説明

車体フロア構造

【課題】側面衝突時の衝撃をより効率よく受け、車両の底の空力性能を向上させる車体フロア構造を提供する。
【解決手段】車体フロア構造11は、車室13の床をなすフロアボデー14のフロアパネル44と、フロアパネルの左右に配置した左のサイドシル34、右のサイドシル37に接合しているフロアクロスメンバー38と、フロアパネルの前端に配置されているダッシュボードクロスメンバーからフロアパネルの中央まで延びたフロントフロアフレーム24とを備える。フロントフロアフレームは、フロアパネル上に配置されているとともに、フロアクロスメンバーの切り欠き部93を貫通して中央まで延びて、フロアクロスメンバーの後方にてサイドシル側に曲がってサイドシル34に接合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突に対応する車体フロア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体フロア構造は、左又は右側面衝突に対する機能を有し、前座席の下方に配置され左右に延びるフロアクロスメンバーを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−119492公報(第14頁の図8、第15頁の図10)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図6は、従来の技術を説明する説明図であり、従来の車体構造201は、左右に配置されたサイドシル202に、前座席の下方に配置され左右に延びるフロアクロスメンバー203が接続され、サイドシル202に略平行なフロアフレーム204が配置され、且つフロアフレーム204の端をサイドシル202に接合しているので、側面衝突の衝撃を効率よく分散させることができるというものである。
【0004】
しかし、特許文献1の車体構造201では、側面衝突の衝撃をより効率よく分散させる必要があるという問題がある。
また、車体構造201は、フロアフレーム204がフロアパネル205の下方を流れる走行風の流れの抵抗となり、空力性能を向上させ難いという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、側面衝突時の衝撃をより効率よく受け、車両の底の空力性能を向上させる車体フロア構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車室の床をなすフロアボデーに含まれるフロアパネルと、フロアパネルの左右に配置した左右のサイドシルに接合しているとともにフロアパネル上に配置されているフロアクロスメンバーと、フロアパネルの前端に配置されているダッシュボードクロスメンバーからフロアパネルの中央まで延びたフロントフロアフレームと、を備えた車体フロア構造において、フロントフロアフレームは、フロアパネル上に配置されているとともに、フロアクロスメンバーの切り欠き部を貫通して中央まで延びて、フロアクロスメンバーの後方にてサイドシル側に曲がってサイドシルに接合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、フロントフロアフレームは、フロアパネル上に配置されているとともに、フロアクロスメンバーの切り欠き部を貫通して中央まで延びて、フロアクロスメンバーの後方にてサイドシル側に曲がってサイドシルに接合しているので、側面衝突の際に、サイドシル及びフロアクロスメンバーに荷重が加わると、サイドシル及びフロアクロスメンバーは車両の内側へ塑性変形し、荷重はフロアクロスメンバーの切り欠き部からフロントフロアフレームに伝わり、分散する。従って、側面衝突時の衝撃をより効率よく受けることができるという利点がある。
【0008】
また、フロントフロアフレームは、フロアパネル上に配置されているので、フロアパネル下をフラットにでき、車両の底を流れる走行風の抵抗を低減することができ、車両の底の空力性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の車体フロア構造に連なるフロントボデーの斜視図である。
図2は、本発明の車体フロア構造に連なるフロントフロアフレームの斜視図である。
【0010】
車体フロア構造11は、車両12の車室13の床をなすフロアボデー14に採用されたものである。具体的には後述する。
車両12は、床をなすフロアボデー14と、車室13の側壁をなす左右のサイドボデー(図に示していない)と、車室13の前部に設けたフロントボデー16と、フロントボデー16との隔壁をなすダッシュボード17と、を有する。
【0011】
フロントボデー16は、左右にフロントサイドフレーム21が形成されている。そして、フロントサイドフレーム21は、車両12の中心軸線Cを基準に、ほぼ左右対称である。フロントサイドフレーム21の後端22に連なるフロントフロアフレーム24がフロアボデー14の中央に向け(矢印a1の方向)延びている。
フロアボデー14は、車体フロア構造11を含む。
【0012】
図3は、本発明の車体フロア構造の斜視図である。図1、図2を併用して説明する。
車体フロア構造11は、具体的には、前部のダッシュボード17の下端に且つ、左右のフロントサイドフレーム21の後端に設けたダッシュボードクロスメンバー26と、ダッシュボードクロスメンバー26の中央に連ねて車長方向(X軸方向)に延びているトンネル部28(開口29を有する。)と、トンネル部28に沿って車長方向に延び、トンネル部28の左右にそれぞれ接合している左右のトンネルフレーム31と、を備える。
【0013】
また、車体フロア構造11は、ダッシュボードクロスメンバー26の一方の端(左端)32に接続して車長方向(X軸方向)の後方(矢印a1の方向)に延びている左のサイドシル34と、左のサイドシル34に平行で且つダッシュボードクロスメンバー26の他方の端(右端)に接続して車長方向の後方に延びている右のサイドシル37と、左のサイドシル34と右のサイドシル37間に配置されているフロアクロスメンバー38と、を備え、フロアクロスメンバー38は、左接合端41が左のサイドシル34に接合され、右接合端42が右のサイドシル37に接合され、中央接合部43がトンネル部28に接合されている。
【0014】
さらに、車体フロア構造11は、フロアクロスメンバー38の下部に接合しているフロアパネル44を有し、フロアパネル44が、左右端をそれぞれ左のサイドシル34並びに右のサイドシル37に接合し、中央をトンネル部28に接合し、車室13内に内面46を向け、地面に外面47を向けている。
【0015】
加えて、車体フロア構造11は、フロアパネル44の内面46にフロントフロアフレーム24が接合している。そして、フロントフロアフレーム24がダッシュボードクロスメンバー26(図2参照)からフロアパネル44の中央まで(矢印a1の方向)延びて、フロアクロスメンバー38を貫通した後方(矢印a1の方向)にてサイドシル34側に曲がる曲がり部48が形成され、曲がり部48の端がサイドシル34に接合している。
フロントフロアフレーム24は、車両12の中心軸線Cを基準に、ほぼ左右対称である。
【0016】
図4は、図3の4−4線断面図である。図2及び図3を併用して説明する。
フロントフロアフレーム24は、直交断面がコ字状で、開口が下方のフロアパネル44に向けて配置され、フロアパネル44の内面46に両方のフランジ91を接合している。そして、車両12の外側(矢印2aの方向)に向いている外側壁92が、貫通したフロアクロスメンバー38の切り欠き部93との間に所定の隙間Sを設けて配置されている。隙間Sを設けることで、組み立ての公差を比較的大きく設定することができ、組み立ては容易になる。
なお、外側壁92は、隙間Sを設けたが、隙間Sを設けないで、切り欠き部93に接合されてもよい。
【0017】
フロアクロスメンバー38は、フロアパネル44を接合しているパネル接合部95に切り欠き部93が形成されている。
具体的には、本体96のサイドシル34側(矢印a2の方向)に係合部98がフロントフロアフレーム24の高さHとほぼ同じ高さで形成され、係合部98の下接合部101がフロアパネル44の内面46に接合され、係合部98がフロントフロアフレーム24に対して所定の隙間Sを設けて配置されている。
【0018】
次に、本発明の車体フロア構造の作用を説明する。
図5は、車体フロア構造の側面衝突の衝撃を分散する機構を説明する図である。
車体フロア構造11では、車両12の左の側面に衝撃が矢印a3のように加わると、左のサイドシル34とともにフロアクロスメンバー38は矢印a4のように塑性変形し、フロアクロスメンバー38の切り欠き部93はフロントフロアフレーム24の外側壁92に当接して荷重を加えるので、フロントフロアフレーム24は車両12の内側(矢印a4の方向)に塑性変形し、衝撃を吸収する。
つまり、衝撃がフロアクロスメンバー38の切り欠き部93からフロントフロアフレーム24に矢印a5、a6のように伝わる。従って、側面衝突時の衝撃をより効率よく受けることができる。
なお、車両12の右の側面に衝撃が矢印a3と同様に加わった場合も、同様の作用・効果を発揮する。
【0019】
また、図4に示している車体フロア構造11では、フロントフロアフレーム24がフロアパネル44の車室13側に配置され、車室13外に配置されていない。その結果、車両12の底84の空力性能を向上させることができる。
すなわち、フロントフロアフレーム24は、フロアパネル44の内面46に接合しているので、フロアパネル44の外面47はフラットになる。従って、車両12の底84を流れる風による抵抗を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の車体フロア構造は、車体に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の車体フロア構造に連なるフロントボデーの斜視図である。
【図2】本発明の車体フロア構造に連なるフロントフロアフレームの斜視図である。
【図3】本発明の車体フロア構造の斜視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】車体フロア構造の側面衝突の衝撃を分散する機構を説明する図である。
【図6】従来の技術を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0022】
11…車体フロア構造、13…車室、14…フロアボデー、24…フロントフロアフレーム、26…ダッシュボードクロスメンバー、34…左のサイドシル、37…右のサイドシル、38…フロアクロスメンバー、44…フロアパネル、93…切り欠き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の床をなすフロアボデーに含まれるフロアパネルと、該フロアパネルの左右に配置した左右のサイドシルに接合しているとともに前記フロアパネル上に配置されているフロアクロスメンバーと、前記フロアパネルの前端に配置されているダッシュボードクロスメンバーから前記フロアパネルの中央まで延びたフロントフロアフレームと、を備えた車体フロア構造において、
前記フロントフロアフレームは、前記フロアパネル上に配置されているとともに、前記フロアクロスメンバーの切り欠き部を貫通して前記中央まで延びて、前記フロアクロスメンバーの後方にて前記サイドシル側に曲がって前記サイドシルに接合していることを特徴とする車体フロア構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−1038(P2009−1038A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161043(P2007−161043)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】