説明

車体保護用の被覆部材

【課題】車体の側面下縁を被覆する保護用の被覆部材に下方から突き上げ力が作用したときの被覆部材の変形や損傷を防止すること。
【解決手段】上記保護用の被覆部材として、ドア1の下部の外板10を覆う車外被覆部20と、ドア1の下縁12を覆う断面ほぼU字形の下縁被覆部21と、ドア1下部の内板11を覆う車内被覆部23とからなり、クリップ4などでドア1に固定した車両用ドアの被覆部材2において、フロントドア1のドア前端と対応する被覆部材2の前端には、下縁被覆部21とドア1の下縁12との間の間隙に、下縁被覆部21内を幅方向に横切り上端がドア1の下縁12と近接対向する当てリブ3を設け、被覆部材2の前端が下方から突き上げられたときに当てリブ3がドア1の下縁12に当接し、上記突き上げ力をドア1の下縁12で受けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体の側面部の下縁を被覆する被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車では、走行時に飛石や跳ね上げられた泥等から車体の側面部の下縁を保護するために、被覆部材で覆うようにしたものがある。図8、図9に示すように、フロントドア1の下縁が車体の下縁部をなすロッカー6よりも車外側に位置してこれを覆うワゴン車などでは、ドア1の下縁が被覆部材2で被覆されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
被覆部材2は合成樹脂からなり、車外被覆部20と、その下端から断面ほぼU字形に延長する下縁被覆部21と、下縁被覆部21と肉薄のインテグラルヒンジ22を介して連結された車内被覆部23とを一連に備えている。
被覆部材2は、その車外被覆部20の内面に設けたブラケット部24を複数のクリップ4によりドア1の外板10に嵌合係止するとともに、車内被覆部23の内面に設けた係止爪26を内板11に嵌合係止してドア1の下部に取り付けられている。なお車内被覆部23はインテグラルヒンジ22により起倒可能で、車外被覆部20をドア1に取り付けた後に、車内被覆部23を起して閉じてドアの内板11を被覆する構造としてある。
【0004】
また、図10に示すように、ドア1の下縁よりもロッカー6が下方に位置する乗用車などでは、ロッカー6の車外側の下縁が被覆部材5で被覆されている。
合成樹脂からなる被覆部材5は、車外側の側面部50とその上縁および下縁からそれぞれ屈曲してロッカー6側へ延びる上面部51、および底面部52とで断面ほぼC字状をなし、上面部51および底面部52の端末部53,54をそれぞれロッカー6の外面60,61にクリップ4a,4bにより係合してロッカー6を被覆するように設けられ、側面部50がドア1の車外面とほぼ面一とされている。底面部52の端末部54はインテグラルヒンジ56により起倒可能で、端末部54を起してロッカー6の車外側の下面に係合する構造としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−137410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8、図9に示すように、一般に、フロントドア1の下部を被覆する被覆部材2の前端は、意匠の観点からホイールハウス8との連続観が出るように、上下幅が前端へ向けて下方へ拡大するように形成され、その分、下縁被覆部21はドアの下縁より低く、下縁から離間している。
ところで、寒冷地の雪道走行では、フロントホイールハウス8の後方のフェンダの後縁下端から被覆部材2の前端の下面にかけて、前輪が跳ね上げた雪9が付着凍結することがある。
かかる場合、前輪が路面の凹凸を乗り越えたときに、凍結した雪9が路面の凸部に当たり、被覆部材2を突き上げる。そして突き上げ力Gにより被覆部材2の下縁被覆部21が押し上げられると、被覆部材2が断面変形を起して破損したり、被覆部材2をドア1に固定しているクリップ4や係止爪26に応力集中が起こってこれらが破損するおそれがあった。
また、ドア用の被覆部材2と同様に、図10に示すロッカー用の被覆部材5に突き上げ力Gがかかると、被覆部材5の底面部52が押し上げられて、底面部52の端末部54をロッカー6に止めるクリップ4bが破損したり、被覆部材5に断面変形が生じて被覆部材5自体が破損するといった問題があった。
そこで本発明は、ドア下部やロッカーを被覆する被覆部材に下方から突き上げ力が作用しても被覆部材の変形や損傷を防止する車体保護用の被覆部材を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体の側面部下縁に沿って前後方向に設置され、上記下縁を囲んでこれを被覆する車体保護用の被覆部材において、
上記被覆部材の内部には、該被覆部材の下端部から該被覆部材内を幅方向に横切るように立ち上がり、上端が車体の側面部下縁または被覆部材自体の上部内面に僅少間隙をおいて近接対向し、上記被覆部材が下方から突き上げられたときに上端が上記側面部下縁または上記上部内面に当接して被覆部材の変形、損傷を防止する当てリブを設ける。
被覆部材が下方から突き上げられたときに、当てリブの上端が車体の側面部下縁または被覆部材の上部内面に直ちに当接し、当てリブが支えとなって被覆部材の変形や損傷を防ぐことができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車体保護用の被覆部材において、上記被覆部材は車両用ドアの下部を被覆する被覆部材であって、ドアの下部の車外面を覆う車外被覆部と、ドアの下縁を覆う断面ほぼU字形の下縁被覆部と、ドアの下部の車内面を覆う車内被覆部とで一連に形成され、上記車外被覆部および車内被覆部をそれぞれドアの下部に固定し、
フロントドアのドア前端と対応する上記被覆部材の前端には、上記下縁被覆部内に、該下縁被覆部内を幅方向に横切り上端が上記ドア前端の下縁と近接対向する上記当てリブを設ける。
ドアの下部を覆う被覆部材の前端に下方からの突き上げ力が作用すると、当てリブの上端がドアの下縁に直ちに当接し、これにより突き上げ力は当てリブを介してドアの下縁で受けられるから被覆部材のドアへの固定部に破損は生じない。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の車体保護用の被覆部材において、記被覆部材の前端は、上下幅が前端末へ向け上記下縁被覆部側へ拡大する形状に形成され、前端の下縁被覆部内に上記当てリブを設ける。
当てリブは、被覆部材の下縁被覆部とドアの下縁との間の上下の間隙が大きく、かつ車両走行時に雪が付着して凍結が生じやすい被覆部材の前端に設けて効果がある。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項2または3に記載の車体保護用の被覆部材において、上記被覆部材は、上記車外被覆部にドアの下縁を覆う延長部を形成した第1の部材と、上記車内被覆部にドアの下縁を覆い更に上記第1の部材の車外被覆部の上下中間位置まで延びる延長部を形成した第2の部材で構成し、上記第2の部材の延長部を上記第1の部材の内面に重ね合わせ結合し、
重ね合わされた上記第1および第2の部材の延長部のドアの下縁を覆う部分で上記下縁被覆部を形成し、上記下縁被覆部内に上記当てリブを設ける。
上下幅の大きい被覆部材においては、これを分割構造とすることで生産時の金型による成形が容易である。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項2ないし4に記載の車体保護用の被覆部材において、上記当てリブは上記被覆部材とは別部材で構成し、該当てリブを、前後方向に間隔をおいて配列する複数のリブ片と、これらリブ片を連結するとともに上記下縁被覆部内に嵌着される基板部とで一体に形成する。
当てリブは、被覆部材とは別に予め準備した当てリブの基板部を被覆部材の下縁被覆部内に嵌着することにより容易に取り付けられる。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項4に記載の車体保護用の被覆部材において、上記当てリブを、上記第2の部材の延長部内に、これを横切るように一体に形成する。
第2の部材は被覆部材全体に比べて小型かつ形状が単純であるから当てリブは容易に一体成形され得る。かつ板状の合成樹脂の被覆部材を金型成形するときその内面に当てリブを一体成形すると外面にヒケが生じて外観を損ねるが、第2の部材の延長部は第1の部材に覆われるので第2の部材のヒケは外観に現れない。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記被覆部材は車両用ドアの下部を被覆する被覆部材であって、ドアの下部の車外面から下縁および車内面にかけて覆う断面ほぼC字状に形成され、その車外側および車内側の部位がそれぞれドアの下部に固定され、フロントドアの前端と対応する上記被覆部材の前端内には、該被覆部材の底面部から、車外側の側面部とドア下部の車外面との間の間隙を幅方向に横切って上方へ起立し、上端が上記被覆部材の上部内面に僅少の間隙を置いて近接対向し、上記被覆部材の前端が下方から突き上げられたときに上記上端が上記上部内面に当接する当てリブを設け、
かつ上記被覆部材の上記上部内面には、上記当てリブの上端と対向する位置に、上記当てリブの上端が当接したときに上記上端の位置ずれを防ぐ受け部を設ける。
ドアの下部を覆う被覆部材の底面部が下方から突き上げられると、底面部から起立する当てリブの上端がこれと近接対向する被覆部材の上部内面に直ちに当接し、当てリブが支えとなって被覆部材のつぶれ変形を防ぐ。このとき、上部内面に当接した当てリブの上端の当接位置がずれると当てリブが傾き、当てリブによる支え効果が発揮されないおそれがあるが、当てリブの上端を上部内面の受け部が位置ずれなく受けるのでリブが傾くことなくリブによる支え効果が充分に発揮される。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項1に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記被覆部材は車体の側面部下縁に設置されたロッカーを被覆する被覆部材であって、上記被覆部材は上記ロッカーの車外面を覆う断面ほぼC字状に形成され、その上端および下端がロッカーの車外面に固定され、
上記被覆部材内には少なくともその前端に、該被覆部材の底面部から、車外側の側面部とロッカーの車外面との間の間隙を幅方向に横切って上方へ起立し、上端が上記被覆部材の上部内面に僅少の間隙を置いて近接対向し、上記被覆部材が下方から突き上げられたときに上記上端が上記上部内面に当接する当てリブを設け、
かつ上記被覆部材の上記上部内面には、上記当てリブの上端と対向する位置に、上記当てリブの上端が当接したときに上記上端の位置ずれを防ぐ受け部を設ける。
ロッカーを覆う被覆部材の底面部が下方から突き上げられると、底面部から起立する当てリブの上端がこれと近接対向する被覆部材の上部内面に直ちに当接し、当てリブが支えとなって底面部の上方への移動を抑えて被覆部材の変形、損傷を防ぐ。このとき、上部内面に当接した当てリブの上端の当接位置がずれると当てリブが傾き、当てリブによる支え効果が発揮されないおそれがあるが、当てリブの上端を上部内面の受け部が位置ずれなく受けるのでリブが傾くことなくリブによる支え効果が充分に発揮される。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項7または8に記載の車体保護用の被覆部材において、上記当てリブは、その車外側の縦縁を上記被覆部材の車外側の側面と間隙をおいて対向させる。
被覆部材の車外側の側面部と当りリブの車外側の縦縁を離間したので、上記側面部の車外面にヒケによる不具合が生じない。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項7または8に記載の車体保護用の被覆部材において、上記上部内面の内面に設ける受け部として、上記内面に当接した上記当てリブの上端を、その板厚方向に挟むように上記内面に一対の突起部を設ける。
一対の突起部により上部内面に当接した当てリブの上端を位置ずれなく好適に受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態のドア下部を覆う被覆部材を示すもので、図8のA−A線に沿う位置での取付状態の断面図である。
【図2】上記第1の実施形態の被覆部材の分解斜視図である。
【図3】本発明を適用した第2の実施形態のドア下部を覆う被覆部材を示すもので、図8のA−A線に沿う位置での取付状態の断面図である。
【図4】上記第2の実施形態の被覆部材の分解斜視図である。
【図5】本発明を適用した第3の実施形態のドア下部を覆う被覆部材を示すもので、図8のA−A線に沿う位置での取付状態の断面図である。
【図6】図5、図7のVI−VI線に沿う位置での断面図である。
【図7】本発明を適用した第4の実施形態のロッカーの車外面を覆う被覆部材を示すもので、取付状態の縦断面図である。
【図8】自動車のフロントドアの被覆部材を示す側面図である。
【図9】図1に対応して、従来のドア用の被覆部材の取付状態を示す縦断面図である。
【図10】図7に対応して、従来のロッカーの被覆部材の取付状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態を説明する。本実施形態は、図8に示した車両のフロントドア1の下部を被覆する被覆部材2に本発明を適用したものである。被覆部材2はフロントドア(以下、単にドアという)1の下縁を囲むように被覆して前後方向に取付けられ、被覆部材2の前端ではその上下幅が前方へ向け徐々に下方へ広がる形状としてある。
【0019】
図1、図2に示すように、ドア1は外板10および内板11からなる中空構造で、ドア1の下部は厚みが下方へ向けて狭くしてあり、ドア1の下縁12は外板10と内板11の下縁同士を重ね合わせて結合した結合フランジで構成してある。図1の6はロッカーである。
【0020】
被覆部材2は合成樹脂製で、車外側の車外被覆部20と、車外被覆部20の下端から車内側へ断面ほぼU字形に延出する下縁被覆部21と、下縁被覆部21の車内側の上端に薄肉のインテグラルヒンジ22を介して連結された縦板状の車内被覆部23とが一体に成形してある。なお、被覆部材2の前端末は、車外被覆部20の前端縁と下縁被覆部21の前端縁とをつなぐように形成した前端面25で閉じてある。
【0021】
車外被覆部20にはその内面側に、ブラケット部24が前後方向に所定の間隔をおいて複数設けてある。各ブラケット部24は、ドア1の外板10に沿う板体で、その上端および下端が車外被覆部20の内面に連結され、その上端と上下中間位置にそれぞれ、ドア1の外板10に向けてクリップ4,4が嵌合固定してある。
【0022】
下縁被覆部21はドア1の下縁12を下方から覆うようにしてあり、被覆部材2の前端では下縁被覆部21の底縁が前下がりに形成してあり、下縁被覆部21とドア1の下縁12との間に上下方向に間隙が設けてある。
【0023】
インテグラルヒンジ22を介して下縁被覆部21に連結された車内被覆部23は上下幅が車外被覆部20よりも低くしてあり、また車内被覆部23はインテグラルヒンジ22を中心に起倒可能である。車内側被覆部23の上下中間位置には前後方向に間隔をおいて、ほぼV字状に突出する係止爪26が形成してある。
【0024】
被覆部材2は車内被覆部23を倒して開いた状態で、各クリップ4をこれらに対応するドア1の外板10の各嵌合穴に嵌合係止せしめ、車内被覆部23を起して閉じて、各係止爪26をそれぞれドア1の内板11の各係止穴に嵌合係止せしめてドア1の下部を覆うように取り付けられる。
【0025】
被覆部材2をドア1に取付けるに先立ち、被覆部材2の前端の下縁被覆部21の内部には被覆部材2と別体の当てリブ3が設けてある。
当てリブ3は合成樹脂の一体成形品で、下縁被覆部21の内面に沿う断面ほぼU字形の基板30に、基板30内を横切る複数の縦板状のリブ片31が前後方向に間隔をおいて立設してある。各リブ片31の上端の高さ位置は水平に揃えてある。
【0026】
当てリブ3は被覆部材2の前端の下縁被覆部21内に上方から嵌合し、基板30を下縁被覆部21の内面に重ね合わせて両面テープで固着してある。
被覆部材2をドア1に取付けた状態で、各リブ片31の上端がドア1の前端の下縁12に下方から近接対向する。対向間隙は2〜3mm程度としてある。リブ片31とドア1の下縁12との間隙をこれ以上小さくしたり、あるいは両者を当接させると、車両の僅かな振動で両者間にガタ音を発生させるので好ましくない。
【0027】
本実施形態によれば、車両の雪道走行時に被覆部材2の前端の下面に付着して凍結した雪が路面の凸部に当って被覆部材2の前端に突き上げ力が作用しても、直ちに当てリブ3のリブ片31の上端がドア1の下縁12に当接し、これにより上記突き上げ力は各リブ片31を介してドア1の下縁12で受けられるから被覆部材2をドア1に固定したクリップ4や係止爪26に破損は生じず、また断面変形が防止される。また当てリブ3は、その基板部30を被覆部材2の下縁被覆部21内に嵌着することにより容易に取り付けることができる。
【0028】
当てリブは合成樹脂の被覆部材と一体に金型成形することも考えられるが、深さの深い断面U字形の被覆部材に一体成形するのは生産性がよくないし、また被覆部材の当てリブ形成部の表面側にヒケが生じたりなどして外観上好ましくない。別体の当てリブ3を用いる方が実用的である。
【0029】
次に、図3、図4に基づいて本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態は、ドア1の下部の車外面10を上下に広く被覆する大型の車外被覆部20Aを備えた被覆部材2Aに本発明を適用したものである。
被覆部材2Aは型成形時の生産性をよくするために車外被覆部20Aをなす第1の部材2Fと、車内被覆部23をなす第2の部材2Sとに分割してある。
【0030】
第1の部材2Fは、車外被覆部20Aとその下縁から車内側へ屈曲してドア1の下縁12の下方へ張り出す延長部27とで断面ほぼL字形をなす。なお第1の部材2Fの前端縁は前端面25により閉じてある。
第1の部材2Fには車外被覆部20Aの内面の上縁沿いに間隔をおいて複数のクリップ4が設けてある。
【0031】
第2の部材2Sは、ドア1の下部の内板11を覆う車内被覆部23Aの下縁に沿うインテグラルヒンジ22を介して、ドア1の下縁12を覆うとともに車外被覆部20Aの内面に沿って起立し、車外被覆部20Aの内面の上下中間位置まで延びる断面ほぼJ字形の延長部28とが一体に形成してある。
【0032】
車外被覆部20Aの内面に沿う第2の部材2Sの延長部28の縦板部281の内面には、前後方向に所定の間隔をおいて、車内側へ突出する複数のブラケット部24が設けてあり、各ブラケット部24にはクリップ4が設けてある。
【0033】
ドア1の下縁12を覆う延長部28の下端部280の前端内部には当てリブ3Aが設けてある。当てリブ3Aは下端部280の内部を横切る縦板状の複数のリブ片31からなり、複数のリブ片31が前後方向に間隔をおいて下端部280の内面に一体成形してある。各リブ片31の上端の高さ位置はほぼ水平に揃えてある。
【0034】
第2の部材2Sには車内被覆部23Aの内面に、その上端に沿って間隔をおいて複数の係止爪26が形成してある。
【0035】
第2の部材2Sは、その延長部28の下端部280を第1の部材2Fの延長部27の上に重ね合わせるとともに、両者を下方から貫通するクリップ4Aにより結合してあり、重合結合した延長部27と下端部280とでドア1の下縁12を覆う下縁被覆部21Aを構成している。
また第2の部材2Sは延長部28の縦板部281の上端を第1の部材2Fの車外被覆部20Aの内面の上下中間位置に当接せしめて車外被覆部20Aの内面に沿って立設した状態で図略のクリップにより車外被覆部20Aの内面に固定してある。このように、第1の部材2Fと第2の部材2Sとを組付けて構成した被覆部材2Aは、実質的に上記第1の実施形態の被覆部材2と同じ方法でドア1に取付けてある。
【0036】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果が得られ、車両の雪道走行時に被覆部材2Aの前端の下面に付着して凍結した雪が路面の凸部に当って被覆部材2Aの前端に突き上げ力が作用しても被覆部材2Aはそのクリップ4や係止爪26の破損や、断面変形が防止される。
【0037】
また本実施形態では、第2の部材2Sは比較的小型で形状も単純であるから当てリブを生産性よく一体成形することができる。また一体成形により、第2の部材2Sの表面にヒケが生じても第1の部材2Fで覆い隠されるので、被覆部材2Aの見栄えは損なわれない。
【0038】
なお第1の実施形態と同様に、別体からなる当てリブ3を第2の部材2Sの延長部28内に嵌着してもよい。しかし分割構造とされた被覆部材2Aでは、当てリブを第2の部材2Sの延長部28の内部に一体に成形することで構造簡素にできる。
【0039】
次に、図5、図6に基づいて本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態は、ドア1の下部をその車外面10から下縁12および車内面11にかけて覆う断面ほぼ角形C字状の被覆部材2Bに本発明を適用したものである。
被覆部材2Bは、上下寸法が小さく、モール状で、ドア1の車外面10から下縁12にかけて覆う車外面部20Bと、車内面11を覆う車内面部23Bとが一体に成形してある。
【0040】
車外面部20Bは、ほぼ垂直な壁面をなす側面部201と、該側面部201の上縁から車内側へ向けてほぼ直角に屈曲してほぼ水平に延出する上面部202、および上記側面部201の下縁から車内側へ向けてほぼ直角に屈曲してほぼ水平に延出する底面部203とからなる。
【0041】
被覆部材2Bの車外面部20Bには、その内面側にドア1の外板10に沿う板体のブラケット部24が設けてある。ブラケット部24は、上端および下端が上面部202および底面部203の内面に連結され、上下中間位置にはドア1の外板10に向けてクリップ4が嵌合固定してある。
【0042】
被覆部材2Bは、上面部202に比べて底面部203の車内側への延出量が大きく、底面部203の車内側の端部は車内側へ斜め上方に向けて屈曲し、端縁には薄肉のインテグラルヒンジ22を介して連結された車内面部23Bが成形してある。車内面部23Bには上下中間位置にほぼV字状の係止爪26が突設してある。
【0043】
被覆部材2Bは車内面部23Bを倒して開いた状態で、クリップ4をドア1の外板10の各嵌合穴に嵌合係止せしめ、車内面部23Bを起して閉じ、その内面の係止爪26をドア1の内板11の各係止穴に嵌合係止せしめてドア1の下部を覆うように取り付けられる。
【0044】
被覆部材2Bは、上記被覆部材2,2Aと同様に、前端の上下幅が下方へ広くしてあり、被覆部材2Bの前端には車外面部20Bの内部に、下方からの突き上げに対して損傷を防ぐ当てリブ3Bが設けてある。図略ではあるが、当てリブ3Bは、前後方向に所定の間隔をおいて複数設けてある。
【0045】
当てリブ3Bは、底面部203の水平部から起立する縦板状で、車外面部20Bの内部をその幅方向に横切るように立設してある。当てリブ3Bの上端は僅少な間隙をおいて上面部202の内面に近接対向せしめてある。また当てリブ3Bの車外側の縦縁は側面部201の内面沿いに位置し、僅少な間隙をおいて上記側面部201の内面と対向せしめてある。なお、当てリブ3Bの板厚は被覆部材2Bの側面部201、上面部202および底面部203の板厚よりも若干薄い約2mmとしてある。また当てリブ3Bの上端と上面部202の内面との間隙、および当てリブ3Bの車外側の縦縁と側面部201の内面との間隙は約2mmに設定してある。
【0046】
上記上面部202の内面には、当てリブ3Bの上端と対向する位置に、下からの突き上げにより当てリブ3Bの上端が上面部202に当接したときに、当てリブの3Bの上端を受け、該上端の位置ずれを防ぐ受け部35が設けてある。受け部35には、上面部202の内面に当接した当てリブ31の上端を前後に挟むように、前後に間隔をおいて上面部202の内面から下方へ突出する一対の突起部351,351が形成してある。
【0047】
両突起部351,351の間隔は当てリブ3Bの板厚よりも若干広い寸法(2mm以上)に設定してある。両突起部351,351は、前後方向に沿う断面形状をほぼ半円形に形成し(図6)、下方への突出量が約1〜2mmに設定してある(図6は両突起部351,351を強調して表す)。また両突起部351,351は幅方向にある程度の長さを有する断面山形に形成してあり、上記幅方向に沿って約が5mm程度の長さに形成してある。
【0048】
本実施形態では、リブ3Bはその上端および車外側の縦縁を、被覆部材2Bの上面部202および車外側の側面部201から切り離し、下方からの突き上げによりリブ3Bの上端を上面部202に当接せしめる当てリブとしたので、被覆部材2Bの車外側の側面部201および上面部202の外面にヒケが起こらず見栄えを損ねない。
【0049】
被覆部材2Bの上面部202および側面部201から切り離した当てリブ3Bは、突き上げにより上端が上面部202に当接しても当接位置がずれてリブ3Bが傾くおそれがある。そこで、上面部202の内面に当接した当てリブ3Bの上端を受ける受け部35を設け、受け部35の一対の突起部351により上面部202に当接した当てリブ3Bの上端をその板厚方向に挟んで、リブ上端の前後の位置ずれを防止する。従って、当てリブ3Bに傾きが生じることがなく、当てリブ3Bは垂直姿勢で上面部202と底面部203との間で支えとなって底面部203の上方への移動を防ぎ、被覆部材2Bの損傷を防止できる。
【0050】
図7は車体保護用の被覆部材として、乗用車などの車体の側面部下縁に設置されたロッカー6の車外面をその前後方向全長に渡って被覆する被覆部材5に本発明を適用した第4の実施形態を示す。
先の実施形態に記載したワゴン車等と異なり、乗用車ではドア1の下縁よりもロッカー6が低い位置に設置されている。ロッカー6は外板61を補強する外板補強板62と内板63とで閉断面をなし、上記外板補強板62の下半部を被覆部材5で被覆する。被覆部材5はドア1の下縁に沿いモール状に延びている。
【0051】
合成樹脂製の被覆部材5は、ロッカー6よりも車外側の位置で、ドア1の外板の下縁に沿って外板とほぼ面一の垂直面をなす側面部50と、該側面部50の上縁から屈曲してロッカー6側へほぼ水平に延びる上面部51、および上記側面部51の下縁から屈曲してロッカー6側へほぼ水平に延びる底面部52とからなる。
【0052】
被覆部材5はロッカー6の車外面の下半部を被覆するように取付けられる。上記上面部51の車内側の端末部53は上方に向かって屈曲してロッカー6の外板61の下端を覆い、端末部53の内側には上記外板61の下端に沿うブラケット部531が形成してあり、これにクリップ4aが嵌合固定してある。なおブラケット部531およびクリップ4aは前後方向に間隔をおいて複数設けてある。
【0053】
ロッカー6の底面よりも低位となる被覆部材5の底面部52の車内側の端縁には、薄肉のインテグラルヒンジ56を介して起倒可能に設けられ、ロッカー6の底面に向かって延びる端末部54が一体に成形してある。端末部54にはロッカー6の底面に重ねる平板部を有し、該平板部にクリップ4bが設けてあり、クリップ4aと同様に前後方向に間隔をおいて複数設けてある。
【0054】
被覆部材5は底面部52の端末部54を倒して開いた状態で、上面部51の端末部53のクリップ4aをこれに対応するロッカー6の外板61の嵌合穴に嵌合係止せしめるとともに、端末部54を起して閉じて、端末部54のクリップ4bをロッカー6の外板補強板62の底面の嵌合穴に嵌合係止せしめて取り付けられる。
【0055】
被覆部材5には、車両のホイールハウスに近い前端内部に、上記第3の実施形態と同様に、下方からの突き上げに対して被覆部材5の変形や損傷を防ぐ当てリブ3Bが設けてある。なお当てリブ3Bは、被覆部材5の前端内部に、前後方向に所定の間隔をおいて複数設けてある。
【0056】
当てリブ3Bは、底面部52の水平部から起立する縦板状で、被覆部材5の内部をその幅方向に横切るように立設してある。当てリブ3Bの上端は僅少な間隙をおいて上面部51の内面に近接対向せしめ、当てリブ3の車外側の縦縁は側面部50の内面に沿い、これと僅少な間隙をおいて対向せしめてある。
なお、当てリブ3Bの板厚は被覆部材5の側面部50、上面部51および底面部52の板厚よりも若干薄い約2mmとしてある。また当てリブ3Bの上端と上面部51の内面との間隙、および当てリブ3Bの縦縁と側面部50の内面との間隙は約2mmに設定してある。
【0057】
当てリブ3Bの上端に対応して、上記上面部51の内面には、第3の実施形態と同様、当てリブ3Bの上端が上面部202に当接したときに当てリブの3Bの上端を受け、その位置ずれを防ぐ受け部35が設けてある。受け部35の基本構造は第3の実施形態と同じで、上面部51の内面に当てリブ31の上端を前後に挟むように、前後に間隔をおいて一対の突起部351,351が形成してある。
【0058】
本実施形態によれば、第3の実施形態と同様な作用効果が得られ、ロッカー6を被覆する被覆部材5に下方からの突き上げ力が作用しても当てリブ3Bの支えにより被覆部材5の変形や損傷を確実に防ぐことができる。また当てリブ3Bを設けたことにより被覆部材5の外観を損ねることもない。尚、本実施形態では当てリブ3Bを被覆部材5の前端内部に設けたが、被覆部材5にはその前端内部とともに後端内部にも当てリブ3Bを設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0059】
1 ドア
10 外板(車外面)
11 内板
12 下縁
2,2A,2B 車両用ドアの下部を被覆する被覆部材
2F 第1の部材
2S 第2の部材
20,20A 車外被覆部
20B 車外面部
201 側面部
202 上面部(上部)
203 底面部
21,21A 下縁被覆部
23,23A 車内被覆部
23B 車内面部
27,28 延長部
3,3A,3B 当てリブ
30 基板部
31 リブ片
35 受け部
351 突起部
5 ロッカーを被覆する被覆部材
50 側面部
51 上面部(上部)
52 底面部
53,54 端末部(上端、下端)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面部下縁に沿って前後方向に設置され、上記下縁を囲んでこれを被覆する車体保護用の被覆部材において、
上記被覆部材の内部には、該被覆部材の下端部から該被覆部材内を幅方向に横切るように立ち上がり、上端が車体の側面部下縁または被覆部材自体の上部内面に僅少間隙をおいて近接対向し、上記被覆部材が下方から突き上げられたときに上端が上記側面部下縁または上記上部内面に当接して被覆部材の変形、損傷を防止する当てリブを設けたことを特徴とする車体保護用の被覆部材。
【請求項2】
請求項1に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記被覆部材は車両用ドアの下部を被覆する被覆部材であって、ドアの下部の車外面を覆う車外被覆部と、ドアの下縁を覆う断面ほぼU字形の下縁被覆部と、ドアの下部の車内面を覆う車内被覆部とで一連に形成され、上記車外被覆部および車内被覆部をそれぞれドアの下部に固定し、
フロントドアのドア前端と対応する上記被覆部材の前端には、上記下縁被覆部内に、該下縁被覆部内を幅方向に横切り上端が上記ドア前端の下縁と近接対向する上記当てリブを設けた車体保護用の被覆部材。
【請求項3】
請求項2に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記被覆部材の前端は、上下幅が前端末へ向け上記下縁被覆部側へ拡大する形状に形成され、前端の下縁被覆部内に上記当てリブを設けた車体の被覆部材。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記被覆部材は、上記車外被覆部にドアの下縁を覆う延長部を形成した第1の部材と、上記車内被覆部にドアの下縁を覆い更に上記第1の部材の車外被覆部の上下中間位置まで延びる延長部を形成した第2の部材で構成し、上記第2の部材の延長部を上記第1の部材の内面に重ね合わせ結合し、
重ね合わされた上記第1および第2の部材の延長部のドアの下縁を覆う部分で上記下縁被覆部を形成し、
上記下縁被覆部内に上記当てリブを設けた車体保護用の被覆部材。
【請求項5】
請求項2ないし4に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記当てリブは上記被覆部材とは別部材で構成し、該当てリブを、前後方向に間隔をおいて配列する複数のリブ片と、これらリブ片を連結するとともに上記下縁被覆部内に嵌着される基板部とで一体に形成した車体保護用の被覆部材。
【請求項6】
請求項4に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記当てリブを、上記第2の部材の延長部内に、これを横切るように一体に形成した車体保護用の被覆部材。
【請求項7】
請求項1に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記被覆部材は車両用ドアの下部を被覆する被覆部材であって、ドアの下部の車外面から下縁および車内面にかけて覆う断面ほぼC字状に形成され、その車外側および車内側の部位がそれぞれドアの下部に固定され、フロントドアの前端と対応する上記被覆部材の前端内には、該被覆部材の底面部から、車外側の側面部とドア下部の車外面との間の間隙を幅方向に横切って上方へ起立し、上端が上記被覆部材の上部内面に僅少の間隙を置いて近接対向し、上記被覆部材の前端が下方から突き上げられたときに上記上端が上記上部内面に当接する当てリブを設け、
かつ上記被覆部材の上記上部内面には、上記当てリブの上端と対向する位置に、上記当てリブの上端が当接したときに上記上端の位置ずれを防ぐ受け部を設けた車体保護用の被覆部材。
【請求項8】
請求項1に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記被覆部材は車体の側面部下縁に設置されたロッカーを被覆する被覆部材であって、上記被覆部材は上記ロッカーの車外面を覆う断面ほぼC字状に形成され、その上端および下端がロッカーの車外面に固定され、
上記被覆部材内には少なくともその前端に、該被覆部材の底面部から、車外側の側面部とロッカーの車外面との間の間隙を幅方向に横切って上方へ起立し、上端が上記被覆部材の上部内面に僅少の間隙を置いて近接対向し、上記被覆部材が下方から突き上げられたときに上記上端が上記上部内面に当接する当てリブを設け、
かつ上記被覆部材の上記上部内面には、上記当てリブの上端と対向する位置に、上記当てリブの上端が当接したときに上記上端の位置ずれを防ぐ受け部を設けた車体保護用の被覆部材。
【請求項9】
請求項7または8に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記当てリブは、その車外側の縦縁を上記被覆部材の車外側の側面と間隙をおいて対向させた車体保護用の被覆部材。
【請求項10】
請求項7または8に記載の車体保護用の被覆部材において、
上記上部内面に設ける受け部として、上記内面に当接した上記当てリブの上端を、その板厚方向に挟むように上記内面に一対の突起部を設けた車体保護用の被覆部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−83477(P2010−83477A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202527(P2009−202527)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】