説明

車両用窓ガラスセキュリティシステム

【課題】運転者が車両を離れる際に、窓ガラスの閉め忘れを防止するとともに、換気のために窓ガラスを少し開けた状態では閉め忘れと誤認せず、しかも、ガラスが割れた際にガラスの割れを検出することができる車両用窓ガラスセキュリティシステムを提供する。
【解決手段】車両用窓ガラスセキュリティシステムは、窓ガラスの閉め忘れ検出装置とガラス割れ検出装置との共用の検出手段30を備えている。制御手段は、ガラス割れ検出装置を用いたガラス割れ検出モードに入る前に、閉め忘れ検出装置による閉め忘れ検出を行い、窓ガラスの閉め忘れでない状態においてガラス割れ検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用窓ガラスセキュリティシステムに係り、詳しくは車両の窓ガラスの閉め忘れや窓ガラスの破壊による盗難を抑制する車両用窓ガラスセキュリティシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のパワーウィンドウの閉め忘れを防止するためのパワーウィンドウ閉め忘れ防止装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の装置では、自動車のパワーウィンドウのウィンドウガラス位置検出信号が接続される位置検出信号入力と、イグニッションキーの挿抜検出用のスイッチ出力が接続されるキー入力と、ドアのカーテシスイッチ出力が接続されるドア入力を有する。そして、前記位置検出信号入力とキー入力とドア入力からの入力信号に基づいてウィンドウガラスの閉め忘れを報知する。また、位置検出信号入力とキー入力とドア入力からの入力信号に基づいてウィンドウガラスの閉め忘れを検出すると、計時を開始し、所定の時間経過後にタイムアップし、ウィンドウガラスを閉めるようにすることも開示されている。したがって、ウィンドウガラスの開放状態を検出するための新たなセンサを設けることなくウィンドウの閉め忘れを防止できる。
【0003】
また、駐車中に窓ガラスが開放されたこと又は割られたことを確実に検知して警告できる車両盗難防止装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特許文献2の装置では、窓ガラスの上端縁に設けられ、前記窓ガラスの閉鎖時に前記窓ガラスと窓枠部との間で圧縮される応力センサと、前記応力センサの応力検出状況を判断材料として警告の要否を判断し、警告動作を行う警告手段と、を備えている。前記応力センサは、略平行に対向配置された略線状の第1及び第2の電極部材を備えた略線状の形態を有し、その両電極部材が応力印加により互いに接触して電気的に導通することにより応力を検出するようになっている。したがって、窓ガラスが閉鎖された状態から開放された場合には、窓ガラスの開放に伴って応力センサの圧縮状態が解除され、応力センサの弾性導電チューブが元の形状に復帰し、弾性導電チューブと中心電極部材との電気的導通が解消され、これによって窓ガラスの開放が検出される。また、窓ガラスが閉鎖されている状態において窓ガラスが割られた場合にも、窓ガラスが割られるのに伴って応力センサの圧縮状態が解除され、応力センサが元の形状に復帰して弾性導電チューブと中心電極部材との電気的導通が解消され、これによって窓ガラスが割られたことが検出される。
【0004】
なお、制御部は、応力センサが応力を受けない非圧縮状態にあるときに、イグニッションスイッチがオン又はアクセサリの状態からオフの状態に切り替えられた場合に、警告発生装置を介して音響等により窓ガラスの閉め忘れを警告するための警告動作を行うようになっている。
【特許文献1】特開平10−25961号公報
【特許文献2】特開2004−155251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、閉め忘れは防止できるが、窓ガラスの破壊(割れ)を検出することはできない。一方、特許文献2の装置では、窓ガラスの閉め忘れ及び閉鎖状態の窓ガラスが開放されたこと又は割られたことを検知することができる。ところが、特許文献2の装置では、基準状態として応力センサを窓ガラスと窓枠とで圧縮した状態に保持することが必須となるため、例えば、換気のために窓ガラスと窓枠との間に、手を入れることができない程度の隙間を設けた状態でも、窓ガラスの閉め忘れと判断して警報動作を行う。したがって、換気のために窓ガラスを少し開けた状態において、窓ガラス割れを検出することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は運転者が車両を離れる際に、窓ガラスの閉め忘れを防止するとともに、換気のために窓ガラスを少し開けた状態では閉め忘れと誤認せず、しかも、ガラスが割れた際にガラスの割れを検出することができる車両用窓ガラスセキュリティシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、窓ガラスの閉め忘れ検出装置及びガラス割れ検出装置を備えた車両用窓ガラスセキュリティシステムである。そして、前記閉め忘れ検出装置及び前記ガラス割れ検出装置の検出手段を共用にするとともに、前記ガラス割れ検出装置を用いたガラス割れ検出モードに入る前に、前記閉め忘れ検出装置による閉め忘れ検出を行い、窓ガラスの閉め忘れでない状態においてガラス割れ検出を行う制御手段を備えている。ここで、「閉め忘れでない状態」とは、窓ガラスが防犯上差し支えない程度に開けられた状態を意味する。
【0008】
この発明では、セキュリティシステムは、ガラス割れ検出を行う前に、閉め忘れ検出装置による閉め忘れ検出を行い、窓ガラスの閉め忘れでない状態においてガラス割れ検出を行う。したがって、例えば、換気のために窓ガラスが防犯上差し支えない程度に開けられた状態では閉め忘れと誤認せず、しかも無駄なガラス割れ検出動作を行う必要がない。また、閉め忘れ検出と、ガラス割れ検出とに検出手段が共用されるため部品点数が少なく、コスト低減を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記窓ガラスの閉め忘れでない状態とは、前記窓ガラスと窓枠との隙間が人の手を挿入可能な大きさより小さい状態である。この発明では、窓ガラスが密閉状態の場合だけでなく、窓ガラスと窓枠との間に所定の隙間がある状態でも閉め忘れとは判断されない。窓ガラスの閉め忘れ検出は、無人で駐車中において、車両の盗難や車上あらしを防止するためであるので、車内に手を入れてドアのロック解除や窓ガラスの開放操作を行うことができなければ、窓ガラスが多少開いていても支障がない。したがって、換気のために密閉状態ではなく窓ガラスを僅かに隙間を設けた状態で車両から離れることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記制御手段は、前記閉め忘れ検出装置により閉め忘れを検出した際は、自動開閉装置を作動させて、窓ガラスを自動的に閉め忘れでない状態に移動させる。この発明では、乗員が窓ガラスを閉め忘れた状態で車両から離れても、窓ガラスが自動的に閉め忘れでない状態に移動されるため、例えば、警報で乗員を呼び戻して窓ガラスを閉める操作を行わせる必要がない。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記検出手段は、前記窓ガラスの端部に取り付けられた磁石と、車体側に設けられた磁気センサとを備え、前記磁気センサによる前記磁石の磁束の検出状態に基づいて窓ガラスの開放の程度及び割れの有無を判断する。
【0012】
この発明では、窓ガラスの端部に取り付けられた磁石から発生する磁束の強度が磁気センサによって検出される。磁石の位置と磁気センサで検出される磁束の強度には一定の関係があるため、磁気センサで検出される磁束の強度が所定強度以上であれば、窓ガラスが割れた状態ではなく、閉め忘れでもないと判断される。また、磁気センサの検出強度が所定の値より弱ければ、閉め忘れあるいはガラス割れと判断される。また、閉め忘れでない状態から、磁気センサの磁束検出強度が弱くなればガラス割れと判断でき、簡単な構成で閉め忘れ検出装置とガラス割れ検出装置の検出手段を共用にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転者が車両を離れる際に、窓ガラスの閉め忘れを防止するとともに、換気のために窓ガラスを少し開けた状態では閉め忘れと誤認せず、しかも、ガラスが割れた際にガラスの割れを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、乗用車における右ドアを、インナパネルを省略してインナパネル側から見た概略図である。車両ドア1はアウタパネル2とインナパネル3(図2(a)に図示)を具備している。アウタパネル2とインナパネル3の間に、強化ガラスからなる窓ガラスとしてのウィンドウガラス4が配置されている。ウィンドウガラス4の厚さは3.1mm〜5.0mm程度である。
【0015】
車両ドア1の内部には、ウィンドウガラス4を上下動させる自動開閉装置としてのウィンドウレギュレータ11が収納されている。この実施形態においては、ウィンドウレギュレータ11としてXアーム式ウィンドウレギュレータを用いている。
【0016】
ウィンドウレギュレータ11は、リフトアーム12が図示しないベースプレートに固定された軸13により回動可能に支持されている。リフトアーム12は、一端側に軸13を回動中心とするセクタギヤ(ドリブンギヤ)14が一体に形成されており、セクタギヤ14と噛み合うピニオン15がモータ16により駆動されるようになっている。
【0017】
リフトアーム12の軸13に対してセクタギヤ14と反対側の部分の中間部には、軸17でイコライザアーム18の中間部が回動可能に支持されている。リフトアーム12とイコライザアーム18の上端部(先端部)にはそれぞれ、ガイドピース(ローラ)19,20が回転及び傾動可能に支持されており、イコライザアーム18の下端部には、ガイドピース(ローラ)21が支持されている。
【0018】
リフトアーム12のガイドピース19と、イコライザアーム18のガイドピース20とは、ウィンドウガラスブラケット22に移動自在に嵌められ、イコライザアーム18のガイドピース21は、イコライザアームブラケット(姿勢維持レール)23に移動自在に案内される。
【0019】
一方、ウィンドウガラス4の下縁にはその前後においてウィンドウガラスホルダ24が固定されている。ウィンドウガラス4は、ウィンドウガラスホルダ24をボルト25でウィンドウガラスブラケット22に締め付けることにより固定されている。
【0020】
アウタパネル2とインナパネル3間には、前後一対のガラスラン26が平行に設けられている。ウィンドウガラス4は、前後の端部がガラスラン26に案内されて上下に移動することができるようになっている。
【0021】
そして、モータ16を介してピニオン15を正逆に駆動すると、セクタギヤ14を介してリフトアーム12が軸13を中心に揺動し、その結果、ウィンドウガラスブラケット22(ウィンドウガラス4)が、イコライザアーム18、ガイドピース19,20,21、イコライザアームブラケット23により略水平状態に保持されながら昇降運動する。このようにウィンドウガラス4が昇降され、ウィンドウガラス4により車両の開口部5が開閉自在となっている。
【0022】
図2(a)に示すように、車両ドア1の内部には、閉め忘れ検出装置及びガラス割れ検出装置に共用の検出手段30が設けられている。検出手段30は、ウィンドウガラス4の端部に取り付けられた被検出部としての磁石(永久磁石)31と、車体側に設けられた磁気センサ32とを備えている。ウィンドウガラス4は、アウタパネル2とインナパネル3との間にウェザーストリップ6によりシールされた状態で配置されている。なお、ウェザーストリップ6は一部がドアトリム7に取り付けられている。そして、ウィンドウガラス4の全閉状態においてウェザーストリップ6より下方に突出した部分に、磁石31がクリップ33を介して取り付けられている。
【0023】
クリップ33は金属板製で、図2(b)及び図3に示すように、略逆U字状の第1の押圧片34aと、第1の押圧片34aの空間部より幅が狭く、かつ高さが低い矩形状の第2の押圧片34bとが断面略U字状の連結部34cにそれぞれ基端で一体に連結された形状に形成されている。第2の押圧片34bは上部が第1の押圧片34aから離れる方向に斜めに延びるように屈曲形成されている。そして、図2(b)に示すように、クリップ33は、自由状態において、第1の押圧片34a全体が第2の押圧片34b側に向かって傾斜する状態に形成されている。
【0024】
第1の押圧片34aの先端部における幅方向両端のウィンドウガラス4と対向する側に凸部35が形成されている。また、ウィンドウガラス4にクリップ33を取り付けた状態において、ウィンドウガラス4が下端において第1の押圧片34a及び第2の押圧片34bの両方に面接触する状態で挟まれないように、第1の押圧片34aの基端と連結部34cとの間に段部34dが設けられている。そして、図2(a)に示すように、クリップ33がウィンドウガラス4に取り付けられた状態では、第1の押圧片34aと第2の押圧片34bとはほぼ平行に延びるとともに、凸部35及び第2の押圧片34bの屈曲部34e基端がウィンドウガラス4を互いに逆方向に押圧する状態になっている。
【0025】
第2の押圧片34bには、ウィンドウガラス4と対向する面と反対側の面に磁石31が接着されている。一方、インナパネル3には、ウィンドウガラス4の全閉状態において磁石31と対応する位置にセンサブラケット36が固定され、センサブラケット36には2個の磁気センサ32が上下方向に所定間隔を置いて固定されている。磁気センサ32としては、例えばホールICが用いられる。
【0026】
磁気センサ32の配置間隔は、ウィンドウガラス4の全閉状態では上側に配置された磁気センサ32が磁石31の磁束を所定強さ以上検出可能で、ウィンドウガラス4と窓枠との隙間が、人の手を挿入可能な大きさより小さい位置まで開放された状態では下側に配置された磁気センサ32が磁石31の磁束を所定強さ以上検出可能な間隔である。磁気センサ32の種類にもよるが、1個の磁気センサ32では、全閉から2〜3cmの範囲まではウィンドウガラス4の開放状態に拘わらず磁束を所定強さ以上検出可能である。しかし、ウィンドウガラス4の隙間が4〜6cmでは1個の磁気センサ32では全ての領域で磁石31の磁束を所定強さ以上検出することができないが、2個設けることにより、ウィンドウガラス4の隙間が4〜6cmの場合でも磁石31の磁束を所定強さ以上検出することができる。
【0027】
通常の車両ドア1のウィンドウガラス4では、ウィンドウガラス4と窓枠との隙間が4〜6cmの場合では、隙間から人の手を車室内に挿入することができる。しかし、遮光装置の一種であるサイドバイザーが装備された車両ドア1の場合は、サイドバイザーの存在により、隙間が4〜6cmの場合でも隙間から人の手を車室内に挿入することができない。また、隙間を2〜3cmとしても換気が良好に行われ難いが、隙間を4〜6cmとすれば換気が良好に行われる。
【0028】
磁気センサ32は制御装置37に接続されている。制御装置37はマイクロコンピュータで構成され、両磁気センサ32の検出磁束強度と、各磁石31との距離との関係を示すマップがメモリに記憶されている。制御装置37はボデーECU38に接続されており、磁気センサ32の検出信号に基づいてガラス割れと判断した際に、ボデーECU38にガラス割れ検出信号を出力するようになっている。また、制御装置37には乗員が車両を離れる状況になったと推定するための信号が入力されるようになっている。この信号としては、例えば、カーテシスイッチ、シフトレバーが駐車(パーキング)位置に操作されたことを検出するスイッチ、イグニッションキースイッチ等の信号がある。
【0029】
次に、前記のように構成された車両用窓ガラスセキュリティシステムの作用を説明する。
先ず、検出手段30の作用を説明する。
【0030】
ウィンドウガラス4が全閉位置あるいは窓枠との隙間が人の手を挿入可能な大きさ(広さ)より小さな位置にある状態では、2個の磁気センサ32の少なくとも一方から所定強度以上の磁束検出信号が出力される状態になる。また、ウィンドウガラス4が、窓枠との隙間が人の手を入れることができる大きさ以上の位置にある状態では、2個の磁気センサ32のいずれも所定強度以上の磁束検出信号が出力されない状態になる。したがって、制御装置37は磁気センサ32の検出信号に基づいて、ウィンドウガラス4が、閉め忘れでない状態あるいは閉め忘れでない状態より広く開放された状態にあるのかを判断することができる。
【0031】
次にガラス割れの検出作用を説明する。通常時においては、図2(a)に示すように、ウィンドウガラス4の端部に取り付けられたクリップ33がウィンドウガラス4の端部を挟持している。詳しくは、クリップ33の第1の押圧片34aが凸部35においてウィンドウガラス4を一方の面から局所的に押圧しており、第2の押圧片34bがウィンドウガラス4を他方の面から凸部35より下方において押圧している。
【0032】
この状態から、ウィンドウガラス4の一部が割れる(破損する)と、強化ガラスからなるウィンドウガラス4の全体にひびが入り、図4(a)に示すように、クリップ33が取り付けられている箇所にも縦横にひびが入って強度が著しく低下する。
【0033】
この強度低下に伴って、第1の押圧片34a及び第2の押圧片34bによって互いに逆方向への押圧力を受けているウィンドウガラス4の端部(下端部)が速やかに破壊され、図4(b)に示すように、ウィンドウガラス4のクリップ33で挟持されている部分以下の部分が残りの上の部分から離脱する。そして、クリップ33と共に磁石31が落下することにより、磁石31の磁束を磁気センサ32が検出できなくなる。その結果、制御装置37は磁気センサ32からの検出信号に基づいてガラス割れと判断する。
【0034】
また、ウィンドウガラス4が破壊された際、クリップ33と共に磁石31が落下せず、ガラスの飛散状態によっては磁石31がインナパネル3やセンサブラケット36に吸着してしまう場合もある。しかし、そのような場合でも、破壊前と、破壊後では、磁気センサ32と磁石31との距離が異なるため、磁気センサ32が検出する磁束強度が、ガラス割れ検出モードを開始した状態と大きく異なるため、制御装置37は磁気センサ32の検出信号に基づいてウィンドウガラス4の割れが発生したことを検出することができる。
【0035】
次に車両用窓ガラスセキュリティシステムの作用を説明する。
制御装置37は所定時間毎に図5のフローチャートにしたがって動作する。
先ずステップS1で窓の閉め忘れ検出開始条件を満足しているか否かを判断する。窓の閉め忘れ検出開始条件を満足している場合とは、乗員が車両を離れる状態になったと推定される条件を満足する状態にある場合を意味する。この実施形態では、シフトレバーが駐車位置に配置された信号を入力しており、かつ車両ドアがロックされている信号が入力されている場合である。条件が満足されていればステップS2に進み、窓の閉め忘れ検出処理を開始し、満足されていなければ処理を終了する。
【0036】
ステップS2で、制御装置37はセンサ信号、即ち磁気センサ32の信号を入力した後、ステップS3に進み、ウィンドウガラス4の位置が上死点から所定距離以内か否か、即ち窓ガラスの閉め忘れでない状態か否かを判断する。具体的には少なくとも一方の磁気センサ32から磁束を所定強さ以上検出している状態である信号が出力されているか否かを判断し、出力されていれば窓の閉め忘れでないと判断してステップS4に進み、ガラス割れ検知モードを開始する。ステップS3でいずれの磁気センサ32からも磁束を所定強さ以上検出している状態である信号が出力されていなければ、制御装置37は窓の閉め忘れと判断してステップS5に進み、警報装置を作動させる指令を出力した後、ステップS2に戻り、ステップS2からの処理を繰り返す。そして、ウィンドウガラス4が閉め忘れでない状態まで移動された後、ステップS4に進む。即ち、窓の閉め忘れの場合、制御装置37は、警報装置が発生する警報音あるいは警報ランプの点灯により、窓の閉め忘れに気付いた乗員がウィンドウレギュレータ11を操作してウィンドウガラス4を窓の閉め忘れでない位置まで移動させた後、ステップS4に進む。
【0037】
制御装置37は、ガラス割れ検知モードを開始すると、ステップS6でセンサ信号を入力、即ち磁気センサ32の出力信号を入力した後、ステップS7に進み、磁気センサ32から磁石31を検出している信号(検出信号)の有無を判断する。そして、検出信号が無ければガラス割れの可能性があるため、ステップS8に進み、検出信号無し時間の計測を行う。具体的にはタイマのカウントを開始又は継続する。ステップS7で検出信号が有れば正常、即ちガラス割れではないため、ステップS9に進み、タイマをリセットした後、ステップS6及びステップS7の処理を繰り返す。
【0038】
一方、ステップS7で検出信号が無ければ、ステップS8に進み、検出信号無し時間の計測を行う。具体的にはタイマのカウントを開始又は継続する。そして、ステップS10で所定時間経過したか否かを判断し、所定時間経過していれば、ガラス割れと判断してステップS11に進み、ガラス割れ信号をボデーECUに出力して処理を終了する。
【0039】
ボデーECU38は、ガラス割れ信号を入力すると、ガラス割れ警報処理を実施する。ガラス割れ警報処理としては、警報器を作動させて警報音や警報ランプでウィンドウガラス4が割れたことを外部に報知したり、セキュリティセンターに通報したりする。
【0040】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)車両用窓ガラスセキュリティシステムは、窓ガラスの閉め忘れ検出装置及びガラス割れ検出装置を備え、閉め忘れ検出装置及びガラス割れ検出装置の検出手段30を共用にする。そして、ガラス割れ検出装置を用いたガラス割れ検出モードに入る前に、閉め忘れ検出装置による閉め忘れ検出を行い、窓ガラス(ウィンドウガラス4)の閉め忘れでない状態においてガラス割れ検出を行う。したがって、例えば、換気のためにウィンドウガラス4が防犯上差し支えない程度に開けられた状態では閉め忘れと誤認せず、しかも無駄なガラス割れ検出動作を行う必要がない。また、閉め忘れ検出と、ガラス割れ検出とに検出手段30が共用されるため部品点数が少なく、コスト低減を図ることができる。
【0041】
(2)窓ガラスの閉め忘れでない状態とは、ウィンドウガラス4と窓枠との隙間が人の手を挿入可能な大きさより小さい状態である。したがって、ウィンドウガラス4が密閉状態の場合だけでなく、ウィンドウガラス4と窓枠との間に所定の隙間がある状態でも閉め忘れとは判断されない。そのため、換気のために密閉状態ではなくウィンドウガラス4と窓枠との間に僅かに隙間を設けた状態で車両から離れることができる。
【0042】
(3)検出手段30は、ウィンドウガラス4の端部に取り付けられた磁石31と、車体側に設けられた磁気センサ32とを備え、磁気センサ32による磁石31の磁束の検出状態に基づいてウィンドウガラス4の開放の程度及び割れの有無を判断する。したがって、簡単な構成で閉め忘れ検出装置とガラス割れ検出装置の検出手段30を共用にすることができる。
【0043】
(4)被検出部としての磁石31は、ウィンドウガラス4の端部に、ウィンドウガラス4をその両面のずれた位置に押圧力を加える状態で挟持するクリップ33を介して取り付けられている。したがって、強化ガラスの一部が破損して全体にひびが入った状態において、第1及び第2の押圧片34a,34bの押圧力でクリップ33が挟持している部分のウィンドウガラス4が破壊されてクリップ33が磁石31と共に落下するため、ウィンドウガラス4の割れを確実に検出することができる。
【0044】
(5)検出手段30は上下に所定間隔を置いて配置された2個の磁気センサ32を備えている。したがって、車両ドア1がサイドバイザーを備えているか否かに拘わらず、同じ検出手段30でウィンドウガラス4が閉め忘れでない状態にあるか否かを検出することができる。
【0045】
(6)制御装置37は、磁気センサ32の検出信号に基づいてガラス割れと判断する際、両磁気センサ32から磁石31を検出している信号が無い場合に直ちにガラス割れと判断するのではなく、磁石31を検出している信号が所定時間無い場合にガラス割れと判断する。したがって、ノイズにより誤ってガラス割れと誤判断することが抑制される。
【0046】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 制御装置37はガラス割れ検出モードに入る前に閉め忘れ検出を行って閉め忘れを検出した際、警報装置を作動させて運転者(乗員)にウィンドウガラス4を閉める操作を行わせる代わりに、ウィンドウレギュレータ11のモータ16に駆動信号を送ってウィンドウガラス4を閉め忘れでない状態まで移動させるようにしてもよい。即ち、図5のフローチャートのステップS5の処理を、ウィンドウガラス4を自動で閉め忘れでない状態の位置まで移動させるとする。具体的には、ウィンドウレギュレータ11のモータ16にウィンドウガラス4を閉める方向への駆動指令を出力する。この場合、乗員がウィンドウガラス4を閉め忘れた状態で車両から離れても、ウィンドウガラス4が自動的に閉め忘れでない状態に移動されるため、例えば、警報で乗員を呼び戻して窓ガラスを閉める操作を行わせる必要がない。
【0047】
○ 制御装置37は閉め忘れを検出した際、まず、警報装置を作動させた後、所定時間経過後も閉め忘れを検出した場合に、モータ16にウィンドウガラス4を閉める方向への駆動指令を出力するようにしてもよい。
【0048】
○ ウィンドウガラス4を自動昇降させる装置としてXアーム式ウィンドウレギュレータを用いたが、ケーブル式ウィンドウレギュレータや他の方式の昇降装置を用いてもよい。
【0049】
○ ウィンドウガラス4を昇降させる昇降装置はモータで自動昇降させる構成に限らず、乗員の手動によるものでもよい。
○ 検出手段30は、磁気センサ32を1個だけ設けた構成としてもよい。例えば、磁気センサ32として感度の高いものを使用したり、磁石31として磁力の大きなものを使用したりすれば1個の磁気センサ32で同じ機能を発揮することができる。また、磁石31として細長い形状のものを使用すれば、磁力が同じでも1個の磁気センサ32で同じ機能を発揮することができる。なお、磁気センサ32を3個以上設けてもよい。
【0050】
○ 検出手段30は、被検出部として磁石31を使用して磁気センサ32で被検出部を検出する構成に限らない。例えば、被検出部として赤外線反射膜をクリップ33あるいはウィンドウガラス4の端部に貼り付け、車体側に赤外線センサを設けてもよい。赤外線反射膜は上下方向の長さが、ウィンドウガラス4が閉め忘れでない位置に存在する状態において赤外線センサから出射された赤外線を赤外線センサに反射可能な長さに設定されている。そして、赤外線センサから赤外線を出射し、反射膜からの反射光を入射してウィンドウガラス4が閉め忘れでない位置に存在するか否かの検出や、ウィンドウガラス4が割れたか否かの判断を行うようにしてもよい。
【0051】
○ 検出手段30は、ウィンドウガラス4に割れが発生した際、被検出部付近のウィンドウガラス4を破壊するクリップ33を備えることが必須要件ではない。例えば、クリップ33を設けずに磁石31を接着剤や接着テープ等でウィンドウガラス4に固定してもよい。ウィンドウガラス4によっては一部に割れが発生した場合、全体にひびが入るとともにバラバラに破壊されるものもあり、そのようなウィンドウガラス4の場合は、被検出部付近のウィンドウガラス4の破壊を確実にするためのクリップ33を設ける必要はない。しかし、クリップ33を設けた場合は、強化ガラスの種類によらずガラス割れを確実に検出することができる。
【0052】
○ 制御装置37がガラス割れを検出した際、ガラス割れ検出信号をボデーECU38に出力して、ボデーECU38がガラス割れ警報処理を行う構成に代えて、制御装置37がガラス割れ警報処理を行うようにしてもよい。
【0053】
○ 制御装置37が閉め忘れを検出した際に作動させる警報装置と、ボデーECU38が作動させる警報装置とは別の警報装置でも同じ警報装置を共用する構成でもよい。
○ 制御装置37が窓の閉め忘れ検出を開始する条件は、乗員が車両を離れる状態になったと推定される状態であればよい。例えば、運転席に運転者がいるか否かを検出するセンサを設け、そのセンサが、運転者が居ないことを検出した検出信号や、車室内に人がいるか否かを検出するセンサを設け、そのセンサが車室内に人が居ないことを検出した検出信号に基づいて、制御装置37が窓の閉め忘れ検出を開始するようにしてもよい。
【0054】
○ クリップ33はウィンドウガラス4の下端部に設置したが、これに限ることなく、例えばウィンドウガラス4の側面での下部に設置してもよい。要は、ウィンドウガラス4の端部のうちの車両ドア1の内部の目立たない所に設置すればよい。
【0055】
○ 検出手段30が乗用車における右ドアに適用された例を示したが、他の側部ドアに適用してもよいことはいうまでもなく、また、側部ドアの他にも、後部ドアや屋根に設けられた開閉式ガラスルーフに適用してもよい。
【0056】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記検出手段は、前記窓ガラスにひびが入った際に、窓ガラスを破壊可能な押圧力を加えた状態で取り付けられたクリップの作用により破壊される窓ガラスの端部の領域に被検出部が取り付けられている。
【0057】
(2)請求項4に記載の発明において、前記磁石は前記窓ガラスにひびが入った際に、窓ガラスを破壊可能な押圧力を加えた状態で取り付けられたクリップの作用により破壊される窓ガラスの端部の領域又は前記クリップに取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】一実施形態における乗用車の右前ドアの概略図。
【図2】(a)は図1のA−A線での縦断面図、(b)はクリップの断面図。
【図3】検出手段の斜視図。
【図4】(a)はウィンドウガラスが割れた状態の模式正面図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図5】ガラス割れ検出手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0059】
4…窓ガラスとしてのウィンドウガラス、11…自動開閉装置としてのウィンドウレギュレータ、30…検出手段、31…磁石、32…磁気センサ、37…制御手段としての制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉め忘れ検出装置及びガラス割れ検出装置を備えた車両用窓ガラスセキュリティシステムであって、
前記閉め忘れ検出装置及び前記ガラス割れ検出装置の検出手段を共用にするとともに、前記ガラス割れ検出装置を用いたガラス割れ検出モードに入る前に、前記閉め忘れ検出装置による閉め忘れ検出を行い、窓ガラスの閉め忘れでない状態においてガラス割れ検出を行う制御手段を備えていることを特徴とする車両用窓ガラスセキュリティシステム。
【請求項2】
前記窓ガラスの閉め忘れでない状態とは、前記窓ガラスと窓枠との隙間が人の手を挿入可能な大きさより小さい状態である請求項1に記載の車両用窓ガラスセキュリティシステム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記閉め忘れ検出装置により閉め忘れを検出した際は、自動開閉装置を作動させて、窓ガラスを自動的に閉め忘れでない状態に移動させる請求項1又は請求項2に記載の車両用窓ガラスセキュリティシステム。
【請求項4】
前記検出手段は、前記窓ガラスの端部に取り付けられた磁石と、車体側に設けられた磁気センサとを備え、前記磁気センサによる前記磁石の磁束の検出状態に基づいて窓ガラスの開放の程度及び割れの有無を判断する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラスセキュリティシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−83662(P2009−83662A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256093(P2007−256093)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】