車体側部構造
【課題】車体前方から作用した荷重をドア(ドアビーム)に効率よく伝える(分散させる)ことでサイドシルの軽減を図ることができる車体側部構造を提供する。
【解決手段】車体側部構造10は、前車体開口部22に前ヒンジ14を介して設けられた前ドア15と、前ドアに設けられるとともに前端が前ヒンジに結合された前ドアビーム52と、前ヒンジの車体前方側に設けられるとともに荷重を車体後方に伝えるインタラクション13とを備えている。また、前ヒンジは、車体11に設けられた前取付部37と、前取付部に回転自在に支持されるとともに前ドアビームに結合された前結合部38とを備えている。そして、前取付部はインタラクションから作用した荷重を受ける前受部42を有する。
【解決手段】車体側部構造10は、前車体開口部22に前ヒンジ14を介して設けられた前ドア15と、前ドアに設けられるとともに前端が前ヒンジに結合された前ドアビーム52と、前ヒンジの車体前方側に設けられるとともに荷重を車体後方に伝えるインタラクション13とを備えている。また、前ヒンジは、車体11に設けられた前取付部37と、前取付部に回転自在に支持されるとともに前ドアビームに結合された前結合部38とを備えている。そして、前取付部はインタラクションから作用した荷重を受ける前受部42を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体開口部の前部にヒンジを介してドアが開閉自在に設けられ、ドアの内部にドアビームが車体前後方向に向いて設けられた車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部構造のなかには、ドアの内部にドアビームが車両前後方向に沿って設けられ、ドアビームの前端がヒンジの近傍に設けられ、ヒンジの車体前方側(すなわち、車体前部)に補強材が設けられたものがある。
ヒンジの車体前方側(車体前部)に補強材を設けることで車体前部の剛性を高めることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−206244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車体側部構造は、ドアビームの前端がヒンジの近傍に設けられているため、ドアビームの前端がヒンジから離れている。
このため、車体前方からヒンジに作用した荷重を、ドアビームの前端を経てドアビームに効率よく伝える(分散させる)ことはできない。
【0005】
さらに、ヒンジの車体前方に設けられた補強材は、ドアビームに対して車幅方向にずれた状態で(オフセットされた状態で)ピラーに連結されている。そして、このピラーにヒンジを介してドア(ドアビーム)が設けられている。
このため、車体前方から補強材に作用した荷重はピラーを経てドアビームへ伝えられる。このように、荷重がピラーを経てドアビームに伝えられることで、荷重をドアに効率よく伝える(分散させる)ことは難しい。
【0006】
車体前方から作用した荷重をドアビームに効率よく分散することが難しいため、車体前方から作用した荷重を車体(特に、サイドシル)で支える必要がある。
よって、サイドシルの剛性を確保するために、サイドシルを補強部材で補強する必要があり、そのことがサイドシル(すなわち、車体)の重量を抑える妨げになっていた。
【0007】
本発明は、車体前方から作用した荷重をドア(ドアビーム)に効率よく伝える(分散させる)ことでサイドシルの軽減を図ることができる車体側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体に形成された車体開口部にヒンジを介して開閉自在に設けられたドアと、前記ドアの内部に車両前後方向に沿って設けられ、一端が前記ヒンジに結合されたドアビームと、前記ヒンジの車体前方側に設けられ、車体前方から作用した荷重を前記ヒンジを経て車体後方に伝える荷重伝達部材と、を備え、前記ヒンジは、前記車体に設けられた取付部と、前記取付部に回転自在に支持されるとともに、前記ドアビームに結合された結合部と、を備え、前記取付部は、前記車体に設けられた取付部本体と、前記取付部本体から前記荷重伝達部材の後部に沿って張り出され、前記荷重伝達部材から作用した荷重を受ける受部と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記荷重伝達部材は、前記ヒンジおよび前輪間に介在され、前記前輪から作用した荷重を前記受部に伝えるインタラクションであることを特徴とする。
【0010】
請求項3は、前記インタラクションは、前記ヒンジの車体前方に設けられた基部と、前記基部に連続して前記ヒンジより車幅方向内側に延びる延長部と、を有し、前記延長部の崩壊荷重が前記基部の崩壊荷重より小さく設定されたことを特徴とする。
【0011】
請求項4は、前記受部は、前記取付部本体の前端から車幅方向外側に張り出され、前記受部の車幅方向外側の端部に、前記インタラクションの基部が回動軸を介して回動可能に設けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項5は、前記ドアの車体後方側に後ヒンジを介して後ドアが開閉自在に設けられ、前記後ドアの内部に後ドアビームが車両前後方向に沿って設けられ、前記後ドアビームの一端が前記後ヒンジに結合され、前記ドアビームから前記後ヒンジに作用する荷重を、前記後ドアビームの一端を経て前記後ドアビームに伝えることを特徴とする。
【0013】
請求項6は、前記ドアビームの他端が前記ドアの後部にブラケットを介して結合され、前記ブラケットは、前記ドアビームの上下方向への移動を規制する規制部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項7は、前記ドアのうち前記ドアビームの他端近傍に、前記ドアを前記車体開口部に閉状態に保持するラッチおよびストライカの一方が設けられ、前記ラッチおよび前記ストライカの他方が前記車体開口部の後部に設けられ、前記ラッチが前記ストライカに係合可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、車体前方から荷重伝達部材に作用した荷重をヒンジの受部で受け、ヒンジを経て車体後方に伝えることができる。
このヒンジにドアビームの一端が結合されている。よって、車体前方から作用した荷重をヒンジを経てドアビームに効率よく伝えることができる。
【0016】
ここで、ドアビームはドアの内部に車両前後方向に沿って設けられている。よって、車体前方から作用した荷重をドアに効率よく伝えることができる。
このように、車体前方から作用した荷重をドアに効率よく分散することで、サイドシルに伝わる荷重を抑えることができる。
これにより、サイドシルの剛性を抑えることが可能になり、サイドシルの軽減を図ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、荷重伝達部材としてインタラクションをヒンジおよび前輪間に介在した。そして、前輪から作用した荷重をインタラクションを経て受部(ヒンジ)に伝えるようにした。
これにより、前輪から作用した荷重をインタラクションおよびヒンジを経てドアビーム(すなわち、ドア)に迅速に伝えることができる。
【0018】
加えて、前輪から作用した荷重でインタラクションを潰す(変形させる)ことで、前輪から作用した荷重を吸収することができる。
これにより、ドアビーム(ドア)やサイドシルに伝わる荷重を小さく抑えることが可能になり、サイドシルの軽減を一層良好に図ることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、インタラクションに基部と延長部とを備えることで、前輪から作用した荷重の受面(荷重受面)を広く確保することができる。
これにより、前輪から作用した荷重を荷重受面全域に分散させて、荷重を荷重受面で確実に受けることができる。
【0020】
また、延長部の崩壊荷重を基部の崩壊荷重より小さく設定した。よって、延長部に比して基部で大きな荷重を受けることができる。
ここで、基部をヒンジの車体前方に設け、延出部をヒンジより車幅方向内側に設けた。
【0021】
よって、前輪から作用した荷重のうち、比較的大きな荷重を基部を経てドアビーム(ドア)に伝え(分散し)、比較的小さな荷重を延長部を経て車体に伝える(分散する)ことができる。
このように、車体に分散する荷重を減らすことで、車体の剛性を必要以上に高める必要がなく、車体重量を抑えることができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、受部を取付部本体の前端から車幅方向外側に張り出した。そして、受部の車幅方向外側の端部にインタラクションの基部を回動軸を介して回動可能に設けた。
よって、インタラクションの延長部に荷重が作用した際に、インタラクションを回動軸を軸にして受部に向けて回動しようとする力が作用する。
【0023】
これにより、インタラクションを受部に押圧させて、インタラクションを受部で確実に支えることができる。
したがって、インタラクションに作用する荷重を受部(すなわち、ヒンジ)を経てドアビーム(ドア)に確実に伝える(分散する)ことができる。
【0024】
請求項5に係る発明では、ドアビームから後ヒンジに作用する荷重を、後ドアビームの一端を経て後ドアビームに伝えるようにした。
よって、車体前方から作用した荷重を、ドアビーム(ドア)および後ドアビーム(後ドア)の前後2枚のドアに伝えることができる。
これにより、車体前方から作用した荷重を前後2枚のドアに効率よく伝えて、車体に分散する荷重をさらに減らして、車体重量をさらに抑えることができる。
【0025】
請求項6に係る発明では、ドアビームの他端をドアの後部にブラケットを介して結合した。そして、ブラケットの規制部でドアビームの上下方向への移動を規制するようにした。よって、ドアビームに伝わった荷重をドアビームの軸方向に伝えることができる。
ここで、ドアビームなどの長尺部材は、曲げ方向の荷重に比して軸方向の荷重に対して変形し難い特性を有する。
これにより、ドアビームに伝わった荷重をドアビームで好適に支えて車体後方に確実に伝えることができる。
【0026】
請求項7に係る発明では、ドアのうちドアビームの他端近傍にラッチおよびストライカの一方を設け、ラッチおよびストライカの他方を車体開口部の後部に設けた。
よって、ドアビームに伝わった荷重をラッチおよびストライカを経て車体開口部の後部に伝えることができる。
ここで、車体開口部の後部はピラーに形成されている。よって、車体開口部の後部に伝えられた荷重をピラーで好適に支えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る車体側部構造を示す側面図である。
【図2】図1の2部拡大図である。
【図3】本発明に係る車体側部構造を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る車体側部構造の前部を示す分解斜視図である。
【図5】図2の5部拡大図である。
【図6】図5の6矢視図である。
【図7】図2の7部拡大図である。
【図8】図7の8矢視図である。
【図9】本発明に係る車体側部構造の中央部を示す分解斜視図である。
【図10】図2の10部拡大図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【図12】本発明に係る車体側部構造の前部に荷重を伝える例を説明する図である。
【図13】本発明に係る車体側部構造の中央部に荷重を伝える例を説明する図である。
【図14】本発明に係る車体側部構造の後部に荷重を伝える例を説明する図である。
【図15】本発明に係る車体側部構造に荷重を伝える例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0029】
実施例に係る車体側部構造10について説明する。
図1、2に示すように、車体側部構造10は、車体11と、車体11の前部11aに設けられた前輪12と、前輪12の車体後方に設けられた荷重伝達部材13と、荷重伝達部材13の車体後方に設けられた前ヒンジ(ヒンジ)14と、前ヒンジ14を介して開閉自在に設けられた前ドア(ドア)15と、前ドア15の車体後方に設けられた後ヒンジ16と、後ヒンジ16を介して開閉自在に設けられた後ドア17とを備えている。
【0030】
車体11は、前輪12の車体後方にフロントピラー21が設けられ、フロントピラー21の車体後方に前車体開口部(車体開口部)22が設けられ、前車体開口部22の車体後方にセンタピラー23が設けられ、センタピラー23の車体後方に後車体開口部24が設けられ、後車体開口部24の車体後方にリヤピラー25が設けられている。
【0031】
さらに、車体11は、フロントピラー21の下部、センタピラー23の下部およびリヤピラー25の下部にサイドシル18が設けられている。
サイドシル18は、前ドア15および後ドア17の下部に沿って車体前後方向に向けて延出されている。
【0032】
荷重伝達部材13は、前輪12の車体後方に配置されるとともに、前ヒンジ14の車体前方側に設けられることで、前ヒンジ14および前輪12間に介在されたインタラクションである。
以下、荷重伝達部材13をインタラクション13として説明する。
【0033】
インタラクション13は、フロントピラー21および前ヒンジ14に設けられている。
図3、図4に示すように、インタラクション13は、前ヒンジ14の車体前方に設けられた基部31と、基部31に連続して前ヒンジ14より車幅方向内側に延びる延長部32と、基部31の車幅方向外側後端31aに設けられた支持部33とを有している。
【0034】
支持部33が一対の回動ピン(回動軸)34を介して前ヒンジ14に回動自在に設けられている。
また、延長部32がボルト35で車体11に取り付けられている。
支持部33を一対の回動ピン34で前ヒンジ14に回動自在に設けた理由については後述する。
【0035】
荷重伝達部材としてインタラクション13を前ヒンジ14および前輪12間に介在させ、前輪12から作用した荷重F1をインタラクション13を経て前ヒンジ14に伝えるようにした。
これにより、前輪12から作用した荷重F1をインタラクション13および前ヒンジ14を経て前ドア15に迅速に伝えることができる。
【0036】
さらに、インタラクション13に基部31と延長部32とを備えることで、前輪12から作用した荷重F1の受面(荷重受面)13aを広く確保することができる。
これにより、前輪12から作用した荷重F1を荷重受面13a全域に分散させて、荷重を荷重受面13aで確実に受けることができる。
【0037】
基部31および延長部32は、車体前方からの荷重F1に対して潰れる(変形する)ことにより、荷重F1の一部を吸収可能なハニカム構造に形成されている。
すなわち、前輪12から作用した荷重F1でインタラクション13を潰す(変形させる)ことで、前輪12から作用した荷重F1の一部を吸収することができる。
これにより、前ドア15や車体11(例えば、サイドシル18)に伝わる荷重を小さく抑えることが可能になり、サイドシル18の剛性を抑えることでサイドシル18の軽減を図ることができる。
【0038】
また、延長部32の崩壊荷重が基部31の崩壊荷重より小さく設定されている。
崩壊荷重とは、部材が塑性変形を生じる荷重、すなわち部材が保持できる最大荷重をいう。
基部31の崩壊荷重を延長部32の崩壊荷重より大きく設定することで、延長部32に比して基部31で大きな荷重を受ける(支える)ことができる。
【0039】
さらに、基部31を前ヒンジ14の車体前方に並列に設け、延出部32を前ヒンジ14の車体前方で、かつ前ヒンジ14の車幅方向内側に設けた。
よって、前輪12から作用した荷重F1のうち、比較的大きな荷重を基部31を経て前ヒンジ14に伝え(分散し)、比較的小さな荷重を延長部32を経て車体11に伝える(分散する)ことができる。
このように、車体11に分散する荷重を減らすことで、車体11の剛性を必要以上に高める必要がなく、車体11の重量を抑えることができる。
【0040】
さらに、基部31は、厚さ寸法T1が延長部32の厚さ寸法T2より大きく形成されている。
よって、前輪12から作用した荷重F1の一部をインタラクション13および前ヒンジ14を経て前ドア15に迅速に伝え(分散し)、基部31が潰れた(変形した)後、荷重F1の一部を延出部32に伝える(分散する)ことができる。
これにより、前輪12から作用した荷重F1の一部を、インタラクション13および前ヒンジ14を経て前ドア15に一層効率よく伝える(分散する)ことができる。
【0041】
図4〜図6に示すように、前ヒンジ14は、車体11のフロントピラー21(図2参照)に設けられた前取付部(取付部)37と、前取付部37に回転自在に支持された前結合部(結合部)38とを備えている。
【0042】
前取付部37は、フロントピラー21に設けられた前取付部本体(取付部本体)41と、前取付部本体41の前端41aからインタラクション13の後部13bに沿って張り出された前受部(受部)42とを有する。
この前取付部37は、前取付部本体41および前受部42で平面視略コ字状(図4、図6参照)に形成されている。
【0043】
前取付部本体41は、フロントピラー21に複数のボルト44で設けられたフロントピラー取付部45と、フロントピラー取付部45の後端から車幅方向外側に張り出された前ドア連結部46とを有する。
前ドア連結部46には、前結合部38が前支持ピン47を介して略水平方向に回動自在に連結されている。
【0044】
前受部42は、前取付部本体41の前端41aからインタラクション13の後部13bに沿って車幅方向外側に向けて張り出され、インタラクション13から作用した荷重を受ける部位である。
前受部42の前壁42aがインタラクション13の後部13bに接触されている。
【0045】
この前受部42の車幅方向外側の端部42bには、前述したように、インタラクション13の支持部33が一対の回動ピン34を介して回動可能に設けられている。
インタラクション13の延長部32に前輪12から荷重が作用した際に、インタラクション13を一対の回動ピン34を軸にして前受部42に向けて回動しようとする力が矢印の如く作用する。
【0046】
よって、インタラクション13を前受部42に押圧させて、インタラクション13を前受部42(前壁42a)で確実に支えることができる。
これにより、前輪12からインタラクション13に作用する荷重を、インタラクション13の支持部33を経て前受部42(すなわち、前取付部37)に確実に伝えることができる。
そして、前受部42に伝えられた荷重を前取付部37を経て前結合部38に伝えることができる。
【0047】
前結合部38は、前取付部本体41の前ドア連結部46に前支持ピン47を介して回動自在に連結されている。
この前結合部38は、複数のボルト49で前ドア15の前端15aに結合されている。
よって、前ドア15は、車体11(フロントピラー21)に前支持ピン47を軸にして開閉自在に支持されている。
【0048】
図1、図2に示すように、前ドア15は、前車体開口部22の前部22aに前ヒンジ14を介して開閉自在に設けられている。
前ドア15は、略矩形状に形成されるとともに前車体開口部22を開閉可能な前ドアパネル51と、前ドアパネル51の内部53に車両前後方向に沿って設けられた前ドアビーム(ドアビーム)52とを備えている。
【0049】
この前ドア15は、前ドアパネル51の前端51aおよび前ドアビーム52の前端(一端)52aが前結合部38に複数のボルト49で設けられている。
【0050】
図3に示すように、前ドアビーム52は、円筒状の前ビーム本体54と、前ビーム本体54の前端54aに設けられた前ブラケット55と、前ビーム本体54の後端(他端)54bに設けられた後ブラケット(ブラケット)56とを備えている。
【0051】
前ビーム本体54の前端54aおよび前ブラケット55で前ドアビーム52の前端52aが形成されている。
また、前ビーム本体54の後端54bおよび後ブラケット56で前ドアビーム52の後端52bが形成されている。
【0052】
図4〜図6に示すように、前ブラケット55は、平面視で略コ字状に折り曲げられたプレートであり、前結合部38に前ドアパネル51(前端51a)を介して設けられた前連結部61と、前連結部61の内外の端部から車体後方に向けて折り曲げられた一対の前折曲片62とを有する。
【0053】
一対の前折曲片62に前ビーム本体54の前端54aが挟持されている。
そして、前ブラケット55の前連結部61が前ドアパネル51の前端51aを介して前結合部38に複数のボルト49で設けられている。
よって、前ドアビーム52の前端52a(前ブラケット55)が前結合部38に設けられている。
【0054】
よって、前受部42(すなわち、前取付部37)を経て前結合部38に伝えられた荷重を、前結合部38および前ドアパネル51の前端51aを経て前ブラケット55に伝えることができる。
そして、前ブラケット55に伝わった荷重を前ビーム本体54を経て車体後方に伝えることができる。
【0055】
図7、図8に示すように、後ブラケット56は、前ビーム本体54の後端54bに設けられた接合部65と、接合部65から上方に張り出された上規制部(規制部)66と、接合部65から下方に張り出された下規制部(規制部)67とを有する。
上下の規制部66,67は、前ドアパネル51の後端51bに接合されている。
よって、前ビーム本体54は、後端54bが前ドアパネル51の後端51bに後ブラケット56を介して結合されている。
【0056】
ところで、前車体開口部22の後部22bは、傾斜角θ1の上り勾配で車体後方に向けて傾斜されている。
このため、前ドアビーム54に車体後方に向けて荷重が作用して前ドアビーム54の後端54bが後部22bに当接した場合に、前ドアビーム54の後端54bが後部22bに沿って上方に移動することが考えられる。
【0057】
そこで、前ドアビーム54の後端54bを前ドアパネル51の後端51bに後ブラケット56を介して結合するようにした。
よって、前ドアビーム54の後端54bが後部22bに沿って上方に移動することを後ブラケット56で規制することができる。これにより、前ドアビーム54に伝わった荷重を前ドアビーム54の軸方向に伝えることができる。
【0058】
ここで、前ドアビーム54などの長尺部材は、曲げ方向の荷重に比して軸方向の荷重に対して変形し難い特性を有する。
これにより、前ドアビーム54に伝わった荷重を前ドアビーム54で好適に支えて車体後方に確実に伝えることができる。
【0059】
図7〜図9に示すように、前ドア15(図1、図2参照)の車体後方に後ヒンジ16が設けられている。
後ヒンジ16は、前ヒンジ14と同様に形成された部材であって、車体11のセンタピラー23に設けられた後取付部71と、後取付部71に回転自在に支持された後結合部72とを備えている。
【0060】
後取付部71は、センタピラー23に設けられた後取付部本体74と、後取付部本体74から前ドアビーム52の後端52bに沿って張り出された後受部75とを有する。
この後取付部71は、後取付部本体74および後受部75で平面視略コ字状に形成されている。
【0061】
後取付部本体74は、センタピラー23に複数のボルト77で設けられたセンタピラー取付部81と、センタピラー取付部81の後端から車幅方向外側に張り出された後ドア連結部82とを有する。
後ドア連結部82には、後結合部72が後支持ピン83を介して略水平方向に回動自在に連結されている。
【0062】
後受部75は、後取付部本体74の前端74aから前ドアビーム52の後端52b(前ビーム本体54の後端54b)に沿って車幅方向外側に向けて張り出されている。
後受部75の前壁75aが前ドアビーム52の後端52bに近接して設けられている。
後受部75は、前ドアビーム52の後端52bが前壁75aに当接した状態で、前ドアビーム52から作用した荷重を受ける部位である。
【0063】
よって、前ドアビーム52から作用した荷重を前ドアビーム52の後端52bを経て後受部75(すなわち、後取付部71)に伝えることができる。
そして、後受部75に伝えられた荷重を後取付部71を経て後結合部72に伝えることができる。
【0064】
後結合部72は、後取付部本体74の後ドア連結部82に後支持ピン83を介して回動自在に連結されている。
この後結合部72は、複数のボルト84で後ドア17の前端17aに結合されている。
よって、後ドア17は、車体11(センタピラー23)に後支持ピン83を軸にして開閉自在に支持されている。
【0065】
図1、図2に示すように、後ドア17は、後車体開口部24の前部24aに後ヒンジ16を介して開閉自在に設けられている。
後ドア17は、略矩形状に形成されるとともに後車体開口部24を開閉可能な後ドアパネル86と、後ドアパネル86の内部89に車両前後方向に沿って設けられた後ドアビーム(ドアビーム)87と、後ドアビーム87の後端近傍(他端近傍)17bに設けられたラッチ91とを備えている。
【0066】
図3に示すように、後ドア17は、後ドアパネル86の前端86aおよび後ドアビーム87の前端(一端)87aが後結合部72に複数のボルト84で設けられている。
【0067】
後ドアビーム87は、円筒状の後ビーム本体96と、後ビーム本体96の前端96aに設けられた前ブラケット97と、後ビーム本体96の後端(他端)96bに設けられた後ブラケット(ブラケット)98とを備えている。
【0068】
後ビーム本体96の前端96aおよび前ブラケット97で後ドアビーム87の前端87aが形成されている。
また、後ビーム本体96の後端96bおよび後ブラケット98で後ドアビーム87の後端87bが形成されている。
【0069】
図7〜図9に示すように、前ブラケット97は、前ブラケット55と同様に、平面視で略コ字状に折り曲げられたプレートであり、後結合部72に後ドアパネル86(前端86a)を介して設けられた前連結部101と、前連結部101の内外の端部から車体後方に向けて折り曲げられた一対の前折曲片102とを有する。
【0070】
一対の前折曲片102に後ビーム本体96の前端96aが挟持されている。
そして、前ブラケット97の前連結部101が後ドアパネル86の前端86aを介して後結合部72に複数のボルト84で設けられている。
よって、後ドアビーム87の前端87a(前ブラケット97)が後結合部72に設けられている。
【0071】
よって、後受部75(すなわち、後取付部71)を経て後結合部72に伝えられた荷重を、後結合部72および後ドアパネル86の前端86aを経て前ブラケット97に伝えることができる。
そして、前ブラケット97に伝わった荷重を後ビーム本体96を経て車体後方に伝えることができる。
【0072】
図10、図11に示すように、後ブラケット98は、後ブラケット56と同様に、後ドアビーム87の後端87bに設けられた接合部105と、接合部105から上方に張り出された上規制部(規制部)106と、接合部105から下方に張り出された下規制部(規制部)107とを有する。
上下の規制部106,107は、後ドアパネル86の後端86bに接合されている。
【0073】
よって、後ドアビーム87は、後端87bが後ドアパネル86の後端86bに後ブラケット98を介して結合されている。
ここで、上下の規制部106,107が後ドアパネル86の後端86bに接合されることで、後ドアビーム87の上下方向への移動を後ブラケット98で規制することができる。
【0074】
後ドア17は、後ドアビーム87の後端近傍17b(詳しくは、後端87bの車体後方)にラッチ91が設けられている。
ラッチ91は、後ドアビーム87の後端87bの車体後方に配置され、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ストライカ92に係合可能な部材である。
ストライカ92は、後車体開口部24の後部24bに設けられている。
よって、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ラッチ91をストライカ92に係合することで、後ドア17を後車体開口部24に閉状態に保持することができる。
【0075】
ところで、後車体開口部24の後部24bは、傾斜角θ2の上り勾配で車体後方に向けて傾斜されている。
このため、後ドアビーム87に車体後方に向けて荷重が作用してストライカ92が後部24bに当接した場合に、後ドアビーム87の後端87bが後部24bに沿って上方に移動することが考えられる。
【0076】
そこで、後ドアビーム87の後端87bを後ドアパネル86の後端86bに後ブラケット98を介して結合するようにした。
よって、後ドアビーム87の後端87bが後部24bに沿って上方に移動することを後ブラケット98で規制することができる。これにより、後ドアビーム87に伝わった荷重を後ドアビーム87の軸方向に伝えることができる。
【0077】
ここで、後ドアビーム87などの長尺部材は、曲げ方向の荷重に比して軸方向の荷重に対して変形し難い特性を有する。
これにより、後ドアビーム87に伝わった荷重を後ドアビーム87で好適に支えて車体後方に確実に伝えることができる。
【0078】
また、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ラッチ91をストライカ92に係合することで、後ドアビーム87に伝わった荷重をラッチ91およびストライカ92を経て後車体開口部24の後部24bに伝えることができる。
ここで、後車体開口部24の後部24bはリヤピラー25に形成されている。よって、後車体開口部24の後部24bに伝えられた荷重をリヤピラー25で好適に支えることができる。
【0079】
つぎに、前輪12から作用した荷重F1を車体側部構造10で支える例を図12〜図14に基づいて説明する。
図12(a),(b)に示すように、車体11の前端部に車両前方から荷重が作用することにより、前輪12が車体後方に移動してインタラクション13に当接する。
前輪12からインタラクション13に荷重F1が作用する。
【0080】
インタラクション13に荷重F1が作用することで、インタラクション13の基部31および延長部32が潰れ(変形し)、荷重F1の一部をインタラクション13で吸収する。
荷重F1の残りの荷重F2が前ヒンジ14に伝えられ、前ヒンジ14に伝えられた荷重F2が前ドアビーム52の前端52aに伝えられる。
前ドアビーム52の前端52aに荷重F2が伝えられることで、前ドアビーム52が車体後方に矢印Aの如く移動するとともに、前端52aに伝えられた荷重F2が、前ドアビーム52を経て車体後方に伝えられる。
【0081】
図13(a),(b)に示すように、前ドアビーム52が車体後方に矢印Aの如く移動することで、前ドアビーム52の後端52bが後ヒンジ16の後受部75に当接する。
よって、前ドアビーム52を経て車体後方に伝えられた荷重F2が後ヒンジ16を経て後ドアビーム87の前端87aに伝えられる。
すなわち、前ドアビーム52は、後ドアビーム87に荷重を伝える荷重伝達部材の役割を果たす。
後ドアビーム87の前端87aに荷重F2が伝えられることで、後ドアビーム87が車体後方に矢印Bの如く移動するとともに、後ドアビーム87の前端87aに伝えられた荷重F2が、後ドアビーム87を経て車体後方に伝えられる。
【0082】
図14に示すように、後ドアビーム87が車体後方に矢印Bの如く移動することで、後ドアビーム87の後端87bとともにラッチ91が車体後方に矢印Bの如く移動する。
ラッチ91が車体後方に矢印Bの如く移動することで、後車体開口部24の後部24bに当接する。
【0083】
ここで、後車体開口部24の後部24bは、傾斜角θ2の上り勾配で車体後方に向けて傾斜されている。
そこで、後ドアビーム87の後端87bを後ドアパネル86の後端86bに後ブラケット98を介して結合した。
【0084】
よって、後ドアビーム87の後端87bが後部24bに沿って上方に移動することを後ブラケット98で規制することができる。これにより、後ドアビーム87に伝わった荷重を後ドアビーム87の軸方向に伝えることができる。
したがって、後ドアビーム87に伝わった荷重を後ドアビーム87で好適に支えて車体後方に確実に伝えることができる。
【0085】
また、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ラッチ91をストライカ92に係合することで、後ドアビーム87に伝わった荷重F2をラッチ91およびストライカ92を経て後車体開口部24の後部24bに伝えることができる。
ここで、後車体開口部24の後部24bはリヤピラー25に形成されている。よって、後車体開口部24の後部24bに伝えられた荷重F2をリヤピラー25で好適に支えることができる。
【0086】
つぎに、図12〜図14で説明した荷重伝達を図15でまとめて説明する。
図15に示すように、前輪12からインタラクション13に荷重F1が作用することで、インタラクション13が潰れ(変形し)、荷重F1の一部をインタラクション13で吸収する。
荷重F1の残りの荷重F2が前ヒンジ14を経て前ドアビーム52の前端52aに伝えられる。
【0087】
ここで、前ドアビーム52は前ドア15の内部53に車両前後方向に沿って設けられている。よって、前ヒンジ14から作用した荷重F2を前ドアビーム52(前ドア15)に効率よく伝えることができる。
これにより、前輪12から作用した荷重F1を前ドア15に効率よく分散することができ、サイドシル18に伝わる荷重F4を抑えることができる。
これにより、サイドシル18の剛性を抑えることが可能になり、サイドシル18の軽減を図ることができる。
【0088】
そして、前ドアビーム52に伝えられた荷重F2は、後ヒンジ16を経て後ドアビーム87(後ドア17)に伝えられる。
このように、前輪12から作用した荷重F1を前後2枚のドア15,17に効率よく伝えることで、後ドアビーム87(後ドア17)に伝わった荷重F2をラッチ91およびストライカ92を経て後車体開口部24の後部24bに伝えることができる。
よって、後車体開口部24の後部24bに伝えられた荷重F2をリヤピラー25で好適に支えることができる。
これにより、前輪12から作用した荷重F1のうち、比較的大きな荷重を前後2枚のドア15,17に伝えることができる。
したがって、車体11(特に、サイドシル18)に分散する荷重を減らして、車体重量を抑えることができる。
【0089】
なお、本発明に係る車体側部構造10は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、後ドア17にラッチ91を設け、後車体開口部24にストライカ92を設けた例について説明したが、これに限らないで、後ドア17にストライカ92を設け、後車体開口部24にラッチ91を設けることも可能である。
さらに、ラッチ91およびストライカ92の一方を前ドア15に設け、ラッチ91およびストライカ92の他方を前車体開口部22に設けることも可能である。
【0090】
また、前記実施例で示した車体11、インタラクション13、前ヒンジ14、前ドア15、後ヒンジ16、後ドア17、前車体開口部22、後車体開口部24、基部31、延長部32、回動ピン34、前取付部37、前結合部38、前取付部本体41、前受部42、前ドアビーム52、内部53,89、後ブラケット56,98、上規制部66,106、下規制部67,107、後ドアビーム87、ラッチ91およびストライカ92などの形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、車体開口部の前部にヒンジを介してドアが設けられ、ドアの内部にドアビームが車体前後方向に向いて設けられた車体側部構造を備えた車両への適用に好適である。
【符号の説明】
【0092】
10…車体側部構造、11…車体、13…インタラクション(荷重伝達部材)、13b…インタラクションの後部、14…前ヒンジ(ヒンジ)、15…前ドア(ドア)、16…後ヒンジ、17…後ドア、17b…後端近傍(他端近傍)、22…前車体開口部(車体開口部)、22a…前車体開口部の前部、24…後車体開口部、24b…後車体開口部の後部、31…基部、32…延長部、34…回動ピン(回動軸)、37…前取付部(取付部)、38…前結合部(結合部)、41…前取付部本体(取付部本体)、41a…前取付部本体の前端、42…前受部(受部)、52…前ドアビーム(ドアビーム、荷重伝達部材)、52a,87a…前端(一端)、53,89…内部、54b,96b…後端(他端)、56,98…後ブラケット(ブラケット)、66,106…上規制部(規制部)、67,107…下規制部(規制部)、87…後ドアビーム(ドアビーム)、91…ラッチ、92…ストライカ、F1…前輪から作用した荷重、F2…インタラクションから作用した荷重。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体開口部の前部にヒンジを介してドアが開閉自在に設けられ、ドアの内部にドアビームが車体前後方向に向いて設けられた車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部構造のなかには、ドアの内部にドアビームが車両前後方向に沿って設けられ、ドアビームの前端がヒンジの近傍に設けられ、ヒンジの車体前方側(すなわち、車体前部)に補強材が設けられたものがある。
ヒンジの車体前方側(車体前部)に補強材を設けることで車体前部の剛性を高めることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−206244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車体側部構造は、ドアビームの前端がヒンジの近傍に設けられているため、ドアビームの前端がヒンジから離れている。
このため、車体前方からヒンジに作用した荷重を、ドアビームの前端を経てドアビームに効率よく伝える(分散させる)ことはできない。
【0005】
さらに、ヒンジの車体前方に設けられた補強材は、ドアビームに対して車幅方向にずれた状態で(オフセットされた状態で)ピラーに連結されている。そして、このピラーにヒンジを介してドア(ドアビーム)が設けられている。
このため、車体前方から補強材に作用した荷重はピラーを経てドアビームへ伝えられる。このように、荷重がピラーを経てドアビームに伝えられることで、荷重をドアに効率よく伝える(分散させる)ことは難しい。
【0006】
車体前方から作用した荷重をドアビームに効率よく分散することが難しいため、車体前方から作用した荷重を車体(特に、サイドシル)で支える必要がある。
よって、サイドシルの剛性を確保するために、サイドシルを補強部材で補強する必要があり、そのことがサイドシル(すなわち、車体)の重量を抑える妨げになっていた。
【0007】
本発明は、車体前方から作用した荷重をドア(ドアビーム)に効率よく伝える(分散させる)ことでサイドシルの軽減を図ることができる車体側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体に形成された車体開口部にヒンジを介して開閉自在に設けられたドアと、前記ドアの内部に車両前後方向に沿って設けられ、一端が前記ヒンジに結合されたドアビームと、前記ヒンジの車体前方側に設けられ、車体前方から作用した荷重を前記ヒンジを経て車体後方に伝える荷重伝達部材と、を備え、前記ヒンジは、前記車体に設けられた取付部と、前記取付部に回転自在に支持されるとともに、前記ドアビームに結合された結合部と、を備え、前記取付部は、前記車体に設けられた取付部本体と、前記取付部本体から前記荷重伝達部材の後部に沿って張り出され、前記荷重伝達部材から作用した荷重を受ける受部と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記荷重伝達部材は、前記ヒンジおよび前輪間に介在され、前記前輪から作用した荷重を前記受部に伝えるインタラクションであることを特徴とする。
【0010】
請求項3は、前記インタラクションは、前記ヒンジの車体前方に設けられた基部と、前記基部に連続して前記ヒンジより車幅方向内側に延びる延長部と、を有し、前記延長部の崩壊荷重が前記基部の崩壊荷重より小さく設定されたことを特徴とする。
【0011】
請求項4は、前記受部は、前記取付部本体の前端から車幅方向外側に張り出され、前記受部の車幅方向外側の端部に、前記インタラクションの基部が回動軸を介して回動可能に設けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項5は、前記ドアの車体後方側に後ヒンジを介して後ドアが開閉自在に設けられ、前記後ドアの内部に後ドアビームが車両前後方向に沿って設けられ、前記後ドアビームの一端が前記後ヒンジに結合され、前記ドアビームから前記後ヒンジに作用する荷重を、前記後ドアビームの一端を経て前記後ドアビームに伝えることを特徴とする。
【0013】
請求項6は、前記ドアビームの他端が前記ドアの後部にブラケットを介して結合され、前記ブラケットは、前記ドアビームの上下方向への移動を規制する規制部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項7は、前記ドアのうち前記ドアビームの他端近傍に、前記ドアを前記車体開口部に閉状態に保持するラッチおよびストライカの一方が設けられ、前記ラッチおよび前記ストライカの他方が前記車体開口部の後部に設けられ、前記ラッチが前記ストライカに係合可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、車体前方から荷重伝達部材に作用した荷重をヒンジの受部で受け、ヒンジを経て車体後方に伝えることができる。
このヒンジにドアビームの一端が結合されている。よって、車体前方から作用した荷重をヒンジを経てドアビームに効率よく伝えることができる。
【0016】
ここで、ドアビームはドアの内部に車両前後方向に沿って設けられている。よって、車体前方から作用した荷重をドアに効率よく伝えることができる。
このように、車体前方から作用した荷重をドアに効率よく分散することで、サイドシルに伝わる荷重を抑えることができる。
これにより、サイドシルの剛性を抑えることが可能になり、サイドシルの軽減を図ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、荷重伝達部材としてインタラクションをヒンジおよび前輪間に介在した。そして、前輪から作用した荷重をインタラクションを経て受部(ヒンジ)に伝えるようにした。
これにより、前輪から作用した荷重をインタラクションおよびヒンジを経てドアビーム(すなわち、ドア)に迅速に伝えることができる。
【0018】
加えて、前輪から作用した荷重でインタラクションを潰す(変形させる)ことで、前輪から作用した荷重を吸収することができる。
これにより、ドアビーム(ドア)やサイドシルに伝わる荷重を小さく抑えることが可能になり、サイドシルの軽減を一層良好に図ることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、インタラクションに基部と延長部とを備えることで、前輪から作用した荷重の受面(荷重受面)を広く確保することができる。
これにより、前輪から作用した荷重を荷重受面全域に分散させて、荷重を荷重受面で確実に受けることができる。
【0020】
また、延長部の崩壊荷重を基部の崩壊荷重より小さく設定した。よって、延長部に比して基部で大きな荷重を受けることができる。
ここで、基部をヒンジの車体前方に設け、延出部をヒンジより車幅方向内側に設けた。
【0021】
よって、前輪から作用した荷重のうち、比較的大きな荷重を基部を経てドアビーム(ドア)に伝え(分散し)、比較的小さな荷重を延長部を経て車体に伝える(分散する)ことができる。
このように、車体に分散する荷重を減らすことで、車体の剛性を必要以上に高める必要がなく、車体重量を抑えることができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、受部を取付部本体の前端から車幅方向外側に張り出した。そして、受部の車幅方向外側の端部にインタラクションの基部を回動軸を介して回動可能に設けた。
よって、インタラクションの延長部に荷重が作用した際に、インタラクションを回動軸を軸にして受部に向けて回動しようとする力が作用する。
【0023】
これにより、インタラクションを受部に押圧させて、インタラクションを受部で確実に支えることができる。
したがって、インタラクションに作用する荷重を受部(すなわち、ヒンジ)を経てドアビーム(ドア)に確実に伝える(分散する)ことができる。
【0024】
請求項5に係る発明では、ドアビームから後ヒンジに作用する荷重を、後ドアビームの一端を経て後ドアビームに伝えるようにした。
よって、車体前方から作用した荷重を、ドアビーム(ドア)および後ドアビーム(後ドア)の前後2枚のドアに伝えることができる。
これにより、車体前方から作用した荷重を前後2枚のドアに効率よく伝えて、車体に分散する荷重をさらに減らして、車体重量をさらに抑えることができる。
【0025】
請求項6に係る発明では、ドアビームの他端をドアの後部にブラケットを介して結合した。そして、ブラケットの規制部でドアビームの上下方向への移動を規制するようにした。よって、ドアビームに伝わった荷重をドアビームの軸方向に伝えることができる。
ここで、ドアビームなどの長尺部材は、曲げ方向の荷重に比して軸方向の荷重に対して変形し難い特性を有する。
これにより、ドアビームに伝わった荷重をドアビームで好適に支えて車体後方に確実に伝えることができる。
【0026】
請求項7に係る発明では、ドアのうちドアビームの他端近傍にラッチおよびストライカの一方を設け、ラッチおよびストライカの他方を車体開口部の後部に設けた。
よって、ドアビームに伝わった荷重をラッチおよびストライカを経て車体開口部の後部に伝えることができる。
ここで、車体開口部の後部はピラーに形成されている。よって、車体開口部の後部に伝えられた荷重をピラーで好適に支えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る車体側部構造を示す側面図である。
【図2】図1の2部拡大図である。
【図3】本発明に係る車体側部構造を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る車体側部構造の前部を示す分解斜視図である。
【図5】図2の5部拡大図である。
【図6】図5の6矢視図である。
【図7】図2の7部拡大図である。
【図8】図7の8矢視図である。
【図9】本発明に係る車体側部構造の中央部を示す分解斜視図である。
【図10】図2の10部拡大図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【図12】本発明に係る車体側部構造の前部に荷重を伝える例を説明する図である。
【図13】本発明に係る車体側部構造の中央部に荷重を伝える例を説明する図である。
【図14】本発明に係る車体側部構造の後部に荷重を伝える例を説明する図である。
【図15】本発明に係る車体側部構造に荷重を伝える例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0029】
実施例に係る車体側部構造10について説明する。
図1、2に示すように、車体側部構造10は、車体11と、車体11の前部11aに設けられた前輪12と、前輪12の車体後方に設けられた荷重伝達部材13と、荷重伝達部材13の車体後方に設けられた前ヒンジ(ヒンジ)14と、前ヒンジ14を介して開閉自在に設けられた前ドア(ドア)15と、前ドア15の車体後方に設けられた後ヒンジ16と、後ヒンジ16を介して開閉自在に設けられた後ドア17とを備えている。
【0030】
車体11は、前輪12の車体後方にフロントピラー21が設けられ、フロントピラー21の車体後方に前車体開口部(車体開口部)22が設けられ、前車体開口部22の車体後方にセンタピラー23が設けられ、センタピラー23の車体後方に後車体開口部24が設けられ、後車体開口部24の車体後方にリヤピラー25が設けられている。
【0031】
さらに、車体11は、フロントピラー21の下部、センタピラー23の下部およびリヤピラー25の下部にサイドシル18が設けられている。
サイドシル18は、前ドア15および後ドア17の下部に沿って車体前後方向に向けて延出されている。
【0032】
荷重伝達部材13は、前輪12の車体後方に配置されるとともに、前ヒンジ14の車体前方側に設けられることで、前ヒンジ14および前輪12間に介在されたインタラクションである。
以下、荷重伝達部材13をインタラクション13として説明する。
【0033】
インタラクション13は、フロントピラー21および前ヒンジ14に設けられている。
図3、図4に示すように、インタラクション13は、前ヒンジ14の車体前方に設けられた基部31と、基部31に連続して前ヒンジ14より車幅方向内側に延びる延長部32と、基部31の車幅方向外側後端31aに設けられた支持部33とを有している。
【0034】
支持部33が一対の回動ピン(回動軸)34を介して前ヒンジ14に回動自在に設けられている。
また、延長部32がボルト35で車体11に取り付けられている。
支持部33を一対の回動ピン34で前ヒンジ14に回動自在に設けた理由については後述する。
【0035】
荷重伝達部材としてインタラクション13を前ヒンジ14および前輪12間に介在させ、前輪12から作用した荷重F1をインタラクション13を経て前ヒンジ14に伝えるようにした。
これにより、前輪12から作用した荷重F1をインタラクション13および前ヒンジ14を経て前ドア15に迅速に伝えることができる。
【0036】
さらに、インタラクション13に基部31と延長部32とを備えることで、前輪12から作用した荷重F1の受面(荷重受面)13aを広く確保することができる。
これにより、前輪12から作用した荷重F1を荷重受面13a全域に分散させて、荷重を荷重受面13aで確実に受けることができる。
【0037】
基部31および延長部32は、車体前方からの荷重F1に対して潰れる(変形する)ことにより、荷重F1の一部を吸収可能なハニカム構造に形成されている。
すなわち、前輪12から作用した荷重F1でインタラクション13を潰す(変形させる)ことで、前輪12から作用した荷重F1の一部を吸収することができる。
これにより、前ドア15や車体11(例えば、サイドシル18)に伝わる荷重を小さく抑えることが可能になり、サイドシル18の剛性を抑えることでサイドシル18の軽減を図ることができる。
【0038】
また、延長部32の崩壊荷重が基部31の崩壊荷重より小さく設定されている。
崩壊荷重とは、部材が塑性変形を生じる荷重、すなわち部材が保持できる最大荷重をいう。
基部31の崩壊荷重を延長部32の崩壊荷重より大きく設定することで、延長部32に比して基部31で大きな荷重を受ける(支える)ことができる。
【0039】
さらに、基部31を前ヒンジ14の車体前方に並列に設け、延出部32を前ヒンジ14の車体前方で、かつ前ヒンジ14の車幅方向内側に設けた。
よって、前輪12から作用した荷重F1のうち、比較的大きな荷重を基部31を経て前ヒンジ14に伝え(分散し)、比較的小さな荷重を延長部32を経て車体11に伝える(分散する)ことができる。
このように、車体11に分散する荷重を減らすことで、車体11の剛性を必要以上に高める必要がなく、車体11の重量を抑えることができる。
【0040】
さらに、基部31は、厚さ寸法T1が延長部32の厚さ寸法T2より大きく形成されている。
よって、前輪12から作用した荷重F1の一部をインタラクション13および前ヒンジ14を経て前ドア15に迅速に伝え(分散し)、基部31が潰れた(変形した)後、荷重F1の一部を延出部32に伝える(分散する)ことができる。
これにより、前輪12から作用した荷重F1の一部を、インタラクション13および前ヒンジ14を経て前ドア15に一層効率よく伝える(分散する)ことができる。
【0041】
図4〜図6に示すように、前ヒンジ14は、車体11のフロントピラー21(図2参照)に設けられた前取付部(取付部)37と、前取付部37に回転自在に支持された前結合部(結合部)38とを備えている。
【0042】
前取付部37は、フロントピラー21に設けられた前取付部本体(取付部本体)41と、前取付部本体41の前端41aからインタラクション13の後部13bに沿って張り出された前受部(受部)42とを有する。
この前取付部37は、前取付部本体41および前受部42で平面視略コ字状(図4、図6参照)に形成されている。
【0043】
前取付部本体41は、フロントピラー21に複数のボルト44で設けられたフロントピラー取付部45と、フロントピラー取付部45の後端から車幅方向外側に張り出された前ドア連結部46とを有する。
前ドア連結部46には、前結合部38が前支持ピン47を介して略水平方向に回動自在に連結されている。
【0044】
前受部42は、前取付部本体41の前端41aからインタラクション13の後部13bに沿って車幅方向外側に向けて張り出され、インタラクション13から作用した荷重を受ける部位である。
前受部42の前壁42aがインタラクション13の後部13bに接触されている。
【0045】
この前受部42の車幅方向外側の端部42bには、前述したように、インタラクション13の支持部33が一対の回動ピン34を介して回動可能に設けられている。
インタラクション13の延長部32に前輪12から荷重が作用した際に、インタラクション13を一対の回動ピン34を軸にして前受部42に向けて回動しようとする力が矢印の如く作用する。
【0046】
よって、インタラクション13を前受部42に押圧させて、インタラクション13を前受部42(前壁42a)で確実に支えることができる。
これにより、前輪12からインタラクション13に作用する荷重を、インタラクション13の支持部33を経て前受部42(すなわち、前取付部37)に確実に伝えることができる。
そして、前受部42に伝えられた荷重を前取付部37を経て前結合部38に伝えることができる。
【0047】
前結合部38は、前取付部本体41の前ドア連結部46に前支持ピン47を介して回動自在に連結されている。
この前結合部38は、複数のボルト49で前ドア15の前端15aに結合されている。
よって、前ドア15は、車体11(フロントピラー21)に前支持ピン47を軸にして開閉自在に支持されている。
【0048】
図1、図2に示すように、前ドア15は、前車体開口部22の前部22aに前ヒンジ14を介して開閉自在に設けられている。
前ドア15は、略矩形状に形成されるとともに前車体開口部22を開閉可能な前ドアパネル51と、前ドアパネル51の内部53に車両前後方向に沿って設けられた前ドアビーム(ドアビーム)52とを備えている。
【0049】
この前ドア15は、前ドアパネル51の前端51aおよび前ドアビーム52の前端(一端)52aが前結合部38に複数のボルト49で設けられている。
【0050】
図3に示すように、前ドアビーム52は、円筒状の前ビーム本体54と、前ビーム本体54の前端54aに設けられた前ブラケット55と、前ビーム本体54の後端(他端)54bに設けられた後ブラケット(ブラケット)56とを備えている。
【0051】
前ビーム本体54の前端54aおよび前ブラケット55で前ドアビーム52の前端52aが形成されている。
また、前ビーム本体54の後端54bおよび後ブラケット56で前ドアビーム52の後端52bが形成されている。
【0052】
図4〜図6に示すように、前ブラケット55は、平面視で略コ字状に折り曲げられたプレートであり、前結合部38に前ドアパネル51(前端51a)を介して設けられた前連結部61と、前連結部61の内外の端部から車体後方に向けて折り曲げられた一対の前折曲片62とを有する。
【0053】
一対の前折曲片62に前ビーム本体54の前端54aが挟持されている。
そして、前ブラケット55の前連結部61が前ドアパネル51の前端51aを介して前結合部38に複数のボルト49で設けられている。
よって、前ドアビーム52の前端52a(前ブラケット55)が前結合部38に設けられている。
【0054】
よって、前受部42(すなわち、前取付部37)を経て前結合部38に伝えられた荷重を、前結合部38および前ドアパネル51の前端51aを経て前ブラケット55に伝えることができる。
そして、前ブラケット55に伝わった荷重を前ビーム本体54を経て車体後方に伝えることができる。
【0055】
図7、図8に示すように、後ブラケット56は、前ビーム本体54の後端54bに設けられた接合部65と、接合部65から上方に張り出された上規制部(規制部)66と、接合部65から下方に張り出された下規制部(規制部)67とを有する。
上下の規制部66,67は、前ドアパネル51の後端51bに接合されている。
よって、前ビーム本体54は、後端54bが前ドアパネル51の後端51bに後ブラケット56を介して結合されている。
【0056】
ところで、前車体開口部22の後部22bは、傾斜角θ1の上り勾配で車体後方に向けて傾斜されている。
このため、前ドアビーム54に車体後方に向けて荷重が作用して前ドアビーム54の後端54bが後部22bに当接した場合に、前ドアビーム54の後端54bが後部22bに沿って上方に移動することが考えられる。
【0057】
そこで、前ドアビーム54の後端54bを前ドアパネル51の後端51bに後ブラケット56を介して結合するようにした。
よって、前ドアビーム54の後端54bが後部22bに沿って上方に移動することを後ブラケット56で規制することができる。これにより、前ドアビーム54に伝わった荷重を前ドアビーム54の軸方向に伝えることができる。
【0058】
ここで、前ドアビーム54などの長尺部材は、曲げ方向の荷重に比して軸方向の荷重に対して変形し難い特性を有する。
これにより、前ドアビーム54に伝わった荷重を前ドアビーム54で好適に支えて車体後方に確実に伝えることができる。
【0059】
図7〜図9に示すように、前ドア15(図1、図2参照)の車体後方に後ヒンジ16が設けられている。
後ヒンジ16は、前ヒンジ14と同様に形成された部材であって、車体11のセンタピラー23に設けられた後取付部71と、後取付部71に回転自在に支持された後結合部72とを備えている。
【0060】
後取付部71は、センタピラー23に設けられた後取付部本体74と、後取付部本体74から前ドアビーム52の後端52bに沿って張り出された後受部75とを有する。
この後取付部71は、後取付部本体74および後受部75で平面視略コ字状に形成されている。
【0061】
後取付部本体74は、センタピラー23に複数のボルト77で設けられたセンタピラー取付部81と、センタピラー取付部81の後端から車幅方向外側に張り出された後ドア連結部82とを有する。
後ドア連結部82には、後結合部72が後支持ピン83を介して略水平方向に回動自在に連結されている。
【0062】
後受部75は、後取付部本体74の前端74aから前ドアビーム52の後端52b(前ビーム本体54の後端54b)に沿って車幅方向外側に向けて張り出されている。
後受部75の前壁75aが前ドアビーム52の後端52bに近接して設けられている。
後受部75は、前ドアビーム52の後端52bが前壁75aに当接した状態で、前ドアビーム52から作用した荷重を受ける部位である。
【0063】
よって、前ドアビーム52から作用した荷重を前ドアビーム52の後端52bを経て後受部75(すなわち、後取付部71)に伝えることができる。
そして、後受部75に伝えられた荷重を後取付部71を経て後結合部72に伝えることができる。
【0064】
後結合部72は、後取付部本体74の後ドア連結部82に後支持ピン83を介して回動自在に連結されている。
この後結合部72は、複数のボルト84で後ドア17の前端17aに結合されている。
よって、後ドア17は、車体11(センタピラー23)に後支持ピン83を軸にして開閉自在に支持されている。
【0065】
図1、図2に示すように、後ドア17は、後車体開口部24の前部24aに後ヒンジ16を介して開閉自在に設けられている。
後ドア17は、略矩形状に形成されるとともに後車体開口部24を開閉可能な後ドアパネル86と、後ドアパネル86の内部89に車両前後方向に沿って設けられた後ドアビーム(ドアビーム)87と、後ドアビーム87の後端近傍(他端近傍)17bに設けられたラッチ91とを備えている。
【0066】
図3に示すように、後ドア17は、後ドアパネル86の前端86aおよび後ドアビーム87の前端(一端)87aが後結合部72に複数のボルト84で設けられている。
【0067】
後ドアビーム87は、円筒状の後ビーム本体96と、後ビーム本体96の前端96aに設けられた前ブラケット97と、後ビーム本体96の後端(他端)96bに設けられた後ブラケット(ブラケット)98とを備えている。
【0068】
後ビーム本体96の前端96aおよび前ブラケット97で後ドアビーム87の前端87aが形成されている。
また、後ビーム本体96の後端96bおよび後ブラケット98で後ドアビーム87の後端87bが形成されている。
【0069】
図7〜図9に示すように、前ブラケット97は、前ブラケット55と同様に、平面視で略コ字状に折り曲げられたプレートであり、後結合部72に後ドアパネル86(前端86a)を介して設けられた前連結部101と、前連結部101の内外の端部から車体後方に向けて折り曲げられた一対の前折曲片102とを有する。
【0070】
一対の前折曲片102に後ビーム本体96の前端96aが挟持されている。
そして、前ブラケット97の前連結部101が後ドアパネル86の前端86aを介して後結合部72に複数のボルト84で設けられている。
よって、後ドアビーム87の前端87a(前ブラケット97)が後結合部72に設けられている。
【0071】
よって、後受部75(すなわち、後取付部71)を経て後結合部72に伝えられた荷重を、後結合部72および後ドアパネル86の前端86aを経て前ブラケット97に伝えることができる。
そして、前ブラケット97に伝わった荷重を後ビーム本体96を経て車体後方に伝えることができる。
【0072】
図10、図11に示すように、後ブラケット98は、後ブラケット56と同様に、後ドアビーム87の後端87bに設けられた接合部105と、接合部105から上方に張り出された上規制部(規制部)106と、接合部105から下方に張り出された下規制部(規制部)107とを有する。
上下の規制部106,107は、後ドアパネル86の後端86bに接合されている。
【0073】
よって、後ドアビーム87は、後端87bが後ドアパネル86の後端86bに後ブラケット98を介して結合されている。
ここで、上下の規制部106,107が後ドアパネル86の後端86bに接合されることで、後ドアビーム87の上下方向への移動を後ブラケット98で規制することができる。
【0074】
後ドア17は、後ドアビーム87の後端近傍17b(詳しくは、後端87bの車体後方)にラッチ91が設けられている。
ラッチ91は、後ドアビーム87の後端87bの車体後方に配置され、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ストライカ92に係合可能な部材である。
ストライカ92は、後車体開口部24の後部24bに設けられている。
よって、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ラッチ91をストライカ92に係合することで、後ドア17を後車体開口部24に閉状態に保持することができる。
【0075】
ところで、後車体開口部24の後部24bは、傾斜角θ2の上り勾配で車体後方に向けて傾斜されている。
このため、後ドアビーム87に車体後方に向けて荷重が作用してストライカ92が後部24bに当接した場合に、後ドアビーム87の後端87bが後部24bに沿って上方に移動することが考えられる。
【0076】
そこで、後ドアビーム87の後端87bを後ドアパネル86の後端86bに後ブラケット98を介して結合するようにした。
よって、後ドアビーム87の後端87bが後部24bに沿って上方に移動することを後ブラケット98で規制することができる。これにより、後ドアビーム87に伝わった荷重を後ドアビーム87の軸方向に伝えることができる。
【0077】
ここで、後ドアビーム87などの長尺部材は、曲げ方向の荷重に比して軸方向の荷重に対して変形し難い特性を有する。
これにより、後ドアビーム87に伝わった荷重を後ドアビーム87で好適に支えて車体後方に確実に伝えることができる。
【0078】
また、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ラッチ91をストライカ92に係合することで、後ドアビーム87に伝わった荷重をラッチ91およびストライカ92を経て後車体開口部24の後部24bに伝えることができる。
ここで、後車体開口部24の後部24bはリヤピラー25に形成されている。よって、後車体開口部24の後部24bに伝えられた荷重をリヤピラー25で好適に支えることができる。
【0079】
つぎに、前輪12から作用した荷重F1を車体側部構造10で支える例を図12〜図14に基づいて説明する。
図12(a),(b)に示すように、車体11の前端部に車両前方から荷重が作用することにより、前輪12が車体後方に移動してインタラクション13に当接する。
前輪12からインタラクション13に荷重F1が作用する。
【0080】
インタラクション13に荷重F1が作用することで、インタラクション13の基部31および延長部32が潰れ(変形し)、荷重F1の一部をインタラクション13で吸収する。
荷重F1の残りの荷重F2が前ヒンジ14に伝えられ、前ヒンジ14に伝えられた荷重F2が前ドアビーム52の前端52aに伝えられる。
前ドアビーム52の前端52aに荷重F2が伝えられることで、前ドアビーム52が車体後方に矢印Aの如く移動するとともに、前端52aに伝えられた荷重F2が、前ドアビーム52を経て車体後方に伝えられる。
【0081】
図13(a),(b)に示すように、前ドアビーム52が車体後方に矢印Aの如く移動することで、前ドアビーム52の後端52bが後ヒンジ16の後受部75に当接する。
よって、前ドアビーム52を経て車体後方に伝えられた荷重F2が後ヒンジ16を経て後ドアビーム87の前端87aに伝えられる。
すなわち、前ドアビーム52は、後ドアビーム87に荷重を伝える荷重伝達部材の役割を果たす。
後ドアビーム87の前端87aに荷重F2が伝えられることで、後ドアビーム87が車体後方に矢印Bの如く移動するとともに、後ドアビーム87の前端87aに伝えられた荷重F2が、後ドアビーム87を経て車体後方に伝えられる。
【0082】
図14に示すように、後ドアビーム87が車体後方に矢印Bの如く移動することで、後ドアビーム87の後端87bとともにラッチ91が車体後方に矢印Bの如く移動する。
ラッチ91が車体後方に矢印Bの如く移動することで、後車体開口部24の後部24bに当接する。
【0083】
ここで、後車体開口部24の後部24bは、傾斜角θ2の上り勾配で車体後方に向けて傾斜されている。
そこで、後ドアビーム87の後端87bを後ドアパネル86の後端86bに後ブラケット98を介して結合した。
【0084】
よって、後ドアビーム87の後端87bが後部24bに沿って上方に移動することを後ブラケット98で規制することができる。これにより、後ドアビーム87に伝わった荷重を後ドアビーム87の軸方向に伝えることができる。
したがって、後ドアビーム87に伝わった荷重を後ドアビーム87で好適に支えて車体後方に確実に伝えることができる。
【0085】
また、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ラッチ91をストライカ92に係合することで、後ドアビーム87に伝わった荷重F2をラッチ91およびストライカ92を経て後車体開口部24の後部24bに伝えることができる。
ここで、後車体開口部24の後部24bはリヤピラー25に形成されている。よって、後車体開口部24の後部24bに伝えられた荷重F2をリヤピラー25で好適に支えることができる。
【0086】
つぎに、図12〜図14で説明した荷重伝達を図15でまとめて説明する。
図15に示すように、前輪12からインタラクション13に荷重F1が作用することで、インタラクション13が潰れ(変形し)、荷重F1の一部をインタラクション13で吸収する。
荷重F1の残りの荷重F2が前ヒンジ14を経て前ドアビーム52の前端52aに伝えられる。
【0087】
ここで、前ドアビーム52は前ドア15の内部53に車両前後方向に沿って設けられている。よって、前ヒンジ14から作用した荷重F2を前ドアビーム52(前ドア15)に効率よく伝えることができる。
これにより、前輪12から作用した荷重F1を前ドア15に効率よく分散することができ、サイドシル18に伝わる荷重F4を抑えることができる。
これにより、サイドシル18の剛性を抑えることが可能になり、サイドシル18の軽減を図ることができる。
【0088】
そして、前ドアビーム52に伝えられた荷重F2は、後ヒンジ16を経て後ドアビーム87(後ドア17)に伝えられる。
このように、前輪12から作用した荷重F1を前後2枚のドア15,17に効率よく伝えることで、後ドアビーム87(後ドア17)に伝わった荷重F2をラッチ91およびストライカ92を経て後車体開口部24の後部24bに伝えることができる。
よって、後車体開口部24の後部24bに伝えられた荷重F2をリヤピラー25で好適に支えることができる。
これにより、前輪12から作用した荷重F1のうち、比較的大きな荷重を前後2枚のドア15,17に伝えることができる。
したがって、車体11(特に、サイドシル18)に分散する荷重を減らして、車体重量を抑えることができる。
【0089】
なお、本発明に係る車体側部構造10は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、後ドア17にラッチ91を設け、後車体開口部24にストライカ92を設けた例について説明したが、これに限らないで、後ドア17にストライカ92を設け、後車体開口部24にラッチ91を設けることも可能である。
さらに、ラッチ91およびストライカ92の一方を前ドア15に設け、ラッチ91およびストライカ92の他方を前車体開口部22に設けることも可能である。
【0090】
また、前記実施例で示した車体11、インタラクション13、前ヒンジ14、前ドア15、後ヒンジ16、後ドア17、前車体開口部22、後車体開口部24、基部31、延長部32、回動ピン34、前取付部37、前結合部38、前取付部本体41、前受部42、前ドアビーム52、内部53,89、後ブラケット56,98、上規制部66,106、下規制部67,107、後ドアビーム87、ラッチ91およびストライカ92などの形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、車体開口部の前部にヒンジを介してドアが設けられ、ドアの内部にドアビームが車体前後方向に向いて設けられた車体側部構造を備えた車両への適用に好適である。
【符号の説明】
【0092】
10…車体側部構造、11…車体、13…インタラクション(荷重伝達部材)、13b…インタラクションの後部、14…前ヒンジ(ヒンジ)、15…前ドア(ドア)、16…後ヒンジ、17…後ドア、17b…後端近傍(他端近傍)、22…前車体開口部(車体開口部)、22a…前車体開口部の前部、24…後車体開口部、24b…後車体開口部の後部、31…基部、32…延長部、34…回動ピン(回動軸)、37…前取付部(取付部)、38…前結合部(結合部)、41…前取付部本体(取付部本体)、41a…前取付部本体の前端、42…前受部(受部)、52…前ドアビーム(ドアビーム、荷重伝達部材)、52a,87a…前端(一端)、53,89…内部、54b,96b…後端(他端)、56,98…後ブラケット(ブラケット)、66,106…上規制部(規制部)、67,107…下規制部(規制部)、87…後ドアビーム(ドアビーム)、91…ラッチ、92…ストライカ、F1…前輪から作用した荷重、F2…インタラクションから作用した荷重。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に形成された車体開口部にヒンジを介して開閉自在に設けられたドアと、
前記ドアの内部に車両前後方向に沿って設けられ、一端が前記ヒンジに結合されたドアビームと、
前記ヒンジの車体前方側に設けられ、車体前方から作用した荷重を前記ヒンジを経て車体後方に伝える荷重伝達部材と、を備え、
前記ヒンジは、
前記車体に設けられた取付部と、
前記取付部に回転自在に支持されるとともに、前記ドアビームに結合された結合部と、を備え、
前記取付部は、
前記車体に設けられた取付部本体と、
前記取付部本体から前記荷重伝達部材の後部に沿って張り出され、前記荷重伝達部材から作用した荷重を受ける受部と、
を有することを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記荷重伝達部材は、
前記ヒンジおよび前輪間に介在され、前記前輪から作用した荷重を前記受部に伝えるインタラクションであることを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記インタラクションは、
前記ヒンジの車体前方に設けられた基部と、
前記基部に連続して前記ヒンジより車幅方向内側に延びる延長部と、を有し、
前記延長部の崩壊荷重が前記基部の崩壊荷重より小さく設定されたことを特徴とする請求項2記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記受部は、
前記取付部本体の前端から車幅方向外側に張り出され、
前記受部の車幅方向外側の端部に、前記インタラクションの基部が回動軸を介して回動可能に設けられたことを特徴とする請求項2または請求項3記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記ドアの車体後方側に後ヒンジを介して後ドアが開閉自在に設けられ、
前記後ドアの内部に後ドアビームが車両前後方向に沿って設けられ、前記後ドアビームの一端が前記後ヒンジに結合され、
前記ドアビームから前記後ヒンジに作用する荷重を、前記後ドアビームの一端を経て前記後ドアビームに伝えることで、
前記ドアビームが前記後ドアビームに荷重を伝える荷重伝達部材の役割を果たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車体側部構造。
【請求項6】
前記ドアビームの他端が前記ドアの後部にブラケットを介して結合され、
前記ブラケットは、前記ドアビームの上下方向への移動を規制する規制部を有することを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項7】
前記ドアのうち前記ドアビームの他端近傍に、前記ドアを前記車体開口部に閉状態に保持するラッチおよびストライカの一方が設けられ、
前記ラッチおよび前記ストライカの他方が前記車体開口部の後部に設けられ、
前記ラッチが前記ストライカに係合可能としたことを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項1】
車体に形成された車体開口部にヒンジを介して開閉自在に設けられたドアと、
前記ドアの内部に車両前後方向に沿って設けられ、一端が前記ヒンジに結合されたドアビームと、
前記ヒンジの車体前方側に設けられ、車体前方から作用した荷重を前記ヒンジを経て車体後方に伝える荷重伝達部材と、を備え、
前記ヒンジは、
前記車体に設けられた取付部と、
前記取付部に回転自在に支持されるとともに、前記ドアビームに結合された結合部と、を備え、
前記取付部は、
前記車体に設けられた取付部本体と、
前記取付部本体から前記荷重伝達部材の後部に沿って張り出され、前記荷重伝達部材から作用した荷重を受ける受部と、
を有することを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記荷重伝達部材は、
前記ヒンジおよび前輪間に介在され、前記前輪から作用した荷重を前記受部に伝えるインタラクションであることを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記インタラクションは、
前記ヒンジの車体前方に設けられた基部と、
前記基部に連続して前記ヒンジより車幅方向内側に延びる延長部と、を有し、
前記延長部の崩壊荷重が前記基部の崩壊荷重より小さく設定されたことを特徴とする請求項2記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記受部は、
前記取付部本体の前端から車幅方向外側に張り出され、
前記受部の車幅方向外側の端部に、前記インタラクションの基部が回動軸を介して回動可能に設けられたことを特徴とする請求項2または請求項3記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記ドアの車体後方側に後ヒンジを介して後ドアが開閉自在に設けられ、
前記後ドアの内部に後ドアビームが車両前後方向に沿って設けられ、前記後ドアビームの一端が前記後ヒンジに結合され、
前記ドアビームから前記後ヒンジに作用する荷重を、前記後ドアビームの一端を経て前記後ドアビームに伝えることで、
前記ドアビームが前記後ドアビームに荷重を伝える荷重伝達部材の役割を果たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車体側部構造。
【請求項6】
前記ドアビームの他端が前記ドアの後部にブラケットを介して結合され、
前記ブラケットは、前記ドアビームの上下方向への移動を規制する規制部を有することを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項7】
前記ドアのうち前記ドアビームの他端近傍に、前記ドアを前記車体開口部に閉状態に保持するラッチおよびストライカの一方が設けられ、
前記ラッチおよび前記ストライカの他方が前記車体開口部の後部に設けられ、
前記ラッチが前記ストライカに係合可能としたことを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図10】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−274724(P2010−274724A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127659(P2009−127659)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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