車体フレーム
【課題】折曲部を備えた車体フレームの剛性を容易に確保することができる車体フレームを提供する。
【解決手段】車体フレーム12は、車体フレーム12の前端部12aから後端部12bまで全域に亘って帯状に延出され、圧縮壁部42,44,46を形成する軽金属製のメインフレーム部31と、帯状のメインフレーム部31に沿って取り付けられることで、メインフレーム部31と一体となって中空体を形成するとともに引張壁部54,61,67を形成する鋼製のサブフレーム部32〜34とを備え、メインフレーム部31の板厚寸法T1がサブフレーム部32〜34の板厚寸法T2より大きく設定されている。
【解決手段】車体フレーム12は、車体フレーム12の前端部12aから後端部12bまで全域に亘って帯状に延出され、圧縮壁部42,44,46を形成する軽金属製のメインフレーム部31と、帯状のメインフレーム部31に沿って取り付けられることで、メインフレーム部31と一体となって中空体を形成するとともに引張壁部54,61,67を形成する鋼製のサブフレーム部32〜34とを備え、メインフレーム部31の板厚寸法T1がサブフレーム部32〜34の板厚寸法T2より大きく設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃が作用した際に、圧縮応力が発生する部位と引張応力が発生する部位とを備えた車体フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、左右のフロントサイドメンバー(以下、「車体フレーム」という)をアルミ合金などの軽合金材料で形成したものがある(例えば、特許文献1,2参照。)。
特許文献1,2の車体フレームは、外壁が正多角形(例えば、正六角形)に形成され、外壁に形成された各頂部と中心軸とを結ぶ複数の放射状リブが形成された中空筒状体である。
【特許文献1】特開平11−208519号公報
【特許文献2】特開2003−72587公報
【0003】
この車体フレームによれば、アルミ合金などの軽合金材料で車体フレームを形成することで、車体フレームの軸線方向に衝撃が発生した場合に、衝撃による圧縮応力を良好に支えることが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、左右の車体フレームはエンジンルームの枠体を形成する部材である。左右の車体フレーム間にエンジンが配置されるとともに、左右の車体フレームの外側に左右の前輪が配置される。
ここで、車体フレームのなかには、エンジン(横置きエンジン)と前輪とのレイアウトに対応させて車体フレームに折曲部を備えたものがある。
【0005】
折曲部を備えた車体フレームは、車体フレームの前部に衝撃が発生した場合に、十分なエネルギー吸収量を確保することが難しく、フレームの板厚の増加などで対応していた。
このため、折曲部を備えた車体フレームの重量を増加することなく、十分なエネルギー吸収を容易に確保することができる技術の実用化が望まれていた。
【0006】
本発明は、折曲部を備えた車体フレームのエネルギー吸収を容易に確保することができる車体フレームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、断面略矩形状の中空体に形成され、軸線方向の衝撃が作用した際に、圧縮応力が発生する圧縮壁部と引張応力が発生する引張壁部とを備えた車体フレームにおいて、前記車体フレームの前端部から後端部まで全域に亘って延出され、前記圧縮壁部を形成する軽金属製のメインフレーム部と、前記メインフレーム部に沿って取り付けられることで、前記メインフレーム部と一体となって前記中空体を形成するとともに前記引張壁部を形成する鋼製のサブフレーム部と、を備え、前記メインフレーム部の板厚寸法を前記サブフレーム部の板厚寸法より大きく設定したことを特徴とする。
【0008】
ここで、軽合金材は鋼材と比較して比重が小さい。具体的には、軽合金としてのアルミ合金は、鋼材と比較して比重が略1/3である。
よって、同等重量の比較ではアルミ合金製のメインフレーム部の板厚寸法を鋼製のサブフレーム部に対して略3倍まで厚くすることが可能である。
これにより、メインフレーム部をアルミ合金などの軽金属で形成することで、メインフレーム部の板厚寸法を大きくして座屈応力を高めることができる。
【0009】
一方、鋼材は軽合金材と比較して引張応力が高いとともに、最大伸び量が多い。
そこで、請求項1において、圧縮壁部を軽金属製のメインフレーム部で形成し、かつ、引張壁部を鋼製のサブフレーム部で形成するようにした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、圧縮壁部を軽金属製のメインフレーム部で形成することで、圧縮壁部の板厚寸法をサブフレーム部の板厚寸法と比較して大きくできる。圧縮壁部の板厚寸法を大きくすることで、圧縮壁部の座屈応力を高くできる。
一方、鋼材は軽合金材と比較して引張応力が高いとともに、最大伸び量が多い。よって、引張壁部を鋼製のサブフレーム部で形成することで、引張壁部のエネルギー吸収量を多くできる。
【0011】
これにより、軸線方向の衝撃が作用した際に、圧縮壁部に発生した圧縮応力を圧縮壁部で良好に支えられるので、引張壁部に発生した引張応力を引張壁部で良好に支えることができる。
このように、軽金属製のメインフレーム部に鋼製のサブフレーム部を取り付けるだけの簡単な構成で、折曲部を備えた車体フレームで十分なエネルギー吸収量を容易に確保することができるという利点がある。
【0012】
加えて、折曲部を備えた車体フレームの剛性を容易に確保することで、例えば、エンジンや前輪などを収容する収容空間を確保することができる。
これにより、エンジンや前輪のレイアウトの自由度を高めることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0014】
(第1実施の形態)
図1は本発明に係る車体フレーム(第1実施の形態)を備えた車体前部構造の斜視図である。
車体前部構造10は、エンジンルーム11の左右枠部を形成する左右のフロントサイドメンバー(以下、「左右の車体フレーム」と称す)12,13と、左右の車体フレーム12,13の前端部12a,13aに設けられたバルクヘッド15と、左右の車体フレーム12,13の前端部12a,13aに亘って設けられた連結バー16と、左右の車体フレーム12,13の後端部から延出された左右のアウトリガー18(右アウトリガーは図示せず)と、左右のアウトリガー18および左右の車体フレーム12,13の後端部12b,13bに設けられたダッシュボードロア21とを備える。
【0015】
エンジンルーム11にエンジン/トランスミッションユニット19(図3参照)が横置きで配置されている。
エンジン/トランスミッションユニット19は、エンジンにトランスミッションが一体に取り付けたれたユニットである。
【0016】
さらに、車体前部構造10は、左車体フレーム12に対して車体外側に設けられた左アッパーメンバー22と、右車体フレーム13に対して車体外側に設けられた右アッパーメンバー23とを備える。
【0017】
バルクヘッド15は、左車体フレーム12の前端部12aに設けられた左支柱25と、右車体フレーム13の前端部13aに設けられた右支柱26と、左右の支柱25,26の上端部を連結する上梁部27と、左右の支柱25,26の下端部を連結する下梁部28とを有する。
このバルクヘッド15にラジエータ29(図3参照)が取り付けられている。
なお、左右の車体フレーム12,13は左右対称の部材なので、以下、左車体フレーム12を車体フレームとして説明して右車体フレーム13の説明を省略する。
【0018】
図2は第1実施の形態に係る車体フレームを示す斜視図である。
車体フレーム12は、軽金属製のメインフレーム部31と、メインフレーム部31の前部に取り付けられた鋼製の前サブフレーム部(サブフレーム部)32と、メインフレーム部31の中央部に取り付けられた鋼製の中央サブフレーム部(サブフレーム部)33と、メインフレーム部31の後部に取り付けられた鋼製の後サブフレーム部(サブフレーム部)34とを備え、内外の壁部36,37および上下の壁部38,39の4つ以上の壁部で断面略矩形状の中空体に形成されている。
【0019】
図3は第1実施の形態に係る車体フレームを示す平面図、図4は第1実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図である。
メインフレーム部31は、車体フレーム12の前端部12aから後端部12bまで全域に亘って帯状に板厚寸法T1で延出され、前圧縮壁部(圧縮壁部)42、前クロス部43、中央圧縮壁部(圧縮壁部)44、後クロス部45、後圧縮壁部(圧縮壁部)46を車体後方に向けて順に備える。
このメインフレーム部31は、一例として、鋳造で成形された部材である。
【0020】
前圧縮壁部42は、車体フレーム12の内壁部36のうち、前部を構成する壁部である。
この前圧縮壁部42は、前半部42aが車体中心49に対して平行に配置され、後半部42bが前圧縮折曲部42cで車体中央側に角度θ1(図3参照)で傾斜するように折り曲げられた壁部である。
前圧縮壁部42の上辺に複数の上取付孔が形成され、前圧縮壁部42の下辺に複数の下取付孔が形成されている。
【0021】
前クロス部43は、車体フレーム12の内壁部36から外壁部37に亘って延びる部位である。
前クロス部43の上辺に複数の上取付孔が形成され、前クロス部43の下辺に複数の下取付孔が形成されている。
【0022】
中央圧縮壁部44は、車体フレーム12の外壁部37のうち、中央部を構成する壁部である。
この中央圧縮壁部44は、前半部44aが車体中心49に対して車体中央側に角度θ1で傾斜するように折り曲げられ、後半部44bが中央圧縮折曲部44cで車体中心49に対して平行になるように折り曲げられた壁部である。
中央圧縮壁部44の上辺に複数の上取付孔が形成され、中央圧縮壁部44の下辺に複数の下取付孔が形成されている。
【0023】
後クロス部45は、車体フレーム12の外壁部37から内壁部36に亘って延びる部位である。
後クロス部45の上辺に複数の上取付孔が形成され、後クロス部45の下辺に複数の下取付孔が形成されている。
【0024】
後圧縮壁部46は、車体フレーム12の内壁部36のうち、後部を構成する壁部である。
この後圧縮壁部46は、車体中心49に対して平行に形成され、後端部46aがダッシュボードロア21に取り付けられた壁部である。
後圧縮壁部46の上辺に複数の上取付孔…が形成され、後圧縮壁部46の下辺に複数の下取付孔…が形成されている。
【0025】
前サブフレーム部32は、メインフレーム部31の前部(前圧縮壁部42および前クロス部43など)に沿って取り付けられることで、メインフレーム部31の前部と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
前サブフレーム部32は、板厚寸法T2で形成されている。
【0026】
具体的には、前サブフレーム部32は、前引張壁部(引張壁部)54、前上壁部55、前下壁部56、前後フランジ57、前上フランジ55a、および前下フランジ56aを有する。
前引張壁部54、前上壁部55および前下壁部56で断面略コ字状の部材が形成される。
【0027】
前引張壁部54は、車体フレーム12の外壁部37のうち、前部を形成する壁部であって、前半部54aが車体中心49に対して平行に形成され、後半部54bが前引張折曲部54cで車体中央側に角度θ1で傾斜するように折り曲げられた壁部である。
前引張壁部54の後端部に前後フランジ57が形成されている。前後フランジ57に前外取付孔が形成されている。
【0028】
前上壁部55は、車体フレーム12の上壁部38のうち、前部を形成する壁部である。
前上壁部55の内辺に前上フランジ55aが形成されている。前上フランジ55aに上取付孔が形成されている。
【0029】
前下壁部56は、車体フレーム12の下壁部39のうち、前部を形成する壁部である。
前下壁部56の内辺に前下フランジ56aが形成されている。前下フランジ56aに下取付孔が形成されている。
【0030】
中央サブフレーム部33は、メインフレーム部31の中央部(前クロス部43、中央圧縮壁部44および後クロス部45など)に沿って取り付けられることで、メインフレーム部31の中央部と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
中央サブフレーム部33は、板厚寸法T2で形成されている。
【0031】
具体的には、中央サブフレーム部33は、中央引張壁部(引張壁部)61、中央上壁部62、中央下壁部63、中央前フランジ64、中央後フランジ65、中央上フランジ62a、および中央下フランジ63aを有する。
中央引張壁部61、中央上壁部62および中央下壁部63で断面略コ字状の部材が形成される。
【0032】
中央引張壁部61は、車体フレーム12の内壁部36のうち、中央部を形成する壁部であって、前半部61aが車体中心49に対して車体中央側に角度θ1で傾斜するように形成され、後半部61bが中央引張折曲部61cで車体中心49に対して平行になるように折り曲げられた壁部である。
【0033】
中央引張壁部61の前端部に中央前フランジ64が形成されるとともに、中央引張壁部61の後端部に中央後フランジ65が形成されている。
中央前フランジ64に中央前内取付孔が形成され、中央後フランジ65に中央後内取付孔が形成されている。
【0034】
中央上壁部62は、車体フレーム12の上壁部38のうち、中央部を形成する壁部である。
中央上壁部62の外辺に中央上フランジ62aが形成されている。中央上フランジ62aに上取付孔が形成されている。
【0035】
中央下壁部63は、車体フレーム12の下壁部39のうち、中央部を形成する壁部である。
中央下壁部63の外辺に中央下フランジ63aが形成されている。中央下フランジ63aに下取付孔が形成されている。
【0036】
後サブフレーム部34は、メインフレーム部31の後部(後クロス部45および後圧縮壁部46など)に沿って取り付けられることで、メインフレーム部31の後部と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
後サブフレーム部34は、板厚寸法T2で形成されている。
この後サブフレーム部34は、後端部34aがダッシュボードロア21に取り付けられた壁部である。
【0037】
具体的には、後サブフレーム部34は、後引張壁部(引張壁部)67、後上壁部68、後下壁部69、後前フランジ71、後上フランジ68a、および後下フランジ69aを有する。
後引張壁部67、後上壁部68および後下壁部69で断面略コ字状の部材が形成される。
【0038】
後引張壁部67は、車体フレーム12の外壁部37のうち、後部を形成する壁部であって、車体中心49に対して平行に配置された壁部である。
後引張壁部67の前端部に後前フランジ71が形成されている。後前フランジ71に後外取付孔が形成されている。
【0039】
後上壁部68は、車体フレーム12の上壁部38のうち、後部を形成する壁部である。
後上壁部68の内辺に後上フランジ68aが形成されている。後上フランジ68aに上取付孔が形成されている。
【0040】
後下壁部69は、車体フレーム12の下壁部39のうち、後部を形成する壁部である。
後下壁部69の内辺に後下フランジ69aが形成されている。後下フランジ69aに下取付孔が形成されている。
【0041】
メインフレーム部31の板厚寸法T1と、前サブフレーム部32、中央サブフレーム部33および後サブフレーム部34の板厚寸法T2との関係は、T1>T2が成立する。
すなわち、軽合金材は鋼材と比較して比重が小さい。具体的には、軽合金としてのアルミ合金は、鋼材と比較して比重が略1/3である。
よって、同等重量の比較では、アルミ合金製のメインフレーム部(アルミ合金板)31の板厚寸法T1を、鋼製の各サブフレーム部(鋼板)32〜34の板厚寸法T2に対して略3倍まで厚くすることが可能である。
【0042】
これにより、メインフレーム部31をアルミ合金などの軽金属で形成することで、メインフレーム部31の板厚寸法T1を大きくして、前圧縮壁部42、中央圧縮壁部44および後圧縮壁部46の座屈応力を高めることができる。
【0043】
例えば、アルミ合金板と鋼板との板厚比が1.5の場合、座屈応力比は、
アルミ合金板:鋼板=1.1:1
である。
また、アルミ合金板と鋼板との板厚比が2の場合、座屈応力比は、
アルミ合金板:鋼板=2.6:1
である。
【0044】
さらに、アルミ合金板と鋼板との板厚比が2.5の場合、座屈応力比は、
アルミ合金板:鋼板=5.2:1
である。
加えて、アルミ合金板と鋼板との板厚比が3の場合、座屈応力比は、
アルミ合金板:鋼板=9:1である。
【0045】
一方、鋼材は軽合金材と比較して引張応力が高いとともに、最大伸び量が多い。
そこで、前サブフレーム部32、中央サブフレーム部33および後サブフレーム部34を鋼材で形成することで、前引張壁部54、中央引張壁部61および後引張壁部67のエネルギー吸収量を多くすることができる。
【0046】
前サブフレーム部32の前上フランジ55aは、メインフレーム部31(前圧縮壁部42および前クロス部43)の上辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
前サブフレーム部32の前下フランジ56aは、メインフレーム部31(前圧縮壁部42および前クロス部43)の下辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
【0047】
前サブフレーム部32の前後フランジ57は、メインフレーム部31(中央圧縮壁部44)の前辺44dにボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
この前後フランジ57は、上端部が中央上フランジ62aと共締めされ、下端部が中央下フランジ63aと共締めされている。
【0048】
中央サブフレーム部33の中央上フランジ62aは、メインフレーム部31(前クロス部43、中央圧縮壁部44および後クロス部45)の上辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
中央サブフレーム部33の中央下フランジ63aは、メインフレーム部31(前クロス部43、中央圧縮壁部44および後クロス部45)の下辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
【0049】
中央サブフレーム部33の中央前フランジ64は、メインフレーム部31(前圧縮壁部42)の後辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
この中央前フランジ64は、上端部が前上フランジ55aと共締めされ、下端部が前下フランジ56aと共締めされている。
【0050】
中央サブフレーム部33の中央後フランジ65は、メインフレーム部31(後圧縮壁部46)の前辺45aにボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
この中央後フランジ65は、上端部が後上フランジ68aと共締めされ、下端部が後下フランジ69aと共締めされている。
【0051】
後サブフレーム部34の後上フランジ68aは、メインフレーム部31(後クロス部45、後圧縮壁部46)の上辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
後サブフレーム部34の後下フランジ69aは、メインフレーム部31(後クロス部45、後圧縮壁部46)の下辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
【0052】
後サブフレーム部34の後前フランジ71は、メインフレーム部31(中央圧縮壁部44)の後辺44eにボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
この後前フランジ71は、上端部が中央上フランジ62aと共締めされ、下端部が中央下フランジ63aと共締めされている。
【0053】
以上説明したように、前サブフレーム部32は、前上フランジ55a、前下フランジ56aおよび前後フランジ57をメインフレーム部31にボルト止めすることで、メインフレーム部31に簡単に取り付けられる。
また、中央サブフレーム部33は、中央上フランジ62a、中央下フランジ63a、中央前フランジ64および中央後フランジ65をメインフレーム部31にボルト止めすることで、メインフレーム部31に簡単に取り付けられる。
【0054】
さらに、後サブフレーム部34は、後上フランジ68a、後下フランジ69aおよび後前フランジ71をメインフレーム部31にボルト止めすることで、メインフレーム部31に簡単に取り付けられる。
これにより、前サブフレーム部32、中央サブフレーム部33および後サブフレーム部34をメインフレーム部31に簡単に取り付けることができる。
【0055】
図3に示すように、前圧縮壁部42の後半部42bを車体中央側に角度θ1傾斜させるとともに、中央引張壁部61の前半部61aを車体中央側に角度θ1傾斜させた。
さらに、前引張壁部54の後半部54bを車体中央側に角度θ1傾斜させるとともに、中央圧縮壁部44の前半部44aを車体中央側に角度θ1傾斜させた。
【0056】
よって、車体フレーム12の前部30a、中央部30bおよび後部30cが略クランク状に折り曲げられる。
車体フレーム12を略クランク状に折り曲げることで、車体フレーム12は、前部30aが後部30cに対して車体幅方向に間隔L1だけ広げられる。
【0057】
後部30cの車幅寸法L2を小さく抑えて、前部30aの車幅寸法L3を大きく広げることができる。
これにより、エンジン/トランスミッションユニット19やラジエータ29を収容するためのエンジン収容空間76が確保されるとともに、前輪77を収容する前輪収容空間78が確保される。
【0058】
つぎに、車体フレーム12に衝撃が作用した例を図5〜図6に基づいて説明する。
図5(a),(b)は第1実施の形態に係る車体フレームに衝撃が作用した例を示す説明図である。
(a)において、車体フレーム12の前端部12aに衝撃F1が矢印のように作用する。
【0059】
(b)において、車体フレーム12が想像線80で示すように変形しようとする。
よって、前圧縮壁部42の前圧縮折曲部42cに第1圧縮応力σ1が作用するとともに、中央圧縮壁部44の中央圧縮折曲部44cに第2圧縮応力σ2が作用する。
さらに、後圧縮壁部46の略中央部に第3圧縮応力σ3が作用する。
【0060】
ここで、前圧縮壁部42、中央圧縮壁部44および後圧縮壁部46を軽合金(アルミ合金)で形成して板厚寸法T1を大きくすることで、各圧縮壁部42,44,46の座屈応力を高くできる。
よって、各圧縮壁部42,44,46に発生した第1〜第3の圧縮応力σ1,σ2,σ3を各圧縮壁部42,44,46で良好に支えることができる。
【0061】
同時に、前引張壁部54の前引張折曲部54cに第1引張応力σ4が作用するとともに、中央引張壁部61の中央引張折曲部61cに第2引張応力σ5が作用する。
さらに、後引張壁部67の略中央部に第3引張応力σ6が作用する。
ここで、前引張壁部54、中央引張壁部61および後引張壁部67を鋼材で形成して引張応力を高くするとともに最大伸び量を多くすることで、各引張壁部54,61,67に発生した第1〜第3の引張応力σ4,σ5,σ6を各引張壁部54,61,67で良好にエネルギーを吸収することができる。
【0062】
これにより、軽金属製のメインフレーム部31に鋼製の各サブフレーム部32〜34を取り付けるだけの簡単な構成で、折曲部42c,44c,54c,61cを備えた車体フレーム12の十分なエネルギーの吸収を容易に確保することができる。
【0063】
加えて、折曲部42c,44c,54c,61cを備えた車体フレーム12の剛性を容易に確保することで、エンジン/トランスミッションユニット19やラジエータ29を収容するためのエンジン収容空間76が確保されるとともに、前輪77を収容する前輪収容空間78を確保することができる。
これにより、エンジン/トランスミッションユニット19、ラジエータ29や前輪77のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0064】
図6は第1実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
グラフG1は、鋼材のみで形成した車体フレームを比較例1として示すものである。グラフG2は、軽合金材(アルミ合金材)のみで形成した車体フレームを比較例2として示すものである。グラフG3は、図1〜図5の第1実施の形態の車体フレーム12を第1実施例として示すものである。
【0065】
比較例1は、車体フレームを鋼材のみで形成することで圧縮応力を高めることが難しい。
このため、車体フレームで支えることができる最大衝撃はF2である。
【0066】
比較例2は、車体フレームを軽合金材(アルミ合金材)のみで形成することで引張応力を高めることが難しい。
このため、車体フレームで支えることができる最大衝撃はF3である。
【0067】
実施例1は、車体フレーム12のうち、圧縮応力が作用する部位を軽合金材(アルミ合金材)で形成し、引張応力が作用する部位を鋼材で形成することで、圧縮応力および引張応力を高めることができる。
【0068】
よって、車体フレームで支えることができる最大衝撃F1を、比較例1,2と比較して高めることができる。
これにより、実施例1の車体フレーム12は、衝撃が発生した前半領域E1で吸収可能な衝撃エネルギーを増すことができる。
【0069】
以下、第2〜第3の実施の形態の車体フレームを図7〜図11に基づいて説明する。なお、第2〜第3の実施の形態の車体フレームにおいて第1実施の形態の部材と同一類似部材については説明を省略する。
【0070】
(第2実施の形態)
図7は第2実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図である。
第2実施の形態の車体フレーム90は、第1実施の形態のメインフレーム部31に代えてメインフレーム部91を備えたもので、その他の構成は第1実施の形態の車体フレーム12と同様である。
【0071】
メインフレーム部91は、前圧縮壁部42の外面に一対の第1横補強リブ92が設けられ、中央圧縮壁部44の内面に一対の第2横補強リブ93が設けられ、後圧縮壁部46の外面に一対の第3横補強リブ94が設けられたもので、その他の構成は第1実施の形態のメインフレーム部31と同様である。
このメインフレーム部91は、一例として、第1実施の形態のメインフレーム部31と同様に、鋳造で成形された部材である。
【0072】
第1横補強リブ92は、前圧縮壁部42の外面に車体前後方向に延びるように上下段に一対設けられ、後端部92aが前クロス部43に連結されている。
一対の第1横補強リブ92は、前サブフレーム部32で覆われている。
【0073】
第2横補強リブ93は、中央圧縮壁部44の内面に車体前後方向に延びるように上下段に一対設けられ、前端部93aが前クロス部43に連結されるとともに、後端部93bが後クロス部45に連結されている。
一対の第2横補強リブ93は、中央サブフレーム部33で覆われている。
【0074】
第3横補強リブ94は、後圧縮壁部46の外面に車体前後方向に延びるように上下段に一対設けられ、前端部94aが後クロス部45に連結されている。
一対の第3横補強リブ94は、後サブフレーム部34で覆われている。
【0075】
前圧縮壁部42に一対の第1横補強リブ92が設けられ、中央圧縮壁部44に一対の第2横補強リブ93が設けられ、後圧縮壁部46に一対の第3横補強リブ94が設けられることで、各圧縮壁部42,44,46の圧縮応力を一層高めることができる。
【0076】
図8は第2実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
グラフG1およびグラフG2は、図6と同様に比較例1,2を示す。グラフG4は、図7の第2実施の形態の車体フレーム90を第2実施例として示すものである。
【0077】
実施例2は、実施例1に加えて、圧縮応力が作用する圧縮壁部42,44,46に第1〜第3の横補強リブ92〜94をそれぞれ設けることで、第1実施例と比較して圧縮応力を一層高めることができる。
よって、第2実施例によれば、車体フレーム90で支えることができる最大衝撃F4を、図6に示す第1実施例の最大衝撃F1と比べて一層高めることができる。
これにより、実施例2の車体フレーム90は、衝撃が発生した前半領域E2で吸収可能な衝撃エネルギーを一層増すことができる。
【0078】
すなわち、第2実施の形態の車体フレーム90によれば、車体フレーム90で支えることができる衝撃を第1実施例に比べて一層高めることができる。
さらに、第2実施の形態の車体フレーム90によれば、第1実施の形態の車体フレーム12と同様の効果が得られる。
【0079】
(第3実施の形態)
図9は第3実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図、図10は第3実施の形態に係る車体フレームを示す平面図である。
第3実施の形態の車体フレーム100は、軽金属製のメインフレーム部101を断面略コ字状に形成することで上下のフランジ115,116を車体フレーム100の幅方向中央に備え、断面略コ字状の空間に第1〜第3の縦補強リブ103…、104…,105…を備えたものである。
【0080】
具体的には、車体フレーム100は、軽金属製のメインフレーム部101と、メインフレーム部101の前部107に取り付けられた鋼製の前サブフレーム部(サブフレーム部)111と、メインフレーム部101の中央部108に取り付けられた鋼製の中央サブフレーム部(サブフレーム部)112と、メインフレーム部101の後部109に取り付けられた鋼製の後サブフレーム部(サブフレーム部)113とを備える。
【0081】
メインフレーム部101は、図10に示すように、車体フレーム100の前端部100aから後端部100bまで全域に亘って延出され、前部107が車体中心49に向けて膨出し、中央部108が車体外側に向けて膨出し、後部109が車体中心49に向けて膨出し、上下の辺にそれぞれ上下のフランジ115,116(下フランジ116は図9参照)が形成された部材である。
【0082】
メインフレーム部101の前部107は、車体中心49に向けて膨出することで前圧縮壁部(圧縮壁部)121、前上壁部122、前下壁部123で略コ字状に形成されている。
前上壁部122および前下壁部123に、第1縦補強リブ103…が所定の間隔をおいて縦向きに一体成形されている。
【0083】
メインフレーム部101の中央部108は、車体外側に向けて膨出することで中央圧縮壁部(圧縮壁部)125、中央上壁部126、中央下壁部127で略コ字状に形成されている。
中央上壁部126および中央下壁部127に、第2縦補強リブ104…が所定の間隔をおいて縦向きに一体成形されている。
【0084】
メインフレーム部101の後部109は、車体中心49に向けて膨出することで後圧縮壁部(圧縮壁部)131、後上壁部132(図10参照)、後下壁部133で略コ字状に形成されている。
後上壁部132および後下壁部133に、第3縦補強リブ105…が所定の間隔をおいて縦向きに一体成形されている。
【0085】
前圧縮壁部121の後端部と中央圧縮壁部125の前端部とが前クロス部135で連結されている。
中央圧縮壁部125の後端部と後圧縮壁部131の前端部とが後クロス部136で連結されている。
すなわち、メインフレーム部101は、図9に示すように、前圧縮壁部121、前クロス部135、中央圧縮壁部125、後クロス部136、後圧縮壁部131を車体後方に向けて順に備える。
このメインフレーム部101は、一例として、板厚寸法T1になるように、鋳造で成形された部材である。
【0086】
前サブフレーム部111は、メインフレーム部101の前部107に沿って取り付けられることで、前部107と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
前サブフレーム部111は、板厚寸法T2で形成されている。
【0087】
具体的には、前サブフレーム部111は、前引張壁部(引張壁部)141、前上壁部142、前下壁部143、前上フランジ144、および前下フランジ145を有する。
前上フランジ145が上フランジ115の前部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。前下フランジ145が下フランジ116の前部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
さらに、前サブフレーム部111の後端部111aが、中央圧縮壁部125の前端部、中央上壁部126の前端部および中央下壁部127の前端部に被せられた状態でボルト止めされている。
【0088】
前サブフレーム部111の前上壁部142、およびメインフレーム部101の前上壁部122で、車体フレーム100前部のフレーム前上壁部147が形成される。
前サブフレーム部111の前下壁部143、およびメインフレーム部101の前下壁部123で、車体フレーム100前部のフレーム前下壁部148が形成される。
【0089】
これにより、車体フレーム100は、前部が、前引張壁部141、前圧縮壁部121、フレーム前上壁部147およびフレーム前下壁部148の4つ以上の壁部で断面略矩形状の中空体に形成されている。
【0090】
中央サブフレーム部112は、メインフレーム部101の中央部108に沿って取り付けられることで、中央部108と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
中央サブフレーム部112は、板厚寸法T2で形成されている。
【0091】
具体的には、中央サブフレーム部112は、中央引張壁部(引張壁部)151、中央上壁部152、中央下壁部153、中央上フランジ154、および中央下フランジ155を有する。
中央上フランジ154が上フランジ115の中央部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。中央下フランジ155が下フランジ116の中央部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
【0092】
また、中央サブフレーム部112の前端部112aが、前圧縮壁部121の後端部、前上壁部122の後端部および前下壁部123の後端部に被せられた状態でボルト止めされている。
さらに、中央サブフレーム部112の後端部112bが、後圧縮壁部131の前端部、後上壁部132の前端部および後下壁部133の前端部に被せられた状態でボルト止めされている。
【0093】
中央サブフレーム部112の中央上壁部152、およびメインフレーム部101の中央上壁部126で、車体フレーム100中央部のフレーム中央上壁部157が形成される。
中央サブフレーム部112の中央下壁部153、およびメインフレーム部101の中央下壁部127で、車体フレーム100中央部のフレーム中央下壁部158が形成される。
【0094】
これにより、車体フレーム100は、中央部が、中央引張壁部151、中央圧縮壁部125、フレーム中央上壁部157およびフレーム中央下壁部158の4つ以上の壁部で断面略矩形状の中空体に形成されている。
【0095】
後サブフレーム部113は、メインフレーム部101の後部109に沿って取り付けられることで、後部109と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
後サブフレーム部113は、板厚寸法T2で形成されている。
【0096】
具体的には、後サブフレーム部113は、後引張壁部(引張壁部)161、後上壁部162、後下壁部163、後上フランジ164、および後下フランジ165を有する。
後上フランジ164が上フランジ115の後部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。後下フランジ65が下フランジ116の後部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
さらに、後サブフレーム部113の前端部113aが、中央圧縮壁部125の後端部、中央上壁部126の後端部および中央下壁部127の後端部に被せられた状態でボルト止めされている。
【0097】
後サブフレーム部113の後上壁部162、およびメインフレーム部101の後上壁部132で、車体フレーム100後部のフレーム後上壁部167が形成される。
後サブフレーム部113の後下壁部163、およびメインフレーム部101の後下壁部133で、車体フレーム100後部のフレーム後下壁部168が形成される。
【0098】
これにより、車体フレーム100は、後部が、後引張壁部161、後圧縮壁部131、フレーム後上壁部167およびフレーム後下壁部168の4つ以上の壁部で断面略矩形状の中空体に形成されている。
すなわち、車体フレーム100は、4つ以上の壁部で断面略矩形状の中空体に形成されている。
【0099】
車体フレーム100によれば、メインフレーム部101の前上壁部122および前下壁部123に、第1縦補強リブ103…が所定の間隔をおいて縦向きに一体成形されている。
これにより、前圧縮壁部121が座屈変形した後に、前上壁部122および前下壁部123が湾曲変形することを防ぐことができる。
【0100】
また、車体フレーム100によれば、メインフレーム部101の中央上壁部126および中央下壁部127に、第2縦補強リブ104…が所定の間隔をおいて縦向きに一体成形されている。
これにより、中央圧縮壁部125が座屈変形した後に、中央上壁部126および中央下壁部127が湾曲変形することを防ぐことができる。
【0101】
さらに、車体フレーム100によれば、メインフレーム部101の後上壁部132および後下壁部133に第3縦補強リブ105…を所定の間隔をおいて縦向きに一体成形した。
これにより、後圧縮壁部131が座屈変形した後に、後上壁部132および後下壁部133が湾曲変形することを防ぐことができる。
【0102】
この車体フレーム100は、図10に示すように、メインフレーム部101を断面略コ字状に形成することで、上下のフランジ115,116(下フランジ116は図9参照)が車体フレーム100の幅方向中央に備えられている。
【0103】
また、車体フレーム100は、図10に示すように、第1実施の形態の車体フレーム12と同様に、前圧縮壁部121の後半部121aが車体中央側に角度θ1傾斜されるとともに、中央引張壁部151の前半部151aが車体中央側に角度θ1傾斜されている。
さらに、車体フレーム100は、第1実施の形態の車体フレーム12と同様に、前引張壁部141の後半部141bが車体中央側に角度θ1傾斜されるとともに、中央圧縮壁部125の前半部125aが車体中央側に角度θ1傾斜されている。
【0104】
よって、車体フレーム100は、前部110a、中央部110bおよび後部110cが略クランク状に折り曲げられている。
車体フレーム100を略クランク状に折り曲げることで、車体フレーム100は、前部110aが後部110cに対して車体幅方向に間隔L1だけ広げられる。
【0105】
後部110cの車幅寸法L2を小さく抑えて、前部110aの車幅寸法L3を大きく広げることができる。
これにより、エンジン/トランスミッションユニット19やラジエータ29を収容するためのエンジン収容空間76が確保されるとともに、前輪77を収容する前輪収容空間78が確保される。
【0106】
図11は第3実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
グラフG1およびグラフG2は、図6と同様に比較例1,2を示す。グラフG5は、図9〜図10の第3実施の形態の車体フレーム100を第3実施例として示すものである。
【0107】
実施例3は、実施例1に加えて、圧縮応力が作用する圧縮壁部121,125,131に第1〜第3の縦補強リブ103〜105をそれぞれ設けることで、圧縮応力が作用する各圧縮壁部121,125,131が座屈変形した後に、各上壁部122,126,132および各下壁部123,127,133が湾曲変形することを防ぐことができる。
【0108】
よって、第3実施例によれば、車体フレーム100で支えることができる最大衝撃F5を、図6に示す第1実施例の最大衝撃F1と同様に高めることができる。
加えて、最大衝撃F5を支えた後、継続して高い衝撃を支えることができる。
これにより、実施例3の車体フレーム100は、衝撃が発生した前半領域E3で吸収可能な衝撃エネルギーを実施例1(図6参照)と同様に確保することができ、加えて、後半領域E4で吸収可能な衝撃エネルギーを実施例1と比較して同様に増すことができる。
【0109】
すなわち、第3実施の形態の車体フレーム100によれば、車体フレーム100で支えることができる衝撃を第1実施例と同様に高めることができ、最大衝撃F5を支えた後も継続して高い衝撃を支えることができる。
さらに、第3実施の形態の車体フレーム100によれば、第1実施の形態の車体フレーム12と同様の効果が得られる。
【0110】
なお、前記第1〜第3の実施の形態では、前サブフレーム部32,111、中央サブフレーム部33,112および後サブフレーム部34,113を、メインフレーム部31,91,101にボルト止めした例について説明したが、これに限らないで、各サブフレーム部32,33,34,111,112,113をメインフレーム部31,91,101にリベットやスポット溶接などの他の方法で接合することも可能である。
【0111】
また、前記第1〜第3の実施の形態では、軽合金としてアルミ合金を例示したが、チタン合金などの他の軽合金を使用することも可能である。
【0112】
さらに、前記第1〜第3の実施の形態では、前サブフレーム部32,111、中央サブフレーム部33,112および後サブフレーム部34,113をそれぞれ断面略コ字状に形成した例について説明したが、これに限らないで、例えば略円弧状などの他の形状とすることも可能である。
【0113】
また、前記第1〜第3の実施の形態では、車体フレーム12,90,100を車体前部構造10に適用した例について説明したが、これに限らないで、他の車体構造に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、衝撃が作用した際に、圧縮応力が発生する圧縮壁部と引張応力が発生する引張壁部とを備えた車体フレームが設けられた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明に係る車体フレーム(第1実施の形態)を備えた車体前部構造の斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る車体フレームを示す斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係る車体フレームを示す平面図である。
【図4】第1実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図である。
【図5】第1実施の形態に係る車体フレームに衝撃が作用した例を示す説明図である。
【図6】第1実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
【図7】第2実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図である。
【図8】第2実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
【図9】第3実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図である。
【図10】第3実施の形態に係る車体フレームを示す平面図である。
【図11】第3実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
【符号の説明】
【0116】
12,90,100…左車体フレーム(車体フレーム)、12a…前端部、12b…後端部、13…右車体フレーム(車体フレーム)、31,91,101…メインフレーム部、32,111…前サブフレーム部(サブフレーム部)、33,112…中央サブフレーム部(サブフレーム部)、34,113…後サブフレーム部(サブフレーム部)、36…内壁部、37…外壁部、38…上壁部、39…下壁部、42,121…前圧縮壁部(圧縮壁部)、44,125…中央圧縮壁部(圧縮壁部)、46,131…後圧縮壁部(圧縮壁部)、54,141…前引張壁部(引張壁部)、61,151…中央引張壁部(引張壁部)、67,161…後引張壁部(引張壁部)、T1…メインフレーム部の板厚寸法、T2…サブフレーム部の板厚寸法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃が作用した際に、圧縮応力が発生する部位と引張応力が発生する部位とを備えた車体フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、左右のフロントサイドメンバー(以下、「車体フレーム」という)をアルミ合金などの軽合金材料で形成したものがある(例えば、特許文献1,2参照。)。
特許文献1,2の車体フレームは、外壁が正多角形(例えば、正六角形)に形成され、外壁に形成された各頂部と中心軸とを結ぶ複数の放射状リブが形成された中空筒状体である。
【特許文献1】特開平11−208519号公報
【特許文献2】特開2003−72587公報
【0003】
この車体フレームによれば、アルミ合金などの軽合金材料で車体フレームを形成することで、車体フレームの軸線方向に衝撃が発生した場合に、衝撃による圧縮応力を良好に支えることが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、左右の車体フレームはエンジンルームの枠体を形成する部材である。左右の車体フレーム間にエンジンが配置されるとともに、左右の車体フレームの外側に左右の前輪が配置される。
ここで、車体フレームのなかには、エンジン(横置きエンジン)と前輪とのレイアウトに対応させて車体フレームに折曲部を備えたものがある。
【0005】
折曲部を備えた車体フレームは、車体フレームの前部に衝撃が発生した場合に、十分なエネルギー吸収量を確保することが難しく、フレームの板厚の増加などで対応していた。
このため、折曲部を備えた車体フレームの重量を増加することなく、十分なエネルギー吸収を容易に確保することができる技術の実用化が望まれていた。
【0006】
本発明は、折曲部を備えた車体フレームのエネルギー吸収を容易に確保することができる車体フレームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、断面略矩形状の中空体に形成され、軸線方向の衝撃が作用した際に、圧縮応力が発生する圧縮壁部と引張応力が発生する引張壁部とを備えた車体フレームにおいて、前記車体フレームの前端部から後端部まで全域に亘って延出され、前記圧縮壁部を形成する軽金属製のメインフレーム部と、前記メインフレーム部に沿って取り付けられることで、前記メインフレーム部と一体となって前記中空体を形成するとともに前記引張壁部を形成する鋼製のサブフレーム部と、を備え、前記メインフレーム部の板厚寸法を前記サブフレーム部の板厚寸法より大きく設定したことを特徴とする。
【0008】
ここで、軽合金材は鋼材と比較して比重が小さい。具体的には、軽合金としてのアルミ合金は、鋼材と比較して比重が略1/3である。
よって、同等重量の比較ではアルミ合金製のメインフレーム部の板厚寸法を鋼製のサブフレーム部に対して略3倍まで厚くすることが可能である。
これにより、メインフレーム部をアルミ合金などの軽金属で形成することで、メインフレーム部の板厚寸法を大きくして座屈応力を高めることができる。
【0009】
一方、鋼材は軽合金材と比較して引張応力が高いとともに、最大伸び量が多い。
そこで、請求項1において、圧縮壁部を軽金属製のメインフレーム部で形成し、かつ、引張壁部を鋼製のサブフレーム部で形成するようにした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、圧縮壁部を軽金属製のメインフレーム部で形成することで、圧縮壁部の板厚寸法をサブフレーム部の板厚寸法と比較して大きくできる。圧縮壁部の板厚寸法を大きくすることで、圧縮壁部の座屈応力を高くできる。
一方、鋼材は軽合金材と比較して引張応力が高いとともに、最大伸び量が多い。よって、引張壁部を鋼製のサブフレーム部で形成することで、引張壁部のエネルギー吸収量を多くできる。
【0011】
これにより、軸線方向の衝撃が作用した際に、圧縮壁部に発生した圧縮応力を圧縮壁部で良好に支えられるので、引張壁部に発生した引張応力を引張壁部で良好に支えることができる。
このように、軽金属製のメインフレーム部に鋼製のサブフレーム部を取り付けるだけの簡単な構成で、折曲部を備えた車体フレームで十分なエネルギー吸収量を容易に確保することができるという利点がある。
【0012】
加えて、折曲部を備えた車体フレームの剛性を容易に確保することで、例えば、エンジンや前輪などを収容する収容空間を確保することができる。
これにより、エンジンや前輪のレイアウトの自由度を高めることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0014】
(第1実施の形態)
図1は本発明に係る車体フレーム(第1実施の形態)を備えた車体前部構造の斜視図である。
車体前部構造10は、エンジンルーム11の左右枠部を形成する左右のフロントサイドメンバー(以下、「左右の車体フレーム」と称す)12,13と、左右の車体フレーム12,13の前端部12a,13aに設けられたバルクヘッド15と、左右の車体フレーム12,13の前端部12a,13aに亘って設けられた連結バー16と、左右の車体フレーム12,13の後端部から延出された左右のアウトリガー18(右アウトリガーは図示せず)と、左右のアウトリガー18および左右の車体フレーム12,13の後端部12b,13bに設けられたダッシュボードロア21とを備える。
【0015】
エンジンルーム11にエンジン/トランスミッションユニット19(図3参照)が横置きで配置されている。
エンジン/トランスミッションユニット19は、エンジンにトランスミッションが一体に取り付けたれたユニットである。
【0016】
さらに、車体前部構造10は、左車体フレーム12に対して車体外側に設けられた左アッパーメンバー22と、右車体フレーム13に対して車体外側に設けられた右アッパーメンバー23とを備える。
【0017】
バルクヘッド15は、左車体フレーム12の前端部12aに設けられた左支柱25と、右車体フレーム13の前端部13aに設けられた右支柱26と、左右の支柱25,26の上端部を連結する上梁部27と、左右の支柱25,26の下端部を連結する下梁部28とを有する。
このバルクヘッド15にラジエータ29(図3参照)が取り付けられている。
なお、左右の車体フレーム12,13は左右対称の部材なので、以下、左車体フレーム12を車体フレームとして説明して右車体フレーム13の説明を省略する。
【0018】
図2は第1実施の形態に係る車体フレームを示す斜視図である。
車体フレーム12は、軽金属製のメインフレーム部31と、メインフレーム部31の前部に取り付けられた鋼製の前サブフレーム部(サブフレーム部)32と、メインフレーム部31の中央部に取り付けられた鋼製の中央サブフレーム部(サブフレーム部)33と、メインフレーム部31の後部に取り付けられた鋼製の後サブフレーム部(サブフレーム部)34とを備え、内外の壁部36,37および上下の壁部38,39の4つ以上の壁部で断面略矩形状の中空体に形成されている。
【0019】
図3は第1実施の形態に係る車体フレームを示す平面図、図4は第1実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図である。
メインフレーム部31は、車体フレーム12の前端部12aから後端部12bまで全域に亘って帯状に板厚寸法T1で延出され、前圧縮壁部(圧縮壁部)42、前クロス部43、中央圧縮壁部(圧縮壁部)44、後クロス部45、後圧縮壁部(圧縮壁部)46を車体後方に向けて順に備える。
このメインフレーム部31は、一例として、鋳造で成形された部材である。
【0020】
前圧縮壁部42は、車体フレーム12の内壁部36のうち、前部を構成する壁部である。
この前圧縮壁部42は、前半部42aが車体中心49に対して平行に配置され、後半部42bが前圧縮折曲部42cで車体中央側に角度θ1(図3参照)で傾斜するように折り曲げられた壁部である。
前圧縮壁部42の上辺に複数の上取付孔が形成され、前圧縮壁部42の下辺に複数の下取付孔が形成されている。
【0021】
前クロス部43は、車体フレーム12の内壁部36から外壁部37に亘って延びる部位である。
前クロス部43の上辺に複数の上取付孔が形成され、前クロス部43の下辺に複数の下取付孔が形成されている。
【0022】
中央圧縮壁部44は、車体フレーム12の外壁部37のうち、中央部を構成する壁部である。
この中央圧縮壁部44は、前半部44aが車体中心49に対して車体中央側に角度θ1で傾斜するように折り曲げられ、後半部44bが中央圧縮折曲部44cで車体中心49に対して平行になるように折り曲げられた壁部である。
中央圧縮壁部44の上辺に複数の上取付孔が形成され、中央圧縮壁部44の下辺に複数の下取付孔が形成されている。
【0023】
後クロス部45は、車体フレーム12の外壁部37から内壁部36に亘って延びる部位である。
後クロス部45の上辺に複数の上取付孔が形成され、後クロス部45の下辺に複数の下取付孔が形成されている。
【0024】
後圧縮壁部46は、車体フレーム12の内壁部36のうち、後部を構成する壁部である。
この後圧縮壁部46は、車体中心49に対して平行に形成され、後端部46aがダッシュボードロア21に取り付けられた壁部である。
後圧縮壁部46の上辺に複数の上取付孔…が形成され、後圧縮壁部46の下辺に複数の下取付孔…が形成されている。
【0025】
前サブフレーム部32は、メインフレーム部31の前部(前圧縮壁部42および前クロス部43など)に沿って取り付けられることで、メインフレーム部31の前部と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
前サブフレーム部32は、板厚寸法T2で形成されている。
【0026】
具体的には、前サブフレーム部32は、前引張壁部(引張壁部)54、前上壁部55、前下壁部56、前後フランジ57、前上フランジ55a、および前下フランジ56aを有する。
前引張壁部54、前上壁部55および前下壁部56で断面略コ字状の部材が形成される。
【0027】
前引張壁部54は、車体フレーム12の外壁部37のうち、前部を形成する壁部であって、前半部54aが車体中心49に対して平行に形成され、後半部54bが前引張折曲部54cで車体中央側に角度θ1で傾斜するように折り曲げられた壁部である。
前引張壁部54の後端部に前後フランジ57が形成されている。前後フランジ57に前外取付孔が形成されている。
【0028】
前上壁部55は、車体フレーム12の上壁部38のうち、前部を形成する壁部である。
前上壁部55の内辺に前上フランジ55aが形成されている。前上フランジ55aに上取付孔が形成されている。
【0029】
前下壁部56は、車体フレーム12の下壁部39のうち、前部を形成する壁部である。
前下壁部56の内辺に前下フランジ56aが形成されている。前下フランジ56aに下取付孔が形成されている。
【0030】
中央サブフレーム部33は、メインフレーム部31の中央部(前クロス部43、中央圧縮壁部44および後クロス部45など)に沿って取り付けられることで、メインフレーム部31の中央部と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
中央サブフレーム部33は、板厚寸法T2で形成されている。
【0031】
具体的には、中央サブフレーム部33は、中央引張壁部(引張壁部)61、中央上壁部62、中央下壁部63、中央前フランジ64、中央後フランジ65、中央上フランジ62a、および中央下フランジ63aを有する。
中央引張壁部61、中央上壁部62および中央下壁部63で断面略コ字状の部材が形成される。
【0032】
中央引張壁部61は、車体フレーム12の内壁部36のうち、中央部を形成する壁部であって、前半部61aが車体中心49に対して車体中央側に角度θ1で傾斜するように形成され、後半部61bが中央引張折曲部61cで車体中心49に対して平行になるように折り曲げられた壁部である。
【0033】
中央引張壁部61の前端部に中央前フランジ64が形成されるとともに、中央引張壁部61の後端部に中央後フランジ65が形成されている。
中央前フランジ64に中央前内取付孔が形成され、中央後フランジ65に中央後内取付孔が形成されている。
【0034】
中央上壁部62は、車体フレーム12の上壁部38のうち、中央部を形成する壁部である。
中央上壁部62の外辺に中央上フランジ62aが形成されている。中央上フランジ62aに上取付孔が形成されている。
【0035】
中央下壁部63は、車体フレーム12の下壁部39のうち、中央部を形成する壁部である。
中央下壁部63の外辺に中央下フランジ63aが形成されている。中央下フランジ63aに下取付孔が形成されている。
【0036】
後サブフレーム部34は、メインフレーム部31の後部(後クロス部45および後圧縮壁部46など)に沿って取り付けられることで、メインフレーム部31の後部と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
後サブフレーム部34は、板厚寸法T2で形成されている。
この後サブフレーム部34は、後端部34aがダッシュボードロア21に取り付けられた壁部である。
【0037】
具体的には、後サブフレーム部34は、後引張壁部(引張壁部)67、後上壁部68、後下壁部69、後前フランジ71、後上フランジ68a、および後下フランジ69aを有する。
後引張壁部67、後上壁部68および後下壁部69で断面略コ字状の部材が形成される。
【0038】
後引張壁部67は、車体フレーム12の外壁部37のうち、後部を形成する壁部であって、車体中心49に対して平行に配置された壁部である。
後引張壁部67の前端部に後前フランジ71が形成されている。後前フランジ71に後外取付孔が形成されている。
【0039】
後上壁部68は、車体フレーム12の上壁部38のうち、後部を形成する壁部である。
後上壁部68の内辺に後上フランジ68aが形成されている。後上フランジ68aに上取付孔が形成されている。
【0040】
後下壁部69は、車体フレーム12の下壁部39のうち、後部を形成する壁部である。
後下壁部69の内辺に後下フランジ69aが形成されている。後下フランジ69aに下取付孔が形成されている。
【0041】
メインフレーム部31の板厚寸法T1と、前サブフレーム部32、中央サブフレーム部33および後サブフレーム部34の板厚寸法T2との関係は、T1>T2が成立する。
すなわち、軽合金材は鋼材と比較して比重が小さい。具体的には、軽合金としてのアルミ合金は、鋼材と比較して比重が略1/3である。
よって、同等重量の比較では、アルミ合金製のメインフレーム部(アルミ合金板)31の板厚寸法T1を、鋼製の各サブフレーム部(鋼板)32〜34の板厚寸法T2に対して略3倍まで厚くすることが可能である。
【0042】
これにより、メインフレーム部31をアルミ合金などの軽金属で形成することで、メインフレーム部31の板厚寸法T1を大きくして、前圧縮壁部42、中央圧縮壁部44および後圧縮壁部46の座屈応力を高めることができる。
【0043】
例えば、アルミ合金板と鋼板との板厚比が1.5の場合、座屈応力比は、
アルミ合金板:鋼板=1.1:1
である。
また、アルミ合金板と鋼板との板厚比が2の場合、座屈応力比は、
アルミ合金板:鋼板=2.6:1
である。
【0044】
さらに、アルミ合金板と鋼板との板厚比が2.5の場合、座屈応力比は、
アルミ合金板:鋼板=5.2:1
である。
加えて、アルミ合金板と鋼板との板厚比が3の場合、座屈応力比は、
アルミ合金板:鋼板=9:1である。
【0045】
一方、鋼材は軽合金材と比較して引張応力が高いとともに、最大伸び量が多い。
そこで、前サブフレーム部32、中央サブフレーム部33および後サブフレーム部34を鋼材で形成することで、前引張壁部54、中央引張壁部61および後引張壁部67のエネルギー吸収量を多くすることができる。
【0046】
前サブフレーム部32の前上フランジ55aは、メインフレーム部31(前圧縮壁部42および前クロス部43)の上辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
前サブフレーム部32の前下フランジ56aは、メインフレーム部31(前圧縮壁部42および前クロス部43)の下辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
【0047】
前サブフレーム部32の前後フランジ57は、メインフレーム部31(中央圧縮壁部44)の前辺44dにボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
この前後フランジ57は、上端部が中央上フランジ62aと共締めされ、下端部が中央下フランジ63aと共締めされている。
【0048】
中央サブフレーム部33の中央上フランジ62aは、メインフレーム部31(前クロス部43、中央圧縮壁部44および後クロス部45)の上辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
中央サブフレーム部33の中央下フランジ63aは、メインフレーム部31(前クロス部43、中央圧縮壁部44および後クロス部45)の下辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
【0049】
中央サブフレーム部33の中央前フランジ64は、メインフレーム部31(前圧縮壁部42)の後辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
この中央前フランジ64は、上端部が前上フランジ55aと共締めされ、下端部が前下フランジ56aと共締めされている。
【0050】
中央サブフレーム部33の中央後フランジ65は、メインフレーム部31(後圧縮壁部46)の前辺45aにボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
この中央後フランジ65は、上端部が後上フランジ68aと共締めされ、下端部が後下フランジ69aと共締めされている。
【0051】
後サブフレーム部34の後上フランジ68aは、メインフレーム部31(後クロス部45、後圧縮壁部46)の上辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
後サブフレーム部34の後下フランジ69aは、メインフレーム部31(後クロス部45、後圧縮壁部46)の下辺にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
【0052】
後サブフレーム部34の後前フランジ71は、メインフレーム部31(中央圧縮壁部44)の後辺44eにボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
この後前フランジ71は、上端部が中央上フランジ62aと共締めされ、下端部が中央下フランジ63aと共締めされている。
【0053】
以上説明したように、前サブフレーム部32は、前上フランジ55a、前下フランジ56aおよび前後フランジ57をメインフレーム部31にボルト止めすることで、メインフレーム部31に簡単に取り付けられる。
また、中央サブフレーム部33は、中央上フランジ62a、中央下フランジ63a、中央前フランジ64および中央後フランジ65をメインフレーム部31にボルト止めすることで、メインフレーム部31に簡単に取り付けられる。
【0054】
さらに、後サブフレーム部34は、後上フランジ68a、後下フランジ69aおよび後前フランジ71をメインフレーム部31にボルト止めすることで、メインフレーム部31に簡単に取り付けられる。
これにより、前サブフレーム部32、中央サブフレーム部33および後サブフレーム部34をメインフレーム部31に簡単に取り付けることができる。
【0055】
図3に示すように、前圧縮壁部42の後半部42bを車体中央側に角度θ1傾斜させるとともに、中央引張壁部61の前半部61aを車体中央側に角度θ1傾斜させた。
さらに、前引張壁部54の後半部54bを車体中央側に角度θ1傾斜させるとともに、中央圧縮壁部44の前半部44aを車体中央側に角度θ1傾斜させた。
【0056】
よって、車体フレーム12の前部30a、中央部30bおよび後部30cが略クランク状に折り曲げられる。
車体フレーム12を略クランク状に折り曲げることで、車体フレーム12は、前部30aが後部30cに対して車体幅方向に間隔L1だけ広げられる。
【0057】
後部30cの車幅寸法L2を小さく抑えて、前部30aの車幅寸法L3を大きく広げることができる。
これにより、エンジン/トランスミッションユニット19やラジエータ29を収容するためのエンジン収容空間76が確保されるとともに、前輪77を収容する前輪収容空間78が確保される。
【0058】
つぎに、車体フレーム12に衝撃が作用した例を図5〜図6に基づいて説明する。
図5(a),(b)は第1実施の形態に係る車体フレームに衝撃が作用した例を示す説明図である。
(a)において、車体フレーム12の前端部12aに衝撃F1が矢印のように作用する。
【0059】
(b)において、車体フレーム12が想像線80で示すように変形しようとする。
よって、前圧縮壁部42の前圧縮折曲部42cに第1圧縮応力σ1が作用するとともに、中央圧縮壁部44の中央圧縮折曲部44cに第2圧縮応力σ2が作用する。
さらに、後圧縮壁部46の略中央部に第3圧縮応力σ3が作用する。
【0060】
ここで、前圧縮壁部42、中央圧縮壁部44および後圧縮壁部46を軽合金(アルミ合金)で形成して板厚寸法T1を大きくすることで、各圧縮壁部42,44,46の座屈応力を高くできる。
よって、各圧縮壁部42,44,46に発生した第1〜第3の圧縮応力σ1,σ2,σ3を各圧縮壁部42,44,46で良好に支えることができる。
【0061】
同時に、前引張壁部54の前引張折曲部54cに第1引張応力σ4が作用するとともに、中央引張壁部61の中央引張折曲部61cに第2引張応力σ5が作用する。
さらに、後引張壁部67の略中央部に第3引張応力σ6が作用する。
ここで、前引張壁部54、中央引張壁部61および後引張壁部67を鋼材で形成して引張応力を高くするとともに最大伸び量を多くすることで、各引張壁部54,61,67に発生した第1〜第3の引張応力σ4,σ5,σ6を各引張壁部54,61,67で良好にエネルギーを吸収することができる。
【0062】
これにより、軽金属製のメインフレーム部31に鋼製の各サブフレーム部32〜34を取り付けるだけの簡単な構成で、折曲部42c,44c,54c,61cを備えた車体フレーム12の十分なエネルギーの吸収を容易に確保することができる。
【0063】
加えて、折曲部42c,44c,54c,61cを備えた車体フレーム12の剛性を容易に確保することで、エンジン/トランスミッションユニット19やラジエータ29を収容するためのエンジン収容空間76が確保されるとともに、前輪77を収容する前輪収容空間78を確保することができる。
これにより、エンジン/トランスミッションユニット19、ラジエータ29や前輪77のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0064】
図6は第1実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
グラフG1は、鋼材のみで形成した車体フレームを比較例1として示すものである。グラフG2は、軽合金材(アルミ合金材)のみで形成した車体フレームを比較例2として示すものである。グラフG3は、図1〜図5の第1実施の形態の車体フレーム12を第1実施例として示すものである。
【0065】
比較例1は、車体フレームを鋼材のみで形成することで圧縮応力を高めることが難しい。
このため、車体フレームで支えることができる最大衝撃はF2である。
【0066】
比較例2は、車体フレームを軽合金材(アルミ合金材)のみで形成することで引張応力を高めることが難しい。
このため、車体フレームで支えることができる最大衝撃はF3である。
【0067】
実施例1は、車体フレーム12のうち、圧縮応力が作用する部位を軽合金材(アルミ合金材)で形成し、引張応力が作用する部位を鋼材で形成することで、圧縮応力および引張応力を高めることができる。
【0068】
よって、車体フレームで支えることができる最大衝撃F1を、比較例1,2と比較して高めることができる。
これにより、実施例1の車体フレーム12は、衝撃が発生した前半領域E1で吸収可能な衝撃エネルギーを増すことができる。
【0069】
以下、第2〜第3の実施の形態の車体フレームを図7〜図11に基づいて説明する。なお、第2〜第3の実施の形態の車体フレームにおいて第1実施の形態の部材と同一類似部材については説明を省略する。
【0070】
(第2実施の形態)
図7は第2実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図である。
第2実施の形態の車体フレーム90は、第1実施の形態のメインフレーム部31に代えてメインフレーム部91を備えたもので、その他の構成は第1実施の形態の車体フレーム12と同様である。
【0071】
メインフレーム部91は、前圧縮壁部42の外面に一対の第1横補強リブ92が設けられ、中央圧縮壁部44の内面に一対の第2横補強リブ93が設けられ、後圧縮壁部46の外面に一対の第3横補強リブ94が設けられたもので、その他の構成は第1実施の形態のメインフレーム部31と同様である。
このメインフレーム部91は、一例として、第1実施の形態のメインフレーム部31と同様に、鋳造で成形された部材である。
【0072】
第1横補強リブ92は、前圧縮壁部42の外面に車体前後方向に延びるように上下段に一対設けられ、後端部92aが前クロス部43に連結されている。
一対の第1横補強リブ92は、前サブフレーム部32で覆われている。
【0073】
第2横補強リブ93は、中央圧縮壁部44の内面に車体前後方向に延びるように上下段に一対設けられ、前端部93aが前クロス部43に連結されるとともに、後端部93bが後クロス部45に連結されている。
一対の第2横補強リブ93は、中央サブフレーム部33で覆われている。
【0074】
第3横補強リブ94は、後圧縮壁部46の外面に車体前後方向に延びるように上下段に一対設けられ、前端部94aが後クロス部45に連結されている。
一対の第3横補強リブ94は、後サブフレーム部34で覆われている。
【0075】
前圧縮壁部42に一対の第1横補強リブ92が設けられ、中央圧縮壁部44に一対の第2横補強リブ93が設けられ、後圧縮壁部46に一対の第3横補強リブ94が設けられることで、各圧縮壁部42,44,46の圧縮応力を一層高めることができる。
【0076】
図8は第2実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
グラフG1およびグラフG2は、図6と同様に比較例1,2を示す。グラフG4は、図7の第2実施の形態の車体フレーム90を第2実施例として示すものである。
【0077】
実施例2は、実施例1に加えて、圧縮応力が作用する圧縮壁部42,44,46に第1〜第3の横補強リブ92〜94をそれぞれ設けることで、第1実施例と比較して圧縮応力を一層高めることができる。
よって、第2実施例によれば、車体フレーム90で支えることができる最大衝撃F4を、図6に示す第1実施例の最大衝撃F1と比べて一層高めることができる。
これにより、実施例2の車体フレーム90は、衝撃が発生した前半領域E2で吸収可能な衝撃エネルギーを一層増すことができる。
【0078】
すなわち、第2実施の形態の車体フレーム90によれば、車体フレーム90で支えることができる衝撃を第1実施例に比べて一層高めることができる。
さらに、第2実施の形態の車体フレーム90によれば、第1実施の形態の車体フレーム12と同様の効果が得られる。
【0079】
(第3実施の形態)
図9は第3実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図、図10は第3実施の形態に係る車体フレームを示す平面図である。
第3実施の形態の車体フレーム100は、軽金属製のメインフレーム部101を断面略コ字状に形成することで上下のフランジ115,116を車体フレーム100の幅方向中央に備え、断面略コ字状の空間に第1〜第3の縦補強リブ103…、104…,105…を備えたものである。
【0080】
具体的には、車体フレーム100は、軽金属製のメインフレーム部101と、メインフレーム部101の前部107に取り付けられた鋼製の前サブフレーム部(サブフレーム部)111と、メインフレーム部101の中央部108に取り付けられた鋼製の中央サブフレーム部(サブフレーム部)112と、メインフレーム部101の後部109に取り付けられた鋼製の後サブフレーム部(サブフレーム部)113とを備える。
【0081】
メインフレーム部101は、図10に示すように、車体フレーム100の前端部100aから後端部100bまで全域に亘って延出され、前部107が車体中心49に向けて膨出し、中央部108が車体外側に向けて膨出し、後部109が車体中心49に向けて膨出し、上下の辺にそれぞれ上下のフランジ115,116(下フランジ116は図9参照)が形成された部材である。
【0082】
メインフレーム部101の前部107は、車体中心49に向けて膨出することで前圧縮壁部(圧縮壁部)121、前上壁部122、前下壁部123で略コ字状に形成されている。
前上壁部122および前下壁部123に、第1縦補強リブ103…が所定の間隔をおいて縦向きに一体成形されている。
【0083】
メインフレーム部101の中央部108は、車体外側に向けて膨出することで中央圧縮壁部(圧縮壁部)125、中央上壁部126、中央下壁部127で略コ字状に形成されている。
中央上壁部126および中央下壁部127に、第2縦補強リブ104…が所定の間隔をおいて縦向きに一体成形されている。
【0084】
メインフレーム部101の後部109は、車体中心49に向けて膨出することで後圧縮壁部(圧縮壁部)131、後上壁部132(図10参照)、後下壁部133で略コ字状に形成されている。
後上壁部132および後下壁部133に、第3縦補強リブ105…が所定の間隔をおいて縦向きに一体成形されている。
【0085】
前圧縮壁部121の後端部と中央圧縮壁部125の前端部とが前クロス部135で連結されている。
中央圧縮壁部125の後端部と後圧縮壁部131の前端部とが後クロス部136で連結されている。
すなわち、メインフレーム部101は、図9に示すように、前圧縮壁部121、前クロス部135、中央圧縮壁部125、後クロス部136、後圧縮壁部131を車体後方に向けて順に備える。
このメインフレーム部101は、一例として、板厚寸法T1になるように、鋳造で成形された部材である。
【0086】
前サブフレーム部111は、メインフレーム部101の前部107に沿って取り付けられることで、前部107と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
前サブフレーム部111は、板厚寸法T2で形成されている。
【0087】
具体的には、前サブフレーム部111は、前引張壁部(引張壁部)141、前上壁部142、前下壁部143、前上フランジ144、および前下フランジ145を有する。
前上フランジ145が上フランジ115の前部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。前下フランジ145が下フランジ116の前部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
さらに、前サブフレーム部111の後端部111aが、中央圧縮壁部125の前端部、中央上壁部126の前端部および中央下壁部127の前端部に被せられた状態でボルト止めされている。
【0088】
前サブフレーム部111の前上壁部142、およびメインフレーム部101の前上壁部122で、車体フレーム100前部のフレーム前上壁部147が形成される。
前サブフレーム部111の前下壁部143、およびメインフレーム部101の前下壁部123で、車体フレーム100前部のフレーム前下壁部148が形成される。
【0089】
これにより、車体フレーム100は、前部が、前引張壁部141、前圧縮壁部121、フレーム前上壁部147およびフレーム前下壁部148の4つ以上の壁部で断面略矩形状の中空体に形成されている。
【0090】
中央サブフレーム部112は、メインフレーム部101の中央部108に沿って取り付けられることで、中央部108と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
中央サブフレーム部112は、板厚寸法T2で形成されている。
【0091】
具体的には、中央サブフレーム部112は、中央引張壁部(引張壁部)151、中央上壁部152、中央下壁部153、中央上フランジ154、および中央下フランジ155を有する。
中央上フランジ154が上フランジ115の中央部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。中央下フランジ155が下フランジ116の中央部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
【0092】
また、中央サブフレーム部112の前端部112aが、前圧縮壁部121の後端部、前上壁部122の後端部および前下壁部123の後端部に被せられた状態でボルト止めされている。
さらに、中央サブフレーム部112の後端部112bが、後圧縮壁部131の前端部、後上壁部132の前端部および後下壁部133の前端部に被せられた状態でボルト止めされている。
【0093】
中央サブフレーム部112の中央上壁部152、およびメインフレーム部101の中央上壁部126で、車体フレーム100中央部のフレーム中央上壁部157が形成される。
中央サブフレーム部112の中央下壁部153、およびメインフレーム部101の中央下壁部127で、車体フレーム100中央部のフレーム中央下壁部158が形成される。
【0094】
これにより、車体フレーム100は、中央部が、中央引張壁部151、中央圧縮壁部125、フレーム中央上壁部157およびフレーム中央下壁部158の4つ以上の壁部で断面略矩形状の中空体に形成されている。
【0095】
後サブフレーム部113は、メインフレーム部101の後部109に沿って取り付けられることで、後部109と一体になって中空体を形成する断面略コ字状の部材である。
後サブフレーム部113は、板厚寸法T2で形成されている。
【0096】
具体的には、後サブフレーム部113は、後引張壁部(引張壁部)161、後上壁部162、後下壁部163、後上フランジ164、および後下フランジ165を有する。
後上フランジ164が上フランジ115の後部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。後下フランジ65が下フランジ116の後部にボルト73…およびナット74…で取り付けられている。
さらに、後サブフレーム部113の前端部113aが、中央圧縮壁部125の後端部、中央上壁部126の後端部および中央下壁部127の後端部に被せられた状態でボルト止めされている。
【0097】
後サブフレーム部113の後上壁部162、およびメインフレーム部101の後上壁部132で、車体フレーム100後部のフレーム後上壁部167が形成される。
後サブフレーム部113の後下壁部163、およびメインフレーム部101の後下壁部133で、車体フレーム100後部のフレーム後下壁部168が形成される。
【0098】
これにより、車体フレーム100は、後部が、後引張壁部161、後圧縮壁部131、フレーム後上壁部167およびフレーム後下壁部168の4つ以上の壁部で断面略矩形状の中空体に形成されている。
すなわち、車体フレーム100は、4つ以上の壁部で断面略矩形状の中空体に形成されている。
【0099】
車体フレーム100によれば、メインフレーム部101の前上壁部122および前下壁部123に、第1縦補強リブ103…が所定の間隔をおいて縦向きに一体成形されている。
これにより、前圧縮壁部121が座屈変形した後に、前上壁部122および前下壁部123が湾曲変形することを防ぐことができる。
【0100】
また、車体フレーム100によれば、メインフレーム部101の中央上壁部126および中央下壁部127に、第2縦補強リブ104…が所定の間隔をおいて縦向きに一体成形されている。
これにより、中央圧縮壁部125が座屈変形した後に、中央上壁部126および中央下壁部127が湾曲変形することを防ぐことができる。
【0101】
さらに、車体フレーム100によれば、メインフレーム部101の後上壁部132および後下壁部133に第3縦補強リブ105…を所定の間隔をおいて縦向きに一体成形した。
これにより、後圧縮壁部131が座屈変形した後に、後上壁部132および後下壁部133が湾曲変形することを防ぐことができる。
【0102】
この車体フレーム100は、図10に示すように、メインフレーム部101を断面略コ字状に形成することで、上下のフランジ115,116(下フランジ116は図9参照)が車体フレーム100の幅方向中央に備えられている。
【0103】
また、車体フレーム100は、図10に示すように、第1実施の形態の車体フレーム12と同様に、前圧縮壁部121の後半部121aが車体中央側に角度θ1傾斜されるとともに、中央引張壁部151の前半部151aが車体中央側に角度θ1傾斜されている。
さらに、車体フレーム100は、第1実施の形態の車体フレーム12と同様に、前引張壁部141の後半部141bが車体中央側に角度θ1傾斜されるとともに、中央圧縮壁部125の前半部125aが車体中央側に角度θ1傾斜されている。
【0104】
よって、車体フレーム100は、前部110a、中央部110bおよび後部110cが略クランク状に折り曲げられている。
車体フレーム100を略クランク状に折り曲げることで、車体フレーム100は、前部110aが後部110cに対して車体幅方向に間隔L1だけ広げられる。
【0105】
後部110cの車幅寸法L2を小さく抑えて、前部110aの車幅寸法L3を大きく広げることができる。
これにより、エンジン/トランスミッションユニット19やラジエータ29を収容するためのエンジン収容空間76が確保されるとともに、前輪77を収容する前輪収容空間78が確保される。
【0106】
図11は第3実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
グラフG1およびグラフG2は、図6と同様に比較例1,2を示す。グラフG5は、図9〜図10の第3実施の形態の車体フレーム100を第3実施例として示すものである。
【0107】
実施例3は、実施例1に加えて、圧縮応力が作用する圧縮壁部121,125,131に第1〜第3の縦補強リブ103〜105をそれぞれ設けることで、圧縮応力が作用する各圧縮壁部121,125,131が座屈変形した後に、各上壁部122,126,132および各下壁部123,127,133が湾曲変形することを防ぐことができる。
【0108】
よって、第3実施例によれば、車体フレーム100で支えることができる最大衝撃F5を、図6に示す第1実施例の最大衝撃F1と同様に高めることができる。
加えて、最大衝撃F5を支えた後、継続して高い衝撃を支えることができる。
これにより、実施例3の車体フレーム100は、衝撃が発生した前半領域E3で吸収可能な衝撃エネルギーを実施例1(図6参照)と同様に確保することができ、加えて、後半領域E4で吸収可能な衝撃エネルギーを実施例1と比較して同様に増すことができる。
【0109】
すなわち、第3実施の形態の車体フレーム100によれば、車体フレーム100で支えることができる衝撃を第1実施例と同様に高めることができ、最大衝撃F5を支えた後も継続して高い衝撃を支えることができる。
さらに、第3実施の形態の車体フレーム100によれば、第1実施の形態の車体フレーム12と同様の効果が得られる。
【0110】
なお、前記第1〜第3の実施の形態では、前サブフレーム部32,111、中央サブフレーム部33,112および後サブフレーム部34,113を、メインフレーム部31,91,101にボルト止めした例について説明したが、これに限らないで、各サブフレーム部32,33,34,111,112,113をメインフレーム部31,91,101にリベットやスポット溶接などの他の方法で接合することも可能である。
【0111】
また、前記第1〜第3の実施の形態では、軽合金としてアルミ合金を例示したが、チタン合金などの他の軽合金を使用することも可能である。
【0112】
さらに、前記第1〜第3の実施の形態では、前サブフレーム部32,111、中央サブフレーム部33,112および後サブフレーム部34,113をそれぞれ断面略コ字状に形成した例について説明したが、これに限らないで、例えば略円弧状などの他の形状とすることも可能である。
【0113】
また、前記第1〜第3の実施の形態では、車体フレーム12,90,100を車体前部構造10に適用した例について説明したが、これに限らないで、他の車体構造に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、衝撃が作用した際に、圧縮応力が発生する圧縮壁部と引張応力が発生する引張壁部とを備えた車体フレームが設けられた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明に係る車体フレーム(第1実施の形態)を備えた車体前部構造の斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る車体フレームを示す斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係る車体フレームを示す平面図である。
【図4】第1実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図である。
【図5】第1実施の形態に係る車体フレームに衝撃が作用した例を示す説明図である。
【図6】第1実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
【図7】第2実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図である。
【図8】第2実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
【図9】第3実施の形態に係る車体フレームを示す分解斜視図である。
【図10】第3実施の形態に係る車体フレームを示す平面図である。
【図11】第3実施の形態に係る車体フレームで支えることができる衝撃について説明するグラフである。
【符号の説明】
【0116】
12,90,100…左車体フレーム(車体フレーム)、12a…前端部、12b…後端部、13…右車体フレーム(車体フレーム)、31,91,101…メインフレーム部、32,111…前サブフレーム部(サブフレーム部)、33,112…中央サブフレーム部(サブフレーム部)、34,113…後サブフレーム部(サブフレーム部)、36…内壁部、37…外壁部、38…上壁部、39…下壁部、42,121…前圧縮壁部(圧縮壁部)、44,125…中央圧縮壁部(圧縮壁部)、46,131…後圧縮壁部(圧縮壁部)、54,141…前引張壁部(引張壁部)、61,151…中央引張壁部(引張壁部)、67,161…後引張壁部(引張壁部)、T1…メインフレーム部の板厚寸法、T2…サブフレーム部の板厚寸法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略矩形状の中空体に形成され、軸線方向の衝撃が作用した際に、圧縮応力が発生する圧縮壁部と引張応力が発生する引張壁部とを備えた車体フレームにおいて、
前記車体フレームの前端部から後端部まで全域に亘って延出され、前記圧縮壁部を形成する軽金属製のメインフレーム部と、
前記メインフレーム部に沿って取り付けられることで、前記メインフレーム部と一体となって前記中空体を形成するとともに前記引張壁部を形成する鋼製のサブフレーム部と、を備え、
前記メインフレーム部の板厚寸法を前記サブフレーム部の板厚寸法より大きく設定したことを特徴とする車体フレーム。
【請求項1】
断面略矩形状の中空体に形成され、軸線方向の衝撃が作用した際に、圧縮応力が発生する圧縮壁部と引張応力が発生する引張壁部とを備えた車体フレームにおいて、
前記車体フレームの前端部から後端部まで全域に亘って延出され、前記圧縮壁部を形成する軽金属製のメインフレーム部と、
前記メインフレーム部に沿って取り付けられることで、前記メインフレーム部と一体となって前記中空体を形成するとともに前記引張壁部を形成する鋼製のサブフレーム部と、を備え、
前記メインフレーム部の板厚寸法を前記サブフレーム部の板厚寸法より大きく設定したことを特徴とする車体フレーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−174104(P2008−174104A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9581(P2007−9581)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]