説明

車両用空調装置

【課題】無駄のないプレ空調を実施することのできる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車両外部の電源からの供給電力で充電される蓄電池と共に搭載されて当該車室R内の空調をする車両用空調装置であって、エアコンECU27が車室内を目標内気温度27Tに空調するまでに掛かるプレ空調時間γを取得し、HEVコントローラ25は蓄電池の充電が完了するまでの残り時間100Rを急速充電器100から取得してその充電残り時間がプレ空調時間以下になったときに車室内のプレ空調を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、詳しくは、充電中に車室内の空調を行なうものに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータのみで走行する電気自動車や電動モータと内燃機関を併用して走行するハイブリッド自動車は、走行用の電動モータや車室内の空調装置などに電力供給するための大容量の蓄電池を車両に搭載しており、走行中に電気エネルギを回生エネルギとして回収して蓄電池に充電するのに加えて、その蓄電池には外部の充電器から充電することにより繰り返し走行することも実現されている。
【0003】
この種の車両としては、蓄電池の充電中には、充電完了後に乗車して走行するために、車室内の温度などが快適になるように空気を調節する、所謂、プレ空調を実施することが知られており(例えば、特許文献1)、このプレ空調を充電と並行して実施しておくことにより、走行時に空調で消費する電力量を抑えることができ、車室内環境の向上と共に一充電による航続可能距離を延長することができる。なお、この特許文献1では、空調装置を間欠的に稼動してプレ空調の負荷を低減することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−232545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような車両用空調装置にあっては、充電中にプレ空調を実施すると、そのプレ空調で車室内を快適温度に調節した後にも稼働して電力消費することから、蓄電池を満充電状態にするまでの時間が結果的に長くしてしまう場合があり、また、無駄に電力消費してしまうことになる。
【0006】
このことから、特に、充電器を設置する外出先の施設では、不特定多数のユーザの利用が想定されるが、消費電力を少なくすべきことはもちろん、充電時間を最短にして、待ち時間を少なくすることが望まれる。この要望は、各家庭に設置する家庭用の充電器でも同様である。
【0007】
そこで、本発明は、無駄のないプレ空調を実施することのできる車両用空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両用空調装置に係る発明の第1の態様は、車両外部の電源からの供給電力で充電される蓄電池と共に搭載されて当該車室内の空調をする車両用空調装置であって、前記蓄電池の充電が完了するまでの残り時間を取得する充電残り時間取得部と、前記車室内を目標温度に空調するまでに掛かる時間を取得する空調時間取得部と、前記充電残り時間取得部により取得された充電残り時間が前記空調時間取得部により取得された空調時間以下になったときに前記車室内の空調を開始する空調制御部と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
上記課題を解決する車両用空調装置に係る発明の第2の態様は、上記第1の態様の特定事項に加え、前記空調時間取得部は、前記車室内の空気温度を検出する内気温度検出部の検出結果と、前記車室外の空気温度を検出する外気温度検出部の検出結果と、に基づいて前記空調時間を取得することを特徴とするものである。
【0010】
上記課題を解決する車両用空調装置に係る発明の第3の態様は、上記第2の態様の特定事項に加え、前記空調時間取得部は、前記車両に降り注ぐ日射量を検出する日射量検出部の検出結果も加えて前記空調時間を取得することを特徴とするものである。
【0011】
上記課題を解決する車両用空調装置に係る発明の第4の態様は、上記第1から第3のいずれかの態様の特定事項に加え、前記蓄電池の充電および前記車室内の空調に必要な消費電力以上の電力が前記外部電源から供給されているか否かを確認して空調実施の可否を判定する空調判定部を備え、前記空調制御部は、前記空調判定部による判定結果に基づいて前記車室内の空調を開始することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明の上記の第1の態様によれば、車両に搭載する蓄電池の充電中に、その充電完了までの残り時間を算出あるいは要求して取得するとともに、車室内の空調に掛かる時間を算出取得して、充電残り時間が空調時間以下になったときにその車室内の空調を開始することができ、充電完了時に空調も終了することができる。したがって、充電完了後に車両に乗車して走行させるまでに車室内を快適環境に空調する場合、その充電中の空調時間を最短にすることができ、充電中に空調で消費する電力を最低限に抑えることができる。また、快適環境に空調した後にも空調動作が維持されることを回避して、充電中の空調をできるだけ短くすることができ、電力消費を少なくして、充電時間が延長されてしまうことを回避することができる。
【0013】
また、本発明の上記の第2の態様によれば、車室内の内気温度だけでなく、外気温度も考慮して車室内の空調に掛かる時間を取得することができ、現実に即した時間で空調を開始することができる。したがって、外気温の影響が大きく、車室内の空調が終わっていなかったり、早くに終わってしまって無駄に電力消費してしまったりすることを回避することができる。
【0014】
また、本発明の上記の第3の態様によれば、車室内の内気温度や外気温度だけでなく、日射量も考慮して車室内の空調に掛かる時間を取得することができ、より現実に即した時間で空調を開始することができる。したがって、日射量の影響も大きく、車室内の空調が終わっていなかったり、早くに終わってしまって無駄に電力消費してしまったりすることを回避することができる。
【0015】
また、本発明の上記の第4の態様によれば、充電に回せる電力を空調で使用してしまって充電時間が長くなってしまうことを回避することができる。したがって、充電時間を短くすることがない場合に車室内の空調をすることができ、早期の車両の走行開始を妨げてしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車両用空調装置の一実施形態を示す図であり、その概略全体構成を示す概念ブロック図である。
【図2】そのプレ空調制御の際の情報のやり取りを説明するブロック図である。
【図3】そのプレ空調条件を決定する手順を説明するフローチャートである。
【図4】その仮プレ空調時間を内気温度偏差と外気温度に基づいて決定する際に使用する表である。
【図5】その仮プレ空調時間の日射量に基づく補正時間を取得する際に使用する表である。
【図6】そのプレ空調時間を時季に応じて調整する算出方法を示す表である。
【図7】そのプレ空調制御の実施を説明するフローチャートである。
【図8】その他の実施形態を示す図であり、そのプレ空調制御の実施を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図7は本発明に係る車両用空調装置の一実施形態を示す図である。
【0018】
図1において、空調装置10は、エンジン付き電気自動車(車両)、所謂、HEV(Hybrid Electric Vehicle)の車室R内の暖房・冷房・除湿・換気等の空調を行うHVAC(Heating,Ventilating,and Air Conditioning)システムである。
【0019】
この空調装置10は、空気流路11内に上流側から強制的に空気を引き込んで下流側に向かって吹き出させることにより空気の流れを形成する送風ファン(送風機)12と、空気流路11内を通過する空気を冷却するエバポレータ13と、空気流路11内を通過する空気を加熱するヒータコア14aおよび補助ヒータ14bと、送風ファン12が空気流路11内に空気を取り込む流路を車室Rの外部側吸込口(外気流路)Toまたは内部側吸込口(内気流路)Tiに切り換える吸込口ダンパ15と、空気流路11内を通過する空気の一部をヒータコア14aや補助ヒータ14bに接触する流路に流し込むように調整するエアミックスダンパ16と、空気流路11から吹き出させる流路を車室R内に設置されている吹出口B1〜B3のいずれかに切り換える吹出口ダンパ17と、車室R内の空気の温度(以下、単に内気温度ともいう)を検出する内気温度検出センサ(内気温度検出部)21と、車室R外の外気温度を検出する外気温度検出センサ(外気温度検出部)22と、車両に降り注ぐ日射量を検出する日射量検出センサ(日射量検出部)23と、送風ファン12、エバポレータ13、補助ヒータ14bなどの各種機能部に電力供給して駆動制御するHEVコントローラ25と、空調操作パネル26からの各種設定や各種センサ21〜23の検出情報に基づいて各種ダンパ15〜17の開閉の駆動制御をするエアコンECU(electronic control unit)27と、を備えて構成されている。空調装置10は、HEVコントローラ25とエアコンECU27が協働して車室R内を快適環境に調節維持するようになっている。
【0020】
ここで、エバポレータ13は、空気流路11内に設置されて冷媒の蒸発による気化熱を利用することにより、通過する(接触する)空気を冷却するようになっており、電動コンプレッサ19が不図示のコンデンサ(復水器)で液化した冷媒を導入する前に膨張弁で膨張気化させるように循環させることにより、その冷媒の気化熱で熱交換冷却するようになっている。
【0021】
ヒータコア14aは、不図示のエンジンの冷却水を循環させるラジエータ部の熱交換を利用して、通過する空気を加熱するように空気流路11内に設置されている。補助ヒータ14bは、PTC(Positive Temperature Coefficient)セラミックヒータであり、ヒータコア14aがエンジンの稼働時に有効であることから、エンジン停止時などに通電することにより補助的に機能させて、空気流路11内に流通する空気を加熱する。
【0022】
HEVコントローラ25は、予め準備されている制御プログラムや各種パラメータ等に従って各種の入力設定情報や検出情報に基づいてエンジン付き電気自動車の全体を統括制御することにより、エンジンおよび電動モータの駆動を協調制御して効率よく走行することを実現する。また、HEVコントローラ25は、その走行時には、電動モータを発電機として機能させることにより回収する回生エネルギ(電力)をその電動モータや空調装置10に供給する電力を蓄電する不図示の蓄電池に充電する。
【0023】
このHEVコントローラ25は、図2に示すように、イグニッションキー31の操作信号を受け取ってエンジンの始動・停止や電動モータの入/切の制御を実行するようになっており、上記蓄電池内の蓄電量である充電残量(SOC:state of charge)を検出するSOCセンサ24による今現在の現在SOC値24Dが予め設定されている最低目標SOC値24Sを超えている場合に、走行や空調を許可するようになっている。
【0024】
また、HEVコントローラ25は、SOCセンサ24が検出する現在のSOC値24Dが最低目標SOC値24S以下になったときに、充電要求を不図示のインストルメントパネルなどの表示部に出力して蓄電池への充電を促すようになっている。この蓄電池への充電を実施する外部の急速充電器100は、蓄電池の容量と現在SOC値24Dを受け取って予め設定されている目標SOC値になる満充電完了までの残り時間を算出して目視可能に表示出力するとともに、その充電残り時間100RをHEVコントローラ25の問い合わせに応答して受け渡すようになっている。すなわち、HEVコントローラ25が充電残り時間取得部を構成している。なお、本実施形態では、急速充電器100に接続して充電する場合を一例にして説明するが、各家庭などに設置されて夜間電力などを利用して充電する普通充電器でも本実施形態を適用可能であることは言うまでもない。
【0025】
エアコンECU27は、各種空調条件等の入力設定を行う空調操作パネル26を備えるとともに、内気温度検出センサ21、外気温度検出センサ22および日射量検出センサ23などの各種センサ情報を入手可能に接続されている。このエアコンECU27は、予め準備されている制御プログラムに従って、空調操作パネル26から入力設定される各種空調操作パネル情報や、各種センサ21〜23が取得する各種検出情報に基づく空調制御信号を、HEVコントローラ25に受け渡して送風ファン12、エバポレータ13(電動コンプレッサ19)、補助ヒータ14bなどの駆動制御を担当して貰う。また、エアコンECU27は、自身でも、制御プログラムに従って各種空調操作パネル情報や各種検出情報に基づいて、吸込口ダンパ15、エアミックスダンパ16および吹出口ダンパ17の駆動を制御して車室R内の空調制御を実行する。なお、各ダンパ15〜17は、エアコンECU27が不図示の駆動モータに通電させることにより動作させて所望の流路を形成するように制御している。
【0026】
また、このエアコンECU27は、蓄電池への充電中には空調操作パネル26からの設定に従って、急速充電完了後に乗車して快適に走行操作するために、車室R内の温度を目標内気温度27Tに調節する、所謂、プレ空調を実施するようになっている。エアコンECU27は、このプレ空調では、空調操作パネル26から入力されるプレ空調の要否や駆動条件などのプレ空調設定情報27Sと、その空調操作パネル26から入力設定される車室R内の乗員設定温度26Tと、この乗員設定温度26Tに基づいて決定する充電完了時の目標内気温度27Tと、内気温度検出センサ21、外気温度検出センサ22および日射量検出センサ23による各種センサ情報21T、22T、23Nと、に基づいてプレ空調を完了するまでに掛かる時間を、言い換えると、車室R内の内気温度を目標内気温度27Tに調節するのに必要なプレ空調時間27P(以下で説明するプレ空調時間γ)を算出取得してHEVコントローラ25に受け渡すようになっている。すなわち、このエアコンECU27が空調時間取得部を構成している。
【0027】
そして、HEVコントローラ25は、プレ空調実施判定部(空調制御部)25aとして、急速充電器100から取得する充電残り時間100RとエアコンECU27から受け渡されるプレ空調時間27Pを比較して、プレ空調を実施するか否かを判定して、通常の空調動作と同様に、送風ファン12、エバポレータ13、補助ヒータ14bなどの駆動制御を開始する。エアコンECU27も、ダンパ開度調整部27aとして、内気温度検出センサ21、外気温度検出センサ22および日射量検出センサ23などの各種センサ情報に基づいて吸込口ダンパ15、エアミックスダンパ16および吹出口ダンパ17の駆動を制御して車室R内の空調制御を実行する。
【0028】
具体的には、エアコンECU27は、図3のフローチャートに示すプレ空調制御手順(方法)を実行する。
【0029】
まずは、蓄電池への充電制御が開始されると、空調操作パネル26から設定されているプレ空調のON/OFFを確認して(ステップS11)、プレ空調ON設定が確認されない場合には、後述するプレ空調時間γに「0(ゼロ)」を設定して(ステップS20)、このままこのプレ空調制御を一旦終了する。なお、充電開始後にも空調操作パネル26からプレ空調ONを入力設定することができ、ステップS11の確認が繰り返される。
【0030】
このステップS11において、プレ空調ON設定が確認された場合には、その空調操作パネル26から入力設定されている乗員による車室R内の設定温度26Tを取得し(ステップS12)、次いで、外気温度検出センサ22が検出する車室R外の外気温度22Tを取得し(ステップS13)、次いで、内気温度検出センサ21が検出する車室R内の内気温度21Tを取得し(ステップS14)、次いで、日射量検出センサ23が検出する車室R外に降り注ぐ日射量23Nを取得する(ステップS15)。
【0031】
この後に、取得した車室R内の乗員設定温度26Tに基づいてプレ空調に適した目標内気温度27Tを算出する(ステップS16)。この目標内気温度27Tは、乗員設定温度26T、内気温度21T、外気温度22T、日射量23N等を用いて算出する。ただし、乗員設定温度26Tは、中心値である25℃としてもよい。その乗員設定温度26Tには、乗員が乗車して走行する際に調節することにより、蓄電池内の電力消費を少なくしつつ車室R内の快適性を損なわないように空調することができる。
【0032】
次いで、算出取得した目標内気温度27Tと検出取得した現実の内気温度21Tとの偏差(差分)を次式(1)から算出し(ステップS17)、この内気温度偏差dと外気温度22Tおよび日射量23Nに基づいて車室R内の空気温度をその目標内気温度27Tに調節するのに掛かる空調時間を算出する(ステップS18)。
内気温度偏差d=目標内気温度27T−内気温度21T ・・・(1)
【0033】
詳細には、このステップS18において、内気温度偏差dと外気温度22Tに応じて車室R内を目標内気温度27Tに温調するのに掛かる仮プレ空調時間αを図4に示す表(空調時間マップ)を参照して算出するようになっており、内気温度偏差dの−10℃から40℃までの10℃毎に対応して外気温度22Tの−10℃から40℃までの10℃毎に空調時間α11〜α66が設定されている空調時間マップから仮プレ空調時間αを算出する。この後には、日射量23Nに応じて車室R内の空気温度が加温される影響を考慮して設定している補正時間βを、図5に示す表(補正時間マップ)を参照して算出するようになっており、日射量23Nの日射エネルギ(kW/m)が大きくなるのに対応して補正時間β1〜β6が設定されている補正時間マップから補正時間βを算出する。さらに、車室R内を目標内気温度27Tに温調するのに掛かるプレ空調時間γとしては、冬場には日射による暖気(加温)効果が上がることから日射エネルギ分だけ加温(空調)時間としては短くなる一方、夏場には日射により車室R内が上がり易くなることから日射エネルギ分が大きいほど冷房(空調)時間は増やす必要がある。このことから、プレ空調時間γは、図6に示すように、外気温度22Tが10℃以下の典型的な冬場環境では仮プレ空調時間αから補正時間βを減算してプレ空調時間γを算出する一方、外気温度22Tが30℃以上の典型的な夏場環境では仮プレ空調時間αに補正時間βを加算してプレ空調時間γを算出し、外気温度22Tがその10℃〜30℃の間の場合には、日射エネルギの影響は考慮することなく、仮プレ空調時間αをそのままプレ空調時間γとする。
【0034】
これにより、車室R内の内気温度21Tだけでなく、外気温度22Tや日射量23Nも考慮して車室R内のプレ空調時間γを調整することができ、時季や天候など現実に即したプレ空調時間γを取得することができる。
【0035】
この後に、空調操作パネル26からの入力設定や外気温度22Tおよび内気温度偏差dに基づく空気流路11の選択に応じて各種ダンパ15〜17の開度を算出して調整制御を実行する(ステップS19)。
【0036】
一方、HEVコントローラ25は、図7のフローチャートに示すプレ空調制御手順(方法)を実行する。
【0037】
まずは、蓄電池への充電制御が開始されると、イグニッションキー31からの操作信号の有無(ON/OFF)を確認して(ステップS21)、イグニッション信号がON状態である場合には、本来の空調制御が優先されることからプレ空調制御は一旦停止する処理を実行する(ステップS29)。なお、充電開始後にもそのイグニッション信号のON/OFFがステップS21で繰り返し確認される。
【0038】
このステップS21において、イグニッション信号がOFF状態であることが確認された場合には、SOCセンサ24が検出する蓄電池の充電残量(SOC)の現在SOC値24Dが最低目標SOC値24Sを超えているか否かを確認して(ステップS22)、蓄電池の充電残量が少なく超えていない場合には、そのままステップS29に進んでプレ空調制御を一旦停止する。
【0039】
これにより、現在SOC値24Dが走行するのに最低限必要な最低目標SOC値24Sに満たないにも拘わらずにプレ空調を開始して蓄電池への充電効率が悪くなってしまうことを回避することができ、不用意に急きょ走行しなければならない場合にも対応できるように準備することができる。
【0040】
一方、ステップS22において、現在SOC値24Dが最低目標SOC値24Sを超えて、蓄電池の充電残量がプレ空調の実施を許可する程度以上に蓄電されていることを確認した場合には、急速充電器100から蓄電池を満充電状態(目標SOC値)にするまでに掛かる充電残り時間100Rを受け取って(ステップS23)、その充電残り時間100RがエアコンECU27から受け取るプレ空調時間γ以下になったか否かを確認して(ステップS24)、充電残り時間100Rがプレ空調時間γ以下になっていない場合にはステップS29に進んで待機する。
【0041】
そして、ステップS24において、充電残り時間100Rがプレ空調時間γ以下になったことを確認したときに、車室R内の空気温度が目標内気温度27Tになるように、通常の空調動作と同様に、送風ファン12、エバポレータ13、補助ヒータ14bなどの駆動を制御してプレ空調を実施する(ステップS25)。
【0042】
これにより、内気温度偏差dだけでなく、外気温度22Tや日射量23Nを取得して時季や天候などによる影響を考慮したプレ空調時間γの終了タイミングを充電完了タイミングに合わせることができ、必要最低限の空調動作で車室R内のプレ空調を終了することができる。言い換えると、充電が完了しても車室R内を快適に空調するのが間に合わないことはなく、充電が完了する前から車室R内を快適環境に無駄に維持して蓄電池内の電力を浪費して、充電時間自体を延長してしまうこともない。
【0043】
このように本実施形態においては、蓄電池の充電中に、その充電完了までの残り時間100Rを取得するとともに、車室R内の空調に掛かるプレ空調時間γを取得して、充電完了とプレ空調終了とを合わせることができ、充電中の空調時間を最短にしてプレ空調による消費電力を最低限に抑えることができる。したがって、無駄のないプレ空調を実施して、早期に(待ち時間なく)充電を完了することができ、その充電完了後に直ちに快適な車室R内に乗車して走行することができる。
【0044】
ここで、本実施形態の他の態様としては、本実施形態では、急速充電器100からの供給電力容量を考慮することなくプレ空調を実施する場合を一例にして説明するが、これに限らず、例えば、各家庭に設置される、所謂、普通充電器にも適用することができる。この場合には、HEVコントローラ25に一機能追加して、図8のフローチャートに示すプレ空調制御手順(方法)を実行することを選択設定可能にすればよい。
【0045】
具体的には、HEVコントローラ25は、プレ空調実施判定部(空調判定部)25aとして、イグニッション信号がOFF状態であることを確認した後に(ステップS21)、このHEVコントローラ25は、充電器から充電器自体に関する情報を取得し、蓄電池の充電に加えてプレ空調を実施するのに十分な電力をその充電器から受けることができるか否かを確認して(ステップS31)、充電器から十分な容量の電力供給を受けることができる場合に、そのままステップS22に進んで、プレ空調を実施する。一方、ステップS31において、外部電源からの供給電力が満足にプレ空調を実施することができない程度の容量である場合には、そのままステップS29に進んでプレ空調の停止処理を実行する。これにより、供給電力が不十分なために、充電電力(蓄電池内の蓄電電力)の一部がプレ空調に消費されて充電時間が延長されてしまうことを回避することができる。
【0046】
また、本実施形態では、充電残り時間100Rを外部の急速充電器100から取得する場合を一例にして説明するが、空調装置10側で算出取得するようにしてもよい。また、プレ空調制御の実施をHEVコントローラ25が行う場合を一例にして説明するが、エアコンECU27側で一連のプレ空調制御を実行するようにしてもよい。また、プレ空調の終了タイミングを充電完了に合わせることを一例にして説明するが、これに限らず、例えば、出発時間に合わせるようにしてもよい。エンジン付き電気自動車(HEV)に適用した場合を一例にして説明するが、電気自動車(EV)にも適用可能であることは言うまでもない。
【0047】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
10 空調装置
11 空気流路
12 送風ファン
13 エバポレータ
14a ヒータコア
14b 補助ヒータ
15 吸込口ダンパ
16 エアミックスダンパ
17 吹出口ダンパ
19 電動コンプレッサ
21 内気温度検出センサ
22 外気温度検出センサ
23 日射量検出センサ
23N 日射量
24 SOCセンサ
25 HEVコントローラ
26 空調操作パネル
27 エアコンECU
100 急速充電器
R 車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部の電源からの供給電力で充電される蓄電池と共に搭載されて当該車室内の空調をする車両用空調装置であって、
前記蓄電池の充電が完了するまでの残り時間を取得する充電残り時間取得部と、前記車室内を目標温度に空調するまでに掛かる時間を取得する空調時間取得部と、前記充電残り時間取得部により取得された充電残り時間が前記空調時間取得部により取得された空調時間以下になったときに前記車室内の空調を開始する空調制御部と、を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記空調時間取得部は、前記車室内の空気温度を検出する内気温度検出部の検出結果と、前記車室外の空気温度を検出する外気温度検出部の検出結果と、に基づいて前記空調時間を取得することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調時間取得部は、前記車両に降り注ぐ日射量を検出する日射量検出部の検出結果も加えて前記空調時間を取得することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記蓄電池の充電および前記車室内の空調に必要な消費電力以上の電力が前記外部電源から供給されているか否かを確認して空調実施の可否を判定する空調判定部を備え、
前記空調制御部は、前記空調判定部による判定結果に基づいて前記車室内の空調を開始することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−23047(P2013−23047A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158809(P2011−158809)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】