説明

車両用電源装置

【課題】車両が低速状態から減速した回生電力の少ない場合でも十分なアイドリングストップ期間が得られる回生電力回収機能付きの車両用電源装置の提供。
【解決手段】発電機11、負荷19とDC/DCコンバータ25を介して接続される蓄電部27と、制御回路37と、を備え、制御回路37は、発電機11が発電する回生電力を蓄電部27に充電するようDC/DCコンバータ25を制御するとともに、前記車両が停止した際に蓄電部電圧Vcが既定の満充電電圧Vcuに至っていなければ、満充電電圧Vcuに至るまで前記エンジンの燃料消費を伴って発電機11が発電する電力を蓄電部27に充電するようにDC/DCコンバータ25を制御し、蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至れば、前記エンジンを停止してアイドリングストップを開始するように制御するとともに、主電源13と負荷19に蓄電部27の電力を供給するようDC/DCコンバータ25を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生電力を回収することが可能でアイドリングストップ機能付きの車両用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、回生電力を回収するとともに、アイドリングストップ機能を備えた車両が提案されている。このような車両における車両用発電装置のシステム構成概略図を図4に示す。前記車両のエンジン(図示せず)には発電機101と始動装置103が機械的に接続されている。これにより、発電機101は前記エンジンの燃料消費を伴う電力と、減速時に発生する燃料消費を伴わない回生電力を発電する。また、始動装置103はアイドリングストップ後を含む前記エンジンの始動を行うスタータである。
【0003】
発電機101と始動装置103は鉛電池からなる主電源105、および車両機器107と電気的に接続される。さらに、DC/DCコンバータ109を介して補助電源111とも電気的に接続される。なお、補助電源はリチウム電池やキャパシタ等で構成される。
【0004】
主電源105と補助電源111には、それぞれ充電量センサ113が接続される。これら充電量センサ113の出力は自動停止始動ECU115に入力される。自動停止始動ECU115は前記エンジンのアイドリングストップ可否を制御するもので、そのために充電量センサ113の出力に加え、車速センサ117やナビゲーション装置119からの信号に基いて、DC/DCコンバータ109や、発電機101に接続された発電制御ECU121の動作を制御するとともに、前記エンジンへ停止信号や始動信号を送信する。
【0005】
このような車両用発電装置において、自動停止始動ECU115は、内蔵した回生電力予測手段123により予測される前記回生電力を補助電源111に充電し、アイドリングストップ中で補助電源111の充電量が所定量以上であれば、補助電源111より車両機器107へ電力供給が行われるようにDC/DCコンバータ109を制御する。そして、補助電源111の放電量が閾値以上となったときは、前記エンジンの燃料消費を伴う発電が行われ、車両機器107へ電力供給が継続される。
【0006】
以上のような動作により、前記車両は補助電源111に蓄えた前記回生電力をアイドリングストップ中に車両機器107へ放電することで、前記回生電力の有効活用とアイドリングストップによる前記エンジンの燃料消費抑制により省燃費化が図れる。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−316643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した車両用発電装置によると、確かに車両の省燃費化が図れるのであるが、例えば前記車両が低速状態から減速した場合のように発電機101が発生した回生電力量が少なければ、補助電源111に十分に回生電力を充電することができない。この場合は、アイドリングストップ状態となって、補助電源111に蓄えた前記回生電力が車両機器107に放電されても、その放電量がすぐに閾値に達しエンジンの燃料消費を伴う発電が行われてしまう。従って、アイドリングストップ期間が短くなる上に、短い前記アイドリングストップ期間で節約できた燃料エネルギよりも、前記エンジンの始動を行うために始動装置103が消費する主電源105の電力エネルギの方が大きくなり、省燃費効果が低減する場合があるという課題があった。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、前記車両が低速状態から減速した前記回生電力の少ない場合でも十分なアイドリングストップ期間を得ることが可能な車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の車両用電源装置は、車両のエンジンにより発電する発電機と、前記発電機とDC/DCコンバータを介して電気的に接続される蓄電部と、前記発電機と電気的に接続される主電源、および負荷と、前記蓄電部と電気的に接続され、蓄電部電圧(Vc)を検出する蓄電部電圧検出回路と、前記DC/DCコンバータ、および前記蓄電部電圧検出回路と電気的に接続される制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記発電機が発電する回生電力を前記蓄電部に充電するよう前記DC/DCコンバータを制御するとともに、前記車両が停止した際に前記蓄電部電圧(Vc)が既定の満充電電圧(Vcu)に至っていなければ、前記満充電電圧(Vcu)に至るまで前記エンジンの燃料消費を伴って前記発電機が発電する電力を前記蓄電部に充電するように前記DC/DCコンバータを制御し、前記蓄電部電圧(Vc)が満充電電圧(Vcu)に至れば、前記エンジンを停止してアイドリングストップを開始するように制御するとともに、前記主電源、および前記負荷に前記蓄電部の電力を供給するよう前記DC/DCコンバータを制御するようにしたものである。
【0012】
また、本発明の車両用電源装置は、車両のエンジンにより発電する発電機と、前記発電機とDC/DCコンバータを介して電気的に接続される蓄電部と、前記発電機と電気的に接続される主電源、および負荷と、前記蓄電部と電気的に接続され、蓄電部電圧(Vc)を検出する蓄電部電圧検出回路と、前記DC/DCコンバータ、および前記蓄電部電圧検出回路と電気的に接続される制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記発電機が発電する回生電力を前記蓄電部に充電するよう前記DC/DCコンバータを制御するとともに、前記車両が減速中に前記エンジンが停止する際に前記蓄電部電圧(Vc)が既定の満充電電圧(Vcu)に至っていなければ、前記満充電電圧(Vcu)に至るまで前記エンジンの燃料消費を伴って前記発電機が発電する電力を前記蓄電部に充電するように前記DC/DCコンバータを制御し、前記蓄電部電圧(Vc)が満充電電圧(Vcu)に至れば、前記エンジンを停止するように制御するとともに、前記主電源、および前記負荷に前記蓄電部の電力を供給するよう前記DC/DCコンバータを制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用電源装置によれば、車両が停止した後、アイドリングストップを開始する前に、蓄電部電圧(Vc)が既定の満充電電圧(Vcu)に至るまでエンジンの燃料消費を伴って発電機が発電する電力を蓄電部に充電するので、前記アイドリングストップが開始される際には前記蓄電部は満充電となっている。従って、前記車両が低速状態から減速し、回生電力を前記蓄電部に十分に充電できなかったとしても、前記蓄電部を満充電にしてから前記アイドリングストップを開始するので、十分なアイドリングストップ期間を得ることが可能となり省燃費化が図れるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明の車両用電源装置によれば、前記車両が減速中に前記エンジンが停止する機能を有する場合、前記エンジンが停止する際に蓄電部電圧(Vc)が既定の満充電電圧(Vcu)に至るまで前記エンジンの燃料消費を伴って発電機が発電する電力を蓄電部に充電するので、前記エンジンが停止した際には前記蓄電部は満充電となっている。従って、前記車両が低速状態から減速し、回生電力を前記蓄電部に十分に充電できなかったとしても、前記蓄電部を満充電にしてから前記エンジンを停止するので、十分なアイドリングストップ期間を得ることが可能となり省燃費化が図れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における車両用電源装置のブロック回路図
【図2】本発明の実施の形態1における車両用電源装置の各種特性の経時変化図で、(a)は車速vの経時変化図、(b)は蓄電部電圧Vcの経時変化図、(c)は発電機状態の経時変化図
【図3】本発明の実施の形態2における車両用電源装置の各種特性の経時変化図で、(a)は車速vの経時変化図、(b)は蓄電部電圧Vcの経時変化図、(c)は発電機状態の経時変化図
【図4】従来の車両用発電装置のシステム構成概略図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における車両用電源装置のブロック回路図である。図2は、本発明の実施の形態1における車両用電源装置の各種特性の経時変化図で、(a)は車速vの経時変化図を、(b)は蓄電部電圧Vcの経時変化図を、(c)は発電機状態の経時変化図を、それぞれ示す。なお、図1において太線は電力系配線を、細線は信号系配線をそれぞれ示す。また、本実施の形態1ではアイドリングストップ機能と回生電力回収機能を備えた車両に車両用電源装置を適用した場合について述べる。
【0018】
図1において、車両のエンジン(図示せず)によって発電する発電機11は、主電源13とスタータ15と電気的に接続される。ここで、発電機11は14.5Vの出力電圧が得られる構成としている。また、主電源13は鉛バッテリで構成され、その開放電圧は12Vのものを用いている。また、スタータ15は前記エンジンと機械的に接続され、前記エンジンの始動を行う。
【0019】
発電機11には負荷19と電気的に接続される。ここで、負荷19は前記車両に搭載された電装品である。また、負荷19には蓄電装置21が電気的に接続される。従って、図1に示すように、発電機11、主電源13、スタータ15、および負荷19はいずれも蓄電装置21と電気的に接続される構成となる。
【0020】
次に、蓄電装置21の詳細構成について説明する。
【0021】
負荷19と電気的に接続される蓄電装置21の入出力端子23には、DC/DCコンバータ25を介して蓄電部27と電気的に接続される。ここで、DC/DCコンバータ25は蓄電部27に発電機11で発生した回生電力を充電したり、前記回生電力が発生していない時に蓄電部27に蓄えた前記回生電力を主電源13や負荷19等に放電する動作を行うもので、本実施の形態1では双方向型のものを用いた。なお、前記回生電力とは、減速時やブレーキ時など前記エンジンが燃料を消費しないで発電機11を駆動することにより得られた電力のことであると以下定義する。また、蓄電部27から放電された前記回生電力が主電源13に供給される場合は、前記回生電力を有効活用することができるので、蓄電部27の前記回生電力が充電される状態の主電源13は負荷19の一部であるとして扱う。
【0022】
蓄電部27は定格電圧2.5Vの電気二重層キャパシタを4本直列接続した構成を有する。従って、蓄電部27の満充電電圧Vcuは10Vとなる。また、蓄電部27は前記電気二重層キャパシタの過放電を抑制するために、下限電圧Vckを5Vとあらかじめ決定している。ゆえに、DC/DCコンバータ25は蓄電部電圧Vcが下限電圧Vck(=5V)から満充電電圧Vcu(=10V)までの範囲で蓄電部27の充放電を制御している。
【0023】
なお、上記した蓄電部27の構成は一例であり、必要な電力仕様に応じて、前記電気二重層キャパシタの本数を変えたり直並列接続や並列接続としてもよい。 また、満充電電圧Vcuは10Vに限定されるものではなく、例えば前記定格電圧に対し所定のマージンを考慮した電圧値に前記電気二重層キャパシタの直列接続数(本実施の形態1では4本)を乗じた値を満充電電圧Vcuとして定義してもよい。同様に、下限電圧Vckも5Vに限定されるものではなく、使用する前記電気二重層キャパシタの特性に応じて、例えばマージンを大きめに取り、5.5Vや6V等の値に決定してもよい。
【0024】
なお、蓄電部27の負極はグランド端子29を介して前記車両のグランドと電気的に接続される。
【0025】
DC/DCコンバータ25の負荷19側となる入出力端子23には入出力電圧検出回路31、および入出力電流検出回路33が接続される。ここで、入出力電圧検出回路31は前記グランドを基準とした入出力端子23における入出力電圧Vbを検出して出力する機能を有する。具体的には、2個の抵抗器(図示せず)の直列回路を入出力端子23と前記グランドとの間に接続した構成を有し、前記2個の抵抗器の接続点から入出力電圧Vbに比例した電圧を出力する構成としている。なお、入出力電圧検出回路31は上記した構成に限定されるものではなく、例えば入力許容電圧が20VのA/Dコンバータを直接入出力端子23に接続する構成としてもよい。
【0026】
入出力電流検出回路33はDC/DCコンバータ25により蓄電部27が充放電される際の入出力端子23に流れる入出力電流Iを検出し出力するもので、本実施の形態1では入出力端子23とDC/DCコンバータ25との間に設けたシャント抵抗器(図示せず)の両端電圧を検出する構成とした。なお、入出力電流検出回路33は上記した構成に限定されるものではなく、例えばホール素子等で磁気的に検出する構成としてもよい。
【0027】
一方、DC/DCコンバータ25と蓄電部27との間には、蓄電部電圧検出回路35が電気的に接続されている。蓄電部電圧検出回路35により、蓄電部電圧Vcを検出し出力することができる。なお、蓄電部電圧検出回路35は入出力電圧検出回路31と同等の構成としている。
【0028】
DC/DCコンバータ25、入出力電圧検出回路31、入出力電流検出回路33、および蓄電部電圧検出回路35は信号系配線で制御回路37と電気的に接続される。制御回路37はマイクロコンピュータとメモリ等の周辺回路で構成され、入出力電圧検出回路31から入出力電圧Vbを、入出力電流検出回路33から入出力電流Iを、蓄電部電圧検出回路35から蓄電部電圧Vcを、それぞれ読み込む。従って、制御回路37は過電流防止のために入出力電流Iが既定の上限値までの範囲で、入出力電圧Vbや蓄電部電圧Vcが所望の設定値になるように制御信号contをDC/DCコンバータ25に出力することにより、蓄電部27の充放電を制御する。さらに、制御回路37は外部端子39を介して車両用制御回路41と電気的に接続されており、データ信号dataにより車両用制御回路41との間で、各種電圧電流値等の蓄電装置21のデータや、前記車両の状態を示すデータ等の様々なデータを送受信している。従って、制御回路37は車両用制御回路41のデータ信号dataに基くDC/DCコンバータ25の制御(例えばDC/DCコンバータ25の起動停止や充放電切替など)も可能となる。なお、データ信号dataは車両用通信規格に則って生成される。また、発電機11やスタータ15の制御は車両用制御回路41により行われるが、信号系配線の記載が煩雑になるため図1ではこれらの信号系配線を省略している。
【0029】
次に、このような車両用電源装置の動作について図2を用いて説明する。なお、図2において横軸は時刻tを示す。また、図2(a)の縦軸は車速vを、図2(b)の縦軸は蓄電部電圧Vcを、図2(c)の縦軸は発電機11の状態を、それぞれ示す。
【0030】
まず、図2(a)に示すように、時刻t0で前記車両が既定車速vk以上の車速vで定速走行している。ここで、既定車速vkとは前記車両が減速する際に発電機11が発生する前記回生電力のみで、下限電圧Vckまで放電された状態の蓄電部27を満充電することができる車速vのことで、本実施の形態1では既定車速vkを40km/hとあらかじめ決定した。従って、時刻t0では前記車両は40km/h以上の車速vで走行している。
【0031】
この際に、制御回路37は蓄電部電圧検出回路35から蓄電部電圧Vcを読み込み、下限電圧Vckに至るまで蓄電部27の電力を主電源13、および負荷19に放電するようDC/DCコンバータ25を制御する。これは、車速vが既定車速vk以上であるので、蓄電部27に残った電力を下限電圧Vckに至るまで放電しても、次回の減速時に発生する前記回生電力で蓄電部27を満充電にできることから、蓄電部27の残余の電力を有効活用するために放電している。
【0032】
このような動作により、図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcは時刻t0から時刻t1までで経時的に低下する。また、この際に主電源13や負荷19には蓄電部27から電力が供給されるので、発電機11は発電する必要がない。そこで、蓄電部27が放電している間、制御回路37から蓄電部27の放電中を示すデータ信号dataが車両用制御回路41に出力される。これを受け、車両用制御回路41は発電機11の発電を停止するように制御する。その結果、図2(c)に示すように、発電機11の状態は時刻t0から時刻t1までで発電停止となる。これにより、発電機11は前記エンジンにより機械的に駆動されているものの発電を行っていないので、前記エンジンに掛かる機械的負担が軽減され、省燃費化が可能となる。
【0033】
時刻t1で図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至ると、制御回路37は蓄電部27をこれ以上放電しないようにDC/DCコンバータ25を制御する。具体的には、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを維持するようにDC/DCコンバータ25を制御する。これにより、蓄電部27の過放電を抑制できる。このような動作により、主電源13や負荷19への蓄電部27からの電力供給が停止するので、車両用制御回路41は制御回路37から蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至った情報をデータ信号dataで受信すると、直ちに図2(c)に示すように発電機11を燃料消費発電の状態に切り替える。なお、前記燃料消費発電とは、前記エンジンが燃料を消費することにより発電機11を駆動し発電を行う状態であると定義する。このような動作により、時刻t1で主電源13や負荷19には発電機11の電力が供給されるので、負荷19の動作を継続することができる。
【0034】
その後、時刻t2で前記車両が減速を開始する。従って、図2(a)に示すように車速vは経時的に減少する。これにより、前記エンジンは車両用制御回路41によりフューエルカット状態となり前記車両は慣性走行を行うので、この時の発電機11は図2(c)に示すように燃料消費を伴わない回生発電状態となる。そこで、制御回路37は発電機11が発電する前記回生電力を蓄電部27に充電するようDC/DCコンバータ25を制御する。その結果、図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcは時刻t2から時刻t3までで経時的に上昇する。
【0035】
時刻t3で図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至ると、制御回路37はこれ以上蓄電部27に充電を行わないように制御する。具体的には、蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuを維持するようにDC/DCコンバータ25を制御する。その結果、図2(b)に示すように、蓄電部電圧Vcは時刻t3以降で満充電電圧Vcuとなる。しかし、時刻t3の時点では図2(a)に示すように前記車両は減速中であり、図2(c)に示すように発電機11は前記回生発電状態であるので、時刻t3から時刻t4までで発生する前記回生電力は主電源13や負荷19に供給される。ゆえに、時刻t3から時刻t4までの前記回生電力も有効活用される。
【0036】
時刻t4で図2(a)に示すように車速vはフューエルカット終了車速vfに至る。ここで、フューエルカット終了車速vfとは前記エンジンのアイドリング回転数を維持するためにフューエルカットを終了し燃料を再噴射する際の車速のことで、前記エンジンの種類や車種などによって決定される。本実施の形態1ではフューエルカット終了車速vfを10km/hとあらかじめ決定した。従って、時刻t4で車両用制御回路41は前記エンジンの燃料噴射を再開する。その結果、図2(c)に示すように時刻t4から時刻t5までで発電機11は前記燃料消費発電の状態となる。なお、この時点では前記車両の減速が継続しているので、図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcは満充電電圧Vcuを維持した状態を継続する。
【0037】
時刻t5で図2(a)に示すように車速vは0km/hとなり前記車両は停止する。この時点で図2(b)に示すように、蓄電部電圧Vcは満充電電圧Vcuに至っているので、制御回路37は車両用制御回路41に対して前記エンジンを停止してアイドリングストップを開始するように制御する。これにより、発電機11の駆動も停止するので、図2(c)に示すように発電機11は発電停止の状態となる。また、制御回路37は前記アイドリングストップを開始するとともに、主電源13、および負荷19に蓄電部27の電力を供給するようDC/DCコンバータ25を制御する。これにより、前記アイドリングストップ中に前記回生電力を主電源13や負荷19に供給できるので、前記回生電力の有効活用を図ることができる上に、前記アイドリングストップによる燃料節約が可能となるので、全体的に前記車両の省燃費化が可能となる。
【0038】
時刻t5で前記アイドリングストップが開始され、蓄電部27の電力が放電されるため、図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcは時刻t6まで経時的に低下する。この時刻t5から時刻t6までが図2(c)に示すようにアイドリングストップ期間となる。
【0039】
時刻t6で図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至ると、制御回路37は時刻t1の場合と同様に放電を停止し、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckを維持するようにDC/DCコンバータ25を制御する。しかし、この時点では図2(a)に示すように車速vは0km/hのままで停止中のため、時刻t6の時点で負荷19への電力供給を継続するために、制御回路37は前記エンジンを再始動するよう車両用制御回路41にデータ信号dataを送信する。これを受け、車両用制御回路41が前記エンジンを再始動するので、図2(c)に示すように発電機11は前記燃料消費発電の状態となる。その結果、主電源13や負荷19へは発電機11の電力が供給される。
【0040】
なお、時刻t6から前記車両が再び走行を開始する時刻t7までの間、本実施の形態1では前記エンジンを再始動しているが、これは前記エンジンを停止したままとし、負荷19へは主電源13の電力を供給する構成としてもよい。この場合は図2(c)の太点線で示したように時刻t6から時刻t7までの間も発電機11は発電停止状態となる。このように制御することによって、前記アイドリングストップ期間をより長くすることができるので、その分の燃料節約が可能となる。但し、主電源13は前記アイドリングストップの終了時にスタータ15を駆動するための電力を供給するので、前記アイドリングストップ期間が長引き、かつ負荷19の消費電力が大きいと、主電源13の負担が増しスタータ15の駆動が困難になる可能性がある。また、主電源13の耐久性も低下することになる。さらに、スタータ15の駆動時における急峻な電圧低下が発生しても負荷19の動作を継続するために、負荷19に電圧安定化回路(図示せず)を設ける必要がある。そこで、本実施の形態1では蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至れば前記車両が停車中であっても前記アイドリングストップを終了し前記エンジンを再始動するようにしている。なお、主電源13の容量が大きく充電量に余裕が持て、耐久性も確保され、かつ負荷19に前記電圧安定化回路を設ける構成の場合は、時刻t6から時刻t7までの間も前記アイドリングストップを継続する方が望ましい。
【0041】
時刻t7で前記車両が再び走行を開始し、図2(a)に示すように車速vが上昇する。そして、時刻t8でフューエルカット終了車速vfより大きく、かつ既定車速vkより小さい車速vで定速走行を行う。この時刻t7から時刻t9までは前記車両が加速、または定速走行であるので、図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcは下限電圧Vckを維持し続け、図2(c)に示すように発電機11は前記燃料消費発電の状態のままである。
【0042】
時刻t9で前記車両が減速し、図2(a)に示すように車速vが経時的に低下する。これにより、図2(c)に示すように発電機11は前記回生発電の状態となるので、制御回路37は前記回生電力を蓄電部27に充電するようにDC/DCコンバータ25を制御する。これらの動作は時刻t2と同じである。その結果、蓄電部電圧Vcは図2(b)に示すように時刻t9から経時的に上昇する。
【0043】
その後、時刻t10で図2(a)に示すように車速vがフューエルカット終了車速vfに至る。これにより、時刻t4と同様に前記エンジンが燃料消費を伴って駆動するので、図2(c)に示すように発電機11は前記燃料消費発電の状態となる。しかし、時刻t10の時点で蓄電部電圧Vcは満充電電圧Vcuに至っていない。そこで、制御回路37は発電機11が前記燃料消費発電の状態であっても蓄電部27への充電を継続する。
【0044】
時刻t11に至ると、図2(a)に示すように車速vは0km/hとなり前記車両が停止するが、この時点でも図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcは満充電電圧Vcuに至っていない。よって、制御回路37は、本来ならば時刻t11で前記アイドリングストップを開始するところであるが、ここでは前記アイドリングストップを行わずに、発電機11が前記燃料消費発電の状態のまま蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至るまで蓄電部27の発電機11による充電を継続する。
【0045】
時刻t12で図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至ると、制御回路37は前記エンジンを停止して前記アイドリングストップを開始するように車両用制御回路41に対して制御するとともに、主電源13、および負荷19に蓄電部27の電力を供給するようDC/DCコンバータ25を制御する。この動作は時刻t5と同じである。
【0046】
これらのことから、時刻t11で前記車両が停止してから時刻t12で蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至るまでの期間は、前記エンジンが燃料消費を伴ってでも蓄電部27を満充電する動作を行っていることになる。このような動作を行う理由は以下の通りである。
【0047】
時刻t8から時刻t9のように、車速vが低速であった場合、それにより実際に蓄電部27に回収できる前記回生電力は時刻t9から時刻t10までの期間に限られる。この時刻t10における蓄電部電圧Vcは図2(b)より満充電電圧Vcuに対して極めて低いことがわかる。この状態で前記アイドリングストップを開始すると、蓄電部27の電力はすぐに負荷19で消費されてしまい、短期間しか前記アイドリングストップができないことになる。
【0048】
一方、本実施の形態1のように蓄電部27を満充電にしてから前記アイドリングストップを開始すると、前記アイドリングストップを最大期間継続できる。ここで、蓄電部27は前記電気二重層キャパシタで構成されており急速充電が可能であるため短期間で満充電に至ることから、時刻t10から時刻t12までで燃料消費を伴う蓄電部27の満充電に要する燃料の量は、本実施の形態1の場合、前記アイドリングストップを5秒間行うことにより節約できる燃料の量とほぼ等しかった。ゆえに、一般に信号待ちなどの場合で前記車両が5秒以内しか停車しない頻度は少ないので、燃料消費を伴ってでも蓄電部27を満充電にして前記アイドリングストップ期間を延ばす方が省燃費化できる。なお、上記した5秒間という期間は一例であり、前記車両の種類や負荷19の消費電力などによって変化する。
【0049】
以上に述べた効果をまとめると、前記車両が低速状態から減速し、前記回生電力を蓄電部27に十分に充電できなかったとしても、蓄電部27を満充電にしてから前記アイドリングストップを開始するので、十分な前記アイドリングストップ期間を得ることが可能となり省燃費化が図れることになる。
【0050】
次に、時刻t12から時刻t13まで、図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcは経時的に低下し、時刻t13で下限電圧Vckに至ると、制御回路37は車両用制御回路41に対し前記エンジンの再始動を行うよう制御する。その結果、前記アイドリングストップが終了する。この動作は時刻t6と同じである。
【0051】
時刻t13から時刻t14までは、図2(a)に示すように車速vが0km/hであるが、図2(c)に示すように発電機11は前記燃料消費発電の状態であるので、発電機11から主電源13や負荷19に電力が供給される。しかし、この期間は、主電源13が大容量で耐久性を有するものであれば、時刻t6から時刻t7までで説明したように前記エンジンを停止したままとし、負荷19へは主電源13の電力を供給する構成としてもよい。この場合は図2(c)の太点線で示したように時刻t13から時刻t14までの期間も発電機11は発電停止状態となる。
【0052】
時刻t14で前記車両が再び走行を開始すると、図2(a)に示すように車速vが上昇する。この際、発電機11は図2(c)に示すように前記燃料消費発電の状態であり、かつ前記車両は加速中であるので、蓄電部電圧Vcは図2(b)に示すように下限電圧Vckを維持したままとなる。
【0053】
時刻t15で図2(a)に示すように車速vが既定車速vkに至る。これにより、その後の減速時に発生する前記回生電力で蓄電部27を十分に満充電とすることができるので、制御回路37は、前記車両の車速vが既定車速vk以上であれば、蓄電部27の電力を主電源13、および負荷19に放電するようDC/DCコンバータ25を制御するのであるが、図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcは時刻t15で下限電圧Vckのままであるので、この場合は過放電を抑制するために車速vが既定車速vk以上であっても蓄電部27の放電は行われない。
【0054】
その後、時刻t16で図2(a)に示すように車速vは既定車速vkより大きな値で一定となり定速走行を行う。この時の蓄電部電圧Vcや発電機状態は時刻t15時点の状態のまま維持される。
【0055】
時刻t17で図2(a)に示すように車速vが低下し、前記車両が減速を開始すると、車両用制御回路41は前記フューエルカットを行う。その結果、図2(c)に示すように発電機11は前記回生発電の状態となる。従って、制御回路37は前記回生電力を蓄電部27に充電するようDC/DCコンバータ25を制御する。
【0056】
その後、時刻t18で図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至る。そして、時刻t19で図2(a)に示すように車速vがフューエルカット終了車速vfに至ることで図2(c)に示すように発電機11が前記燃料消費発電の状態に変わる。そして、時刻t20で図2(a)に示すように車速vが0km/hとなり前記アイドリングストップが開始される。これにより、図2(c)に示すように発電機11が前記発電停止の状態となり、蓄電部27の電力が主電源13や負荷19に供給され、図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcが低下していく。これら一連の時刻t17から時刻t20までの動作は、それぞれ時刻t2から時刻t5までの動作と同一であるので、動作の詳細についての説明を省略する。
【0057】
次に、時刻t21で図2(a)に示すように車速vが上昇し、前記車両が加速を始める。従って、前記エンジンが時刻t21で再始動するため、図2(c)に示すように発電機11は前記燃料消費発電の状態となる。ゆえに、発電機11からは燃料消費を伴う電力が発生する。一方、図2(b)に示すように時刻t21の時点で蓄電部電圧Vcは下限電圧Vckと満充電電圧Vcuとの間の電圧値である。従って、蓄電部27に蓄えた前記回生電力を主電源13や負荷19へ供給することができるのであるが、時刻t21直後の車速vは小さいので、その後すぐに減速したとしても、十分な前記回生電力が得られなくなる可能性がある。その結果、蓄電部27の電力を供給し続ければ、時刻t10から時刻t12までのように、発電機11の燃料消費を伴う発電により蓄電部27を満充電することになる。従って、その間は前記アイドリングストップができないので、できるだけ省燃費を図るためには、時刻t10から時刻t12までのような期間を短くする必要がある。
【0058】
このようなことから、本実施の形態1では制御回路37は、前記車両の車速vが既定車速vk未満であれば、蓄電部27の電力を主電源13、および負荷19に放電せずに、蓄電部電圧Vcを時刻t12の時点の電圧値に維持するようDC/DCコンバータ25を制御する。そして、車速vが既定車速vk未満の間は発電機11の電力を主電源13、および負荷19に供給する。このように制御することにより、蓄電部電圧Vcは前記車両が加速し始めた時点(ここでは時刻t21)の電圧値を維持するので、その後前記車両が減速して前記回生電力を蓄電部27に充電した場合、短期間で満充電に至る。従って、発電機11の燃料消費を伴う発電により蓄電部27を満充電する期間を最小限に抑制することができるので、その分、前記アイドリングストップを行う期間を長くできる。
【0059】
その後、時刻t22で図2(a)に示すように、車速vが既定車速vk以上となると、制御回路37は蓄電部27の電力を放電するようにDC/DCコンバータ25を制御する。これは、既定車速vk以上であれば、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckであっても、前記車両の減速時に発生する前記回生電力だけで蓄電部27を満充電にすることができることから、蓄電部27の電力を放電して主電源13や負荷19に供給することで有効活用するためである。このような制御の結果、図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcは時刻t22以降で経時的に低下する。また、蓄電部27からの電力が得られるので、発電機11は図2(c)に示すように発電停止状態となる。これにより、発電機11の前記エンジンに対する機械的負担が軽減されるので、この点からも省燃費化が図れる。
【0060】
時刻t23で、図2(a)に示すように車速vが既定車速vk以上で一定になる。この時、図2(b)に示すように蓄電部電圧Vcは下限電圧Vckに至っていないので、蓄電部27は放電を継続する。それにより、図2(c)に示すように発電機11は前記発電停止状態を維持する。この時刻t23の状態は時刻t0と同じである。以後、このような動作を適宜繰り返すことにより、前記回生電力を有効活用しつつ前記アイドリングストップ期間をできるだけ長くすることができるので、前記車両全体の省燃費化が図れる。
【0061】
以上の構成、動作により、前記車両が低速状態から減速し、前記回生電力を蓄電部27に十分に充電できなかったとしても、蓄電部27を満充電にしてから前記アイドリングストップを開始するので、十分な前記アイドリングストップ期間を得ることが可能となり省燃費化が図れる車両用電源装置が実現できる。
【0062】
なお、本実施の形態1では既定車速vkを40km/h、フューエルカット終了車速vfを10km/hとしているが、これらの数値に限定されるものではなく、既定車速vkについては蓄電部27の容量や前記回生電力の発電量などに応じて、フューエルカット終了車速vfは前記エンジンの種類や車種などに応じて、それぞれ最適値を決定すればよい。
【0063】
さらに、既定車速vkは一定値に限定されるものではなく、蓄電部電圧Vcに基いて既定車速vkを可変するようにしてもよい。すなわち、蓄電部電圧Vcが高ければ前記回生電力が少なくても減速時の前記回生電力により蓄電部27を満充電にすることができるので、既定車速vkを下げてもよい。従って、蓄電部27を満充電にできるような蓄電部電圧Vcと既定車速vkの相関関係をあらかじめ求めて制御回路37に内蔵された前記メモリに記憶しておくことにより、蓄電部電圧Vcに基いて既定車速vkを可変する構成とすることができる。その結果、本実施の形態1では図2(b)の時刻t21から時刻t22に示すように、車速vが40km/hに至るまでは蓄電部27を放電しないように制御しているが、既定車速vkを可変することで、蓄電部27を放電する期間を長くすることが可能となる。ゆえに、既定車速vkを可変すると、制御回路37の制御が複雑になるため前記マイクロコンピュータの種類によっては高速処理が可能なものが必要になるが、前記回生電力のさらなる有効活用が可能となる。
【0064】
また、既定車速vkを設けず、蓄電部27に蓄えた前記回生電力を前記アイドリングストップ期間中にのみ主電源13や負荷19へ放電するように制御してもよい。この場合、蓄電部電圧Vcが高い期間が増えるので、図2(a)、(c)の時刻t11から時刻t12までのように前記車両が停止しているのに燃料消費を伴い蓄電部27を充電する期間を短縮することができる。但し、前記回生電力を前記車両の加速、定速走行中に利用しないので、長期間走行し続ける場合には前記回生電力の有効活用が本実施の形態1ほど図れない。従って、前記車両の走行状態に応じて既定車速vkの設定、不設定を適宜決定するようにしてもよい。
【0065】
また、本実施の形態1では図2(b)、(c)の時刻t6や時刻t13に示すように、前記アイドリングストップ中に蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至れば、前記エンジンを再始動して燃料消費を伴う発電機11の発電を行い、蓄電部電圧Vcは下限電圧Vckを維持するように制御しているが、これは次に述べる動作としてもよい。
【0066】
すなわち、制御回路37は前記アイドリングストップが行われている間に蓄電部電圧Vcが既定の下限電圧Vckに至ると、前記エンジンを主電源13の電力で始動し、これにより発生した発電機11の電力を蓄電部27に充電するようにDC/DCコンバータ25を制御する。その後、蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至れば前記アイドリングストップを再開するように制御するとともに、主電源13、および負荷19に蓄電部27の電力を供給するようDC/DCコンバータ25を制御する。これらの動作を、前記車両が使用中で停止している間、繰り返す。なお、前記車両の使用中とは、前記車両のイグニション(図示せず)がオンの状態であると定義する。このように制御することで、前記車両が使用中に長期間停止している場合、省燃費化が図れる。すなわち、本実施の形態1の蓄電部27は上記したように5秒で下限電圧Vckから満充電電圧Vcuまで充電できる。さらに、満充電の状態で主電源13や負荷19に約1分間(消費電力100Wの場合)電力を供給できる。これらのことから、蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至ると、前記エンジンを再始動して燃料消費を伴ってでも発電機11により蓄電部27を改めて満充電にし、その後前記エンジンを停止して再度蓄電部27の電力を放電するように制御した方が、本実施の形態1のように前記車両の使用中で停止中に一度しか蓄電部27の電力を放電しない構成に比べて前記エンジンを停止している期間をより長くすることができるので、さらなる省燃費化が図れる。なお、このような制御とするのは、上記したように、5秒以上前記エンジンを停止できるのであれば燃料消費を伴ってでも蓄電部27を満充電にして前記アイドリングストップ期間を延ばす方が燃料消費量を削減できる点に基く。
【0067】
但し、前記消費電力が大きい場合や蓄電部27の容量が小さい場合などでは前記車両の使用中で停止時に蓄電部27の充放電を繰り返しても省燃費効果が得られなくなる場合がある。従って、制御回路37が前記消費電力や蓄電部27の劣化に伴う容量低下などを把握して蓄電部27の繰り返し充放電を行うか否かを判断するようにしてもよい。また、蓄電部27の繰り返し充放電を行うと、スタータ15に負担がかかるため、スタータ15の耐久性によっては繰り返し充放電を行わない方が望ましい場合もある。
【0068】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における車両用電源装置の各種特性の経時変化図で、(a)は車速vの経時変化図を、(b)は蓄電部電圧Vcの経時変化図を、(c)は発電機状態の経時変化図を、それぞれ示す。
【0069】
本実施の形態2において、車両は実施の形態1で述べた停車中のアイドリングストップ機能と回生電力回収機能に加え、前記車両が減速中に前記エンジンが停止する機能を有する。この付加機能は次のような動作を行う。
【0070】
まず、実施の形態1の構成では、前記車両の減速時に車速vがフューエルカット終了車速vfに至ると、前記車両は前記エンジンのアイドリング回転数を維持するため前記エンジンに燃料を再噴射する。これにより、エンジンストールを回避している。
【0071】
一方、本実施の形態2の構成では、前記車両の減速時に車速vがフューエルカット終了車速vfに至ると、前記車両はクラッチ(図示せず)をニュートラルとして前記エンジンを停止する。これにより、実施の形態1では前記車両が停止した状態からアイドリングストップを開始しているが、本実施の形態2では車速vがフューエルカット終了車速vfに至ると減速走行中であっても前記エンジンを停止するので、その時点から前記アイドリングストップを開始する。従って、前記エンジンが停止している期間が実施の形態1よりも長くなるので、さらに燃費向上を図ることができる。なお、走行している最中に前記エンジンを運転停止する前記車両は、例えば特開平11−257121号公報や特開2007−177870号公報に記載されている。
【0072】
本実施の形態2では、上記した車両に車両用電源装置を適用した場合について説明する。
【0073】
まず、前記車両用電源装置の構成は図1と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0074】
次に、本実施の形態2の車両用電源装置における特徴となる動作について図3を参照しながら説明する。なお、図3(a)に示す車速vの経時変化図は図2(a)と同じとした。また、図3における横軸の時刻tは図2と同じ状態を示すものは図2と同じ符号を付した。
【0075】
図3において、時刻t0から時刻t3までの動作は図2と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0076】
時刻t31で図3(a)に示すように、車速vがフューエルカット終了車速vfに至ると、制御回路37は蓄電部電圧Vcを検出し、満充電電圧Vcuと比較する。ここで、図3(b)に示すように、時刻t31の時点で蓄電部電圧Vcは満充電電圧Vcuに至っているので、制御回路37は前記エンジンを停止するようにデータ信号dataを車両用制御回路41に送信する。これを受け、車両用制御回路41は前記クラッチをニュートラルにして前記エンジンを停止する動作を行う。これにより発電機11も停止するので、図3(c)に示すように発電機11は時刻t31で発電停止状態となる。しかし、制御回路37は前記エンジンを停止するようにデータ信号dataを送信すると同時に、蓄電部27に蓄えた回生電力を主電源13や負荷19に放電するようにDC/DCコンバータ25を制御するので、負荷19を継続して動作させることができる。このような動作により、図3(b)に示すように、時刻t31以降で蓄電部電圧Vcは経時的に低下する。
【0077】
時刻t32で図3(a)に示すように車速vは0km/hとなる。しかし、時刻t31で既に前記エンジンは停止しているため、制御回路37は時刻t32においても引き続き前記エンジンを停止したままとする。
【0078】
時刻t33で図3(b)に示すように蓄電部電圧Vcが下限電圧Vckに至る。これにより、制御回路37は前記エンジンを再始動するようにデータ信号dataを車両用制御回路41に送信する。この動作は図2の時刻t6と同じである。これにより、時刻t33以降の主電源13や負荷19への電力供給を発電機11から行うことができる。なお、実施の形態1で述べたように、時刻t33の時点で前記エンジンを再始動せず、主電源13の電力を負荷19に供給するように制御してもよい。この場合、発電機11の状態は図3(c)の太点線に示す動作となる。
【0079】
以上に説明した時刻t31から時刻t33の動作により、アイドリングストップ期間は、前記車両が減速中に前記エンジンが停止する時刻t31から前記エンジンが再始動する時刻t33までの期間となる。この期間を実施の形態1の時刻t5から時刻t6までの前記アイドリングストップ期間と比較すると、本実施の形態2ではアイドリングストップ期間が図2における時刻t4から開始されることに相当するので、実施の形態1に比べ早くから前記アイドリングストップが始まる。しかし、蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuから下限電圧Vckに至るまでの期間よりも長く前記車両が停止しているので、蓄電部27からの放電は主電源13や負荷19への電流が同じであれば放電期間も実施の形態1と同じになる。従って、ここでは実施の形態1と本実施の形態2との前記電流が同じであるとの前提で説明しているので、本実施の形態2では実施の形態1に比べて前記アイドリングストップが早く始まり早く終了するのみで、前記放電期間、すなわち前記アイドリングストップ期間は同じである。
【0080】
なお、本実施の形態2の前記車両における前記アイドリングストップ期間の延長が行われ省燃費が可能となる例は、後述する時刻t37から時刻t39で説明する。
【0081】
次に、図3における時刻t7から時刻t9までの動作は実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0082】
時刻t9で前記回生電力を蓄電部27に充電している状態で、時刻t34に至ると図3(a)に示すように車速vがフューエルカット終了車速vfに至る。ここで、制御回路37は蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至っているか否かを判断するが、図3(b)に示すように時刻t34で蓄電部電圧Vcは満充電電圧Vcuに至っていない。そこで、本来であれば時刻t31で説明したように前記車両の減速中に前記エンジンを停止する動作を行い、前記アイドリングストップを開始するところであるが、制御回路37は、蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至るようにするために、前記エンジンに燃料を再噴射するようデータ信号dataを車両用制御回路41に送信する。これにより、前記エンジンが燃料を消費して駆動し、図3(c)に示すように発電機11が前記燃料消費発電の状態となる。従って、制御回路37は蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至るまで前記エンジンの燃料消費を伴って発電機11が発電する電力を蓄電部27に充電するようにDC/DCコンバータ25を制御する。
【0083】
その後、時刻t35で図3(a)に示すように車速vが0km/hとなり前記車両が停止する。しかし、図3(b)に示すように、この時点でも蓄電部電圧Vcは満充電電圧Vcuに至っていない。そこで、制御回路37は車速vが0km/hになったとしても、引き続き前記エンジンを駆動し続け、発電機11が発生する燃料消費を伴う電力を蓄電部27に充電する。この動作は実施の形態1の時刻t11と同じである。
【0084】
これらの動作により、図3(b)に示すように、時刻t34から時刻t36まで蓄電部電圧Vcは上昇する。そして、時刻t36で蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至ると、制御回路37は前記エンジンを停止するように車両用制御回路41にデータ信号dataを送信するとともに、主電源13、および負荷19に蓄電部27の電力を供給するようDC/DCコンバータ25を制御する。これらの動作により、図3(c)に示すように発電機11は発電停止の状態となり時刻t36から前記アイドリングストップが開始される。また、図3(b)に示すように蓄電部電圧Vcは時刻t36以降で経時的に低下する。なお、時刻t36の動作は図2の時刻t12と同じである。
【0085】
このような動作により、本来なら前記エンジンを停止する時刻t34から時刻t35までの期間(前記車両が減速中に前記エンジンを停止する期間)、および時刻t35から時刻t36までの期間(前記車両が停車中に前記エンジンを停止する期間)であっても、蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至っていなければ前記エンジンを停止せずに蓄電部27を充電する動作を行うことで、実施の形態1と同様に、低速減速時で前記回生電力を十分に回収できない場合でも十分な前記アイドリングストップ期間を得ることが可能となる。
【0086】
なお、本実施の形態2では、本来なら前記エンジンを停止する時刻t34から時刻t35までの期間内に、発電機11による燃料消費を伴う発電電力を蓄電部27に充電しても蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至らず、引き続き前記車両が停車中の時刻t35から時刻t36までの期間にも燃料消費を伴う前記発電電力を蓄電部27に充電する場合について説明したが、時刻t34から時刻t35までの期間内に蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至った場合は、制御回路37はその時点で前記エンジンを停止し前記アイドリングストップを開始するとともに蓄電部27から主電源13や負荷19への放電を行うように制御する。
【0087】
次に、図3における時刻t13から時刻t18までの動作は実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0088】
時刻t37で図3(a)に示すように車速vがフューエルカット終了車速vfに至れば、制御回路37は蓄電部電圧Vcが満充電電圧Vcuに至っているので、減速中であるが前記エンジンを停止して前記アイドリングストップを開始するとともに、時刻t37から時刻t38までで蓄電部27に蓄えた前記回生電力を主電源13や負荷19に放電するようにDC/DCコンバータ25を制御する。これに伴い、蓄電部電圧Vcは図3(b)に示すように経時的に低下する。この動作は時刻t31と同じである。
【0089】
その後、図3(a)に示すように、時刻t38で車速vが0km/hとなるが、前記エンジンは時刻t37で既に停止しているので、そのまま停止状態を維持する。この動作も時刻t32と同じである。
【0090】
時刻t39で前記車両が走行を開始する。これにより、図3(a)に示すように車速vが経時的に増大する。この時、車両用制御回路41はスタータ15により前記エンジンを再始動するので、図3(c)に示すように発電機11は前記燃料消費発電を行う。この際、車速vは既定車速vkより小さいので、主電源13や負荷19への電力は発電機11から行われ、制御回路37は蓄電部27の放電が停止するように、すなわち蓄電部電圧Vcが時刻t39の時点の値を維持するようにDC/DCコンバータ25を制御する。その結果、図3(b)に示すように、蓄電部電圧Vcは時刻t39以降で一定値となる。
【0091】
この時刻t38から時刻t39までのように前記車両の停止期間が短い場合、実施の形態1に比べて本実施の形態2の方が前記アイドリングストップ期間を長くすることができる。すなわち、実施の形態1では図2の時刻t20から時刻t21までの、前記車両が停止している期間のみ前記アイドリングストップが行われるが、本実施の形態2では車速vがフューエルカット終了車速vfに至った時点(時刻t37)から前記エンジンを停止するので、実施の形態1に比べ時刻t37から時刻t38までの期間分、長く前記アイドリングストップを行うことができる。従って、その分の燃料消費が抑制されるので、省燃費化を図ることができる。
【0092】
時刻t22以降の動作については実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0093】
以上の構成、動作により、前記車両が減速中に前記エンジンを停止する構成であっても、前記車両が低速状態から減速し前記回生電力を蓄電部27に十分に充電できなかった場合、蓄電部27を満充電にしてから前記アイドリングストップを開始するので、十分な前記アイドリングストップ期間を得ることが可能となり省燃費化が図れる車両用電源装置が実現できる。
【0094】
なお、本実施の形態2においても実施の形態1と同様に、前記車両が停止し、かつ前記アイドリングストップを継続している場合、蓄電部27の繰り返し充放電を行ってもよい。
【0095】
また、図3(a)に示した既定車速vkやフューエルカット終了車速vfの値は、それらに限定されるものではなく、実施の形態1で述べた種々の条件に応じて適宜設定すればよい。
【0096】
また、実施の形態1で述べたように、既定車速vkを蓄電部電圧Vcに基いて可変する構成や、既定車速vkを設けない構成、既定車速vkの設定と不設定を適宜決定する構成を本実施の形態2に適用してもよい。
【0097】
また、本実施の形態2では、停車中にも前記アイドリングストップを行う構成について説明したが、これは停車中に前記アイドリングストップを行わず、減速中にのみ前記エンジンが停止する車両に前記車両用電源装置を適用してもよい。この場合でも、フューエルカット終了時点から停車時点までは前記エンジンを停止するので、その分、省燃費化が図れる。
【0098】
また、実施の形態1、2ではフューエルカット終了を車速vにより判断しているが、これに限定されるものではなく、例えばエンジン回転数、ブレーキペダルやアクセルペダルの状態、前記車両の加速度、ハンドル舵角等の様々なパラメータ、あるいはこれらのパラメータの任意の組合せに基いて前記フューエルカット終了を判断するようにしてもよい。
【0099】
また、実施の形態1、2では蓄電部27に前記電気二重層キャパシタを用いたが、これは電気化学キャパシタ等の他のキャパシタでもよい。また、蓄電部27として二次電池を用いる構成としてもよいが、前記二次電池は満充電するために時間がかかるので、より省燃費化を図るためには急速充電が可能な前記キャパシタを用いる方がよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明にかかる車両用電源装置は、前記車両が低速状態から減速した回生電力の少ない場合でも十分なアイドリングストップ期間を得ることができるので、特にアイドリングストップ機能と回生電力回収機能付き車両用電源装置等として有用である。
【符号の説明】
【0101】
11 発電機
13 主電源
19 負荷
25 DC/DCコンバータ
27 蓄電部
35 蓄電部電圧検出回路
37 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンにより発電する発電機と、
前記発電機とDC/DCコンバータを介して電気的に接続される蓄電部と、
前記発電機と電気的に接続される主電源、および負荷と、
前記蓄電部と電気的に接続され、蓄電部電圧(Vc)を検出する蓄電部電圧検出回路と、
前記DC/DCコンバータ、および前記蓄電部電圧検出回路と電気的に接続される制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記発電機が発電する回生電力を前記蓄電部に充電するよう前記DC/DCコンバータを制御するとともに、
前記車両が停止した際に前記蓄電部電圧(Vc)が既定の満充電電圧(Vcu)に至っていなければ、前記満充電電圧(Vcu)に至るまで前記エンジンの燃料消費を伴って前記発電機が発電する電力を前記蓄電部に充電するように前記DC/DCコンバータを制御し、前記蓄電部電圧(Vc)が満充電電圧(Vcu)に至れば、前記エンジンを停止してアイドリングストップを開始するように制御するとともに、前記主電源、および前記負荷に前記蓄電部の電力を供給するよう前記DC/DCコンバータを制御するようにした車両用電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記アイドリングストップが行われている間に前記蓄電部電圧(Vc)が既定の下限電圧(Vck)に至ると、前記エンジンを前記主電源の電力で始動し、これにより発生した前記発電機の電力を前記蓄電部に充電するように前記DC/DCコンバータを制御し、
前記蓄電部電圧(Vc)が前記満充電電圧(Vcu)に至れば前記アイドリングストップを再開するように制御するとともに、前記主電源、および前記負荷に前記蓄電部の電力を供給するよう前記DC/DCコンバータを制御する動作を、前記車両が使用中で停止している間、繰り返すようにした請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
車両のエンジンにより発電する発電機と、
前記発電機とDC/DCコンバータを介して電気的に接続される蓄電部と、
前記発電機と電気的に接続される主電源、および負荷と、
前記蓄電部と電気的に接続され、蓄電部電圧(Vc)を検出する蓄電部電圧検出回路と、
前記DC/DCコンバータ、および前記蓄電部電圧検出回路と電気的に接続される制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記発電機が発電する回生電力を前記蓄電部に充電するよう前記DC/DCコンバータを制御するとともに、
前記車両が減速中に前記エンジンが停止する際に前記蓄電部電圧(Vc)が既定の満充電電圧(Vcu)に至っていなければ、前記満充電電圧(Vcu)に至るまで前記エンジンの燃料消費を伴って前記発電機が発電する電力を前記蓄電部に充電するように前記DC/DCコンバータを制御し、前記蓄電部電圧(Vc)が満充電電圧(Vcu)に至れば、前記エンジンを停止するように制御するとともに、前記主電源、および前記負荷に前記蓄電部の電力を供給するよう前記DC/DCコンバータを制御するようにした車両用電源装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記車両の車速(v)が既定車速(vk)以上であれば、前記蓄電部の電力を前記主電源、および前記負荷に放電するよう前記DC/DCコンバータを制御するようにした請求項1、または3に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記蓄電部電圧(Vc)に基いて前記既定車速(vk)を可変するようにした請求項4に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記蓄電部はキャパシタで構成される請求項1、または3に記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−70581(P2012−70581A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214884(P2010−214884)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】