説明

車両用駆動装置

【課題】ロータ軸の内部に供給する潤滑液量の確保が容易な車両用駆動装置を実現する。
【解決手段】回転電機に対して軸方向Lの一方側である軸第一方向L1側に、ロータ軸12の径方向外側に配置されて当該ロータ軸12を支持する第一軸受71を備えるとともに、第一軸受71の軸第一方向L1側に、貫通軸40の径方向外側に配置されて当該貫通軸40を支持する第二軸受72を備え、潤滑液供給部63は、軸方向Lにおける第一軸受71と第二軸受72との間であって貫通軸40の回転軸心より下側に、潤滑液を貯留する潤滑液貯留部62を備え、潤滑液貯留部62が、ロータ軸12の軸第一方向L1側の開口部12aの最下部よりも上側において当該開口部12aと軸方向Lに連通する部分を有するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と、回転電機の円筒状のロータ軸を軸方向に貫通して配置される貫通軸と、ロータ軸と貫通軸との間で動力の伝達を行う動力伝達機構と、動力伝達機構の回転によって供給される潤滑液をロータ軸の内部に供給する潤滑液供給部と、少なくとも回転電機及び動力伝達機構を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置の従来技術として、例えば下記の特許文献1に記載された技術がある。以下、この背景技術の説明では、特許文献1の符号又は名称を適宜()内に記載して引用する。特許文献1に記載の車両用駆動装置は、ロータ軸(ロータシャフト26)と貫通軸(右側アクスルシャフトAXR)との間で動力の伝達を行う動力伝達機構の回転を利用し、潤滑液を回転電機(電動モータ20)に供給して当該回転電機を冷却する構成を備えている。具体的には、差動入力ギヤ(ファイナルドリブンギヤ53)の回転によりケース(ハウジング10)内の潤滑液を掻き上げ、掻き上げられた潤滑液が、ロータ軸の内部に供給される構成となっている。
【0003】
ところで、特許文献1の構成では、当該文献の段落0024及び図1に示されているように、差動入力ギヤにより掻き上げられた潤滑液は、ロータ軸や貫通軸を直接或いは間接的に支持するための軸受(第6ベアリングB6及び第8ベアリングB8)を介してロータ軸の内部に供給される。しかしながら、このような構成では、ロータ軸の内部に対する潤滑液の供給量が、当該軸受内を通過することが可能な量に制限されるため、ロータ軸の内部に供給される潤滑液の量を十分に確保できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−278319号公報(段落0024、図1、図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、ロータ軸の内部に供給する潤滑液量の確保が容易な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転電機と、前記回転電機の円筒状のロータ軸を軸方向に貫通して配置される貫通軸と、前記ロータ軸と前記貫通軸との間で動力の伝達を行う動力伝達機構と、前記動力伝達機構の回転によって供給される潤滑液を前記ロータ軸の内部に供給する潤滑液供給部と、少なくとも前記回転電機及び前記動力伝達機構を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置の特徴構成は、前記回転電機に対して前記軸方向の一方側である軸第一方向側に、前記ロータ軸の径方向外側に配置されて当該ロータ軸を支持する第一軸受を備えるとともに、前記第一軸受の前記軸第一方向側に、前記貫通軸の径方向外側に配置されて当該貫通軸を支持する第二軸受を備え、前記潤滑液供給部は、前記軸方向における前記第一軸受と前記第二軸受との間であって前記貫通軸の回転軸心より下側に、潤滑液を貯留する潤滑液貯留部を備え、前記潤滑液貯留部が、前記ロータ軸の前記軸第一方向側の開口部の最下部よりも上側において当該開口部と前記軸方向に連通する部分を有するように形成されている点にある。
【0007】
本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0008】
上記の特徴構成によれば、潤滑液貯留部に貯留された潤滑液を、ロータ軸の開口部と軸方向に連通する部分を介して、ロータ軸の内部に直接供給することができる。なお、この潤滑液貯留部は、軸方向における第一軸受と第二軸受との間に形成されているため、例えば当該潤滑液貯留部に対して径方向外側から潤滑液を供給する構成とするなどで、第一軸受や第二軸受を介さずにロータ軸の内部に潤滑液を供給することが容易となっている。よって、第一軸受や第二軸受を介する必要がある場合に比べて、ロータ軸の内部に供給する潤滑液量の確保が容易となる。
また、潤滑液貯留部の上部のみが、ロータ軸の開口部と軸方向に連通する構成とすれば、当該潤滑液貯留部からあふれた潤滑液がロータ軸の内部に供給される構成となる。この場合、潤滑液に含まれる不純物(屑等)を潤滑液貯留部の下部に沈殿させて、当該不純物が循環するのを抑制することができる。
【0009】
ここで、前記第一軸受及び前記第二軸受は、前記軸方向視で互いに重複する部分を有するように配置され、前記潤滑液貯留部は、前記軸方向視で前記第一軸受及び前記第二軸受の双方と重複する領域を有するように形成されていると好適である。
【0010】
本願において、2つの部材の配置に関して所定方向視で「重複」とは、当該所定方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの部材が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを指す。
【0011】
この構成によれば、装置が径方向に大型化するのを抑制しつつ、潤滑液貯留部を備えた車両用駆動装置を実現することが可能となる。また、潤滑液貯留部に貯留された潤滑液の一部を、潤滑のために第一軸受や第二軸受に供給する構成を採用する場合には、これら第一軸受や第二軸受に対する潤滑液の供給構成を簡素なものとすることが可能となる。
【0012】
また、前記第一軸受の前記軸第一方向側に配置されて前記潤滑液貯留部の前記軸第一方向とは反対側の軸第二方向側を区画する第一円環状部材と、前記第二軸受の前記軸第二方向側に配置されて前記潤滑液貯留部の前記軸第一方向側を区画する第二円環状部材と、を備え、前記第一円環状部材は、前記ロータ軸の径方向に延びるように形成され、径方向内側端部が前記開口部より径方向内側に位置する第一径方向延在部と、当該第一径方向延在部の径方向内側端部から前記軸第二方向側に延びるように形成され、先端部が前記ロータ軸の内部に位置する軸方向延在部と、を備え、前記第二円環状部材は、前記径方向に延びるように形成され、径方向内側端部が前記第一径方向延在部の径方向内側端部より径方向内側に位置する第二径方向延在部を備え、前記第二径方向延在部を前記軸方向に貫通する貫通孔が、前記第一径方向延在部の径方向内側端部の最下部より下側に形成されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、第二径方向延在部の径方向内側端部が、第一径方向延在部の径方向内側端部より径方向内側に位置するため、潤滑液貯留部からあふれる潤滑液の大部分を、第一円環状部材側、すなわち、ロータ軸側に導くことが可能となる。この際、第一円環状部材は、先端部がロータ軸の内部に位置する軸方向延在部を備えるため、当該軸方向延在部を伝わせることで、ロータ軸側に導かれた潤滑液を効率良くロータ軸の内部に供給することができる。
さらに、第二径方向延在部を軸方向に貫通する貫通孔が、第一径方向延在部の径方向内側端部の最下部より下側に形成されているため、一定量の潤滑液を第二円環状部材側に積極的に流出させ、例えば第二軸受の潤滑を行うことが可能となる。
また、潤滑液貯留部の軸方向における第一軸受が設けられた側に配置された第一円環状部材を利用して、潤滑液貯留部から第一円環状部材側にあふれた潤滑液の一部が第一軸受に供給される構成とすることも可能である。
【0014】
また、前記動力伝達機構は、前記ケース内の潤滑液を掻き上げる掻き上げ部材を備え、前記潤滑液供給部は、前記掻き上げ部材により掻き上げられた潤滑液を受け止める潤滑液受け止め部と、前記潤滑液受け止め部にて受け止められた潤滑液を前記潤滑液貯留部に流通させる潤滑液流路と、を備え、前記潤滑液貯留部は、前記軸方向における前記第一軸受と前記第二軸受との間に形成された前記ロータ軸の周方向に連続する周方向連続空間の下部に形成され、前記周方向連続空間における前記潤滑液貯留部より上側に、前記潤滑液流路が開口していると好適である。
【0015】
この構成によれば、重力や表面張力を利用した簡素な構成で、潤滑液貯留部に対して潤滑液を供給することが可能となる。特に、潤滑液流路から潤滑液貯留部に対する潤滑液の供給は、潤滑液流路の開口から潤滑液を滴下させるだけで行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置を軸方向に沿って切断した断面図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両の模式図である。
【図4】図1における一部拡大図である。
【図5】図4におけるV−V断面図である。
【図6】本発明のその他の実施形態に係る車両用駆動装置を軸方向に沿って切断した一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る車両用駆動装置の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置(以下、単に「駆動装置」という。)は、図1に示すように、ケース90内に回転電機10、差動歯車機構20、及びカウンタギヤ機構30を備えている。そして、駆動装置1を搭載した車両100(図3参照)は、カウンタギヤ機構30を介して差動歯車機構20に伝達される回転電機10の出力トルクにより、走行するための駆動力を得ることが可能に構成されている。具体的には、本実施形態では、図3に示すように、駆動装置1は、車両100の後ろ側の車輪50(後輪)を駆動するための駆動装置とされている。以下、本実施形態に係る駆動装置1の構成について詳細に説明する。本実施形態では、差動歯車機構20とカウンタギヤ機構30とが、本発明における「動力伝達機構」を構成している。
【0018】
以下の説明では、特に断らない限り、「軸方向L」は回転電機10の軸心である第一軸A1(図1、図2参照)を基準として定義している。また、「軸第一方向L1」は、本実施形態では、軸方向Lに沿って回転電機出力ギヤ13からロータコア11側へ向かう方向(図1における右方向)を表し、「軸第二方向L2」は、軸第一方向L1とは反対方向(図1における左方向)を表す。なお、各部材についての方向は、当該各部材が駆動装置1に組み付けられた状態での方向を表す。ここで、各部材についての方向や、2つの部材間の配置方向の関係(例えば、「平行」や「直交」等)は、製造上の誤差に応じたずれを含む概念として用いている。このような製造上の誤差は、例えば、寸法や取付位置の公差の範囲内のずれにより生じる。
【0019】
また、以下の説明では、特に断らない限り、「上」及び「下」は、駆動装置1の車両100への搭載状態での鉛直方向V(図2参照)を基準として定義しており、「上」は図2における上方を表し、「下」は図2における下方を表す。同様に、「前」及び「後」は、駆動装置1の車両100への搭載状態での車両100の前後方向H(図2、図3参照)を基準として定義しており、「前」は図2及び図3における左方(車両前方H1)を表し、「後」は図3における右方(車両後方H2)を表す。そして、本実施形態では、駆動装置1は、軸方向Lが車両100の左右方向に平行となるように、車両100に搭載される。
【0020】
1.駆動装置の全体構成
まず、本実施形態に係る駆動装置1の全体構成について説明する。図1に示すように、駆動装置1は、回転電機10と、差動歯車機構20と、カウンタギヤ機構30と、ケース90と、を備えている。回転電機10は、車輪50(図3参照)の駆動力源として備えられている。回転電機10は、ケース90に固定されたステータ14と、ステータ14の径方向内側に回転自在に支持されたロータコア(ロータ本体部)11と、を備えている。ロータコア11は、ロータ軸12に固定され、当該ロータ軸12を介して、ロータコア11と、回転電機10のトルクを出力するための回転電機出力ギヤ13とが駆動連結されている。
【0021】
なお、本明細書において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦係合要素や噛み合い式係合要素等が含まれていてもよい。
【0022】
本実施形態では、回転電機出力ギヤ13は、ロータ軸12と同軸状に、且つ、ロータ軸12と一体回転するように、ロータコア11に対して軸第二方向L2側に配置されている。具体的には、回転電機出力ギヤ13は、スプライン係合によりロータ軸12に対して相対回転不能に固定されている。これにより、本実施形態では、ロータコア11は、ロータ軸12を介して、回転電機出力ギヤ13と一体回転するように駆動連結されている。
【0023】
回転電機10(より具体的には回転電機10のロータコア11)に対して軸第一方向L1側には、ロータ軸12の径方向外側に配置されて当該ロータ軸12を支持する第一軸受71が備えられ、回転電機10(より具体的には回転電機10のロータコア11)に対して軸第二方向L2側には、ロータ軸12の径方向外側に配置されて当該ロータ軸12を支持する第三軸受73が備えられている。図1に示すように、第一軸受71は、ケース90の端壁92に配置され、第三軸受73は、ケース90の隔壁91に配置されている。
【0024】
本実施形態では、ロータ軸12は、径方向の内側が中空の円筒状に形成されており、当該中空の部分を利用して軸内流路67が形成されている。また、ロータ軸12には、軸内流路67と当該ロータ軸12の外周面とを径方向に連通するための貫通流路68が形成されている。そして、後述するように、駆動装置1には、潤滑液を回転電機10に供給するための潤滑液供給部63が備えられており、潤滑液供給部63により供給された潤滑液が、軸内流路67及び貫通流路68を介して、ステータ14のコイルエンド部15に供給され、当該コイルエンド部15の冷却が行われる。
【0025】
差動歯車機構20は、差動入力ギヤ21を有し、当該差動入力ギヤ21に伝達されるトルク(本例では回転電機10の出力トルク)を複数の車輪50(図3参照)に分配する機構(出力用差動歯車機構)である。本実施形態では、差動歯車機構20は、互いに噛み合う複数の傘歯車を用いた差動歯車機構により構成されている。そして、差動歯車機構20は、軸方向Lの両側に備えられた出力軸40を介して、左右の車輪50のそれぞれに駆動連結されており、差動入力ギヤ21に伝達されたトルクは、差動歯車機構20及び出力軸40を介して左右の車輪50(本例では後輪)に分配される。本実施形態では、差動歯車機構20は、回転電機10に対して軸第二方向L2側に配置されている。本実施形態では、出力軸40が、本発明における「貫通軸」に相当する。
【0026】
第一軸受71に対して軸第一方向L1側には、出力軸40の径方向外側に配置されて当該出力軸40を支持する第二軸受72が備えられ、第三軸受73に対して軸第二方向L2側には、出力軸40の径方向外側に配置されて当該出力軸40を支持する第四軸受74が備えられている。なお、本例では、出力軸40は、差動歯車機構20を介して間接的に第四軸受74に支持されている。図1に示すように、第二軸受72は、ケース90の端壁92に配置され、第四軸受74は、ケース90の隔壁91(より正確には、隔壁91に固定された支持部材93)に配置されている。
【0027】
詳細は省略するが、出力軸40における差動歯車機構20との連結部とは反対側には、車輪50に駆動力を伝達するための回転軸51(ドライブシャフト等、図3参照)が連結されており、出力軸40と車輪50とは同方向に回転する。また、図1に示すように、出力軸40の大部分(差動歯車機構20に連結される側の部分)は、ケース90に収容されている。
【0028】
カウンタギヤ機構30は、回転電機10の出力トルクを差動入力ギヤ21に伝達する機構である。具体的には、カウンタギヤ機構30は、回転電機10の出力トルクが伝達される回転電機出力ギヤ13に噛み合う第一ギヤ31と、第一ギヤ31に対して軸第二方向L2側に配置されるとともに差動入力ギヤ21に噛み合う第二ギヤ32と、第一ギヤ31と第二ギヤ32とを連結するカウンタ軸33と、を有している。本実施形態では、第二ギヤ32は、カウンタ軸33の外周面に一体的に形成されており、第一ギヤ31は、スプライン係合によりカウンタ軸33に対して相対回転不能に固定されている。
【0029】
本実施形態では、カウンタギヤ機構30は、回転電機10の軸第二方向L2側に配置されており、更に、回転電機10の径方向視で、差動歯車機構20と重複する部分を有するように配置されている。そして、第一ギヤ31が、軸方向Lにおける回転電機10(より具体的には回転電機10のロータコア11)と差動入力ギヤ21との間に配置されている。
【0030】
上記のような構成を備えることで、車両100の走行時には、車輪50に対して回転電機10の回転方向と同方向のトルクが伝達される。そして、第一ギヤ31は、カウンタギヤ機構30及び差動歯車機構20を介して出力軸40に常時駆動連結されているため、第一ギヤ31は、出力軸40の回転(すなわち、車両の走行)に伴い回転する。後述するように、第一ギヤ31は、回転時にケース90内に貯留された潤滑液(オイル)を掻き上げるように構成されており、第一ギヤ31により掻き上げられた潤滑液が、潤滑液供給部63を介して回転電機10に供給される。本実施形態では、第一ギヤ31が、本発明における「掻き上げ部材」に相当する。
【0031】
上述したように、本実施形態では、駆動装置1は車両100の後輪を駆動するように構成されている。そして、本例では、図3に示すように、車両100には前輪を駆動するための第二の駆動装置(第二駆動装置2)が備えられている。第二駆動装置2として、例えば、本発明に係る駆動装置を適用したり、或いは、内燃機関を車輪の駆動力源として備える駆動装置や、内燃機関及び回転電機の双方を車輪の駆動力源として備える駆動装置を採用することができる。ここで、内燃機関は、燃料の燃焼により動力を出力する原動機であり、例えば、ガソリンエンジン等の火花点火機関やディーゼルエンジン等の圧縮着火機関等を用いることができる。なお、第二の駆動装置(第二駆動装置2)を備えない構成とすることや、駆動装置1を車両の前方に配置して、当該駆動装置1により車両100の前輪を駆動する構成とすることも可能である。
【0032】
ケース90は、回転電機10、差動歯車機構20、及びカウンタギヤ機構30を収容するように構成されている。本例では、更に、出力軸40の一部及びロータ軸12も、ケース90に収容されている。具体的には、ケース90は、当該ケース90の内部に形成されるケース内空間Tの軸第一方向L1側を区画する端壁92を備えるとともに、当該ケース内空間Tを軸方向Lに区画する隔壁91を備えている。この隔壁91により、ケース内空間Tが、軸第二方向L2側の収容空間である第一収容室T1と、軸第一方向L1側の収容空間である第二収容室T2とに区画されている。そして、差動歯車機構20及びカウンタギヤ機構30の双方は、第一収容室T1に収容され、回転電機10は、第二収容室T2に収容されている。
【0033】
本実施形態では、回転電機10及び差動歯車機構20は、ケース90内において同軸状に配置されている。このような配置構成を実現すべく、本実施形態では、ロータ軸12が中空の円筒状に形成され、出力軸40がロータ軸12を貫通して配置されている。また、差動入力ギヤ21は、差動歯車機構20と同軸状に配置されている。よって、本例では、回転電機10と、差動入力ギヤ21と、出力軸40とが同軸状に配置されている。
【0034】
また、本実施形態では、カウンタギヤ機構30は、ケース90内において、回転電機10及び差動歯車機構20が配置される軸(第一軸A1)とは異なる軸(第二軸A2)上に配置されている。本例では、第一軸A1及び第二軸A2は、互いに平行に配置されているとともに、第二軸A2が、第一軸A1よりも下方(図2参照)に配置されている。これにより、本実施形態では、カウンタ軸33の回転軸心が、回転電機10の回転軸心より下側に配置される。なお、本実施形態では、図2に示すように、カウンタ軸33の外周面の最上部が、出力軸40の外周面の最下部と同じ高さ或いはほぼ同じ高さに位置するように、第二軸A2の第一軸A1に対する上下方向の位置が設定されている。
【0035】
そして、本実施形態では、図3に模式的に示すように、回転電機10、差動歯車機構20、及びカウンタギヤ機構30を収容するケース90の全体が、車両100のフロア101下に配置されている。すなわち、駆動装置1は、上方から見てケース90の全体がフロア101と重複するとともに、ケース90がフロア101より下側に位置するように、車両100に搭載されている。
【0036】
2.潤滑液の供給構成
次に、本実施形態に係る駆動装置1の要部である潤滑液の供給構成について、図1及び図2を用いて説明する。図1に示すように、ケース90には、潤滑液を貯留する第一潤滑液貯留部61が形成されている。具体的には、第一潤滑液貯留部61は、本実施形態では、第一収容室T1の下部に形成されており、上方に開口する槽状部とされている。そして、第一ギヤ31は、当該第一ギヤ31の一部が、第一潤滑液貯留部61内に位置するように配置されている。これにより、車両100の走行時に、第一ギヤ31により第一潤滑液貯留部61に貯留された潤滑液を掻き上げることができる。
【0037】
なお、第一ギヤ31による潤滑液の掻き上げを適切に行うべく、回転電機10が使用される回転速度域の全て或いは大部分において、第一ギヤ31の最下部が第一潤滑液貯留部61内の潤滑液の液面高さ(液面レベル)よりも下側に位置するように、ケース90の内部に収容される潤滑液の量を設定すると好適である。
【0038】
第一ギヤ31により掻き上げられた第一潤滑液貯留部61内の潤滑液は、潤滑液供給部63を介して回転電機10に供給される。なお、図1においては、潤滑液の流れを概念的に実線及び破線の矢印で表している。ここでは、掻き上げによる流れを破線で表し、潤滑液供給部63による流れを実線で表している。図2においては、掻き上げによる潤滑液の流れを概念的に破線の矢印で表している。本実施形態では、潤滑液供給部63は、潤滑液受け止め部64と、潤滑液流路65,66と、第二潤滑液貯留部62と、を備え、動力伝達機構としての差動歯車機構20或いはカウンタギヤ機構30の回転(本例では、第一ギヤ31の回転)によって供給される潤滑液を、ロータ軸12の内部に供給するように構成されている。
【0039】
潤滑液受け止め部64は、第一ギヤ31により掻き上げられた潤滑液を受け止める機能を有している。図2に示すように、第一ギヤ31により掻き上げられた潤滑液は、ケース90の内面を伝う等して、潤滑液受け止め部64に供給される。本実施形態では、潤滑液受け止め部64は、潤滑液を受け止めて貯留するオイルキャッチタンクとして構成されている。
【0040】
潤滑液受け止め部64は、図2に示すように、カウンタ軸33の回転軸心である第二軸A2より上側(第二軸A2を通る水平面よりも上側)に配置されている。なお、重力や表面張力を利用した簡素な構成で潤滑液を回転電機10に供給することを可能とすべく、本例では、潤滑液受け止め部64が、第一収容室T1の上部に配置されているとともに(図2参照)、第一ギヤ31と同じ軸方向L位置に配置されている(図1参照)。
【0041】
具体的には、潤滑液受け止め部64は、潤滑液が貯留される空間である潤滑液貯留空間の下方を覆う底部64bと、側方の周囲を覆う側壁部64cと、潤滑液貯留空間から見て第一収容室T1に開口する開口部64aとを有する。また、潤滑液貯留空間の上方は、ケース90の周壁により覆われている。これにより、第一ギヤ31により掻き上げられ、ケースの内面を伝って流れ落ちてくる潤滑液が、開口部64aを介して潤滑液受け止め部64の内部(潤滑液貯留空間)に供給される。
【0042】
潤滑液流路65,66は、潤滑液受け止め部64にて受け止められた潤滑液を、回転電機10(より正確には、第二潤滑液貯留部62)に流通させるための流路である。本実施形態では、潤滑液流路65,66は、ケース90の壁部(壁内)に形成された孔部により構成されている。また、本実施形態では、潤滑液流路65,66は、軸方向Lに延びる第一潤滑液流路66と、回転電機10の径方向に延びる第二潤滑液流路65とにより構成されている。
【0043】
具体的には、第一潤滑液流路66は、一端が、潤滑液受け止め部64の側壁部64cに形成された孔部を介して潤滑液受け止め部64内に開口するとともに、他端が、第二潤滑液流路65に連通するように形成されている。第一潤滑液流路66は、周方向連続空間S(後述する)より上方に位置している。なお、第一潤滑液流路66は、図1に示す例のように延在方向が水平方向に平行となるように形成することも、潤滑液受け止め部64から第二潤滑液流路65側へ向かう(軸第一方向L1側に向かう)延在方向が、水平方向に対して下方に傾斜するように形成することもできる。
【0044】
第二潤滑液流路65は、第一潤滑液流路66との連通部(径方向外側の端部)とは反対側の端部(径方向内側の端部)に、周方向連続空間Sに開口する開口部65aを有している。ここで、周方向連続空間Sは、軸方向Lにおける第一軸受71と第二軸受72との間に形成されたロータ軸12の周方向に連続する空間である。第一潤滑液流路66と第二潤滑液流路65との連通部は、開口部65aより上方に位置している。
【0045】
そして、周方向連続空間Sの下部に、第二潤滑液貯留部62が形成されている。ここで、第二潤滑液流路65の上記開口部65aは、周方向連続空間Sにおける第二潤滑液貯留部62より上側(本例では、周方向連続空間Sにおける最上部)に配置されている。これにより、開口部65aから重力を利用して潤滑液を滴下させて、出力軸40の外周面上を下側に向けて伝わせるという簡素な構成で、第二潤滑液流路65から第二潤滑液貯留部62に対して潤滑液を適切に供給することが可能となっている。
【0046】
このように、潤滑液受け止め部64にて受け止められた潤滑液は、重力の作用を受けて潤滑液流路65,66を下流側に向かって流通して第二潤滑液貯留部62に供給され、当該第二潤滑液貯留部62に貯留される。そして、次の「3.第二潤滑液貯留部の構成」の項で説明するように、第二潤滑液貯留部62に貯留された潤滑液は、軸内流路67に供給される。軸内流路67に供給された潤滑液は、ロータ軸12の回転に伴う遠心力により貫通流路68を介してロータ軸12の径方向外側に噴射され、ステータ14のコイルエンド部15に吹きかけられた潤滑液によりコイルエンド部15の冷却が行われる。
【0047】
3.第二潤滑液貯留部の構成
次に、本実施形態に係る駆動装置1が備える第二潤滑液貯留部62の構成について、図4及び図5を用いて説明する。上述したように、第二潤滑液貯留部62は、周方向連続空間Sの下部に形成されている。ここで、周方向連続空間Sは、軸方向Lにおける第一軸受71と第二軸受72との間に形成されたロータ軸12の周方向に連続する空間である。これにより、第二潤滑液貯留部62は、軸方向Lにおける第一軸受71と第二軸受72との間に設けられる。本実施形態では、第二潤滑液貯留部62が、本発明における「潤滑液貯留部」に相当する。
【0048】
第二潤滑液貯留部62は、周方向連続空間Sの内部であって、出力軸40の回転軸心(第一軸A1)より下側に形成されている。なお、本実施形態では、周方向連続空間Sは、ロータ軸12の周方向の全域(全周)に亘って連続する空間とされている。そして、第二潤滑液貯留部62は、周方向連続空間Sの最下部を含む部分に設けられている。また、上述したように、周方向連続空間Sの最上部に、第二潤滑液流路65の開口部65aが形成されている。
【0049】
図4に示すように、本実施形態では、第一軸受71及び第二軸受72は、軸方向L視で互いに重複する部分を有するように配置されている。本例では、第一軸受71が第二軸受72よりも大径に構成され、第一軸受71及び第二軸受72は軸方向L視で一部が重複するように配置されている。そして、周方向連続空間S及び当該周方向連続空間Sに形成される第二潤滑液貯留部62が、軸方向L視で第一軸受71及び第二軸受72の双方と重複する領域を有するように形成されている。
【0050】
本例では、第一軸受71及び第二軸受72の双方は、内輪、外輪、及び転動体(図示の例では球体)を備えたころがり軸受とされている。そして、第一軸受71は、ロータ軸12の外周面に形成された、軸第二方向L2側が大径で軸第一方向L1側が小径の段付円筒部の小径部分に嵌合(外嵌)されており、ロータ軸12を径方向外側から支持するとともに軸第一方向L1側から支持している。また、第二軸受72は、出力軸40が備えるハブ部材40aの外周面に形成された、軸第一方向L1側が大径で軸第二方向L2側が小径の段付円筒部の小径部分に嵌合(外嵌)されており、出力軸40を径方向外側から支持するとともに軸第二方向L2側から支持している。なお、ハブ部材40aは、出力軸40の本体部(円柱状部分)に対してスプライン係合するとともに、抜け止め部材により当該本体部に対して軸方向Lの相対移動が規制される状態で固定されている。
【0051】
そして、第二潤滑液貯留部62は、図5に示すように、ロータ軸12の軸第一方向L1側の開口部12aの最下部よりも上側において当該開口部12a(開口部12aが形成する開口面)と軸方向Lに連通する部分を有するように形成されている。本実施形態では、ロータ軸12は円筒状に形成されており、ロータ軸12の軸第一方向L1側の開口部12aは、ロータ軸12の軸第一方向L1側の端部における内周面により規定される。よって、本実施形態では、第二潤滑液貯留部62は、ロータ軸12の軸第一方向L1側端部における内周面の最下部よりも上側において、ロータ軸12内の軸内流路67と軸方向Lに連通する部分を有するように形成されている。
【0052】
本実施形態では、第二潤滑液貯留部62の上部のみが、ロータ軸12の開口部12a(軸内流路67)と軸方向Lに連通している。これにより、第二潤滑液貯留部62内の液面高さが、開口部12aとの連通部の最下部よりも高くなると、当該液面高さに応じた量の潤滑液が、開口部12aを介してロータ軸12の内部(軸内流路67)に供給される。すなわち、第二潤滑液貯留部62から溢れた潤滑液が、ロータ軸12の内部に供給される。これにより、第二潤滑液貯留部62の下部に潤滑液に含まれる不純物(屑等)を沈殿させて、不純物の少なくとも一部を潤滑液から取り除くことが可能となっている。
【0053】
ところで、第一軸受71や第二軸受72に対して過剰な量の潤滑液が供給されると、回転電機10に対して供給することが可能な潤滑液量が不足したり、第一軸受71や第二軸受72における引き摺り損失が過大になるおそれがある。本実施形態では、このような問題を回避すべく、図4に示すように、第一軸受71の軸第一方向L1側に配置されて第二潤滑液貯留部62の軸第二方向L2側を区画する第一円環状部材81と、第二軸受72の軸第二方向L2側に配置されて第二潤滑液貯留部62の軸第一方向L1側を区画する第二円環状部材82と、を備えている。すなわち、本実施形態では、周方向連続空間Sは、第一円環状部材81と第二円環状部材82との間の隙間(軸方向Lに所定の幅を有する隙間)に形成されている。なお、本例では、第一円環状部材81及び第二円環状部材82の双方が、板状の環状部材(円環板状部材)とされている。また、本例では、第一円環状部材81は、ケース90とは別の部品とされ、第二円環状部材82は、ケース90と一体的に形成されている。
【0054】
具体的には、図4に示すように、第一円環状部材81は、ロータ軸12の径方向に延びるように形成され、径方向内側端部が開口部12aより径方向内側に位置する第一径方向延在部81aを備えている。なお、第一径方向延在部81aの径方向外側部分は、ケース90に対して液密状態で固定されている。また、第二円環状部材82は、ロータ軸12の径方向に延びるように形成され、径方向内側端部が第一径方向延在部81aの径方向内側端部より径方向内側に位置する第二径方向延在部82aを備えている。これにより、第二潤滑液貯留部62から溢れる潤滑液の大部分を、軸内流路67がある軸第二方向L2側に積極的に導くことが可能となっている。
【0055】
本実施形態では、更に、軸第二方向L2側に導かれた潤滑液を効率良く軸内流路67に流入させることを可能とすべく、第一円環状部材81が、第一径方向延在部81aに加えて、軸方向延在部81bを備える構成を採用している。この軸方向延在部81bは、図4に示すように、第一径方向延在部81aの径方向内側端部から軸第二方向L2側に延びるとともに、先端部81cがロータ軸12の内部に位置するように形成されている。これにより、第二潤滑液貯留部62から軸第二方向L2側に溢れる潤滑液を、軸方向延在部81bを伝わせて先端部81cから軸内流路67の内部に確実に供給することが可能となっている。
【0056】
なお、本実施形態では、図4に示すように、軸方向延在部81bとロータ軸12の内周面との間には径方向の隙間が形成されている。また、第一径方向延在部81aは、径方向内側部分が径方向外側部分(ケース90に対する固定部分)に対して軸第一方向L1側にオフセットされた段付円環状に形成されており、第一径方向延在部81aとロータ軸12の軸第一方向L1側の端部との間には軸方向Lの隙間Rが形成されている。これにより、軸内流路67に供給された潤滑液の一部を第一軸受71に供給して当該軸受の潤滑を行うことが可能となっている。
【0057】
さらに、本実施形態では、第二軸受72の潤滑も可能とすべく、第二円環状部材82が、単数又は複数(本例では1つ)の貫通孔83を備える構成を採用している。この貫通孔83は、第一径方向延在部81aの径方向内側端部の最下部より下側において、第二径方向延在部82aを軸方向Lに貫通するように形成されている。これにより、貫通孔83の内径に応じた量の潤滑液を、積極的に第二潤滑液貯留部62から軸第一方向L1側へ流出させ、第二軸受72に供給することが可能となっている。なお、第二軸受72を潤滑した後の潤滑液は、図示しない流路を介して第一潤滑液貯留部61に戻される。
【0058】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係るその他の実施形態を説明する。なお、以下の各々の実施形態で開示される特徴は、その実施形態でのみ利用できるものではなく、矛盾が生じない限り、別の実施形態にも適用可能である。
【0059】
(1)上記の実施形態では、第一円環状部材81が軸方向延在部81bを備えるとともに、第二円環状部材82が貫通孔83を備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二円環状部材82が、貫通孔83を備えない構成とすることも可能である。また、第一径方向延在部81aとロータ軸12の開口部12aとの間の軸方向Lの離間距離によっては、第一円環状部材81が、軸方向延在部81bを備えない構成とすることも可能である。また、上記の実施形態では、第一円環状部材81がケース90とは別の部品とされ、第二円環状部材82がケース90と一体的に形成された構成を例として説明したが、第一円環状部材81がケース90と一体的に形成されるとともに、第二円環状部材82がケース90とは別の部品とされた構成や、第一円環状部材81及び第二円環状部材82の双方がケース90とは別の部品とされた構成、或いは、第一円環状部材81及び第二円環状部材82の双方がケース90と一体的に形成された構成とすることもできる。
【0060】
(2)上記の実施形態では、第一円環状部材81及び第二円環状部材82の双方が備えられた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一円環状部材81及び第二円環状部材82の何れか一方のみを備えた構成や、第一円環状部材81及び第二円環状部材82の双方とも備えない構成とすることもできる。後者の構成の一例を図6に示す。図6に示す例では、第一軸受71及び第二軸受72の双方について、内輪と外輪との間での潤滑液の流通を規制する規制部材52を備えた軸受を採用している。これにより、第二潤滑液貯留部62において潤滑液を適切に貯留することが可能となっている。なお、図6に示す例では、第一軸受71については転動体に対して軸第二方向L2側に規制部材52が備えられ、第二軸受72については転動体に対して軸第一方向L1側に規制部材52が備えられている。これにより、第一軸受71及び第二軸受72の双方の潤滑を行うことが可能となっている。
【0061】
(3)上記の実施形態では、第二潤滑液貯留部62が、軸方向L視で第一軸受71及び第二軸受72の双方と重複する領域を有するように形成された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二潤滑液貯留部62が、軸方向L視で第一軸受71及び第二軸受72の一方のみと重複する領域を有するように形成された構成や、第二潤滑液貯留部62が、軸方向L視で第一軸受71及び第二軸受72のいずれとも重複する領域を有さないように形成された構成とすることもできる。また、上気の実施形態では、第一軸受71及び第二軸受72が、軸方向L視で互いに重複する部分を有するように配置された構成を例として説明したが、第一軸受71及び第二軸受72が、軸方向L視で互いに重複する部分を有さないように配置された構成とすることも可能である。
【0062】
(4)上記の実施形態では、回転電機10(より具体的には回転電機10のロータコア11)に対して軸第一方向L1側に第二潤滑液貯留部62が形成された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、回転電機10(より具体的には回転電機10のロータコア11)に対して軸第二方向L2側(回転電機出力ギヤ13側)に第二潤滑液貯留部62が形成された構成とすることも可能である。この場合、第三軸受73を本発明における「第一軸受」とし、第四軸受74を本発明における「第二軸受」として、第二潤滑液貯留部62が、軸方向Lにおける、第一軸受としての第三軸受73と、第二軸受としての第四軸受74との間に形成された構成とすることができる。なお、図1に示す例では、第三軸受73に対して軸第二方向L2側には、回転電機出力ギヤ13を支持する軸受が2つ配置されているため、例えば、当該2つの軸受の内の軸第二方向L2側に位置する軸受と第四軸受74との間の軸方向Lの隙間Uを利用して、第二潤滑液貯留部62を形成することができる。
【0063】
(5)上記の実施形態では、第一ギヤ31により掻き上げられた潤滑液が第二潤滑液貯留部62に供給される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一ギヤ31以外の出力軸40の回転に伴い回転するギヤ(例えば、差動入力ギヤ21)により潤滑液を掻き上げる構成とすることも可能である。このような構成では、上記実施形態とは異なり、カウンタ軸33の回転軸心が回転電機10の回転軸心と同じ高さに配置された構成や、カウンタ軸33の回転軸心が回転電機10の回転軸心より上側に配置された構成とすることができる。また、上記の実施形態では、第二潤滑液貯留部62に対して、掻き上げ部材により掻き上げられた潤滑液が供給される構成を例として説明したが、動力伝達機構の回転により駆動されるポンプを備え、当該ポンプから吐出された潤滑液が第二潤滑液貯留部62に供給される構成とすることも可能である。
【0064】
(6)上記の実施形態では、周方向連続空間Sが、ロータ軸12の周方向の全域(全周)に亘って連続する空間とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、周方向連続空間Sが、ロータ軸12の全周ではなく一部の領域(例えば、半周)においてのみ連続するように形成された構成とすることも可能である。
【0065】
(7)上記の実施形態では、潤滑液流路65,66が、ケース90の壁部に形成された孔部である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、潤滑液流路65,66の少なくとも一部を、ケース90の壁面に形成された溝等、或いはケース90内やケース90外に配置された管状部材や樋状部材等により形成することも可能である。
【0066】
(8)上記の実施形態では、第一軸受71及び第二軸受72の双方が、転動体が球体であるころがり軸受とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一軸受71及び第二軸受72の一方又は双方として、転動体が球体以外(例えば、円柱体や円錐体等)であるころがり軸受や、滑り軸受等の、その他の形態の軸受を用いることができる。
【0067】
(9)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、回転電機と、回転電機の円筒状のロータ軸を軸方向に貫通して配置される貫通軸と、ロータ軸と貫通軸との間で動力の伝達を行う動力伝達機構と、動力伝達機構の回転によって供給される潤滑液をロータ軸の内部に供給する潤滑液供給部と、少なくとも回転電機及び動力伝達機構を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1:駆動装置(車両用駆動装置)
10:回転電機
12:ロータ軸
12a:開口部
20:差動歯車機構(動力伝達機構)
30:カウンタギヤ機構(動力伝達機構)
31:第一ギヤ(掻き上げ部材)
40:出力軸(貫通軸)
62:第二潤滑液貯留部(潤滑液貯留部)
63:潤滑液供給部
64:潤滑液受け止め部
65:第二潤滑液流路(潤滑液流路)
66:第一潤滑液流路(潤滑液流路)
71:第一軸受
72:第二軸受
81:第一円環状部材
81a:第一径方向延在部
81b:軸方向延在部
81c:先端部
82:第二円環状部材
82a:第二径方向延在部
83:貫通孔
90:ケース
L:軸方向
L1:軸第一方向
L2:軸第二方向
S:周方向連続空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、前記回転電機の円筒状のロータ軸を軸方向に貫通して配置される貫通軸と、前記ロータ軸と前記貫通軸との間で動力の伝達を行う動力伝達機構と、前記動力伝達機構の回転によって供給される潤滑液を前記ロータ軸の内部に供給する潤滑液供給部と、少なくとも前記回転電機及び前記動力伝達機構を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記回転電機に対して前記軸方向の一方側である軸第一方向側に、前記ロータ軸の径方向外側に配置されて当該ロータ軸を支持する第一軸受を備えるとともに、前記第一軸受の前記軸第一方向側に、前記貫通軸の径方向外側に配置されて当該貫通軸を支持する第二軸受を備え、
前記潤滑液供給部は、前記軸方向における前記第一軸受と前記第二軸受との間であって前記貫通軸の回転軸心より下側に、潤滑液を貯留する潤滑液貯留部を備え、
前記潤滑液貯留部が、前記ロータ軸の前記軸第一方向側の開口部の最下部よりも上側において当該開口部と前記軸方向に連通する部分を有するように形成されている車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第一軸受及び前記第二軸受は、前記軸方向視で互いに重複する部分を有するように配置され、
前記潤滑液貯留部は、前記軸方向視で前記第一軸受及び前記第二軸受の双方と重複する領域を有するように形成されている請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第一軸受の前記軸第一方向側に配置されて前記潤滑液貯留部の前記軸第一方向とは反対側の軸第二方向側を区画する第一円環状部材と、前記第二軸受の前記軸第二方向側に配置されて前記潤滑液貯留部の前記軸第一方向側を区画する第二円環状部材と、を備え、
前記第一円環状部材は、前記ロータ軸の径方向に延びるように形成され、径方向内側端部が前記開口部より径方向内側に位置する第一径方向延在部と、当該第一径方向延在部の径方向内側端部から前記軸第二方向側に延びるように形成され、先端部が前記ロータ軸の内部に位置する軸方向延在部と、を備え、
前記第二円環状部材は、前記径方向に延びるように形成され、径方向内側端部が前記第一径方向延在部の径方向内側端部より径方向内側に位置する第二径方向延在部を備え、
前記第二径方向延在部を前記軸方向に貫通する貫通孔が、前記第一径方向延在部の径方向内側端部の最下部より下側に形成されている請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記動力伝達機構は、前記ケース内の潤滑液を掻き上げる掻き上げ部材を備え、
前記潤滑液供給部は、前記掻き上げ部材により掻き上げられた潤滑液を受け止める潤滑液受け止め部と、前記潤滑液受け止め部にて受け止められた潤滑液を前記潤滑液貯留部に流通させる潤滑液流路と、を備え、
前記潤滑液貯留部は、前記軸方向における前記第一軸受と前記第二軸受との間に形成された前記ロータ軸の周方向に連続する周方向連続空間の下部に形成され、
前記周方向連続空間における前記潤滑液貯留部より上側に、前記潤滑液流路が開口している請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−237363(P2012−237363A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106160(P2011−106160)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】