説明

車両用表示装置

【課題】端末機器の画面を表示する車両用表示装置において、必要な部分は確認しやすく、且つ、端末機器の画面全体も確認しやすくする。
【解決手段】、表示部112に表示さする擬似端末画面を、端末画面に特定領域がある場合、その特定領域を他の領域よりも拡大した画面とする(図(C)、(D))。これにより、その特定領域が確認しやすくなる。また、他の領域は、特定領域よりも拡大率が小さいことから、端末画面全体を拡大する場合よりも、擬似端末画面は端末画面の広い範囲を表示することができる。よって、必要な情報が表示されない場合も減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の端末機器の表示画面を表示することができる車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用表示装置として、外部の端末機器の表示画面を表示することができる装置が知られている。たとえば特許文献1の装置がそれである。特許文献1の装置は、携帯端末の画面を車両の表示部に表示できるようになっている。また、特許文献1では、携帯端末から領域情報(画面サイズ)を取得し、その領域情報と車両の表示部の画面サイズとを比較することで、携帯端末の画面を車両の表示部の画面に変換する際の縦横の倍率を決定している。さらに、異なる複数の倍率でそれぞれ変換した複数の画面の例が開示されており、携帯端末の画面が全部入るように縮小した例や、逆に携帯端末の画面を拡大して表示する例が開示されている。また、携帯端末の画面を拡大して表示する場合には、車両の表示部に携帯端末の画面が入りきらないことから、スクロールボタンを用意することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−130553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、携帯端末の画面全体を、ある縦横の倍率により変換して車両の表示部に表示している。しかし、この特許文献1の技術では、携帯端末の画面全体を車両の表示部に表示しようとすれば、画面全体が小さくなってしまい、画面の細部の内容を短時間で認識することが困難となってしまう。また、画面の細部を確認しやすくするには、画面全体を拡大することになるので、携帯端末の画面全体を車両の表示部に一度に表示することができない。そのため、画面をスクロールさせなければ、携帯端末の画面全体を確認することができない。
【0005】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、端末機器の画面を表示する車両用表示装置において、必要な部分は確認しやすく、且つ、端末機器の画面全体も確認しやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、表示部を備えた端末機器と接続されるとともに、車両に搭載される車両用表示部と、その車両用表示部に、端末機器の表示部に表示される端末画面を表した擬似端末画面を表示させる表示制御手段とを備える。この表示制御手段は、端末画面の一部の特定領域を、端末画面の他の領域よりも拡大した画面を車両用表示部に表示させる。
【0007】
このようにすれば、車両用表示部に表示される擬似端末画面は、端末画面の一部の特定領域が他の領域よりも拡大されていることから、その特定領域が確認しやすくなる。また、他の領域は、特定領域よりも拡大率が小さいことから、端末画面全体を拡大する場合よりも、擬似端末画面は端末画面の広い範囲を表示することができる。よって、必要な情報が表示されない場合も減少する。
【0008】
ところで、端末機器のアプリケーションプログラムを車両用装置にインストールしなくても、端末機器の画面を車両用装置の表示部に表示でき、且つ、車両用装置側からの操作
(たとえば画面のタッチ操作)により、端末機器の操作を可能にする技術が提案されている。この技術として、たとえば、ターミナルモードという規格が知られている。ターミナルモードでは、端末機器のアプリケーションプログラムを車両用装置にインストールしなくても、車両用装置は端末機器の機能を利用できることから、車両用装置の処理負荷が軽減できる等の利点がある。また、ターミナルモードでは、端末機器から車両用装置に送信されてくる情報は、基本的には、画素毎の色情報(以下、画素情報)のみである。次の請求項2記載の発明は、このような特徴を有するターミナルモードに好適な発明である。
【0009】
その請求項2記載の発明は、端末機器から、端末機器の表示部の各画素の画素情報を逐次取得し、取得した画素情報に基づいて、端末画面から、拡大標識として予め記憶されている図形および色の少なくともいずれか一方を検出する。そして、表示制御手段は、画素情報に基づいて車両用表示部に擬似端末画面を表示させるようになっており、且つ、拡大標識に基づいて定まる領域は拡大表示する。
【0010】
この発明では、表示制御手段は、拡大標識に基づいて定まる領域を拡大表示しており、この拡大標識は画素情報に基づいて検出されている。よって、ターミナルモードのように、端末機器からは画素情報しか送られてこないとしても、擬似端末画面の一部分を拡大することができる。
【0011】
請求項3記載の発明では、表示制御手段は、端末画面の全体を表す全体擬似端末画面を表示し、且つ、全体擬似端末画面に含まれる領域のうち、標識検出手段が検出した拡大標識に基づいて定まる特定領域を全体擬似端末画面よりも拡大した特定領域拡大画面を、全体擬似端末画面とは重ならない空き領域に表示する。また、端末画面の内容が、現在地を含む地図である現在地地図であるか否かを判断する画面内容判断手段を備える。そして、表示制御手段は、画面内容判断手段が、端末画面の内容が現在地地図であると判断した場合、拡大標識に基づいて定まる特定領域拡大画面を、予め設定された大きさで、現在地から近い順に、空き領域に表示可能な数分だけ表示する。
【0012】
画面の内容が現在地地図である場合には、現在地に近い領域ほど、ユーザが詳細を確認したい領域である可能性が高い。従って、現在地から近い順に、空き領域に表示可能な数分の特定領域拡大画面を選択して空き領域に表示するようにすれば、ユーザが必要とする特定領域拡大画面を表示できる可能性が高くなる。
【0013】
請求項4記載の発明では、画面内容判断手段は、端末画面の内容が現在地地図であると判断した場合に、さらに、その現在地地図に案内経路が表示されているか否かを判断する。また、表示制御手段は、画面内容判断手段が、端末画面の内容が現在地地図であると判断した場合、拡大標識に基づいて定まる特定領域拡大画面を、予め設定された大きさで、案内経路の進行方向において現在地から近い順に、空き領域に表示可能な数分だけ表示する。
【0014】
経路案内中は、現在地周辺のうちでも、案内経路の進行方向が特にユーザが詳細を確認したい方向となる。従って、上記請求項のように、現在地地図に案内経路が表示されている場合、案内経路の進行方向において現在地から近い順に、空き領域に表示可能な数分の特定領域拡大画面を選択して空き領域に表示するようにすれば、ユーザが必要とする特定領域拡大画面を表示できる可能性がより高くなる。
【0015】
請求項5記載の発明では、画面内容判断手段が、端末画面の内容は、案内経路が表示されている現在地地図であると判断した場合、その現在地地図から、実際の距離を示す実距離目盛を検出し、検出した実距離目盛、および、現在地地図における現在地と拡大標識との間の長さとに基づいて、現在地から前記拡大標識に対応する実際の地点までの距離を算出する実距離算出手段を備える。そして、表示制御手段は、特定領域拡大画面内に、実距離算出手段が算出した距離も表示する。
【0016】
このようにすれば、現在地地図には、現在地から拡大標識に対応する実際の地点までの距離が表示されていなくても、ユーザは、特定領域拡大画面を見ることで、現在地から拡大標識に対応する実際の地点までの距離を知ることができる。
【0017】
請求項6記載の発明では、標識検出手段は、拡大標識として、案内経路またはその付近に表示され、案内経路上における進路変更地点を示す進路変更図形を検出する。また、実距離算出手段は、実距離目盛、および、現在地地図における現在地と進路変更図形との間の長さとに基づいて、現在地から進路変更図形に対応する実際の地点までの距離を算出する。そして、表示制御手段は、特定領域拡大画面内に、実距離算出手段が算出した、現在地から前記進路変更図形に対応する実際の地点までの距離も表示する。
【0018】
このようにすれば、ユーザは、特定領域拡大画面を見ることで、現在地から進路変更地点まで、どの程度の距離であるかを知ることができる。
【0019】
請求項7記載の発明では、標識検出手段は、拡大標識として、進路変更図形の周辺に存在し、ユーザが、現在地地図における進路変更地点と実際の道路における進路変更地点との対応を確認する際の補助となる進路変更地点周辺図形も検出する。そして、表示制御手段は、特定領域拡大画面に、進路変更図形および進路変更地点周辺図形も含ませて表示する。
【0020】
このように、特定領域拡大画面に、進路変更図形だけでなく進路変更地点周辺図形も含ませて表示するようにすれば、ユーザは、特定領域拡大画面を見ることで、実際の道路においてどこが進路変更地点かを容易に認識することができる。
【0021】
請求項8記載の発明では、表示制御手段が特定領域拡大画面内に表示する進路変更周辺図形の種類を、ユーザが設定できるようになっており、特定領域拡大画面の大きさは、進路変更周辺図形の数に基づいて定まるようになっている。
【0022】
このようにすれば、特定領域拡大画面内に表示する進路変更周辺図形の種類が少ない種類に設定されている場合には、特定領域拡大画面の大きさが小さくなる。そのため、空き領域の大きさが同じであっても、より多くの特定領域拡大画面が表示されることになる。従って、ユーザは、進路変更地点の周辺の情報を詳しく知るよりも、より遠方までの進路変更地点の拡大表示を望む場合、特定領域拡大画面内に表示する進路変更地点周辺図形の種類を少なく設定することで、より遠方までの進路変更地点の拡大画面を空き領域に表示させることができる。
【0023】
請求項9記載の発明では、表示制御手段は、端末画面の全体に一定の倍率を乗じた画面となっている全体擬似端末画面を表示し、且つ、全体擬似端末画面に含まれる特定領域を、全体擬似端末画面における特定領域よりも拡大した特定領域拡大画面を、全体擬似端末画面とは重ならない領域に表示する。
【0024】
このようにすれば、特定領域拡大画面は、全体擬似端末画面と重ならない領域に表示されることから、特定領域が拡大して表示されることによって、特定領域の周囲の画像が見えなくなってしまうことがない。また、全体擬似端末画面には、他の領域と同じ倍率で特定領域も表示されることから、特定領域拡大画面が、全体擬似端末画面のどこを拡大したのかも容易に判断することができる。
【0025】
請求項10記載の発明では、表示制御手段は、端末画面の全体に一定の倍率を乗じた画面となっている全体擬似端末画面に、全体擬似端末画面に含まれる特定領域をその全体擬似端末画面における特定領域よりも拡大した特定領域拡大画面を、全体擬似端末画面の特定領域に重畳して表示する。このようにすれば、特定領域拡大画面を表示することにより、他の表示を行うための領域が狭くなってしまうことが抑制できる。
【0026】
前述のように、拡大標識としては図形や色があるが、端末機器から画素情報を取得し、取得した画素情報を用いて擬似端末画面を表示させる場合であって、拡大標識として予め所定の図形が記憶されている場合には、請求項11のように、標識検出手段は、画素情報に基づいて定まる色の変化に基づいて、拡大標識として記憶されている図形を検出する。なお、拡大標識として予め所定の色が設定されている場合にも、当然、画素情報に基づいて、その色を検出することができる。
【0027】
また、特定領域は、請求項12のように、予め設定された一定の大きさで表示するようにしてもよいし、また、請求項13のように、予め設定された一定倍率で拡大して表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明が適用された端末機器画面表示システム1のシステム構成図である。
【図2】車両用表示装置100が実行する制御内容を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップS4、S5、S6で表示部112に表示される画面例を説明する図である。
【図4】第2実施形態における図2のステップS6の処理の詳細を示すフローチャートである。
【図5】曲折矢印、ランドマーク、地名文字を一つの特定領域拡大画面内に表示する場合の表示部112の表示例である。
【図6】図4のステップS620の画面作成処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】曲折矢印のみを拡大標識として扱った場合の表示部112の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された車両用表示装置100を備えた端末機器画面表示システム1のシステム構成図である。図1に示すように、この端末機器画面表示システム1は、携帯端末10と車両用表示装置100とを備えている。
【0030】
携帯端末10は端末機器に相当するものであり、周知のスマートフォンやその他の携帯電話機、PDA等が該当する。この携帯端末10は端末表示部11を備えており、また、図示しない内部にCPU、ROM、RAM等を備えている。そして、ROMには種々のアプリケーションプログラムが記憶されており、CPUによって、ROMに記憶されているアプリケーションプログラムが実行されることにより、端末表示部11に種々の内容の画面が表示される。以下では、端末表示部11に表示される画面を端末画面という。
【0031】
端末表示部11には、携帯端末10の種類が異なったり、また、実行されるアプリケーションが異なったりすることで、種々の端末画面が表示される。ただし、本実施形態では、車両用表示装置100の表示部112に拡大して表示する特定領域については、拡大標識として予め設定された色、形を含んだ表示をするようになっている。これにより、車両用表示装置100では、携帯端末10から入力される画素情報を解析して、拡大標識を認識することで特定領域を決定することができる。
【0032】
なお、拡大標識は、色のみ、形のみ、色および形のいずれでもよい。拡大標識の形の例としては枠がある。ただし、拡大標識として設定する枠は、通常の描画においては使用頻度の低い(好ましくは使用されない)枠とする。たとえば、通常の描画においては使用頻度の低い線種および色のいずれかを用いた枠とする。枠を拡大標識とすれば、携帯端末10は、既存のアプリケーションにおいて設定されている図形に枠を追加するか、あるいは、枠を既に有している図形の場合には枠を変更するだけであることから、拡大標識を設定することが容易である。
【0033】
また、携帯端末10は、有線通信および無線通信の少なくともいずれかにより、車両用表示装置100との通信が可能となっている。有線接続としては、例えば、USBケーブルによる通信があり、また、無線接続としては、例えば、Bluetooth(登録商標)規格による通信がある。携帯端末10は、車両用表示装置100と通信が確立した状態で、端末表示部11に表示されている端末画面の各画素の画素情報(各画素の色を示す情報)を車両用表示装置100に逐次送信する。
【0034】
なお、通信の確立手順としては、たとえば、ACC−ONとなったときに、車両用表示装置100から、無線あるいは有線で映像信号を送信できる端末があるか問い合わせる問い合わせ信号を送信する。そして、この問い合わせ信号に対して応答信号が返信されてきた場合に、車両用表示装置100は、さらに接続依頼信号を送信し、携帯端末10が接続応答を返信することで通信が確立する。ここで、接続応答を返信する携帯端末10が複数存在する場合も考えられる。この場合には、種々の指標による優先順位づけを行なって、携帯端末10を1つに限定して通信を確立する。優先順位を決定するための指標としては、たとえば、ユーザが複数の携帯端末10に対して予め優先順位を登録しておく、電波の強い順、電池残量の大きい順などがある。
【0035】
そして通信が確立した状態で、車両用表示装置100が、映像信号の送信を依頼する信号を携帯端末10に対して送信することで、携帯端末10から車両用表示装置100への映像信号の送信が開始される。
【0036】
車両用表示装置100は、通信部102、制御部104、記憶部106、画像認識部108、画像処理部110、表示部112、アンプ114、スピーカ116を備えている。通信部102は、携帯端末10との間で無線、または有線により通信を行う。この通信部102により、携帯端末10から送信される映像信号、音声信号が受信される。なお、映像信号としては前述の画素情報が送受信される。通信部102は、受信した映像信号と音声信号とを分離し、映像信号は画像認識部108に入力し、音声信号はアンプ114に入力する。
【0037】
制御部104は、この車両用表示装置100の全体の制御や、通信部102、画像認識部108、画像処理部110、表示部112の制御を行う。記憶部106には、拡大標識リストが記憶されている。拡大標識としては、前述のように枠があるが、それ以外にも、予め設定された文字、文字以外の予め設定された図形(たとえば矢印、施設マーク)などがある。
【0038】
画像認識部108は特許請求の範囲の標識検出手段に相当する。この画像認識部108は、制御部104からの指示に基づき、通信部102から画素情報を取得し、取得した画素情報に基づいて画像認識処理を行う。この画像認識処理では、記憶部106に記憶されている拡大標識リストを制御部104を介して取得し、その拡大標識リストを参照して拡大標識を認識する。拡大標識リストに図形が記憶されている場合には、画素情報に基づいて定まる端末画面における色の変化から、端末画面に含まれる種々の図形の形状を認識し、認識した図形と拡大標識リストに記憶されている拡大標識との比較により、端末画面に含まれている拡大標識を認識する。また、拡大標識リストに色が記憶されている場合には、画素情報が示す色により、拡大標識を認識する。このようにして認識した認識結果および画素情報を画像処理部110へ入力する。なお、画像認識処理には、周知の種々の画像認識技術を利用することができ、たとえば、画面内で同一の色が連続している部分を1つの図形として認識しても良い。また、そのようにして認識した図形が、線状であって閉じた形状となっている場合には、図形の枠であると認識し、その枠およびその内部を一つの図形と認識しても良い。また、色を認識する場合には、認識した図形の枠やその内部が何色であるかを識別しても良い。なお、図形には複数の色が使用されていることも多いが、この場合、図形内での比率が所定値以上の色を認識しても良い。
【0039】
画像処理部110は特許請求の範囲の表示制御手段に相当する。この画像処理部110は、画像認識部108から入力された画素情報を用いて擬似端末画面を作成し、作成した擬似端末画面を表示部112に表示する。この擬似端末画面とは端末画面を表した画面である。ただし、擬似端末画面は端末画面を正確に再現した画面でなくてもよく、端末表示部11の縦横の画素数と、車両用表示装置100の表示部112の縦横の画素数との違いにより、端末画面全体を一定の倍率で拡大あるいは縮小した画面を擬似端末画面として作成してもよい。また、端末画面の全体に対して縦横比を変換して擬似端末画面としてもよい。なお、画素情報に付随して、その画素情報の全体情報(総画素数、画面の縦横比)が携帯端末10から送信されてくる場合には、その全体情報から、拡大、縮小や、縦横比の変換を判断してもよい。
【0040】
また、本実施形態では、画像処理部110は、表示部112に、2種類の擬似端末画面を表示する領域があるか否かにより、作成する擬似端末画面を異ならせる。2種類の擬似端末画面を表示することができる空き領域が存在する場合には、端末画面の全体に一定の倍率を乗じて全体擬似端末画面を作成するとともに、拡大標識に基づいて定まる特定領域を、全体擬似端末画面よりも高い拡大率で拡大した特定領域拡大画面も作成する。そして、全体擬似端末画面と特定領域拡大画面とを互いに重複しないようにして表示部112に表示する。
【0041】
一方、表示部112に、2つの擬似端末画面を表示するだけの空き領域がない場合には、上述の全体擬似端末画面に、その全体擬似端末画面における特定領域を重ねあわせ中心として、特定領域拡大画面を重畳した擬似端末画面を作成する。そして、その擬似端末画面を表示部112に表示する。
【0042】
なお、拡大標識と特定領域との関係は、拡大標識の種類毎に決まっている。たとえば、拡大標識としての枠は枠の内部が特定領域として設定されている。また、拡大標識が文字である場合には、その文字のみ、あるいは、その文字およびその文字の大きさにより定まる余白範囲を含む領域が特定領域として設定される。また、特定領域の拡大の程度は、倍率が予め設定されていてもよいし、拡大後のサイズが予め設定されていてもよい。また、拡大標識に応じて、前者とするか後者とするかが異なっていてもよい。さらに、拡大するとともに、縦横比が所定の比率になるように、縦横比を変更してもよい。
【0043】
表示部112は、車両の車室内において乗員から視認可能な位置に配置され、上述の擬似端末画面が表示される。例えば、周知のナビゲーション装置に備えられているディスプレイをこの表示部112として利用することができる。アンプ114は、通信部102から入力された音声信号を増幅してスピーカ116に入力する。スピーカ116は入力された音声信号(電気信号)を音声に変換して出力する。
【0044】
図2は、この車両用表示装置100が実行する制御内容を示すフローチャートである。次に、この図2に基づいて車両用表示装置100の処理を説明する。このフローチャートは、車両用表示装置100と携帯端末10との通信が確立しており、携帯端末10から、逐次、画素情報が送信されている状態で実行される。
【0045】
まず、ステップS1では、携帯端末10から送信され通信部102が受信した映像信号(画素情報)を、通信部12から取得する。この処理は画像認識部108が行う。続くステップS2も画像認識部108の処理であり、記憶部106に記憶されている拡大標識リストを参照して、端末画面から拡大標識を認識するための画像認識処理を実行する。
【0046】
続くステップS3〜S7は画像処理部110が行う処理である。ステップS3では、ステップS2の処理の結果、拡大標識があったか否かを判断する。この判断が否定判断であった場合にはステップS4へ進み、肯定判断であった場合にはステップS5へ進む。ステップS4では、前述の全体擬似端末画面を表示部112に表示する。
【0047】
ステップS5では、表示部112に、2つの擬似端末画面を表示するだけの空き領域があるか否かを判断する。この判断が肯定判断であればステップS6へ進み、否定判断であればステップS7へ進む。ステップS6では、前述の全体擬似端末画面を表示するとともに、その全体擬似端末画面に重ならないように特定領域拡大画面を表示する。一方、ステップS7では、特定領域を元の場所で拡大した擬似端末画面、すなわち、全体擬似端末画面に特定領域拡大画面を重畳した画面を表示する。
【0048】
ステップS8では、新しい映像信号が入力されたか否かを判断する。この判断が否定判断であれば、このステップS8を繰り返す。一方、肯定判断となった場合にはステップS1へ戻る。
【0049】
ここで、ステップS4、S5、S6で表示部112に表示される画面例を、図3を用いて説明する。図3(A)の左側は端末画面を概念的に示す図である。図3(A)の端末画面は、経路案内中において、右折するべき位置を拡大して示している図であり、コンビニエンスストアを示す施設図形20と、右折を指示する右折矢印30とが示されている。また、端末画面は、同図に示すように、縦1000画素、横500画素である。一方、この図3(A)の右図は、車両用表示装置100の表示部112の表示領域全体を示しており、この図に示されるように、表示部112は縦500画素、横1000画素である。
【0050】
図3(B)は、図3(A)の端末画面を元にした擬似端末画面を、車両用表示装置100の表示部112に表示した例である。端末画面の縦横比と、車両用表示装置100の表示部112の表示領域の縦横比との違いにより、擬似端末表示画面は、縦500画素、横250画素に変換されている。ステップS4で表示されるのは、例えば、この図3(B)に示されるような画面である。よって、擬似端末表示画面は、かなり小さく表示されることになり、全体的に見づらくなってしまう。特に、経路案内地点の情報が見づらい場合には、運転操作に影響する可能性もある。なお、図3(C)、(D)に示されるように、施設図形20や右折矢印30は、拡大して表示される対象であるが、図3(B)では比較のために拡大せずに表示している。
【0051】
これに対して、ステップS7で表示される擬似端末画面は、図3(C)に示すように、施設図形20および右折矢印30が拡大表示されている。そのため、これらを短時間で確認することができる。また、これら施設図形20および右折矢印30は、元の表示場所を表示中心として拡大されているので、他の表示を行うための領域が狭くなってしまうことが抑制できる。
【0052】
また、図3(D)は、ステップS6で表示される擬似端末画面の例であり、図3(B)と同じ全体擬似端末画面、および、その全体擬似端末画面と重ならないように、その画面の右側に特定領域拡大画面が表示されている。図3(D)においても、特定領域拡大画面が表示されることにより、施設図形20および右折矢印30を短時間で確認することができる。また、全体擬似端末画面とは別に特定領域拡大画面が表示されることにより、全体擬似端末画面では、特定領域の周囲の画像が見えなくなってしまうことがない。また、全体擬似端末画面には、他の領域と同じ倍率で特定領域も表示されることから、特定領域拡大画面が、全体擬似端末画面のどこを拡大したのかも容易に判断することができる。
【0053】
以上、説明した第1実施形態によれば、表示部112に表示される擬似端末画面は、端末画面に特定領域がある場合、その特定領域が他の領域よりも拡大された画面となっている。よって、その特定領域が確認しやすくなる。また、他の領域は、特定領域よりも拡大率が小さいことから、端末画面全体を拡大する場合よりも、擬似端末画面は端末画面の広い範囲を表示することができる。よって、必要な情報が表示されない場合も減少する。
【0054】
また、第1実施形態によれば、拡大標識に基づいて定まる領域を拡大表示しており、この拡大標識は画素情報に基づいて検出されている。よって、ターミナルモードのように、端末機器10からは画素情報しか送られてこないとしても、擬似端末画面の一部分を拡大することができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、特定領域拡大画面を空き領域に表示する場合の処理、すなわち、図2のステップS6およびそれに関連する処理が第1実施形態と相違する。その他の処理、および機械的構成は第1実施形態と同一である。
【0056】
第2実施形態では、1つの特定領域拡大画面内に表示する拡大標識の種類を設定できるようになっており、且つ、1つの特定領域拡大画面に表示する拡大標識の種類および数により、特定領域拡大画面の大きさが定まるようになっている。また、拡大標識として扱うか否かもユーザが設定できるようになっている。これら設定は、図示しない入力装置(たとえば表示部112と一体となったタッチパネル)を介して行なう。
【0057】
以下では、経路案内画面において進路変更地点を示す曲折矢印と、その曲折矢印の周囲に表示されるランドマークおよび地名文字とを一つの特定領域拡大画面内に表示する設定と(図5)と、曲折矢印のみを拡大標識として扱う例(図7)を説明する。なお、上記曲折矢印は特許請求の範囲の進路変更図形に相当し、曲折矢印の周囲に表示されるランドマークおよび地名文字は、特許請求の範囲の進路変更地点周辺図形に相当する。
【0058】
図4は、第2実施形態における図2のステップS6の処理の詳細を示すフローチャートである。なお、このステップ図4を実行するのは、図2のステップS3、S5がいずれもYESとなった場合、すなわち、拡大標識を認識でき、且つ、表示部112に特定領域拡大画面を表示する空き領域が存在する場合である。
【0059】
図4において、まず、ステップS602では、表示部112の空き領域に表示できる特定領域拡大画面数を計算する。この計算は、詳しくは、まず、端末画面の全体に対し、縦および横に同じ倍率を乗じて全体擬似端末画面を作成する。この倍率は、表示部112に全体擬似端末画面を最大の大きさで表示できる倍率とする。このようにして作成した全体擬似端末画面を表示部112の予め定められている位置に配置したときの残りの表示領域が空き領域である。次に、この空き領域の大きさを計算する。
【0060】
さらに、1つの特定領域拡大画面の大きさを決定する。第2実施形態での1つの特定領域拡大画面の大きさは、その1つの特定領域拡大画面に表示する拡大標識の種類および数により定まるようになっており、空き領域の大きさには影響されない。また、特定領域拡大画面の形状は、拡大標識の種類および数によらず矩形であり、拡大標識の種類および数により、特定領域拡大画面の縦方向の長さが定まる。
【0061】
そして、空き領域の大きさと、1つの特定領域拡大画面の大きさを比較して(より正確には、それぞれの縦方向の長さを比較して)、空き領域に表示可能な特定領域拡大画面の数を計算する。
【0062】
続くステップS604では、端末画面が現在地地図か否かを判断する。この現在地地図とは現在地を含む地図である。現在地地図かどうかは、端末画面内に現在地マークがあるか否かで判断する。現在地マークは、1種あるいは複数種類を予め記憶部106に記憶しておき、この予め記憶している現在地マークのうちのいずれかを端末画面から検出できるか否かで判断する。
【0063】
ステップS604が否定判断であればステップS606に進む。ステップS606では通常画面表示処理を行なう。この通常画面表示処理とは、ステップS2の画像認識処理で認識した拡大標識に基づいて定まる特定領域拡大画面を、現在地地図が表示されている場合とは異なる処理により表示部112に表示する処理である。この処理は、具体的一例としては、全部の数の特定領域拡大画面を一度に空き領域に表示する処理である。このとき、特定領域拡大画面を規定の大きさで表示するだけの広さが空き領域にない場合には、各特定領域拡大画面を縮小してもよいし、また、特定領域拡大画面を互いに部分的に重ねて表示してもよい。また、拡大標識の種類に優先順位を設定しておき、優先順位の順番で表示する特定領域拡大画面を選択してもよい。このステップS606を実行後は、図2のS8へ進む。
【0064】
ステップS604を肯定判断した場合、すなわち、端末画面が現在地地図であると判断した場合には、続くステップS608で、その現在地地図に案内経路があるか否かを判断する。この判断は、案内経路の特徴を予め記憶しておき、その特徴を示す図形を端末画面から認識できるか否かで行う。案内経路は水色ないし青色で示されるのが通常であり、また、経路であることから、線状である。そこで、案内経路の特徴としては、たとえば、水色ないし青色であって、形状が線状であるという特徴を予め記憶しておく。なお、このステップS608および前述のステップS604が、特許請求の範囲の画面内容判断手段に相当する。
【0065】
ステップS608が否定判断であった場合にも、本実施形態では、ステップS606に進んで前述の通常画面表示処理を実行する。一方、ステップS608が肯定判断であった場合には、ステップS610に進み、端末画面の案内経路の付近に曲折矢印があるか否かを判断する。この曲折矢印は、前述したように、案内経路上において進路変更地点を示す図形である。第2実施形態では、拡大標識リストにこの曲折矢印を記憶しておき、ステップS2の画像認識において、曲折矢印が認識されるようにする。そして、このステップS610では、ステップS2の画像認識において、曲折矢印が認識されたか否かを判断する。なお、曲折矢印に限らず、その他の図形、たとえば、案内経路そのものにおいて折れ曲がっている部分を、進路変更図形として認識するようにしてもよい。
【0066】
ステップS610の判断が否定判断であった場合にも、前述のステップS606に進む。一方、ステS610の判断が肯定判断であった場合には、ステップS612にて、端末画面内の曲折矢印の数が複数であるか否かをさらに判断する。この判断が否定判断であった場合、すなわち、曲折矢印が1つのみである場合には、直接、ステップS616に進む。一方、ステップS612の判断が肯定判断であった場合、すなわち、曲折矢印が複数であった場合にはステップS614へ進む。
【0067】
ステップS614では表示可能画面を選択する。この選択は、詳しくは、曲折矢印に基づいて定まる特定領域端末画面を、案内経路の進行方向において現在地から近い順に、ステップS602で計算した表示可能な画面数分、選択するものである。
【0068】
図5は、このステップS614以下を実行した場合の表示部112の表示例である。この図の左側に、画面内容が現在地地図となっている縦長の全体擬似端末画面120が表示されている。この全体擬似端末画面120には、現在地マーク122、3つの曲折矢印124、126、128も示されている。さらに、この図5の例は、表示可能な画面数が2と計算された例である。そのため、この図5の例においては、ステップS614で、現在地マーク122から近い2つの曲折矢印124、126に基づいて定まる特定領域拡大画面を選択することになる。なお、実際の全体擬似端末画面は案内経路や道路が表示されているが、図5においては案内経路や道路は省略して示している。
【0069】
続くステップS616は、特許請求の範囲の実距離算出手段に相当し、現在地から曲折矢印124、126において示されている進路変更地点までの実際の距離(実距離)を算出する。この実距離の算出においては、まず、縮尺ゲージ130(特許請求の範囲の実距離目盛に相当)を現在地地図から検出する。図5に示すように、縮尺ゲージに130には、実距離を示す数値(図5では200m)131と、その数値に対応する線分132が示されている。現在地マーク122から、曲折矢印124、126の付近に存在する進路変更地点(通常は道路の交差点)まで、線分132が幾つ分であるかを計算し、計算した線分の数と実距離を示す数値との積を、現在地から曲折矢印124、126において示されている進路変更地点までの実距離として算出する。なお、進路変更地点に代えて、進路変更図形すなわち曲折矢印122、124を用い、現在地マーク122と曲折矢印122、124との間の長さを実距離と近似して算出してもよい。
【0070】
続いて、ステップS620の画面作成処理を実行する。この画面作成処理は、ステップS614で選択した特定領域拡大画面を作成する処理であり、詳細は図6に示している。
【0071】
まず、ステップS621において、ステップS614で選択した特定領域拡大画面からいずれか1つを選択する。そして、その選択した特定領域拡大画面に対応する曲折矢印の周辺にランドマーク(目印となる施設を示す図形)があるか否かを判断する。ランドマークがあるか否かも、曲折矢印と同様に、拡大標識リストにこのランドマークを記憶しておき、ステップS2の画像認識において、ランドマークが認識されるようにする。そして、このステップS621では、ステップS2の画像認識において、ランドマークが認識されたか否かを判断する。図5には、ランドマークの一例としてコンビニエンスストアのマーク134が、曲折矢印124の付近に表示されている。もちろん、図5の例以外に、具体的なコンビニエンスストア名を示すランドマークや、その他のランドマークも拡大標識リストに記憶しておき、種々のランドマークが認識できるようにしておく。
【0072】
ランドマークがあった場合にはステップS622へ進み、ランドマークがなかった場合にはステップS625へ進む。ステップS622では、ランドマークの有無を判断した特定領域拡大画面に対応する曲折矢印の周辺に地名文字があるか否かを判断する。なお、地名文字の有無の判断は、本実施形態では次のようにして行なう。曲折矢印の周辺に存在する地名文字については、携帯端末10の端末画面において、特定の色の枠で囲って表示するようにしておく。そして、この特定の色の枠を拡大標識リストに記憶しておき、ステップS2で特定の色の枠が認識されるようにしておく。なお、この処理に限らず、光学文字認識技術(所謂OCR)により、曲折矢印の周辺に文字があるか否かを直接認識し、文字があった場合には、その文字を地名文字と判断するようにしてもよい。
【0073】
ステップS622で地名文字ありと判断した場合にはステップS623へ進み、地名文字なしと判断した場合にはステップS624へ進む。ステップS623へ進んだ場合には、曲折矢印の周囲に、ランドマークと地名文字があったことになる。そこで、ステップS623では、曲折矢印に加えて、その周囲に存在するランドマーク、地名文字も含んだ特定領域拡大画面を作成する。なお、特定領域拡大画面における曲折矢印等の大きさは、予め設定された大きさとする。また、この画面には、ステップS616で算出した実距離を示す数値も含ませる。
【0074】
図5では、全体擬似端末画面120の右側に2つの特定領域拡大画面が互いに重ならない状態で表示されている。このうちの下段がステップS623により作成される特定領域拡大画面の一例である。なお、全体擬似端末画面120では、曲折矢印124に対して地名文字「昭和町」は左上方に示されているが、下段の特定領域拡大画面では、曲折矢印124に対して地名文字「昭和町」は右側に配置されている。全体擬似端末画面120をそのまま拡大するのではなく、このように、再配置を行なって特定領域拡大画面を作成してもよい。また、この例とは異なり、全体擬似端末画面120と同様の配置の特定領域拡大画面を作成してもよい。再配置を行なう場合には、各拡大標識のみを抽出して、周囲(背景)は抽出しない。再配置を行わない場合にも各拡大標識のみを抽出してもよいが、この場合には、複数の拡大標識を含む範囲を単純に拡大して特定領域拡大画面としてもよい。
【0075】
次にステップS624を説明する。ステップS624へ進んだ場合には、曲折矢印の周囲に、ランドマークはあったが、地名文字はなかったことになる。そこで、ステップS624では、曲折矢印に加えて、その周囲に存在するランドマークを含んだ特定領域拡大画面を作成する。また、この画面にも、ステップS616で算出した実距離を示す数値を含ませる。
【0076】
次に、ステップS625を説明する。ステップS625の内容はステップS622と同じである。つまり、ランドマークがなかった場合にも、ランドマークの有無を判断した曲折矢印の周辺に地名文字があるか否かを判断する。
【0077】
ステップS625で地名文字ありと判断した場合にはステップS626へ進み、地名文字なしと判断した場合にはステップS627へ進む。ステップS626へ進んだ場合には、曲折矢印の周囲に、ランドマークはなかったが地名文字はあったことになる。そこで、ステップS626では、曲折矢印に加えて、その周囲に存在する地名文字も含んだ特定領域拡大画面を作成する。また、この画面にも、ステップS616で算出した実距離を示す数値も含ませる。
【0078】
図5に示す2つの特定領域拡大画面のうち、上段がステップS626により作成される特定領域拡大画面の一例である。この上段の画面でも、地名文字「中央町」は再配置されている。もちろん、この例とは異なり、全体擬似端末画面120と同様の配置の特定領域拡大画面を作成してもよい。
【0079】
次にステップS627を説明する。ステップS627へ進んだ場合には、曲折矢印の周囲には、ランドマークも地名文字もなかったことになる。そこで、ステップS627では、曲折矢印とステップS616で算出した実距離を示す数値とからなる特定領域拡大画面を作成する。
【0080】
ステップS623、S624、S626、S627を実行した場合には、いずれもステップS628へ進む。ステップS628では、ステップS614で選択した特定領域拡大画面を全部作成したか否かを判断する。この判断が否定判断であれば、ステップS621へ戻り、まだ作成していない特定領域拡大画面を作成するために、前述のステップS621以下を実行する。一方、ステップS628が肯定判断であれば、図6のサブルーチンを終了し、図4のステップS630へ進む。
【0081】
図4のステップS630では、ステップS620で作成した特定領域拡大画面を、表示部112の空き領域に表示する。
【0082】
上記図4〜6を用いた説明は、一つの特定領域拡大画面内に、曲折矢印、ランドマーク、地名文字を表示する設定の例であった。しかし、前述のように、この設定は、ユーザが変更可能である。たとえば、1つの特定領域拡大画面内に表示する拡大標識を、曲折矢印のみとする設定とし、ランドマーク、地名文字は拡大標識としない設定も可能である。
【0083】
また、特定領域拡大画面の大きさは、本実施形態では、1つの特定領域拡大画面に表示する拡大標識の数、種類により定まり、1つの特定領域拡大画面に表示する拡大標識を曲折矢印のみとする場合には、1つの特定領域拡大画面の大きさが小さくなり、空き領域に表示できる特定領域拡大画面の数を増やすことができる。
【0084】
図7は、1つの特定領域拡大画面に表示する拡大標識を曲折矢印のみに設定した場合の表示部112の表示例であり、全体擬似端末画面120、および、空き領域の大きさは図5と同一である。図7の例から分かるように、1つの特定領域拡大画面に表示する拡大標識を曲折矢印のみに設定することで、曲折矢印124、126、128に基づいてそれぞれ定まる3つの特定領域拡大画面を表示できている。なお、これらの特定領域拡大画面にも、進路変更地点までの実距離が示されている。
【0085】
以上、説明した第2実施形態では、画面の内容が現在地地図であって(S604がYES)、案内経路がある場合には(S608がYES)、案内経路の進行方向において現在地から近い順に、空き領域に表示可能な数分の特定領域拡大画面を選択して空き領域に表示している(S614、S620、S630)。経路案内中は、現在地周辺のうちでも、案内経路の進行方向が特にユーザが詳細を確認したい方向となるのが通常であることから、第2実施形態のようにすることで、ユーザが必要とする特定領域拡大画面を表示できる可能性が高くなる。
【0086】
また、第2実施形態では、現在地地図から縮尺ゲージ130を検出し、この縮尺ゲージ130に基づいて、現在地から進路変更地点までの実距離を算出している(S616)。そして、算出した実距離を特定領域拡大画面に含ませている(S630)。よって、現在地地図には現在地から進路変更地点までの距離が表示されていなくても、ユーザは、特定領域拡大画面を見ることで、現在地から進路変更地点までの距離を知ることができる。
【0087】
また、特定領域拡大画面には、曲折矢印の周囲に存在するランドマークや地名文字を含ませることができるので、ユーザは、特定領域拡大画面を見ることで、実際の道路においてどこが進路変更地点かを容易に認識することができる。
【0088】
また、特定領域拡大画面に、曲折矢印の周囲に存在するランドマークや地名文字を含ませるか否かをユーザが設定できるので、曲折矢印の周囲に存在するより多くの種類の図形を表示する設定とすれば、ユーザは、進路変更地点の周辺の情報を詳しく知ることができる。また、特定領域拡大画面内に表示する図形の種類を少なく設定すれば、より遠方までの進路変更地点の拡大画面を空き領域に表示させることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0090】
たとえば、特定領域を拡大するかしないかを、ユーザが設定できるようにしてもよい。また、擬似端末画面として、ステップS6の画面を表示するか、ステップS7の画面を表示するかをユーザが設定できるようにしてもよい。
【0091】
また、前述の実施形態では、携帯端末10は、特定領域については、拡大標識として予め設定された色、形を含んだ表示をするようになっていたが、このような、携帯端末10における特別な処理を行わなくてもよい。
【0092】
また、前述の実施形態では、画素情報に基づいて拡大標識を認識し、拡大標識に基づいて特定領域を決定していたが、これに限られない。たとえば、携帯端末10が画素情報とともに、特定領域を指定するコマンドを送信し、車両用表示装置100はそのコマンドに基づいて特定領域を認識するようにしてもよい。
【0093】
また、第2実施形態では、特定領域拡大画面は曲折矢印を含んだものに限定されていたが、それ以外の種々の拡大標識を特定領域拡大画面に表示するようにしてもよい。たとえば、経路案内に関係ない拡大標識を特定領域拡大画面に表示するようにしてもよい。その場合には、案内経路の周辺以外に存在する拡大標識を特定領域拡大画面として拡大表示することも考えられる。この場合において、案内経路の進行方向において現在地から近い順に特定領域拡大画面を選択する場合、どの程度の範囲を案内経路の進行方向とするかが問題となる。そこで、たとえば、案内経路までの最短距離が所定距離以内や、案内経路方向を0°とし、現在地から0°±αの範囲を、案内経路の進行方向とする。
【0094】
また、案内経路が表示されていなくても、現在地地図であれば特定領域拡大画面の選択を行なうようにしてもよい。案内経路はなくても、現時点での進行方向は判断可能であるので、特定領域拡大画面の選択においては、進行方向に限定して特定領域拡大画面を選択してもよいし、また、進行方向を考慮せずに、現在地から近い順に特定領域拡大画面を選択してもよい。
【0095】
また、第2実施形態では、特定領域拡大画面の大きさは、拡大標識の種類および数により定まっていたが、種類は考慮せずに、拡大標識の数のみにより特定領域拡大画面の大きさが定まるようにしてもよい。また、1つの特定領域拡大画面の大きさを、その画面に含ませる拡大標識の数や種類によらずに一定の大きさに設定してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1:端末機器画面表示システム、 10:携帯端末(端末機器)、 20:施設図形、 30:右折矢印、 100:車両用表示装置、 102:通信部、 104:制御部、 106:記憶部、 108:画像認識部(標識検出手段)、 110:画像処理部(表示制御手段)、 112:表示部(車両用表示部)、 114:アンプ、 116:スピーカ、 120:全体擬似端末画面、 122:現在地マーク、 124、126、128:曲折矢印、 130:縮尺ゲージ(実距離目盛)、 134:コンビニエンスストアのマーク、 S604、S608:画面内容判断手段、 S616:実距離算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を備えた端末機器と接続されるとともに、車両に搭載される車両用表示部と、その車両用表示部に、前記端末機器の表示部に表示される端末画面を表した擬似端末画面を表示させる表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記端末画面の一部の特定領域を、端末画面の他の領域よりも拡大した画面を前記車両用表示部に表示させることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記端末機器から、端末機器の表示部の各画素の画素情報を逐次取得し、取得した画素情報に基づいて、端末画面から、拡大標識として予め記憶されている図形および色の少なくともいずれか一方を検出する標識検出手段を備え、
前記表示制御手段は、前記画素情報に基づいて前記車両用表示部に前記擬似端末画面を表示させるようになっており、且つ、前記標識検出手段が検出した拡大標識に基づいて定まる領域は拡大表示することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記表示制御手段は、前記端末画面の全体を表す全体擬似端末画面を表示し、且つ、全体擬似端末画面に含まれる領域のうち、前記標識検出手段が検出した拡大標識に基づいて定まる特定領域を前記全体擬似端末画面よりも拡大した特定領域拡大画面を、前記全体擬似端末画面とは重ならない空き領域に表示するものであり、
前記端末画面の内容が、現在地を含む地図である現在地地図であるか否かを判断する画面内容判断手段を備え、
前記表示制御手段は、前記画面内容判断手段が、前記端末画面の内容が現在地地図であると判断した場合、前記拡大標識に基づいて定まる特定領域拡大画面を、予め設定された大きさで、現在地から近い順に、空き領域に表示可能な数分だけ表示することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記画面内容判断手段は、前記端末画面の内容が現在地地図であると判断した場合に、さらに、その現在地地図に案内経路が表示されているか否かを判断し、
前記表示制御手段は、前記画面内容判断手段が、前記端末画面の内容が現在地地図であると判断した場合、前記拡大標識に基づいて定まる特定領域拡大画面を、予め設定された大きさで、前記案内経路の進行方向において現在地から近い順に、空き領域に表示可能な数分だけ表示することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記画面内容判断手段が、前記端末画面の内容は、案内経路が表示されている現在地地図であると判断した場合、その現在地地図から、実際の距離を示す実距離目盛を検出し、検出した実距離目盛、および、現在地地図における現在地と前記拡大標識との間の長さとに基づいて、現在地から前記拡大標識に対応する実際の地点までの距離を算出する実距離算出手段を備え、
前記表示制御手段は、前記特定領域拡大画面内に、前記実距離算出手段が算出した距離も表示することを特徴とする車両用表示制御装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記標識検出手段は、前記拡大標識として、前記案内経路またはその付近に表示され、案内経路上における進路変更地点を示す進路変更図形を検出するものであり、
前記実距離算出手段は、前記実距離目盛、および、現在地地図における現在地と前記進路変更図形との間の長さとに基づいて、現在地から前記進路変更図形に対応する実際の地点までの距離を算出し、
前記表示制御手段は、前記特定領域拡大画面内に、前記実距離算出手段が算出した、現在地から前記進路変更図形に対応する実際の地点までの距離も表示することを特徴とする車両用表示制御装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記標識検出手段は、前記拡大標識として、前記進路変更図形の周辺に存在し、ユーザが、現在地地図における進路変更地点と実際の道路における進路変更地点との対応を確認する際の補助となる進路変更地点周辺図形も検出するようになっており、
前記表示制御手段は、前記特定領域拡大画面に、前記進路変更図形および前記進路変更地点周辺図形も含ませて表示することを特徴とする車両用表示制御装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記表示制御手段が特定領域拡大画面内に表示する進路変更周辺図形の種類を、ユーザが設定できるようになっており、
前記特定領域拡大画面の大きさは、進路変更周辺図形の数に基づいて定まるようになっていることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項9】
請求項1または2において、
前記表示制御手段は、前記端末画面の全体に一定の倍率を乗じた画面となっている全体擬似端末画面を表示し、且つ、全体擬似端末画面に含まれる特定領域を、その全体擬似端末画面における特定領域よりも拡大した特定領域拡大画面を、全体擬似端末画面とは重ならない領域に表示することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項10】
請求項1または2において、
前記表示制御手段は、前記端末画面の全体に一定の倍率を乗じた画面となっている全体擬似端末画面に、全体擬似端末画面に含まれる特定領域をその全体擬似端末画面における特定領域よりも拡大した特定領域拡大画面を、全体擬似端末画面の特定領域に重畳して表示することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項11】
請求項2〜8のいずれか1項において、
前記拡大標識として予め所定の図形が記憶されており、
前記標識検出手段は、前記画素情報に基づいて定まる色の変化に基づいて、前記拡大標識として記憶されている図形を検出することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項12】
請求項1〜7、9〜10のいずれか1項において、
前記表示制御手段は、前記特定領域を、予め設定された一定の大きさで表示することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項13】
請求項1〜7、9〜10のいずれか1項において、
前記表示制御手段は、前記特定領域を、予め設定された一定倍率で拡大して表示することを特徴とする車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213129(P2012−213129A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237769(P2011−237769)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】