説明

車両用障害物検知装置

【課題】分離や合体などの誤認識が生じにくい車両用障害物検知装置を提供する。
【解決手段】レーダ装置からスキャン角度毎に供給される検出強度変化データに基づいて、送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を決定する(S10)。この確率分布は、ピークを最高確率とするが、ピークの前後に最高確率から漸減する範囲を有している。そのため、最高確率位置と実際の障害物までの距離との間に誤差があったとしても、実際に障害物が存在する位置の確率がゼロとなる可能性は低くなり、完全な誤検出が減少する。従って、誤検出によって生じる分離・合体などの誤認識が生じにくくなる。さらに、その確率分布に基づいて第1存在確率関係を作成し(S30)、その第1存在確率関係と第2存在確率関係とを合成して、最新の合成存在確率関係を作成する(S60)。これを用いて物体認識を行うことにより、さらに誤認識を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体センサを用いて障害物を検知する車両用障害物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用障害物検知装置として、レーダ装置を用いる形式の障害物検知装置が広く知られている(たとえば、特許文献1)。この形式の障害物検知装置は、所定の掃引周期で、レーザ光やミリ波などの送信波を車両周囲の所定の掃引角度範囲に渡って照射し、その送信波の反射波が検出されたか否かによって障害物の有無を検知している。また、送信波を照射してから反射波が検出されるまので往復時間から障害物までの距離を算出している。この装置は、障害物として先行車両を検出して、先行車両との間の距離に基づいて警報を発生する装置や、先行車両と所定の車間距離を保持するように車速を制御する装置などに利用されている。
【特許文献1】特開平11−38141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の装置では、照射角を順次変化させつつ、送信波としてのレーザ光を掃引照射し、照射角毎に反射波が検出されるまでの時間から障害物までの距離として1つの値(=r)を決定している。しかしながら、レーダ装置には、当然に、種々の誤差があるため、決定された障害物までの距離rが実際の障害物までの距離とは異なる場合もある。すなわち、決定された障害物までの距離rには誤差がある。
【0004】
特許文献1の装置では、1つの送信波毎に障害物を点として認識しており、認識した点が近接するものどうしを一体化することによって1つの障害物がどの範囲にあるかを決定しているが、1つ1つの点が誤差を持っているので、場合よっては、実際には異なる物体であるのに1つの物体として認識してしまったり(これを合体という)、逆に、1つの物体であるのに2つの物体として認識してしまったりすることがある(これを分離という)。
【0005】
また、物体センサとして、レーダ装置ではなく、ステレオカメラを備えたものなど、レーダ装置以外のものを用いることも考えられるが、センサには不可避的に検出誤差があるので、レーダ装置以外の物体センサを用いたとしても、分離や合体などの誤認識が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、分離や合体などの誤認識が生じにくい車両用障害物検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、車両外部から得られる信号に基づいて車両外部の所定の検出範囲における物体の有無およびその物体の位置を検出する物体センサを備え、その物体センサからの信号に基づいて所定の検出周期で車両周辺の障害物を検知する車両用障害物検知装置であって、前記物体センサからの信号に基づいて、物体センサからその物体センサによって検出された物体へ向かう検出方向における障害物の存在確率分布を、その物体センサによって物体が検出された位置最高確率とし、前記検出方向において物体が検出された位置の前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する確率分布決定手段と、その確率分布決定手段によって、前記検出範囲の全範囲に渡って決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1の存在確率を表す第1存在確率関係を作成する第1関係作成手段と、その第1関係作成手段によって作成された最新の第1存在確率関係と、その最新の第1存在確率関係と同じ時点の存在確率を過去の情報に基づいて推定した第2存在確率関係とを合成して、合成存在確率関係を作成する合成手段と、前回の検出周期において前記合成手段によって作成された前回合成存在確率関係と、前々回の検出周期において前記合成手段によって作成された前々回合成存在確率関係との比較に基づいて、前々回から前回までの間における前記障害物の推定移動速度を算出する速度算出手段と、その速度算出手段によって算出された推定移動速度と、前回の掃引周期において前記合成手段によって作成された前回合成存在確率関係とに基づいて、前記第2存在確率関係を作成する第2関係作成手段とを含むことを特徴とする。
【0008】
この請求項1の発明によれば、確率分布決定手段によって、物体センサからその物体センサによって検出された物体に向かう方向における障害物の存在確率分布が決定される。この確率分布は、物体が検出された位置を最高確率とするが、その位置の前後に最高確率から漸減する範囲を有するように決定している。そのため、確率分布における最高確率位置と実際の障害物までの距離との間に誤差があったとしても、実際に障害物が存在する位置の確率がゼロとなる可能性は低い。すなわち、完全な誤検出が減少する。そのため、誤検出によって生じる分離・合体などの誤認識が生じにくくなる。第1関係作成手段では、上記確率分布に基づいて第1存在確率関係が作成されるが、さらに、合成手段によって、その第1存在確率関係と、その第1存在確率関係と同じ時点の存在確率が前回の合成存在確率関係に基づいて推定された第2存在確率関係とが合成されて、最新の合成存在確率関係が作成される。この合成存在確率関係を用いることにより、第1存在確率関係だけを用いて障害物の検知を行うよりも、さらに誤認識が減少する。
【0009】
また、前記目的を達成するための請求項2記載の発明は、車両外部から得られる信号に基づいて車両外部の所定の検出範囲における物体の有無およびその物体の位置を検出する物体センサを備え、その物体センサからの信号に基づいて所定の検出周期で車両周辺の障害物を検知する車両用障害物検知装置であって、前記物体センサとして、互いに検出形式の異なる第1物体センサと第2物体センサとを備え、前記第1物体センサからの信号に基づいて、第1物体センサからその第1物体センサによって検出された物体へ向かう第1検出方向における障害物の存在確率分布を、その第1物体センサによって物体が検出された位置を最高確率とし、前記第1検出方向において物体が検出された位置の前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第1確率分布決定手段と、前記第2物体センサからの信号に基づいて、第2物体センサからその第2物体センサによって検出された物体へ向かう第2検出方向における障害物の存在確率分布を、その第2物体センサによって物体が検出された位置を最高確率とし、前記第2検出方向において物体が検出された位置の前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第2確率分布決定手段と、前記検出範囲の全範囲に渡って前記第1確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1の存在確率を表す第1存在確率関係を作成するとともに、前記検出範囲の全範囲に渡って前記第2確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第2の存在確率を表す第2存在確率関係を作成する確率関係作成手段と、その確率関係作成手段によって作成された第1の存在確率関係および第2の存在確率関係を合成して、合成存在確率関係を作成する合成手段とを含むことを特徴とする。
【0010】
この請求項2の発明によれば、第1および第2確率分布決定手段によって、第1物体センサおよび第2物体センサからそれらによって検出された物体へ向かう第1および第2検出方向における障害物の存在確率分布が決定される。この確率分布は、物体が検出された位置を最高確率とするが、その位置の前後に最高確率から漸減する範囲を有するように決定しているので、前述したように、実際に障害物が存在する位置の確率がゼロとなる可能性は低く、完全な誤検出が減少する。そのため、誤検出によって生じる分離・合体などの誤認識が生じにくくなる。そして、確率関係作成手段では、第1確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて第1存在確率関係が作成されるとともに、第2確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて第2存在確率関係が作成される。これら2つの存在確率関係は、互いに検出形式の異なる物体センサを用いて作成されたものであり、検出形式が異なると検出しやすい物体が異なる。そのため、合成手段によって、第1存在確率関係と第2存在確率関係とが合成されて作成される合成存在確率関係は、第1および第2存在確率関係よりも実際に障害物が存在している場所における存在確率がゼロとなりにくい。従って、この合成存在確率関係を用いることにより、第1および第2存在確率関係の一方だけを用いて障害物の検知を行うよりも、さらに誤認識が減少する。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記物体センサとしてレーダ装置を備えたものである。すなわち、請求項3記載の発明は、所定の掃引周期で、車両周囲の所定の掃引角度範囲に渡って送信波を照射し、且つ、反射波を検出するレーダ装置を備え、そのレーダ装置による反射波の検出結果に基づいて車両周辺の障害物を検知する車両用障害物検知装置であって、前記送信波を照射してからの経過時間と反射波の検出信号強度との間の関係に基づいて、前記送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とし、そのピークの前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する確率分布決定手段と、前記掃引角度範囲に渡って照射された各送信波に対して前記確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1の存在確率を表す第1存在確率関係を作成する第1関係作成手段と、その第1関係作成手段によって作成された最新の第1存在確率関係と、その最新の第1存在確率関係と同じ時点の存在確率を過去の情報に基づいて推定した第2存在確率関係とを合成して、合成存在確率関係を作成する合成手段と、前回の掃引周期において前記合成手段によって作成された前回合成存在確率関係と、前々回の掃引周期において前記合成手段によって作成された前々回合成存在確率関係との比較に基づいて、前々回から前回までの間における前記障害物の推定移動速度を算出する速度算出手段と、その速度算出手段によって算出された推定移動速度と、前回の掃引周期において前記合成手段によって作成された前回合成存在確率関係とに基づいて、前記第2存在確率関係を作成する第2関係作成手段とを含むことを特徴とする。
【0012】
この請求項3の発明によれば、確率分布決定手段によって、各送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布が決定される。この確率分布は、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とするが、そのピークの前後に最高確率から漸減する範囲を有するように決定している。そのため、確率分布における最高確率位置と実際の障害物までの距離との間に誤差があったとしても、実際に障害物が存在する位置の確率がゼロとなる可能性は低い。すなわち、完全な誤検出が減少する。そのため、誤検出によって生じる分離・合体などの誤認識が生じにくくなる。そして、請求項1記載の発明と同様に、確率分布に基づいて作成した第1存在確率関係と、その第1存在確率関係と同じ時点の存在確率が前回の合成存在確率関係に基づいて推定された第2存在確率関係とを合成して最新の合成存在確率関係を作成している。この合成存在確率関係を用いて障害物の検知を行うことにより、さらに誤認識が減少する。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項2の第1物体センサおよび第2物体センサとして、互いに送信波の種類が異なる2つのレーダ装置を備えたものである。すなわち、請求項4記載の発明は、所定の掃引周期で、車両周囲の所定の掃引角度範囲に渡って送信波を照射し、且つ、反射波を検出するレーダ装置を備え、そのレーダ装置による反射波の検出結果に基づいて車両周辺の障害物を検知する車両用障害物検知装置であって、前記レーダ装置として、送信波としてレーザ光を照射するレーザレーダ装置と、送信波として超音波を照射する超音波レーダ装置とを備え、前記レーザレーダ装置から送信波を照射してからの経過時間と反射波の検出信号強度との間の関係に基づいて、その送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とし、そのピークの前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第1確率分布決定手段と、前記超音波レーダ装置から送信波を照射してからの経過時間と反射波の検出信号強度との間の関係に基づいて、その送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とし、そのピークの前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第2確率分布決定手段と、前記掃引角度範囲に渡って照射された各レーザ光に対して前記第1確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1の存在確率を表す第1存在確率関係を作成するとともに、前記掃引角度範囲に渡って照射された各超音波に対して前記第2確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第2の存在確率を表す第2存在確率関係を作成する確率関係作成手段と、その確率関係作成手段によって作成された第1の存在確率関係および第2の存在確率関係を合成して、合成存在確率関係を作成する合成手段とを含むことを特徴とする。
【0014】
この請求項4の発明によれば、第1および第2確率分布決定手段によって、各送信波(レーザ光または超音波)の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布が決定される。この確率分布は、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とするが、そのピークの前後に最高確率から漸減する範囲を有するように決定しているので、前述したように、実際に障害物が存在する位置の確率がゼロとなる可能性は低く、完全な誤検出が減少する。そのため、誤検出によって生じる分離・合体などの誤認識が生じにくくなる。そして、確率関係作成手段では、第1確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて第1存在確率関係が作成されるとともに、第2確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて第2存在確率関係が作成される。これら2つの存在確率関係は、互いに異なる種類のレーダ装置を用いて作成されたものであり、レーダ装置は種類によって検出しやすい障害物が異なる。そのため、合成手段によって、第1存在確率関係と第2存在確率関係とが合成されて作成される合成存在確率関係は、第1および第2存在確率関係よりも実際に障害物が存在している場所における存在確率がゼロとなりにくい。従って、この合成存在確率関係を用いることにより、第1および第2存在確率関係の一方だけを用いて障害物の検知を行うよりも、さらに誤認識が減少する。
【0015】
ここで、請求項3の装置においても、請求項4のように2種類の異なるレーダ装置を用いることが好ましい。請求項5記載の発明は、請求項3の装置において、2種類の異なるレーダ装置を用い、請求項3における第1存在確率関係として、請求項4の合成存在確率関係を用いたものである。
【0016】
すなわち、請求項5記載の発明は、請求項3の車両用障害物検知装置において、前記レーダ装置として、送信波としてレーザ光を照射するレーザレーダ装置と、送信波として超音波を照射する超音波レーダ装置とを備え、
前記確率分布決定手段として、前記レーザレーダ装置から送信波を照射してからの経過時間と反射波の検出信号強度との間の関係に基づいて、その送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とし、そのピークの前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第1確率分布決定手段と、前記超音波レーダ装置から送信波を照射してからの経過時間と反射波の検出信号強度との間の関係に基づいて、その送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とし、そのピークの前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第2確率分布決定手段とを備え、
前記第1関係作成手段は、前記掃引角度範囲に渡って照射された各レーザ光に対して前記第1確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1−1存在確率関係を作成するとともに、前記掃引角度範囲に渡って照射された各超音波に対して前記第2確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1−2存在確率関係を作成し、それら第1−1存在確率関係と第1−2存在確率関係とを合成して第1存在確率関係を作成するものであることを特徴とする。
【0017】
この請求項5記載の発明によれば、2種類のレーダ装置を用いてそれぞれ作成した第1−1存在確率関係と第1−2存在確率関係とを合成して第1存在確率関係を作成しているので、第1存在確率関係が表す障害物の存在確率の精度が向上する。また、第2存在確率関係も、この第1存在確率関係に基づいて作成された合成存在確率関係に基いており、それら第1、第2存在確率関係が合成手段によって合成されることによって合成存在確率関係が作成される。従って、この合成存在確率関係を用いて障害物検知を行うことにより、一層、誤認識を減少させることができる。
【0018】
また、上記存在確率関係は、請求項6記載のように、絶対座標系で表されていることが好ましい。絶対座標系で表されている場合、障害物の座標は車両の移動によって影響を受けない。そのため、演算処理が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の車両用障害物検知装置としての機能を備えた車両制御装置1の構成を示すブロック図である。
【0020】
車両制御装置1はコンピュータ4を中心に構成されている。コンピュータ4はマイクロコンピュータを主な構成として入出力インターフェース(I/O)および各種の駆動回路や検出回路を備えている。これらのハード構成は一般的なものであるので詳細な説明は省略する。
【0021】
コンピュータ4には、物体センサとしてのレーザレーダ装置5、車速センサ7、ブレーキスイッチ9、スロットル開度センサ11から各々所定の検出データが入力されている。またコンピュータ4は、警報音発生器13、距離表示器15、センサ異常表示器17、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21および自動変速機制御器23に所定の駆動信号を出力している。
【0022】
更にコンピュータ4は、警報音量を設定する警報音量設定器24、後述の警報判定処理における感度を設定する警報感度設定器25、クルーズコントロールスイッチ26、図示しないステアリングホイールの操作量を検出するステアリングセンサ27及びヨーレートセンサ28を備えている。またコンピュータ4は、電源スイッチ29を備え、その「オン」により、所定の処理を開始する。
【0023】
ここで、レーザレーダ装置5は、送受信機31とその送受信機31を制御する制御部33とを備えている。その送受信機31は、制御部33によって制御されることにより、所定の光軸(中心軸)を中心にして車両前方へレーザ光を車幅方向の所定角度の範囲で不連続に掃引照射(スキャン)して出力する。また、送受信機31は、上記送信波の反射波を検出する。制御部33は、送信波を照射してからの経過時間に対する反射波の検出信号強度の変化(以下、これを検出強度変化データという)を一時的に記憶する機能を備えており、また、この検出強度変化データをコンピュータ4へ出力する。なお、出射するレーザビームの形状は略円形、楕円形、長方形等、どのような形状でもよい。なお、上記関係はスキャン角度(走査方向)θとともに一時的に記憶される。
【0024】
コンピュータ4は、このように構成されていることにより、障害物が所定の警報領域に所定時間存在した場合等に警報する警報判定処理を実施している。障害物としては、自車の前方を走行する前車やまたは停止している前車等がある。また、コンピュータ4は、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21および自動変速機制御器23に駆動信号を出力することにより、前車の状況に合わせて車速を制御する、いわゆるクルーズ制御も同時に実施している。
【0025】
図2はコンピュータ4の制御ブロック図を示している。レーザレーダ装置5の制御部33から出力されたデータは、物体認識部41へ供給される。
【0026】
車速演算部42、ヨーレート演算部43、操舵角演算部44は、それぞれ、車速センサ7からの車速信号、ヨーレートセンサ28からのヨーレート信号、ステアリングセンサ27からの舵角信号に基づいて、車速、ヨーレート、操舵角を逐次算出する。これらの演算部42、43、44における演算結果は、カーブ半径算出部45および物体認識部41に供給される。
【0027】
カーブ半径算出部45では、車速演算部42で演算された車速と、ヨーレート演算部43で演算されたヨーレートと、操舵角演算部44で演算された操舵角とに基づいて、カーブ半径(曲率半径)Rを算出する。
【0028】
物体認識部41では、レーザレーダ装置5からのデータを、車速演算部42で演算された車速、ヨーレート演算部43で演算されたヨーレート、および操舵角演算部44で演算された操舵角を用いて絶対座標系に変換し、その絶対座標系に変換したデータに基づいて、車両前方の物体を認識する。さらに、その物体の種別、大きさ、速度等を決定する。この物体認識部41の処理は後に詳述する。
【0029】
センサ異常検出部46は、物体認識部41において絶対座標系に変換されたデータが異常であるかどうかを検出し、異常である場合には、その旨をセンサ異常表示器17に表示する。
【0030】
先行車判定部47は、カーブ半径算出部45で算出されたカーブ半径、および、物体認識部41で認識された物体の種別、大きさ、速度等に基づいて、物体認識部41で認識された物体のうちのどれが先行車であるかを判定する。そして、その先行車までの距離Zおよび相対速度Vzを算出する。
【0031】
車間制御部および警報判定部48は、先行車判定部47で算出された先行車との距離Zおよび相対速度Vz、さらに、自車速Vn、クルーズコントロールスイッチ26の設定状態およびブレーキスイッチ9の踏み込み状態に基づいて、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21および自動変速機制御器23に、先行車との車間距離を調整するための信号を出力するとともに、距離表示器15に対して必要な表示信号を出力して、状況をドライバーに告知する。
【0032】
また、車間制御部および警報判定部48は、自車速、前車相対速度、前車加速度、物体位置、物体幅、物体種別、ブレーキスイッチ9の出力、スロットル開度センサ11からの開度および警報感度設定器25による感度設定値に基づいて、警報判定ならば警報するか否かを判定し、クルーズ判定ならば車速制御の内容を決定する。その結果を、警報が必要ならば、警報音量設定器24の設定内容に基づいて定まる音量で警報音発生器13から警報音を出力する。また、クルーズ判定ならば、自動変速機制御器23、ブレーキ駆動器19およびスロットル駆動器21に制御信号を出力して、必要な制御を実施する。
【0033】
次に、物体認識部41における物体認識処理の内容を説明する。図3は、その物体認識処理の内容を示すフローチャートである。この図3に示す処理は、レーザ光の1スキャン毎に実行する。
【0034】
まず、確率分布決定手段に相当するステップS10では、レーザレーダ装置5からスキャン角度θ毎に供給される検出強度変化データを、その検出強度変化データ中のピーク位置を障害物の最高確率とし、そのピーク前後の存在確率が最高確率から漸減する範囲を有する確率分布に変換する。また、検出強度変化データは、送信波を照射してからの経過時間に対する検出信号強度の変化を表したものであるが、この確率分布は、経過時間を、それと一対一に対応する距離に変換する。この距離は、ステップS10の段階では、レーザレーダ装置5の送受信機31の位置を原点とする相対座標系である。すなわち、ステップS10における確率分布は、レーザレーダ装置5の送受信機5からの距離に対する障害物の存在確率を表した関係となる。
【0035】
図4(A)は、レーザレーダ装置5から供給される検出強度変化データの一例を示す図であり、図4(B)は図4(A)をステップS10で処理して得られる確率分布を示す図である。この図4に基づいて確率分布をさらに説明する。
【0036】
上記確率分布において、ピークは、予め100%近くの数値に設定された所定確率(たとえば90%)とする。また、確率が漸減する範囲は、予め実験に基づいて設定されており、たとえば、標準偏差σ乃至その2〜3倍程度とされる。なお、図4(B)では、ピークからその前後に確率を一直線的に減少させているが、曲線状にまたは折れ線的に確率を減少させてもよい。
【0037】
さらに、ピークよりも後ろ側(距離が遠い側)の確率は、ピークから漸減していった確率が50%となった距離から以降をその50%一定とする。これは、ピーク(障害物)によって送信波が反射されるために、そのピークの後ろ側に別の障害物があるかどうかを検知することができないので、障害物がある可能性と障害物がない可能性とを同じにするのである。また、ピークよりも前側の確率は、確率が予め設定された前側漸減下限確率(ここでは10%)となるまでピークから直線的に減少させる。その距離から原点までは、その距離と原点とを直線的に結ぶように確率を直線的に変化させる。従って、ピークの前も確率がゼロとなる範囲はないことになる。このようにするのは、硝子板など、レーザ光が透過してしまう障害物がある可能性を考慮したものである。なお、ピークの後ろ側と同様に、ピークの前側も、10%となった距離よりも原点側をその10%一定としてもよい。また、ピークの後ろ側の一定値も50%である必要はなく、30%程度でもよいが、この値は前側漸減下限確率よりも高いことが好ましい。
【0038】
続くステップS20では、ステップS10で得た確率分布を絶対座標系に変換する。具体的には、車速演算部42、ヨーレート演算部43、操舵角演算部44によって逐次演算される車速、ヨーレート、操舵角に基づいて車両の絶対座標系における位置を逐次更新して、前回の処理時からの車両の移動距離および移動方向を演算する。そして、その演算した情報に基づいてステップS10で得た確率分布の座標系を絶対座標系に変換する。なお、ステップS10ではスキャン角度θ毎に確率分布が得られ、ステップS20では、ステップS10で得られた全ての確率分布を絶対座標系に変換する。
【0039】
続くステップS30は第1関係作成手段に相当する。このステップS30では、ステップS20で得られた全ての確率分布を合成して、水平面座標における障害物の存在確率を表す第1存在確率関係を作成する。図5は、このステップS30で作成される第1存在確率関係の一例を示す図である。なお、ステップS20で得られた全ての確率分布を合成して得られる第1存在確率関係は、自車位置を中心とする扇形状の平面となるが、図5は、その一部分を切り取った図である。この図5に示すように一部分を切り取って用いてもよい。
【0040】
図5に示す例では、横位置が2.6m付近であって縦位置が2m付近の位置と、横位置が6.5m付近であって縦位置が4m付近に、それぞれ存在確率のピーク領域P1、P2がある。このピーク領域P1、P2は、図4(B)にて説明した確率が漸減する領域である。そして、そのピーク領域P1、P2と自車位置Cとを結んで構成される手前領域R1、R2は、存在確率が10%から0%まで直線的に減少している領域である。スキャン角度θよりも外側の範囲は、送信波をスキャンしていないために、障害物がある確率と障害物がない確率とを同じ値、すなわち50%にしている。また、スキャン角度θの範囲内においても、前述の領域以外は、全て存在確率が50%となっている。これらの領域は、障害物の後ろであるために、その障害物とは別の障害物があるかどうかを判別することができない領域、または、送信波を照射したが反射波が検出されなかったために、その送信波の照射方向に障害物が存在するかどうかを判別できない領域である。
【0041】
続くステップS40は速度算出手段に相当する。このステップS40では、繰り返し実行するこの図3の物体認識処理において、前回実行したステップS60において作成した合成存在確率関係と前々回実行したステップS60で作成した合成存在確率関係とを用いて、画像処理分野においてオプティカルフロー法と呼ばれている公知の方法と同様の方法によって、推定移動速度を算出する。また、この推定移動速度の算出は、合成存在確率関係における平面座標内の全範囲にわたって、所定距離間隔(たとえば10cm間隔)で行う。
【0042】
具体的には、合成存在確率関係の平面座標におけるある位置の推定移動速度を算出するには、前々回の合成存在確率関係でのその位置の確率を確認し、その確認した確率と同じ(または類似する)確率が前回の合成存在確率関係においてどの位置に存在するかによって、その位置にある物体が前々回から前回にかけてどれだけ移動したかを決定する。そして、そのどれだけ移動したかということと、前々回ステップS60を実行してから前回ステップS60を実行するまでの時間とに基づいて、推定移動速度を算出する。
【0043】
図6は、上記ステップS40において算出した全ての推定移動速度を平面的に例示した図であり、推定移動速度をベクトル表示している。図6に示した例は、図5において2つのピーク領域P1、P2(障害物が存在する確率が高い領域)が形成されている領域に長さを持ったベクトルV1、V2が見られる。このことから、図5のピーク領域P1、P2に存在する物体は移動していると予想できる。また、図6において、図5のピーク領域P1、P2に対応する領域以外は、すべて推定移動速度が点(すなわち速度がゼロ)となっており、物体の移動はないことが分かる。
【0044】
続くステップS50は第2関係作成手段に相当し、前回のステップS60で作成した合成存在確率関係における水平面座標に対応する存在確率を、それぞれ、上記ステップS40で算出した推定移動速度だけ移動させることにより、第2存在確率関係を作成する。
【0045】
なお、このようにして、同じまたは類似した確率が、前々回から前回にかけてどこに移動したかに基づいて推定移動速度を算出する場合、移動先が複数の移動元から発生する場合も生じる。この場合には、移動元の候補のうち一番高い確率のものを用いることにする。また、どこからも移動がなく、しかも、元の確率が別の座標へ移動してしまい、そのままではその座標の確率が決定できないこともある。この場合には、その座標にはすでに物体が存在しない確率が高いが、物体が存在する可能性を完全に否定はできないので、その座標の存在確率を、比較的低い確率、たとえば、10%に設定する。
【0046】
図7は、ステップS50で作成される第2存在確率関係の一例を示す図である。この第2存在確率関係は、過去(前々回および前回)の合成存在確率関係から今回の存在確率関係を予測したものということができ、図7では、図6において比較的大きな移動を示すベクトルV2が算出されていることに対応して、ピーク領域P2が移動すると予想されている。また、図7では、ピーク領域P1、P2から横方向において自車から遠ざかる方向に向かうほど、存在確率が上昇する三角形の領域が形成されている。
【0047】
続くステップS60は合成手段に相当し、ステップS30で作成した第1存在確率関係と、ステップS50で作成した第2存在確率関係とを掛け合わせて、合成存在確率関係を作成する。図8は、ステップS60で作成される合成存在関係の一例を示す図である。この図8は、図5の第1存在確率関係と図7の第2存在確率関係とを、同じ座標の存在確率同士を掛け合わせることによって得られるものである。なお、存在確率の掛け合わせを繰り返していくと、存在確率の値は掛け合わせの度に低下していく。そこで、掛け合わせの度に正規化を行ってもよい。ただし、本実施形態では、次のステップS70の物体検出処理において、存在確率を相対評価しており、存在確率の絶対値が物体検出精度に影響を与えないので、正規化は行わない。
【0048】
そのステップS70では、ステップS60で算出した合成存在確率関係において、最高存在確率を決定し、その最高確率を基準として定まる所定確率(たとえば、最高確率の70%)以上の座標を、物体が存在する座標として決定する。さらに、その決定した座標に基づいて物体の大きさ・形状を決定する。また、その大きさ・形状から物体の種別を認識するとともに、同じ物体がどの程度移動したかに基づいて物体の移動速度も決定する。そして、これらの情報を先行車判定部47へ出力する。
【0049】
以上、説明した本実施形態によれば、図3のステップS10で、レーザレーダ装置5からスキャン角度θ毎に供給される検出強度変化データ(図4(A))に基づいて、送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布(図4(B))が決定される。この確率分布は、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とするが、そのピークの前後に最高確率から漸減する範囲を有している。そのため、確率分布における最高確率位置と実際の障害物までの距離との間に誤差があったとしても、実際に障害物が存在する位置の確率がゼロとなる可能性は低くなり、完全な誤検出が減少する。従って、誤検出によって生じる分離・合体などの誤認識が生じにくくなる。
【0050】
そして、ステップS30において、上記確率分布に基づいて第1存在確率関係(図5)が作成されるが、さらに、ステップS60において、上記第1存在確率関係と、その第1存在確率関係と同じ時点の存在確率が前回の合成存在確率関係に基づいて推定された第2存在確率関係(図7)とが合成されて、最新の合成存在確率関係(図8)が作成される。この合成存在確率関係を用いて物体認識を行っているので、第1存在確率関係だけを用いて障害物の検知を行うよりも、さらに誤認識を減少させることができる。
【0051】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下の説明において前述の第1実施形態と同一の構成を有する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
図9は、第2実施形態の車両制御装置50の構成を示すブロック図である。この車両制御装置50は、第1実施形態の車両制御装置1、超音波レーダ装置52を加えた構成を有している。この超音波レーダ装置52は、図示しない内部に、レーザレーダ装置5と同様に、送受信機および制御部を備えている。そして、レーザレーダ装置5と同様に、スキャン角度θで送信波(超音波)を車両前方に掃引照射して、その反射波を検出する。また、検出した反射波は、レーザレーダ装置5と同様に、検出強度変化データとしてコンピュータ4に出力する。
【0053】
図10は、第2実施形態におけるコンピュータ4の物体認識部41の処理内容を示すフローチャートである。図10において、図3と同じ番号が付されているステップは図3と同じ処理である。従って、図10に示す処理は、ステップS15、25、32、34が図3と異なる処理である。
【0054】
ステップS15は、超音波レーダ装置52からスキャン角度θ毎に供給される検出強度変化データを、ステップS10と同様にして、確率分布に変換して第2確率分布とする。このステップS15が第2確率分布決定手段に相当する。また、このステップS15で得られる確率分布と区別するために、第2実施形態では、ステップS10において得られるものを第1確率分布という。なお、第2実施形態では、ステップS10が第1確率分布決定手段に相当する。
【0055】
そして、続くステップS25では、ステップS10、15でそれぞれ決定した第1、第2確率分布を、図3のステップS20と同様にして、絶対座標に変換する。
【0056】
ステップS32は、ステップS15で決定した第2確率分布をステップS30と同様にして、ステップS25において絶対座標に変換された全ての第2確率分布を合成して、水平面座標における障害物の存在確率を表す存在確率関係を作成する。この存在確率関係を第1−2存在確率関係といい、これと区別するために、第2実施形態では、ステップS30で作成したものを第1−1存在確率関係という。
【0057】
そして、ステップS34では、ステップS30で作成した第1−1存在確率関係とステップS32で作成した第1−2存在確率関係とを、図3のステップS60と同じようにして合成して、第1存在確率関係とする。そして、ステップS40へと進む。ステップS40以下の処理は図3と同様である。なお、ステップS30乃至34が第1関係作成手段に相当する。
【0058】
この第2実施形態によれば、2種類のレーダ装置5、52を用いてそれぞれ作成した第1−1存在確率関係と第1−2存在確率関係とを合成して第1存在確率関係を作成している(ステップS34)。そのため、第1存在確率関係が表す障害物の存在確率の精度が向上する。また、第2存在確率関係も、この第1存在確率関係に基づいて作成された合成存在確率関係に基いており(ステップS50)、それら第1、第2存在確率関係が、ステップS60において合成されることによって、合成存在確率関係が作成される。この合成存在確率関係を用いて障害物検知が行われるので、一層、誤認識を減少させることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0060】
たとえば、前述の実施形態では、物体センサとしてレーザレーダ装置5、超音波レーダ装置52を用いていたが、ミリ波レーダ装置などの他の形式のレーダ装置を用いてもよい。また、ステレオカメラによって車両外部の所定方向を撮像して画像解析によって物体の有無および位置を検出する形式の物体センサを用いてもよい。
【0061】
また、前述の第2実施形態において作成された第1存在確率関係をそのまま用いて障害物の検知を行ってもよい。
【0062】
また、前述の実施形態では、送信波を一次元的に掃引照射していたが、前述の実施形態の照射範囲を1ラインとして、そのラインの上下方向にも同様に送信波を掃引照射することによって、掃引照射範囲を二次元としてもよい。前述の実施形態のように、一次元的に送信波を照射する場合、水平面内において、すなわち二次元的に、物体を認識できるので、掃引照射範囲を二次元とする場合には、三次元的に物体を認識することができる。
【0063】
また、前述の実施形態では、送信波を車両前方に向けて照射していたが、照射方向は車両後方であってもよい。
【0064】
また、前述の実施形態では、車速センサ7、ヨーレートセンサ28、ステアリングセンサ27を用いて車両の位置を検出していたが、GPS受信機を設けて、これらのセンサからの情報に加えて、GPS受信機からの情報を用いてもよい。または、それらのセンサの一部または全部に代えて、GPS受信機からの情報を用いてもよい。また、自車が走行していないときに本発明装置を用いることも、もちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の車両用障害物検知装置としての機能を備えた車両制御装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】コンピュータ4の制御ブロック図である。
【図3】図2の物体認識部41における物体認識処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】(A)は、レーザレーダ装置5から供給される検出強度変化データの一例を示す図であり、(B)は、(A)をステップS10で処理して得られる確率分布を示す図である。
【図5】図3のステップS30で作成される第1存在確率関係の一例を示す図である。
【図6】図3のステップS40において算出した全ての推定移動速度を平面的に例示した図である。
【図7】図3のステップS50で作成される第2存在確率関係の一例を示す図である。
【図8】図3のステップS60で作成される合成存在関係の一例を示す図である。
【図9】第2実施形態の車両制御装置50の構成を示すブロック図である。
【図10】第2実施形態におけるコンピュータ4の物体認識部41の処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1:車両制御装置(車両用障害物検知装置)
5:レーザレーダ装置(物体センサ)
50:車両制御装置(車両用障害物検知装置)
52:超音波レーダ装置(物体センサ)
S10:確率分布決定手段(第1確率分布決定手段)
S15:第2確率分布決定手段
S30:第1関係作成手段
S30乃至S34:第1関係作成手段
S40:速度算出手段
S50:第2関係作成手段
S60:合成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部から得られる信号に基づいて車両外部の所定の検出範囲における物体の有無およびその物体の位置を検出する物体センサを備え、その物体センサからの信号に基づいて所定の検出周期で車両周辺の障害物を検知する車両用障害物検知装置であって、
前記物体センサからの信号に基づいて、物体センサからその物体センサによって検出された物体へ向かう検出方向における障害物の存在確率分布を、その物体センサによって物体が検出された位置最高確率とし、前記検出方向において物体が検出された位置の前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する確率分布決定手段と、
その確率分布決定手段によって、前記検出範囲の全範囲に渡って決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1の存在確率を表す第1存在確率関係を作成する第1関係作成手段と、
その第1関係作成手段によって作成された最新の第1存在確率関係と、その最新の第1存在確率関係と同じ時点の存在確率を過去の情報に基づいて推定した第2存在確率関係とを合成して、合成存在確率関係を作成する合成手段と、
前回の検出周期において前記合成手段によって作成された前回合成存在確率関係と、前々回の検出周期において前記合成手段によって作成された前々回合成存在確率関係との比較に基づいて、前々回から前回までの間における前記障害物の推定移動速度を算出する速度算出手段と、
その速度算出手段によって算出された推定移動速度と、前回の掃引周期において前記合成手段によって作成された前回合成存在確率関係とに基づいて、前記第2存在確率関係を作成する第2関係作成手段と
を含むことを特徴とする車両用障害物検知装置。
【請求項2】
車両外部から得られる信号に基づいて車両外部の所定の検出範囲における物体の有無およびその物体の位置を検出する物体センサを備え、その物体センサからの信号に基づいて所定の検出周期で車両周辺の障害物を検知する車両用障害物検知装置であって、
前記物体センサとして、互いに検出形式の異なる第1物体センサと第2物体センサとを備え、
前記第1物体センサからの信号に基づいて、第1物体センサからその第1物体センサによって検出された物体へ向かう第1検出方向における障害物の存在確率分布を、その第1物体センサによって物体が検出された位置を最高確率とし、前記第1検出方向において物体が検出された位置の前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第1確率分布決定手段と、
前記第2物体センサからの信号に基づいて、第2物体センサからその第2物体センサによって検出された物体へ向かう第2検出方向における障害物の存在確率分布を、その第2物体センサによって物体が検出された位置を最高確率とし、前記第2検出方向において物体が検出された位置の前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第2確率分布決定手段と、
前記検出範囲の全範囲に渡って前記第1確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1の存在確率を表す第1存在確率関係を作成するとともに、前記検出範囲の全範囲に渡って前記第2確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第2の存在確率を表す第2存在確率関係を作成する確率関係作成手段と、
その確率関係作成手段によって作成された第1の存在確率関係および第2の存在確率関係を合成して、合成存在確率関係を作成する合成手段と
を含むことを特徴とする車両用障害物検知装置。
【請求項3】
所定の掃引周期で、車両周囲の所定の掃引角度範囲に渡って送信波を照射し、且つ、反射波を検出するレーダ装置を備え、
そのレーダ装置による反射波の検出結果に基づいて車両周辺の障害物を検知する車両用障害物検知装置であって、
前記送信波を照射してからの経過時間と反射波の検出信号強度との間の関係に基づいて、前記送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とし、そのピークの前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する確率分布決定手段と、
前記掃引角度範囲に渡って照射された各送信波に対して前記確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1の存在確率を表す第1存在確率関係を作成する第1関係作成手段と、
その第1関係作成手段によって作成された最新の第1存在確率関係と、その最新の第1存在確率関係と同じ時点の存在確率を過去の情報に基づいて推定した第2存在確率関係とを合成して、合成存在確率関係を作成する合成手段と、
前回の掃引周期において前記合成手段によって作成された前回合成存在確率関係と、前々回の掃引周期において前記合成手段によって作成された前々回合成存在確率関係との比較に基づいて、前々回から前回までの間における前記障害物の推定移動速度を算出する速度算出手段と、
その速度算出手段によって算出された推定移動速度と、前回の掃引周期において前記合成手段によって作成された前回合成存在確率関係とに基づいて、前記第2存在確率関係を作成する第2関係作成手段と
を含むことを特徴とする車両用障害物検知装置。
【請求項4】
所定の掃引周期で、車両周囲の所定の掃引角度範囲に渡って送信波を照射し、且つ、反射波を検出するレーダ装置を備え、
そのレーダ装置による反射波の検出結果に基づいて車両周辺の障害物を検知する車両用障害物検知装置であって、
前記レーダ装置として、互いに送信波の種類が異なる第1レーダ装置と第2レーダ装置とを備え、
前記第1レーダ装置から送信波を照射してからの経過時間と反射波の検出信号強度との間の関係に基づいて、その送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とし、そのピークの前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第1確率分布決定手段と、
前記第2レーダ装置から送信波を照射してからの経過時間と反射波の検出信号強度との間の関係に基づいて、その送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とし、そのピークの前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第2確率分布決定手段と、
前記掃引角度範囲に渡って照射された各送信波に対して前記第1確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1の存在確率を表す第1存在確率関係を作成するとともに、前記掃引角度範囲に渡って照射された各送信波に対して前記第2確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第2の存在確率を表す第2存在確率関係を作成する確率関係作成手段と、
その確率関係作成手段によって作成された第1の存在確率関係および第2の存在確率関係を合成して、合成存在確率関係を作成する合成手段と
を含むことを特徴とする車両用障害物検知装置。
【請求項5】
請求項3の車両用障害物検知装置において、
前記レーダ装置として、互いに送信波が異なる第1レーダ装置と第2レーダ装置とを備え、
前記確率分布決定手段として、
前記第1レーダ装置から送信波を照射してからの経過時間と反射波の検出信号強度との間の関係に基づいて、その送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とし、そのピークの前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第1確率分布決定手段と、
前記第2レーダ装置から送信波を照射してからの経過時間と反射波の検出信号強度との間の関係に基づいて、その送信波の照射方向における距離に対する障害物の存在確率分布を、反射波の検出信号強度のピークを最高確率とし、そのピークの前後の存在確率が前記最高確率から漸減する範囲を有するように決定する第2確率分布決定手段とを備え、
前記第1関係作成手段は、前記掃引角度範囲に渡って照射された各送信波に対して前記第1確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1−1存在確率関係を作成するとともに、前記掃引角度範囲に渡って照射された各送信波に対して前記第2確率分布決定手段によって決定された複数の確率分布を用いて、水平面座標における障害物の第1−2存在確率関係を作成し、それら第1−1存在確率関係と第1−2存在確率関係とを合成して第1存在確率関係を作成するものである
ことを特徴とする車両用障害物検知装置。
【請求項6】
前記存在確率関係が絶対座標系で表されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用障害物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−333486(P2007−333486A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163978(P2006−163978)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】