説明

車体フロア構造

【課題】フロア剛性を確保しつつクロスメンバによって形成される上下の閉断面構造を車両前後方向へ離間させる。
【解決手段】フロントフロアパネル10の後端部10Aに、前側クロスアッパ20とクロスロア22とによって、長手方向が車幅方向に沿って設けられた前側車幅方向閉断面構造26が形成されており、センタフロアパネル30の前端部30Aに、後側クロスアッパ34とクロスロア22とによって、長手方向が車幅方向に沿って設けられた後側車幅方向閉断面構造36が形成されている。また、前側車幅方向閉断面構造26と後側車幅方向閉断面構造36との間に、タンクブラケット40とクロスロア22とによって長手方向が車両前後方向に沿った前後方向閉断面構造44が形成されている。この結果、前側車幅方向閉断面構造26と後側車幅方向閉断面構造36との間が前後方向閉断面構造44によって補強されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体フロア構造に係り、特に、自動車等の車両に使用される車体フロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両に使用される車体フロア構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、フロアクロスメンバにリヤフロアパネルを接合してリヤフロアパネルとフロアクロスメンバとの間に上下に分割され且つ前後に接近した2つの閉断面構造を形成することで剛性の向上を図っている。
【特許文献1】特開2000−16350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1では、フロア前部の上面側における足元のスペース確保とフロア後部の下面側における燃料タンクの大型化との双方を満足する構成にすると、2つの閉断面構造が車両前後方向へ離間する。この結果、2つの閉断面構造が車両前後方向へ離間することによる2つの閉断面構造間のフロア剛性の低下を防止し、エンジンアイドル状態におけるフロアの振動等を抑制するためには、フロア剛性を確保する対策が必要になる。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、フロア剛性を確保しつつクロスメンバによって形成される2つの閉断面構造を車両前後方向へ離間させることができる車体フロア構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の車体フロア構造は、車両の床部を構成するフロアパネルと、前記フロアパネルに長手方向を車幅方向に沿って設けられ、車幅方向に延びる車幅方向閉断面構造を形成する前側クロスメンバと、前記フロアパネルにおける前記前側クロスメンバから車両後側上方へ離間した位置に長手方向を車幅方向に沿って設けられ、車幅方向に延びる車幅方向閉断面構造を形成する後側クロスメンバと、前記前側クロスメンバの車幅方向中間部と前記後側クロスメンバの車幅方向中間部との間に設けられ、車両前後方向に延びる前後方向閉断面構造を形成するクロスメンバ補強手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
車両の床部を構成するフロアパネルに長手方向を車幅方向に沿って設けられた前側クロスメンバが車幅方向に延びる車幅方向閉断面構造を形成し、フロアパネルにおける前側クロスメンバから車両後側上方へ離間した位置に長手方向を車幅方向に沿って設けられた後側クロスメンバが車幅方向に延びる車幅方向閉断面構造を形成する。また、前側クロスメンバの車幅方向中間部と後側クロスメンバの車幅方向中間部との間に設けられたクロスメンバ補強手段が、車両前後方向に延びる前後方向閉断面構造を形成する。この結果、前側クロスメンバによって形成される車幅方向閉断面構造の車幅方向中間部と、後側クロスメンバによって形成される車幅方向閉断面構造の車幅方向中間部との間がクロスメンバ補強手段によって形成される前後方向閉断面構造で補強される。このため、フロア剛性を確保しつつ2つの車幅方向閉断面構造を車両前後方向へ離間させることができると共にクロスメンバ補強手段が配置されない部位で足元スペースの確保または燃料タンクの大型化に対応できる。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の車体フロア構造において、前記前側クロスメンバにおける前記クロスメンバ補強手段との連結部に長手方向を車両前後方向に沿って設けられ、前記前側クロスメンバの閉断面を拡大する断面拡大部を有することを特徴とする。
【0008】
前側クロスメンバにおけるクロスメンバ補強手段との連結部に長手方向を車両前後方向に沿って設けられた断面拡大部によって、前側クロスメンバにおけるクロスメンバ補強手段との連結部の断面積が拡大する。このため、前側クロスメンバとクロスメンバ補強手段との連結部の剛性が向上する。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の車体フロア構造において、前記フロアパネルの前部に長手方向を車両前後方向に沿って設けられたフロアパネル補強手段が車両前後方向に延びる前後方向閉断面構造を形成すると共に、フロアパネル補強手段の後部に連結された連結補強手段が形成する前後方向閉断面構造が、フロアパネル補強手段の前後方向閉断面構造と前側クロスメンバの車幅方向閉断面構造とを連結する。このため、フロア剛性が更に向上する。
【0010】
請求項4記載の本発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車体フロア構造において、前記前後方向閉断面構造と前記車幅方向閉断面構造との結合部が水平方向に対して上下方向へ傾斜していることを特徴とする。
【0011】
前後方向閉断面構造と車幅方向閉断面構造との結合部が水平方向に対して上下方向へ傾斜している。このため、前後方向閉断面構造と車幅方向閉断面構造との結合部が車両前後方向及び車両上下方向の振動に対して剥離し難い剪断方向に近づく。この結果、結合部の強度剛性が向上する。
【0012】
請求項5記載の本発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車体フロア構造において、前記クロスメンバ補強手段は燃料タンクを支持する燃料タンク支持部材であることを特徴とする。
【0013】
クロスメンバ補強手段が燃料タンクを支持する燃料タンク支持部材であるため、クロスメンバ補強手段を別途設ける必要がなく、部品数が少なくなる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の本発明はフロア剛性を確保しつつクロスメンバによって形成される2つの閉断面構造を車両前後方向へ離間させることができる。
【0015】
請求項2記載の本発明はフロア剛性を向上できる。
【0016】
請求項3記載の本発明はフロア剛性を更に向上できる。
【0017】
請求項4記載の本発明は結合部の強度を向上できる。
【0018】
請求項5記載の本発明は部品数を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1実施形態に係る車体フロア構造について、図1〜図4に基づいて説明する。
【0020】
なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢印INは車幅内側方向を、矢印UPは車両上方方向を示す。
【0021】
図4には本実施形態における車体フロア構造が車両下方から見た平面図によって示されている。
【0022】
図4に示される如く、本実施形態の自動車車体におけるフロントフロアパネル10の下面側には、フロアパネル補強手段としての左右一対のトンネルサイドリインフォースメント12が設けられている。なお、図示を省略したが、フロントフロアパネル10における左右のトンネルサイドリインフォースメント12の間の部位には、フロアトンネル部が長手方向を車両前後方向に沿って形成されている。
【0023】
左右のトンネルサイドリインフォースメント12は、長手方向を車両前後方向に沿って配置されており、互いに平行に配置されている。また、トンネルサイドリインフォースメント12の車両前後方向から見た断面形状は、開口部を車両上方向へ向けたハット断面形状となっており、開口部に形成した左右のフランジ12Aがフロントフロアパネル10の下面に溶接等によって結合されている。従って、トンネルサイドリインフォースメント12はフロントフロアパネル10とで長手方向が車両前後方向に沿った前後方向閉断面構造14を形成している。
【0024】
なお、閉断面構造とは、対象とする断面の開口外周部が実質的に連続して高強度及び高剛性になっている断面構造であって、実質的にとは、対象とする断面が外周長に比べて小さな孔等が部分的に形成されていても、断面の直角方向の手前側又は奥側では孔等が無く、開口部周囲の部材が連続している構成も含むことを意味する。
【0025】
図1には図4の1−1断面線に沿った断面図が示されている。
【0026】
図1に示される如く、フロントフロアパネル10の後端部10Aには前側クロスメンバ18が長手方向を車幅方向に沿って設けられている。前側クロスメンバ18は、前側クロスメンバ18の車両上下方向上側部を構成する前側クロスアッパ20と、前側クロスメンバ18の車両上下方向下側部を構成するクロスロア22の前部22Aとで形成されている。即ち、前側クロスアッパ20はクロスロア22の前部22Aとで、長手方向が車幅方向に沿っている前側車幅方向閉断面構造26を形成している。
【0027】
フロントフロアパネル10の後端部10Aから車両後側上方へ離間した部位には、センタフロアパネル30が設けられている。また、センタフロアパネル30の前端部30Aには、後側クロスメンバ32が長手方向を車幅方向に沿って設けられている。後側クロスメンバ32は、後側クロスメンバ32の車両上下方向上側部を構成する後側クロスアッパ34と、後側クロスメンバ32の車両上下方向下側部を構成するクロスロア22の後部22Bとで形成されている。即ち、後側クロスアッパ34はクロスロア22の後部22Bとで、長手方向が車幅方向に沿った後側車幅方向閉断面構造36を形成している。
【0028】
なお、前側クロスアッパ20の前壁部20Aの上下方向中間部には、車両前方側へ突出した段部20Bが形成されており、前壁部20Aの下端からは車両前方へ向かって前フランジ20Cが形成されている。なお、前側クロスアッパ20の前フランジ20Cの前端20Dは、フロントフロアパネル10の後端部10Aの下面に溶接等によって結合されている。また、前側クロスアッパ20の前壁部20Aの上端からは上壁部20Eが車両後方へ向かって形成されている。
【0029】
後側クロスアッパ34の前壁部34Aは車両前方下側から車両後方上側に向かって傾斜している。また、前壁部34Aの下端からは車両前方へ向かって前フランジ34Bが形成されており、前壁部34Aの上端からは車両後方へ向かって上壁部34Cが形成されている。なお、後側クロスアッパ34の上壁部34Cの後端34Dは、センタフロアパネル30の前端部30Aの上面に溶接等によって結合されている。
【0030】
前側クロスアッパ20の上壁部20Eの後端20Fと後側クロスアッパ34の前フランジ34Bとが、車両前後方向に隙間を開けた状態でクロスロア22の前後方向中間部22Cの上面に溶接等によって結合されている。なお、クロスロア22の前後方向中間部22Cの車両前方側が前部22Aとなっており、クロスロア22の前後方向中間部22Cの車両後方側が後部22Bとなっている。
【0031】
クロスロア22の前部22Aにおける縦壁部22Dの上端からは、車両後側斜め上方に向かって傾斜壁部22Eが形成されており、傾斜壁部22Eの後端が前後方向中間部22Cに連結されている。また、前部22Aの縦壁部22Dの下端からは、車両前方へ向かって下壁部22Gが形成されており、下壁部22Gの前端部22Hは、前側クロスアッパ20の段部20Bに溶接等によって結合されている。
【0032】
クロスロア22の後部22Bにおける縦壁部22Jは、車両前方下側から車両後方上側に向かって傾斜しており、縦壁部22Jの下端が前後方向中間部22Cの後端に連結されている。また、クロスロア22の後部22Bにおける縦壁部22Jの上端からは、車両後方に向かってフランジ22Kが形成されており、フランジ22Kはセンタフロアパネル30の前端部30Aを挟んで後側クロスアッパ34の後端34Dの下面に溶接等によって結合されている。
【0033】
前側クロスメンバ18の車幅方向中間部と後側クロスメンバ32の車幅方向中間部との間にはクロスメンバ補強手段としての燃料タンク支持部材であるタンクブラケット40が設けられている。
【0034】
なお、前側クロスメンバ18と後側クロスメンバ32の車幅方向中間部とは、前側クロスメンバ18と後側クロスメンバ32の車幅方向両端を除く部位であればどこでも良い。
【0035】
また、タンクブラケット40は長手方向を車両前後方向及び車両上下方向に沿って設けられており、クロスロア22とで車両前後方向及び車両上下方向に延びる前後方向閉断面構造44を形成している。
【0036】
より具体的に説明すると、図4に示される如く、タンクブラケット40の外周縁部には、前フランジ40Aと上フランジ40Bが連続して形成されており、前フランジ40Aと上フランジ40Bとで囲まれた中央部が車両後方及び車両下方へ膨らみ凸部40Cとなっている。また、タンクブラケット40の前フランジ40Aと上フランジ40Bとがクロスロア22に溶接等によって結合されることで、前後方向閉断面構造44が形成されている。
【0037】
なお、タンクブラケット40の凸部40Cには、燃料タンクを取付けるための取付孔41が形成されており、取付孔41に固定されるボルト等の締結手段によって燃料タンクを支持できるようになっている。また、タンクブラケット40は左右のトンネルサイドリインフォースメント12の車両後方側の略延長線上にそれぞれ配置されている。
【0038】
図2には本実施形態における車体フロア構造が車両斜め後方下方から見た斜視図によって示されている。
【0039】
図2に示される如く、タンクブラケット40の前フランジ40Aは、クロスロア22の縦壁部22Dの後面に溶接等によって結合されている。また、タンクブラケット40の上フランジ40Bはクロスロア22の前後方向中間部22Cの下面に溶接等によって結合されている。また、タンクブラケット40の前フランジ40Aの下端縁部40Dはクロスロア22の縦壁部22Dの下端縁部22Lに溶接等によって結合されている。
【0040】
図1に示される如く、タンクブラケット40の上フランジ40Bの後端縁部40Eは、クロスロア22の前後方向中間部22Cを挟んで後側クロスアッパ34の前フランジ34Bに溶接等によって結合されている。
【0041】
従って、タンクブラケット40は、クロスロア22とで車両前後方向及び車両上下方向に延びる前後方向閉断面構造44を形成しており、前後方向閉断面構造44は、前側車幅方向閉断面構造26の車両後方側、即ち、前側車幅方向閉断面構造26と後側車幅方向閉断面構造36との間に配置されている。このため、前側車幅方向閉断面構造26と後側車幅方向閉断面構造36との間が、前後方向閉断面構造44によって補強されている。この結果、エンジンアイドル状態におけるフロアの上下振動、特に前側車幅方向閉断面構造26と後側車幅方向閉断面構造36との間の上下振動が、前後方向閉断面構造44によって抑制されるようになっている。
【0042】
また、前後方向閉断面構造44が左右のトンネルサイドリインフォースメント12の後方に車両前後方向に沿って形成されている。即ち、前後方向閉断面構造44はフロアパネルの車幅方向全域に渡って形成されていない。このため、後側車幅方向閉断面構造36を車両後方側に配置することで、例えば、3列シートを搭載する車両における2列目席に着座した乗員に対するフロアパネルの上面側の足元スペース(図1のS1)を確保できると共に、前側車幅方向閉断面構造26を車両前方側に配置することで、フロアパネル下面側の燃料タンク配置スペース(図1のS2)を大きくできる(左右の前後方向閉断面構造44の間に燃料タンク(図示省略)を配置できる)ようになっている。
【0043】
図4に示される如く、トンネルサイドリインフォースメント12とタンクブラケット40との間には、連結補強手段としてのトンネルリインフォースメントガセット50(以下、ガセットという)が配置されている。ガセット50の前部50Aは、車両前後方向から見た断面形状が開口部を車両上方へ向けたハット断面構造となっており、前部50Aは、トンネルサイドリインフォースメント12の後端内周部に溶接等によって結合されている。また、ガセット50の前部50Aの左右のフランジ50Bは、トンネルサイドリインフォースメント12の左右のフランジ12Aとフロントフロアパネル10との間に結合されている。
【0044】
ガセット50の後部50Cにおいては、車幅方向外側壁部50Dの上端から車幅方向外側に向かってフランジ50Eが形成されており、フランジ50Eはクロスロア22の下壁部22Gの下面に溶接等によって結合されている。また、トンネルリインフォースメントガセット50の後部50Cにおいては、車幅方向内側壁部50Fの上端から車幅方向内側に向かってフランジ50Gが形成されており、フランジ50Gはクロスロア22の下壁部22Gの下面に溶接等によって結合されている。
【0045】
図2に示される如く、ガセット50の下壁部50Hの後端からは車両後方上側に向かって傾斜した後壁部50Jが形成されている。また、後壁部50Jの上部における車幅方向中間部には、車両後方へ膨らんだ凸部52が形成されている。凸部52の車両上下方向から見た断面形状は、開口部を車両前方へ向けたコ字状となっており、凸部52の後壁部52Aは、車両前方下側から車両後方上側に向かう傾斜壁部となっている。
【0046】
図3には本実施形態における車体フロア構造が車両斜め後方下方から見た斜視図によって示されており、ガセット50を想像線で示している。
【0047】
図3に示される如く、クロスロア22の下壁部22Gにおけるタンクブラケット40の車両前方側となる部位には、断面拡大部としてのビード60が形成されている。
【0048】
図5には図1の5−5断面線に沿った拡大断面図が示されている。
【0049】
図5に示される如く、ビード60は車両下方側へ向かって断面台形状に凸とされており、長手方向を車両前後方向に沿って設けられている。
【0050】
図1に示される如く、ビード60の下壁部60Aの後端からは、車両後側上方に向かって傾斜した後壁部60Bが形成されている。また、ビード60の前端部には、下方へ開口部を向けた断面コ字状の凹部60Cが車両上方へ向かって形成されており、凹部60Cは、前側クロスアッパ20の段部20Bの下面と、前壁部20Aの下部20Gの後面とに溶接等によって結合されている。一方、ビード60の後壁部60Bの下面には、ガセット50に形成した凸部52の後壁部52Aが溶接等によって結合されている(結合部P)。
【0051】
即ち、ビード60の後壁部60Bが水平方向に対して上下方向へ傾斜しており、ビード60の後壁部60Bの下面にガセット50の後壁部50Jに形成された凸部52の後壁部52Aが溶接等によって結合されている(結合部P)。このため、前側車幅方向閉断面構造26と前後方向閉断面構造64との結合部Pが、水平方向に対して上下方向へ傾斜しており、車両上下方向の振動に対して、結合部Pの結合方向が剥離し難い剪断方向に近づくようになっている。
【0052】
また、フロントフロアパネル10とトンネルサイドリインフォースメント12とで形成され、車両前後方向に延びる前後方向閉断面構造14の後端に、前側クロスアッパ20とガセット50とで形成され、車両前後方向に延びる前後方向閉断面構造64が連結されている。また、前後方向閉断面構造64は、ビード60を介して、前側車幅方向閉断面構造26に結合されている。従って、前後方向閉断面構造14に作用する荷重を前後方向閉断面構造64を介して前側車幅方向閉断面構造26へ効率的に伝達できるようになっている。
【0053】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0054】
本実施形態では、フロントフロアパネル10の後端部10Aに、前側クロスアッパ20とクロスロア22の前部22Aとによって形成され、長手方向が車幅方向に沿って設けられた前側車幅方向閉断面構造26と、センタフロアパネル30の前端部30Aに、後側クロスアッパ34とクロスロア22の後部22Bとによって形成され、長手方向が車幅方向に沿って設けられた後側車幅方向閉断面構造36とが車両前後方向に離間しており、前側車幅方向閉断面構造26と後側車幅方向閉断面構造36との間に、タンクブラケット40によって長手方向が車両前後方向に沿った前後方向閉断面構造44が形成されている。この結果、前側車幅方向閉断面構造26と後側車幅方向閉断面構造36との間が前後方向閉断面構造44によって補強される。このため、エンジンアイドル状態におけるフロアの上下振動を低減できる。更に、フロアパネルやクロスメンバの各板厚を厚くしてフロアの上下振動を低減する構成に比べて軽量且つ低コストとなる。
【0055】
また、本実施形態では、左右の前後方向閉断面構造44がトンネルサイドリインフォースメント12の後方に車両前後方向に沿って形成されている。即ち、左右の前後方向閉断面構造44はフロアパネルの車幅方向全域に渡って形成されていない。この結果、後側車幅方向閉断面構造36を車両後方側に配置することで、例えば、3列シートを搭載する車両における2列目席に着座した乗員に対するフロアパネルの上面側の足元スペース(図1のS1)を確保できると共に、前側車幅方向閉断面構造26を車両前方側に配置することで、フロアパネル下面側の燃料タンク配置スペース(図1のS2)を大きくできる(左右の前後方向閉断面構造44の間に燃料タンク(図示省略)を配置できる)。このため、燃料タンク取付スペースS2へ取り付ける燃料タンクの大型化が可能になる。
【0056】
また、本実施形態では、前側クロスメンバ18の下部を形成するクロスロア22の前部22Aにおけるタンクブラケット40との連結部の車両前方側となる部位にビード60が形成されている。この結果、ビード60によって、閉断面構造26におけるタンクブラケット40との連結部となる部位の断面積が拡大する。このため、前側車幅方向閉断面構造26におけるタンクブラケット40との連結部の剛性が向上し、車体フロアの振動を更に低減できる。また、ビード60によって、前側車幅方向閉断面構造26におけるタンクブラケット40との連結部の折れ変形を抑制できる。
【0057】
また、本実施形態では、フロントフロアパネル10とトンネルサイドリインフォースメント12とで形成され、車両前後方向に延びる前後方向閉断面構造14の後端に、前側クロスアッパ20とガセット50とで形成され、車両前後方向に延びる前後方向閉断面構造64が連結されている。また、前後方向閉断面構造64は、ビード60を介して、前側車幅方向閉断面構造26に結合されている。この結果、前後方向閉断面構造14に作用する荷重を前後方向閉断面構造64を介して前側車幅方向閉断面構造26へ効率的に伝達できる。このため、フロア剛性が更に向上する。
【0058】
また、本実施形態では、ビード60の後壁部60Bが水平方向に対して上下方向へ傾斜しており、ビード60の後壁部60Bの下面に、トンネルリインフォースメントガセット50の後壁部50Jに形成された凸部52の後壁部52Aが溶接等によって結合されている(結合部P)。このため、前側車幅方向閉断面構造26と前後方向閉断面構造64との結合部Pが、水平方向に対して上下方向へ傾斜しており、車両上下方向の振動に対して、結合部Pの結合方向が剥離し難い剪断方向に近づく。この結果、結合部Pの結合強度剛性を向上できる。
【0059】
また、本実施形態では、タンクブラケット40とガセット50とを別部材としたことで、タンクブラケット40及びガセット50の小型化が可能になる。この結果、車両のプラットフォームを共通化した場合にも、タンクブラケット40及びガセット50の取付けスペースを確保し易くなる。このため、プラットフォーム共通化の自由度を向上できる。
【0060】
また、本実施形態では、クロスメンバ補強手段として燃料タンク支持部材であるタンクブラケット40を使用するため、別途クロスメンバ補強手段を設ける必要がなく、部品数を少なくできる。
【0061】
次に、本発明の第2実施形態に係る車体フロア構造について図6に基づいて説明する。
【0062】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図6には本実施形態における車体フロア構造が車両斜め後方下方から見た斜視図によって示されている。
【0064】
図6に示される如く、本実施形態では、第1実施形態におけるタンクブラケット40とガセット50とが一体構造とされており、補強ブラケット70となっている。
【0065】
従って、第1実施形態におけるタンクブラケット40及びガセット50に比べて補強ブラケット70の大きさが大きくなり、取付けスペースを確保し難くなる。このため、プラットフォーム共通化の自由度等は第1実施形態に比べ低下するが、他の効果については第1実施形態と略同様の効果が得られる。
【0066】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記各実施形態では、フロアパネルをフロントフロアパネル10とセンタフロアパネル30とに分割したが、これに代えて、フロントフロアパネル10とセンタフロアパネル30とが一体(一枚板)となったフロアパネルとしても良い。
【0067】
また、上記各実施形態では、クロスメンバ補強手段として燃料タンク支持部材であるタンクブラケット40を使用したが、これに代えて、タンクブラケット40以外の他の共用部材をクロスメンバ補強手段として使用しても良い。また、クロスメンバ補強手段を専用部材としても良い。
【0068】
また、上記各実施形態では、クロスロア22に断面拡大部としてのビード60を形成したが、ビード60に代えて、他の断面拡大部をクロスロア22に設けた構成としても良い。
【0069】
また、上記各実施形態では、連結補強手段としてガセット50を使用したが、ガセット50に代えて、他の連結補強手段を使用した構成としても良い。
【0070】
また、上記各実施形態では、前側車幅方向閉断面構造26と前後方向閉断面構造64との結合部Pを、水平方向に対して上下方向へ傾斜させたが、タンクブラケット40の前フランジ40Aの下端縁部40Dとクロスロア22の縦壁部22Dの下端縁部22Lとの結合部を水平方向に対して上下方向へ傾斜させた構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図4の1−1断面線に沿った拡大断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車体フロア構造の車両左側部を示す車両斜め後方下方から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車体フロア構造の車両左側部を示す車両斜め後方下方から見た斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る車体フロア構造を示す車両下方から見た平面図である。
【図5】図1の5−5断面線に沿った拡大断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る車体フロア構造の車両左側部を示す車両斜め後方下方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
10 フロントフロアパネル(フロアパネル)
12 トンネルサイドリインフォースメント(フロアパネル補強手段)
14 前後方向閉断面構造
18 前側クロスメンバ
20 前側クロスアッパ
22 クロスロア
26 前側車幅方向閉断面構造
30 センタフロアパネル(フロアパネル)
32 後側クロスメンバ
34 後側クロスアッパ
36 後側車幅方向閉断面構造
40 タンクブラケット(クロスメンバ補強手段)
44 前後方向閉断面構造
50 トンネルリインフォースメントガセット(連結補強手段)
60 ビード(断面拡大部)
64 前後方向閉断面構造
70 補強ブラケット(クロスメンバ補強手段、フロア補強部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床部を構成するフロアパネルと、
前記フロアパネルに長手方向を車幅方向に沿って設けられ、車幅方向に延びる車幅方向閉断面構造を形成する前側クロスメンバと、
前記フロアパネルにおける前記前側クロスメンバから車両後側上方へ離間した位置に長手方向を車幅方向に沿って設けられ、車幅方向に延びる車幅方向閉断面構造を形成する後側クロスメンバと、
前記前側クロスメンバの車幅方向中間部と前記後側クロスメンバの車幅方向中間部との間に設けられ、車両前後方向に延びる前後方向閉断面構造を形成するクロスメンバ補強手段と、
を有することを特徴とする車体フロア構造。
【請求項2】
前記前側クロスメンバにおける前記クロスメンバ補強手段との連結部に長手方向を車両前後方向に沿って設けられ、前記前側クロスメンバの閉断面を拡大する断面拡大部を有することを特徴とする請求項1に記載の車体フロア構造。
【請求項3】
前記フロアパネルの前部に長手方向を車両前後方向に沿って設けられ、車両前後方向に延びる前後方向閉断面構造を形成するフロアパネル補強手段と、
前記フロアパネル補強手段の後部に連結され、前記フロアパネル補強手段の前後方向閉断面構造と前記前側クロスメンバの車幅方向閉断面構造とを連結する前後方向閉断面構造を形成する連結補強手段と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体フロア構造。
【請求項4】
前記前後方向閉断面構造と前記車幅方向閉断面構造との結合部が水平方向に対して上下方向へ傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車体フロア構造。
【請求項5】
前記クロスメンバ補強手段は燃料タンクを支持する燃料タンク支持部材であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車体フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−13103(P2008−13103A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187838(P2006−187838)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】