説明

車両用表示装置

【課題】立体視させる意匠を、視認者に立体的に認識され易く呈示することができる車両用表示装置の提供。
【解決手段】運転者が車両の機関を始動する操作を行ったとき、表示画面31への視線移動が有ると推定される。このような機関の始動後に表示画面31に連続して表示される一連のオープニング画像56では、ロゴマーク66の飛び出し量Dgが次第に増加される。運転者は、機関を始動する操作をした後、表示画面31に視線を移動した際に表示されるオープニング画像56のロゴマーク66を視認することによって、裸眼立体視に目を慣らすことができる。故に、オープニング画像56の後に表示画面31に表示される情報画像50に含まれる目盛り62及び指針64等の意匠を、運転者は、容易に立体視することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車両に係わる画像を表示画面に表示し、この画像に含まれる意匠を視認者に立体視させる車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1〜3に開示のように、視認者に注意喚起を行う警告画像やナビゲーション装置の矢印画像等、立体視させる意匠を含んだ画像によって視認者に車両の情報を呈示する車両用表示装置が知られている。これら特許文献1〜3に開示の車両用表示装置では、視差分割方式により立体表示を可能とする液晶ディスプレイ等が用いられている。詳しく説明すると、視差分割方式の液晶ディスプレイは、視認者の左目に視認される左目用画像と右目に視認される右目用画像とを表示画面に表示する。視認者は、左右の画像の付与された視差により、表示画面の垂直方向に沿って当該表示画面からずれた位置に、意匠を立体的に知覚することができる。
【0003】
このような特許文献1〜3に開示の車両用表示装置において、意匠を立体視している際の視認者の焦点は、表示画面に合っている。一方で、仮想の意匠を視認者が知覚する位置は、表示画面からずれている。このように焦点位置と知覚位置とがずれていることに起因して、視認者は、意匠を立体視することができずに、左目用画像と右目用画像とを個別の画像であると認識してしまい得る。
【0004】
そこで、特許文献3に開示の車両用表示装置では、視認者の着座等が検出されたことに基づいて、車両に係わる情報を示し且つ立体視させる意匠を含む画像を表示するよりも前に、デモンストレーション用の立体画像が表示される。このようなデモンストレーション用の立体画像が表示されることにより、視認者は、意匠の立体視に目を慣らすための機会を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−65316号公報
【特許文献2】特開2001−21836号公報
【特許文献3】特開2005−67515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、特許文献3に開示の車両用表示装置では、単にデモンストレーション用の立体画像が表示されるだけである。即ち、立体画像において、立体視される意匠の表示画面に対する仮想のずれは、一定のままである。故に、デモンストレーション用の立体画像に視線を向けた直後の視認者は、当該立体画像を立体視できずに、この立体画像の左目用画像と右目用画像とを個別の画像であると認識してしまうおそれがあった。このように、立体視させる意匠を視認者に立体的に認識され易く呈示することは、特許文献3に開示の車両用表示装置でも困難であった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、立体視させる意匠を、視認者に立体的に認識され易く呈示することができる車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載され、車両に係わる画像を表示画面に表示し、画像に含まれる意匠を視認者に立体視させる車両用表示装置であって、表示画面を有し、視認者の左目に視認される左目用画像と右目に視認される右目用画像とを表示画面に表示することにより、表示画面の垂直方向に沿って当該表示画面からずれた位置に意匠を知覚させ、この意匠につき視認者に知覚される位置の表示画面に対する仮想のずれを増減可能な表示手段と、視認者につき、表示画面から視線を外した状態を継続した後、当該視線を表示画面に向ける視線移動の有無を推定する視線推定手段と、視線推定手段によって視線移動が有ると推定されたことに基づいて、表示画面に対する意匠の仮想のずれを次第に増加させる一連の画像を連続して表示するよう表示手段を制御する表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、視認者が視線を表示画面から外した状態を継続した後、この視線を表示画面に向けることにより、視線推定手段は、このような表示画面への視線移動が有ることを推定する。こうした視認者の視線移動が有ると推定されたことに基づいて、表示制御手段は、表示画面に対する意匠の仮想のずれを次第に増加させる一連の画像を連続して表示するよう表示手段を制御する。故に、表示画面に視線を向けた視認者は、連続して表示される一連の画像において、次第に増加する意匠の仮想のずれを継続的に視認することとなる。以上により、車両用表示装置は、左目用及び右目用画像によって表示画面からずれた位置に意匠を知覚させる立体視に、視認者の目を慣らさせることができるので、左目用画像と右目用画像とが視認者に個別の画像であると認識される事態を抑制し得る。こうして車両用表示装置は、立体視させる意匠を視認者に立体的に認識され易く呈示することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、表示制御手段は、視線移動が有ると推定されたことに基づいて、表示画面に連続して表示させる一連の画像につき、意匠の仮想のずれを消失させた状態から次第に増加させることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、表示画面に連続して表示させる一連の画像につき、意匠の仮想のずれを消失させた状態から次第に増加させる。故に、視認者は、表示画面に視線を向けた直後、二次元で表示される意匠を視認するので、左目用画像と右目用画像とが視認者に個別の画像であると認識することはない。そして視認者は、表示画面上から意匠が次第にずれていく様子を、継続的に目視できる。故に、視認者は、立体視に確実に目を慣らし得る。しがって、車両用表示装置は、意匠の立体視の容易性を、さらに向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、表示手段は、一連の画像を表示した後に、車両に係わる情報を示す情報画像を表示画面に表示し、一連の画像にて仮想のずれを次第に増加された意匠は、情報画像に継続して含まれることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、仮想のずれが次第に増加される一連の画像に含まれる意匠は、当該一連の画像の後に表示画面に表示される情報画像に、継続して含まれる。故に、一連の画像の意匠によって立体視に慣らされた視認者は、車両に係わる情報を示す情報画像に含まれる意匠を、違和感なく立体視し始めることができる。以上のように、一連の画像から情報画像への移行を滑らかに行うことにより、車両用表示装置は、情報画像にて立体視させる意匠をさらに認識容易に視認者に呈示することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、視線推定手段は、車両に搭載された機関を始動させる信号を検出する検出部と、検出部によって信号が検出されたことに基づいて、視線移動が有ると推定する推定部と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明では、視線推定手段は、視認者が車両に乗車する際の動作を示す信号を検出する検出部、を有し、検出部によって信号が検出されたことに基づいて、視線移動が有ると推定する推定部と、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明のように、車両に搭載された機関を始動させる操作を視認者が車両に対して行った後には、当該視認者の視線は、表示画面に向けられる蓋然性が高い。また、請求項5の発明のように、車両に乗車する際の動作を視認者が車両に対して行った後にも、当該視認者の視線は、表示画面に向けられる蓋然性が高い。
【0017】
故に、機関を始動させる信号及び乗車する際の動作を示す信号が検出部によって検出されたことに基づくことで、推定部は、視認者の表示画面への視線移動を、高い確実性をもって間接的に推定することができる。故に、車両用表示装置は、表示画面に対する意匠の仮想のずれが次第に増加していく様子を、表示画面に視線を向けた視認者に確実に視認させることができる。以上により、視認者の目が立体視に確実に慣らされ得るので、意匠の立体視を容易にする効果発揮の確実性は、さらに向上する。
【0018】
請求項6に記載の発明では、視線推定手段は、視認者の目を含む範囲を撮影した撮影画像を取得する画像取得部と、画像取得部によって取得された撮影画像から視認者の視線の向く視線方向を解析する画像解析部と、画像解析部によって解析される視線方向が、予め規定された時間以上表示画面から外れた状態から表示画面に向けられたことに基づいて、視線移動が有ると推定する推定部と、を有することを特徴とする。
【0019】
この発明のように、視認者の目を含む範囲を撮撮した撮影画像を画像解析部によって解析することにより、視認者の視線の向く視線方向は、検出可能である。故に、画像解析部によって解析される視線方向が予め規定された時間以上表示画面から外れた状態から表示画面に向けられたことに基づくことにより、推定部は、視認者の表示画面への視線移動を、高い確実性をもって直接的に推定することができる。以上により、車両用表示装置は、表示画面に視線を向けた視認者に、仮想のずれが次第に増加する意匠を、適宜視認させることができる。したがって、車両用表示装置は、意匠の立体視を容易にする効果を確実に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態による車両用表示装置の構成を説明するための図である。
【図2】本発明の第一実施形態による車両用表示装置の表示画面に表示される情報画像を示す図である。
【図3】液晶ディスプレイが表示画面に表示されるアイコン等の意匠を視認者に裸眼立体視させる原理を説明するための図である。
【図4】視認者が実際の視認対象物を立体視する原理を説明するための図である。
【図5】本発明の第一実施形態による車両用表示装置において、表示画面に表示される画像の変化を説明するための図である。
【図6】イグニッションがオン状態とされてからの経過時間と、ロゴマークの飛び出し量との相関を説明するための図である。
【図7】本発明の第一実施形態による車両用表示装置において、情報処理回路により実施される処理が示されるフローチャートである。
【図8】本発明の第二実施形態による車両用表示装置の構成を説明するための図である。
【図9】本発明の第二実施形態による車両用表示装置の表示画面に表示される情報画像を示す図である。
【図10】本発明の第二実施形態による車両用表示装置において、表示画面に表示される画像の変化を説明するための図である。
【図11】運転者の知覚上において、図10Aに示すリングを矢印XI方向に沿って矢視したと仮定した場合の矢視図である。
【図12】運転者の知覚上において、図10B及び図10Cに示すリングを矢印XII方向に沿って矢視したと仮定した場合の矢視図である。
【図13】運転者の知覚上において、図10Dに示すリングを矢印XIII方向に沿って矢視したと仮定した場合の矢視図である。
【図14】本発明の第二実施形態による車両用表示装置において、情報処理回路により実施される処理が示されるフローチャートである。
【図15】本発明の第三実施形態による車両用表示装置において、表示画面に表示される画像の変化を説明するための図である。
【図16】運転者の知覚上において、図15Aに示すクロスを矢印XVI方向に沿って矢視したと仮定した場合の矢視図である。
【図17】運転者の知覚上において、図15Bに示すクロスを矢印XVII方向に沿って矢視したと仮定した場合の矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0022】
(第一実施形態)
図1に示される本発明の第一実施形態による車両用表示装置100は、運転席に表示画面31を向けた姿勢にて、車両の室内に設置されている。車両用表示装置100は、図2に示されるような情報画像50を、表示画面31に表示する。まず、図2に基づいて、液晶ディスプレイ30によって表示される情報画像50の詳細を説明する。
【0023】
情報画像50は、スピードメータ表示部54及びパワメータ表示部55等によって構成されている。スピードメータ表示部54は、車両に係わる情報として車両の現在の走行速度を示す。スピードメータ表示部54は、デジタル表示部61、目盛り62、数字63、及び指針64等の意匠を組み合わせることによって形成されている。パワメータ表示部55は、車両に係わる情報として走行用の機関の現在の出力を示す。スピードメータ表示部54は、目盛り62、数字63、及び指針64等の意匠を組み合わせることによって形成されている。
【0024】
次に、車両用表示装置100の構成を、図1に基づいて説明する。車両用表示装置100は、液晶ディスプレイ30、ディスプレイ制御回路10、及び情報処理回路20を備えている。液晶ディスプレイ30は、ディスプレイ制御回路10と接続されており、図2に示されるような情報画像50に含まれるデジタル表示部61、目盛り62、及び指針64等の意匠を、運転席に着座する視認者としての運転者に、裸眼立体視させることができる。液晶ディスプレイ30は、図3に示されるように、液晶パネル35及びレンチキュラレンズ33等によって構成されている。
【0025】
液晶パネル35には、カラー表示の可能な複数の画素が表示画面31の鉛直方向及び水平方向に沿って配列されている。レンチキュラレンズ33は、液晶パネル35に沿って配置されており、表示画面31の水平方向に並ぶ複数のシリンドリカルレンズ等によって構成されている。レンチキュラレンズ33は、運転者の左目LE及び右目REのそれぞれに、異なる画素から出射された光が到達するように、これらの画素から出射された光を屈折させる。以上により、液晶パネル35の複数の画素は、運転者の左目LE及び右目REのうち実質的に左目LEのみから視認される左目用画素36と、実質的に右目REのみから視認される右目用画素37とに分けられる。
【0026】
ここで、図4に基づいて、実際の視認対象物69を視認者が立体視する仕組みを説明する。視認者は、左右の目LE,REによって視認対象物69を異なる方向から視認する。故に、左目LEにより視認した視認対象物69の像67と右目REにより視認した視認対象物69の像68との間に視差が生じる。こうした視差により、視認者は視認対象物69を立体的に知覚する。また、左目LEから視認対象物69に向かう視線と右目REからの視認対象物69に向かう視線とのなす角度が、視認者の輻輳角θcである。輻輳角θcは、視認者が視認対象物69を知覚する知覚位置PPに関連しており、具体的には、輻輳角θcが大きくなるほど、視認者は、視認対象物69を近くに知覚する。そして、実際の視認対象物69を視認している状態では、左右の目LE,REの焦点は、視認対象物69に合っている。故に、実際の視認対象物69の立体視においては、左右の目LE,REから焦点位置FPまでの距離Defと、左右の目LE,REから知覚位置PPまでの距離Depとは、実質的に一致している。
【0027】
こうした実際の視認対象物69を立体視する仕組みを踏まえて、上述の液晶ディスプレイ30が、運転者に意匠60を裸眼立体視させる仕組みを、図3に基づいて詳細に説明する。尚、説明を分り易くするために、図2の立体視されるデジタル表示部61、目盛り62、及び指針64を、図3の情報画像50では、単純な立方体状の意匠60として図示する。
【0028】
液晶パネル35は、左目用画素36及び右目用画素37に、それぞれ左目用画像51及び右目用画像52を表示させる。左目用画像51及び右目用画像52に含まれる各意匠60には、視差が再現されている。液晶ディスプレイ30は、運転者の左目LEに左目用画像51を視認させると共に、右目REに右目用画像52を視認させる。すると、左目LEにより視認した意匠60の像67と右目REにより視認した意匠60の像68との間に、運転者は視差を知覚する。故に、運転者は、表示画面31の垂直方向に沿って当該表示画面31からずれた知覚位置PPに、意匠60の立体像を知覚する。
【0029】
さらに、液晶ディスプレイ30は、左目用画像51及び右目用画像52の各意匠60に付与される視差を調整することにより、意匠60の知覚位置PPの表示画面31に対する仮想のずれ(以下、「飛び出し量Dg」という)を、増減させることができる。加えて、液晶ディスプレイ30は、左目用画素36及び右目用画素37に同一の画像を表示することにより、二次元の意匠60を表示することができる。
【0030】
図1に示されるように、ディスプレイ制御回路10は、情報画像50等の描画処理を行うプロセッサ、当該描画処理に用いられる情報が格納されたフラッシュメモリ、及び描画の作業領域として機能するグラフィックRAMを有している。加えて、ディスプレイ制御回路10は、情報処理回路20及び液晶ディスプレイ30のそれぞれと情報をやり取りするインターフェースを有している。ディスプレイ制御回路10は、情報処理回路20から取得する情報に基づいて情報画像50を描画する。そして、ディスプレイ制御回路10は、描画した情報画像50の画像データを液晶ディスプレイ30に出力し、当該情報画像50を表示画面31に表示させる。
【0031】
情報処理回路20は、各種の演算処理を行うプロセッサ、当該演算処理に用いられるプログラム等が格納されたフラッシュメモリ、演算の作業領域として機能するRAMを有している。加えて、情報処理回路20は、車内LAN70及びディスプレイ制御回路10のそれぞれと情報をやり取りするインターフェースを有している。情報処理回路20は、車両に係わる情報として、車両の現在の走行速度を示す速度情報、及び車両に搭載された機関の現在の出力を示す出力情報等を、車内LAN70を通じて取得する。尚、本実施形態では、電動モータをガソリンエンジン等の内燃機関と組み合わせてなる、所謂ハイブリッド方式の機関が、車両に搭載されているものとする。
【0032】
情報処理回路20は、所定のプログラムを実行することにより、機能ブロックとしての検出部24及び推定部25を有する。検出部24は、車内LAN70に出力される多数の情報を示す信号のうちから、機関を始動させる始動信号を検出する。推定部25は、検出部24によって始動信号が検出されたことに基づいて、一連のオープニング画像56(図5参照)の表示を指示する指令信号を、ディスプレイ制御回路10に出力する。
【0033】
以上の構成において、上述の始動信号の検出に基づき表示画面31に表示される一連のオープニング画像56の詳細を、図5に基づいて説明する。
【0034】
図5Aにて示されるオープニング画像56では、表示画面31の中央に、車両に係わるロゴマーク66が意匠として表示される。ロゴマーク66は、飛び出し量Dg(図3参照)を実質的に有しない、仮想のずれを消失させた二次元の画像部として表示され、図5Bに示されるように、その飛び出し量Dgを次第に増加させる。具体的に、ロゴマーク66の飛び出し量Dgは、図6に示されるように、ゼロから最大まで2秒程度で変化する。特定の時間あたりにおける飛び出し量Dgの増加分は、時間の経過と共に増大する。故に、運転者の知覚上において、図5Bに示されるロゴマーク66は、運転者に向かって加速しつつ移動する。
【0035】
ロゴマーク66は、最大の飛び出し量Dg(図3参照)にて所定の時間表示された後、図5Cに示されるように、飛び出し量Dgを次第に減少させつつ、表示画面31から消える。このようなロゴマーク66のフェードアウトにあわせるようにして、各メータ表示部54,55の各目盛り62となる画像部が、表示画面31の外周から規定の位置へと移動する。
【0036】
表示画面31の外周からフェードインした各目盛り62が規定の位置に到達すると、図5Dに示されるように、スピードメータ表示部54のデジタル表示部61、及び各メータ表示部54,55の各数字63が表示される。このとき、デジタル表示部61の飛び出し量Dg(図3参照)は最大に設定され、各目盛り62の飛び出し量Dgはデジタル表示部61の半分程度に設定されている。そして、図5Eに示されるように、現在の車両の情報を反映した位置に指針64が表示されることにより、各メータ表示部54,55、ひいては情報画像50は形成される。各指針64は、各目盛り62よりも僅かに飛び出し量Dgを大きく設定されており、運転者の知覚上にて、各目盛り62よりも運転者側を移動する。
【0037】
以上の図5A等に示される一連のオープニング画像56は、上述したように、運転者が車両に搭乗して機関を始動させる操作を実施することにより、表示される。ここで一般に、機関を始動させる操作を運転者が行った後には、当該運転者の視線は、表示画面31を外れた領域から、表示画面31に向けられる蓋然性が高い。故に、始動信号が検出されたことに基づくことで、推定部25(図1参照)は、運転者の視線につき、表示画面31から外した状態を継続した後、表示画面31に向ける視線移動の有無を間接的に推定することができる。機関を始動させる操作後に表示画面31に視線を向けた運転者は、表示画面31への視線移動が有ると推定されたことに基づき表示されるオープニング画像56を目視する。そして、運転者は、オープニング画像56において次第に飛び出し量Dg(図2参照)の増加するロゴマーク66を、継続的に視認することとなる。
【0038】
ここまで説明した車両用表示装置100について、表示画面31にオープニング画像56及び情報画像50を順に表示する処理を、図7に基づいて詳細に説明する。図7に示される処理は、車内LAN70に出力された始動信号を情報処理回路20が取得することにより、当該回路20によって開始される。
【0039】
S101では、オープニング画像56の表示の開始を指示する指令信号をディスプレイ制御回路10に出力し、S102に進む。ディスプレイ制御回路10は、S101にて情報処理回路20から出力された指令信号を取得することにより、一連のオープニング画像56を描画して、液晶ディスプレイ30に連続で表示させる。
【0040】
S102では、情報画像50の表示の開始を指示する指令信号をディスプレイ制御回路10に出力すると共に、車内LAN70を通じて取得した速度情報及び出力情報をディスプレイ制御回路10に出力し、S103に進む。ディスプレイ制御回路10は、S102にて情報処理回路20から出力された指令信号を取得することにより、描画する画像をオープニング画像56から情報画像50に切り換える。そして、ディスプレイ制御回路10は、S102にて情報処理回路20から出力された速度情報及び出力情報に対応した各メータ表示部54,55を含む情報画像50を描画して、液晶ディスプレイ30に表示させる。
【0041】
S103では、車内LAN70に出力される機関の停止を指示する停止信号に基づいて、車両のイグニッションがオフ状態にされたか否かを判定する。S103にて、イグニッションのオン状態が継続されていると判定した場合、S103の判定を繰り返す。これにより、ディスプレイ制御回路10は、情報処理回路20を通じて取得する車両情報及び出力情報に対応した情報画像50の描画を継続する。一方で、S103にてイグニッションがオフ状態にされたと判定した場合、S104に進む。
【0042】
S104では、情報画像50の表示の停止を指示する指令信号をディスプレイ制御回路10に出力し、処理を終了する。ディスプレイ制御回路10は、S104にて情報処理回路20から出力された指令信号を取得することにより、情報画像50の描画を中止すると共に、表示画面31の表示が停止されるよう液晶ディスプレイ30を制御する。
【0043】
ここまで説明した車両用表示装置100に用いられる液晶ディスプレイ30では、図3に示すように、左右の目LE,REの焦点位置FPは、表示画面31に合う。一方で、知覚位置PPは、焦点位置FPとは異なり、表示画面31に対してずれた位置となる。このように、液晶ディスプレイ30による裸眼立体視では、実際の視認対象物69(図4参照)の立体視とは違い、左右の目LE,REから焦点位置FPまでの距離Defと左右の目LE,REから知覚位置PPまでの距離Depとが異なる。故に、運転者は、焦点位置FPを表示画面31に合わせつつ、輻輳角θcを調整することにより、意匠60を裸眼立体視することとなる。そのため、表示画面31に視線を移動させた直後等では、焦点位置FPと知覚位置PPとの差に起因した輻輳角θcの調整に、運転者が対応しきれなくなり得る。このとき、各画像51,52は、運転者に個別の画像として認識されてしまう。
【0044】
そこで第一実施形態による車両用表示装置100は、次第に飛び出し量Dgの増加するロゴマーク66によって、表示画面31からずれた位置に意匠を知覚させる立体視に、運転者の目を慣らさせる。故に、左目用画像51と右目用画像52とが個別の画像であるかのうように認識されてしまうことで、デジタル表示部61、目盛り62、及び指針64等が運転者に二重に視認されてしまう事態は、抑制され得る。このようにして、車両用表示装置100は、デジタル表示部61、目盛り62、及び指針64等を、運転者に立体的に認識され易く呈示することができる。
【0045】
加えて第一実施形態では、運転者は、表示画面31に視線を向けた直後、二次元で表示されるロゴマーク66を視認するので、左目用画像51と右目用画像52とを個別の画像であると認識することはない。そして、運転者は、表示画面31上に位置する二次元状のロゴマーク66がこの表示画面31から飛び出してくる様子を、継続的に目視する。故に、運転者は、立体視に目を確実に慣らすことができる。したがって、車両用表示装置100は、デジタル表示部61、目盛り62、及び指針64等の立体視の容易性を、さらに向上させることができる。
【0046】
また第一実施形態では、始動信号に基づくことで、推定部25は、運転者の表示画面31への視線移動を、高い確実性をもって間接的に推定することが可能である。故に、車両用表示装置100は、ロゴマーク66の飛び出し量Dgが次第に増加していく様子を、運転者に確実に視認させることができる。以上により、運転者の目を立体視に確実に慣らさせることができるので、デジタル表示部61、目盛り62、及び指針64等の立体視を容易にする効果発揮の確実性は、さらに向上する。
【0047】
尚、第一実施形態において、ディスプレイ制御回路10が特許請求の範囲に記載の「表示制御手段」に相当し、情報処理回路20が特許請求の範囲に記載の「視線推定手段」に相当し、液晶ディスプレイ30が特許請求の範囲に記載の「表示手段」に相当し、情報画像50及びオープニング画像56が特許請求の範囲に記載の「画像」に相当し、一連のオープニング画像56が特許請求の範囲に記載の「一連の画像」に相当し、デジタル表示部61、目盛り62、指針64、及びロゴマーク66が特許請求の範囲に記載の「意匠」に相当する。
【0048】
(第二実施形態)
図8〜図14に示される本発明の第二実施形態は、第一実施形態とは別の実施形態である。図8に示される第二実施形態の車両用表示装置200は、図9に示される情報画像250を表示画面31に表示する。情報画像250は、目盛り62、数字63、及び指針64等を組み合わせてなるスピードメータ表示部54並びにタコメータ表示部255と、マルチインフォメーション表示部253等とによって構成されている。タコメータ表示部255は、車両に係わる情報として、走行用の機関における出力軸の回転速度を示す。マルチインフォメーション表示部253は、車両に係わる種々の警告を示す警告アイコン、及び車両の進行方向を示す矢印アイコン等を、リング265に組み合わせて表示する。リング265は、表示画面31に対して傾斜した姿勢の円環状の意匠であって、マルチインフォメーション表示部253に運転者の目を惹く作用を発揮する。マルチインフォメーション表示部253において、各アイコン等は、リング265の内周側に表示される。以上の情報画像250において、リング265及び各アイコン、並びに目盛り62及び指針64は、立体的に知覚される意匠である。
【0049】
図8に示される第二実施形態の車両用表示装置200は、車内LAN70に加えて、カメラ240と接続されている。カメラ240は、撮像面を運転者に向けた姿勢にて、車両の室内に設置されている。カメラ240は、運転者の左右の目LE,RE(図3参照)を含む範囲を撮影した撮影画像241の画像データを、情報処理回路20に逐次出力する。
【0050】
情報処理回路20は、ディスプレイ制御回路10及び車内LAN70と接続されるインターフェースに加えて、カメラ240から画像データを取得するインターフェースを有している。情報処理回路20は、所定のプログラムを実行することにより、画像取得部221及び画像解析部222を、検出部24及び推定部25に加えて、機能ブロックとして有する。画像取得部221は、カメラ240から撮影画像241の画像データを逐次取得する。画像解析部222は、画像取得部221によって取得された撮影画像241から、運転者の視線の向く視線方向を解析する。第二実施形態による検出部24は、車内LAN70に出力される多数の情報を示す信号のうちから、運転者が車両に乗車する際の動作を示す乗車信号を検出する。具体的に検出部24は、運転席に隣接するドアを開けたことを示す信号を、乗車信号として検出する。推定部25は、検出部24により乗車信号が検出されたことに基づいて、後述する一連のオープニング画像256(図10参照)の表示を指示する指令信号を、ディスプレイ制御回路10に出力する。さらに推定部25は、画像解析部222によって解析される視線方向が、予め規定された所定の時間(例えば5分程度)以上表示画面31から外れた状態から、再び表示画面31に向けられたことに基づいて、後述する一連の慣らし画像257(図10参照)の表示を指示する指令信号を、ディスプレイ制御回路10に出力する。
【0051】
以上の構成において、表示画面31に表示される一連のオープニング画像256及び一連の慣らし画像257の詳細を、図10〜13に基づいて説明する。
【0052】
図10Aにて示されるオープニング画像256では、表示画面31の中央に、リング265が表示される。リング265は、図11に示されるように、表示画面31に対して軸方向を垂直に向け、且つ飛び出し量Dg(図12参照)を実質的に有しない二次元の画像部として表示される。そして、リング265は、図10B及び図12に示されるように、飛び出し量Dgを次第に増加させつつ、軸方向を表示画面31に対し傾斜させる。
【0053】
リング265の飛び出し量Dg及び傾斜が最大となった後、所定の時間(数秒程度)が経過すると、図10Cに示されるように、スピードメータ表示部54及びタコメータ表示部255がさらに表示される。以上により、表示画面31には情報画像250が形成される。オープニング画像256(図10B参照)にて飛び出し量Dgを次第に増加されたリング265は、当該画像256の後に表示される情報画像250にも継続して含まれることとなる。
【0054】
さらに、情報画像250の表示された状態にて、表示画面31への運転者の視線移動が検出されると、図10Dに示される慣らし画像257が表示される。慣らし画像257では、リング265は、図13に示されるように、飛び出し量Dg(図12参照)を一旦ゼロにされ、二次元の画像部として表示される。そして、リング265は、飛び出し量Dgを次第に増加されることにより、図10C及び図12に示されるような立体視される画像部に戻る。こうして、表示画面31は、再び情報画像250の表示に戻される。
【0055】
図10A,Bに示される一連のオープニング画像256は、上述したように、運転者が車両に搭乗するために運転席側のドアを開けることにより、表示される。ここで一般に、ドアを開ける操作を運転者が行った後には、運転者は、運転席に着座する。そして、運転者の視線は、表示画面31を外れた領域から、表示画面31に向けられる蓋然性が高い。故に、乗車信号が検出されたことに基づくことで、推定部25(図9参照)は、運転者の視線につき、表示画面31から外した状態を継続した後、表示画面31に向ける視線移動の有無を間接的に推定することができる。そして、乗車後に表示画面31に視線を向けた運転者は、オープニング画像256を目視することで、当該画像256において次第に飛び出し量Dg(図12参照)の増加するリング265を、継続的に視認することとなる。
【0056】
さらに、図10Dに示される一連の慣らし画像257は、上述したように、運転者の視線が所定の時間表示画面31から外れた後、再び表示画面31に向けられることにより、表示される。故に、運転操作を継続中に表示画面31に視線を向けた運転者は、慣らし画像257を目視することにより、当該画像257において次第に飛び出し量Dg(図12参照)の増加するリング265を継続的に視認することとなる。
【0057】
ここまで説明した車両用表示装置200について、表示画面31にオープニング画像256、情報画像250、及び慣らし画像257を表示する処理を、図14に基づいて詳細に説明する。図14に示される処理は、車内LAN70に出力された乗車信号を情報処理回路20が取得することにより、当該回路20によって開始される。
【0058】
S201及びS202は、第一実施形態におけるS101及びS102(図7参照)と実質的に同一である。ディスプレイ制御回路10は、S201にて出力された指令信号を取得することにより、一連のオープニング画像256を描画して、液晶ディスプレイ30に連続で表示させる。さらにディスプレイ制御回路10は、S202にて出力された指令信号を取得することにより、描画する画像をオープニング画像256から情報画像250に切り換える。
【0059】
S203では、カメラ240から撮影画像241を取得し、S204に進む。S204では、S203にて取得した撮影画像241から運転者の目、特に瞳孔の輪郭を抽出する。そして、撮影画像241における瞳孔の輪郭形状から、運転者の視線方向を解析し、S205に進む。
【0060】
S205では、S204にて解析された視線方向に基づいて、運転者の視線方向が表示画面31に向いているか否かを判定する。S205にて、視線方向が表示画面31に向いていると判定した場合、S213に進む。一方で、S205にて、視線方向が表示画面31に向いていないと判定した場合、S206に進む。
【0061】
S206では、視線方向が表示画面31から外されている時間を計測するためのカウントを開始し、S207に進む。S207及びS208では、S203及びS204と同様に、撮影画像241を取得して運転者の視線方向を解析し、S209に進む。S209では、S205と同様に、S208にて解析された視線方向に基づいて、運転者の視線方向が表示画面31に向いているか否かを判定する。S209にて、視線方向が表示画面31に向いていないと判定した場合、時間のカウントを継続しつつ、S207及びS208を繰り返す。一方で、S205にて、視線方向が表示画面31に向いていると判定した場合、S210に進む。
【0062】
S210では、S206にて開始したカウントに基づいて、表示画面31から視線が外されていた時間が、所定の時間を超えているか否かを判定する。S210にて、カウントの時間が所定時間に満たない場合、S213に進む。一方で、S210にて、カウントの時間が所定時間を超えていた場合、S211に進む。
【0063】
S211では、慣らし画像257の表示の開始を指示する指令信号をディスプレイ制御回路10に出力し、S212に進む。ディスプレイ制御回路10は、S211にて情報処理回路20から出力された指令信号を取得することにより、一連の慣らし画像257を描画して、液晶ディスプレイ30に連続で表示させる。
【0064】
S212では、情報画像250の表示を指示する指令信号をディスプレイ制御回路10に出力し、S213に進む。ディスプレイ制御回路10は、慣らし画像257の終了と共に情報画像250の描画に切り換え、描画した情報画像250を液晶ディスプレイ30に表示させる。
【0065】
S213では、第一実施形態のS103(図7参照)と同様に、停止信号に基づいて車両のイグニッションがオフ状態にされたか否かを判定する。S213にて、イグニッションのオン状態が継続されていると判定した場合、再びS203に戻る。一方で、S213にてイグニッションがオフ状態にされたと判定した場合、S214に進む。S214では、第一実施形態のS104(図7参照)と同様に、情報画像250の表示の停止を指示する指令信号をディスプレイ制御回路10に出力し、処理を終了する。以上により、ディスプレイ制御回路10は、情報画像250の描画を中止すると共に、表示画面31の表示が停止されるよう液晶ディスプレイ30を制御する。
【0066】
ここまで説明した第二実施形態によれば、飛び出し量Dgの次第に増加するリング265によって、車両用表示装置200は、運転者の目を立体視に慣らさせることができる。故に、リング265、目盛り62、及び指針64等が運転者に二重に視認されてしまう事態は、抑制され得る。
【0067】
加えて第二実施形態によれば、オープニング画像256から表示されるリング265が情報画像250に継続して含まれるので、リング265によって立体視に慣れた運転者は、情報画像250の目盛り62及び指針64等を、違和感なく立体視し始めることができる。以上のように、オープニング画像256から情報画像250への移行を滑らかに行うことにより、車両用表示装置200は、立体視させる目盛り62及び指針64をさらに認識容易に運転者に呈示することができる。
【0068】
また第二実施形態によれば、乗車信号に基づくことで、推定部25は、運転者の表示画面31への視線移動を、高い確実性をもって間接的に推定することが可能である。故に、車両用表示装置200は、飛び出し量Dgの次第に増加するリング265を運転者に確実に視認させることができる。以上により、運転者の目を立体視に確実に慣らさせることができるので、目盛り62、及び指針64等の立体視を容易にする効果発揮の確実性は、さらに向上する。
【0069】
さらに、運転者の視線方向は、撮影画像241から検出可能である。故に、第二実施形態では、視線方向に基づくことで、推定部25は、運転者の表示画面31への視線移動を、高い確実性をもって直接的に推定することができる。以上により、車両用表示装置200は、運転操作を継続中に表示画面31に視線を向けた運転者へ、リング265の飛び出し量Dgが次第に増加していく様子を、適宜視認させることができる。したがって、車両用表示装置200は、目盛り62及び指針64等の立体視を容易にする効果を確実に発揮することができる。
【0070】
尚、第二実施形態において、情報画像250、オープニング画像256,及び慣らし画像257が特許請求の範囲に記載の「画像」に相当し、一連のオープニング画像256及び一連の慣らし画像257が特許請求の範囲に記載の「一連の画像」に相当し、目盛り62及び指針64に加えてリング265が特許請求の範囲に記載の「意匠」に相当する。
【0071】
(第三実施形態)
図15〜図17に示される本発明の第三実施形態は、第二実施形態の変形例である。第三実施形態のオープニング画像356では、第二実施形態のリング265(図10A参照)に替えて、図15Aに示されるように、表示画面31の水平方向及び垂直方向のそれぞれに延びる帯状の画像部を画面中央にて交差させてなるクロス365が表示される。クロス365は、図16に示されるように、飛び出し量Dg(図17参照)を実質的に有しない二次元の画像部として表示される。そして、クロス365は、図15B及び図17に示されるように、飛び出し量Dgを次第に増加させつつ、表示画面31に対し傾斜する。
【0072】
クロス365は、飛び出し量Dg及び傾斜を最大とした後も、継続して表示画面31に表示される。クロス365は、図15Cに示されるように、車両の進行方向を示す矢印アイコン362と組み合わされることにより、交差点等の経路を誘導する簡易のナビゲーション画像350(所謂、ターン・バイ・ターン画像)を形成する。以上のようなクロス365を視認することによって運転者の目が立体視に慣らされるので、第三実施形態は、上述した各実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0073】
尚、第三実施形態において、ナビゲーション画像350及びオープニング画像356が特許請求の範囲に記載の「画像」に相当し、一連のオープニング画像356が特許請求の範囲に記載の「一連の画像」に相当し、クロス365及び矢印アイコン362が特許請求の範囲に記載の「意匠」に相当する。
【0074】
(他の実施形態)
以上、本発明による複数の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0075】
上記実施形態におけるオープニング画像及び慣らし画像では、各「意匠」の飛び出し量は、一旦消失させられた後、次第に拡大されていた。しかし、オープニング画像及び慣らし画像における各「意匠」は、運転者に違和感を生じさせない程度に飛び出し量を低減された後、この飛び出し量を次第に拡大させるものであってもよい。
【0076】
上記第一実施形態において、推定部は、機関の始動信号を取得したことに基づいて、運転者における表示画面への視線移動を推定していた。このような機関の始動信号は、車両に搭載される機関の種別に応じて適宜変更されてよい。具体的には、上述のようなハイブリッド方式の機関、アイドリングストップ可能な内燃機関、及び電動のモータ等が搭載された車両では、所謂イグニッションスイッチの操作のみにて、これらの機関は始動しない。故に、これらの車両においては、機関を始動可能にするための操作入力に基づく信号が、始動信号とみなされてよい。
【0077】
上記第二実施形態において、推定部は、運転席のドアを開けた旨を示す信号を乗車信号とし、当該乗車信号に基づいて、運転者における表示画面への視線移動を推定していた。しかし、乗車信号は、ドアを開ける操作に基づく信号に限定されない。例えば、運転席のシートベルトの装着に基づいてシートベルトセンサから出力される信号、及び運転席への運転者の着座に基づいて着座センサから出力される信号等が、乗車信号として適宜用いられてよい。
【0078】
上記実施形態では、運転者の目を立体視に慣らすための「意匠」として、ロゴマーク及びリング等が例示された。しかし、オープニング画像及び慣らし画像に含まれて、運転者の目を立体視に慣らすための「意匠」の形状及び色彩等は、適宜変更されてよい。例えば、車両の外観を模したモデルが上述の「意匠」とされてもよい。加えて「意匠」の飛び出し量を増大させる時間は、上記実施形態の時間(2秒程度)に限定されない。オープニング画像及び慣らし画像として再生されるアニメーションの構成に対応して、飛び出し量を増大させる時間は、適宜変更されてよい。
【0079】
さらに、オープニング画像又は慣らし画像として、複数種類の動画データをディスプレイ制御回路等に予め記憶させておく。そうしたうえで、運転者が、オープニング画像及び慣らし画像として再生される動画を、複数種類の動画の中から選択可能であってもよい。また、運転者等の操作に基づいてオープニング画像及び慣らし画像を表示させるリプレイボタン等の操作入力部が、車両用表示装置に設けられていてもよい。
【0080】
上記実施形態において、オープニング画像におけるロゴマーク等の「意匠」は、運転者の知覚上において、運転者側に向けて加速しつつ移動していた。しかし、飛び出し量の増加する「意匠」の具体的な動きは、適宜変更されてよい。例えば、車両用表示装置は、運転者の知覚上において、一定の速度にて運転者に近づく「意匠」を表示してもよく、又は点滅しつつ段階的に運転者に近づく「意匠」を表示してもよい。
【0081】
上記実施形態において、「意匠」につき運転者の知覚する仮想のずれは、表示画面に対して運転者側に飛び出す方向に設けられていた。しかし、「意匠」の仮想のずれは、表示画面を挟んで運転者とは反対の方向に設けられていてもよい。さらに、複数の「意匠」を含み、複数の「意匠」のうちの一つを運転者側に移動させつつ、他の一つを運転者とは反対側に移動させる一連の画像が、オープニング画像又は慣らし画像として表示されてもよい。
【0082】
上記第二実施形態において、撮影画像を撮影するカメラは、可視光を感知する可視光カメラであってもよく、近赤外線を感知する近赤外線カメラ等であってもよい。加えて、情報処理回路は、上述のカメラによる撮影画像を解析することで得られる運転者の視線方向に基づいて、オープニング画像を表示させる指令信号をディスプレイ制御回路に出力してもよい。
【0083】
上記第二実施形態では、運転者の視線が5分以上表示画面から外されていた場合に、情報処理回路は、慣らし画像を表示させる旨の指令信号をディスプレイ制御回路に出力した。しかし、慣らし画像の表示を指示する閾値となる所定の時間は、適宜変更されてよい。加えて、上述の所定の時間は、運転者の操作入力に基づいて、適宜変更されてよい。
【0084】
上記実施形態において、情報画像は、オープニング画像及び慣らし画像の終了後に、表示画面に表示されていた。しかし、機関の始動後すぐに運転者が車両を走行させる場合では、表示画面の表示は、オープニング画像等から情報画像に切り換えられることが望ましい。故に、情報処理回路は、シフトレバーの位置が変更されたことを示す信号、車速がゼロから変化したことを示す信号等を検知することにより、表示画面にオープニング画像を表示中であっても、この画像から情報画像に切り換えさせてもよい。
【0085】
上記実施形態では、「意匠」を立体視させることが可能な「表示手段」として、液晶パネル35とレンチキュラレンズ33等とを組み合わせてなる液晶ディスプレイ30が用いられていた。しかし、「表示手段」は、「意匠」を視認者に三次元で立体視させることが可能であれば、上記の構成に限定されない。例えば、「表示手段」は、特定の一方向からのみの立体視を実現するディスプレイであってもよく、又は、複数の方向からの立体視を実現する多視差タイプのディスプレイであってもよい。加えて、「表示手段」は、視認者に装着されて左右の目に対応するシャッタが開閉する立体視用の眼鏡、この眼鏡のシャッタと同期して表示画面に左右の画像を交互に表示する液晶パネルとを備える構成であってもよい。又は、「表示手段」は、上記実施形態のレンチキュラレンズ33に替えて、鉛直方向に延びるスリットが水平方向に間隔を開けて複数形成された遮光バリアを備えることにより、視認者の裸眼立体視を可能とする、所謂パララックスバリア方式の表示装置であってもよい。
【0086】
上記実施形態では、所定のプログラムを実施する情報処理回路20及びディスプレイ制御回路10によって、特許請求の範囲に記載の「視線推定手段」及び「表示制御手段」に相当する機能が、それぞれ果たされていた。しかし、これらの手段に相当する構成は、上記のものに限定されず、適宜変更されてよい。例えば、「視線推定手段」及び「表示制御手段」は、一つの回路又は装置であってもよく、或いは複数の回路又は装置を適宜組み合わせたものであってもよい。加えて、これらの回路又は装置は、上記実施形態の各回路10,20のようなプログラムを実行することにより所定の機能を果たす構成であってもよく、又はプログラムによらないで所定の機能を果たす構成であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 ディスプレイ制御回路、20 情報処理回路(視線推定手段)、221 画像取得部、222 画像解析部、24 検出部、25 推定部、30 液晶ディスプレイ(表示手段)、31 表示画面、33 レンチキュラレンズ、35 液晶パネル、36 左目用画素、37 右目用画素、240 カメラ、241 撮影画像、50,250 情報画像(画像)、350 ナビゲーション画像(画像)、51 左目用画像、52 右目用画像、253 マルチインフォメーション表示部、54 スピードメータ表示部、55 パワメータ表示部、255 タコメータ表示部、56,256,356 オープニング画像(画像)、257 慣らし画像(画像)、60 意匠、61 デジタル表示部(意匠)、62 目盛り(意匠)、362 矢印アイコン(意匠)、63 数字、64 指針(意匠)、265 リング(意匠)、365 クロス(意匠)、66 ロゴマーク(意匠)、67,68 像、69 視認対象物、70 車内LAN、100,200 車両用表示装置、FP 焦点位置、PP 知覚位置、θc 輻輳角、Def 左右の目から焦点位置までの距離、Dep 左右の目から知覚位置までの距離、Dg 飛び出し量(表示画面からの意匠の仮想のずれ)、LE 左目、RE 右目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両に係わる画像を表示画面に表示し、前記画像に含まれる意匠を視認者に立体視させる車両用表示装置であって、
前記表示画面を有し、前記視認者の左目に視認される左目用画像と右目に視認される右目用画像とを前記表示画面に表示することにより、前記表示画面の垂直方向に沿って当該表示画面からずれた位置に前記意匠を知覚させ、この意匠につき前記視認者に知覚される位置の前記表示画面に対する仮想のずれを増減可能な表示手段と、
前記視認者につき、前記表示画面から視線を外した状態を継続した後、当該視線を前記表示画面に向ける視線移動の有無を推定する視線推定手段と、
前記視線推定手段によって前記視線移動が有ると推定されたことに基づいて、前記表示画面に対する前記意匠の仮想のずれを次第に増加させる一連の前記画像を連続して表示するよう前記表示手段を制御する表示制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記視線移動が有ると推定されたことに基づいて、前記表示画面に連続して表示させる前記一連の画像につき、前記意匠の仮想のずれを消失させた状態から次第に増加させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記一連の画像を表示した後に、前記車両に係わる情報を示す情報画像を前記表示画面に表示し、
前記一連の画像にて仮想のずれを次第に増加された前記意匠は、前記情報画像に継続して含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記視線推定手段は、
前記車両に搭載された機関を始動させる信号を検出する検出部と、
前記検出部によって前記信号が検出されたことに基づいて、前記視線移動が有ると推定する推定部と、
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記視線推定手段は、
前記視認者が前記車両に乗車する際の動作を示す信号を検出する検出部、を有し、
前記検出部によって前記信号が検出されたことに基づいて、前記視線移動が有ると推定する推定部と、
を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記視線推定手段は、
前記視認者の目を含む範囲を撮影した撮影画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記撮影画像から前記視認者の視線の向く視線方向を解析する画像解析部と、
前記画像解析部によって解析される前記視線方向が、予め規定された時間以上前記表示画面から外れた状態から前記表示画面に向けられたことに基づいて、前記視線移動が有ると推定する推定部と、
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−108841(P2013−108841A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253977(P2011−253977)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】