度(車室内温度)は徐々に車外温度に近づく。一方、エンジン停止直後のエンジン周辺の温度(冷却水等)は駆動時の残熱が保持されているから高温状態のままである。しかしながら、通常、エンジンルームと車室内とは十分に遮熱されており、車内温度はエンジンの残熱を利用することなく車外温度に達してしまう。また、エンジンルームに十分な残熱があったとしても、車室内のような保温機能が存在しないため、残熱を有効に利用することができない。
【0006】
本発明の課題は、イグニッションオフ時においても、車両内の残熱を利用してできる限り室内温度を快適に保つことができる車両用空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用空調システムは、
吸込み口から空気を吸引して送り出すことにより車室内へ向かう空調風を発生させる空調風発生手段と、送り出される空気を冷却する冷却用の熱交換器と、前記冷却用の熱交換器を通過した空気を加熱する加熱用の熱交換器と、前記加熱用の熱交換器を通過して加熱された空気が通過する第一通路と、前記冷却用の熱交換器を通過し、なおかつ前記加熱用熱交換器をバイパスした空気が通過する第二通路と、それら第一通路及び第二通路を通過した空気の混合比率を調整するよう駆動して車室内に吹出される空調風の温度を調整する温度調整駆動手段と、を備えるとともに、前記熱交換器が少なくとも車両のイグニッションスイッチのON状態を前提として冷却ないし加熱される車両用空調システムであって、
車外温度を検出する車外温度検出手段と、
車内温度を検出する車内温度検出手段と、
前記イグニッションスイッチのOFF状態における前記熱交換器のうちのいずれか又は双方の残熱状態が、通過する前記空調風によって前記車内温度が前記車外温度に近づくことを妨げることのできる残熱保持状態にあるか否かを判定する残熱状態判定手段と、
前記イグニッションスイッチのOFF操作がなされた際に、前記残熱状態判定手段により前記熱交換器の残熱状態が前記残熱保持状態にあると判定された場合に、前記空調風発生手段に対し車室内へ向かう前記空調風を発生させ、なおかつ前記温度調整駆動手段に対し前記第一通路及び前記第二通路から流出する前記空調風の前記混合比率を、前記車内温度が前記車外温度に近づくことを妨げる方向に調整させる残熱利用空調制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記本発明の構成によれば、イグニッションスイッチがOFFとなった後も、少なくともイグニッションスイッチのON状態において発生した車両の残熱を有効利用する空調制御が実施される。具体的にいえば、イグニッションスイッチのOFF操作がなされた際に、残熱状態判定手段により熱交換器の残熱状態が残熱保持状態にあると判定された場合には、残熱利用空調制御手段が、空調風発生手段に対し車室内へ向かう空調風を発生させ、なおかつ温度調整駆動手段に対し第一通路及び第二通路から流出する空調風の混合比率を、車内温度が車外温度に近づくことを妨げる方向に調整させることを可能とする。これにより、ガソリン燃料等を消費することなく、車室内温度をできる限り快適に保つことができる。また、残熱を利用した空調制御は、熱交換器の残熱が車内を快適に保つために有効利用できる場合に限って実施されるので、無駄な空調駆動が実施されて、バッテリー電源を無駄に消費することもない。
【0009】
上記本発明において、前記加熱用の熱交換器として、通過する前記空気を前記エンジンの冷却水の熱によって加熱するヒータコアを設けることができる。この場合の残熱状態判定手段は、前記車外温度検出手段により検出される前記車内温度が前記車内温度検出手段により検出される前記車外温度よりも高く、なおかつ前記加熱用の熱交換器の残熱状態が、該加熱用の熱交換器を通過する空気により、前記車内温度を高くすることが可能な残熱保持状態にあるか否かを判定するものとできる。また、この場合の残熱利用空調制御手段は、当該残熱保持状態にあると判定された場合に、前記車内温度が高くなる方向に前記温度調整駆動手段を駆動制御するように構成できる。イグニッションスイッチのOFFに伴いエンジンが停止した直後は、エンジン及びその周辺部は高温状態のままである。上記構成によると、このエンジン部の残熱を空調装置の暖房出力として有効利用できる。
【0010】
本発明の残熱利用空調制御手段は、前記イグニッションスイッチのOFF操作がなされた後、車室内への前記空調風が間欠的に発生するよう前記空調風発生手段を間欠駆動するよう構成できる。この構成によると、車載バッテリーの消費を抑制した形で、残熱を利用した空調制御を実施することができる。
【0011】
本発明においては、空調風発生手段を駆動するための電源供給源である車載バッテリーの残量を検出するバッテリー残量検出手段と、検出される前記車載バッテリーの残量に応じて、間欠駆動する前記空調風発生手段の駆動期間及び/又は停止期間を決定する駆動期間決定手段と、を備えて構成することができる。この場合、残熱利用空調制御手段は、決定された前記駆動期間及び/又は前記停止期間に従い前記空調風発生手段を間欠駆動するように構成できる。このとき、駆動期間決定手段は、検出される前記車載バッテリーの残量が少ないほど該車載バッテリーの負担が軽減される形で前記駆動期間及び/又は前記停止期間を定めるものとできる。これにより、バッテリー残量が少ない場合には残熱を利用した空調制御の実施期間を短くできるから、バッテリー上がりを防止できる。具体的には、車載バッテリーの残量に応じた空調風発生手段の駆動期間及び/又は停止期間を定める間欠駆動情報を記憶する間欠駆動情報記憶部を備えて構成し、当該間欠駆動情報に、前記車載バッテリーの残量が少ないほど該車載バッテリーの負担が軽減される形で前記駆動期間及び/又は前記停止期間を予め定めておく。そして、駆動期間決定手段が、記憶されている前記間欠駆動情報に基づいて、前記空調風発生手段の前記駆動期間及び/又は前記停止期間を決定するように構成する。
【0012】
本発明の残熱利用空調制御手段は、前記空調風発生手段を備えて構成される車載空調装置全体に対し、前記車載バッテリーからの電源供給及び電源遮断を切り替えることにより前記空調風発生手段を間欠駆動するものとできる。この構成によると、車載空調装置への電源電圧を供給/遮断の間で切り替えるだけのシンプルな形で、上述の残熱を利用した空調制御を実現できる。
【0013】
また、本発明においては、前記車両への再乗車予定時間の入力を受け付ける再乗車予定時間入力手段と、入力された前記再乗車予定時間となるまでの間、前記熱交換器が前記残熱保持状態を継続できるか否かを判定する継続判定手段と、を備えて構成できる。この場合、残熱利用空調制御手段は、前記再乗車予定時間となるまでの間、前記熱交換器が前記残熱保持状態を継続できると判定された場合には、前記空調風が間欠的に発生するよう前記空調風発生手段を間欠駆動する一方で、継続できないと判定された場合には、前記熱交換器が前記残熱保持状態ではなくなるまで前記空調風が連続的に発生するよう前記空調風発生手段を連続駆動するよう構成できる。この構成によると、熱交換器の残熱が、ユーザーの再乗車前に尽きる場合は、できるだけ早くその残熱を車室内に導入されるから、エンジンルーム内で消費される残熱を減じることができから、残熱を無駄なく有効に使いきることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による車両用空調システムの一実施形態を模式的に示すブロック図。
【図2】車両用空調装置の一実施形態を模式的に示すブロック図。
【図3】第一実施形態の残熱利用空調制御の流れを示すフローチャート。
【図4】第二実施形態の残熱利用空調制御の流れを示すフローチャート。
【図5】第三実施形態の残熱利用空調制御の流れを示すフローチャート。
【図6】第四実施形態の残熱利用空調制御の流れを示すフローチャート。
【図7】第五実施形態の残熱利用空調制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
(第一実施形態)
図1は、本発明の車両用空調システムの一実施形態を模式的に示したブロック図である。図1に示す車両用空調システム1は、車載空調装置90と、車載空調装置90を駆動するための電源供給源をなすバッテリー(車載電源)80と、バッテリー80から車載空調装置90への電源供給ラインを導通/遮断の間で切り替える切替スイッチ(ここではリレー)81と、切替スイッチ81のON/OFFを制御する電源制御ECU70と、車載バッテリー80の出力電流を検出する電流検出部(電流センサ)82と、を有して構成される。
【0017】
電源制御ECU70は、レギュレータ72を介してバッテリー電圧の供給を受けて駆動するものであり、メモリ71aを搭載のMPU(Micro Processing Unit)71を備える。MPU71の出力には、切替スイッチ(リレー)81のON/OFFを行うためのFET(Field Effect Transistor:電界効果型トランジスタ)74が接続されている。つまり、電源制御ECU70は、車載空調装置90に対する車載バッテリー80からの電源電圧の供給/遮断を切り替える電源制御手段として機能する。また、MPU71は、他のECUと通信するためのCANトランシーバ73と接続している。
【0018】
MPU71は、バッテリー80の出力電流及び出力電圧が入力される。MPU71は、メモリ71aに記憶されるプログラムを実行し、これらの出力電流や出力電圧の変化に基づいて、バッテリー80のバッテリー残量を算出する残量算出処理を実施する。これにより、MPU71は、バッテリー残量検出手段として機能する。
【0019】
また、MPU71は、イグニッションスイッチ(以下、IGスイッチと略す)76と接続し、ON/OFF信号が入力される。IGスイッチ76のON/OFF信号を他のECU等から受信する構成でもよい。
【0020】
車載空調装置90は、レギュレータ72を介してバッテリー電圧の供給を受けて各部が駆動するよう構成されている。具体的には、エアコンECU60に、操作パネル50と、各種エアコンセンサ51〜54と、各種エアコン駆動部11,19,29,39,24が接続した構成を有しており、これら各部はバッテリー80からエアコンECU60への電源供給がなされることで動作可能となる。
【0021】
図2は、車両用空調システムの内部を示す模式図である。車両用空調システム1は、図2に示すような空調ユニットAUを備える。空調ユニットAUの空気流路をなす空調ケーシング10の上流側部位には、車室内気を吸入するための内気吸入口12と、外気を吸入するための外気吸入口13とが形成されており、各吸入口12,13を選択的に開閉する内外気切替ダンパ14が設けられている。内外気切替ダンパ14は、内外気切替ダンパ用モータ19によって開閉される。
【0022】
内外気切替ダンパ14の下流側部位には、空気中の塵埃を取り除くフィルタ(図示省略)と、車室内へ向かう空調風を発生させるためのブロワファン16を駆動するブロワモータ(空調風発生手段)11が配設されている。ブロワモータ11は、各吸入口12,13から空気を吸入して後述する各吹出口31,32,33に向けて送風する。
【0023】
空調ケーシング10内のブロワモータ11の下流側部位には、エバポレータ25が設けられている。エバポレータ25は、コンプレッサ24、コンデンサ23、エキスパンションバルブ21と共に、冷媒が循環される周知の冷凍サイクルを形成している。コンプレッサ24がエンジンEGと連動して回転駆動することにより冷媒が圧縮され、これにより高温高圧となった冷媒がコンデンサ23へ送り出される。コンデンサ23では、高温高圧の冷媒が冷却されることにより液化され、液化された冷媒がエバポレータ25へ送られる。エバポレータ25では、液化された冷媒が気化し、このとき、エバポレータ25を通過する空気との間で熱交換が生じて、エバポレータ25を通過する空気が冷却される。つまり、本実施形態のエバポレータ25は、IGスイッチ76のONが前提となるエンジンEGの駆動状態において、エンジンEGとコンプレッサ24と連動駆動することにより冷却されて冷却用の熱交換器として機能する。
【0024】
空調ケーシング10内のエバポレータ25の下流側部位には、エアミックスダンパ24およびヒータコア26が設けられている。エアミックスダンパ24は、エアミックスダンパ用モータ(温度調整駆動手段)29によって開閉される。空調ケーシング10内には、上流側のエバポレータを通過した空気を、ヒータコア26を通過する形で下流側に導入するための第一通路(温風通路)28と、ヒータコア26をバイパスして下流側に導入するためのバイパス通路をなす第二通路(冷風通路)27とが形成されている。これにより、エアミックスダンパ24を開閉駆動して、ヒータコア26を通る暖気とバイパス通路27を通る冷気との混合割合(混合比率)を変化させることで、車室内に吹出す空気(空調風)の温度が調節される。
【0025】
ヒータコア26は、車両の走行用駆動源となるエンジンEG内を循環する冷却水を熱源とし、通過する空気(空調風)の加熱を行う加熱用の熱交換器として機能する。ヒータコア26とエンジンEGとの間には、冷却水が循環される循環回路30が形成されており、電動ポンプ(図示省略)が作動することによりエンジンEGからヒータコア26へ冷却水が送り出され、ヒータコア26を通過・循環した冷却水が電動ポンプを介してエンジンEGへ戻される。ヒータコア26を通過・循環する冷却水はエンジンEGを冷却した後の温水であるため、この温水(冷却水)とヒータコア26を通過する空気との間で熱交換して、ヒータコア26を通過する空気を加熱するようになっている。つまり、本実施形態のヒータコア26は、IGスイッチ76のONが前提となるエンジンEGの駆動状態において、該エンジンEGの駆動に伴い発生する熱により加熱されて加熱用の熱交換器として機能する。
【0026】
空調ケーシング10内の最下流側部位には、フロントガラスFGの内面に向けて空気を吹出すためのデフロスタ吹出口33と、乗員の上半身に向けて空気を吹出すためのフェイス吹出口32と、乗員の足元に向けて空気を吹出すためのフット吹出口31とが形成されている。各吹出口31,32,33の上流側部位には、モード切替ダンパ34,35,36がそれぞれ配設されている。各モード切替ダンパ34,35,36は、モード切替ダンパ用モータ39によって開閉駆動される。
【0027】
エアコンECU60は、メモリ61aを搭載のMPU(Micro Processing Unit)61を備えて構成されており、車両用空調システム1の動作中は、メモリ61aに記憶されている空調制御プログラムを実行する。この空調制御プログラムをMPU61が実行することにより、各種エアコンセンサ51〜55の検出結果に基づく各種エアコン駆動部11,19,29,39,24の空調制御が実施される。
【0028】
エアコン駆動部11,19,29,39はそれぞれ、アクチュエータをなす駆動モータと、その駆動回路とにより構成されている。ここでは、バッテリー80からの電圧入力を受ける各駆動回路41〜45が、エアコンECU60の制御信号に応じて、対応するアクチュエータ(内外気切替ダンパ用モータ19、ブロワモータ11、エアミックスダンパ用モータ29、モード切替ダンパ用モータ39)にそれぞれ駆動電流を流す。本実施例では、エアミックスダンパ24を開閉駆動するエアミックスダンパ駆動部55が、温度調整駆動手段として機能する。
【0029】
エアコンセンサ51〜55は、車内温度を検出する内気温センサ(車内温度検出手段)53、車外温度を検出する外気温センサ(車外温度検出手段)52、日射量を検出する日射センサ51、上述した冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ(水温センサ)54、上述したエバポレータ25を通過した直後の空気の温度を検出するエバポレータ後センサ(エバ後センサ)55であり、それぞれの検出結果はエアコンECU60に出力される。
【0030】
操作パネル50(操作スイッチ)は、内外気切替ダンパ14を作動させるための内外気切替スイッチ、モード切替ダンパ34〜36を作動させるための吹出口切替スイッチ、フルオート制御状態とするためのオートモードスイッチ、ブロワモータ11の風量を変更するためのブロワコントロールスイッチ、温度を設定するための温度コントロールスイッチ、コンプレッサ24をエンジンEGと連動駆動させるためのマグネットクラッチをオン・オフするためのA/Cスイッチなどの各種スイッチを備えている。また、操作パネル50は、上記各種スイッチにより設定された各種設定情報(設定温度や設定風量等)を表示するための表示部(例えば、LCD)を備えている。
【0031】
また、MPU61は、他のECUと通信するためのCANトランシーバ63と、を備えて構成される。本実施形態においては、CANトランシーバ63を介して上述した電源制御ECU70との間で通信可能とされている。
【0032】
次に、上記のように構成した本実施形態の作動について説明する。
【0033】
電源制御エアコンECU70は、IGスイッチ76のOFF操作により、MPU71が、メモリ71aに記憶されている残熱利用空調制御プログラムを実行し、これが所定周期にて繰り返される。ここでは、MPU71により、図3に示すような残熱利用空調制御プログラムが実行され、これを実行するMPU71が本発明の残熱利用空調制御手段として機能する。
【0034】
図3では、まずS101にて、MPU71が、IGスイッチ76のOFF操作としてなされるエンジン停止操作の有無を判定する。IGスイッチ76のOFF操作が無ければそのまま処理を終了し、該OFF操作があった場合には車載空調装置90へのバッテリー電源の供給を継続したままS102に進む。ただし、このとき車載空調装置90がOFF状態の場合は、バッテリー電源の供給してON状態とする。本実施形態においては、該OFF操作があった場合には、切替スイッチ(リレー81)のON状態(通電状態)を保持し、車載空調装置90への電源供給を継続し、空調出力を継続した状態(空調風の車室内へ出力した状態)のままS102に進む。
【0035】
S102では、MPU71が、IGスイッチ76のOFF操作によるエンジンEGの停止に伴い、空調ケーシング10内の空調風の通過通路に配置された熱交換器の残熱状態が、通過する空調風によって現在の車内温度が同じく現在の車外温度に近づくことを妨げることのできる残熱保持状態にあるか否かを判定する(残熱状態判定手段)。熱交換器は、エンジン駆動時に熱源として機能するよう駆動するものであるから、エンジンが停止するとその駆動を停止する。ただし、熱源として機能していた熱交換器は、その駆動を停止した後、徐々に熱を失うものであるから、熱源としての機能はある程度の時間をかけて消失する。従って、消失するまでの間(車外温度と同等になるまでの間)は空調に利用可能な残熱保持状態であり、熱源として利用可能である。
【0036】
本実施形態において、空調ケーシング10内の第一通路28には、加熱用熱交換器としてヒータコア26が配置されており、このヒータコア26の残熱は車室内を暖めるために利用できる可能性がある。このため、S102では、まずは、MPU71が、内気温センサ(車内温度検出手段)53、外気温センサ(車外温度検出手段)52、水温センサ54の現時点における検出結果をエアコンECU60から通信取得する。そして、取得した車内温度が、同じく取得した車外温度よりも高いか否かを判定し、さらに、水温センサ54の検出結果に基づいてヒータコア26の温度(残熱状態)を特定し、特定したヒータコア温度が、内気温センサ53から取得した車内温度よりも高いか否かを判定する。これらの判定結果として、車内温度>車外温度で、なおかつヒータコア温度>車内温度であるとの結果が得られた場合には、残熱保持状態であると判断されてS103に進み、残熱利用空調を開始する。他方、それ以外の場合はS110に進み、車載空調装置90への電源供給を遮断して本処理を終了する。本実施形態においては、切替スイッチ(リレー)81をON状態(通電状態)からOFF状態(遮断状態)に切り替え、エアコンECU60への電源供給を遮断し、本処理を終了する。
【0037】
なお、ヒータコア26の温度は、例えば温度センサによってその表面温度等を直接的に検出するようにしてもよいが、本実施形態においては、ヒータコア26の温度を間接的に取得できる冷却水の温度(冷却水温度センサの検出結果)を冷却水温度センサ54にて検出し、その検出結果に基づいて、ヒータコア26の温度を特定(ないし推定)する。
【0038】
続くS103では、MPU71が、切替スイッチ81をON状態として車載空調装置90にバッテリー電源を供給するON時間(電源供給期間)と、切替スイッチ81をOFF状態としてバッテリー電源の供給を遮断するOFF時間(電源遮断期間)を決定する。このON時間とOFF時間は、双方が固定的に設定されるようメモリ71a内にそれぞれの期間を記憶しておいてもよいし、いずれか一方のみを固定するようにしてもよい。ここでは、ON時間が、車室内外の温度差が大きいほど相対的に長くなるように設定される。具体的には、車室内外の温度差と車載空調装置90への電源供給期間(ON時間)との関係を規定する電源供給期間決定参照情報(間欠駆動情報)が、ここではマップとしてメモリ(間欠駆動情報記憶部)71aに予め記憶されており、この情報に基づいて、ON時間を算出・設定する。なお、OFF時間については、ここでは、予め定められた期間がメモリ71aに記憶されており、その期間に固定的に設定される。
【0039】
続くS104では、MPU71が、自身のタイマー機能を利用する形で時間カウントを開始し(タイマーセット)、S105にて、S103で設定されたON時間が経過したと判定されるまで、カウントを継続する。S105にて、ON時間が過ぎたと判定された場合にはカウントを終了してS106に進み、切替スイッチ(リレー)81をOFFに切り替えて、車載空調装置90にバッテリー電源を遮断する。そして、S107にて、再び時間カウントを開始し(タイマーセット)、S108にて、S103で設定されたOFF時間が経過したと判定されるまで、カウントを継続する。S108にて、OFF時間が過ぎたと判定された場合にはカウントを終了してS109に進み、切替スイッチ81をONに切り替えて、車載空調装置90への車載バッテリー電源の供給を再開し、S102に戻る。
【0040】
これにより、本実施形態における残熱利用空調は、車載バッテリー80から車載空調装置90への電源電圧の供給/遮断を切り替えるスイッチ制御のみで、空調風を完結的に発生させる。空調パラメータの設定変更や駆動部への制御などの複雑な制御は一切存在しないシンプルなものとなっている。なお、ここでの空調風は、残熱保持状態の熱交換器26を通過した暖気として車室内に吹出され、車室内の温度を快適に保とうとするが、空調パラメータは、ユーザーがIGスイッチ76のOFF直前に設定していた値がそのまま継続して設定される。このため、残熱利用空調が実行されることで、車室内はユーザーの設定に従う形でユーザーの望む空調状態に近づくよう調整される。
【0041】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0042】
(第二実施形態)
上記した実施形態の残熱利用空調制御プログラムにおいて、残熱がより有効に利用されるように、残熱利用空調を実施するに際し、車載空調装置に設定されている所定の空調パラメータを予め定められた残熱利用空調用の値に設定変更するように構成することもできる。具体的には、図4に示すような処理とすることができる。
【0043】
S1及びS2の処理は、図3のS101及びS102の処理と同様である。続くS3では、MPU71が、エアコンECU60に対し残熱利用空調を開始させるための残熱利用空調モード設定用の制御信号を送信し、車載空調装置90のエアコンECU(空調制御手段)の制御モードを、残熱利用空調モードに切り替える(残熱利用空調モード設定手段)。
【0044】
具体的には、エアミックスダンパ24の残熱利用空調用の開度設定情報(位置設定情報)を含む制御信号を送信する。即ち、空調ケーシング10内の第一通路28及び第二通路27から流出する空調風の混合比率が、車内温度が車外温度に近づくことを妨げる方向に調整されるよう、エアミックスダンパ24の開度を設定するための制御信号が送信される。なお、ここで設定されるエアミックスダンパ24の開度は固定的に決定されるようにしてもよいが、本実施形態においては、車内温度が車外温度に近づくことを妨げる側の空調風の通路を全開とし、他方の通路を全閉とする。これにより、エンジン残熱をより有効に利用できる。ここでは、車内温度を高くするべく第一通路28を全開、第二通路(バイパス通路)27を全閉とする位置(K100)となるようエアミックスダンパ24の開度を設定するための制御信号が送信される。
【0045】
なお、残熱利用空調モードの設定時には、エアミックスダンパ24の開度のみを変更し、それ以外はそれ以前の設定状態をそのまま継続するものとしてもよい。これにより、余計なパラメータ変更設定処理を省略できる。ただし、残熱がより効果的に車室内に送り込まれるよう風量やモード等の設定も変更してもよい。本実施形態においては、車室内に暖気を導くのであるから、吹出し口を足元とするようモード変更を行い、風量も予め定められた風量レベルを上回る所定の風量レベルに設定を変更する。さらに、外気が車室内に吸入されぬよう吸入口を内気吸入側に設定する。つまり、残熱利用空調モードの設定時には、残熱利用空調用の初期設定として、車載空調装置90における所定の空調パラメータが予め定められた残熱利用空調用の値に設定変更される。残熱利用空調用の各種空調パラメータ(開度設定情報やモード設定情報、風量設定情報、吸入口設定情報)は残熱利用空調モード設定用制御情報としてメモリ71aに予め記憶されており、これらに基づいて上述した残熱利用空調モード設定用の制御信号が送信される。
【0046】
S3の実行に伴い車載空調装置90では、エアコンECU60が、受信する残熱利用空調モード設定用の制御信号(残熱利用空調用の開度設定情報やモード設定情報、風量設定情報、吸入口設定情報等)に基づいて、各種設定パラメータを変更する。そして、この変更に伴い各種駆動部の駆動状態が切り替わる。本実施形態においては、エアミックスダンパ24の開度が第一通路28を全開、第二通路(バイパス通路)27を全閉とする位置(K100)となるようエアミックスダンパ用モータ29が駆動し、残熱利用空調用に定められた風量レベルの空調風が発生するようブロワモータ11が駆動し、吹出し口が足元となるようモード切替ダンパ用モータ39が駆動し、吸入口が内気側(12)となるよう内外気切替ダンパ用モータ19が駆動する。なお、変更設定後の各種設定パラメータは、後述するOFF時間においても設定保持され、再びON時間が開始されるに伴い同じ設定のまま空調制御(各エアコン駆動部の駆動制御)が再開するようになっている。エアミックスダンパ24は、OFF時間の間、残熱利用空調モード設定時の駆動を完了した位置に保持され、後にON時間が到来した際には動作を生じない。他方、IGスイッチ76のOFF直前のこれらのパラメータは、上述のパラメータ設定変更の際にMPU61のメモリ61aに別途記憶される。次回のIGスイッチ76のON時には、このとき別途記憶されたパラメータに基づいて空調制御(各エアコン駆動部の駆動制御)が再開する。
【0047】
続くS4〜S10の処理は、図3のS103〜S109の処理と同様である。また、続くS11の処理はS102の処理と同様である。S12の処理はS110の処理と同様である。
【0048】
ただし、図4の処理においては、S3にて設定された残熱利用空調用の空調パラメータにより、以降の空調出力が実施されることになるから、S4にて決定されるON時間とOFF時間は、S3にて設定されるパラメータに基づいて実験的に導き出された時間とするとよい。ただし、ON時間が、車室内外の温度差が大きいほど相対的に長くなるように設定される点については、同様とすることができる。
【0049】
(第三実施形態)
また、残熱利用空調制御プログラムにおいて、バッテリー残量が所定レベルを下回る際には、残熱利用空調を直ちに終了するように構成することもできる。具体的には、図5に示すような処理とすることができる。
【0050】
S21では、図3のS101と同様、MPU71が、IGスイッチ76のOFF操作としてなされるエンジン停止操作の有無を判定する。IGスイッチ76のOFF操作が無ければそのまま処理を終了し、該OFF操作があった場合には車載空調装置90への電源供給を継続したままS22に進む。
【0051】
S22では、MPU71がバッテリー80の残量を算出し、これをメモリ71aの予め定められた記憶領域(バッテリー残量記憶部)に記憶する。続くS23では、算出されたバッテリー80の残量が、予め定められた基準レベルを下回るか否かを判定し、該基準レベルを下回る場合はバッテリー残量不足と判断してS36に進み、車載空調装置90への電源供給を遮断し(切替スイッチ81をOFF)、本処理を終了する。他方、算出されたバッテリー80の残量が該基準レベルを下回らない場合はS24に進む。
【0052】
S24〜S32の処理は、図3のS102〜S110の処理と同様である。
【0053】
ただし、図5の処理において、S25にて決定されるON時間とOFF時間は、S22にて算出される車載バッテリーの残量に応じて、上述したON時間(駆動期間)及び/又はOFF時間(停止期間)とを決定する(駆動期間決定手段)。これらの期間は固定的に決定されてもよいが、ここでは特に、メモリ(間欠駆動情報記憶部)71aに予め記憶される間欠駆動情報を参照して、車載バッテリー80の残量が少ないほど該車載バッテリー80の負担が軽減される形で、ON時間及びOFF時間のいずれか又は双方が定められるものとする。本実施形態においては、ON時間については、既に述べた実施形態と同様の決定方法に従い決定し、OFF時間については、直前に算出されたバッテリー80の残量(S22ないしは後述のS33)をメモリ71aから読み出し、その残量に応じたOFF時間を、間欠駆動情報を参照して決定し、設定する。ここでは特に、バッテリー80の残量が少ないほどOFF時間が長くなるよう、バッテリー80の残量と車載空調装置90への電源遮断期間(OFF時間)との関係を規定した電源遮断期間決定参照情報(間欠駆動情報)が、ここではマップとしてメモリ71aに記憶されており、この情報に基づいてOFF時間を決定し、設定する。
【0054】
ON時間とOFF時間とについては、バッテリー残量を一定以上確保した状態で、なおかつ熱交換器の残熱を効果的に利用できるように定められることが望ましく、その決定方法は他の方法であってもよい。例えば、バッテリー80の残量が少ないほどON時間が短く設定されるようにしてバッテリー負荷を軽減してもよいし、車室内外の温度差が大きいほどOFF時間が短く設定されるようにしてON時間を相対的に長くするようにしてもよい。
【0055】
なお、この図5の処理に、図4のS3のように車載空調装置90を残熱利用空調モードに切り替える処理が追加されていてもよい。
【0056】
(第四実施形態)
また、再乗車予定時間をユーザーが入力できる構成の場合は、残熱利用空調制御プログラムを以下のようにすることができる。即ち、再乗車予定時間となった際の熱交換器の残熱状態が、空調風により車内温度が車外温度に近づくことを妨げることのできる残熱保持状態ではなくなっていると算定される場合に、現存する熱交換器の残熱を直ちに使い切るような第二の残熱利用空調を実施する構成である。具体的には、図1のタイマー時刻入力装置75がMPU71に接続する構成をなし、図6に示す処理を実施することで実現できる。なお、タイマー時刻入力装置75は、車両からユーザーが離れた後にユーザーが再乗車するであろう時刻(再乗車予定時間)のユーザー入力を受け付けるための入力装置であり、その入力結果はMPU71に送信される。
【0057】
S41及びS42は、図3のS101及びS102と同様の処理である。続くS43では、MPU71が、ユーザーによる再乗車予定時間の設定入力の有無を判定する。この設定入力は、IGスイッチ76のOFF操作がなされるに伴いユーザーに促されるような構成とすることができ、ここではタイマー時刻入力装置(再乗車予定時間入力手段)75において、何分後に再乗車するか、あるいは何時に再乗車するのかの入力がユーザーに促されるものとする。ユーザーによる再乗車予定時間の設定入力がなされなかった場合にはS49に進む。S49〜S57の処理は、図4のS3〜S11と同様の処理である。他方、ユーザーによる再乗車予定時間の設定入力がなされた場合には、S44に進む。
【0058】
S44では、MPU71が、熱交換器(ここでは符号26)の残熱状態を検出する。続くS45では、その検出結果から、該熱交換器の残熱状態が、再乗車予定時間となる前に、上述の残熱保持状態ではなくなるか否かを判定する(残熱保持状態継続判定手段)。ここでは、水温センサ54が検出する冷却水温度の時間経過に伴う温度変化を特定するための残熱消失経過情報をメモリ71aに記憶しておき、この情報に基づいて、熱交換器(ここでは符号26)が残熱保持状態ではなくなる時間を算出し、それが再乗車予定時刻よりも前であるのか否かを判定する。なお、ここでは、水温センサ54が検出する冷却水温度が、外気温センサ52が検出する車外温度に対し所定レベル以上近接した場合を、熱交換器(ここでは符号26)が残熱保持状態ではなくなったと判定するものとする。S45にて、再乗車予定時間前に残熱保持状態ではなくなると判定された場合はS46に進み、残熱保持状態のままであると判定された場合はS49に進み、S49〜S57(図4のS3〜S11と同様)の残熱利用空調を開始する。
【0059】
S46では、図4のS3と同様に、MPU71が、エアコンECU60に対し残熱利用空調を開始させるための残熱利用空調モード設定用の制御信号を送信して、エアコンECU60に各種設定パラメータを変更させる。これにより、当該設定に基づく第二の残熱利用空調が開始する。
【0060】
この第二の残熱利用空調は、以下のような意図で実施される。即ち、再乗車予定時間前に熱交換器(ここでは符号26)が残熱保持状態ではなくなるから、現存する熱交換器の残熱を、より保温性の高い車室内にいち早く送り届け、残熱をエンジンルーム内等で無駄に消耗させないために実施する。このため、エアコンECU60により設定されている各種設定パラメータ(エアミックスダンパ24の開度、風量レベル、吹出し口、吸入口等)は、S49以降で実施される第一の残熱利用空調よりも、熱交換器の残熱が無駄に消費されないよう、できるだけ素早く車内温度を高くできる値(第二の残熱利用空調用の値)に設定変更されることが望ましい。ここでは、風量レベルを最大、エアミックスダンパ24を車内温度が車外温度に近づくことを妨げる側の空調風の通路を全開(他方の通路を全閉)に設定されるものとする。さらに、吹出し口や吸入口も、残熱が無駄に消費されないような設定とする。なお、IGスイッチ76のOFF直前のパラメータはMPU61のメモリ61aに別途記憶され、次回のIGスイッチ76のON時には、このとき記憶されたパラメータに基づいて、各エアコン駆動部が駆動する。
【0061】
S47では、MPU71が、熱交換器(ここでは符号26)の残熱状態を検出し(S44と同様)、その検出結果に基づいて、該熱交換器の残熱状態が残熱保持状態ではなくなったか否かを判定する。残熱保持状態ではなくなっていなければ、上述の第二の残熱利用空調を継続し、残熱保持状態ではなくなっていればS48に進む。つまり、残熱保持状態でなくなるまで車載空調装置90を連続駆動し、車室内に空調風を吹出し続ける。S48では、車載空調装置90への電源供給を遮断して(切替スイッチ81をOFF)、本処理を終了する。
【0062】
なお、この図6の処理のうち、S49から続く第一の残熱利用空調は、図3のS102〜S109に示す最もシンプルな処理に置き換えてもよいし、図5のS22〜S32のように、バッテリー残量に基づく処理としてもよい。なお、バッテリー残量を利用する場合には、S42の直前にて、S22及びS23の処理がなされるとよい。
【0063】
(第五実施形態)
また、車両のドアの開錠情報/施錠情報を、MPU61が取得可能な構成の場合は、IGスイッチ76のOFF操作の後に、車両の全ドアが所定期間の間継続して閉状態となっていると判定された場合、あるいは車両の全ドアが施錠状態となっていると判定された場合に、残熱利用空調が開始するような構成とすることができる。これにより、ドアの開閉による熱のロスが少なくなる。具体的には、図1のドア開閉検出部78やドアロック状態検出部77がMPU71に接続する構成をなし、図7に示す処理を実施することで実現できる。なお、ドア開閉検出部78はドアの開閉状態を検出するものであり、ドアロック状態検出部77はドアのロック/アンロック状態を検出するものであり、いずれも周知のものである。
【0064】
S71では、図3のS1と同様、MPU71が、IGスイッチ76のOFF操作としてなされるエンジン停止操作の有無を判定する。IGスイッチ76のOFF操作が無ければそのまま処理を終了し、該OFF操作があった場合には車載空調装置90への電源供給を継続したままS72に進む。S72では、MPU71が、車両の全ドアが閉状態であるか否かを判定する。ここでは、MPU71が、各ドアのドア開閉検出部の検出結果を取得し、それら各検出結果に基づいて判定する。全ドアが閉状態であると判定されるとS73に進み、時間カウントを開始する。S74にてドアの開状態が検出された場合にはS72に戻り、検出されなければS75に進む。S75では、全ドアの閉状態が予め定められた期間の間継続したか否かを判定し、継続したと判定された場合にはS76に進み、継続したと判定されなければS74に戻る。S76からは、図3の処理と同様である。
【0065】
なお、図7の処理のように、全ドアが閉状態のまま所定期間経過した場合に残熱利用空調が再開される構成としてもよいし、全ドアがロック状態のまま所定期間経過した場合に残熱利用空調が再開される構成としてもよい。また、S76〜S84の処理は、図3〜図6の処理(S102〜S110、S2〜S12、S22〜S32、S42〜57)に置き換えてもよい。
【0066】
ところで、以上で述べた実施形態においては、エアコンECU60へのバッテリー電源電圧の供給/遮断を切り替える形で、残熱利用空調時の空調風を間欠的に発生させる構成であったが、電源制御ECU70が、残熱利用空調に利用される検出部から検出信号を直接受信し、同じく残熱利用空調に利用される駆動部のみを、直接的に駆動制御する構成であってもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、加熱用熱交換器としてヒータコア26を採用しているが、これ以外のものを利用してもよい。また、加熱用熱交換器ではなく、冷却用熱交換器の残熱を利用して、車外温度が車内温度よりも高い時に、車内温度が高くならないよう冷風を出力する残熱利用空調を実施してもよい。上述の実施形態において、車内温度を低くするべく第一通路28を全閉、第二通路(バイパス通路)27を全開とする位置(K0)となるようエアミックスダンパ24の開度を設定する。このとき、吹出し口も、乗員の上半身に向けて空気を吹出すフェイス吹出口32に設定されるとよい。
【0068】
また、コンプレッサ24がエンジンと連動駆動するものではなく、通常時にはIGスイッチのONにより駆動するコンプレッサモータを別途備えて駆動するものであれば、IGスイッチがOFFされた後の残熱利用空調において、車載空調装置90(エアコンECU60)にバッテリー電源が供給されるに伴い当該コンプレッサモータを駆動して、車室内に冷気を吹出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 車両用空調システム
60 エアコンECU
70 電源制御ECU
80 車載バッテリー
81 切替スイッチ
90 車載空調装置
AU 空調ユニット
EG エンジン
14 内外気切替ダンパ
16 ブロワファン
24 エアミックスダンパ
25 エバポレータ(熱交換器)
26 ヒータコア(熱交換器)
34,35,36 モード切替ダンパ
52 外気温センサ(車外温度検出手段)
53 内気温センサ(車内温度検出手段)
54 冷却水温度センサ(水温センサ)
55 エバポレータ後センサ(エバ後センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込み口から空気を吸引して送り出すことにより車室内へ向かう空調風を発生させる空調風発生手段と、送り出される空気を冷却する冷却用の熱交換器と、前記冷却用の熱交換器を通過した空気を加熱する加熱用の熱交換器と、前記加熱用の熱交換器を通過して加熱された空気が通過する第一通路と、前記冷却用の熱交換器を通過し、なおかつ前記加熱用熱交換器をバイパスした空気が通過する第二通路と、それら第一通路及び第二通路を通過した空気の混合比率を調整するよう駆動して車室内に吹出される空調風の温度を調整する温度調整駆動手段と、を有した車載空調装置を備え、前記熱交換器が少なくとも車両のイグニッションスイッチのON状態を前提として冷却ないし加熱される車両用空調システムであって、
車外温度を検出する車外温度検出手段と、
車内温度を検出する車内温度検出手段と、
前記イグニッションスイッチのOFF状態における前記熱交換器のうちのいずれか又は双方の残熱状態が、通過する前記空調風によって前記車内温度が前記車外温度に近づくことを妨げることのできる残熱保持状態にあるか否かを判定する残熱状態判定手段と、
前記イグニッションスイッチのOFF操作がなされた際に、前記残熱状態判定手段により前記熱交換器の残熱状態が前記残熱保持状態にあると判定された場合には、前記車載空調装置の一部又は全体の駆動を継続させて当該残熱保持状態の熱交換器を通過した前記空調風の出力を可能とする一方で、前記残熱保持状態にないと判定された場合には、前記車載空調装置を駆動停止する残熱利用空調制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
前記加熱用の熱交換器として、通過する前記空気を前記エンジンの冷却水の熱によって加熱するヒータコアを備え、
前記残熱状態判定手段は、前記車外温度検出手段により検出される前記車内温度が前記車内温度検出手段により検出される前記車外温度よりも高く、なおかつ前記加熱用の熱交換器の残熱状態が、該加熱用の熱交換器を通過する空気により、前記車内温度を高くすることが可能な残熱保持状態にあるか否かを判定するものであり、
前記残熱利用空調制御手段は、前記イグニッションスイッチのOFF操作がなされた際に、当該残熱保持状態にあると判定された場合に、前記車載空調装置の一部又は全体の駆動を継続させて当該残熱保持状態の熱交換器を通過した前記空調風の出力を可能とするものである請求項1記載の車両用空調システム。
【請求項3】
前記残熱利用空調制御手段は、前記イグニッションスイッチのOFF操作がなされた後、車室内への前記空調風が間欠的に発生するよう前記空調風発生手段を間欠駆動する請求項1又は請求項2に記載の車両用空調システム。
【請求項4】
前記空調風発生手段を駆動するための電源供給源である車載バッテリーの残量を検出するバッテリー残量検出手段と、検出される前記車載バッテリーの残量に応じて、間欠駆動する前記空調風発生手段の駆動期間及び/又は停止期間を決定する駆動期間決定手段と、を備え、
前記残熱利用空調制御手段は、決定された前記駆動期間及び/又は前記停止期間に従い前記空調風発生手段を間欠駆動する請求項3記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記駆動期間決定手段は、検出される前記車載バッテリーの残量が少ないほど該車載バッテリーの負担が軽減される形で前記駆動期間及び/又は前記停止期間を定めるものである請求項4記載の車両用空調システム。
【請求項6】
前記残熱利用空調制御手段は、前記空調風発生手段を備えて構成される車載空調装置全体に対し、前記車載バッテリーからの電源供給及び電源遮断を切り替えることにより前記空調風発生手段を間欠駆動するものである請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項7】
前記車両への再乗車予定時間の入力を受け付ける再乗車予定時間入力手段と、入力された前記再乗車予定時間となるまでの間、前記熱交換器が前記残熱保持状態を継続できるか否かを判定する継続判定手段と、を備え、
前記残熱利用空調制御手段は、前記再乗車予定時間となるまでの間、前記熱交換器が前記残熱保持状態を継続可能と判定された場合には、前記空調風が間欠的に発生するよう前記空調風発生手段を間欠駆動する一方で、継続不可能と判定された場合には、前記熱交換器が前記残熱保持状態ではなくなるまで前記空調風が連続的に発生するよう前記空調風発生手段を連続駆動する請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−163052(P2010−163052A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6961(P2009−6961)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】