説明

車体フロア構造

【課題】側面衝突性能及びボディ剛性を向上させることが可能な車体フロア構造を提供する。
【解決手段】車体前後方向に延びる左右一対のサイドシル11,12がフロントフロアパネル13で連結された車体フロア構造において、サイドシル11,12の下部を、車幅方向に延びる補強バー18を用いて直接締結する、又は間接的に締結する。
一方のサイドシル11(又はサイドシル12)に側面衝突荷重が作用した場合に、その荷重は補強バー18を介して他方のサイドシル12(又はサイドシル11)に伝わる。即ち、側面衝突荷重がボディの左右に分散される。また、補強バー18によって左右のサイドシル11,12が拘束され、車体の剛性が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フロア構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車体フロア構造として、フロアパネルの上部に車幅方向に延びる複数のクロスメンバを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の図1を以下の図6で説明する。なお、符号は振り直した。
図6に示すように、ボディ100は、前後に延びるように配置された左右一つのサイドシルインナ101,102と、これらのサイドシルインナ101,102に渡された第1クロスメンバ103及び第2クロスメンバ104とを備える。
【0004】
また、図7に示すように、アンダボディ110は、フロアパネル111の下側に燃料タンク112が配置され、この燃料タンク112が、フロアパネル111の下面に2本のタンクバンド113,114で取付けられている。なお、符号115は燃料タンク112の容量を増やすために燃料タンク112の後部中央に後方に突出するように設けられた膨出部、116,117は左右一対のサイドシル、121,122はフロアパネル111の下面の左右に前後方向に延びるように取付けられたフロアフレーム、123,124はフロアフレーム121,122の前端から車両前方に延びる左右一対のフロントサイドフレームである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−6903公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6及び図7において、図7に示されたボディ110に図6に示された第1ミドルクロスメンバ103を設けようとすると、ボディ110では、フロアパネル111が低い位置にあり、これに伴って車室の天井も低くなっているために、フロアパネル111に第1クロスメンバ103を配置することが難しい。
【0007】
また、燃料タンク112に膨出部115を設けた場合には、図6に示された第2クロスメンバ104が燃料タンク112の膨出部115と干渉して第2クロスメンバ104をフロアパネル111に設けることができない。
【0008】
このように、左右のサイドシル116,117に第1クロスメンバ103及び第2クロスメンバ104を取付けることができないと、例えば、側面衝突された場合に、衝突荷重をボディ110の一方のサイドシル116(又はサイドシル117)だけで局所的に受けることになる。更に、ボディ110の剛性を確保することが難しくなる。
【0009】
本発明の目的は、側面衝突性能及びボディ剛性を向上させることが可能な車体フロア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延びる左右一対のサイドシルがフロアパネルで連結された車体フロア構造において、サイドシルの下部を、車幅方向に延びる補強バーを用いて直接又は間接的に締結することを特徴とする。
【0011】
左右のサイドシルの下部を車幅方向に延びる補強バーを用いて直接又は間接的に締結すると、一方のサイドシルに側面衝突荷重が作用した場合に、その荷重は補強バーを介して他方のサイドシルに伝わる。即ち、側面衝突荷重がボディの左右に分散される。
また、補強バーによって左右のサイドシルが拘束され、車体の剛性、特に捩り剛性が高まる。
【0012】
請求項2に係る発明は、フロアパネルと補強バーとの間に樹脂製燃料タンクが配置されることを特徴とする。
燃料タンクが補強バーで保持され、また、これによって、燃料タンクの変形が抑制される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、サイドシルの下部を、車幅方向に延びる補強バーを用いて直接又は間接的に締結するので、左右の一方のサイドシルに作用した側面衝突荷重を補強バーを介して他方のサイドシルやフロアフレームに伝達することにより、フロア全体に側面衝突荷重を分散させることができ、衝突荷重による変形を抑えることができる。
更に、サイドシルやフロアフレームが補強バーで車幅方向に拘束されるため、特に車体の捩り剛性を向上させることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、フロアパネルと補強バーとの間に樹脂製燃料タンクが配置されるので、従来、薄板バンドで行っていた燃料タンクの保持と、燃料タンク肉厚アップで行っていた内圧変化に対するタンク変形抑制とを、補強バーで行うことができ、燃料タンクをより強固に保持することができるとともに、燃料タンクをより薄肉にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車体フロア構造の底面図(実施例1)である。
【図2】図2は図1の2−2線断面図である。
【図3】図3は図1の3−3線断面図である。
【図4】本発明に係る車体フロア構造の底面図(実施例2)である。
【図5】本発明に係る車体フロア構造の要部底面図(実施例3〜実施例5)である。
【図6】従来の車体フロア構造を示す斜視図である。
【図7】従来の車体フロア構造を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中の左、右、前、後は車両に乗車した運転者を基準にした向きを示している。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1を説明する。図中の矢印(FRONT)は車両の前方を表している(以下同じ。)。
図1に示すように、アンダボディ10は、前後方向に延びる左右一対のサイドシル11,12と、これらのサイドシル11,12間に渡されたフロントフロアパネル13と、このフロントフロアパネル13の前部の左右に前後方向に延びるように取付けられた左右一対のフロントフロアフレーム14,16と、これら左右のサイドシル11,12及びフロントフロアフレーム14,16に車幅方向に延びるように取付けられた2本の補強バー18,18とを備える。なお、符号21,21はフロントフロアフレーム14,16の各前端に連結されるとともに前方に延びるフロントサイドフレーム、23は左右のサイドシル11,12の後端部間に渡されたリヤクロスメンバ、24,24はサイドシル11,12の後端から後方に延びる左右一対のリヤフレームである。
【0018】
フロントフロアパネル13の下方には、樹脂製の燃料タンク31が配置され、この燃料タンク31の下面31aが補強バー18,18で保持されている。
燃料タンク18は、車幅方向に長い矩形状の本体部18Aと、貯留される燃料の容量を増やすために本体部18Aから後方へ膨出するように形成された膨出部18Bとからなり、本体部18Aが補強バー18,18で支えられている。
【0019】
図2に示すように、左右一対のサイドシル11,12の各上部がフロントフロアパネル13で連結され、このフロントフロアパネル13の下方に燃料タンク13が配置され、燃料タンク13の下部が真直ぐな補強バー18で支持されている。
【0020】
補強バー18は、左右のサイドシル11,12のそれぞれの下面11a,12aと、フロントフロアフレーム14,16のそれぞれの下面14a,16aとに溶接あるいはボルト・ナット等で取付けられている。ボルト・ナットで取付けられた場合には、補強バー18を着脱自在とすることができる。なお、符号13aはフロントフロアパネル13の中央部を前後に延びるトンネル部であり、このトンネル部13a内で燃料タンク18は上方に膨出している。
【0021】
図3に示すように、燃料タンク31は、下面31aに補強バー18,18を通す溝部31b、31bが形成され、上面31dがフロントフロアパネル13の下面13bにクッション材33を介して押し付けられ、溝部31b、31b内に通された角パイプ状の補強バー18,18で支持されている。
【0022】
以上の図1〜図3に示したように、左右のサイドシル11,12及び左右のフロントフロアフレーム14,16を補強バー18,18で連結することで、左右のサイドシル11,12、左右のフロントフロアフレーム14,16及びフロントフロアパネル13が一体的に拘束され、アンダボディ10、ひいては車両の車体全体の剛性(特に捩り剛性)を向上させることができる。
【0023】
また、一方のサイドシル11(又はサイドシル12)に他の車両が側面衝突した場合に、側面衝突荷重を一方のサイドシル11、フロントフロアフレーム14から補強バー18,18を介して他方のフロントフロアフレーム16、サイドシル12に伝えることができ、左右のサイドシル11,12、左右のフロントフロアフレーム14,16及びフロントフロアパネル13に衝突荷重を分散させることができる。従って、これらのサイドシル11,12、フロントフロアフレーム14,16及びフロントフロアパネル13の変形をより小さくすることができる。
更に、補強バー18,18が前後方向に並んでいるので、側面衝突荷重を受けられる範囲を前後に広くすることができる。
【実施例2】
【0024】
次に本発明の実施例2を説明する。なお、実施例1と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図4に示すように、一方のサイドシル11と一方のフロントフロアフレーム14とに、車幅方向に延びるサイド補強バー35,35が渡されて取付けられ、他方のサイドシル12と他方のフロントフロアフレーム16とに、車幅方向に延びるサイド補強バー35,35が渡されて取付けられ、また、左右のフロントフロアフレーム14,16間に車幅方向に延びるセンタ補強バー36,36が渡されて取付けられ、フロントフロアパネル13の下方に配置された燃料タンク31がセンタ補強バー36,36で保持されている。
【0025】
このようにセンタ補強バー36を左右のフロントフロアフレーム14,16に渡すことで、センタ補強バー36の長さを短くすることができる。この結果、センタ補強バー36に燃料タンク31の荷重が作用した際のセンタ補強バー36の上下方向の撓みを小さくすることができるとともに、センタ補強バー36を着脱自在とした場合には、着脱作業時のセンタ補強バー36の取扱いを容易にすることができる。
【実施例3】
【0026】
次に本発明の実施例3を説明する。なお、実施例1と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図5(a)に示すように、左右のサイドシル11,12及び左右のフロントフロアフレーム14,16に、車幅方向に延びる補強バー18,18と、一方の補強バー18の一端と他方の補強バー18の一端とを斜めに繋ぐ傾斜補強バー41とがそれぞれ渡されて取付けられ、補強バー18,18及び傾斜補強バー41で燃料タンク31が保持されている。
2本の補強バー18,18と傾斜補強バー41とは底面視でZ型(又はN型)に配置されている。
【0027】
上記の補強バー18,18と傾斜補強バー41とサイドシル11,12(又はフロントフロアフレーム14,16)とは、三角形のトラス構造を形成するため、車体剛性をより一層向上させることができる。
【実施例4】
【0028】
次に本発明の実施例4を説明する。なお、実施例1と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図5(b)に示すように、左右のサイドシル11,12及び左右のフロントフロアフレーム14,16に、X字状にX型補強バー42がそれぞれ渡されて取付けられ、X型補強バー42で燃料タンク31が保持されている。
上記のX型補強バー42は、2本の補強バーをX字状に交差させて形成してもよい。
上記のX型補強バー42は、サイドシル11,12(又はフロントフロアフレーム14,16)とでトラス構造を形成するので、車体剛性をより一層向上させることができる。
【実施例5】
【0029】
次に本発明の実施例5を説明する。なお、実施例1と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図5(c)に示すように、左右のサイドシル11,12及び左右のフロントフロアフレーム14,16に、幅広の1本の補強バー43がそれぞれ渡されて取付けられ、補強バー43で燃料タンク31が保持されている。
左右のサイドシル11,12及び左右のフロントフロアフレーム14,16に1本の補強バー43を着脱自在に取付けた場合には、着脱作業を容易に行うことができる。
【0030】
上記の図1〜図3に示したように、車体前後方向に延びる左右一対のサイドシル11,12の上部がフロントフロアパネル13で連結された車体フロア構造において、サイドシル11,12の下部を、車幅方向に延びる補強バー18,18を用いて直接締結する(又は図4に示したように、サイドシル11,12の下部を、車幅方向に延びる補強バーとしてのサイド補強バー35,35及びセンタ補強バー36,36を用いて間接的に締結する)ので、左右の一方のサイドシル11(又はサイドシル12)に作用した側面衝突荷重を補強バー18,18(又は図4に示したサイド補強バー35,35、センタ補強バー36,36)を介して他方のサイドシル12(又はサイドシル11)やフロントフロアフレーム16(又はフロントフロアフレーム14)に伝達することにより、フロア全体に側面衝突荷重を分散させることができ、衝突荷重による変形を抑えることができる。
更に、サイドシル11,12やフロントフロアフレーム14,16が補強バー18,18(又は図4に示したサイド補強バー35,35、センタ補強バー36,36)で車幅方向に拘束されるため、特に車体の捩り剛性を向上させることができる。
【0031】
上記の図3に示したように、フロントフロアパネル13と補強バー18,18との間に樹脂製の燃料タンク31が配置されるので、従来、薄板バンドで行っていた燃料タンクの保持と、燃料タンク肉厚アップで行っていた内圧変化に対するタンク変形抑制とを、補強バー18,18で行うことができ、燃料タンク31をより強固に保持することができるとともに、燃料タンク31をより薄肉にすることができる。
【0032】
尚、図4に示したサイド補強バー35は、特にバー状の部材でなくてもよく、他の形状の骨格部材でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の車体フロア構造は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0034】
11,12…サイドシル、13…フロアパネル(フロントフロアパネル)、18,43…補強バー、31…燃料タンク、35…補強バー(サイド補強バー)、36…補強バー(センタ補強バー)、41…補強バー(傾斜補強バー)、42…補強バー(X型補強バー)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びる左右一対のサイドシルがフロアパネルで連結された車体フロア構造において、
前記サイドシルの下部を、車幅方向に延びる補強バーを用いて直接又は間接的に締結することを特徴とする車体フロア構造。
【請求項2】
前記フロアパネルと前記補強バーとの間に樹脂製燃料タンクが配置されることを特徴とする請求項1記載の車体フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−221816(P2010−221816A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70519(P2009−70519)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】