説明

車両用電動ハンドルロック装置

【課題】スマート通信およびハンドルロック装置のスイッチを兼用して省スペースと操作性の向上を図る。
【解決手段】ハンドルロック装置17はノブ15の押し下げで出力信号を発するスイッチ23と、スイッチ23の出力信号によってロックピン26を駆動するロックピン駆動機構20とを有する。ロックピン駆動機構20は駆動モータ24と歯車装置25と歯車装置を介して送りねじ29でハンドルシャフト31に対して進退されるロックピン26とを有する。ロックプレート32が近接すると検出信号を出力するホールIC34が設けられ、ホールIC34の検出信号がオンの場合にのみ、ロックピン26は進退される。ノブ15はハンドル3の周りを覆うメータパネルカバー9の上面に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電動ハンドルロック装置に関し、特に、小型化かつ操作性向上を図るのに好適な車両用電動ハンドルロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
盗難防止のための車両のハンドルを機械的に固定するハンドルロック機構が知られている。従来は、車体側に設けたロック操作部を、キー操作により作動させていたが、近年、赤外線信号を用いたリモコンロック操作システムによりキー操作無しでロック機構を駆動する方法が知られるようになっている。例えば、特許第3923284号公報には、機械的ロック機構に該ロック機構を駆動するアクチュエータと、送受信器と、制御装置とを組み合わせた機械的ロック機構のリモコンロック操作システムが開示されている。
【0003】
特開2006−306136号公報に記載された車両用盗難防止システムでは、ユーザが携帯機を携帯して車両に近づき、ロック位置にあるメインスイッチノブを押すと一定時間毎にリクエスト信号が送信される。そして、このリクエスト信号を受信した携帯機はIDデータを含む応答信号を送信する。車載装置は、応答信号を受信し、応答信号に含まれるIDデータが、登録されたIDデータと一致するかどうかを照合する。IDデータが一致すると判断したとき、携帯機との相互認証が完了してメインスイッチノブが廻せる状態になる。メインスイッチノブを廻すと、ハンドルロック機構のアクチュエータにロック解除信号が出力され、アクチュエータは、ロックピンをハンドル側から退避させてハンドルの回転軸のロック状態が解除する。この状態において、メインスイッチノブをさらにオン位置に回すと、エンジン点火許可IDデータが送信され、エンジンが始動可能な状態となり、スタータスイッチの操作によりエンジンが始動して走行可能な状態になる。
【特許文献1】特許第3923284号公報
【特許文献2】特開2006−306136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたリモコンロック操作システムでは、車両に設定された認証範囲にユーザが入るとエンジン始動可能な状態になるが、特許文献2に記載されたシステムでは、ユーザが認証領域に入って、かつメインスイッチノブを押さないとリクエスト信号が送出されないので、ドアがなく始動スイッチに容易にアクセスできる自動二輪車において、より一層高いセキュリティ性能を提供することができる。
【0005】
しかし、特許文献2に記載されたシステムでは、メインスイッチノブを押して、かつ、そのメインスイッチノブを廻してハンドルロックを解除し、さらに、メインスイッチノブをオン位置に廻した後にエンジン始動可能になる。したがって、スイッチ操作が繁雑であり、さらなる簡素化が望まれる。
【0006】
また、メインスイッチノブはハンドルロックモジュールに組み込まれ、車両のフロントカバー内のコンソール部に取り付けられていて、ユーザが乗車した姿勢で見えにくい位置にあるので、操作性を向上するためにユーザが見やすいレイアウトの検討が課題となっている。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解消して要望に応えるため、メインスイッチノブの操作性を向上させることができる車両用電動ハンドルロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、車両の操向ハンドルの支持軸に係合させて操向ハンドルの回動を禁止するロックピンと、該ロックピンを前記支持軸に対して係脱させる電動駆動手段とを含むハンドルロック機構を有する車両用ハンドルロック装置において、無線通信によるIDコードの認証のためのリクエスト信号の送信指示と前記電動駆動手段の起動指示とを行う単一のスイッチ操作子を備え、該スイッチ操作子が、前記操向ハンドルの支持軸の周りを覆うカバー部材下方に設けられ、該カバー部材上面に操作面を臨ませて配置されている点に第1の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記操向ハンドルがバー形状部を有するバーハンドルであって、予定のハンドルロック位置へ舵が取られた際の前記バー形状部の下方に位置するように前記スイッチ操作子が配置されている点に第2の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記スイッチ操作子が、取り付け面に対して上下自在に配置されたノブと、該ノブの押し下げに応動してリクエスト信号を送出するスイッチとからなる点に第3の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記ロックピンが、前記支持軸に固定された延長部材を介して該支持軸に係合するように構成されており、前記操向ハンドルが予定のハンドルロック位置にあるときに、前記延長部材の予定部分の近接を検知してハンドルロック位置検知信号を出力する位置検知素子を備え、前記位置検知素子からの検知信号が検出されたときに、前記電動駆動手段を駆動してロックピンを前記延長部材側に突出させるように構成されている点に第4の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記電動駆動手段が、モータと、該モータで駆動される歯車装置とを備えるとともに、前記ロックピンが前記歯車装置の回転で前後動作されるように構成され、前記歯車装置のうち、前記モータの出力軸に連結された歯車を手動で回転させる操作部を設けた点に第5の特徴がある。
【0013】
さらに、本発明は、スクータ型自動二輪車用の車両用ハンドルロック装置であって、前記手動で回転させる操作部が、車両のレッグシールドに設けられた収納ボックスの底部に形成された操作孔に対向している点に第6の特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の特徴を有する本発明によれば、単一のスイッチ操作子を1度操作するだけで、スマート通信によるIDコードの認証と、ロックピンの駆動(ロックおよびロック解除)とを行うことができるので、ハンドルロックを解除してエンジンを始動させるまでの操作が簡単である。また、スイッチ操作子が操向ハンドル周りのカバー部材上面に配置されるので、スイッチ操作が容易であるし、スイッチ操作子が単一であるので、スイッチ操作子を設置するスペースをとらない。
【0015】
第2の特徴を有する本発明によれば、スイッチ操作子は、ハンドルロック位置において操向ハンドルの下方に位置するようにしたので、第三者からは見えにくく、セキュリティ効果が高い。
【0016】
第3の特徴を有する本発明によれば、ノブを上下に押し下げ操作することができるので、操作が容易である。
【0017】
第4の特徴を有する本発明によれば、ロックピンが延長部材に係合できる位置にあるときに電動駆動手段が作動してロックピンが突き出されるので、ロックピンを確実に延長部材に係止させることができる。
【0018】
第5の特徴を有する本発明によれば、バッテリ上がりなど、電動駆動手段への電力供給が不能になったときに、手動でロックピンを作動させて、ハンドルロックおよびロック解除をすることができる。
【0019】
第6の特徴を有する本発明によれば、収納ボックスの底部(奥の壁)に、手動操作用の操作孔を設けたので、ハンドルロック装置への雨水の浸入や、第三者のアクセスを困難にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る車両用電動ハンドルロック装置を搭載したスクータ型自動二輪車の右後方斜視図である。自動二輪車1は車体フレームの前部に設けられるヘッドパイプ(図示せず)に回動自在に支持されたフロントフォーク2を有し、フロントフォーク2の上部には、操向ハンドル3が取り付けられ、下部には前輪WFが軸支されている。車体フレームの後方には、エンジンと変速機とを有するスイングユニット4が連結され、スイングユニット4の後部はリヤクッション5により車体フレームに懸架されている。スイングユニット4の後部には、後輪WRが支持されている。
【0021】
図示しない車体フレームの後上部には、乗員シート6が取り付けられており、乗員シート6の下方はボディカバー7で覆われる。車体の前部はフロントカバー8で覆われ、操向ハンドル3の周りはメータパネルカバー9およびメータパネルカバー9の外側に配置されたリヤメータパネル10で覆われる。メータパネルカバー9およびリヤメータパネル10の下左方にはコンソールボックス11が、下右方には蓋付き収納ボックス12がそれぞれ配置される。コンソールボックス11の前面および蓋付き収納ボックス12の蓋は、メータパネルカバー9およびリヤメータパネル10に対してほぼ垂直な面を有している。コンソールボックス11および蓋付き収納ボックス12の下方にはレッグシールド13が設けられ、レッグシールド13の後端はフロアステップ14の前端に会合している。
【0022】
操向ハンドル3には、駐車時等に操向ハンドル3を所定角度切った位置で固定して回動できないようにするハンドルロック装置(後述)が設けられる。メータパネルカバー10には、このハンドルロック装置をロック状態にしたりロックを解除したりするためのスイッチを操作するノブ15が配置される。ハンドルロック装置はこのノブ15だけが外部に露出しており、残りの部分はメータパネルカバー10の下方に収容されている。
【0023】
図2は、ノブ15と操向ハンドル3との位置関係を示す操向ハンドル上部およびその周辺の平面図である。図2において、図示しないハンドルシャフトの上端に2個一対のハンドルホルダ16が取り付けられており、ハンドルホルダ16に操向ハンドル3が保持されている。ハンドルホルダ16の周りはメータパネルカバー9で囲まれており、メータパネルカバー9の上に突出しているノブ15は、操向ハンドル3を右方向に所定位置まで回動させたロック位置で、その真上に操向ハンドル3があるように位置決定されている(図2中点線でハンドルロック位置にある操向ハンドル3を示す)。
【0024】
このようにメータパネルカバー9の上にノブ15を突出させて配置することにより、操作時はノブ15を上から押す操作になるので、操作が容易である。また、図2に示した配置により、停車中はノブ15がロックされた操向ハンドル3の真下に位置することになり、第三者からノブ15が見えにくいようにすることでセキュリティ効果を上げることができる。
【0025】
なお、図2では、操向ハンドル3を右に切った位置にハンドルロック位置を設けた例を示したが、操向ハンドル3を左に切った位置にハンドルロック位置を設けた自動二輪車では、ノブ15がメータパネルカバー9の左側部分に位置するようにハンドルロック装置が設置される。
【0026】
図3は、ハンドルロック装置の一例を示す断面図である。図3において、ハンドルロック装置17は、ハウジング18を有し、ハウジング18の上部には、スイッチボックス19が設けられ、ハウジング18の下部には、ロックピン駆動機構20が配置される。
【0027】
スイッチボックス19は横断面が矩形の筒状を有していて、上部に円柱状のノブ15が設けられたプランジャ21が、スイッチボックス19内で上下移動自在に設けられている。プランジャ21は下向きに開放された円筒状の凹部つまりばね収容部を有している。この凹部にばね22の上部が収容されており、ばね22の下部は凹部から下方に突出しており、下端部がスイッチボックス19の底部に当接している。
【0028】
プランジャ21の外周には勾配が形成されており、この勾配面に対向する位置にスイッチ23が配置されている。スイッチ23はプランジャ21に対して直交する方向に進退するアクチュエータ23aを有するマイクロスイッチが好適である。ノブ15が下向きに押されてプランジャ21が下がるとスイッチ23のアクチュエータ23aは勾配面の作用で後退し、スイッチ23がオンになるように配置される。したがって、ノブ15を押し下げるのを止めると、ばね22の作用でプランジャ21は押し上げられ、スイッチ23のアクチュエータ23aに対するプランジャ21の勾配面による付勢力が解除されるので、アクチュエータ23aはスイッチ22の内部ばねによって前進し、スイッチ23はオフになる。
【0029】
ロックピン駆動機構20は、駆動モータ24、歯車装置25、およびロックピン26からなる。ロックピン26は柱状であり、ハウジング18の側壁に形成されたボス27に対してキー27aで回転方向を規制された状態で摺動自在に保持される。ロックピン26には、その軸方向に沿ってねじ孔28が形成され、このねじ孔28には、送りねじ29が螺合されている。送りねじ28には、ウォームホイール29が固定されている。駆動モータ24の出力軸にはウォーム30が連結されており、このウォーム30は、送りねじ28に固定されているウォームホイール29と噛み合っている。
【0030】
操向ハンドル3を車体フレームに支持させるハンドルシャフト(ハンドル支持軸)31にはロックプレート(延長部材)32が固定されている。ロックプレート32は、ハンドルシャフト31から横に延びた水平部と水平部に直交する垂直部とを有している。操向ハンドル3を所定のロック位置まで回動させた位置では、ロックプレート32の垂直部に形成されるロック孔33がロックピン26の先端と対向し、ロックピン駆動機構20でロックピン26がハウジング18側から押し出されたときにロック孔33にロックピン26が係合する。
【0031】
ハウジング18の側壁にはホールIC34が取り付けられている。そして、ロックプレート32には、このホールIC34に磁気作用する永久磁石35が取り付けられている。永久磁石35およびホールIC34は、ロックピン26がロック孔33に対向する位置で互いに対向するよう配置される。つまり、ホールIC34は、ロックピン26とロック孔33とが対向したときに検出信号を出力する。
【0032】
自動二輪車1には、ECU36が設けられ、ECU36にはスイッチ23およびホールIC34の検出信号が入力され、駆動モータ24に駆動制御信号を出力する。さらに、ECU36には、リモコンでハンドルロック装置17の動作許可の認証用の送信器37と受信器38とが接続される。送信器37および受信器38は自動二輪車1の使用者が携帯するフォブ39との間での通信信号を送受する。
【0033】
ECU36には、バッテリ40が接続され、さらに、バッテリ40はリレー41を介して、自動二輪車1の電装部品等の負荷Lに接続される。リレー41はECU36からの信号でオン・オフする。
【0034】
上記構成のハンドルロック装置17の動作を説明する。図4は、ECU36の要部動作を示すフローチャートである。
【0035】
図4において、ステップS1では、スイッチ23がオンになったかどうかで、ノブ15が押されたか否かが判断される。ノブ15が押されたと判断されると、ステップS2に進んでノブ15を押した人が正規のフォブ39を携帯してる使用者かどうかを認証するスマート通信を実行する。スマート通信では、ノブ15が押されたことにより、まずECU36が送信器37を介してリクエスト信号を出力する。このリクエスト信号がフォブ39で受信されると、フォブ39はIDコードを送信し、このIDコードは受信器38で受信される。ECU36は受信したIDコードによって使用者を認識する。ステップS3では、ステップS2のスマート通信により正規のIDコードが検出されたかどうかが判断される。
【0036】
ステップS3が肯定ならば、ステップS4に進んで、ハンドルロック状態か否かを判断する。この判断は、ロックピン26が出ているかどうかによって行う。ロックピン26が出ているかどうかは、ロックピン26と係合する位置センサ設け、この位置センサの出力信号で判断することができる。また、駆動モータ24をロックピン26をロックプレート32側に突出させる指示を出したときに、その指示を発したことをECU36内に記憶させておいて、この記憶をもとにロックピン26が出ているかどうかを判断してもよい。
【0037】
ステップS4が肯定ならば、ステップS5に進んで駆動モータ24に逆回転信号を送出する。駆動モータ24はこの逆回転信号に応答して、ロックピン26をハウジング18側に引き込ませ、ロックピン26をロック孔33から退避させる。
【0038】
ステップS6では、リレー41を負荷L側に切り替える。これによって、バッテリ40から負荷Lへ電力が供給される。負荷Lには、自動二輪車1のエンジンを始動させるセルモータ含まれる。つまり、ステップS1〜S6の動作により、図示しないセルスイッチを操作してセルモータを駆動してエンジンを始動させることができる。
【0039】
ノブ15が押されなかったとき(ステップS1が否定)、およびスマート通信により正規のIDコードが確認されなかった場合(ステップS3が否定)は、このフローチャートの処理を終える。
【0040】
ステップS4が否定のときは、ステップS7に進み、ホールIC34の検出信号がオンか否かを判断する。ステップS7が肯定ならば、操向ハンドル3がハンドルロック位置に回動されており、ロックピン26がロックプレート32のロック孔33に対向しているので、ステップS8に進んで駆動モータに正回転信号を送出する。駆動モータ24はこの正回転信号に応答して、ロックピン26をロックプレート32側に突出させる。これによりハンドルロックされる。ステップS9では、リレー41を負荷L側から切り離す。
【0041】
なお、ステップS7では、ホールIC34の検出信号がオンになるまで待機するが、予め設定した時間が経過してもホールIC34の検出信号がオンにならない場合は、エラーとなり、ステップS1に進むようにする。
【0042】
図4では、ハンドルロック機構によるハンドルロック動作とアンロック動作とを併せて記述したが、ハンドルロック動作においては、スマート通信による正規のユーザかどうか認証やハンドルロック状態か否かの判断は省略してもよい。すなわち、ノブ15が押されたならば、直ちにホールIC34の検出信号がオンかどうかの判断(ステップS7)に進んでもよい。
【0043】
上記ハンドルロック装置17の動作を、乗車時と、降車時の動作に分けてまとめると、乗車時は、ノブ15を押してスマート通信を開始し、正規のユーザであることが確認されたならば、駆動モータ24を駆動してロックピン26とロックプレート32との係合を解除し、かつセルモータによるエンジン始動を可能にする。
【0044】
一方、降車時は、ノブ15を押してスマート通信を開始し、正規のユーザであることが確認されたならば、ロックピン26とロック孔33とが整合する位置にくるのを待って駆動モータ24を駆動してロックピン26をロックプレート32に係合させ、さらに負荷Lへの電源供給を絶って、エンジン始動を不可能にさせる。
【0045】
上述のように、ノブ15の操作と操向ハンドル3の回動操作のみで、スマート通信によるIDコードの認証とハンドルロック装置による操向ハンドル3の施錠・解錠とを行うとともに、エンジン始動の許可および禁止を行うことができる。
【0046】
なお、ハンドルロック装置17は駆動モータ24によりロックをしたり、ロック解除したりする構成であるので、バッテリが放電してしまっていたり、駆動モータ24が故障してしまったりしたときに、ロックピン26を動かすことができないので不便である。そこで、手動操作により、ロックしたりロック解除したりすることができるのがよい。
【0047】
本実施形態では、モータ24の出力軸をドライバ(ねじ回し)などで回せるようにしている。図5は、手動ロック機構を含むハンドルロック装置17の要部断面図である。ウォーム30はウォーム軸42を有し、そのウォーム軸42の一端は軸受43を介してハウジング18に支持されるともに駆動モータ24の出力軸24aに連結されている。ウォーム軸42の他端は軸受44でハウジング18に支持されている。このウォーム軸42の他端(先端)の端面には十字ドライバの先端形状に対応した凹部42aが形成されており、この凹部はハウジング18から突出している。
【0048】
ハウジング18は蓋付き収納ボックス13の奥の壁(底部)13aに対向するように配置されており、この底部13aに形成されたドライバ孔45がウォーム軸42の端面に形成された前記凹部42a対向している。したがって、十字ドライバ46の先端をドライバ孔45に通し、凹部42aに突き当てることができるので、十字ドライバ46でウォーム軸42を回転させて、送りねじ29を回転させることができる。
【0049】
本実施形態は、本発明の最良の形態であり、本発明は、この実施形態に限定されない。例えば、スマート通信によるIDコードの認証手順は、上述のものに限らず、周知技術を適用することができる。スマート通信に関しては、要は、リクエスト信号を車両側のノブまたはその他の種類の操作子によって単一のスイッチから送出されるようにし、このリクエスト信号を契機として認証が開始されるものであればよい。
【0050】
そして、乗車時は認証後、駆動モータによりハンドルロックが解除され、セルモータによるエンジン始動が可能になるようになっていればよい。また、降車時は、認証後、ロックピンを押し出すための駆動モータがスタンバイされ、操向ハンドルが予定のハンドルロック位置に回動されたときに、ハンドルロック機構が作動して操向ハンドルがロックされ、エンジン始動も不許可とする。
【0051】
また、ロックピン26をロックプレート32に係合させる例を示したが、このようなロックプレート32をハンドルシャフトに設けるものに限らない。例えば、ハンドルシャフトにロック孔を設けるとともに、該ロック孔に適合する貫通孔を車体フレームのヘッドパイプに設け、ヘッドパイプの貫通孔を通してハンドルシャフトのロック孔にロックピンを係合させるものであってもよい。
【0052】
また、リクエスト信号を送信する支持を与えるスイッチ操作子を、ノブ15とスイッチ23とからなるものにしたが、このスイッチ操作子の構成はこれに限らず、操作部であるノブと接点とを共通のケース内に収納した周知の押しボタンスイッチで構成してもよい。
【0053】
また、手動ロック機構において、ウォーム軸の端面に形成した溝形状は十字ドライバに適合するものに限らず、マイナスドライバの先端形状に適合したシンプルな形状でもよいし、例えば、ウォーム軸の端部の横断面形状を多角形にして、その外周にソケットドライバ等の工具を係止させることができるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るハンドルロック装置を搭載した自動二輪車の右後方斜視図である。
【図2】操向ハンドルおよびその周辺の平面図である。
【図3】ハンドルロック装置の断面図である。
【図4】ECUの要部動作を示すフローチャート図である。
【図5】手動ロック機構を含むハンドルロック装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…自動二輪車、 2…フロントフォーク、 3…操向ハンドル、 9…メータパネルカバー(カバー部材)、 10…リヤメータパネル(カバー部材)、 11…コンソールボックス、 12…蓋付き収納ボックス、 13…レッグシールド、 15…ノブ(スイッチ操作子)、 17…ハンドルロック装置、 18…ハウジング、 19…スイッチボックス、 20…ロックピン駆動機構、 21…プランジャ、 23…スイッチ、 24…駆動モータ、 25…歯車装置、 26…ロックピン、 27…ボス、 29…送りねじ、 30…ウォーム、 31…ハンドルシャフト、 32…ロックプレート(延長部材)、 33…ロック孔、 34…ホールIC(位置検知素子)、 35…磁石、 36…ECU、 39…フォブ、 45…ドライバ孔(操作孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操向ハンドルの支持軸に係合させて操向ハンドルの回動を禁止するロックピンと、該ロックピンを前記支持軸に対して係脱させる電動駆動手段とを含むハンドルロック機構を有する車両用電動ハンドルロック装置において、
無線通信によるIDコードの認証のためのリクエスト信号の送信指示と前記電動駆動手段の起動指示とを行う単一のスイッチ操作子を備え、
該スイッチ操作子が、前記操向ハンドルの支持軸の周りを覆うカバー部材上面に操作面を臨ませて配置されていることを特徴とする車両用電動ハンドルロック装置。
【請求項2】
前記操向ハンドルがバー形状部を有するバーハンドルであって、予定のハンドルロック位置へ舵が取られた際の前記バー形状部の下方に位置するように前記スイッチ操作子が配置されていることを特徴とする請求項1記載の車両用電動ハンドルロック装置。
【請求項3】
前記スイッチ操作子が、取り付け面に対して上下自在に配置されたノブと、該ノブの押し下げに応動してリクエスト信号を送出するスイッチとからなることを特徴とする請求項1または2記載の車両用電動ハンドルロック装置。
【請求項4】
前記ロックピンが、前記支持軸に固定された延長部材を介して該支持軸に係合するように構成されており、
前記操向ハンドルが予定のハンドルロック位置にあるときに、前記延長部材の予定部分の近接を検知してハンドルロック位置検知信号を出力する位置検知素子を備え、
前記位置検知素子からの検知信号が検出されたときに、前記電動駆動手段を駆動してロックピンを前記延長部材側に突出させるように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用電動ハンドルロック装置。
【請求項5】
前記電動駆動手段が、モータと、該モータで駆動される歯車装置とを備えるとともに、
前記ロックピンが前記歯車装置の回転で前後動作されるように構成され、
前記歯車装置のうち、前記モータの出力軸に連結された歯車を手動で回転させる操作部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用電動ハンドルロック装置。
【請求項6】
スクータ型自動二輪車用の車両用ハンドルロック装置であって、前記手動で回転させる操作部が、車両のレッグシールドに設けられた収納ボックスの底部に形成された操作孔に対向していることを特徴とする請求項5記載の車両用電動ハンドルロック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−202718(P2009−202718A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46325(P2008−46325)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】