説明

車両用運転支援装置

【課題】車線逸脱に対する警報をよりドライバのフィーリングに合致したタイミングで行うことができる車両用運転支援装置を提供する。
【解決手段】制御ユニット5は、自車両1前方で認識した白線に沿って警報判定用ラインを設定し、当該警報判定用ラインと自車両との相対的な位置関係に基づいて車線逸脱警報を行う場合において、左右の白線H1,H2に沿って設定した基準となる警報判定用ラインwl,wrに対する補正量Dl,Drを予め設定された条件に基づいてそれぞれ演算し、白線H1,H2の外側或いは内側に対して各警報判定用ラインwl,wrを補正量Dl,Drだけオフセットさせて最終的な警報判定用ラインWl,Wrを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が車線を逸脱して走行する可能性がある場合に、適切に警報を発生してドライバの運転を支援する車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性の向上を図るため、積極的にドライバの運転操作を支援する総合的な運転支援装置が開発されている。この種の運転支援装置は、車両の走行環境や自車両の走行状態から先行車との衝突、物体との接触、車線逸脱等の様々な可能性を推定して、安全を維持できないと予測される場合に、ドライバに対して報知、その他制御等を行うものである。
【0003】
この運転支援装置の機能の1つである車線逸脱防止機能では、一般に、自車前方の撮像画像等に基づいて白線の認識が行われ、この白線に基づいて自車走行車線が推定される。そして、自車走行車線を走行中の自車両が白線を踏んだことが判定されたとき、或いは、所定時間後に自車両が白線を横切ることが推定されたとき等に、警報ランプの点灯・点滅、警報ブザー、チャイム音或いは音声等を通じた警報が行われるようになっている。
【0004】
このような車線逸脱防止機能において、ドライバが既に認識している車線逸脱方向に対して警報が頻繁に発せられることを防止し、違和感のない警報を実現するための技術として、例えば、特許文献1には、右側或いは左側への車線逸脱を判断して警報を発した後は、当該判断に基づく警報を設定時間が経過するまでの間禁止する一方、車線逸脱の方向が切り替わった場合には、切り替わった側の車線逸脱警報を直ぐに開始する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−178400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術は、警報が頻繁に発せられることに対する違和感を軽減できるものの、警報を発するタイミング等については、自車両と白線との相対関係等に基づいて略一義的に判定するため、ドライバのフィーリングとは合致しない場合があり、更なる改善が求められていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車線逸脱に対する警報をよりドライバのフィーリングに合致したタイミングで行うことができる車両用運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自車走行車線を規定する白線を認識する白線認識手段と、前記白線に沿って警報判定用ラインを設定し、当該警報判定用ラインと自車両との相対的な位置関係に基づいて車線逸脱警報を行う警報制御手段と、前記白線に対する前記警報判定用ラインの相対位置を予め設定された条件に基づいて補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用運転支援装置によれば、車線逸脱に対する警報をよりドライバのフィーリングに合致したタイミングで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両用運転支援装置の概略構成図
【図2】警報判定用ライン補正ルーチンを示すフローチャート
【図3】補正量演算サブルーチンを示すフローチャート
【図4】補正量演算サブルーチンを示すフローチャート
【図5】前方で検出されるデータの説明図
【図6】警報判定用ラインの説明図
【図7】アクセル開度と補正量及び保持時間との関係を示すマップ
【図8】車速と補正量との関係を道路幅毎に示すマップ
【図9】カーブ入口側における舵角と補正量との関係を示すマップ
【図10】カーブ出口側における舵角と補正量との関係を示すマップ
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)であり、この車両1には運転支援装置2が搭載されている。この運転支援装置2は、例えば、ステレオカメラ3、ステレオ画像認識装置4、制御ユニット5等を主要部として構成されている。
【0012】
また、自車両1には、自車速Vを検出する車速センサ11、ヨーレートγを検出するヨーレートセンサ12、運転支援制御の各機能のON−OFF切換等を行うメインスイッチ13、ステアリングホイールに連設するステアリング軸に対設されて舵角θstを検出する舵角センサ14、ドライバによるアクセルペダル踏込量(アクセル開度)θaccを検出するアクセル開度センサ15等が設けられている。
【0013】
ステレオカメラ3は、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた1組のCCDカメラで構成されている。これら左右のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔を持って取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、画像データをステレオ画像認識装置4に出力する。
【0014】
ステレオ画像認識装置4は、先ず、ステレオカメラ3で撮像した自車両1の進行方向の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から距離情報を求め、距離画像を生成する。そして、このデータを基に、周知のグルーピング処理を行い、予め記憶しておいた3次元的な道路形状データ、側壁データ、立体物データ等の枠(ウインドウ)と比較することにより、自車両1前方の走行環境を認識する。すなわち、ステレオ画像認識装置4は、自車両1前方の走行環境情報として、白線データ、道路に沿って延在するガードレール、縁石等の側壁データ、及び、車両、歩行者、電柱等の各種立体物データを距離画像データから抽出する。
【0015】
より具体的には、ステレオ画像認識装置4は、例えば、2車線道路の場合は、図5に示すように、自車両1の位置と方向を基準とするX−Y座標系において、自車前方の左右、中央の白線H1〜H3の位置や形状の座標、白線H1に沿って延在するC1の位置や形状の座標、自車両1の走行車線(自車線)の先行車M1、対向車線の対向車M2等の位置や形状の座標、自車線脇の駐車車両M3等の立体物の位置や形状の座標等に関する各種データを得る。さらに、ステレオ画像認識装置4は、立体物データに対し、自車両1に対する距離のX軸方向変化及びY軸方向変化から相対速度を演算し、この相対速度と自車両1の速度Vとに基づいて、それぞれの立体物の速度ベクトルに関するデータを得る。
【0016】
このように、本実施形態において、ステレオ画像認識装置4は、白線認識手段としての機能を有する。ここで、本発明において、白線とは、道路上に走行車線を規定するために引かれた境界線を意味し、実線、破線を問わず、さらに、黄線等をも含む広義のものを意味する。
【0017】
なお、本実施形態において、ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3と一体にモジュール化され、ステレオカメラ3とともに車室内の天井前方に保持されている。
【0018】
制御ユニット5には、ステレオ画像認識装置4で認識された自車両1前方の走行環境情報が入力される。さらに、制御ユニット5には、自車両1の走行情報として、車速センサ11からの車速V、ヨーレートセンサ12からのヨーレートγ等が入力されると共に、ドライバによる操作入力情報として、メインスイッチ13からの操作信号、舵角センサ14からの舵角θst、アクセル開度センサ15からのアクセル開度θacc等が入力される。
【0019】
そして、例えば、ドライバによるメインスイッチ13の操作を通じて、運転支援制御の機能の1つであるACC(Adaptive Cruise Control)機能の実行(ON)が指示されると、制御ユニット5は、ステレオ画像認識装置4で認識した先行車方向を読み込み、自車走行路上に、追従対象の先行車が走行しているか否かを識別する。
【0020】
その結果、追従対象の先行車が検出されない場合は、スロットル弁16の開閉制御(エンジンの出力制御)を通じて、ドライバが設定したセット車速に自車両1の車速Vを維持させる定速走行制御を実行する。
【0021】
一方、追従対象車両である先行車が検出され、且つ、当該先行車の車速がセット車速以下の場合は、先行車との車間距離を目標車間距離に収束させた状態で追従する追従走行制御が実行される。この追従走行制御時において、制御ユニット5は、基本的にはスロットル弁16の開閉制御(エンジンの出力制御)を通じて、先行車との車間距離を目標車間距離に収束させる。さらに、先行車の急な減速等によりスロットル弁16の制御のみでは十分な減速度が得られないと判断した場合、制御ユニット5は、アクティブブースタ17からの出力液圧の制御(ブレーキの自動介入制御)を併用し、車間距離を目標車間距離に収束させる。
【0022】
また、ドライバによるメインスイッチ13の操作を通じて、運転支援制御の機能の1つである車線逸脱防止機能の実行(ON)が指示されると、制御ユニット5は、例えば、自車走行車線を規定する左右の白線に基づいて警報判定用ラインWl,Wrを設定するとともに、自車両1の車速Vとヨーレートγとに基づいて自車進行経路を推定する。そして、制御ユニット5は、例えば、自車前方の設定距離(例えば、10〜16[m])内において、自車進行経路が警報判定用ラインW1或いはW2を横切っていると判定した場合、自車両1が現在の自車走行車線を逸脱する可能性が高いと判定し、車線逸脱警報を行う。なお、本実施形態において、この車線逸脱警報は、例えば、車速Vに応じて異なる形態で行われるようになっており、具体的には、制御ユニット5は、例えば、車速Vが50[km/h]未満の車速域においてはコンビネーションメータ上に配設された警報ランプ18のみの警報を行い、車速Vが50[km/h]以上の車速域においては警報ランプ18と警報ブザー19の両方による警報を行う。
【0023】
ここで、本実施形態において、制御ユニット5は、左右の警報判定用ラインW1,W2の設定に際し、左右各白線上にそれぞれ基準となる警報判定用ラインw1,w2を設定する。そして、制御ユニット5は、これら設定した警報判定用ラインw1,w2の白線に対する相対位置を、予め設定された条件に基づいて適宜補正することにより、最終的な警報判定用ラインW1,W2を設定する。すなわち、例えば、図6に示すように、制御ユニット5は、警報タイミングを最適化するための各補正量Dl,Drを演算し、これら補正量Dl,Drを用い、基準となる警報判定用ラインwl,wrを白線H1,H2の外側或いは内側にオフセットさせることで、最終的な警報判定用ラインWl,Wrを設定する。なお、以下の説明において、白線H等に対する内側とは自車走行車線側の方向を指し、白線H等に対する外側とは反自車走行車線側の方向を指すものとする。従って、例えば、自車両1に対して左側の白線H1の内側とは右側を指し、外側とは左側を指す。逆に、自車両1に対して右側の白線H2の内側とは左側を指し、外側とは右側を指す。
【0024】
このように、本実施形態において、制御ユニット5は、警報制御手段、及び、補正手段としての各機能を実現する。
【0025】
ここで、警報判定用ラインwl,wrを補正するための要件として、制御ユニット5には、主として、自車前方の走行環境に基づく各要件と、ドライバ操作に基づく各要件とが設定されており、制御ユニット5は、これら各要件に基づき、図2に示す警報判定用ライン補正ルーチンに従って、警報判定用ラインwl,wrに対する補正を行う。
【0026】
このルーチンは設定時間毎に実行されるもので、ルーチンがスタートすると、制御ユニット5は、先ず、ステップS101において、現在、右側の警報判定用ラインwrに対する補正処理が行われた後であるか否かを調べる。
【0027】
そして、ステップS101において、未だ、右側の警報判定用ラインwrに対する補正処理が行われていないと判定した場合、制御ユニット5は、ステップS103に進み、今回の演算対象として右側の警報判定用ラインwr(及び、白線H2)を選択した後、ステップS105に進む。
【0028】
一方、ステップS101において、現在、右側の警報判定用ラインwrに対する補正処理後であると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS102に進み、現在、左側の警報判定用ラインwlに対する補正処理が行われた後であるか否かを調べる。
【0029】
そして、ステップS101において、未だ、左側の警報判定用ラインwlに対する補正処理が行われていないと判定した場合、制御ユニット5は、ステップS104に進み、今回の演算対象として左側の警報判定用ラインwl(及び、白線H1)を選択した後、ステップS105に進む。
【0030】
一方、ステップS102において、現在、左側の警報判定用ラインwlに対する補正処理後であると判定した場合、制御ユニット5は、ルーチンを抜ける。
【0031】
ステップS103或いはステップS104からステップS105に進むと、制御ユニット5は、自車両1前方の車外環境に基づき、現在補正対象として選択されている警報判定用ラインwに対する補正量を演算する。
【0032】
この補正量演算は、例えば、図3に示す補正量演算サブルーチンに従って実行されるもので、サブルーチンがスタートすると、制御ユニット5は、先ず、ステップS201において、現在、自車両1が自車走行車線上のカーブ入口に差し掛かっているか否かを調べる。
【0033】
そして、ステップS201において、自車両1がカーブ入口に差し掛かっていると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS203に進み、現在対象とされている白線Hがカーブ方向に対して内側に位置する白線であるか否かを調べる。
【0034】
そして、ステップS202において、対象の白線Hがカーブ方向内側の白線であると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS203に進み、現在選択されている警報判定用ラインwに対する補正量として、白線H外側への補正量d1を設定した後、ステップS204に進む。
【0035】
すなわち、カーブ侵入時において、多くのドライバは、所謂アウトインアウト走行を行うべく意図的にカーブ方向外側から内側に向けた操舵を行ってカーブに侵入し、その際、カーフ方向内側の白線を踏み越える傾向にある。そこで、このようなドライバの明確な意思が反映されたカーブ入口における操舵に対して不要な警報が発せられることを抑制するため、自車両1がカーブ入口に差し掛かっている場合、制御ユニット5は、カーブ方向内側の警報判定用ラインwに対し、白線H外側への補正量d1を設定する。なお、補正量d1は、例えば、カーブの曲率等に応じて可変設定されることが好ましいが、予め設定された固定値(例えば、d1=30[cm])とすることも可能である。
【0036】
一方、ステップS201において、自車両1がカーブ入口に差し掛かっていないと判定した場合、或いは、ステップS202において、対象の白線Hがカーブ方向外側の白線であると判定した場合、制御ユニット5は、そのまま、ステップS204に進む。
【0037】
ステップS201、ステップS202、或いは、ステップS203からステップS204に進むと、制御ユニット5は、現在、自車両1が自車走行車線上のカーブ出口に差し掛かっているか否かを調べる。
【0038】
そして、ステップS204において、自車両1がカーブ出口に差し掛かっていると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS205に進み、現在対象とされている白線Hがカーブ方向に対して外側に位置する白線であるか否かを調べる。
【0039】
そして、ステップS205において、対象の白線Hがカーブ方向外側の白線であると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS206に進み、現在選択されている警報判定用ラインwに対する補正量として、白線H外側への補正量d2を設定した後、ステップS207に進む。
【0040】
すなわち、カーブ脱出時において、多くのドライバは、所謂アウトインアウト走行を行うべく意図的にカーブ方向内側から外側に向けた操舵を行ってカーブを脱出し、その際、カーブ方向外側の白線を踏み越える傾向にある。そこで、このようなドライバの明確な意思が反映されたカーブ出口における操舵に対して不要な警報が発せられることを抑制するため、自車両1がカーブ出口に差し掛かっている場合、制御ユニット5は、カーブ方向外側の警報判定用ラインwに対し、白線H外側への補正量d2を設定する。なお、補正量d2は、例えば、カーブの曲率等に応じて可変設定されることが好ましいが、予め設定された固定値(例えば、d2=30[cm])とすることも可能である。
【0041】
一方、ステップS204において、自車両1がカーブ出口に差し掛かっていないと判定した場合、或いは、ステップS205において、対象の白線Hがカーブ方向内側の白線であると判定した場合、制御ユニット5は、そのまま、ステップS207に進む。
【0042】
ステップS204、ステップS205、或いは、ステップS206からステップS207に進むと、制御ユニット5は、現在、自車両1の前方において、対象となる白線Hの外側に側壁や立体物(以下、「立体物等」と称す)が存在しているか否かを調べる。
【0043】
そして、ステップS207において、対象の白線の外側に立体物等が存在していると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS208に進み、立体物等に対する衝突予想時間(TTC)が設定時間(例えば、TTC=6[sec])内であるか否かを調べる。
【0044】
そして、ステップS208において、TTCが設定時間内であると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS209に進み、現在選択されている警報判定用ラインwに対する補正量として、白線H内側への補正量d3を設定した後、ステップS210に進む。
【0045】
この場合、制御ユニット5は、例えば、立体物等から自車走行車線側に設定距離(例えば、30[cm])移動した位置に補助線を設定し、当該補助線が白線Hよりも内側に存在するとき、その差分を補正量d3として設定する。一方、補助線が白線よりも外側に存在する場合には、補正量d3を「0」とする。
【0046】
すなわち、白線Hの外側直近傍に立体物等が存在する場合、ドライバは当該立体物等を回避しようとすることが一般的であり、このような場合、むしろ早めのタイミングで警報を行うことが望ましい。そこで、白線Hの外側に立体物等が存在する場合、制御ユニット5は、警報を敏感に発動させるため、補正量d3を設定する。
【0047】
一方、ステップS207において、対象の白線の外側に立体物等が存在していないと判定した場合、或いは、ステップSS208において、TTCが設定時間外であると判定した場合、制御ユニット5は、そのまま、ステップS210に進む。
【0048】
ステップS207、ステップS208、或いは、ステップS209からステップS210に進むと、制御ユニット5は、現在、自車両1の前方において、対象となる白線Hの外側に対向車が存在しているか否かを調べる。
【0049】
そして、ステップS210において、対象の白線の外側に対向車が存在していると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS211に進み、対向車に対するTTCが設定時間(例えば、TTC=6[sec])内であるか否かを調べる。
【0050】
そして、ステップS210において、TTCが設定時間内であると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS212に進み、現在選択されている警報判定用ラインwに対する補正量として、白線Hの内側への補正量d4(例えば、d4=10[cm])を設定した後、サブルーチンを抜ける。
【0051】
すなわち、白線Hの外側に対向車が存在する場合、対向車との接触等を的確に回避するため、早めのタイミングで警報を行うことが望ましい。そこで、白線Hの外側に対向車が存在する場合、制御ユニット5は、警報を敏感に発動させるため、補正量d4を設定する。
【0052】
一方、ステップS210において、対象の白線の外側に対向車が存在していないと判定した場合、或いは、ステップSS211において、TTCが設定時間外であると判定した場合、制御ユニット5は、そのまま、サブルーチンを抜ける。
【0053】
図2のメインルーチンにおいて、ステップS105からステップS106に進むと、制御ユニット5は、ドライバ操作に基づき、現在選択されている警報判定用ラインwに対する補正量を演算する。
【0054】
この補正量演算は、例えば、図4に示す補正量演算サブルーチンに従って実行されるもので、サブルーチンがスタートすると、制御ユニット5は、先ず、ステップS301において、ドライバによるアクセル操作が行われたか否かを調べる。
【0055】
そして、ステップS301において、ドライバによるアクセル操作が行われたと判定した場合、制御ユニット5は、ステップS302に進み、アクセルペダル操作量(アクセル開度θacc)に応じた保持時間tを設定する。
【0056】
ここで、保持時間tとは、後述するステップS304或いはステップS305で設定された補正量d5或いはd6をドライバのアクセル操作後においても所定に保持するための時間であり、保持時間tはアクセル開度θaccが大きくなるほど長時間に設定される。この保持時間tの設定を行うため、例えば、図7に示すように、制御ユニット5には、アクセル開度θaccと保持時間tとの関係を示すマップが予め設定されて格納されており、制御ユニット5は、このマップを参照して保持時間tを設定する。
【0057】
ステップS302からステップS303に進むと、制御ユニット5は、現在、ACC機能を実行中であるか否かを調べる。
【0058】
そして、ステップS303において、ACC機能の実行中であると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS304に進み、現在選択されている警報判定用ラインwに対する補正量として、アクセル開度θaccに応じた白線H外側への補正量d5を設定した後、ステップS308に進む。
【0059】
一方、ステップS303において、ACC機能の実行中ではないと判定した場合、制御ユニット5は、ステップS305に進み、現在選択されている警報判定用ラインwに対する補正量として、アクセル開度θaccに応じた白線H外側への補正量d6を設定した後、ステップS308に進む。
【0060】
ここで、補正量d5,d6は、予め設定された上限値(例えば、20[cm]及び30[cm])内において、アクセル開度θaccが所定開度となるまでの間、アクセル開度θaccの増加に応じた所定の勾配で増加するよう可変設定される。これら補正量d5,d6の設定を行うため、図7に示すように、制御ユニット5には、アクセル開度θaccと各補正量d5,d6との各関係を示すマップが予め設定されて格納されており、制御ユニット5は、このマップを参照して補正量d5,d6を設定する。
【0061】
すなわち、ドライバによる積極的なアクセル操作が行われている場合にはドライバの覚醒度が高いことが予想され、このような状態において、警報を頻繁に行うことはドライバに対して煩わしさを感じさせる虞がある。そこで、アクセル操作が行われた場合、制御ユニット5は、不要な警報が発せられることを抑制するため、警報判定用ラインwに対し、白線H外側への補正量d5,d6を設定する。この場合において、ACC機能を非実行中である場合の方が、ドライバの覚醒度が高いことが想定されるため、本実施形態では、同一のアクセル開度θaccに対し、補正量d6は補正量d5よりも相対的に高い値に設定される。
【0062】
ステップS301において、ドライバによるアクセル操作が行われていないと判定した場合、制御ユニット5は、ステップS306に進み、ドライバによるアクセル操作が終了してから保持時間t以上が経過したか否かを調べる。
【0063】
そして、ステップS306において、保持時間t以上が経過していないと判定した場合、制御ユニット5は、ステップS307に進み、前回の補正量d5或いはd6を保持した後、ステップS308に進む。
【0064】
すなわち、ドライバの覚醒度はアクセル操作の終了後直ちに低下することは考え難いため、制御ユニット5は、ドライバのアクセル操作があった後も設定時間tが経過するまでの間は補正量d5或いはd6を保持し、不要な警報が発せられることを抑制する。
【0065】
一方、ステップS306において、保持時間t以上が経過していると判定した場合、制御ユニット5は、そのまま、ステップS308に進む。
【0066】
ステップS304、ステップS305、ステップS306、或いは、ステップS307からステップS308に進むと、制御ユニット5は、現在、自車両1の車速Vが設定車速(例えば、60[km/h])以上であるか否かを調べる。
【0067】
そして、ステップS308において、車速Vが設定車速以上であると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS309に進み、現在選択されている警報判定用ラインwに対する補正量として、車速Vに応じた白線H外側への補正量d7を設定した後、ステップS310に進む。
【0068】
ここで、補正量d7は、同一の車速Vに対し、自車走行車線の道路幅が狭いほど高い値に設定される。この補正量d7の設定を行うため、例えば、図8に示すように、制御ユニット5には、道路幅毎に、車速Vと補正量dとの関係を示すマップが予め設定されて格納されており、制御ユニット5は、このマップを参照して補正量d7を設定する。
【0069】
すなわち、比較的道路幅が狭い道路で高速走行している場合、何らかの要因でドライバが積極的な運転を行っていることが予想される。そして、このような運転時において、警報を頻繁に行うことはドライバに煩わしさを感じさせる虞がある。そこで、所定の高速走行が行われている場合、制御ユニット5は、不要な警報が発せられることを抑制するため、警報判定用ラインwに対し、白線H外側への補正量d7を設定する。
【0070】
一方、ステップS308において、車速Vが設定車速未満であると判定した場合、制御ユニット5は、そのまま、ステップS310に進む。
【0071】
ステップS308或いはステップS309からステップS310に進むと、制御ユニット5は、現在、自車両1が自車走行車線上のカーブ入口に差し掛かっているか否かを調べる。
【0072】
そして、ステップS310において、自車両1がカーブ入口に差し掛かっていると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS311に進み、現在対象とされている白線Hがカーブ方向に対して外側に位置する白線であるか否かを調べる。
【0073】
そして、ステップS311において、対象の白線Hがカーブ方向外側の白線であると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS312に進み、現在、ドライバによってカーブ方向への操舵が行われているか否かを調べる。
【0074】
そして、ステップS312において、カーブ方向への操舵が行われていると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS313に進み、現在選択されている警報判定用ラインwに対する補正量として、舵角θstに応じた白線H外側への補正量d8を設定した後、ステップS314に進む。
【0075】
すなわち、前述のように本実施形態の警報判定は自車進行経路と警報判定用ラインWl,Wrとの関係に基づいてなされるが、自車進行経路の推定はヨーレートγに基づいて行われるものであるため、推定された自車進行経路はドライバによる実際の操舵に対して若干のズレが生じる。換言すれば、特にカーブ侵入時において、自車進行経路は、アンダーステア気味に推定される。そして、このように推定された自車進行経路に基づいて警報判定を行った場合、実際には車線逸脱の可能性が低いにも拘わらず、警報が発せられる虞がある。そこで、このような応答遅れによって不要な警報が発せられることを抑制するため、警報判定用ラインwに対し、白線H外側への補正量d8を設定する。この補正量d8の設定を行うため、例えば、図9に示すように、制御ユニット5には、カーブ方向への舵角θstが大きいほど補正量d8を高く設定するためのマップが予め設定されて格納されており、制御ユニット5は、このマップを参照して補正量d8を設定する。
【0076】
一方、ステップS310において、自車両1がカーブ入口に差し掛かっていないと判定した場合、ステップS311において、対象白線がカーブ方向内側の白線であると判定した場合、或いは、ステップS312において、カーブ方向への操舵が行われていないと判定した場合、制御ユニット5は、そのまま、ステップS314に進む。
【0077】
ステップS310、ステップS311、ステップS312、或いは、ステップS313からステップS314に進むと、制御ユニット5は、現在、自車両1が自車走行車線上のカーブ出口に差し掛かっているか否かを調べる。
【0078】
そして、ステップS314において、自車両1がカーブ出口に差し掛かっていると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS315に進み、現在対象とされている白線Hがカーブ方向内側に位置する白線であるか否かを調べる。
【0079】
そして、ステップS315において、対象の白線Hがカーブ方向内側の白線であると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS316に進み、現在、ドライバによってカーブ逆方向への操舵が行われているか否かを調べる。
【0080】
そして、ステップS316において、カーブ逆方向への操舵が行われていると判定した場合、制御ユニット5は、ステップS317に進み現在選択されている警報判定用ラインwに対する補正量として、舵角θstに応じた白線H外側への補正量d9を設定した後、サブルーチンを抜ける。
【0081】
すなわち、ヨーレートγに基づいて推定された自車進行経路はドライバによる実際の操舵に対して若干のズレが生じ、特にカーブ脱出時において、自車進行経路は、アンダーステア気味に推定される、そして、このように推定された自車進行経路に基づいて警報判定を行った場合、実際には車線逸脱の可能性が低いにも拘わらず、警報が発せられる虞がある。そこで、このような応答遅れによって不要な警報が発せられることを抑制するため、警報判定用ラインwに対し、白線H外側への補正量d9を設定する。この補正量d9の設定を行うため、例えば、図10に示すように、制御ユニット5には、カーブ逆方向への舵角θstが大きいほど補正量d9を高く設定するためのマップが予め設定されて格納されており、制御ユニット5は、このマップを参照して補正量d9を設定する。
【0082】
一方、ステップS314において、自車両1がカーブ出口に差し掛かっていないと判定した場合、ステップS315において、対象白線がカーブ方向外側の白線であると判定した場合、或いは、ステップS316において、カーブ逆方向への操舵が行われていないと判定した場合、制御ユニット5は、そのまま、サブルーチンを抜ける。
【0083】
図2のメインルーチンにおいて、ステップS106からステップS107に進むと、制御ユニット5は、上述のステップS105或いはステップS106において演算された各補正量dのうち、白線内側への有効な補正量dが存在するか否かを調べる。
【0084】
そして、ステップS107において、白線内側への有効な補正量dが存在すると判定した場合には、制御ユニット5は、ステップS108に進み、白線内側への有効な補正量dの中から最大値を補正量Dとして抽出する。
【0085】
続くステップS109において、制御ユニット5は、現在選択されている警報判定用ラインwを補正量Dだけ白線Hよりも内側にオフセットさせる補正を行うことで、最終的な警報判定用ラインWを設定した後、ステップS101に戻る。このように、白線内側への有効な補正量dが存在する場合、警報判定用ラインwを安全側に補正すべく、仮に白線外側への有効な補正量dが存在する場合においても、白線内側への補正量dが優先適用される。
【0086】
一方、ステップS107において、白線内側への有効な補正量dが存在しないと判定した場合には、制御ユニット5は、ステップS110に進み、上述のステップS105或いはステップS106において演算された各補正量dのうち、白線外側への有効な補正量dが存在するか否かを調べる。
【0087】
そして、ステップS110において、白線外側への有効な補正量dが存在すると判定した場合には、制御ユニット5は、ステップS111に進み、白線外側への有効な補正量dの中から最大値を補正量Dとして抽出する。
【0088】
続くステップS112において、制御ユニット5は、現在選択されている警報判定用ラインwを補正量Dだけ白線Hよりも外側にオフセットさせる補正を行うことで、最終的な警報判定用ラインWを設定した後、ステップS101に戻る。
【0089】
一方、ステップS110において、白線外側への有効な補正量dが存在しないと判定した場合には、制御ユニット5は、そのまま、ステップS101に戻る。なお、この場合、警報判定用ラインwが、そのまま、最終的な警報判定用ラインWとして設定される。
【0090】
このような実施形態によれば、自車両1前方で認識した白線に沿って警報判定用ラインを設定し、当該警報判定用ラインと自車両との相対的な位置関係に基づいて車線逸脱警報を行う車両用運転支援装置2において、左右の白線H1,H2に沿って設定した基準となる警報判定用ラインwl,wrに対する補正量Dl,Drを予め設定された条件に基づいてそれぞれ演算し、白線H1,H2の外側或いは内側に対して各警報判定用ラインwl,wrを補正量Dl,Drだけオフセットさせて最終的な警報判定用ラインWl,Wrを設定することにより、車線逸脱に対する警報をよりドライバのフィーリングに合致したタイミングで行うことができる。
【0091】
この場合において、各補正量Dl,Drの設定を、自車走行車線上に存在するカーブ、白線Hの外側に存在する側壁や停止車両等の各種立体物、或いは、白線Hの外側に存在する対向車等の自車両1前方の走行環境を加味して行うことにより、車線逸脱に対する警報をよりドライバのフィーリングに合致したタイミングで実現することができる。
【0092】
さらに、各補正量Dl,Drの設定を、ドライバによるアクセル操作量(アクセル開度θacc)、自車両1の車速V、或いは、カーブ入口及び出口での舵角θst等のドライバ操作に基づく各種パラメータに基づいて行うことにより、車線逸脱に対する警報をよりドライバのフィーリングに合致したタイミングで実現することができる。
【0093】
なお、上述の実施形態において、各補正量Dl,Drを設定するための各種条件等については、上述のものに限定されるものではなく、適宜、追加、除外してもよいことは勿論である。
【0094】
また、上述の実施形態においては、白線の認識等をステレオカメラからの画像に基づいて行う場合の一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、単眼カメラ等に基づいて行うことも可能である。さらに、道路上に白線等が存在しない場合は、先行車等の軌跡、自車速及びヨーレート等に基づいて仮想的な白線を認識するよう構成することも可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 … 車両(自車両)
2 … 車両用運転支援装置
3 … ステレオカメラ(白線認識手段)
4 … ステレオ画像認識装置(白線認識手段)
5 … 制御ユニット(警報制御手段、補正手段)
11 … 車速センサ
12 … ヨーレートセンサ
13 … メインスイッチ
14 … 舵角センサ
15 … アクセル開度センサ
16 … スロットル弁
17 … アクティブブースタ
18 … 警報ランプ
19 … 警報ブザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車走行車線を規定する白線を認識する白線認識手段と、
前記白線に沿って警報判定用ラインを設定し、当該警報判定用ラインと自車両との相対的な位置関係に基づいて車線逸脱警報を行う警報制御手段と、
前記白線に対する前記警報判定用ラインの相対位置を予め設定された条件に基づいて補正する補正手段と、を備えたことを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記補正手段は、自車前方の走行環境に基づいて前記警報判定用ラインを補正することを特徴とする請求項1記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記補正手段は、ドライバ操作に基づいて前記警報判定用ラインを補正することを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用運転支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−3075(P2011−3075A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146636(P2009−146636)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】