説明

車両用音量調整システム

【課題】 車両のオーディオ装置が作動しているときに警告音発生装置が作動した場合に、運転者が警告音発生装置の警告音を確実に聞き取ることができるようにすること。
【解決手段】 クリアランスソナー130の警告音が発生したときにオーディオ装置120が作動中であれば、オーディオ装置120の音量が設定値より大であるか否かを比較する。そして、オーディオ装置120の音量が設定値よりも大であれば、音量調整装置170がオーディオ装置120に接続されている可変抵抗器7の抵抗値を調整することにより、オーディオ装置120の音量を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ装置と警告音発生装置とを搭載する車両において、オーディオ装置からの音声と警告音発生装置からの警告音とが重なって発生したときに、少なくとも一方の装置の音量を調整するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の車両(例えば、自動車)では、走行中の運転者の監視負担を軽減するために、各種の運転支援装置が搭載されている。例えば、「クリアランスソナー」と称される装置は、車両の外面(バンパ)に距離を計測するセンサ(超音波を送信する送信機と、障害物に当たって反射した超音波を受信する受信機)を取り付け、車両から障害物までの距離を検知し、その距離が設定値以下になると警告音を発生し、運転者に注意を喚起するものである(例えば、特許文献1を参照)。これにより、運転者は、例えば車両を後退させるときに障害物までの距離を知覚できるため、車両の運転操作を容易に行うことができる。
【0003】
ここで、運転者が車両を後退させようとするときに、オーディオ装置が作動している場合を考える。オーディオ装置の音声とクリアランスソナーの警告音とは、それぞれ別のスピーカから発せられるため、両方の音声が重なって聞こえる場合がある。このときのオーディオ装置の音量が大きいと、運転者はクリアランスソナーの警告音を聞き取ることが困難になり、クリアランスソナーの警告音が発生しているのに聞こえない状況となって、的確な運転操作ができなくなるおそれがある。しかも、運転者はクリアランスソナーが搭載されていることを認識しているため、車両後退時の運転操作に関する注意力(例えば、障害物に対する注意力)が通常の場合(クリアランスソナーが搭載されていない場合)と比較して散漫になっていることが多い。この結果、運転者が障害物までの距離を誤認してしまうおそれがある。
【0004】
所定の条件の下でオーディオ装置の音量を低減させる技術として、例えば特許文献2に開示されるものがある。しかしこの技術は、緊急車両等から発せられる車外の音を感知してオーディオ装置の音量を低減させるものであるため、車内の警告音がオーディオ装置の音によってかき消されるという問題を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−255043号公報
【特許文献2】実開平5−6928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した不具合に鑑み、車両においてオーディオ装置が作動しているときに警告音発生装置が作動した場合に、少なくとも一方の装置の音量を調整して、運転者が警告音発生装置の警告音を確実に聞き取ることができるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための本発明は、
車両に搭載されるオーディオ装置と、
所定の条件で前記車両の運転者に警告音を発生する警告音発生装置と、
前記警告音発生装置が警告音を発生しようとするときに、前記オーディオ装置が作動中であり、かつその音量が設定値を超えていることを検知して少なくとも一方の装置の音量を調整する音量調整装置と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用音量調整システムが音量調整装置を備えていて、警告音発生装置の警告音が発生したときに、オーディオ装置が作動中であるか否かを検知し、オーディオ装置が作動中でかつその音量が設定値を超えている場合に少なくとも一方の装置の音量を調整する。これにより、オーディオ装置が作動中であっても運転者は警告音発生装置からの警告音を確実に聞き取ることができる。しかも、そのために運転者が何らの操作をする必要もないため、運転者は車両の運転に集中できる。
【0009】
前記音量調整装置は、前記警告音発生装置が警告音を発生しようとするときに、前記設定値を超えて作動中のオーディオ装置の音量を低減することが望ましい。
【0010】
オーディオ装置が作動しているときに、運転者が警告音発生装置の警告音を聞くためには、オーディオ装置の音量を低減すること、警告音発生装置の音量を増大すること、或いはその両方の操作を行うことが考えられる。このうち、オーディオ装置の音量を低減することが望ましい。これにより、運転者は警告音発生装置の警告音を通常の音量で聞くことができるため、警告音によって運転者の注意がそがれることが防止される。
【0011】
具体的には、前記音量調整装置は、
前記オーディオ装置が作動しているか否かを検知する作動検知手段と、
作動中の前記オーディオ装置の音量が設定値を超えているか否かを判断する音量比較手段と、
前記設定値を超えた音量で作動している前記オーディオ装置の音量を設定値以下に低減する音量低減手段と、
を備える。
【0012】
そして、前記音量調整装置がさらに、
前記警告音発生装置の警告音が発生する前の状態における前記オーディオ装置の音量を記憶する音量記憶手段と、
前記警告音発生装置の警告音の発生が終了したときに前記オーディオ装置の音量を前記音量記憶手段が記憶した音量に復帰する音量復帰手段と、
を備えることが望ましい。
【0013】
これにより、警告音発生装置からの警告音の発生が終了したときに、オーディオ装置の音量が低減される前のレベルに復帰するため、運転者はオーディオ装置の音声をそのまま継続して聞くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る音量調整システム100のブロック図である。
【図2】クリアランスソナー130の説明図である。
【図3】第1実施例の音量調整システム101のブロック図である。
【図4】人の聴感特性を示す図である。
【図5】音量調整装置170の構成を示す図である。
【図6】第1実施例の音量調整システム101の作用を示すフローチャートである。
【図7】第2実施例の音量調整システム102のブロック図である。
【図8】第3実施例の音量調整システム103のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明に係る音量調整システム100のブロック図、図2はクリアランスソナー130の説明図、図3は第1実施例の音量調整システム101のブロック図である。
【実施例1】
【0017】
図1に示されるように、本発明に係る車両用の音量調整システム100は、ECU110(電子制御ユニット)にオーディオ装置120と、警告音発生装置であるクリアランスソナー130、パーキングブレーキ警告音発生装置140、シートベルト警告音発生装置150及び車両後退警告音発生装置160と、これらの警告音発生装置130〜160からの警告音の発生に連動してオーディオ装置120の音量を調整する音量調整装置170が接続されている。以下、これらの警告音発生装置130〜160について順に説明する。なお、本明細書におけるオーディオ装置120は、カーナビゲーション装置(図示せず)をも含むものとする。
【0018】
図2に示されるように、クリアランスソナー130は、車両1のフロントバンパ2及びリアバンパ3のコーナー部に内装された各超音波センサ4により、車両1から所定距離以内に存する障害物Vの有無を検出するものである。運転者が、例えば車両1を壁際に駐車するときや縦列駐車をするときに、超音波センサ4が障害物V(この場合、壁や前後の車両)との距離を測る。そして、その距離が設定値(例えば50cm)以下になると警告音を発生して、運転者に注意を促す。通常の場合、計測された距離が設定値よりも大きい場合と小さい場合とで警告音を異ならせることにより、運転者が距離を確実に把握できるようにしている。
【0019】
パーキングブレーキ警告音発生装置140は、運転者がパーキングブレーキを未解除の状態で車両1を走行させようとしたとき(例えば、シフトレバーをドライブポジション又はリバースポジションに移動させ、かつブレーキから足を離したとき)、警告音を発生するものである。
【0020】
シートベルト警告音発生装置150は、運転者がシートベルトを未装着の状態で車両1を走行させ、その車両1の走行速度が設定値(例えば、10km/h)以上になったとき、警告音を発生するものである。
【0021】
車両後退警告音発生装置160は、運転者が車両1を後退させようとするとき(例えば、シフトレバーをリバースポジションに移動させたとき)及び実際に車両用1を後退させているときに、警告音を発生するものである。
【0022】
通常の車両では、運転者がこれらの装置130〜160における警告音の音量(音圧レベル)を変更することは困難であり、ほとんどの車両で初期設定のレベル(例えば「大」、「中」、「小」とあるときの「中」)のまま使用されている。
【0023】
次に、警告音発生装置がクリアランスソナー130における場合の音量調整システム(第1実施例の音量調整システム101)を説明する。図3に示されるように、第1実施例の音量調整システム101は、ECU110にオーディオ装置120とクリアランスソナー130と音量調整装置170とが接続されている。オーディオ装置120とクリアランスソナー130にはそれぞれスピーカ5、6が接続されていて、オーディオ装置120の音声はスピーカ5を介して発せられ、クリアランスソナー130の警告音はスピーカ6を介して発せられる。オーディオ装置120とスピーカ5との間に可変抵抗器7が介装されている。この抵抗値を調整することにより、オーディオ装置120の音量が調整される。そして、この抵抗値の調整は、音量調整装置170からの指令によって変更可能である。なお、この可変抵抗器7を、音量調整装置170から出力された指令に基づいて抵抗値を変えることのできるもの(電子ボリューム)とすることができる。
【0024】
ここで、図4に示されるように、人の聴感特性は、通常の会話の音量(音圧レベル)は50〜60dB(デシベル)、それよりも小さい声での会話の音量は30〜40dB、それよりも大きな声での会話の音量は70〜80dBである。これを基準として、クリアランスソナー130の警告音の音量を60dBと設定する(設定値)。すると、運転者がオーディオ装置120の音量を60dB以上にしていると、オーディオ装置120が作動しているときにクリアランスソナー130の警告音が発生してもその警告音がオーディオ装置120の音声にかき消されて、運転者が聞き取れないおそれがある。
【0025】
この不具合を避けるため、第1実施例の音量調整システム101ではクリアランスソナー130の警告音が発生したときにオーディオ装置120が作動していた場合、音量調整装置170がオーディオ装置120の音量を自動的に低減するという機能を有している。即ち、図5に示されるように、音量調整装置170はオーディオ装置120が作動しているか否かを判断する作動検知手段8と、オーディオ装置120が作動している場合にその音量を記憶する音量記憶手段9と、オーディオ装置120の音量を設定値(本実施例の場合、60dB)と比較する音量比較手段10と、オーディオ装置120の音量を設定値よりも低減する音量低減手段11と、クリアランスソナー130の警告音の発生が終了した後にオーディオ装置120の音量を音量記憶手段9が記憶したレベルまで引き上げる音量復帰手段12とを備える。
【0026】
本実施例の音量調整システム101の作用について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。クリアランスソナー130の警告音が発生する(ステップS1のYes)。すると、音量調整装置170の作動検知手段8が、オーディオ装置120が作動中であるか否かを検知し(ステップS2)、作動中であれば(ステップS2のYes)、音量記憶手段9がそのときのオーディオ装置120の音量(デシベル値)を記憶するとともに(ステップS3)、音量比較手段10がその音量を設定値(本実施例の場合、60dB)と比較する(ステップS4)。このとき、オーディオ装置120の音量が設定値よりも大であれば(ステップS4のYes)、音量調整装置170の音量低減手段11が作動し、オーディオ装置120の音量を、一時的に設定値よりも低い値(例えば50dB)に低減させる(ステップS5)。ここで音量が10dB下がると、運転者は音量が約半分になったと感じるため、オーディオ装置120が作動中であっても運転者はクリアランスソナー130の警告音を確実に聞き取ることができる。
【0027】
そして、クリアランスソナー130の警告音の発生が終了したら(ステップS6のYes)、音量調整装置170の音量復帰手段12が、オーディオ装置120の音量を音量記憶手段9が記憶している音量に復帰させる(ステップS7)。これにより、運転者が自身でオーディオ装置120のボリュームを操作しなくても、オーディオ装置120の音量が自動的に原状のレベルに復帰する。
【実施例2】
【0028】
上記の第1実施例の音量調整システム101では、音量調整装置170が所定の場合にオーディオ装置120の音量を低減させるものである。しかし、図7に示される第2実施例の音量調整システム102のように、クリアランスソナー130に可変抵抗器7が設けられていて、所定の場合に音量調整装置170がクリアランスソナー130の警告音の音量を増大させる形態であってもよい。
【実施例3】
【0029】
上記の第1及び第2の実施例の音量調整システム101、102では、いずれか一方の音量を調整する形態である。しかし、図8に示される第3実施例の音量調整システム103のように、オーディオ装置120とクリアランスソナー130の双方に可変抵抗器7を設け、所定の場合に音量調整装置170がオーディオ装置120の音量を低減させると同時にクリアランスソナー130の警告音の音量を増大させるようにしてもよい。
【実施例4】
【0030】
上記の第1ないし第3の実施例の音量調整システム101〜103は、オーディオ装置120の音量又はクリアランスソナー130の警告音の音量を電気的に調整(低減又は増大)する形態である。しかし、例えばオーディオ装置120のスピーカ5の前面に開閉可能なシャッタ(図示せず)を配置し、所定の場合にシャッタを閉じることによってオーディオ装置120の音量を低下させるもののように、オーディオ装置120の音量レベルを機械的に低下させるものであってもよい。
【0031】
本明細書では、警告音発生装置がクリアランスソナー130の場合について説明した。しかし、他の警告音発生装置の場合であっても全く同様である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車載オーディオ装置の音量を低減させる装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
100〜103 音量調整システム
120 オーディオ装置
130 クリアランスソナー(警告音発生装置)
140 パーキングブレーキ警告音発生装置(警告音発生装置)
150 シートベルト警告音発生装置(警告音発生装置)
160 車両後退警告音発生装置(警告音発生装置)
170 音量調整装置
1 車両
7 可変抵抗器(音量低減手段)
8 作動検知手段
9 音量記憶手段
10 音量比較手段
11 音量低減手段
12 音量復帰手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるオーディオ装置と、
所定の条件で前記車両の運転者に警告音を発生する警告音発生装置と、
前記警告音発生装置が警告音を発生しようとするときに、前記オーディオ装置が作動中であり、かつその音量が設定値を超えていることを検知して少なくとも一方の装置の音量を調整する音量調整装置と、
を備えることを特徴とする車両用音量調整システム。
【請求項2】
前記音量調整装置は、前記警告音発生装置が警告音を発生しようとするときに、前記設定値を超えて作動中のオーディオ装置の音量を低減することを特徴とする請求項1に記載の車両用音量調整システム。
【請求項3】
前記音量調整装置は、
前記オーディオ装置が作動しているか否かを検知する作動検知手段と、
作動中の前記オーディオ装置の音量が設定値を超えているか否かを判断する音量比較手段と、
前記設定値を超えた音量で作動している前記オーディオ装置の音量を設定値以下に低減する音量低減手段と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両用音量調整システム。
【請求項4】
前記音量調整装置がさらに、
前記警告音発生装置の警告音が発生する前の状態における前記オーディオ装置の音量を記憶する音量記憶手段と、
前記警告音発生装置の警告音の発生が終了したときに前記オーディオ装置の音量を前記音量記憶手段が記憶した音量に復帰する音量復帰手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の車両用音量調整システム。
【請求項5】
前記警告音発生装置はクリアランスソナーであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用音量調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−143775(P2011−143775A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4685(P2010−4685)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】