説明

車両端部周辺画像表示装置

【課題】車両端部周辺が見やすく、且つ、車両端部周辺の障害物までの距離感も分かりやすい画像を表示することができる車両端部周辺画像表示装置を提供する。
【解決手段】カメラ10によって撮影された撮影範囲の全範囲を表示している全範囲画像(図4(A))では、車両の前バンパー50から遠方にかけてが示されているが、全範囲画像では、遠方に存在する他車両60のライトにより、車両端部周辺の障害物(ポール80)が見づらいこともあり、また、他車両60の存在自体により、車両端部周辺の障害物と自車両との距離感が分かりにくい。そこで、車両端部周辺画像(図4(B))では、自車両からの距離がマスク境界距離よりも近い側は画像表示するが、マスク境界距離よりも遠い範囲はマスクする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両端部の周辺が含まれている画像を表示する車両端部周辺画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にカメラを設置して、そのカメラにより車両の周辺を撮影し、車室内に設置した表示器に表示する装置が種々知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、カメラを車両前部コーナーに設置して、車両コーナー部周辺およびそれよりも前方の画像を撮影している。また、特許文献1では、水平線が画像に含まれると、ユーザが画像から撮像方向を把握しやすいこと、および、水平線が画像の上端付近に撮影できるようにカメラの角度を設置すると、車両コーナー部から車両前方にかけての路面を最も広く撮影できることが開示されている。そして、これらの条件を満たすためのカメラの設置角度を検討している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、水平線が画像の上端付近に撮影できるようにカメラの角度を設置している。しかし、水平線が含まれるような撮影範囲では、夜間に他車のライトが映ってしまい、画像の中の車両端部周辺部分が見づらくなってしまう恐れがある。また、自車から比較的遠い物体は画像の上方に映し出されることになるが、物体が画像の上方に映しだされると、その物体の下へ潜り込んでいくかのような印象を受けてしまう潜り込み現象が生じる。この潜り込み現象は、自車と物体との相対的な位置関係を錯覚させるものであるため、この潜り込み現象により、画像における車両端部周辺の障害物と自車との間の距離感を見誤る恐れもあった。
【0006】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、車両端部周辺が見やすく、且つ、車両端部周辺の障害物までの距離感も分かりやすい画像を表示することができる車両端部周辺画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するための請求項1記載の発明では、カメラ自体は、車両のボデー端部直下の地面から遠方にかけてを撮影範囲として含んでいるが、信号処理部は、カメラによって撮影された撮影画像の全部を表示器に表示するのではなく、車両から所定距離に設定されたマスク境界よりも車両に近い側は画像表示され、マスク境界よりも車両から遠い範囲がマスクされている車両端部周辺画像を表示器に表示する。そのため、自車からマスク境界よりも遠い物体はマスクされて表示器に表示されない。よって、自車からの距離がマスク境界よりも遠い他車のライトは表示されないので、そのライトにより車両端部周辺が見づらくなってしまうことがなくなり、画像中の車両端部周辺が見やすくなる。また、自車から遠い物体が表示されてしまうことにより、その物体の下に潜り込んでしまうかのような印象を受けてしまうことも抑制されるので、車両端部周辺の障害物までの距離感が分かりやすくなる。
【0008】
マスク境界となる所定距離は、請求項2のように、車両端部(たとえばカメラの取り付け位置)に対する方位によらず一定距離とすることができる。この場合には、画像表示されているものはすべてその一定距離内であることから、画像表示されている物体までの距離が分かりやすい。ただし、これとは異なり、所定距離を、車両端部に対する方向によって異ならせてもよく、たとえば、画像表示されている部分の形状が楕円形状や矩形形状となるように所定距離を設定してもよい。
【0009】
また、請求項3記載の発明によれば、信号処理部は、車両端部周辺画像と、カメラの撮影範囲の全範囲を表示する全範囲画像とを選択的に表示器に表示することができる。車両端部周辺画像は、車両端部周辺の状況を確認する場合に好適であるが、一方で、車両から遠い範囲を確認することはできない。しかし、このように、車両端部周辺画像と全範囲画像とを選択的に表示器に可能とすれば、全範囲画像により、車両から遠方の状況を確認することもできる。
【0010】
また、請求項4記載の発明では、信号処理部は舵角情報図形を表示する。この舵角情報図形が表示されることにより、車両が今後どの方向に進行するかを容易に認識することができる。また、舵角情報図形は、車両端部周辺画像が表示される領域以外の表示領域、車両端部周辺画像におけるマスク部分、自車ボデー部分のいずれかに表示されるので、画像中において車両周辺に存在する障害物の視認性が低下してしまうことも抑制できる。
【0011】
また、請求項5記載の発明では、信号処理部は、車両と撮影範囲との関係を示す撮影範囲図形を表示する。この撮影範囲図形が表示されることにより、撮影範囲図形から、表示器に表示されている画像がどの範囲を撮影した画像かを容易に認識することができる。また、撮影範囲図形は、車両端部周辺画像が表示される領域以外の表示領域、車両端部周辺画像におけるマスク部分、自車ボデー部分のいずれかに表示されるので、画像中において車両周辺に存在する障害物の視認性が低下してしまうことも抑制できる。
【0012】
また、請求項6記載の発明では、信号処理部は、車両端部周辺画像に、車両最外部から延びる予想軌跡線を重畳表示する。これにより、運転者は、このままの操舵角で車両が走行した場合に、障害物に接触してしまうかどうかを容易に判断することができる。
【0013】
また、請求項7記載の発明では、障害物センサが、車両端部周辺画像においてマスクされずに画像が表示される範囲に障害物を検出したことに基づいて、車両端部周辺画像を表示する。このようにすることにより、障害物を検出しない状況、すなわち、障害物と接触する可能性がない状況では無駄な表示が行われないことに加えて、障害物が存在する状況では、車両端部周辺画像から障害物との接触の可能性を判断することができる。
【0014】
請求項8記載の発明では、車両端部周辺画像の路面部分に、車両が移動しても路面との相対位置が変化しないグリッド図形を表示する。一方、車両は、走行すると路面に対する相対位置が変化する。そのため、車両端部周辺画像においては、車両走行に伴い、グリッド図形と車両ボデー部分との相対位置が変化する。よって、仮に、車両端部周辺画像に障害物が映っていないとしても、車両ボデー部分に対するグリッド図形の相対位置の変化から、車両の移動の程度を容易に把握することができる。
【0015】
ここで、路面上には種々の物体が存在する可能性があり、また、溝など、路面よりも下に位置している部分も存在する。車両端部周辺画像上においてこれら路面よりも上或いは下に位置するものにグリッド図形を重畳表示してしまうと、グリッド図形と車両ボデー部分との相対位置の変化から、車両の移動の程度を把握することが困難になる。よって、路面よりも所定距離以上高い位置或いは低い位置の物体を検出して、検出した物体にはグリッド図形を重畳表示しないようにすることが好ましい。路面よりも所定距離以上高い位置或いは低い位置の物体を検出する手法としては、たとえば、請求項9記載のように、カメラによって逐次撮影される撮影画像をモーションステレオ法により解析する手法がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の車両端部周辺画像表示装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】カメラ10の設置位置を例示する図であって、(A)は側面図、(B)は上面図である。
【図3】第1実施形態において信号処理部40が行う処理を示すフローチャートである。
【図4】(A)は全範囲画像の一例、(B)は車両端部周辺画像の一例である。
【図5】第2実施形態における車両端部周辺画像の一例であり、(A)は前進時、(B)は後退時の画像例である。
【図6】第3実施形態における車両端部周辺画像の一例であり、(A)は障害物がない場合、(B)はポール80が映っている場合の画像例である。
【図7】車両端部周辺画像の他の例である。
【図8】昇降装置140を介してカメラ10が車両に取り付けられている例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態の車両端部周辺画像表示装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、車両端部周辺画像表示装置1は、カメラ10、表示器20、機能選択スイッチ30、ソナー35、信号処理部40を備えている。
【0018】
カメラ10は、車両コーナー部の所定の位置に設置されており、信号処理部40からの指示により画像を撮影して、撮影した画像(以下、撮影画像)を示す撮影画像信号を信号処理部40に出力する。
【0019】
表示器20は、車室内の運転席から視認可能な位置に設置される。この表示器20に、後述する車両端部周辺画像や全範囲画像が表示される。機能選択スイッチ30は、表示器20に、カメラ10によって撮影された画像を表示するか否かを選択するとともに、表示する画像を、後述する車両端部周辺画像とするか全範囲画像とするかを選択するスイッチであり、これらの選択を可能とするための1つ或いは複数のスイッチからなる。この機能選択スイッチ30は、車両の乗員によって操作される。ソナー35は、特許請求の範囲の障害物センサに相当するものであり、車両端部周辺画像の撮影範囲を含む範囲が検知範囲となるように設けられており、障害物の有無およびその障害物までの方位、距離を示す信号を信号処理部40に出力する。
【0020】
信号処理部40は、図示しない内部に、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータであり、カメラ10を制御して予め設定された撮影範囲の画像を撮影させ、カメラ10から撮影画像信号を取得する。そして、その撮影画像信号を処理して、表示器20に、車両端部周辺画像或いは全範囲画像を表示する。また、機能選択スイッチ30からの信号を取得し、また、車内ネットワークを介して種々の信号も取得する。この信号処理部40が行う処理については後に詳述する。
【0021】
図2は、このカメラ10の設置位置を例示する図であって、(A)は側面図、(B)は上面図である。この図2に示すように、カメラ10はたとえば、車両の前バンパー50の側部に設置される。また、カメラ10は前方下向きに取り付けられている。破線は車両前後方向におけるカメラ10の画角を示しており、この破線に示されるように、車両前後方向におけるカメラ10の撮影範囲は、カメラ10の設置位置の垂直下方よりもやや後方から、車両の前方向の遠方にかけてとなっている。また、この撮影範囲の車両前方側の端は、たとえば、傾斜のない路面において障害物が存在しなければ、地平線が撮影できるような撮影範囲となっている。ただし、必ずしも地平線が撮影できるほど遠方までを撮影範囲とする必要はなく、撮影範囲の遠方側の端は、後述するマスク境界距離よりも遠方の範囲で適宜設定される。また、図2には示していないが、車両幅方向におけるカメラ10の撮影範囲は、この車両のボデー端部およびその直下の地面が撮影されるような撮影範囲となっている。
【0022】
図3は、第1実施形態において信号処理部40が行う処理を示すフローチャートである。信号処理部40は、機能選択スイッチ30からの信号により、表示器20に、カメラ10によって撮影された画像を表示することの指示があったと判断した場合に、図3に示す処理を実行する。
【0023】
まず、ステップS1では、カメラ10から撮影画像を取得する。続くステップS2では、表示器20に表示する画像として、車両端部周辺画像が選択されているか、或いは、全範囲画像が選択されているかを、機能選択スイッチ30からの信号により判断する。全範囲画像が選択されていると判断した場合にはステップS3へ進む。
【0024】
ステップS3では、全範囲画像を表示するための表示処理を行って、全範囲画像を表示器20に表示する。この全範囲画像とは、カメラ10の撮影範囲の全範囲が表示されている画像であり、図4(A)に全範囲画像の一例を示している。また、全範囲画像を表示するための表示処理には、たとえば、撮影画像の画素数が表示器20の表示範囲の画素数と異なる場合に、撮影画像を拡大または縮小するサイズ変更を行う処理が含まれる。
【0025】
図4(A)の全範囲画像には、右隅に自車両の前バンパー50(すなわち車両ボデーの一部)が映っている。また、他車両60が画像上方に映っているので、他車両60が自車から比較的遠い位置に存在していることが分かる。また、画像上方には地平線70が映っており、画像における地平線70と他車両60との相対的位置からも、他車両60は比較的遠い位置にあることが分かる。このように、全範囲画像からは、自車両から比較的遠い位置の物体の存在が分かる。
【0026】
また、図4(A)の画像にはポール80も映っており、画像におけるポール80の路面側端の位置および前バンパー50の位置から、このポール80は自車両に比較的近い位置に存在していることも分かる。ただし、図4(A)の例のように、ポール80の他に他車両60が画像に含まれている場合であって、夜間など比較的暗い状況において他車両60がライトを点灯させている場合には、他車両60のライトによりポール80が見づらくなってしまう。また、ライトが点灯していなくても他車両60が映っていることにより、ポール80と自車両の前バンパー50との距離感が分かりにくくなってしまうこともある。
【0027】
そこで、本実施形態では、全範囲画像と車両端部周辺画像とが選択可能となっている。前述のステップS2において、車両端部周辺画像が選択されていると判断した場合には、車両端部周辺画像を表示するための処理であるステップS4、S5を実行する。なお、ステップS4へ進む前に、ソナー35からの信号画像端部周辺画像においてマスクされずに画像が表示されている範囲に障害物が存在するか否かを判定し、障害物が存在すると判定した後にステップS4へ進むようにしてもよい。
【0028】
ステップS4では、ステップS1で取得した撮影画像に対してマスク処理を行う。このマスク処理は、撮影画像において、自車両の端部からの距離が予め設定されたマスク境界距離よりも遠い範囲に対して、画像が見えないように覆う処理である。マスク境界距離は、自車両が障害物に接触してしまうか否かを判断するのに必要な範囲に基づいて設定される距離であり、たとえば1mに予め設定される。なお、ここでの距離は、車両端までの最短の距離であり、且つ、水平と仮定した路面上の距離である。従って、マスクをする範囲は、車両の位置や周辺の路面の傾斜、凹凸、周辺の障害物に影響を受けない範囲であり、予め設定しておくことができる。
【0029】
続くステップS5では、ステップS4でマスク処理を行った後の画像に対して、車両端部周辺画像を表示器20に表示するための表示処理を行う。この表示処理には、たとえば、前述のステップS3と同様に、表示器20の表示範囲に適合するように画像を拡大または縮小する処理が含まれる。
【0030】
図4(B)は、ステップS5で表示される車両端部周辺画像の一例である。この図4(B)は、撮影画像自体は図4(A)と同じである。しかし、マスク90によりマスク境界距離よりも遠い範囲は、カメラ10によって撮影された撮影画像が表示されていない。換言すれば、図4(B)の画像は、カメラ10によって撮影された撮影画像から、表示される範囲が車両端部の周辺に限定された画像である。そして、この図4(B)の例では,他車両60が映っていないことから、他車両60のライトによりポール80が見づらくなってしまうことがなく、また、他車両60が映っていることにより、ポール80と自車両の前バンパー50との距離感が分かりにくくなってしまうこともない。よって、画像から、ポール80と車両前バンパー50との距離が把握しやすい。
【0031】
ステップS5またはステップS3を実行した後はステップS6へ進む。ステップS6では、カメラ10によって撮影された画像を表示する機能を実行する指示がまだ継続中であるか(たとえば機能選択スイッチ30がオンのままであるなど)を判断する。否定判断である場合には処理を終了する。一方、この判断が肯定判断である場合にはステップS1へ戻る。なお、このフローチャートの繰り返しの過程において、ユーザは、機能選択スイッチ30を操作することで、全範囲画像から車両端部周辺画像へ切り替えたり、反対に、車両端部周辺画像から全範囲画像へ切り替えることもできる。よって、より現在の状況に適している側の画面を、実際に画面を確認して選択することができる。
【0032】
以上、説明した第1実施形態では、カメラ10によって撮影された撮影画像は、車両の端部周辺から遠方にかけてが撮影範囲となっているが、この撮影画像から作成されて表示器20に表示される車両端部周辺画像は、自車両からの距離がマスク境界距離よりも近い側は画像表示され、マスク境界距離よりも遠い範囲はマスクされている画像である。そのため、自車からマスク境界距離よりも遠い物体はマスクされて表示器20に表示されない。よって、自車からの距離がマスク境界距離よりも遠い他車両のライトは表示されないので、画像中の車両端部周辺が見やすくなる。また、自車から遠い物体が表示されてしまうことにより、その物体の下に潜り込んでしまうかのような印象を受けてしまうことが抑制されるので、画像における車両端部周辺の障害物と自車との間の距離感も分かりやすい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、ハードウェア構成は第1実施形態と同じであり、信号処理部40における処理において第1実施形態と相違する。第2実施形態では、信号処理部40は、車内ネットワークを介して、シフトポジション、操舵角を示す信号を取得する。
【0033】
そして、それらシフトポジションおよび操舵角から、車両端部周辺画像に含まれる車両部分のうちで最外部となる部分の予想軌跡を逐次決定する。ここで、最外部は、車両が示す旋回円弧の中心点から最も遠い車両上の点であり、車両端部周辺画像に映っているボデー部分が図5に示す範囲であれば、前進時の最外部は車両左前コーナー、後退時の最外部は画像範囲における右前端である。この最外部の予想軌跡を決定するためには、たとえば、操舵角と最外部の旋回半径との関係を、前進、後進それぞれについて予め記憶しておく。そして、この関係と、取得した操舵角、シフトポジションから決定できる旋回半径の円弧が予想軌跡である。
【0034】
第2実施形態では、車両端部周辺画像を表示する場合、上記のようにして決定した予想軌跡を示す予想軌跡線を、車両最外部から延びるようにして、車両端部周辺画像に重畳表示する。
【0035】
図5は、第2実施形態における車両端部周辺画像であり、(A)は前進時、(B)は後退時の画像である。図5の車両端部周辺画像には、上記予想軌跡線100の他に、舵角情報図形110、撮影範囲図形120も重畳表示されている。
【0036】
舵角情報図形110は、転舵角または操舵角を示すものであり、この例では、矢印にてその舵角が示されている。この矢印の傾きが舵角を示しており、また、矢印が上向きか下向きかにより、前進状態か後退状態かを示している。これら矢印の傾きおよび向きは、車内ネットワークより取得する操舵角およびシフトポジションに基づいて決定する。また、この舵角情報図形110の表示位置は、路面の状況が見づらくならないようにするため、画像中の車両前バンパー50の部分に重畳表示されている。
【0037】
撮影範囲図形120は、車両に対する撮影範囲の関係を示した図形であり、マスク90がされている部分に表示されている。この撮影範囲図形120において、扇形で示される範囲が車両端部周辺画像の撮影範囲(カメラ10の撮影範囲のうち、実際に表示器20に画像が表示されている範囲)を示している。この撮影範囲図形120が表示されることにより、車両端部周辺画像がどの範囲を撮影した画像かを容易に認識することができる。
【0038】
この第2実施形態によれば、車両最外部から延びる予想軌跡線100が車両端部周辺画像に重畳表示されるので、運転者は、このままの操舵角で車両が走行した場合に、障害物に接触してしまうかどうかを容易に判断することができる。また、舵角情報図形110が表示されるので、車両が今後どの方向に進行するかを容易に認識することができ、また、撮影範囲図形120が表示されるので、表示器20に表示されている画像がどの範囲を撮影した画像かを容易に認識することができる。さらに、舵角情報図形110は前バンパー50の部分に重畳表示されており、撮影範囲図形120はマスク90がされている部分に重畳表示されている。よって、これら舵角情報図形110、撮影範囲図形120が表示されることによって、画像中において車両周辺に存在する障害物の視認性が低下してしまうことも抑制されている。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を説明する。第3実施形態も、ハードウェア構成は第1実施形態と同じであり、信号処理部40における処理において第1実施形態と相違する。第3実施形態では、信号処理部40は、車内ネットワークを介して、車両の位置変化を検出するための情報(たとえば、シフトポジション、操舵角、車速)を取得する。また、画像内の前バンパー50の範囲を判断するための情報(たとえば車体形状)も取得する。そして、これらの情報を元に、カメラ10によって逐次撮影される撮影画像をモーションステレオ法により解析する。モーションステレオ法とは、微小な時間間隔で撮影された連続画像に映る被写体の画面上の動きと撮影位置の変化量に基づき、被写体までの距離を算出するものである。本実施形態では、このモーションステレオ法により、画像内の被写体が、路面であるか、路面よりも所定距離以上高い位置の物体、或いは路面よりも所定距離低い物体(路面から凹んだ溝など)であるかを解析する。
【0039】
そして、解析の結果、路面と判断した部分にグリッド図形を表示する。さらに、上述の車両の位置変化を検出するための情報に基づいて車両の位置変化を逐次把握する。車両の位置変化は、路面に対する車両の相対的位置変化であることから、把握した車両の位置変化に基づいて、車両位置変化前にグリッド図形が表示されていた箇所が、車両の位置変化後にどこに移動しているかを決定する。このようにして、車両が移動しても路面との相対的位置が変化しないように、グリッド図形の表示位置を逐次決定して、グリッド図形を再描画する。
【0040】
図6(A)(B)は、いずれも、第3実施形態における車両端部周辺画像の一例を示す図である。この図6の例では、グリッド図形として十字図形が表示されている。この十字図形は、前述のように、車両が移動しても路面との相対的位置が変化しないよう逐次再描画される。また、図6(B)には、ポール80が映っているが、ポール80は、路面の上にある物体であると判別され、ポール80が映っている部分には十字図形が表示されていない。
【0041】
この第3実施形態によれば、車両端部周辺画像の路面部分に、車両が移動しても路面との相対位置が変化しない十字図形(グリッド図形)が表示される。一方、車両は、走行すると路面に対する相対位置が変化するので、車両走行に伴って、十字図形と車両前バンパー50との相対位置が変化する。よって、仮に、車両端部周辺画像に障害物が映っていないとしても、車両前バンパー50に対する十字図形の相対位置の変化から、車両の移動の程度を容易に把握することができる。また、十字図形は、路面以外の部分には重畳表示されないことから、車両前バンパー50に対する十字図形の相対位置の変化から、車両の移動の程度を容易に把握することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0043】
たとえば、図7に示すように、車両端部周辺画像に、前バンパー50(すなわち車両ボデー部分)から一定の距離を示す距離基準線130を重畳表示するようにしてもよい。この距離基準線130は、マスク境界距離よりも短い距離を示す線であり、たとえば、その距離は50cmとされる。
【0044】
また、前述の実施形態では、カメラ10は車両に対して移動不能に固定されていたが、図8に示すように、カメラ10を昇降装置140を介して車両に取り付けてもよい。図8の例では、カメラ10は昇降装置140の先端に取り付けられている。この昇降装置140の具体的機構としては、たとえば、車両において、使用時のみ伸びるラジオ受信用のアンテナと同じ機構を用いる。この昇降装置140によりカメラ10を上昇させることにより、より広い範囲を撮影することができる。ただし、必ずしも撮影時にカメラ10を上昇させる必要はなく、用途によっては、カメラ10を下降させたまま撮影してもよい。
【0045】
また、前述の実施形態では、カメラ10は、車両前側のコーナー部に設置されていたが、車両後側のコーナー部に設置してもよい。なお、コーナー部とは、車両前(あるいは後)端面と車両側面とが交差する交差部分のみではなく、その交差部分の周囲を含み、上記交差部分あるいはその近傍が撮影できるような設置範囲であれば、カメラ10の設置は実施形態で示された位置に限られない。
【0046】
また、第3実施形態では、車両端部周辺画像に、予想軌跡線100、舵角情報図形110、撮影範囲図形120の3つが重畳表示されていたが、これらのうちいずれか1ついは2つが表示されるようになっていてもよい。また、第2、3実施形態の車両端部周辺画像に距離基準線130を重畳表示するようにしてもよい。
【0047】
また、車両端部周辺画像が表示されている状態において、表示器20に、車両端部周辺画像が表示されている領域以外の表示領域がある場合、舵角情報図形110、撮影範囲図形120を、車両端部周辺画像が表示されている表示領域以外に表示してもよい。
【0048】
また、グリッド図形は十字図形である必要はなく、その他の任意の図形、たとえば、○、×等でもよい。
【0049】
また、マスク境界距離は一定値である必要はなく、ユーザが車両端部周辺画像を見ながら、調整できるようにしてもよい。また、距離基準線130の距離もユーザが調整できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:車両端部周辺画像表示装置、 10:カメラ、 20:表示器、 30:機能選択スイッチ、 35:ソナー、 40:信号処理部、 50:前バンパー、 60:他車両、 70:地平線、 80:ポール、 90:マスク、 100:予想軌跡線、 110:舵角情報図形、 120:撮影範囲図形、 130:距離基準線、 140:昇降装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、その車両のボデー端部直下の地面から車両遠方にかけてを撮影範囲に含むカメラと、
前記車両の車室内に設置された表示器と、
前記カメラによって撮影された撮影画像を処理して、前記車両から所定距離に予め設定されたマスク境界よりも前記車両に近い範囲は画像表示され、そのマスク境界よりも前記車両から遠い範囲はマスクされている車両端部周辺画像を前記表示器に表示する信号処理部と、
を備えていることを特徴とする車両端部周辺画像表示装置。
【請求項2】
前記マスク境界となる所定距離が、前記車両端部に対する方位によらず一定距離であることを特徴とする車両端部周辺画像表示装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記信号処理部は、前記車両端部周辺画像と、前記カメラの撮影範囲の全範囲を表示する全範囲画像とを選択的に前記表示器に表示可能となっていることを特徴とする車両端部周辺画像表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記信号処理部は、前記車両端部周辺画像が前記表示器に表示されている状態において、前記車両の舵角を図形表示する舵角情報図形を、前記表示器の前記車両端部周辺画像が表示される領域以外の表示領域、前記車両端部周辺画像におけるマスク部分、自車ボデー部分のいずれかに表示することを特徴とする車両端部周辺画像表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記信号処理部は、前記車両端部周辺画像が前記表示器に表示されている状態において、車両と撮影範囲との関係を示す撮影範囲図形を、前記表示器の前記車両端部周辺画像が表示される領域以外の表示領域、前記車両端部周辺画像におけるマスク部分、自車ボデー部分のいずれかに表示することを特徴とする車両端部周辺画像表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記信号処理部は、前記車両端部周辺画像が前記表示器に表示されている状態において、 前記車両の操舵角およびシフト位置情報に基づいて前記車両端部周辺画像に含まれる車両部分のうちの最外部の予想軌跡を決定し、その予想軌跡に基づいて、前記車両端部周辺画像に、車両最外部から延びる予想軌跡線を重畳表示することを特徴とする車両端部周辺画像表示装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記車両周辺の障害物を検出する障害物センサを備え、
前記信号処理部は、前記障害物センサからの信号に基づいて、前記車両端部周辺画像においてマスクされずに画像が表示される範囲内に障害物が存在するか否かを判定し、障害物が存在ると判定したことに基づいて、前記車両端部周辺画像を前記表示器に表示することを特徴とする車両端部周辺画像表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
前記信号処理部は、前記車両端部周辺画像が前記表示器に表示されている状態において、前記車両端部周辺画像の路面部分に、前記車両が移動しても路面との相対位置が変化しないようにグリッド図形を表示することを特徴とする車両端部周辺画像表示装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記信号処理部は、前記カメラによって逐次撮影される撮影画像をモーションステレオ法により解析することで、路面よりも所定距離以上高い位置或いは低い位置の物体を検出し、その検出した物体には前記グリッド図形を重畳表示しないことを特徴とする車両端部周辺画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96771(P2012−96771A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248756(P2010−248756)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】