説明

車両

【課題】弾性体に備蓄された弾性力を駆動力として使用するとともに、少ない部品数でスムーズに進行方向を変更できる性能を確保し、小型軽量で省エネルギ化できる車両を提供する。
【解決手段】車両本体20が独立駆動の一対の主駆動輪53A、53Bを備え、一対の主駆動輪53A、53Bの回転速度差で車両本体20を操舵可能に構成し、入力された動力を弾性力に変換して備蓄する一方、備蓄した弾性力を動力として出力可能な弾性体を含むエネルギ備蓄機構60と、エネルギ備蓄機構60の動力により駆動される補助駆動輪61とを備え、補助駆動輪61の回転軸線を一対の主駆動輪53A、53Bの各接地箇所から立ち上がる垂直な面内に存在させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体に備蓄された弾性力で走行する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車工場等の生産現場では、例えば、エンジンやギアボックス等の部品(ワーク)を搬送する車両として、バッテリを搭載し、このバッテリからの電力で走行用モータを回転駆動することにより駆動輪を駆動して走行する無人の自動搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)が用いられている。この種の搬送車では、エンジン部品のような重量物を搬送するため、走行用モータに十分な出力が求められる。従って、モータの大型化やこれに伴う車両の大型化等による設備コストや消費電力の増大等が懸念される。
【0003】
特許文献1には、オートマチックトランスミッション等の部品(ワーク)を搬送する搬送車として、電動や油圧による駆動系統を設けない構成が記載されている。この搬送車では、搬送するワークの自重によってラック・ピニオン機構を駆動し、車輪の前進駆動力にすると共に、該ワークの自重を台座に設けたコイルばね(弾性体)に備蓄する。そして、ワークを台座から取り除いた際の前記コイルばねの反発力によりラック・ピニオン機構を逆方向に駆動し、車両の後退駆動力にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−331052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生産ラインの設備コスト削減や省エネルギ化のため、機種や仕様が異なる複数種類の製品について生産工程の共通化を図る場合、搬送車には進行方向を変更できることが望まれるが、上記特許文献1記載の搬送車には、あらかじめ定められた一直線の経路上を往復移動することしかできないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、弾性体に備蓄された弾性力を駆動力として使用するとともに、少ない部品数でスムーズに進行方向を変更できる性能を確保し、小型軽量で省エネルギ化できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両本体が独立駆動の一対の駆動輪を備え、一対の駆動輪の回転速度差で車両本体を操舵可能に構成し、入力された動力を弾性力に変換して備蓄する一方、備蓄した弾性力を動力として出力可能な弾性体を含むエネルギ備蓄機構と、エネルギ備蓄機構の動力により駆動される補助駆動輪とを備え、補助駆動輪の回転軸線を一対の駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面内に存在させたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、車両本体が独立駆動の一対の駆動輪を備え、一対の駆動輪の回転速度差で車両本体を操舵可能に構成しているため、一対の駆動輪の回転速度を制御するだけで、前進または後退しながら車両本体の進行方向を変えることができる。したがって、複雑な操舵機構を備えず部品数を抑制しつつも、意図どおりの操舵が可能となる。
本発明では、補助駆動輪の回転軸線が、一対の駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面内に存在するため、補助駆動輪を複雑な首振り構造等としなくても、補助駆動輪の引きずりを防止して、スムーズな操舵が可能となる。
また、本発明では、エネルギ備蓄機構に備蓄された弾性力により駆動される補助駆動輪を備えているため、例えば、大きな駆動力が必要とされる車両の発進時に、前記エネルギ備蓄機構に備蓄された弾性力で補助駆動輪を駆動することにより、主駆動輪の駆動に必要な力を低減することができ、主駆動輪を駆動するためのモータやバッテリを小型軽量とすることができる。したがって車両が小型軽量になり、消費電力を抑制できる。
【0009】
また、本発明は、車両本体が独立駆動かつ正逆回転可能な一対の駆動輪を備え、一対の駆動輪の回転速度差及び/又は正逆回転制御で車両本体を操舵可能に構成し、入力された動力を弾性力に変換して備蓄する一方、備蓄した弾性力を動力として出力可能な弾性体を含むエネルギ備蓄機構と、エネルギ備蓄機構の動力により駆動される補助駆動輪とを備え、補助駆動輪の回転軸線を一対の駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面内に存在させたことを特徴とする。
【0010】
本発明では、車両本体が独立駆動かつ正逆回転可能な一対の駆動輪を備え、一対の駆動輪の回転速度差及び/又は正逆回転制御で車両本体を操舵可能に構成しているため、前進または後退しながら進行方向を変えることができるうえ、前後に進まずその場で車両本体の進行方向を変えることもできる。したがって、複雑な操舵機構を備えず部品数を抑制しつつも、意図どおりの操舵が可能となるうえ、狭隘な場所での操舵が可能となる。
また、本発明では、補助駆動輪の回転軸線が、一対の駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面内に存在するため、補助駆動輪を複雑な首振り構造等としなくても、補助駆動輪の引きずりを防止して、スムーズな操舵が可能となる。
また、本発明では、エネルギ備蓄機構に備蓄された弾性力により駆動される補助駆動輪を備えているため、例えば、大きな駆動力が必要とされる車両の発進時に、前記エネルギ備蓄機構に備蓄された弾性力で補助駆動輪を駆動することにより、主駆動輪の駆動に必要な力を低減することができ、主駆動輪を駆動するためのモータやバッテリを小型軽量とすることができる。したがって車両が小型軽量となり、消費電力を抑制できる。
【0011】
また、本発明は、前記車両本体が各駆動輪及び補助駆動輪を囲むように複数のキャスタを備えたことを特徴とする。
本発明では、車両本体が各駆動輪及び補助駆動輪を囲むように複数のキャスタを備えているため、各駆動輪及び補助駆動輪の接地箇所が一直線に並んでいても、車両本体は安定して走行することができる。
【0012】
また、本発明は、車体本体が台車と、台車に相対回転可能に連結された駆動ユニットと、駆動ユニット及び台車を相対回転不能に拘束可能な旋回ブレーキとを備え、駆動ユニットが独立駆動かつ正逆回転可能な一対の駆動輪を備え、一対の駆動輪の回転速度差及び/又は正逆回転制御により車両本体を操舵可能に構成すると共に、旋回ブレーキを解除して、一方の駆動輪を正回転し、他方の駆動輪を逆回転させることで、駆動ユニット旋回可能に構成し、入力された動力を弾性力に変換して備蓄する一方、備蓄した弾性力を動力として出力可能な弾性体を含むエネルギ備蓄機構と、エネルギ備蓄機構の動力により駆動される補助駆動輪とを備え、補助駆動輪を駆動ユニットに配置し、補助駆動輪の回転軸線を一対の駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面内に存在させたことを特徴とする。
【0013】
本発明では、車両本体が台車と、台車に相対回転可能に連結された駆動ユニットと、駆動ユニット及び台車を相対回転不能に拘束可能な旋回ブレーキとを備え、駆動ユニットが独立駆動かつ正逆回転可能な一対の駆動輪を備え、一対の駆動輪の回転速度差及び/又は正逆回転制御により車両本体を操舵可能に構成しているため、前進または後退しながら進行方向を変えることができるうえ、前後に進まずその場で車両本体の進行方向を変えることもできる。したがって、複雑な操舵機構を備えず部品数を抑制しつつも、意図どおりの操舵が可能となるうえ、狭隘な場所での操舵が可能となる。
【0014】
また、本発明では、旋回ブレーキを解除して、一方の駆動輪を正回転し、他方の駆動輪を逆回転させることで、駆動ユニット旋回可能に構成しているため、車両は台車の向きを保持したまま矩形波状または台形波状の経路を進行することができる。
したがって、狭隘な場所においても複雑な経路をとることが可能となり、生産システムのレイアウト自由度が向上する。また、操舵の際、台車の向きが保持されるため積載物に回転モーメントが加わることがなく、搬送を迅速化することができる。
【0015】
また、本発明では、補助駆動輪の回転軸線が、一対の駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面内に存在するため、補助駆動輪を複雑な首振り構造等としなくても、補助駆動輪の引きずりを防止して、スムーズな操舵が可能となる。
また、本発明では、エネルギ備蓄機構に備蓄された弾性力により駆動される補助駆動輪を備えているため、例えば、大きな駆動力が必要とされる車両の発進時に、前記エネルギ備蓄機構に備蓄された弾性力で補助駆動輪を駆動することにより、主駆動輪の駆動に必要な力を低減することができ、主駆動輪を駆動するためのモータやバッテリを小型軽量とすることができる。したがって車両が小型軽量となり、消費電力を抑制できる。
【0016】
また、本発明は、前記台車に複数のキャスタを備えたことを特徴とする。
本発明では、台車に複数のキャスタを備えているため、各駆動輪及び補助駆動輪の接地箇所が一直線に並んでいても、車両本体は安定して走行できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、補助駆動輪の回転中心軸線が、一対の駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面に存在するため、補助駆動輪を複雑な首振り構造等としなくても、補助駆動輪の引きずりを防止することができ、スムーズな操舵が可能となる。
また、本発明によれば、エネルギ備蓄機構に備蓄された弾性力により駆動される補助駆動輪を備えているため、前記エネルギ備蓄機構に備蓄された弾性力で補助駆動輪を駆動することにより、主駆動輪の駆動に必要な力を低減することができ、主駆動輪を駆動するためのモータやバッテリが小型軽量となる。したがって車両を小型軽量として、消費電力を抑制できる。
【0018】
また、本発明によれば、一対の主駆動輪が独立に駆動されるため、一対の主駆動輪の回転速度に差をつけるだけで車両を操舵することができ、一対の駆動輪の回転速度を制御するだけで、前進または後退しながら車両本体の進行方向を変えることができる。したがって、複雑な操舵機構を備えず部品数を抑制しつつも、意図どおりの操舵が可能となる。
また、本発明によれば、一対の主駆動輪が正逆回転可能であるため、前後に進まずその場で車体の向きを変えることができる。したがって、狭隘な場所での操舵が可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、車体本体が台車と、台車に相対回転可能に連結された駆動ユニットと、駆動ユニット及び台車を相対回転不能に拘束可能な旋回ブレーキとを備え、駆動ユニットが独立駆動かつ正逆回転可能な一対の駆動輪を備え、旋回ブレーキを解除して、一方の駆動輪を正回転し、他方の駆動輪を逆回転させることで、駆動ユニット旋回可能に構成しているため、車両は台車の向きを保持したまま矩形波状または台形波状の経路を進行することができる。
したがって、狭隘な場所においても複雑な経路をとることが可能となり、生産システムのレイアウト自由度が向上する。また、操舵の際、台車の向きが保持されるため積載物に回転モーメントが加わることがなく、搬送を迅速化することができる。
また、本発明によれば、台車に複数のキャスタを備えているため、各駆動輪及び補助駆動輪の接地箇所が一直線に並んでいても、車両本体は安定して走行できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る搬送車を適用した生産システムを示す平面図である。
【図2】図1に示す生産システムにおいて、搬送車が矩形波状の経路をとる部分の拡大平面図である。
【図3】本実施形態に係る車両の適用例である搬送車の一部省略側面図である。
【図4】本実施形態に係る車両の適用例である搬送車の一部省略平面図である。
【図5】(a)は駆動ユニット要部の一部省略側面図、(b)は一部省略平面図である。
【図6】操舵時の駆動輪の向きとそれぞれの軌跡を模式的に示す平面図である。
【図7】(a)〜(e)は、当接体を用いて横行する際の車両本体動作を模式的に示す平面図である。
【図8】(a)は主駆動輪を正逆回転させた際の車両本体動作を示す一部省略側面図、(b)は一部省略平面図である。
【図9】図1に示す生産システムにおいて、搬送車が台形波状の経路をとる部分の拡大平面図である。
【図10】(a)〜(e)は、当接体を用いて斜行する際の車両本体動作を模式的に示す上面図である。
【図11】別の実施形態に係る搬送車の一部省略側面図である。
【図12】当接体が設置されない搬送システムの要部拡大平面図である。
【図13】(a)〜(f)は、当接体を用いることなく横行する際の車両本体動作を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を添付した図面を参照して説明する。
図1及び図2は、自動車工場等の生産現場における生産ラインを含み、いわゆる流れ作業により生産を行うシステムを示す。
この生産ラインは、平行に配列された第1のライン100と、第2のライン200とを有し、これら第1のライン100、第2のライン200は入口及び出口で合流し、第3のライン300に接続されている。第1のライン100、第2のライン200には、複数の作業ステーションSが設けられ、複数の作業ステーションSには、それぞれ作業ロボットが配置されている。第1のライン100及び第2のライン200は、別異の製品の生産ラインであるが、作業ステーションS1は共通化されている。第2のライン200には、第1のライン100と合流する凹みライン200Aが形成されている。
この生産ラインは、ワークWを積載して各作業ステーションSを順次移動可能に複数の搬送車(車両)10を備えている。
【0022】
図3は、搬送車10の一部省略側面図であり、図4は、同平面図である。以下の説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は車体に対してのものとする。図中矢印FRは車体前方を、矢印Rは車体右方を、矢印UPは車体上方を夫々示す。
この搬送車10は、主にバッテリ57(電力供給部)を電源とする主動力部45からの駆動力で所望の経路を走行可能な電動車両であり、図1に示す生産ラインで、自動車部品(ワークW)を載置台31に積載し、工場内の所望の位置へと搬送するAGVである。なお、本実施形態では、電動車両の例示として搬送車10を挙げて説明するが、乗用車、電動カート及び電車等、電動で走行する車両であれば適用可能である。
【0023】
搬送車10は車両本体20を備え、車両本体20は台車21と、台車21に連結された駆動ユニット23とを備えて構成されている。台車21の台車フレーム21Aには脚21Bが形成され、夫々の脚21Bには、四方に旋回自在にキャスタ25が支持されている。台車フレーム21Aには、ワークWを積載する積載部30が設けられている。積載部30は、ワークWが載置されるテーブルである載置台31と、載置台31を上下方向に昇降可能であって、載置台31及びワークWを所望の高さ位置に保持可能な昇降装置33とを備えている。昇降装置33は、載置台31の略中央下面に固定されたロッド35を介して当該載置台31を昇降させる油圧シリンダ(昇降機構)37と、油圧シリンダ37を駆動する油圧回路(不図示)とから構成されている。載置台31の昇降動作は、載置台31後方に設けられた垂直プレート31Aの車幅方向両側でロッド35と平行して車体上下方向に延びたレール38と、台車フレーム21A側に固定され、レール38が摺動可能に係合するガイド凹部39とによって案内される。
【0024】
油圧回路は、図示は省略したが、ロッド35に連結されたピストンによって画成される油圧シリンダ37の上室及び下室に制御弁機構を介してそれぞれ接続される。制御弁機構は、油圧回路の上室や下室との連通状態や作動油の流通方向を適宜切換可能な弁装置であり、制御部49(図3参照)により駆動制御される。油圧回路の途中には、回路内の作動油を加圧・流動するポンプと、作動油の圧力や流動を受けて発電するジェネレータ(発電機)とが配設されている。ジェネレータで発電した電力は後述するバッテリ57に蓄電される。また、台車21の底面側には、搬送車10が走行すべき経路を検知するセンサ40が設けられている。センサ40は、例えば磁気センサであり、工場内で搬送車10が走行すべき経路上に貼り付けられた磁気テープの磁界を検知して、制御部49(図3参照)に信号を出力する。台車21の外周はボディパネル(不図示)で覆われている。また、台車21の外周を覆う前記ボディパネルに、マイクロウェイブ受信装置(不図示)や太陽電池(不図示)を搭載し、工場内のマイクロウェイブ発信装置(不図示)から、又は照明(不図示)から、エネルギをマイクロ波や光として受け、マイクロウェイブ受信装置や太陽電池で電力変換し、電力としてバッテリ57に蓄電するようにしてもよい。
【0025】
台車21と駆動ユニット23とは、駆動ユニット23に設けられた旋回軸41と、台車21に設けられた軸受42により相対回転可能に連結されている。台車21には前記した旋回軸41の回転を拘束可能な旋回ブレーキ43が設けられており、旋回ブレーキ43を動作することで、駆動ユニット23と台車21との相対回転を拘束して一体化することが可能となっている。
本明細書では、以下、駆動ユニット23を台車21に対して旋回軸41周りに相対回転させ、車両本体20の上面視で、駆動ユニット23の向きと台車21の向きとを相対的に変更する動作を旋回と定義し、車両本体20の上面視で、後述する主駆動輪53A、53Bの向きを変更する動作を操舵と定義する。
【0026】
駆動ユニット23は、図3に示すように、主として通常走行時に駆動される主動力部45と、例えば当該搬送車10の停止状態からの発進時に駆動され、主動力部45による走行を補助(アシスト)する補助動力部47と、主動力部45、補助動力部47及び積載部30等の動作を総合的に制御する制御部49と、前記主動力部45、補助動力部47、制御部49を一体に搭載する駆動ユニットフレーム50とを備える。
【0027】
主動力部45は、図4に示すように、制御部49により独立に駆動され、回転速度の調整と正逆回転とが可能な一対の走行用モータ51A、51Bと、駆動ユニットフレーム50に回転可能に軸支され前記一対の走行用モータ51A、51Bの回転に基づいて回転駆動される一対の主駆動輪53A、53Bと、主駆動輪53A、53Bの駆動軸周りの回転角度を計測するエンコーダ55A、55Bと、走行用モータ51A、51Bに電力を供給するバッテリ57と、を備えて構成される。
なお、バッテリ57は、例えば、搬送車10が待機や作業のために所定の作業ステーションSに停車された際、当該作業ステーションSに設置された外部電源(不図示)によって充電される。搬送車10と外部電源とは、例えば、磁力で着脱可能な雄雌一対のコネクタによって、容易に電気的な接続が可能である。
【0028】
補助動力部47は、図5a、図5bに示すように、動力を弾性力に変換して備蓄可能な一方、備蓄した弾性力を動力として出力可能なエネルギ備蓄機構60と、補助動力部47の枠体65に回転可能に軸支され、エネルギ備蓄機構60で備蓄した弾性力により駆動される補助駆動輪(駆動輪)61と、エネルギ備蓄機構60と補助駆動輪61の駆動軸67を結合または切離するクラッチ機構63と、前記各機構を覆う枠体65を備える。エネルギ備蓄機構60は、主に巻上軸60Aと、巻取軸60Bと、一端が巻上軸60Aに他端が巻取軸60Bに固定され、弾性力を蓄積していない状態では巻取軸60B側に巻き回される巻き癖を有するぜんまいばね60Cと、を備えて構成され、巻上軸60Aを外力で回転させて巻上軸60Aにぜんまい60Cを巻きかけると、ぜんまいばね60Cに弾性力が備蓄され、外力を無くすると、ぜんまいばね60Cの弾性力に基づいて巻取軸60Bが回転する機構である。60Dは軸受である。
【0029】
巻取軸60Bは、枠体65に固定された軸受60Dにより回転可能に軸支されている。巻上軸60Aは、巻取軸60Bと同様に枠体65に固定された軸受60Eにより回転可能に軸支されているが、巻上軸60Aの両端部は枠体65の外側に延出している。一方の延出部には、軸外周に軸の回転を停止させるぜんまいブレーキ60Fが配置され、さらに外側の軸端部は外部設備(不図示)と嵌合して外力を伝達するため例えば四角断面となっている。他方の延出部は、巻上回数を計測するカウンタ60Gと接続されている。
ぜんまいブレーキ60Fは、例えば、電磁ブレーキであり、制御部49の制御の下、巻上軸60Aの回転を許容もしくは禁止する。また、このぜんまいブレーキ60Fは、巻上軸60Aの回転量を調整することができ、エネルギ備蓄機構60のぜんまいばね60Cに備蓄された弾性力を0%から100%の範囲で連続的または段階的に動力として出力する。これによれば、ぜんまいばね60Cに備蓄された弾性力が一気に出力されることがなく、また出力量を制御できるため、搬送車10の加速度や速度を適度に制御できる。
また、カウンタ60Gにより、移動距離や積載重量に応じて巻き上げ回数を調整することができる。
【0030】
巻上軸60Aの略中央には、巻上軸60Aと同軸にドライブスプロケット60Hが固定されている。巻上軸60Aには、ドライブスプロケット60Hの両側に、有底筒状のケーシング60Iが固定され、このケーシング60I内に巻き上げたぜんまいばね60Cを収容できるようになっている。ぜんまいばね60Cの一端はケーシング60Iの内壁面に結合され、他端は巻取軸60Bに結合されている。
ドライブスプロケット60Hは、チェーン60Jにより、駆動軸67と同軸に配置されたドリブンスプロケット60Kと連結されている。ドリブンスプロケット60Kは、クラッチ機構63を介して駆動軸67と結合可能かつ切離可能に連結されている。そして、駆動軸67は補助駆動輪61と結合されている。
【0031】
本実施の形態では、図5a、図5bに示すように、補助駆動輪61は、その回転軸線Lが、前述した一対の主駆動輪53A、53Bの各接地箇所SA、SBから立ち上がる垂直な面M内に存在する位置に配置されている。すなわち、一対の主駆動輪53A、53Bの接地箇所SA、SBは、補助駆動輪61の接地箇所SCと同一直線状に存在している。
制御部49は、主駆動輪53A、53Bを駆動する走行用モータ51A、51Bの回転制御、および前述したエンコーダ55A、55Bにより計測された主駆動輪53A、53Bの回転角に基づいて旋回ブレーキ43のオン/オフを行う。また、補助動力部47におけるぜんまいブレーキ60Fおよびクラッチ機構63の制御、積載部30の油圧ポンプおよび油圧回路(夫々、不図示)の制御を行う。
【0032】
次に、車両の走行動作について説明する。
(図1の第1のライン100及び第3のライン300の利用時)
搬送車10では、基本的には制御部49の制御下に、停止状態からの発進時には補助動力部47を用いて走行(発進)し、発進後の通常走行時には主動力部45を用いて走行する制御が行われる。搬送車10が、例えば、待機ステーションや作業ステーションSに停止している場合、この搬送車10のバッテリ57は、待機ステーションや作業ステーションSに設けられる外部電源で充電される。また、エネルギ備蓄機構60のぜんまいばね60Cは、待機ステーションや作業ステーションSに設けられる外部動力により巻上軸60Aに巻き回され、ぜんまいばね60Cに弾性力が備蓄される。
この際、制御部49は、巻上軸60A回転時にはクラッチ機構63を切離状態(オフ)とし、巻き終わるとぜんまいブレーキ60Fを作動状態(オン)とする。つまり、巻上軸60A回転時には巻上軸60Aの回転により補助駆動輪61が回転しないようにする。そして、ぜんまいブレーキ60Fを作動させることにより、備蓄した弾性力が開放されないように巻上軸60Aを固定する。
【0033】
次に、外部電源によるバッテリ57の充電と共に、エネルギ備蓄機構60での弾性力の備蓄が完了した後、走行開始(発進)をするための準備を実施する。即ち、制御部49は、クラッチ機構63を連結状態(オン)とする。これにより、巻上軸60Aとチェーン60Jで連結されたドリブンスプロケット60Kと駆動軸67とが係合し、巻上軸60Aの回転が駆動軸67に伝達されるようになり、巻上軸60Aの回転力により駆動軸67と結合された補助駆動輪61を駆動させる。この際、ぜんまいブレーキ60Fによる巻上軸60Aの回転停止は継続される。
そして、ぜんまいブレーキ60Fを解除すると、ぜんまいばね60Cに備蓄された弾性力により巻上軸60Aおよび巻取軸60Bが回転される。巻上軸60Aの回転力は、ドライブスプロケット60H、チェーン60J、ドリブンスプロケット60K、クラッチ機構63を介して駆動軸67に伝達され、駆動軸67と一体の補助駆動輪61が回転し、搬送車10が発進する。
【0034】
このような補助動力部47による発進では、少なくともぜんまいばね60Cに備蓄された弾性エネルギが開放されるまでの間は、巻上軸60Aが回転することにより補助駆動輪61に回転トルクが付与される。
ぜんまいばね60Cに備蓄された弾性力が開放された後は、クラッチ機構63を切離状態とすることにより搬送車10は慣性力によってある程度の距離を走行することができる。従って、搬送するワークWの重さを含む搬送車10の車体車重やぜんまいばね60Cの特性、各軸受部等のロス等を考慮した設計を行っておくことにより、例えば、工場内での各作業ステーションS間を、エネルギ備蓄機構60のぜんまいばね60Cに備蓄した弾性力のみで走行することも可能である。
なお、走行用モータ51A、51Bの駆動軸と主駆動輪53A、53Bとの間にもクラッチ(図示せず)を配設しておき、このような補助動力部47による発進に際し、当該クラッチを切離状態としておくこともできる。そうすると、発進時に使用しない走行用モータ51A、51Bへの負荷を軽減すると共に、該走行用モータ51A、51Bからの負荷が当該発進動作に影響することを有効に抑えることができる。
補助動力部47による発進後、さらに走行を継続する場合、制御部49は、主動力部45を駆動し、バッテリ57からの電力で走行用モータ51A、51Bを駆動することで、搬送車10は通常の電動車両として走行を継続できる。
【0035】
図1に示すように、第1のライン100は直線である。主動力部45を駆動して、第1のライン100上を走行する際には、走行用モータ51A、51Bの回転数を一致させて、一対の主駆動輪53A、53Bの回転数を一致させる。これにより、搬送車10を直進できる。これに対し、第1のライン100の入口Dおよび出口Eではカーブを描いている。この場合には、進行方向に対して、右側の主駆動輪53Bの回転速度を、左側の主駆動輪53Aの回転速度よりも増速し、回転速度差で左方に曲がる。
【0036】
本実施の形態では、図5aに示すように、補助駆動輪61は、その回転軸線Lが、一対の主駆動輪53A、53Bの各接地箇所SA、SBから立ち上がる垂直な面M内に存在する位置に配置され、一対の主駆動輪53A、53Bの接地箇所SA、SBは、図6に示すように、補助駆動輪61の接地箇所SCと同一直線上に存在する。
従来の構造では、補助駆動輪61の接地箇所SCが、図中で破線示するように、一対の主駆動輪53A、53Bの接地箇所SA、SBに対し、直線L1の上に並ばず、例えば三角形の各頂点に配置される。この場合、搬送車10の操舵進行が進んで、一対の主駆動輪53A、53Bの接地箇所SA、SBが、直線L2の上に到達しても、補助駆動輪61の接地箇所SC’は、破線示するように後方に遅れる。補助駆動輪61は、接地箇所SCから接地箇所SC’に至る間、即ち操舵進行する間、自己の操舵軌跡の接線上に向かわず、補助駆動輪61は、地面との摩擦力Fの回転軸線方向の成分f2を受けて引きずられる。
これに対し、本実施の形態では、一対の主駆動輪53A、53Bの接地箇所SA、SBと、補助駆動輪61の接地箇所SCとが直線L1上でも、直線L2上でも同一直線状に存在するため、主駆動輪53A、53B、および補助駆動輪61すべてが、自己の操舵軌跡の接線上に向かい、補助駆動輪61が地面から受ける摩擦力は、補助駆動輪61の回転軸線方向の成分f2を含まない。従って、補助駆動輪61を複雑な首振り構造等にしなくても、補助駆動輪61の引きずりを防止することができ、スムーズな操舵が可能となる。
また、本実施の形態では、一対の主駆動輪53A、53Bが独立に駆動されるため、主駆動輪53A、53Bの回転速度を制御するだけで、車両を前進または後退させながら、車両本体20の進行方向を変えることができる。したがって、複雑な操舵機構を備えず部品数を抑制しつつも、意図どおりの操舵が可能となる。
【0037】
本実施の形態では、エネルギ備蓄機構60のぜんまいばね60Cで備蓄した弾性力で補助駆動輪61を駆動して、停止状態から発進することができる。この場合、ぜんまいばね60Cは、搬送車10の停車時に外部動力で巻き上げられ、バッテリ57の充電と同時に行うことができるため時間的なロスを生じることがない。さらに、補助動力部47による発進後は、一般的な電動車両と同様に主動力部45による電気走行を行うことができることから、所望の経路を所望の距離走行できる。
【0038】
一般に、低速回転時のモータの電力量(電流量)は所定の高速回転時に比べて大きく、しかも停車時からの発進に必要な駆動トルクは定常走行時に比べて非常に大きい。換言すれば、仮に走行用モータ51A、51Bで搬送車10を発進させようとした場合には、当該走行用モータ51A、51Bは低速回転で且つ高トルクを出力しなければならず、その電力消費量は、ぜんまいばね60Cを巻き上げるため、外部動力の電力消費量に比べて極めて大きなものとなる。
これに対し、搬送車10では、発進をぜんまいばね60Cの弾性力で賄うことができるため、走行用モータ51A、51Bとして低出力且つ小型のものを用いることができ、特に、重量物であるワークWを搬送することも必要とされる搬送車10では、発進に係る負荷は非常に大きく、その効果が顕著である。さらに、搬送車10では、発進時にバッテリ57をほとんど使用する必要がないため、バッテリ57の小容量化・小型化も可能となり、搬送車10の軽量化及び省電力化が可能となる。しかも、エネルギ備蓄機構60を構成する弾性体としてぜんまいばね60Cを用いていることから、簡単且つ低コストで補助動力部47を構成可能である。
【0039】
(図1の第2のライン200及び第3のライン300の利用時)
本実施の形態では、直進中の搬送車10においては、制御部49は、一対の主駆動輪53A、53Bを同じ回転速度で正回転させている。また通常、旋回ブレーキ43をオンとして駆動ユニット23と台車21とを旋回不能に拘束している。
操舵する際には、制御部49は一対の主駆動輪53A、53Bを正回転させつつ、それぞれ異なる回転速度で回転させる。この回転速度差により、一対の主駆動輪53A、53Bの軌跡は、同一の点を中心とした円弧を描くことになり、搬送車10の進行とともに駆動ユニット23の向きが変更される。
図1に示すように、第2のライン200は直線でなく、凹みライン200Aが設けられている。凹みライン200Aでは、台車21の向きは進行方向に一致させて、駆動ユニット23を90°旋回し、90°旋回した状態で駆動ユニット23を駆動して走行することが行われる。
なお、本明細書では、以下、台車21の姿勢を保ったまま、車両本体20を横方向に移動させることを横行と定義する。
【0040】
本実施の形態では、凹みライン200Aの各コーナに、例えば、図2に示すように、4つの当接体(以下、ガイドという。)81が配置されている。このガイド81は固定部に固定され、第2のライン200と平行とされている。
図7aに示すように、搬送車10を矢印方向に進行し、搬送車10が、例えば図2に示す凹みライン200Aに到達すると、図7bに示すように、車両は、ガイド81に台車21の側面を当接させて停止する。次に、制御部49は旋回ブレーキ43を解除し、図7cに示すように、一対の主駆動輪53A、53Bを正逆回転起動する。この際、台車21はガイド81によって旋回不能に規制されているため、図7dに示すように、駆動ユニット23のみが旋回軸41を中心として回転する。この駆動ユニット23の回転は、一対の主駆動輪53A、53Bの向きを変更する動作(操舵)であると共に、駆動ユニット23の向きと台車21の向きとを相対変化させる動作(旋回)でもある。図7dの状態で、駆動ユニット23を駆動すると、図7eに示すように、横行を開始する。
この際、制御部49は、エンコーダ55A、55Bから一対の主駆動輪53A、53Bの駆動軸周りの回転角度計測値を取得しているため、駆動ユニット23の回転角度(操舵/旋回角度)を90°として特定でき、図7dに示すように、駆動ユニット23の回転角度が90°に至ったら、停止すればよい。
搬送車10は、この凹みライン200Aでの上述した手順を3回繰り返し、第2のライン200の直線部に復帰する。
【0041】
本実施の形態では、図8a、図8bに示すように、一対の主駆動輪53A、53Bの各接地箇所SA、SBを結ぶ線分の中点に旋回軸41が存在するため、一対の主駆動輪53A、53Bを正逆回転させたときの主駆動輪53A、53Bの軌跡は、旋回軸41を中心とし、直径がトレッド幅W(一対の主駆動輪53A、53Bの距離)と等しい円弧となる。ここで、主駆動輪53A、53Bの回転角度をω1、駆動ユニット23の回転角度をω2、主駆動輪53A、53Bの直径Dとすると、以下の関係式が成り立つ。
D・ω1=W・ω2
従って、エンコーダ55A、55Bから主駆動輪53A、53Bの駆動軸周りの回転角度計測値を取得すれば、駆動ユニット23の回転角度(操舵/旋回角度)を特定することができる。そして、駆動ユニット23の回転角度(操舵/旋回角度)が90°に到達すると、制御部49は一対の主駆動輪53A、55Bの正逆回転を停止させる。これにより、当初から台車21の姿勢は保持されたまま、駆動ユニット23のみが回転して90°向きを変化させる。そして、旋回ブレーキ43をオンとして駆動ユニット23と台車21とを旋回不能に拘束したのち、一対の駆動輪を正転させると、台車21の姿勢を保ったまま、車両本体20の横行が開始される。
【0042】
上述した実施の形態では、駆動ユニット23の回転角度(操舵/旋回角度)を90°としたが、回転角度は任意の角度でよく、例えば、図9に示すように、駆動ユニット23の回転角度(操舵/旋回角度)を45°としてもよい。
なお、本明細書では、以下、台車21の姿勢を保ったまま、車両本体20を斜め方向に移動させることを斜行と定義する。
図10aに示すように、搬送車10を矢印方向に進行し、搬送車10が、例えば図9に示す凹みライン200Aに到達すると、図10bに示すように、車両は、ガイド81に台車21の側面を当接させて停止する。次に、制御部49は旋回ブレーキ43を解除し、図10cに示すように、一対の主駆動輪53A、53Bを正逆回転起動する。
この際、制御部49は、エンコーダ55A、55Bから主駆動輪53A、53Bの駆動軸周りの回転角度計測値を取得しているため、駆動ユニット23の回転角度(操舵/旋回角度)を特定できる。そして、駆動ユニット23の回転角度(操舵/旋回角度)が45°に到達すると、上記制御部49は、図10dに示すように、一対の主駆動輪53A、53Bの正逆回転を停止させる。これにより、当初から台車21の姿勢は保持されたまま、駆動ユニット23のみが回転して45°向きを変えることが出来る。そして、旋回ブレーキ43をオンとして駆動ユニット23と台車21とを旋回不能に拘束したのち、一対の主駆動輪53A、53Bを正回転させることにより、図10eに示すように、台車21の姿勢を保ったまま、車両本体20の斜行が開始される。
【0043】
本実施形態では、車両本体20が台車21と、台車21に相対回転可能に連結された駆動ユニット23と、駆動ユニット23及び台車21を相対回転不能に拘束可能な旋回ブレーキ43とを備え、駆動ユニット23が独立駆動かつ正逆回転可能な一対の主駆動輪53A、53Bを備え、旋回ブレーキ43を解除して、一対の主駆動輪53A、53Bを正逆回転させることで、駆動ユニット23を旋回可能に構成しているため、搬送車10は台車21の向きを保持したまま矩形波状または台形波状の経路を進行することができる。
したがって、狭隘な場所においても複雑な経路をとることが可能となり、生産システムのレイアウト自由度が向上する。また、操舵の際、台車21の向きが保持されるためワークWに回転モーメントが加わることがなく、搬送を迅速化することができる。
【0044】
また、本実施形態では、補助駆動輪61の回転軸線Lを一対の主駆動輪53A、53Bの各接地箇所SA、SBから立ち上がる垂直な面M内に存在させたため、上述した横行動作および斜行動作においても、補助駆動輪61の向きが、自己の操舵軌跡の接線上に向かい、補助駆動輪61が地面から受ける摩擦力Fは、補助駆動輪61の回転軸線方向の成分f2を含まない。従って、上述した横行動作および斜行動作においても、補助駆動輪61を複雑な首振り構造等にしなくても、補助駆動輪61の引きずりを防止できるため、スムーズな操舵が可能となる。
【0045】
図11は、別の実施の形態を示す。
この図11は、概念を示す図であり、図3〜図5と同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。この実施の形態では、上記した実施の形態の構成に加えて、駆動ユニット23に対し、台車21を相対回転させるためのアクチュエータ(以下、ステッピングモータという)91が設けられている。
ステッピングモータ91は台車21に固定され、ステッピングモータ91の回転軸93が、駆動ユニット23に固定されている。
図12は、図2相当図であり、この実施の形態によれば、図2と比較した場合に、ガイド81が不要となっている。
【0046】
例えば、図12を参照し、第2のライン200の上流から下流に進行してきた搬送車10が、凹みライン200Aに差し掛かると、図13a、図13bに示すように、搬送車10が所定位置で停止する。この位置には、ガイド81は不要である。
次に、制御部49は旋回ブレーキ43をオフとし、図13cに示すように、一対の主駆動輪53A、53Bを正逆回転起動する。ここで、旋回ブレーキ43がオフとなっても、ステッピングモータ91の回転軸93が駆動ユニット23に固定されているため、駆動ユニット23と台車21間に相対回転は生じない。
【0047】
この際、制御部49は、エンコーダ55A、55Bから主駆動輪53A、53Bの駆動軸周りの回転角度計測値を取得しているため、駆動ユニット23の回転角度(操舵角度)を特定できる。この実施の形態では、一対の主駆動輪53A、53Bが正逆回転し、図13dに示すように、駆動ユニット23が回転を開始すると、エンコーダ55A、55Bが夫々の回転角度を逐次、取得し、この回転角度が、制御部49に逐次、入力される。制御部49は、取得した回転角度に基づいて、駆動ユニット23が回転した分だけ、順次、ステッピングモータ91を逆回転し、これによって、図13eに示すように、台車21の始めの姿勢を維持したまま、駆動ユニット23が90°操舵/旋回され、図13fに示すように、搬送車10の横行が開始される。この実施の形態では、ガイド81を設けることなく、搬送車10の横行が可能になる。
【0048】
上記実施の形態では、一対の主駆動輪53A、53Bを正逆回転し、駆動ユニット23を操舵/旋回させると同時に、ステッピングモータ91を逆回転し、台車21を常に始めの姿勢に維持させているが、これに限定されない。別の形態として、例えば、旋回ブレーキ43をオンし、一対の主駆動輪53A、53Bを正逆回転し、搬送車10を一体に90°旋回させた後、制御部49に逐次、入力される駆動ユニット23の回転角度に基づいて、駆動ユニット23が回転した90°分だけ、一度に、ステッピングモータ91を逆回転し、台車21を元の姿勢に戻すことは可能である。
【0049】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
上述した実施形態では、生産ラインの人員を要しない作業ステーションSの例を示したが、作業者のみ、または、作業者および作業ロボットで構成される人員を要する作業ステーションであっても構わない。この場合、作業者の歩行を削減して作業を効率化することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 搬送車
20 車両本体
21 台車
23 駆動ユニット
41 旋回軸
43 旋回ブレーキ
45 主動力部
47 補助動力部
49 制御部
53A、53B 主駆動輪
55A、55B エンコーダ
60 エネルギ備蓄機構
61 補助駆動輪
81 ガイド(当接体)
SA、SB 主駆動輪の接地箇所
SC 補助駆動輪の接地箇所
L 補助駆動輪の回転軸線
M 主駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体が独立駆動の一対の駆動輪を備え、
一対の駆動輪の回転速度差で車両本体を操舵可能に構成し、
入力された動力を弾性力に変換して備蓄する一方、備蓄した弾性力を動力として出力可能な弾性体を含むエネルギ備蓄機構と、
エネルギ備蓄機構の動力により駆動される補助駆動輪とを備え、
補助駆動輪の回転軸線を一対の駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面内に存在させたことを特徴とする車両。
【請求項2】
車両本体が独立駆動かつ正逆回転可能な一対の駆動輪を備え、
一対の駆動輪の回転速度差及び/又は正逆回転制御で車両本体を操舵可能に構成し、
入力された動力を弾性力に変換して備蓄する一方、備蓄した弾性力を動力として出力可能な弾性体を含むエネルギ備蓄機構と、
エネルギ備蓄機構の動力により駆動される補助駆動輪とを備え、
補助駆動輪の回転軸線を一対の駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面内に存在させたことを特徴とする車両。
【請求項3】
前記車両本体が各駆動輪及び補助駆動輪を囲むように複数のキャスタを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
車両本体が台車と、台車に相対回転可能に連結された駆動ユニットと、駆動ユニット及び台車を相対回転不能に拘束可能な旋回ブレーキとを備え、
駆動ユニットが独立駆動かつ正逆回転可能な一対の駆動輪を備え、
一対の駆動輪の回転速度差及び/又は正逆回転制御により車両本体を操舵可能に構成すると共に、旋回ブレーキを解除して、一方の駆動輪を正回転し、他方の駆動輪を逆回転させることで、駆動ユニット旋回可能に構成し、
入力された動力を弾性力に変換して備蓄する一方、備蓄した弾性力を動力として出力可能な弾性体を含むエネルギ備蓄機構と、
エネルギ備蓄機構の動力により駆動される補助駆動輪とを備え、
補助駆動輪を駆動ユニットに配置し、
補助駆動輪の回転軸線を一対の駆動輪の各接地箇所から立ち上がる垂直な面内に存在させたことを特徴とする車両。
【請求項5】
前記台車に複数のキャスタを備えたことを特徴とする請求項4に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−201339(P2011−201339A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68022(P2010−68022)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】