説明

車両用配電機器

【課題】部品点数を少なくし、メンテナンスの作業性をより良くすることができる車両用配電機器を提供する。
【解決手段】車両に搭載される駆動用モータ30と蓄電池40との間に電気的に接続され、蓄電池40の充放電時の電流を遮断または接続する車両用配電機器70であって、
商用電源を用いて充電するための普通充電回路部52と、普通充電よりも短い時間での充電を可能とする急速充電回路部22と、駆動用モータ30と蓄電池40との間の電力の供給を接続または遮断する高電圧遮断回路部121とを備え、普通充電回路部52および急速充電回路部22を高電圧遮断回路部121よりも蓄電池40側に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車またはハイブリッドカーに使用され、蓄電池または複数の蓄電池集合体の放充電および電力の供給を接続・遮断するための車両用配電機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車またはハイブリッドカーなどの蓄電池システムで使用されている従来の車両用配電システム100の概要図を図5に示す。この配電システム100は、モータコントロールユニット110と、蓄電池モジュールユニット120との2つのユニットで構成されている。また、この配電システム100には、各ユニットに分けて、3つの配電回路部(普通充電回路部111、高電圧遮断回路部121、急速充電回路部122)が組み込まれている。
【0003】
モータコントロールユニット110には、図5に示すように、普通充電回路部111と、駆動用モータ130に接続されるインバータ112とが設けられている。このインバータ112は、複数の蓄電池で構成された蓄電池集合体140(詳細は後述する)と2本の配線105、106(配線105が+、配線106が−)で接続されている。また、普通充電回路部111とインバータ112との間には、コンデンサ113が並列に接続されている。
【0004】
また、モータコントロールユニット110の外部には、普通充電回路部111と電気的に並列接続される車載充電器114が設けられている。この車載充電器114は、普通充電コネクタ115を介して外部商用電源と接続することで、蓄電池集合体140を充電できるようになっている。
【0005】
一方、蓄電池モジュールユニット120には、図5に示すように、2つの配電回路部(高電圧遮断回路部121、急速充電回路部122)と、蓄電池集合体140とが設けられている。
高電圧遮断回路部121には、配線105側にメインリレー123a、配線106側にメインリレー123bが設けられている。また、配線105には、メインリレー122aと並列に接続されたプリチャージリレー124が設けられている。このプリチャージリレー124は、始動時(イグニッションを回したとき)にON(メインリレー123aはOFF)し、所定時間経過後にプリチャージリレー124をOFF(メインリレー123aはON)することで、始動時にインバータ112側に急激な突入電流が流れるのを防ぐものである。
【0006】
急速充電回路部122には、急速充電リレー125a、125bが設けられている。これらの急速充電リレー125a、125bは、蓄電池モジュールユニット120の外部に設けられた急速充電コネクタ126と蓄電池集合体140との間に配置されている。これらの急速充電リレー125a、125bは、急速充電時にこれらのリレーがONする一方、蓄電池集合体140の放電時にOFFにして、急速充電コネクタ126側に蓄電池集合体140からの大電流が流れないようにしている。
【0007】
図6は従来の蓄電池モジュールユニット120の平面図、図7は従来の蓄電池モジュールユニット120の斜視図である。
蓄電池モジュールユニット120は、図6に示すように、蓄電池集合体140の右側部(図7では左側部)に配電機器127(上述した高電圧遮断回路部121を備えたもの)が配置されている。この配電機器127は、蓄電池集合体140と配線131(105、106)で接続されている。また、図6に示す配電機器127の手前側(図7では配電機器127の奥側)には、サービスプラググリップ129が設けられている。このサービスプラググリップ129は、図6および図7に示すように、蓄電池集合体140と配線134を介して接続されている。これにより、点検整備時に取り外すことで、蓄電池集合体140の中間位置で高電圧を遮断し、作業安全性を確保するものである。
また、蓄電池集合体140の各蓄電池の電極140a、140b、…には、図6に示すように、バスバーモジュール133が取り付けられ、隣り合う各蓄電池の電極を接続している(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、他の従来技術としては、図8に示すように、蓄電池モジュールユニット150の配電機器157を蓄電池集合体160の間に配置したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
さらに、図7および図8で示した蓄電池モジュールユニット120、150は、蓄電池集合体140、160の電極が上方向に向けて配置されたものであるが、図9に示す蓄電池モジュールユニット170のように、蓄電池集合体171の電極171a、171b、171c、…を横方向に向けて、これらの電極171a、171b、…を側面から覆うように一体の電極保護カバー172を設けるものも知られている(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−045409号公報
【特許文献2】特開2009−4323号公報
【特許文献3】特開2001−332235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の構成では、各ユニットに分けて3つの配電回路部が配設されているため、部品点数が多く、かつ、コスト高であった。また、各配電回路部をメンテナンスする際にユニット毎にメンテナンスを行う必要があり、メンテナンスの作業性が悪かった。さらに、蓄電池集合体からの電力や、駆動用モータからの回生電力が車載充電器側へと逆流するおそれがあった。
【0012】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、部品点数を少なくし、メンテナンスの作業性をより良くすることができる車両用配電機器を提供するためのものである。
【0013】
上述課題を解決するため、本発明は、車両に搭載される駆動用モータと蓄電池との間に電気的に接続され、前記蓄電池の充放電時の電流を遮断または接続する車両用配電機器であって、商用電源を用いて充電するための普通充電回路部と、普通充電よりも短い時間での充電を可能とする急速充電回路部と、前記駆動用モータと前記蓄電池との間の電力の供給を接続または遮断する高電圧遮断回路部とを備え、前記普通充電回路部および前記急速充電回路部を前記高電圧遮断回路部よりも前記蓄電池側に配置したことを特徴とする。
【0014】
また、前記普通充電回路部と、前記急速充電回路部と、前記高電圧遮断回路部とを1つのユニットとして構成し、このユニットを前記蓄電池の側部に配置することもできる。
【0015】
また、前記ユニットが、前記蓄電池の電極を保護する電極回路体保護カバーと一体に形成されていてもよい。
【0016】
また、前記ユニットには、幅方向の一方側に急速充電用接続端子が設けられ、幅方向の他方側に普通充電用接続端子が設けられており、幅方向の前側にモータコントロールユニット用接続端子が設けられ、幅方向の後側に前記蓄電池の電極用接続端子が設けられていてもよい。
【0017】
さらに、前記普通充電回路部および前記急速充電回路部を前記高電圧遮断回路部よりも前記蓄電池側に配置し、前記普通充電回路部および前記急速充電回路部のそれぞれに回路保護制御部を設けることもできる。
【0018】
さらにまた、前記蓄電池の電極を車両前側に向くように配置し、前記ユニットまたは前記ユニットと一体の電極回路体保護カバーを前記蓄電池の前側に取り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る車両用配電機器では、商用電源を用いて充電するための普通充電回路部と、普通充電よりも短い時間での充電を可能とする急速充電回路部と、前記インバータと前記蓄電池との間の電力の供給を接続または遮断する高電圧遮断回路部とを備え、前記普通充電回路部および前記急速充電回路部を前記高電圧遮断回路部よりも前記蓄電池側に配置しているので、普通充電で蓄電池を充電する際に、高電圧遮断回路部を通って充電する必要がなくなる。そのため、普通充電のときに高電圧遮断回路部がOFF状態により、充電電流がインバータ側に逆流することを防止し、安全性を向上することができる。
また、これらの3つの回路部を1つのユニットとして構成し、このユニットを前記蓄電池の側部に配置しているので、各ユニットに分けて各回路部を構成する場合と比較して、部品点数を少なくすることができるとともに、部品コストを低減することができる。また、ユニット毎にメンテナンスをする場合と比較して、メンテナンスの作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車両用配電機器を用いた車両用配電システムの概要図である。
【図2】蓄電池集合体と車両用配電機器との関係を示す概要図である。
【図3】蓄電池集合体に車両用配電機器を取り付けた状態を示す正面図である。
【図4】図3を前方斜め上側から見た斜視図である。
【図5】従来の配電機器を用いた車両用配電システムの概要図である。
【図6】従来の蓄電池集合体と配電機器との関係を示す概要図である。
【図7】従来の蓄電池集合体に配電機器を取り付けた状態を前方斜め上側から見た斜視図である。
【図8】従来の蓄電池集合体に配電機器を取り付けた状態を前方斜め上側から見た斜視図である。
【図9】従来の蓄電池集合体に電極保護カバーを取り付ける分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る車両用配電機器について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車両用配電機器70を用いた車両用配電システム1の概要図である。また、図2は、蓄電池集合体と車両用配電機器との関係を示す概要図、図3は蓄電池集合体に車両用配電機器を取り付けた状態を示す正面図、図4は図3を前方斜め上側から見た斜視図である。なお、図1〜図4で符号を付した部品のうち、従来の説明で使用したものと同じ部品については同じ符号を付して説明する。また、以下の説明で使用する方向は図3を基準としており、図3の紙面手前側の方向を前方向(蓄電池集合体を搭載する車両の前側方向)という。また、紙面左右方向は車両の左右方向というものとする。
【0022】
車両用配電システム1は、図1に示すように、紙面左側に位置する駆動用モータ30と、この駆動用モータ30の右側に位置するモータコントロールユニット10と、このモータコントロールユニット10の右側に位置する蓄電池モジュール20とで構成されている。
【0023】
駆動用モータ30は、3相交流モータであり、インバータ112によって周波数を制御することで、モータ駆動軸の回転数を自由に変更できるようになっている。
【0024】
モータコントロールユニット10には、上述したインバータ112が搭載されている。このインバータ112は、駆動用モータ30と3本の交流用の動力線U、V、Wで接続されている。また、インバータ112には、2本の直流用の高圧配線105、106を介して蓄電池集合体40(詳細は後述する)が接続されている。また、モータコントロールユニット10には、高圧配線105、106を連結する態様でコンデンサ113が並列に設けられている。
【0025】
蓄電池モジュール20は、図1に示すように、車両用配電機器70と蓄電池集合体40とによって、1つのユニットとして構成されている。また、車両用配電機器70は、インバータ112側(上流側)に位置する高電圧遮断回路部121と、その下流側に位置する急速充電回路部22および普通充電回路部52とを備えており、これらの回路部121、22、52が1つのユニットとして構成されている。
【0026】
高電圧遮断回路部121は、配線105に接続されたメインリレー123aと、このメインリレー123aと並列に接続されたプリチャージリレー124とが設けられている。一方、配線106には、メインリレー123bが接続されている。これらのリレーの動作は、従来技術に記載したものと同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0027】
また、高電圧遮断回路部121には、モータコントロールユニット10と接続するためのモータコントロール用コネクタ84、84が設けられている。
【0028】
急速充電回路部22は、図1に示すように、配線105、106から分岐する配線105a、106aのそれぞれに設けられた回路保護制御部25a、25bと、この配線105a、106aの端末に設けられた急速充電用コネクタ80、80とを備えている。この急速充電用コネクタ80、80は、蓄電池集合体40を充電する際に蓄電池モジュール20と外部とを接続するものであり、例えば、高電力を充電するための電気供給スタンド(図示せず)の急速充電コネクタ126と接続される。
【0029】
回路保護制御部25a、25bは、図1に示すように、リレー26とヒューズ27とによってそれぞれ構成されている。このリレー26、26は、急速充電時にこれらのリレーをONにする一方、蓄電池集合体140の放電時にはOFFにする。また、ヒューズ27は、所定以上の大電流が回路保護制御部25a、25bに流れないようにしている。これにより、蓄電池集合体40の放電時に、急速充電コネクタ126側に大電流が逆流するのを防止している。
【0030】
普通充電回路部52は、図1に示すように、配線105、106から分岐する配線105b、106bのそれぞれに設けられた回路保護制御部55a、55bと、この配線105b、106bの端末に設けられた普通充電用コネクタ82、82とを備えている。この普通充電用コネクタ82、82は、蓄電池集合体40を充電する際に蓄電池モジュール20と外部とを接続するものであり、例えば、車載充電器114を介して、商用電源を使用して蓄電池集合体40を充電するための普通充電コネクタ115が接続される。
【0031】
回路保護制御部55a、55bは、図1に示すように、リレー26とヒューズ27とによってそれぞれ構成されている。このリレー26、26は、普通充電時にこれらのリレーをONにする一方、蓄電池集合体140の放電時にはOFFにする。また、ヒューズ27は、所定以上の大電流が回路保護制御部55a、55bに流れないようにしている。これにより、蓄電池集合体40の放電時に、車載充電器114および普通充電コネクタ126側に大電流が逆流するのを防止している。
【0032】
また、車両用配電機器70には、蓄電池集合体40に接続するための蓄電池用コネクタ86、86が設けられている。この蓄電池用コネクタ86、86を介して蓄電池集合体40が車両用配電機器70に接続されている。
【0033】
なお、図1には図示していないが、蓄電池モジュール20には、図2に示すように、サービスプラググリップ129が配線134、134を介して蓄電池集合体40に接続されている。このサービスプラググリップ129は、従来技術で説明した機能と同じであるため、その詳細は省略する。
【0034】
上述した車両用配電機器70は、図2〜図4に示すように、蓄電池集合体40の前方側(車両の前方側)に取り付けられている。また、車両用配電機器70には、図2〜図4に示すように、電極回路体保護カバー73が一体に形成されている。この電極回路体保護カバー73は、蓄電池集合体40の前方側に突出する各電極40a、40b、40c、…を蓄電池モジュール20の前側外部から覆い、外部との接触によって電極がショートするのを防止している。また、電極回路体保護カバー73は、各電極40a、40b、40c、…を直列に電気的に接続する機能を有している。なお、この電極回路体保護カバー73の前面には、ヒンジなどによって開閉可能な蓋部(図示せず)が設けられており、電極回路体保護カバー73を取り付けた後でも、この蓋部を開くことによって、各電極40a、40b、…に工具等を挿入して作業ができるようになっている。
【0035】
この電極回路体保護カバー73の前側には、図3に示すように、ユニット化された3つの回路部121、22、52(図1参照)が一体に構成されている。また、車両用配電機器70を正面(車両前側)から見て、4つのコネクタ80、82、85、86が、車両に対して前後左右の4方向の端部に配置されている。
【0036】
車両用配電機器70には、蓄電池集合体40或いは急速充電コネクタから大電流が流れることになる。そのため、車両用配電機器70内では、配線による引き回しが短い方が好ましい。そして、外部とのインターフェイスとして機能する4つのコネクタ80、82、85、86を4方向の端部に配置するには、3つの回路部121、22、52を図1に示すように配置する必要がある。詳細には、急速充電回路部22および普通充電回路部52を、高電圧遮断回路部121よりも蓄電池集合体40側に配置する。
【0037】
また、各コネクタ80、82、85、86から引き回される各配線81、83、85、87も大電流が流れることから、その配線長さはより短い方がよい。そのため、上述した各コネクタ80、82、85、86を以下のように配置している。
【0038】
急速充電用コネクタ80は、図3の左側端部(車両の右側部分)に配置されている。ここに配置しているのは、急速充電を行うための車両の急速充電口が車両右側に設けられているものが多数であり、急速充電用コネクタ80から車両の急速充電用充電口までの急速充電用配線81をより短くするためである。
【0039】
普通充電用コネクタ82は、図3の右側端部(車両の左側部分)に配置されている。ここに配置しているのは、普通充電を行うための車両の普通充電口が車両左側に設けられているものが多数であり、普通充電用コネクタ82から車両の普通充電用充電口までの普通充電用配線83をより短く構成している。
【0040】
モータコントロール用コネクタ84は、図3の下側中央端部に配置されている。蓄電池集合体40を含む蓄電池モジュール20は、車体の後側(例えば、車両後側のトランクルームの下側)に配置されることが多く、かつ、駆動用モータ30(図1参照)およびモータコントロールユニット10は、FF車で車両前部に配置されることが多い。そのため、車両用配電機器70を蓄電池集合体40の前側に取り付け、かつ、車両下側を通してモータコントロール用コネクタ84とモータコントロールユニット10とのユニット間配線85(105、106)をより短く構成している。
【0041】
蓄電池用コネクタ86は、図3の上側中央端部であって、電極回路体保護カバー73側に面するように、裏側に配置されている。蓄電池集合体40の左右両端から引き回される蓄電池用配線87、87(105、106)は、電極回路体保護カバー73の裏側を通って蓄電池用コネクタ86に接続される。これにより、蓄電池用配線87をより短く構成している。
【0042】
本発明の実施の形態に係る車両用配電機器70によれば、商用電源を用いて充電するための普通充電回路部52と、普通充電よりも短い時間での充電を可能とする急速充電回路部22と、駆動用モータ30またはインバータ112と蓄電池集合体40との間の電力の供給を接続または遮断する高電圧遮断回路部121とを1つのユニットとして構成し、このユニットを蓄電池集合体40の側部に配置しているので、各ユニットに分けて各回路部22、52、121を構成する場合と比較して、部品点数を少なくすることができるとともに、部品コストを低減することができる。また、ユニット毎にメンテナンスをする場合と比較して、メンテナンスの作業性を向上させることができる。
【0043】
また、車両用配電機器70が、蓄電池集合体40の電極40a、40b、…を保護する電極回路体保護カバー73と一体に形成されているので、電極回路体保護カバー73を車両用配電機器70として一体で構成することができ、さらに部品点数を少なくすることができる。これにより、部品コストを低減することができると共に、メンテナンス性を向上させることができる。
【0044】
また、車両用配電機器70には、幅方向の一方側に急速充電用コネクタ80、80が設けられ、幅方向の他方側に普通充電用コネクタ82、82が設けられており、幅方向の前側にモータコントロール用コネクタ84、84が設けられ、幅方向の後側に蓄電池集合体40の蓄電池用コネクタ86、86が設けられているので、各コネクタ80、82、84、86を4方向に向けた最適な位置に配置することができる。また、4方向に分けて配置することで、作業者が誤配線をしないようにすることもできる。
【0045】
さらに、普通充電回路部52および急速充電回路部22を高電圧遮断回路部121よりも蓄電池集合体40側に配置しているので、各コネクタ(急速充電用コネクタ80、普通充電用コネクタ82、モータコントロール用コネクタ84、蓄電池用コネクタ86)を4方向に向けて配線するための最適な位置に配置することができる。従来の配置(図5参照)では、普通充電回路部が高電圧遮断回路部121よりも駆動用モータ130側に配置されていた。しかしながら、各コネクタ80、82、84、86を4方向に配線可能な位置に配置し、かつ、車両用配電機器70内の配線をより短く構成するためには、普通充電回路部52を高電圧遮断回路部121より蓄電池集合体40側に配置するのがよい。
【0046】
また、普通充電回路部52および急速充電回路部22のそれぞれに回路保護制御部25a、25b、55a、55bを設けているので、蓄電池集合体40から大電流が逆流することがあったとしても、急速充電コネクタ126側および普通充電コネクタ115側に大電流が流れないようにすることができる。従来の配置(図5参照)では、蓄電池集合体40から普通充電回路部へ大電流が流れることを防止する機能は、高電圧遮断回路部121がまかなっていた。本発明では、普通充電回路部52を高電圧遮断回路部121よりも蓄電池集合体40側に配置しているので、新たに普通充電回路部52にも回路保護制御部55a、55bを設けている。これにより、上述したように、各コネクタ80、82、84、86を4方向に配線可能な位置に配置し、かつ、車両用配電機器70内の配線をより短く構成することができる。
【0047】
さらにまた、蓄電池集合体40の電極40a、40b、…を車両前側に向くように配置し、車両用配電機器70の電極回路体保護カバー73を蓄電池集合体40の前側に取り付けているので、モータコントロール用コネクタ84を蓄電池集合体40の前側に配置することができるので、車両用配電機器70からモータコントロールユニット10或いは駆動用モータ30までのユニット間配線85(105、106)をより短く構成することができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態に係る車両用配電機器について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、4つのコネクタ(急速充電用コネクタ80、普通充電用コネクタ82、モータコントロール用コネクタ84、蓄電池用コネクタ86)をコネクタで構成しているが、電気的に接続できるものであればコネクタに限定されない。すなわち、4方向に配線する位置にこの配線を接続可能なもの(例えば、接続端子)であっても構わない。
【0049】
また、本実施の形態では、車両用配電機器70を正面から見て、左側に急速充電用コネクタ80を配置し、右側に普通充電用コネクタ82を配置しているが、車両の構成に合わせて逆にすることもできる。すなわち、車両用配電機器70から車両各部への配線の引き回しが短くなるように、各コネクタ80、82の位置を入れ替えることができる。
【0050】
さらには、本実施の形態では、蓄電池モジュール20が車体後部に配置され、駆動用モータ30(モータコントロールユニット10)が車体前部に設けられている場合について説明したが、駆動用モータ30が車体後部に配置され、蓄電池モジュール20が車体前部に配置される場合であっても本発明を適用することができる。すなわち。車両用配電機器70を蓄電池集合体40の後部に取り付けることで、車両用配電機器70と駆動用モータ30(モータコントロールユニット10)までの配線の長さをより短く構成することができる。
【0051】
さらにまた、本実施の形態では、複数の蓄電池が集合した蓄電池集合体40としたが、蓄電池単体で構成したものであっても構わない。
【符号の説明】
【0052】
1 車両用配電システム
10 モータコントロールユニット
20 蓄電池モジュール
22 急速充電回路部
25a、25b 回路保護制御部
26 リレー
27 ヒューズ
40 蓄電池集合体
52 普通充電回路部
55a、55b 回路保護制御部
56 リレー
57 ヒューズ
70 車両用配電機器
72 配線
73 電極回路体保護カバー
80 急速充電用コネクタ(急速充電用接続端子)
81 急速充電用配線
82 普通充電用コネクタ(普通充電用接続端子)
83 普通充電用配線
84 モータコントロール用コネクタ(モータコントロールユニット用接続端子)
85 ユニット間配線
86 蓄電池用コネクタ(電極用接続端子)
87 蓄電池用配線
100 配電システム
105、106 配線
110 モータコントロールユニット
111 普通充電回路部
112 インバータ
113 コンデンサ
114 車載充電器
115 普通充電コネクタ
120、150、170 蓄電池モジュールユニット
121 高電圧遮断回路部
122 急速充電回路部
123a、123b メインリレー
124 プリチャージリレー
125a、125b 急速充電リレー
126 急速充電コネクタ
127 配電機器
129 サービスプラググリップ
130 駆動用モータ
140 蓄電池集合体
157 配電機器
160 蓄電池集合体
171 蓄電池集合体
171a 電極
172 電極保護カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される駆動用モータと蓄電池との間に電気的に接続され、前記蓄電池の充放電時の電流を遮断または接続する車両用配電機器であって、
商用電源を用いて充電するための普通充電回路部と、普通充電よりも短い時間での充電を可能とする急速充電回路部と、前記駆動用モータと前記蓄電池との間の電力の供給を接続または遮断する高電圧遮断回路部とを備え、前記普通充電回路部および前記急速充電回路部を前記高電圧遮断回路部よりも前記蓄電池側に配置したことを特徴とする車両用配電機器。
【請求項2】
前記普通充電回路部と、前記急速充電回路部と、前記高電圧遮断回路部とを1つのユニットとして構成し、このユニットを前記蓄電池の側部に配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用配電機器。
【請求項3】
前記ユニットが、前記蓄電池の電極を保護する電極回路体保護カバーと一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用配電機器。
【請求項4】
前記ユニットには、幅方向の一方側に急速充電用接続端子が設けられ、幅方向の他方側に普通充電用接続端子が設けられており、幅方向の前側にモータコントロールユニット用接続端子が設けられ、幅方向の後側に前記蓄電池の電極用接続端子が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の車両用配電機器。
【請求項5】
前記普通充電回路部および前記急速充電回路部のそれぞれに回路保護制御部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の車両用配電機器。
【請求項6】
前記蓄電池の電極を車両前側に向くように配置し、前記ユニットまたは前記ユニットと一体の電極回路体保護カバーを前記蓄電池の前側に取り付けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の車両用配電機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−183849(P2012−183849A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46312(P2011−46312)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】