車両用路車間通信装置
【課題】VICSの光ビーコンのすぐ後にDSSSの光ビーコンが道路上に近接して設置された状況では、VICSの光ビーコンとの通信を終了する前にDSSSの光ビーコンの通信領域に車両が進入してしまうことがある。この場合、車両側の通信装置はDSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号が送信することができないために、ユーザがDSSSのサービスを受けることができない。
【解決手段】光ビーコン近接地帯40内においては、VICSの光ビーコンの通信領域を通過するまで、制御部17は、路車間通信装置11がVICSの光ビーコンから送信される情報信号を受信することを禁止する。そのため、DSSSの光ビーコンの通信領域を車両が通過する際には、通信を行っていない状態であるため、路車間通信装置11は確実にDSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することができる。
【解決手段】光ビーコン近接地帯40内においては、VICSの光ビーコンの通信領域を通過するまで、制御部17は、路車間通信装置11がVICSの光ビーコンから送信される情報信号を受信することを禁止する。そのため、DSSSの光ビーコンの通信領域を車両が通過する際には、通信を行っていない状態であるため、路車間通信装置11は確実にDSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路車間通信を介して各種情報を提供する安全運転支援システム等のサービスを受けるために車両に搭載される車両用路車間通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の車両に各種道路交通情報を提供するサービスには、道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication Systems、登録商標)があるが、近年ではこれに加えて、安全運転支援システム(DSSS:Driving Safety Support Systems)が実用化されている。VICS及びDSSSはともに、車両と車両に対して情報を送信する路上機(以下、光ビーコン)との間の通信媒体に赤外線を利用している。これらは同一の通信媒体であるために、車両側の通信装置がVICS及びDSSSの情報を混同してサービスを受けられなくなるといった問題があった。この問題に対しては、単一の車載通信装置にてそれぞれの情報を混同することなく受けることを可能とした技術が、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
ところで、車両側の通信装置は、VICS及びDSSSの光ビーコンの通信領域に進入した際に、自車のID情報等を含むアップリンク信号と呼ばれる信号を送信している。DSSSの光ビーコンはこのアップリンク信号を受信することで、車両を個別に識別してその車両向けの情報を送信する。また、車両側の通信装置は、光ビーコンとの通信を終了したかどうかを、各種光ビーコンから送信される最後の情報の受信を終了してから所定時間(例えば、3秒間)経過したかどうかに基づいて判定している。そして、光ビーコンの通信領域内においてアップリンク信号が必要以上に車両側から送信されることを防ぐために、光ビーコンから送信される情報の受信を開始して、通信を終了したと判定されるまでの間はアップリンク信号を送信しない仕様となっている。
【0004】
図9は、車両側の通信装置とVICSの光ビーコンとの間の通信の基本的な動作を示した説明図である。車両側の通信装置は、VICSの光ビーコンの通信領域に車両が進入すると、図9に示すように、車両側の通信装置は光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信する。車両側の通信装置はVICS情報信号を受信すると、そのVICS情報信号に応じてアップリンク信号をVICSの光ビーコンに対して送信する。アップリンク信号は、各車両を個別に判断するためのID番号や、ある区間を走行するのにどの程度の時間を要したかを示す旅行時間計測情報等を含んで構成される。アップリンク信号に含まれる旅行時間計測情報は、VICSにおいて、現在どの地点が渋滞しているかといった道路交通状況を把握するために利用される。なお、VICSとの通信においては、アップリンク信号を送信しない場合であっても車両側にて主要なVICS情報信号を受信して利用することができる。
【0005】
一方、図10は、車両側の通信装置とDSSSの光ビーコンとの間の通信の基本的な動作を示した説明図である。車両側の通信装置は、DSSSの光ビーコンの通信領域に車両が進入すると、図10に示すように、DSSSの光ビーコンから送信されるダウンリンク信号を受信する。車両側の通信装置はダウンリンク信号を受信すると、そのダウンリンク信号に応じてアップリンク信号をDSSSの光ビーコンに対して送信する。そして、DSSSの光ビーコンはアップリンク信号を受信すると、そのアップリンク信号に含まれるID番号を含んだDSSS情報信号を、車両側の通信装置に対して送信する。車両側の通信装置は、受信したDSSS情報信号に自車両を示すID番号が含まれている場合は、自車両向けの情報であると判断し受信する。DSSSにおいては、車両側からアップリンク信号を送信しなければ、主要なDSSS情報信号を受信し、利用することができない。
【0006】
また、VICSは渋滞情報や駐車場の空き情報を提供することが主目的であり、光ビーコンは道路に沿って所定の間隔をもって設置されている。一方、DSSSは交通事故を削減するためにドライバへ安全喚起するための情報を提供することが主目的であるため、光ビーコンは交通事故多発地点等に設置されている。そのため、道路上にVICS及びDSSSの光ビーコンが接近して設置される箇所も存在するのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−98892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、VICS及びDSSS等の光ビーコンが近接して設置される箇所においては、先の光ビーコンから送信される情報の受信を開始して、通信を終了したと判定されるまでの間に、近接する後の光ビーコンの通信領域に車両が進入、通過してしまうことがある。この場合、先の光ビーコンがVICSの光ビーコン、近接する後の光ビーコンが、DSSSの光ビーコンである場合には、図11に示すような通信シーケンスとなる。図11に示すように、車両側の通信装置はVICSの光ビーコンとの通信が終了したと判定される前にDSSSの光ビーコンからのダウンリンク信号を受信している。ところが、実際にはVICSとの通信が終了しているにもかかわらず、通信の終了判定に要する所定時間の経過前にDSSSの信号を受信することになりVICSとの通信が継続したままと判断されてしまうため、受信したDSSSのダウンリンク信号に応答してアップリンク信号を送信することができない。このため、ユーザはDSSSのサービスを受けることができなくなってしまう。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、VICS及びDSSS等の各種光ビーコンが道路上に近接して設置された状況においても、DSSS等の如く光ビーコンに対してアップリンク信号を送信する必要があるサービスに対して、確実に受けることができる車両用路車間通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用路車間通信装置は、路側機からこの路側機の通信領域内に送信される信号を受信する信号受信手段と、信号受信手段にて信号の受信を開始し、これに続く信号を最後に受信してから所定時間経過するまでを連続した通信期間と判定する通信期間判定手段と、信号受信手段にて受信した信号に応答して、路側機に対してアップリンク信号を送信するアップリンク信号送信手段と、アップリンク信号送信手段により送信されたアップリンク信号を、路側機が受信したかどうかを判定するアップリンク判定手段と、アップリンク判定手段により、路側機がアップリンク信号を受信したと判定された場合は、通信期間判定手段により判定された通信期間においてアップリンク信号の送信を禁止する再送信禁止手段と、通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の路側機の後に、アップリンク信号を送信した車両に対してこの車両向けの信号を送信する第2の路側機が所定範囲内に近接して設置されている第1の路側機を特定する路側機特定手段と、路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域内において、信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、アップリンク信号送信手段にて第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の光ビーコンの後に近接して、アップリンク信号を送信した車両向けの信号を送信する第2の光ビーコンが設置されている場合、第1の光ビーコンから送信される信号を受信することを禁止し、若しくは、第1の光ビーコンから送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止する。従って、第2の光ビーコンに対して確実にアップリンク信号を送信することができ、第2の光ビーコンから送信される信号によるサービスを受けることができる。
【0012】
請求項2に記載の車両用路車間通信装置は、制御手段にて、信号受信手段における信号の受信を停止させることにより、信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止することを特徴とする。信号受信手段の動作を停止させることにより、第1の光ビーコンの通信領域内において、第1の光ビーコンから送信される情報信号を受信することはなく、また、アップリンク信号を送信することもない。従って、第2の光ビーコンに対して確実にアップリンク信号を送信することができる。
【0013】
請求項3に記載の車両用路車間通信装置は、自車位置を検出する自車位置検出手段と、第1の路側機の後に第2の路側機が所定距離以内に近接して設置されている路側機近接地帯を記憶する路側機近接地帯記憶手段とを備え、制御手段にて、自車位置検出手段により検出された自車位置が、路側機近接地帯記憶手段により記憶される路側機近接地帯に進入した場合は、第1の路側機の通信領域内において、信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、アップリンク信号送信手段にて第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする。これにより、請求項1と同様の効果が得られる。
【0014】
請求項4に記載の車両用路車間通信装置は、自車速度を検出する自車速度検出手段を備え、制御手段にて、自車位置検出手段により検出された自車位置が、路側機近接地帯記憶手段により記憶される路側機近接地帯に進入した際に、自車速度検出手段により検出された自車速度が所定速度よりも速い場合は、第1の路側機の通信領域内において、信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、アップリンク信号送信手段にて第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする。車速度が遅い場合には、第1の光ビーコンに近接して設置される第2の光ビーコンの通信領域を車両が通過する際には、通信が終了されている可能性が高い。これにより、車速度が遅い場合には、光ビーコン近接地帯においても、第1の光ビーコンから送信される情報信号を受信することが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の車両用路車間通信装置は、第1の路側機及び第2の路側機が設置されている位置を記憶する路側機位置情報記憶手段と、信号受信手段が、路側機位置情報記憶手段にて記憶される第1の路側機及び第2の路側機が設置されている位置ではない場所にて、第1の路側機若しくは第2の路側機から情報信号を受信した場合には、受信した信号に基づいてその場所を、第1の路側機若しくは第2の路側機の設置箇所として路側機位置情報記憶手段に追加更新する路側機位置情報更新手段と、路側機位置情報更新手段にて追加更新された第1の路側機若しくは第2の路側機により新たに路側機近接地帯が発生した場合は、路側機近接地帯記憶手段に追加更新する路側機近接地帯更新手段とを備えることを特徴とする。請求項5に記載の発明によれば、新たに第1及び第2の光ビーコンが設置された場合においても、各光ビーコンの位置情報及び光ビーコン近接地帯を追加更新することができ、ユーザは漏れなく第2の光ビーコンのサービスを受けることが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の車両用路車間通信装置は、自車位置を検出する自車位置検出手段と、第1の路側機の後に第2の路側機が所定範囲内に近接して設置されている第1の路側機の位置情報を記憶する近接路側機位置情報記憶手段とを備え、制御手段にて、自車位置検出手段により検出された自車位置が、近接路側機位置情報記憶手段により記憶される第1の路側機の通信領域内に存在する場合は、第1の路側機の通信領域内において、信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、アップリンク信号送信手段にて第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする。これにより、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、請求項7に記載の発明は、自車位置を検出する自車位置検出手段と、通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の路側機から送信される第1の種類の信号と、通信領域内に存在する車両を特定し、この特定された車両向けの信号を送信する第2の路側機から送信される第2の種類の信号とを受信する受信手段と、受信手段による信号の受信を開始し、これに続く信号を最後に受信してから所定時間経過すると受信が終了したと判定する判定手段と、所定時間以内に到達可能な所定範囲内に第2の路側機が近接して設置されている第1の路側機を特定する路側機特定手段と、
自車位置検出手段により検出された自車位置が、路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域に存在する場合に、受信手段による第1の種類の信号の受信を禁止する禁止手段と、禁止手段により受信を禁止した後に、自車位置検出手段により検出された自車位置が、路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域を通過した場合に、受信手段による受信を許可する許可手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の光ビーコンの後に近接して、通信領域内に存在する車両を特定し、この特定された車両向けの信号を送信する第2の光ビーコンが設置されている場合、第1の光ビーコンから送信される信号を受信することを禁止する。従って、第2の光ビーコンのサービスを確実に受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例におけるカーナビゲーション装置10の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例における光ビーコン100の通信領域を示す図である。
【図3】本実施例における地図データ記憶部12に記憶される光ビーコン位置情報を示す図である。
【図4】本実施例における光ビーコン近接地帯40の略式図(a)、及び、本実施例における光ビーコン近接地帯40の具体的な説明図(b)を示している。
【図5】本実施例における路車間通信装置11とVICS及びDSSSの光ビーコンとの間の通信シーケンスを示す図である。
【図6】本実施例の光ビーコン近接地帯40における路車間通信装置11とVICS及びDSSSの光ビーコンとの間の通信シーケンスを示す図である。
【図7】本実施例における制御部17にて実行されるフローチャートである。
【図8】本実施例の変形例1における光ビーコン近接地帯40における路車間通信装置11とVICS及びDSSSの光ビーコンとの間の通信シーケンスを示す図である。
【図9】従来の車両側の制御装置とVICSの光ビーコンとの通信シーケンスを示す図である。
【図10】従来の車両側の制御装置とDSSSの光ビーコンとの通信シーケンスを示す図である。
【図11】従来の車両側の制御装置とVICS及びDSSSの光ビーコンとの通信シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施例について図面を用いて説明する。本実施例では、本発明の車両用路車間通信装置をカーナビゲーション装置に内蔵したものとして説明するが、カーナビゲーション装置とは別体に外付けしたものでもよい。また、本実施例では、路側機は光ビーコンであるとして説明するが、例えば電波ビーコンや、その他の通信媒体を利用して車両と通信する路側機であってもよい。本発明は、下記の実施例に限定されることなく、本発明の技術的範囲に存在する限り様々な形態を取り得る。
【0021】
(実施例)
図1は本実施例のカーナビゲーション装置10の全体構成を示すブロック図である。本実施例のカーナビゲーション装置10は、路車間通信装置11、地図データ記憶部12、自車位置検出部13、操作スイッチ14、表示装置15、音声出力装置16、及び、制御部17から構成される。また、カーナビゲーション装置10は路車間通信装置11を介して各種の光ビーコン100と通信を行う。
【0022】
路車間通信装置11は、赤外線を通信媒体として各種の光ビーコン100と各種信号を送受信する。光ビーコン100から送信される各種信号には、光ビーコンの通信領域内に存在する全ての車両を対象として間欠的に送信される信号と、光ビーコンの通信領域内に存在す車両を特定し、その特定された車両を対象として送信される信号等がある。各種の光ビーコン100の通信領域は、図2に示すように、光ビーコン100の設置地点からその前後約6メートルの道路上の範囲である。また、路車間通信装置11は、データ変換部111を有する。このデータ変換部111は、各種情報を含む電気的な信号を光ビーコン100に対して送信するための赤外線信号に変換し、また、受信した赤外線信号を電気的な信号に逆変換するものである。データ変換部111にて逆変換された各種情報を含む電気的な信号は制御部17に入力され、表示装置15や音声出力装置16を介してユーザに対して報知される。
【0023】
また、路車間通信装置11は、光ビーコンとの通信が終了したかどうかを、光ビーコンから送信される最後の情報の受信を終了してから所定時間(本実施例では、3秒)経過したかどうかに基づいて判定する。最後の情報を受信してから3秒間が経過せずに光ビーコンから送信されるダウンリンク信号や各種情報信号を受信した場合は、同一ビーコンからの情報を受信中であると判断される。
【0024】
さらに、路車間通信装置11は、送信したアップリンク信号が光ビーコンに受信されたかどうかを判定している。アップリンク信号が光ビーコンに受信されたかどうかの判定は、アップリンク信号を送信後に光ビーコンから送信される情報信号に自車IDが含まれているかどうかで判定する。情報信号に自車IDが含まれている場合は、アップリンク信号が光ビーコンに受信されたと判定し、情報信号に自車IDが含まれていない場合は、アップリンク信号が光ビーコンに受信されていないと判定する。路車間通信装置11は、アップリンク信号が光ビーコンに受信されたと判定してから、光ビーコンとの通信が終了したと判定されるまではアップリンク信号を送信しない。これは、各種光ビーコンからは間欠的にダウンリンク信号や各種情報信号が送信されるため、それに応じて必要以上にアップリンク信号が送信されることを防ぐためである。
【0025】
地図データ記憶部12には、目的地に至る経路を探索するために必要な経路データ121と、表示装置15に地図を描画するために必要な描画データ122と、各種光ビーコンの位置を緯度・経度情報として記憶する光ビーコン位置情報123と、図示しなかったが、案内用の画像や音声データ等が記憶されている。なお、記憶媒体としては、ROM(Read Only Memoly)、若しくは、読み書き可能なハードディスク、メモリ等を用いることができる。
【0026】
経路データ121には、目的地に至る経路を探索するために、道路地図情報が、接続地点を示すノードと、このノード間を接続するリンクからなるネットワーク情報として記憶されている。各道路及び交差点に該当するリンク及びノードには、例えば、各リンクやノードに付与された識別番号、道路種別、車線数の多寡数等の情報が付与されている。そして、これらの情報に基づいたコストが、各リンク及びノードに設定されている。この経路データ121に記憶されるネットワーク情報及びコストに基づいて、制御部17がコストの積和値が最小となるように周知のダイクストラ法等を用いて目的地までの最適な経路計算を行う。
【0027】
描画データ122には、道路や線路、建造物、私有地等といった施設のポリゴンデータや、海や河川等の地形を描画するための背景データ、及び、地図上に存在する各種施設に対するそれぞれの位置情報等を記憶する施設データが記憶されている。
【0028】
光ビーコン位置情報123は、図3に示すような情報であり、光ビーコン毎に、光ビーコンの種別、光ビーコンの設置位置、光ビーコンが設置されている道路のリンク番号、光ビーコン近接地帯40の光ビーコンであるか等の情報が含まれる。また、光ビーコン近接地帯40の情報は、車両の進行方向の向きについても考慮して付与されている。
【0029】
光ビーコン近接地帯40は、図4(a)に示すように、VICSの光ビーコンのすぐ後に近接してDSSSの光ビーコンが、設置されている道路上の領域である。また、近接して各光ビーコンが設置されているかどうかは、各光ビーコン間の距離が50メートル以内であるかどうかを基準としており、この値は、光ビーコンとの通信の終了判定がされる3秒間の間に60km/hの車両が走行する距離に基づいて設定されている。また、光ビーコン近接地帯40は、光ビーコンの通信領域が約6メートルであることを考慮して、図4(b)に示すように、VICSの光ビーコンの設置位置から20メートル手前から始まり、DSSSの光ビーコンの設置位置までの道路上の領域とする。
【0030】
自車位置検出部13は、GPS(Global Positioning System)からの送信電波を、GPSアンテナを介して受信することで自車位置と現在時刻を検知するGPS受信機131と、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロセンサ132と、車両の速度を検出するための車速度センサ133とを備えている。自車位置検出部13は、これらの各検出信号に基づき位置座標及び進行方向の組として車両の現在の自車位置を算出する。そして、これらセンサ等131乃至133は、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら自車位置の検出を行うように構成されている。なお、自車位置検出部13は、上述した内の一部のセンサで構成してもよい。また、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサや、ステアリングの回転角センサ等を加えて構成されてもよい。
【0031】
操作スイッチ14には、表示装置15の周囲に設けられた複数の釦スイッチ等が用いられる。ユーザは操作スイッチ14を介して各種設定を行い、制御部17に出力することができる。
【0032】
表示装置15は、カラー表示可能な液晶ディスプレイからなる。ユーザにより操作スイッチ14を介して入力された情報や、路車間通信装置11を介して受信した情報等、様々な情報を表示する。
【0033】
音声出力装置16は、スピーカーからなり、地図データ記憶部12に記憶されている案内用の音声データに基づいて各種案内の音声を出力する。
【0034】
制御部17は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、ROM等に記憶されたプログラムに基づいて、ユーザにより入力された情報や、路車間通信装置11を介して受信した情報等を表示装置15に表示させる情報表示処理や、路車間通信装置11において各光ビーコンと情報の送受信を実行させる通信処理等を行う。
【0035】
なお、本実施例の路車間通信装置11は、本発明のアップリンク信号送信手段、及び、信号受信手段に相当する。本実施例の自車位置検出部13は、本発明の自車位置検出手段、及び、自車速度検出手段に相当する。本実施例の地図データ記憶部12は、本発明の路側機特定手段、路側機近接地帯記憶手段、位置情報記憶手段、及び、近接路側機位置情報記憶手段に相当する。制御部17は、通信終了判定手段、制御手段、路側機位置情報更新手段、及び、路側機近接地帯更新手段に相当する。
【0036】
次に、図5及び図6を参照して、VICS及びDSSSの光ビーコンが連続して設置されている場合における、路車間通信装置11とVICS及びDSSSの光ビーコンとの間の通信の作動について説明する。図5は、先にVICSの光ビーコンが設置され、その後にDSSSの光ビーコンが設置されている道路上であって、各光ビーコンとが50メートル以内には設置されていない場合における路車間通信装置11と各光ビーコンとの間の通信シーケンスを示している。この場合、VICSの光ビーコンの通信領域内にて最後に受信したVICSの情報信号から3秒後にVICSの光ビーコンとの通信が終了したと判定される。そのとき車両はまだDSSSの光ビーコンの通信領域内には進入していない。従って、車両がDSSSの光ビーコンの通信領域に進入した際には、VICSの光ビーコンとの通信は終了しているため、路車間通信装置11はDSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することができ、DSSS情報信号を受信することが可能である。
【0037】
一方、図6は、車両が光ビーコン近接地帯40に進入した場合における路車間通信装置11と各光ビーコンとの間の通信シーケンスを示している。この場合、車両が光ビーコン近接地帯40に進入すると、VICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号の受信が制御部17により禁止され、路車間通信装置11はVICS情報信号を受信しない。制御部17は、動作を停止する信号を路車間通信装置11に送信することによりVICS情報信号の受信を禁止させる。路車間通信装置11はVICS情報信号を受信しないため、VICSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することはない。車両がVICSの光ビーコンの通信領域を通過すると、VICS情報信号の受信の禁止が制御部17により解除される。そして、車両がDSSSの光ビーコンの通信領域に進入した際、路車間通信装置11はDSSSの光ビーコンからダウンリンク信号を受信し、それに応じてアップリンク信号を送信する。アップリンク信号を受信したDSSSの光ビーコンは、DSSS情報信号を車両に対して送信する。通信は、路車間通信装置11が最後のDSSS情報信号を受信した3秒後に終了したと判定される。
【0038】
図7は、カーナビゲーション装置10における制御部17にて実行される光ビーコン近接地帯40における路車間通信処理のフローチャートを示している。なお、本フローチャートに示す処理は、制御部17に記憶されているコンピュータプログラムに従って実行される。
【0039】
始めに、本処理では図7におけるステップS71にて、走行中の自車が光ビーコン近接地帯40に進入したかどうかを判定する。自車位置検出部13により検出された自車位置が、道路のリンクにおける光ビーコン位置情報123に記憶される光ビーコン近接地帯40の区間に進入したかどうかで判定を行う。自車が光ビーコン近接地帯40に進入した場合は(ステップS71:YES)、ステップS73に移行する。ステップS71は、自車が光ビーコン近接地帯40に進入するまで自己遷移を繰り返す。
【0040】
ステップS73では、路車間通信装置11がVICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信することを禁止する。ステップS75では、VICSの光ビーコンの通信領域を通過したか否かを判定する。例えば、自車がVICS用光ビーコンの設置位置を通過して10メートル以上走行した場合に、VICS用光ビーコンの通信領域を通過したと判定する。VICS用光ビーコンの通信領域を通過した場合は(ステップS75:YES)、ステップS77に移行し、路車間通信装置11におけるダウンリンク信号の受信禁止を解除し、本処理を終了する。ステップS75は、VICSの光ビーコンの通信領域を通過したと判定されるまで自己遷移を繰り返す。
【0041】
以上のように、本実施例によれば、VICSの光ビーコンと、DSSSの光ビーコンとが近接して設置されている光ビーコン近接地帯40内に自車位置が存在する場合においても、DSSSのサービスを優先してサービスを受けることができる。具体的には、光ビーコン近接地帯40に自車が進入した場合、VICSの光ビーコンの通信領域を通過するまで、制御部17は、路車間通信装置11がVICS情報信号を受信することを禁止する。従って、DSSSの光ビーコンの通信領域を車両が通過する際には、通信を行っていない状態であるため、路車間通信装置11は確実にDSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することができる。これにより、VICSの光ビーコンと、DSSSの光ビーコンとが近接して設置されている地帯においても、ドライバは確実にDSSSのサービスを受けることができる。
【0042】
(変形例1)
次に、本実施例における変形例1を説明する。本変形例では、本実施例のフローチャートにおけるステップS73において路車間通信装置11がVICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信することを禁止する代わりに、路車間通信装置11がアップリンク信号を送信することを禁止する。また、同様に、本実施例のフローチャートにおけるステップS77において路車間通信装置11がVICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信することを禁止する代わりに、路車間通信装置11がアップリンク信号を送信することを禁止する。図8は、本変形例における光ビーコン近接地帯40における路車間通信装置11とVICS及びDSSSの光ビーコンとの間の通信シーケンスを示している。図8に示すように、路車間通信装置11は、VICSの光ビーコンの通信領域においてアップリンク信号を送信することが禁止されているため、VICSの情報信号に応答してアップリンク信号を送信することはない。また、DSSSの光ビーコンの通信領域に進入した際にはアップリンク信号の送信禁止は解除されているため、DSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することが可能である。従って、路車間通信装置11は、DSSSの光ビーコンから送信されるDSSS情報信号を受信することができる。本変形例によれば、VICSの光ビーコンと、DSSSの光ビーコンとが近接して設置されている地帯においても、ドライバはVICS及びDSSSのサービスを受けることができる。
【0043】
(変形例2)
次に、本実施例における変形例1を説明する。本変形例では、制御部17は、光ビーコン近接地帯40において、自車速度が60km/hよりも速い場合はVICS情報信号の受信を禁止し、遅い場合は禁止しない。車速度は車速度センサ133から取得することができる。車速度が遅い場合には、VICSの光ビーコンとの通信の終了判定がされる3秒間の間に、DSSSの光ビーコンの通信領域まで到達することは考えにくい。従って、車速度が遅い場合には、光ビーコン近接地帯40においても、VICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信することが可能となり、ユーザはVICSのサービスを受けることができる。一方、車速度が速い場合には、本実施例と同様に、光ビーコン近接地帯40におけるVICSの光ビーコンの受信領域において、VICS情報信号の受信を禁止する。
【0044】
(変形例3)
次に、本実施例における変形例2を説明する。本変形例では、地図データ記憶部12にて記憶されていない地点にて光ビーコンから送信される情報を受信した場合に、その光ビーコンの種類と位置を新たに地図データ記憶部12に更新する。光ビーコンの種類は光ビーコンから送信される情報に含まれるID情報等から決定できる。さらに、新たな光ビーコンを地図データ記憶部12に更新した場合に、VICSの光ビーコンとDSSSの光ビーコンとが近接に存在する光ビーコン近接地帯40が新たに発生する場合には、それを併せて地図データ記憶部12に更新する。これにより、VICS及びDSSSの光ビーコンが新たに新設された場合においても、ドライバは確実にDSSSのサービスを受けることができる。
【0045】
(変形例4)
次に、本実施例における変形例3を説明する。本変形例では、地図データ記憶部12において、VICSの光ビーコンのすぐ後に近接して(例えば、50メートル以内)DSSSの光ビーコンとが設置されている場合における、VICSの光ビーコンの位置情報を記憶する。自車位置検出部13にて検出された自車位置に基づいて、そのVICSの光ビーコンの通信領域内に60km/h以上の速度で進入したと判定された場合、制御部17は、路車間通信装置11がVICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信することを禁止する。従って、VICSの光ビーコンに近接して設置されるDSSSの光ビーコンの通信領域を車両が通過する際には、通信を行っていない状態であるため、路車間通信装置11は確実にDSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することができる。これにより、ドライバは確実にDSSSのサービスを受けることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 カーナビゲーション装置
11 路車間通信装置
12 地図データ記憶部
123 光ビーコン位置情報
13 自車位置検出部
17 制御部
100 光ビーコン
40 光ビーコン近接地帯
【技術分野】
【0001】
本発明は、路車間通信を介して各種情報を提供する安全運転支援システム等のサービスを受けるために車両に搭載される車両用路車間通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の車両に各種道路交通情報を提供するサービスには、道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication Systems、登録商標)があるが、近年ではこれに加えて、安全運転支援システム(DSSS:Driving Safety Support Systems)が実用化されている。VICS及びDSSSはともに、車両と車両に対して情報を送信する路上機(以下、光ビーコン)との間の通信媒体に赤外線を利用している。これらは同一の通信媒体であるために、車両側の通信装置がVICS及びDSSSの情報を混同してサービスを受けられなくなるといった問題があった。この問題に対しては、単一の車載通信装置にてそれぞれの情報を混同することなく受けることを可能とした技術が、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
ところで、車両側の通信装置は、VICS及びDSSSの光ビーコンの通信領域に進入した際に、自車のID情報等を含むアップリンク信号と呼ばれる信号を送信している。DSSSの光ビーコンはこのアップリンク信号を受信することで、車両を個別に識別してその車両向けの情報を送信する。また、車両側の通信装置は、光ビーコンとの通信を終了したかどうかを、各種光ビーコンから送信される最後の情報の受信を終了してから所定時間(例えば、3秒間)経過したかどうかに基づいて判定している。そして、光ビーコンの通信領域内においてアップリンク信号が必要以上に車両側から送信されることを防ぐために、光ビーコンから送信される情報の受信を開始して、通信を終了したと判定されるまでの間はアップリンク信号を送信しない仕様となっている。
【0004】
図9は、車両側の通信装置とVICSの光ビーコンとの間の通信の基本的な動作を示した説明図である。車両側の通信装置は、VICSの光ビーコンの通信領域に車両が進入すると、図9に示すように、車両側の通信装置は光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信する。車両側の通信装置はVICS情報信号を受信すると、そのVICS情報信号に応じてアップリンク信号をVICSの光ビーコンに対して送信する。アップリンク信号は、各車両を個別に判断するためのID番号や、ある区間を走行するのにどの程度の時間を要したかを示す旅行時間計測情報等を含んで構成される。アップリンク信号に含まれる旅行時間計測情報は、VICSにおいて、現在どの地点が渋滞しているかといった道路交通状況を把握するために利用される。なお、VICSとの通信においては、アップリンク信号を送信しない場合であっても車両側にて主要なVICS情報信号を受信して利用することができる。
【0005】
一方、図10は、車両側の通信装置とDSSSの光ビーコンとの間の通信の基本的な動作を示した説明図である。車両側の通信装置は、DSSSの光ビーコンの通信領域に車両が進入すると、図10に示すように、DSSSの光ビーコンから送信されるダウンリンク信号を受信する。車両側の通信装置はダウンリンク信号を受信すると、そのダウンリンク信号に応じてアップリンク信号をDSSSの光ビーコンに対して送信する。そして、DSSSの光ビーコンはアップリンク信号を受信すると、そのアップリンク信号に含まれるID番号を含んだDSSS情報信号を、車両側の通信装置に対して送信する。車両側の通信装置は、受信したDSSS情報信号に自車両を示すID番号が含まれている場合は、自車両向けの情報であると判断し受信する。DSSSにおいては、車両側からアップリンク信号を送信しなければ、主要なDSSS情報信号を受信し、利用することができない。
【0006】
また、VICSは渋滞情報や駐車場の空き情報を提供することが主目的であり、光ビーコンは道路に沿って所定の間隔をもって設置されている。一方、DSSSは交通事故を削減するためにドライバへ安全喚起するための情報を提供することが主目的であるため、光ビーコンは交通事故多発地点等に設置されている。そのため、道路上にVICS及びDSSSの光ビーコンが接近して設置される箇所も存在するのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−98892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、VICS及びDSSS等の光ビーコンが近接して設置される箇所においては、先の光ビーコンから送信される情報の受信を開始して、通信を終了したと判定されるまでの間に、近接する後の光ビーコンの通信領域に車両が進入、通過してしまうことがある。この場合、先の光ビーコンがVICSの光ビーコン、近接する後の光ビーコンが、DSSSの光ビーコンである場合には、図11に示すような通信シーケンスとなる。図11に示すように、車両側の通信装置はVICSの光ビーコンとの通信が終了したと判定される前にDSSSの光ビーコンからのダウンリンク信号を受信している。ところが、実際にはVICSとの通信が終了しているにもかかわらず、通信の終了判定に要する所定時間の経過前にDSSSの信号を受信することになりVICSとの通信が継続したままと判断されてしまうため、受信したDSSSのダウンリンク信号に応答してアップリンク信号を送信することができない。このため、ユーザはDSSSのサービスを受けることができなくなってしまう。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、VICS及びDSSS等の各種光ビーコンが道路上に近接して設置された状況においても、DSSS等の如く光ビーコンに対してアップリンク信号を送信する必要があるサービスに対して、確実に受けることができる車両用路車間通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用路車間通信装置は、路側機からこの路側機の通信領域内に送信される信号を受信する信号受信手段と、信号受信手段にて信号の受信を開始し、これに続く信号を最後に受信してから所定時間経過するまでを連続した通信期間と判定する通信期間判定手段と、信号受信手段にて受信した信号に応答して、路側機に対してアップリンク信号を送信するアップリンク信号送信手段と、アップリンク信号送信手段により送信されたアップリンク信号を、路側機が受信したかどうかを判定するアップリンク判定手段と、アップリンク判定手段により、路側機がアップリンク信号を受信したと判定された場合は、通信期間判定手段により判定された通信期間においてアップリンク信号の送信を禁止する再送信禁止手段と、通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の路側機の後に、アップリンク信号を送信した車両に対してこの車両向けの信号を送信する第2の路側機が所定範囲内に近接して設置されている第1の路側機を特定する路側機特定手段と、路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域内において、信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、アップリンク信号送信手段にて第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の光ビーコンの後に近接して、アップリンク信号を送信した車両向けの信号を送信する第2の光ビーコンが設置されている場合、第1の光ビーコンから送信される信号を受信することを禁止し、若しくは、第1の光ビーコンから送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止する。従って、第2の光ビーコンに対して確実にアップリンク信号を送信することができ、第2の光ビーコンから送信される信号によるサービスを受けることができる。
【0012】
請求項2に記載の車両用路車間通信装置は、制御手段にて、信号受信手段における信号の受信を停止させることにより、信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止することを特徴とする。信号受信手段の動作を停止させることにより、第1の光ビーコンの通信領域内において、第1の光ビーコンから送信される情報信号を受信することはなく、また、アップリンク信号を送信することもない。従って、第2の光ビーコンに対して確実にアップリンク信号を送信することができる。
【0013】
請求項3に記載の車両用路車間通信装置は、自車位置を検出する自車位置検出手段と、第1の路側機の後に第2の路側機が所定距離以内に近接して設置されている路側機近接地帯を記憶する路側機近接地帯記憶手段とを備え、制御手段にて、自車位置検出手段により検出された自車位置が、路側機近接地帯記憶手段により記憶される路側機近接地帯に進入した場合は、第1の路側機の通信領域内において、信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、アップリンク信号送信手段にて第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする。これにより、請求項1と同様の効果が得られる。
【0014】
請求項4に記載の車両用路車間通信装置は、自車速度を検出する自車速度検出手段を備え、制御手段にて、自車位置検出手段により検出された自車位置が、路側機近接地帯記憶手段により記憶される路側機近接地帯に進入した際に、自車速度検出手段により検出された自車速度が所定速度よりも速い場合は、第1の路側機の通信領域内において、信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、アップリンク信号送信手段にて第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする。車速度が遅い場合には、第1の光ビーコンに近接して設置される第2の光ビーコンの通信領域を車両が通過する際には、通信が終了されている可能性が高い。これにより、車速度が遅い場合には、光ビーコン近接地帯においても、第1の光ビーコンから送信される情報信号を受信することが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の車両用路車間通信装置は、第1の路側機及び第2の路側機が設置されている位置を記憶する路側機位置情報記憶手段と、信号受信手段が、路側機位置情報記憶手段にて記憶される第1の路側機及び第2の路側機が設置されている位置ではない場所にて、第1の路側機若しくは第2の路側機から情報信号を受信した場合には、受信した信号に基づいてその場所を、第1の路側機若しくは第2の路側機の設置箇所として路側機位置情報記憶手段に追加更新する路側機位置情報更新手段と、路側機位置情報更新手段にて追加更新された第1の路側機若しくは第2の路側機により新たに路側機近接地帯が発生した場合は、路側機近接地帯記憶手段に追加更新する路側機近接地帯更新手段とを備えることを特徴とする。請求項5に記載の発明によれば、新たに第1及び第2の光ビーコンが設置された場合においても、各光ビーコンの位置情報及び光ビーコン近接地帯を追加更新することができ、ユーザは漏れなく第2の光ビーコンのサービスを受けることが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の車両用路車間通信装置は、自車位置を検出する自車位置検出手段と、第1の路側機の後に第2の路側機が所定範囲内に近接して設置されている第1の路側機の位置情報を記憶する近接路側機位置情報記憶手段とを備え、制御手段にて、自車位置検出手段により検出された自車位置が、近接路側機位置情報記憶手段により記憶される第1の路側機の通信領域内に存在する場合は、第1の路側機の通信領域内において、信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、アップリンク信号送信手段にて第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする。これにより、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、請求項7に記載の発明は、自車位置を検出する自車位置検出手段と、通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の路側機から送信される第1の種類の信号と、通信領域内に存在する車両を特定し、この特定された車両向けの信号を送信する第2の路側機から送信される第2の種類の信号とを受信する受信手段と、受信手段による信号の受信を開始し、これに続く信号を最後に受信してから所定時間経過すると受信が終了したと判定する判定手段と、所定時間以内に到達可能な所定範囲内に第2の路側機が近接して設置されている第1の路側機を特定する路側機特定手段と、
自車位置検出手段により検出された自車位置が、路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域に存在する場合に、受信手段による第1の種類の信号の受信を禁止する禁止手段と、禁止手段により受信を禁止した後に、自車位置検出手段により検出された自車位置が、路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域を通過した場合に、受信手段による受信を許可する許可手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の光ビーコンの後に近接して、通信領域内に存在する車両を特定し、この特定された車両向けの信号を送信する第2の光ビーコンが設置されている場合、第1の光ビーコンから送信される信号を受信することを禁止する。従って、第2の光ビーコンのサービスを確実に受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例におけるカーナビゲーション装置10の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例における光ビーコン100の通信領域を示す図である。
【図3】本実施例における地図データ記憶部12に記憶される光ビーコン位置情報を示す図である。
【図4】本実施例における光ビーコン近接地帯40の略式図(a)、及び、本実施例における光ビーコン近接地帯40の具体的な説明図(b)を示している。
【図5】本実施例における路車間通信装置11とVICS及びDSSSの光ビーコンとの間の通信シーケンスを示す図である。
【図6】本実施例の光ビーコン近接地帯40における路車間通信装置11とVICS及びDSSSの光ビーコンとの間の通信シーケンスを示す図である。
【図7】本実施例における制御部17にて実行されるフローチャートである。
【図8】本実施例の変形例1における光ビーコン近接地帯40における路車間通信装置11とVICS及びDSSSの光ビーコンとの間の通信シーケンスを示す図である。
【図9】従来の車両側の制御装置とVICSの光ビーコンとの通信シーケンスを示す図である。
【図10】従来の車両側の制御装置とDSSSの光ビーコンとの通信シーケンスを示す図である。
【図11】従来の車両側の制御装置とVICS及びDSSSの光ビーコンとの通信シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施例について図面を用いて説明する。本実施例では、本発明の車両用路車間通信装置をカーナビゲーション装置に内蔵したものとして説明するが、カーナビゲーション装置とは別体に外付けしたものでもよい。また、本実施例では、路側機は光ビーコンであるとして説明するが、例えば電波ビーコンや、その他の通信媒体を利用して車両と通信する路側機であってもよい。本発明は、下記の実施例に限定されることなく、本発明の技術的範囲に存在する限り様々な形態を取り得る。
【0021】
(実施例)
図1は本実施例のカーナビゲーション装置10の全体構成を示すブロック図である。本実施例のカーナビゲーション装置10は、路車間通信装置11、地図データ記憶部12、自車位置検出部13、操作スイッチ14、表示装置15、音声出力装置16、及び、制御部17から構成される。また、カーナビゲーション装置10は路車間通信装置11を介して各種の光ビーコン100と通信を行う。
【0022】
路車間通信装置11は、赤外線を通信媒体として各種の光ビーコン100と各種信号を送受信する。光ビーコン100から送信される各種信号には、光ビーコンの通信領域内に存在する全ての車両を対象として間欠的に送信される信号と、光ビーコンの通信領域内に存在す車両を特定し、その特定された車両を対象として送信される信号等がある。各種の光ビーコン100の通信領域は、図2に示すように、光ビーコン100の設置地点からその前後約6メートルの道路上の範囲である。また、路車間通信装置11は、データ変換部111を有する。このデータ変換部111は、各種情報を含む電気的な信号を光ビーコン100に対して送信するための赤外線信号に変換し、また、受信した赤外線信号を電気的な信号に逆変換するものである。データ変換部111にて逆変換された各種情報を含む電気的な信号は制御部17に入力され、表示装置15や音声出力装置16を介してユーザに対して報知される。
【0023】
また、路車間通信装置11は、光ビーコンとの通信が終了したかどうかを、光ビーコンから送信される最後の情報の受信を終了してから所定時間(本実施例では、3秒)経過したかどうかに基づいて判定する。最後の情報を受信してから3秒間が経過せずに光ビーコンから送信されるダウンリンク信号や各種情報信号を受信した場合は、同一ビーコンからの情報を受信中であると判断される。
【0024】
さらに、路車間通信装置11は、送信したアップリンク信号が光ビーコンに受信されたかどうかを判定している。アップリンク信号が光ビーコンに受信されたかどうかの判定は、アップリンク信号を送信後に光ビーコンから送信される情報信号に自車IDが含まれているかどうかで判定する。情報信号に自車IDが含まれている場合は、アップリンク信号が光ビーコンに受信されたと判定し、情報信号に自車IDが含まれていない場合は、アップリンク信号が光ビーコンに受信されていないと判定する。路車間通信装置11は、アップリンク信号が光ビーコンに受信されたと判定してから、光ビーコンとの通信が終了したと判定されるまではアップリンク信号を送信しない。これは、各種光ビーコンからは間欠的にダウンリンク信号や各種情報信号が送信されるため、それに応じて必要以上にアップリンク信号が送信されることを防ぐためである。
【0025】
地図データ記憶部12には、目的地に至る経路を探索するために必要な経路データ121と、表示装置15に地図を描画するために必要な描画データ122と、各種光ビーコンの位置を緯度・経度情報として記憶する光ビーコン位置情報123と、図示しなかったが、案内用の画像や音声データ等が記憶されている。なお、記憶媒体としては、ROM(Read Only Memoly)、若しくは、読み書き可能なハードディスク、メモリ等を用いることができる。
【0026】
経路データ121には、目的地に至る経路を探索するために、道路地図情報が、接続地点を示すノードと、このノード間を接続するリンクからなるネットワーク情報として記憶されている。各道路及び交差点に該当するリンク及びノードには、例えば、各リンクやノードに付与された識別番号、道路種別、車線数の多寡数等の情報が付与されている。そして、これらの情報に基づいたコストが、各リンク及びノードに設定されている。この経路データ121に記憶されるネットワーク情報及びコストに基づいて、制御部17がコストの積和値が最小となるように周知のダイクストラ法等を用いて目的地までの最適な経路計算を行う。
【0027】
描画データ122には、道路や線路、建造物、私有地等といった施設のポリゴンデータや、海や河川等の地形を描画するための背景データ、及び、地図上に存在する各種施設に対するそれぞれの位置情報等を記憶する施設データが記憶されている。
【0028】
光ビーコン位置情報123は、図3に示すような情報であり、光ビーコン毎に、光ビーコンの種別、光ビーコンの設置位置、光ビーコンが設置されている道路のリンク番号、光ビーコン近接地帯40の光ビーコンであるか等の情報が含まれる。また、光ビーコン近接地帯40の情報は、車両の進行方向の向きについても考慮して付与されている。
【0029】
光ビーコン近接地帯40は、図4(a)に示すように、VICSの光ビーコンのすぐ後に近接してDSSSの光ビーコンが、設置されている道路上の領域である。また、近接して各光ビーコンが設置されているかどうかは、各光ビーコン間の距離が50メートル以内であるかどうかを基準としており、この値は、光ビーコンとの通信の終了判定がされる3秒間の間に60km/hの車両が走行する距離に基づいて設定されている。また、光ビーコン近接地帯40は、光ビーコンの通信領域が約6メートルであることを考慮して、図4(b)に示すように、VICSの光ビーコンの設置位置から20メートル手前から始まり、DSSSの光ビーコンの設置位置までの道路上の領域とする。
【0030】
自車位置検出部13は、GPS(Global Positioning System)からの送信電波を、GPSアンテナを介して受信することで自車位置と現在時刻を検知するGPS受信機131と、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロセンサ132と、車両の速度を検出するための車速度センサ133とを備えている。自車位置検出部13は、これらの各検出信号に基づき位置座標及び進行方向の組として車両の現在の自車位置を算出する。そして、これらセンサ等131乃至133は、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら自車位置の検出を行うように構成されている。なお、自車位置検出部13は、上述した内の一部のセンサで構成してもよい。また、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサや、ステアリングの回転角センサ等を加えて構成されてもよい。
【0031】
操作スイッチ14には、表示装置15の周囲に設けられた複数の釦スイッチ等が用いられる。ユーザは操作スイッチ14を介して各種設定を行い、制御部17に出力することができる。
【0032】
表示装置15は、カラー表示可能な液晶ディスプレイからなる。ユーザにより操作スイッチ14を介して入力された情報や、路車間通信装置11を介して受信した情報等、様々な情報を表示する。
【0033】
音声出力装置16は、スピーカーからなり、地図データ記憶部12に記憶されている案内用の音声データに基づいて各種案内の音声を出力する。
【0034】
制御部17は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、ROM等に記憶されたプログラムに基づいて、ユーザにより入力された情報や、路車間通信装置11を介して受信した情報等を表示装置15に表示させる情報表示処理や、路車間通信装置11において各光ビーコンと情報の送受信を実行させる通信処理等を行う。
【0035】
なお、本実施例の路車間通信装置11は、本発明のアップリンク信号送信手段、及び、信号受信手段に相当する。本実施例の自車位置検出部13は、本発明の自車位置検出手段、及び、自車速度検出手段に相当する。本実施例の地図データ記憶部12は、本発明の路側機特定手段、路側機近接地帯記憶手段、位置情報記憶手段、及び、近接路側機位置情報記憶手段に相当する。制御部17は、通信終了判定手段、制御手段、路側機位置情報更新手段、及び、路側機近接地帯更新手段に相当する。
【0036】
次に、図5及び図6を参照して、VICS及びDSSSの光ビーコンが連続して設置されている場合における、路車間通信装置11とVICS及びDSSSの光ビーコンとの間の通信の作動について説明する。図5は、先にVICSの光ビーコンが設置され、その後にDSSSの光ビーコンが設置されている道路上であって、各光ビーコンとが50メートル以内には設置されていない場合における路車間通信装置11と各光ビーコンとの間の通信シーケンスを示している。この場合、VICSの光ビーコンの通信領域内にて最後に受信したVICSの情報信号から3秒後にVICSの光ビーコンとの通信が終了したと判定される。そのとき車両はまだDSSSの光ビーコンの通信領域内には進入していない。従って、車両がDSSSの光ビーコンの通信領域に進入した際には、VICSの光ビーコンとの通信は終了しているため、路車間通信装置11はDSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することができ、DSSS情報信号を受信することが可能である。
【0037】
一方、図6は、車両が光ビーコン近接地帯40に進入した場合における路車間通信装置11と各光ビーコンとの間の通信シーケンスを示している。この場合、車両が光ビーコン近接地帯40に進入すると、VICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号の受信が制御部17により禁止され、路車間通信装置11はVICS情報信号を受信しない。制御部17は、動作を停止する信号を路車間通信装置11に送信することによりVICS情報信号の受信を禁止させる。路車間通信装置11はVICS情報信号を受信しないため、VICSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することはない。車両がVICSの光ビーコンの通信領域を通過すると、VICS情報信号の受信の禁止が制御部17により解除される。そして、車両がDSSSの光ビーコンの通信領域に進入した際、路車間通信装置11はDSSSの光ビーコンからダウンリンク信号を受信し、それに応じてアップリンク信号を送信する。アップリンク信号を受信したDSSSの光ビーコンは、DSSS情報信号を車両に対して送信する。通信は、路車間通信装置11が最後のDSSS情報信号を受信した3秒後に終了したと判定される。
【0038】
図7は、カーナビゲーション装置10における制御部17にて実行される光ビーコン近接地帯40における路車間通信処理のフローチャートを示している。なお、本フローチャートに示す処理は、制御部17に記憶されているコンピュータプログラムに従って実行される。
【0039】
始めに、本処理では図7におけるステップS71にて、走行中の自車が光ビーコン近接地帯40に進入したかどうかを判定する。自車位置検出部13により検出された自車位置が、道路のリンクにおける光ビーコン位置情報123に記憶される光ビーコン近接地帯40の区間に進入したかどうかで判定を行う。自車が光ビーコン近接地帯40に進入した場合は(ステップS71:YES)、ステップS73に移行する。ステップS71は、自車が光ビーコン近接地帯40に進入するまで自己遷移を繰り返す。
【0040】
ステップS73では、路車間通信装置11がVICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信することを禁止する。ステップS75では、VICSの光ビーコンの通信領域を通過したか否かを判定する。例えば、自車がVICS用光ビーコンの設置位置を通過して10メートル以上走行した場合に、VICS用光ビーコンの通信領域を通過したと判定する。VICS用光ビーコンの通信領域を通過した場合は(ステップS75:YES)、ステップS77に移行し、路車間通信装置11におけるダウンリンク信号の受信禁止を解除し、本処理を終了する。ステップS75は、VICSの光ビーコンの通信領域を通過したと判定されるまで自己遷移を繰り返す。
【0041】
以上のように、本実施例によれば、VICSの光ビーコンと、DSSSの光ビーコンとが近接して設置されている光ビーコン近接地帯40内に自車位置が存在する場合においても、DSSSのサービスを優先してサービスを受けることができる。具体的には、光ビーコン近接地帯40に自車が進入した場合、VICSの光ビーコンの通信領域を通過するまで、制御部17は、路車間通信装置11がVICS情報信号を受信することを禁止する。従って、DSSSの光ビーコンの通信領域を車両が通過する際には、通信を行っていない状態であるため、路車間通信装置11は確実にDSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することができる。これにより、VICSの光ビーコンと、DSSSの光ビーコンとが近接して設置されている地帯においても、ドライバは確実にDSSSのサービスを受けることができる。
【0042】
(変形例1)
次に、本実施例における変形例1を説明する。本変形例では、本実施例のフローチャートにおけるステップS73において路車間通信装置11がVICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信することを禁止する代わりに、路車間通信装置11がアップリンク信号を送信することを禁止する。また、同様に、本実施例のフローチャートにおけるステップS77において路車間通信装置11がVICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信することを禁止する代わりに、路車間通信装置11がアップリンク信号を送信することを禁止する。図8は、本変形例における光ビーコン近接地帯40における路車間通信装置11とVICS及びDSSSの光ビーコンとの間の通信シーケンスを示している。図8に示すように、路車間通信装置11は、VICSの光ビーコンの通信領域においてアップリンク信号を送信することが禁止されているため、VICSの情報信号に応答してアップリンク信号を送信することはない。また、DSSSの光ビーコンの通信領域に進入した際にはアップリンク信号の送信禁止は解除されているため、DSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することが可能である。従って、路車間通信装置11は、DSSSの光ビーコンから送信されるDSSS情報信号を受信することができる。本変形例によれば、VICSの光ビーコンと、DSSSの光ビーコンとが近接して設置されている地帯においても、ドライバはVICS及びDSSSのサービスを受けることができる。
【0043】
(変形例2)
次に、本実施例における変形例1を説明する。本変形例では、制御部17は、光ビーコン近接地帯40において、自車速度が60km/hよりも速い場合はVICS情報信号の受信を禁止し、遅い場合は禁止しない。車速度は車速度センサ133から取得することができる。車速度が遅い場合には、VICSの光ビーコンとの通信の終了判定がされる3秒間の間に、DSSSの光ビーコンの通信領域まで到達することは考えにくい。従って、車速度が遅い場合には、光ビーコン近接地帯40においても、VICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信することが可能となり、ユーザはVICSのサービスを受けることができる。一方、車速度が速い場合には、本実施例と同様に、光ビーコン近接地帯40におけるVICSの光ビーコンの受信領域において、VICS情報信号の受信を禁止する。
【0044】
(変形例3)
次に、本実施例における変形例2を説明する。本変形例では、地図データ記憶部12にて記憶されていない地点にて光ビーコンから送信される情報を受信した場合に、その光ビーコンの種類と位置を新たに地図データ記憶部12に更新する。光ビーコンの種類は光ビーコンから送信される情報に含まれるID情報等から決定できる。さらに、新たな光ビーコンを地図データ記憶部12に更新した場合に、VICSの光ビーコンとDSSSの光ビーコンとが近接に存在する光ビーコン近接地帯40が新たに発生する場合には、それを併せて地図データ記憶部12に更新する。これにより、VICS及びDSSSの光ビーコンが新たに新設された場合においても、ドライバは確実にDSSSのサービスを受けることができる。
【0045】
(変形例4)
次に、本実施例における変形例3を説明する。本変形例では、地図データ記憶部12において、VICSの光ビーコンのすぐ後に近接して(例えば、50メートル以内)DSSSの光ビーコンとが設置されている場合における、VICSの光ビーコンの位置情報を記憶する。自車位置検出部13にて検出された自車位置に基づいて、そのVICSの光ビーコンの通信領域内に60km/h以上の速度で進入したと判定された場合、制御部17は、路車間通信装置11がVICSの光ビーコンから送信されるVICS情報信号を受信することを禁止する。従って、VICSの光ビーコンに近接して設置されるDSSSの光ビーコンの通信領域を車両が通過する際には、通信を行っていない状態であるため、路車間通信装置11は確実にDSSSの光ビーコンに対してアップリンク信号を送信することができる。これにより、ドライバは確実にDSSSのサービスを受けることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 カーナビゲーション装置
11 路車間通信装置
12 地図データ記憶部
123 光ビーコン位置情報
13 自車位置検出部
17 制御部
100 光ビーコン
40 光ビーコン近接地帯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側機から該路側機の通信領域内に送信される信号を受信する信号受信手段と、
前記信号受信手段にて信号の受信を開始し、これに続く信号を最後に受信してから所定時間経過するまでを連続した通信期間と判定する通信期間判定手段と、
前記信号受信手段にて受信した信号に応答して、前記路側機に対してアップリンク信号を送信するアップリンク信号送信手段と、
前記アップリンク信号送信手段により送信されたアップリンク信号を、前記路側機が受信したかどうかを判定するアップリンク判定手段と、
前記アップリンク判定手段により、前記路側機がアップリンク信号を受信したと判定された場合は、前記通信期間判定手段により判定された通信期間においてアップリンク信号の送信を禁止する再送信禁止手段と、
前記通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の路側機の後に、前記アップリンク信号を送信した車両に対して該車両向けの信号を送信する第2の路側機が所定範囲内に近接して設置されている前記第1の路側機を特定する路側機特定手段と、
前記路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域内において、前記信号受信手段にて前記第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、前記アップリンク信号送信手段にて前記第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止する制御手段とを備えることを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用路車間通信装置において、
前記制御手段は、前記信号受信手段における信号の受信を停止させることにより、前記信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止することを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の車両用路車間通信装置において、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記第1の路側機の後に前記第2の路側機が所定距離以内に近接して設置されている路側機近接地帯を記憶する路側機近接地帯記憶手段とを備え、
前記制御手段は、前記自車位置検出手段により検出された自車位置が、前記路側機近接地帯記憶手段により記憶される路側機近接地帯に進入した場合は、前記第1の路側機の通信領域内において、前記信号受信手段にて前記第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、前記アップリンク信号送信手段にて前記第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用路車間通信装置において、
自車速度を検出する自車速度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記自車位置検出手段により検出された自車位置が、前記路側機近接地帯記憶手段により記憶される路側機近接地帯に進入した際に、前記自車速度検出手段により検出された自車速度が所定速度よりも速い場合は、前記第1の路側機の通信領域内において、前記信号受信手段にて前記第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、前記アップリンク信号送信手段にて前記第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項5】
請求項3若しくは4に記載の車両用路車間通信装置において、
前記第1の路側機及び前記第2の路側機が設置されている位置を記憶する路側機位置情報記憶手段と、
前記信号受信手段が、前記路側機位置情報記憶手段にて記憶される前記第1の路側機及び前記第2の路側機が設置されている位置ではない場所にて、前記第1の路側機若しくは前記第2の路側機から情報信号を受信した場合には、該受信した信号に基づいて前記場所を、前記第1の路側機若しくは前記第2の路側機の設置箇所として路側機位置情報記憶手段に追加更新する路側機位置情報更新手段と、
前記路側機位置情報更新手段にて追加更新された前記第1の路側機若しくは前記第2の路側機により新たに前記路側機近接地帯が発生した場合は、路側機近接地帯記憶手段に追加更新する路側機近接地帯更新手段とを備えることを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用路車間通信装置において、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記第1の路側機の後に前記第2の路側機が所定範囲内に近接して設置されている前記第1の路側機の位置情報を記憶する近接路側機位置情報記憶手段とを備え、
前記制御手段は、前記自車位置検出手段により検出された自車位置が、前記近接路側機位置情報記憶手段により記憶される第1の路側機の通信領域内に存在する場合は、前記第1の路側機の通信領域内において、前記信号受信手段にて前記第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、前記アップリンク信号送信手段にて前記第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項7】
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の路側機から送信される第1の種類の信号と、通信領域内に存在する車両を特定し、該特定された車両向けの信号を送信する第2の路側機から送信される第2の種類の信号とを受信する受信手段と、
前記受信手段による信号の受信を開始し、これに続く信号を最後に受信してから所定時間経過すると受信が終了したと判定する判定手段と、
前記所定時間以内に到達可能な所定範囲内に前記第2の路側機が近接して設置されている前記第1の路側機を特定する路側機特定手段と、
前記自車位置検出手段により検出された自車位置が、前記路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域に存在する場合に、前記受信手段による前記第1の種類の信号の受信を禁止する禁止手段と、
前記禁止手段により受信を禁止した後に、前記自車位置検出手段により検出された自車位置が、前記路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域を通過した場合に、前記受信手段による受信を許可する許可手段とを備えることを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項1】
路側機から該路側機の通信領域内に送信される信号を受信する信号受信手段と、
前記信号受信手段にて信号の受信を開始し、これに続く信号を最後に受信してから所定時間経過するまでを連続した通信期間と判定する通信期間判定手段と、
前記信号受信手段にて受信した信号に応答して、前記路側機に対してアップリンク信号を送信するアップリンク信号送信手段と、
前記アップリンク信号送信手段により送信されたアップリンク信号を、前記路側機が受信したかどうかを判定するアップリンク判定手段と、
前記アップリンク判定手段により、前記路側機がアップリンク信号を受信したと判定された場合は、前記通信期間判定手段により判定された通信期間においてアップリンク信号の送信を禁止する再送信禁止手段と、
前記通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の路側機の後に、前記アップリンク信号を送信した車両に対して該車両向けの信号を送信する第2の路側機が所定範囲内に近接して設置されている前記第1の路側機を特定する路側機特定手段と、
前記路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域内において、前記信号受信手段にて前記第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、前記アップリンク信号送信手段にて前記第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止する制御手段とを備えることを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用路車間通信装置において、
前記制御手段は、前記信号受信手段における信号の受信を停止させることにより、前記信号受信手段にて第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止することを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の車両用路車間通信装置において、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記第1の路側機の後に前記第2の路側機が所定距離以内に近接して設置されている路側機近接地帯を記憶する路側機近接地帯記憶手段とを備え、
前記制御手段は、前記自車位置検出手段により検出された自車位置が、前記路側機近接地帯記憶手段により記憶される路側機近接地帯に進入した場合は、前記第1の路側機の通信領域内において、前記信号受信手段にて前記第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、前記アップリンク信号送信手段にて前記第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用路車間通信装置において、
自車速度を検出する自車速度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記自車位置検出手段により検出された自車位置が、前記路側機近接地帯記憶手段により記憶される路側機近接地帯に進入した際に、前記自車速度検出手段により検出された自車速度が所定速度よりも速い場合は、前記第1の路側機の通信領域内において、前記信号受信手段にて前記第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、前記アップリンク信号送信手段にて前記第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項5】
請求項3若しくは4に記載の車両用路車間通信装置において、
前記第1の路側機及び前記第2の路側機が設置されている位置を記憶する路側機位置情報記憶手段と、
前記信号受信手段が、前記路側機位置情報記憶手段にて記憶される前記第1の路側機及び前記第2の路側機が設置されている位置ではない場所にて、前記第1の路側機若しくは前記第2の路側機から情報信号を受信した場合には、該受信した信号に基づいて前記場所を、前記第1の路側機若しくは前記第2の路側機の設置箇所として路側機位置情報記憶手段に追加更新する路側機位置情報更新手段と、
前記路側機位置情報更新手段にて追加更新された前記第1の路側機若しくは前記第2の路側機により新たに前記路側機近接地帯が発生した場合は、路側機近接地帯記憶手段に追加更新する路側機近接地帯更新手段とを備えることを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用路車間通信装置において、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記第1の路側機の後に前記第2の路側機が所定範囲内に近接して設置されている前記第1の路側機の位置情報を記憶する近接路側機位置情報記憶手段とを備え、
前記制御手段は、前記自車位置検出手段により検出された自車位置が、前記近接路側機位置情報記憶手段により記憶される第1の路側機の通信領域内に存在する場合は、前記第1の路側機の通信領域内において、前記信号受信手段にて前記第1の路側機から送信される信号を受信することを禁止し、または、前記アップリンク信号送信手段にて前記第1の路側機から送信される信号に応答してアップリンク信号を送信することを禁止することを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項7】
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
通信領域内に存在する車両に対して信号を送信する第1の路側機から送信される第1の種類の信号と、通信領域内に存在する車両を特定し、該特定された車両向けの信号を送信する第2の路側機から送信される第2の種類の信号とを受信する受信手段と、
前記受信手段による信号の受信を開始し、これに続く信号を最後に受信してから所定時間経過すると受信が終了したと判定する判定手段と、
前記所定時間以内に到達可能な所定範囲内に前記第2の路側機が近接して設置されている前記第1の路側機を特定する路側機特定手段と、
前記自車位置検出手段により検出された自車位置が、前記路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域に存在する場合に、前記受信手段による前記第1の種類の信号の受信を禁止する禁止手段と、
前記禁止手段により受信を禁止した後に、前記自車位置検出手段により検出された自車位置が、前記路側機特定手段により特定された第1の路側機の通信領域を通過した場合に、前記受信手段による受信を許可する許可手段とを備えることを特徴とする車両用路車間通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−44002(P2011−44002A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191944(P2009−191944)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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