説明

車体側部構造

【課題】車体前方から作用した荷重をドア(ドアビーム)に効率よく伝える(分散させる)ことでサイドシルの重量軽減を図ることができる車体側部構造を提供する。
【解決手段】車体側部構造10は、前ドア15を支える前ヒンジ14を備えている。前ヒンジは、車体11に設けられた前取付部37を備え、前取付部は、車幅方向外側に向かって張り出された前受部42を有する。さらに、前受部の車体前方側に荷重伝達部材28が設けられている。荷重伝達部材に入力荷重F1を受けることにより、荷重伝達部材を前受部および前ドアビーム52の前端部52a間に移動可能とした。この荷重伝達部材は、車体前後方向の入力荷重に対する耐力より車幅方向の入力荷重に対する耐力が弱い耐力特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体開口部の前部にヒンジを介してドアが開閉自在に設けられ、ドアの内部にドアビームが車体前後方向に向いて設けられた車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部構造のなかには、ドアの内部にドアビームが車体前後方向に沿って設けられ、ドアビームの前端部がヒンジの近傍に設けられ、ヒンジの車体前方側(すなわち、車体前部)に補強材が設けられたものがある。
ヒンジの車体前方側(車体前部)に補強材を設けることにより車体前部の剛性を高めることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−206244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車体側部構造は、ドアビームの前端部がヒンジの近傍に設けられているため、ドアビームの前端部がヒンジから離れている。
このため、車体前方からヒンジに作用した荷重を、ドアビームの前端部を経てドアビームに効率よく伝える(分散させる)ことはできない。
【0005】
さらに、ヒンジの車体前方に設けられた補強材は、ドアビームに対して車幅方向にずれた状態で(オフセットされた状態で)ピラーに連結されている。そして、このピラーにヒンジを介してドア(ドアビーム)が設けられている。
このため、車体前方から補強材に作用した荷重はピラーを経てドアビームへ伝えられる。このように、荷重がピラーを経てドアビームに伝えられることにより、荷重をドアに効率よく伝える(分散させる)ことは難しい。
【0006】
車体前方から作用した荷重をドアビームに効率よく分散することが難しいため、車体前方から作用した荷重を車体(特に、サイドシル)で支える必要がある。
よって、サイドシルの剛性を確保するために、サイドシルを補強部材で補強する必要があり、そのことがサイドシル(すなわち、車体)の重量を抑える妨げになっていた。
【0007】
本発明は、車体前方から作用した荷重をドア(ドアビーム)に効率よく伝える(分散させる)ことでサイドシルの重量軽減を図ることができる車体側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体に形成された車体開口部にヒンジを介して開閉自在に設けられたドアと、前記ドアの内部に車体前後方向に沿って設けられ、一端部が前記ヒンジに結合されたドアビームと、を備え、前記ヒンジは、前記車体に設けられた取付部と、前記取付部の後端部に回転自在に支持されるとともに、前記ドアビームに結合された結合部と、を備え、前記取付部は、前端部から車幅方向外側に向かって張り出された受部を有し、前記受部で車体前方から作用した入力荷重を受ける車体側部構造であって、前記受部の車体前方側に設けられ、前記入力荷重を受けることにより前記受部および前記ドアビームの一端部間に移動可能な荷重伝達部材を備え、前記荷重伝達部材は、車体前後方向の入力荷重に対する耐力より車幅方向の入力荷重に対する耐力が弱い耐力特性を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記荷重伝達部材は、車体前後方向の入力荷重に対する耐力が、車体前後方向の入力荷重に対する前記ヒンジの耐力よりも強い耐力特性を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3は、前記荷重伝達部材は、車体前後方向に延長された複数の繊維状部材を束ねた部材であることを特徴とする。
【0011】
請求項4は、前記受部は、前記荷重伝達部材が貫通可能な貫通部を備え、前記ヒンジは、前記一端部近傍に、前記貫通部を貫通した前記荷重伝達部材が突き当たる突当部を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5は、前記貫通部は、前記荷重伝達部材が摺接しながら貫通することで摩擦力を発生する摩擦力発生手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項6は、前記荷重伝達部材に隣接し、かつ、前記貫通部に対してオフセットした部位に、車体前方からの入力荷重を前記受部に伝える衝撃吸収部材を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項7は、前記衝撃吸収部材は、車体前後方向の入力荷重に対する耐力が、車体前後方向の入力荷重に対する前記ヒンジの耐力よりも弱い耐力特性を有することを特徴とする。
【0015】
請求項8は、前記入力荷重を検知する検知手段と、前記検知手段の検知信号に基づいて作動するアクチュエータと、を備え、前記荷重伝達部材を前記ドアビームの内部に収容可能なエクステンションビームとし、前記荷重伝達部材を前記アクチュエータの作動に基づいて前記ドアビームの内部から前記受部まで突出可能とし、前記荷重伝達部材を突出させた状態に保持するロック手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項9は、前記荷重伝達部材の後端部に、前記アクチュエータの作動により車体前方に向けて押し出されるピストンを備え、前記荷重伝達部材を突出させた状態に前記ピストンを保持するロック手段を備え、前記ロック手段は、前記ピストンに設けられた係止爪と、前記係止爪を前記ドアビームの短手方向外側に向けて付勢する付勢手段と、前記ドアビームに設けられて前記係止爪が係止される被係止孔と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項10は、前記荷重伝達部材の後端部に、前記アクチュエータの作動により車体前方に向けて押し出されるピストンを備え、前記荷重伝達部材を突出させた状態に前記ピストンを保持するロック手段を備え、前記ロック手段は、前記ピストンの外周に設けられ、前記ピストンの前端部から後端部に向かうにつれて徐々に縮径する斜面部と、前記斜面部に沿って移動自在に配置された移動規制部材と、を備え、前記斜面部の後端部側に前記移動規制部材が配置されることで前記ピストンの移動を許容し、前記斜面部の前端部側に前記移動規制部材が配置されることで前記ドアビームに当接し、前記移動規制部材で前記ピストンの移動を阻止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、受部の車体前方側に荷重伝達部材を設けた。そして、荷重伝達部材に入力荷重を受けた際に、荷重伝達部材を移動可能とした。
よって、荷重伝達部材に入力荷重を受けた際に、荷重伝達部材を移動させて受部およびドアビームの一端部間に介在させることができる。
【0019】
受部およびドアビームの一端部間に荷重伝達部材を介在させることで、車体前方から作用した入力荷重を荷重伝達部材を経てドアビームの一端部に迅速に効率よく伝える(分散する)ことができる。
このように、車体前方から作用した荷重をドアビームの一端部に効率よく分散することで、サイドシルに伝わる入力荷重を抑えることができる。
これにより、サイドシルの剛性を抑えることが可能になり、サイドシルの重量軽減を図ることができる。
【0020】
ここで、荷重伝達部材を受部およびドアビームの一端部間に介在させた状態において、ドアを開放する際に、ドアのヒンジが荷重伝達部材に車幅方向から干渉することが考えられる。
そこで、荷重伝達部材の耐力特性を、車体前後方向の入力荷重に対する耐力より車幅方向の荷重に対する耐力を弱く抑えた。
【0021】
よって、ドアの開放によりヒンジが水平方向に回動して荷重伝達部材に車幅方向から干渉した際に、車幅方向のヒンジ押付力で荷重伝達部材を変形させることができる。
これにより、車体前方から入力荷重が作用した後、ドアを容易に開放して車室内の乗員を車室外に速やかに降ろすことができる。
【0022】
請求項2に係る発明では、荷重伝達部材の車体前後方向の入力荷重に対する耐力を、車体前後方向の入力荷重に対するヒンジの耐力よりも強くした。
よって、荷重伝達部材に車体前方から入力荷重が作用した場合に、入力荷重を荷重伝達部材を経て車体後方に伝えることができる。
よって、入力荷重でヒンジが変形することを抑えることができる。
このように、ヒンジが変形することを抑えることで、車体前方から入力荷重が作用した後、ドアの開放が妨げられることを防止できる。
【0023】
請求項3に係る発明では、荷重伝達部材を複数の繊維状部材を束ねて形成した。
繊維状部材は、長手方向の入力荷重に対する耐力が短手方向の入力荷重に対する耐力より強い部材である。
よって、複数の繊維状部材を束ねて荷重伝達部材を形成することで、車体前後方向の入力荷重に対する耐力より車幅方向の荷重に対する耐力を弱くした荷重伝達部材を簡単に形成できる。
このように、複数の繊維状部材を束ねて荷重伝達部材を形成することで、荷重伝達部材を簡単な構成とすることができる。
【0024】
請求項4に係る発明では、荷重伝達部材が貫通可能な貫通部を受部に備えた。さらに、ヒンジの一端部近傍に、貫通部を貫通した荷重伝達部材が突き当たる突当部を備えた。
よって、車体前方から入力荷重が作用した際に、荷重伝達部材を受部の貫通部に通過させて、荷重伝達部材の後端部を突当部に突き当てることができる。
【0025】
荷重伝達部材の後端部を突当部に突き当てることで、受部およびドアビームの一端部間に荷重伝達部材を介在させることができる。
これにより、車体前方から作用した入力荷重を荷重伝達部材を経てドアビームの一端部に迅速に効率よく伝える(分散する)ことができる。
【0026】
請求項5に係る発明では、貫通部に摩擦力発生手段を備え、この摩擦力発生手段を荷重伝達部材が摺接しながら貫通することで摩擦力を発生させるようにした。
このように、荷重伝達部材が移動する際に、摩擦力発生手段で摩擦力を発生させることで入力荷重を摩擦力として吸収することができる。
入力荷重を吸収することで、例えば、突当部の剛性を必要以上に高める必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。
【0027】
請求項6に係る発明では、荷重伝達部材に隣接し、かつ、貫通部に対してオフセットした部位に衝撃吸収部材を備え、衝撃吸収部材で車体前方からの入力荷重を受部に伝えるようにした。
これにより、車体前方からの入力荷重を衝撃吸収部材を経て受部に迅速に伝えることができる。
さらに、荷重伝達部材の後端部を突当部に突き当てることで、車体前方から作用した入力荷重を荷重伝達部材を経てドアビームに迅速に効率よく伝える(分散する)ことができる。
【0028】
請求項7に係る発明では、衝撃吸収部材の車体前後方向の入力荷重に対する耐力を、車体前後方向の入力荷重に対するヒンジの耐力より弱くした。
よって、衝撃吸収部材に車体前方から入力荷重が作用した場合に、ヒンジが変形する前に衝撃吸収部材を変形させて入力荷重を吸収することができる。
これにより、ヒンジが変形する前に、衝撃吸収部材の変形にともなって荷重伝達部材を受部およびドアビームの一端部間に円滑に移動することができる。
【0029】
請求項8に係る発明では、入力荷重が作用した際に、検知手段の検知信号に基づいてアクチュエータを作動することで、荷重伝達部材をヒンジの受部およびドアビームの前端部間に迅速に介在させることができる。
よって、入力荷重を荷重伝達部材を経てドアビームに効率よく伝えることができる。
【0030】
さらに、荷重伝達部材をドアビームの内部に収容することで、荷重伝達部材に伝えられた入力荷重をドアビームに直接伝えることができる。
これにより、入力荷重が作用した際に、入力荷重をドアビームに効率よく伝えることができ、ドアビームが負担する荷重伝達量を増すことができる。
【0031】
請求項9に係る発明では、荷重伝達部材の後端部にピストンを備えた。このピストンに係止爪を設けるとともにドアビームに被係止孔を設けることでロック手段を構成した。
そして、係止爪を付勢手段で付勢して被係止孔に係止することで荷重伝達部材を突出させた状態に保持するようにした。
このように、ロック手段を係止爪や被係止孔などの簡単な部材で構成することでロック手段の簡素化を図ることができる。
【0032】
請求項10に係る発明では、荷重伝達部材の後端部にピストンを備えた。このピストンに斜面部を設けるとともに斜面部に移動規制部材を設けることでロック手段を構成した。
そして、斜面部の後端部側に移動規制部材を配置することでピストンの移動を許容するようにした。
また、斜面部の前端部側に移動規制部材を配置することでドアビームに当接し、移動規制部材でピストンの移動を阻止するようにした。
このように、ロック手段を斜面部や移動規制部材などの簡単な部材で構成することでロック手段の簡素化を図ることができる。
さらに、ロック手段をドアビームに設ける必要がなくピストン側にまとめることができるので、ロック手段の組付けの容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る車体側部構造の実施例1を示す側面図である。
【図2】図1の2部拡大図である。
【図3】実施例1の車体側部構造を示す斜視図である。
【図4】実施例1の車体側部構造の前部を示す分解斜視図である。
【図5】図2の5部拡大図である。
【図6】図5の6矢視図である。
【図7】実施例1の荷重伝達部材およびテーパ壁(摩擦力発生手段)を示す断面図である。
【図8】実施例1の荷重伝達部材およびテーパ壁(摩擦力発生手段)を示す斜視図である。
【図9】図8の前ヒンジを示す分解斜視図である。
【図10】実施例1の荷重伝達部材を入力荷重で車体後方に押し出す例を説明する図である。
【図11】実施例1の荷重伝達部材を経て前ドアビームに入力荷重を伝える例を説明する図である。
【図12】実施例1の前ドアビームを経て後ドアビームに入力荷重を伝える例を説明する図である。
【図13】実施例1の車体側部構造に作用した入力荷重を前ドアに分散した状態を示す説明図である。
【図14】変形例1の摩擦力発生手段を示すである。
【図15】変形例2の摩擦力発生手段を示すである。
【図16】本発明に係る荷重伝達部材の実施例2を示す断面図である。
【図17】図16の17部拡大図である。
【図18】実施例2の荷重伝達部材を車体前方に向けて移動する例を説明する図である。
【図19】実施例2の荷重伝達部材を経て前ドアビームに入力荷重を伝える例を説明する図である。
【図20】本発明に係る荷重伝達部材の実施例3を示す断面図である。
【図21】図20の21部拡大図である。
【図22】実施例3の荷重伝達部材を車体前方に向けて移動する例を説明する図である。
【図23】実施例3の荷重伝達部材を経て前ドアビームに入力荷重を伝える例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例1】
【0035】
実施例1に係る車体側部構造10について説明する。
図1、2に示すように、車体側部構造10は、車体11と、車体11の前部11aに設けられた前輪12と、前輪12の車体後方に設けられた荷重伝達ユニット13と、荷重伝達ユニット13の車体後方に設けられた前ヒンジ(ヒンジ)14と、前ヒンジ14を介して開閉自在に設けられた前ドア(ドア)15と、前ドア15の車体後方に設けられた後ヒンジ(ヒンジ)16と、後ヒンジ16を介して開閉自在に設けられた後ドア(ドア)17とを備えている。
【0036】
車体11は、前輪12の車体後方にフロントピラー21が設けられ、フロントピラー21の車体後方に前車体開口部(車体開口部)22が設けられ、前車体開口部22の車体後方にセンタピラー23が設けられ、センタピラー23の車体後方に後車体開口部(車体開口部)24が設けられ、後車体開口部24の車体後方にリヤピラー25が設けられている。
前車体開口部22に前ヒンジ14を介して前ドア15が開閉自在に設けられている。
後車体開口部24に後ヒンジ16を介して後ドア17が開閉自在に設けられている。
【0037】
さらに、車体11は、フロントピラー21の下部、センタピラー23の下部およびリヤピラー25の下部にサイドシル18が設けられている。
サイドシル18は、前ドア15および後ドア17の下部に沿って車体前後方向に向けて延出されている。
【0038】
荷重伝達ユニット13は、前輪12の車体後方に前部13a(図3参照)が設けられ、前ヒンジ14の車体前方側に後部13b(図3参照)が設けられることで、前ヒンジ14および前輪12間に介在されている。
図3、図4に示すように、荷重伝達ユニット13は、フロントピラー21および前ヒンジ14に設けられた衝撃吸収部材27と、衝撃吸収部材27内に収容された荷重伝達部材28とを備えている。
【0039】
衝撃吸収部材27は、前ヒンジ14の車体前方に設けられた基部31と、基部31に連続して前ヒンジ14より車幅方向内側に延びる延長部32と、基部31の車幅方向外側後端部31aに設けられた支持部33とを有する。
この衝撃吸収部材27は、前ヒンジ14および前輪12(図1参照)間に介在されたインタラクションである。
支持部33が前受部(受部)42の車幅方向外側の端部42bに上下の回動ピン34を介して回動可能に設けられている。
さらに、延長部32がボルト35で車体11に取り付けられている(図6参照)。
【0040】
衝撃吸収部材27は、車体前後方向の入力荷重F1に対する耐力が、車体前後方向の入力荷重に対する前ヒンジ14の耐力よりも弱い耐力特性を有する。
具体的には、衝撃吸収部材27は、基部31および延長部32が車体前方からの入力荷重F1に対して潰れる(変形する)ことにより、入力荷重F1の一部を吸収可能なハニカム構造に形成されている。
【0041】
よって、衝撃吸収部材27に車体前方から入力荷重F1が作用した場合に、前ヒンジ14が変形する前に衝撃吸収部材27を変形させて入力荷重F1の一部を吸収することができる。
これにより、前ヒンジ14が変形する前に、衝撃吸収部材27の変形にともなって荷重伝達部材28を前受部42の前壁42aおよび前ドアビーム52の前端部(一端部)52a間に円滑に移動することができる。
【0042】
衝撃吸収部材27内に荷重伝達部材28が収容されている。
荷重伝達部材28は、前受部42の前壁42aの車体前方側に設けられ、入力荷重F1を受けることにより前壁42aおよび前ドアビーム52の前端部52a間に移動可能な部材である。
この荷重伝達部材28は、複数の繊維状部材29(図7参照)が車体前後方向に延長された状態で束ねられた円柱状の部材である。
繊維状部材29は、長手方向の入力荷重に対する耐力が短手方向の入力荷重に対する耐力より強い部材である。
繊維状部材29として、例えば、ファイバーグラス(ガラス繊維)が用いられる。
【0043】
この荷重伝達部材28は、車体前後方向の入力荷重F1に対する耐力が、車体前後方向の入力荷重に対する前ヒンジ14の耐力よりも強い第1耐力特性(耐力特性)を有する。
よって、荷重伝達部材28に車体前方から入力荷重F1が作用した場合に、入力荷重F1を荷重伝達部材28を経て車体後方に伝えることができる。
【0044】
入力荷重F1を荷重伝達部材28を経て車体後方に伝えることで、入力荷重F1で前ヒンジ14が変形することを抑えることができる。
前ヒンジ14が変形することを抑えることで、車体前方から入力荷重F1が作用した後、前ドア15の開放が妨げられることを防止できる。
【0045】
さらに、荷重伝達部材28は、車体前後方向の入力荷重F1に対する耐力より車幅方向の入力荷重に対する耐力が弱い第2耐力特性(耐力特性)を有する。
よって、荷重伝達部材28を前受部42の前壁42aおよび前ドアビーム52の前端部52a間に介在させた状態において、前ドア15を開放する際に、前ヒンジ14(前結合部38)の押付力で荷重伝達部材28を変形できる。
【0046】
具体的には、前ドア15を開放する際に、前ヒンジ14(前結合部38)が水平方向に回動する。よって、前ヒンジ14(前結合部38)の回動により、荷重伝達部材28に車幅方向の押付力を加えることができ、この車幅方向の押付力で荷重伝達部材28を変形させることができる。
これにより、車体前方から入力荷重F1が作用した後、前ドア15を容易に開放して車室内の乗員を車室外に速やかに降ろすことができる。
【0047】
ここで、第1、第2の耐力特性を有する荷重伝達部材28を、複数の繊維状部材29を束ねるだけで形成することができる。
これにより、第1、第2の耐力特性を有する荷重伝達部材28を簡単な構成とすることができる。
【0048】
前ヒンジ14は、車体11のフロントピラー21(図2参照)に設けられた前取付部(取付部)37と、前取付部37に前支持ピン47を介して回転自在に支持された前結合部(結合部)38とを備えている。
前結合部38に前ドア15の前端部15aおよび前ドアビーム52の前端部52aが複数のボルト49で結合されている。
【0049】
図5、図6に示すように、前取付部37は、フロントピラー21に設けられた前取付部本体41と、前取付部本体41の前端部41aから荷重伝達ユニット13(衝撃吸収部材27)の後部13bに沿って車幅方向外側に向かって張り出された前受部(受部)42とを有する。
この前取付部37は、前取付部本体41および前受部42で平面視略コ字状に形成されている。
【0050】
前受部42は、前取付部本体41の前端部41aから荷重伝達ユニット13の後部13bに沿って車幅方向外側に向けて張り出され、車体前方の荷重伝達ユニット13から作用した荷重を受ける部位である。
前受部42の前壁42aが荷重伝達ユニット13の後部13bに接触されている。
前壁42aは、荷重伝達部材28の車体後方に配置され、荷重伝達部材28が貫通可能な貫通部40を備えている。
【0051】
図7、図8に示すように、貫通部40は、車体前方から車体後方に向けて徐々に縮径するテーパ壁(摩擦力発生手段)40aを有する円形状の貫通孔である。
この貫通部40に荷重伝達部材28が貫通された状態で車体後方に向けて移動することにより、荷重伝達部材28の外周壁28aが貫通部40のテーパ壁40aを摺接しながら貫通する。
【0052】
荷重伝達部材28の外周壁28aがテーパ壁40aを摺接しながら貫通することで、外周壁28aおよびテーパ壁40a間に摩擦力を発生させることができる。
このように、荷重伝達部材28が移動する際に、外周壁28aおよびテーパ壁40a間に摩擦力を発生させることで入力荷重F1を摩擦力として吸収することができる。
入力荷重F1を吸収することで、例えば、第1突当部(突当部)38aおよび第2突当部(突当部)46aの剛性を必要以上に高める必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。
第1突当部38aおよび第2突当部46aは、荷重伝達部材28が当接する部位である。
【0053】
貫通部40を貫通した荷重伝達部材28は、第1突当部38aおよび第2突当部46aに突き当たり、前受部42の前壁42aおよび前ドアビーム52の前端部52a間に介在される。
これにより、車体前方から作用した入力荷重F1を荷重伝達部材28を経て前ドアビーム52の前端部52aに迅速に効率よく伝えることができる。
なお、第1突当部38aおよび第2突当部46aについては後で詳しく説明する。
【0054】
貫通部40の車体前方で、かつ貫通部40に対して同軸上に荷重伝達部材28が備えられ、荷重伝達部材28に隣接して衝撃吸収部材27を備えている。
この状態において、衝撃吸収部材27は、貫通部40に対してオフセットした部位(貫通部40を回避した部位)に配置されている。
【0055】
衝撃吸収部材27を貫通部40に対してオフセットした部位に配置することで、衝撃吸収部材27で車体前方からの入力荷重F1を前受部42の前壁42aに伝えるようにした。
これにより、車体前方からの入力荷重F1を衝撃吸収部材28を経て前壁42aに迅速に伝えることができる。
さらに、荷重伝達部材28の後端部28bを第1突当部38aおよび第2突当部46aに突き当てることで、車体前方から作用した入力荷重F1を荷重伝達部材28を経て前ドアビーム52に迅速に効率よく伝えることができる。
【0056】
図5、図6に示すように、前取付部本体41は、フロントピラー21に複数のボルト44で設けられたフロントピラー取付部45と、フロントピラー取付部45の後端部から車幅方向外側に張り出された前ドア連結部46とを有する。
前ドア連結部46には、前結合部38が前支持ピン47を介して略水平方向に回動自在に連結されている。
【0057】
図8、図9に示すように、前ドア連結部46に第2突当部(突当部)46aを備えている。
第2突当部46aは、前ドア連結部46の後壁部を構成する部位であり、前ドアビーム52の前端部(一端部)52a(図3参照)近傍に設けられている。
この第2突当部46aは、貫通部40を貫通した荷重伝達部材28の後端部28bのうち、車幅方向内側半部28cが突き当たる部位である。
【0058】
前結合部38は、前取付部本体41の前ドア連結部46に前支持ピン47を介して回動自在に連結されている。
この前結合部38は、複数のボルト49で前ドア15の前端部15aおよび前ドアビーム52の前端部52aに結合されている。
よって、前ドア15は、車体11(フロントピラー21(図2参照))に前ヒンジ14の前支持ピン47を軸にして開閉自在に支持されている。
【0059】
前結合部38は、第1突当部(突当部)38aを備えている。
第1突当部38aは、前ドアビーム52の前端部52a(図3参照)近傍に設けられ、第2突当部46aの車幅方向外側に配置されるとともに、第2突当部46aの車体前方側に配設されている。
この第1突当部38aは、貫通部40を貫通した荷重伝達部材28の後端部28bのうち、車幅方向外側半部28dが突き当たる部位である。
【0060】
図1、図2に示すように、前ドア15は、前車体開口部22の前部22aに前ヒンジ14を介して開閉自在に設けられている。
前ドア15は、略矩形状に形成されるとともに前車体開口部22を開閉可能な前ドアパネル51と、前ドアパネル51の内部53に車体前後方向に沿って設けられた前ドアビーム(ドアビーム)52とを備えている。
【0061】
この前ドア15は、前ドアパネル51の前端部51aおよび前ドアビーム52の前端部(一端部)52aが前結合部38に複数のボルト49で設けられている。
【0062】
図3に示すように、前ドアビーム52は、前ドア15の内部に車体前後方向に沿って設けられ、前端部52aが前ヒンジ14に結合されている。
この前ドアビーム52は、円筒状の前ビーム本体54と、前ビーム本体54の前端部54aに設けられた前ブラケット55と、前ビーム本体54の後端部54bに設けられた後ブラケット56とを備えている。
【0063】
前ビーム本体54の前端部54aおよび前ブラケット55で前ドアビーム52の前端部52aが形成されている。
また、前ビーム本体54の後端部54bおよび後ブラケット56で前ドアビーム52の後端部52bが形成されている。
【0064】
図4〜図6に示すように、前ブラケット55は、平面視で略コ字状に折り曲げられたプレートであり、前結合部38に前ドアパネル51(前端部51a)を介して設けられた前連結部61と、前連結部61の内外の端部から車体後方に向けて折り曲げられた一対の前折曲片62とを有する。
【0065】
一対の前折曲片62に前ビーム本体54の前端部54aが挟持されている。
そして、前ブラケット55の前連結部61が前ドアパネル51の前端部51aを介して前結合部38に複数のボルト49で設けられている。
よって、前ドアビーム52の前端部52a(前ブラケット55)が前結合部38に設けられている。
【0066】
これにより、前受部42(すなわち、前取付部37)を経て前結合部38に伝えられた荷重を、前結合部38および前ドアパネル51の前端部51aを経て前ブラケット55に伝えることができる。
そして、前ブラケット55に伝わった荷重を前ビーム本体54を経て車体後方に伝えることができる。
【0067】
図2、図3に示すように、後ブラケット56は、前ビーム本体54の後端部54bに設けられた接合部65と、接合部65から上方に張り出された上規制部66と、接合部65から下方に張り出された下規制部67とを有する。
上下の規制部66,67は、前ドアパネル51の後端部51bに接合されている。
よって、前ビーム本体54は、後端部54bが前ドアパネル51の後端部51bに後ブラケット56を介して結合されている。
これにより、前ドアビーム54に伝わった荷重を前ドアビーム54の軸方向に伝えることができる。
【0068】
前ドア15の車体後方に後ヒンジ16が設けられている。
後ヒンジ16は、前ヒンジ14と同様に形成された部材であって、車体11のセンタピラー23に設けられた後取付部(取付部)71と、後取付部71に回転自在に支持された後結合部(結合部)72とを備えている。
後結合部72に後ドア17の前端部17aおよび後ドアビーム81の前端部81aが複数のボルト75で結合されている。
【0069】
後取付部71は、前取付部37と類似部材であり、詳しい説明を省略する。
この後取付部71は、センタピラー23に複数のボルト73で設けられ、前端部に車幅方向外側に向かって後受部(受部)71aが張り出され、後端部に後支持ピン74を介して後結合部72が略水平方向に回動自在に連結されている。
【0070】
後受部71aは、車体前方の前ドアビーム52から作用した荷重を受ける部位である。
すなわち、前ドアビーム52に作用した荷重が、前ドアビーム52の後端部52bを経て後取付部71(後受部71a)に伝えられる。
そして、後取付部71に伝えられた荷重を後支持ピン74を経て後結合部72に伝えることができる。
【0071】
後結合部72は、複数のボルト75で後ドア17の前端部17aに結合されている。
よって、後ドア17は、車体11(センタピラー23)に後支持ピン74を軸にして開閉自在に支持されている。
【0072】
図1、図2に示すように、後ドア17は、後車体開口部24の前部24aに後ヒンジ16を介して開閉自在に設けられている。
後ドア17は、略矩形状に形成されるとともに後車体開口部24を開閉可能な後ドアパネル77と、後ドアパネル77の内部78に車体前後方向に沿って設けられた後ドアビーム(ドアビーム)81と、後ドアビーム81の後端部81b近傍に設けられたラッチ82とを備えている。
【0073】
図3に示すように、後ドア17は、後ドアパネル77の前端部77aおよび後ドアビーム81の前端部(一端部)81aが後結合部72に複数のボルト75で設けられている。
【0074】
後ドアビーム81は、後ドア17の内部に車体前後方向に沿って設けられ、前端部81aが後ヒンジ16(後結合部72)に結合されている。
この後ドアビーム81は、円筒状の後ビーム本体85と、後ビーム本体85の前端部85aに設けられた前ブラケット86と、後ビーム本体85の後端部85bに設けられた後ブラケット87とを備えている。
【0075】
後ビーム本体85の前端部85aおよび前ブラケット86で後ドアビーム81の前端部81aが形成されている。
また、後ビーム本体85の後端部85bおよび後ブラケット87で後ドアビーム81の後端部81bが形成されている。
【0076】
後ドアビーム81の前ブラケット86は、前ドアビーム52の前ブラケット55と同様の部材であり、詳しい説明を省略する。
前ブラケット86が後ドアパネル77の前端部77aを介して後結合部72に複数のボルト75で設けられている。
よって、後ドアビーム81の前端部81aが後結合部72に設けられている。
【0077】
よって、後結合部72に伝えられた荷重を、後ドアパネル77の前端部77aを経て前ブラケット86に伝えることができる。
さらに、前ブラケット86に伝わった荷重を後ビーム本体85を経て車体後方に伝えることができる。
【0078】
後ドアビーム81の後ブラケット87は、前ドアビーム52の後ブラケット56と同様の部材であり、詳しい説明を省略する。
後ブラケット87は、後ドアビーム81の後端部81bを後ドアパネル77の後端部に結合する部材である。
【0079】
後ドア17は、後ドアビーム81の後端部81b近傍にラッチ82が設けられている。
ラッチ82は、後ドアビーム81の後端部81bの車体後方に配置され、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ストライカ83に係合可能な部材である。
ストライカ83は、後車体開口部24の後部24bに設けられている。
よって、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ラッチ82をストライカ83に係合することで、後ドア17を後車体開口部24に閉状態に保持することができる。
【0080】
これにより、後ドアビーム81に伝わった荷重を後ドアビーム81の軸方向に伝えることができ、後ドアビーム81に伝わった荷重を後ドアビーム81で好適に支えて車体後方に伝えることができる。
ここで、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態でラッチ82をストライカ83に係合することで、後ドアビーム81に伝わった荷重をラッチ82およびストライカ83を経て後車体開口部24の後部24bに伝えることができる。
【0081】
つぎに、前輪12から作用した入力荷重F1を車体側部構造10で支える例を図10〜図13に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、車体11の前端部に車体前方から入力荷重が作用することにより、前輪12が車体後方に移動して荷重伝達ユニット13(衝撃吸収部材27および荷重伝達部材28)に当接する。
【0082】
前輪12から衝撃吸収部材27および荷重伝達部材28に入力荷重F1が作用する。
衝撃吸収部材27に入力荷重F1が作用することで、衝撃吸収部材27が潰れ(変形し)、荷重伝達部材28が貫通部(貫通孔)40を経て車体後方に向けて矢印Aの如く押し出される。
【0083】
図10(b)に示すように、衝撃吸収部材27が潰れる(変形する)ことで、入力荷重F1の一部を衝撃吸収部材27で吸収する。
荷重伝達部材28を貫通部(貫通孔)40を経て車体後方に向けて矢印Aの如く押し出すことで、荷重伝達部材28の外周壁28aがテーパ壁40aを摺接しながら貫通する。
この際に、外周壁28aおよびテーパ壁40a間に摩擦力が発生し、発生した摩擦力で入力荷重F1の一部を吸収する。
【0084】
荷重伝達部材28を車体後方に向けて矢印Aの如く押し出すことで、荷重伝達部材28の後端部28bのうち、車幅方向外側半部28dが第1突当部38aに突き当たる。
車幅方向外側半部28dが第1突当部38aに突き当てられた後、荷重伝達部材28の車幅方向内側半部28cが車体後方に向けて継続して矢印Aの如く押し出される。
【0085】
図11(a)に示すように、荷重伝達部材28の車幅方向内側半部28cが第2突当部46aに突き当たる。
同時に、第1突当部38aに突き当てられた車幅方向外側半部28dが略く字状に折り曲げられる。
【0086】
図11(b)に示すように、荷重伝達部材28を車体後方に向けて継続させて矢印Aの如く押し出すことで、第1突当部38aに突き当てられた車幅方向外側半部28dが略く字状に折り曲げられる。
この状態で、前受部42の前壁42aおよび第1、第2の突当部38a,46a間に荷重伝達部材28を介在させることができる。
【0087】
このように、荷重伝達部材28の車幅方向外側半部28dを第1突当部38aに突き当て、車幅方向内側半部28cを第2突当部46aに突き当てた状態に保つ。
そして、前受部42の前壁42aおよび第1、第2の突当部38a,46a間に荷重伝達部材28を介在させた。
この状態において、入力荷重F1の残りの荷重F2が、荷重伝達部材28(車幅方向内側半部28cおよび車幅方向外側半部28d)を経て第1突当部38aおよび第2突当部46aに伝えられる。
【0088】
第1突当部38aおよび第2突当部46aは前ドアビーム52の前端部52a近傍に設けられている。
よって、第1突当部38aおよび第2突当部46aに伝えられた荷重F2は、前ドアビーム52の前端部52aに効率よく迅速に伝えられる。
前ドアビーム52の前端部52aに荷重F2が伝えられることで、前端部52aに伝えられた荷重F2が、前ドアビーム52を経て車体後方に伝えられる。
【0089】
図12(a)に示すように、前ドアビーム52の前端部52aに荷重F2が伝えられることで、前ドアビーム52が車体後方に矢印Bの如く移動する。
前ドアビーム52が車体後方に移動することで、前ドアビーム52の後端部52bが後ヒンジ16の後取付部71に当接する。
【0090】
よって、前ドアビーム52を経て車体後方に伝えられた荷重F2が後ヒンジ16を経て後ドアビーム81の前端部81aに伝えられる。
後ドアビーム81の前端部81aに荷重F2が伝えられることで、後ドアビーム81が車体後方に矢印Cの如く移動する。
同時に、後ドアビーム81の前端部81aに伝えられた荷重F2が、後ドアビーム81を経て車体後方に伝えられる。
【0091】
図12(b)に示すように、後ドアビーム81が車体後方に矢印Cの如く移動することで、後ドアビーム81の後端部81bとともにラッチ82が車体後方に矢印Cの如く移動する。
ラッチ82が車体後方に矢印Cの如く移動することで、後車体開口部24の後部24bに当接する。
よって、後ドアビーム81に伝わった荷重F2を後ドアビーム81で好適に支えて車体後方に確実に伝えることができる。
【0092】
ここで、後ドア17を後車体開口部24に閉じた状態で、ラッチ82がストライカ83に係合されている。よって、後ドアビーム81に伝わった荷重F2をラッチ82およびストライカ83を経て後車体開口部24の後部24bに荷重F3として伝えることができる。
さらに、後車体開口部24の後部24bはリヤピラー25に形成されている。よって、後車体開口部24の後部24bに伝えられた荷重F3をリヤピラー25で好適に支えることができる。
【0093】
つぎに、図10〜図12で説明した荷重伝達を図13でまとめて説明する。
図13に示すように、前輪12から衝撃吸収部材27に入力荷重F1が作用することで、衝撃吸収部材27が潰れ(変形し)、入力荷重F1の一部を衝撃吸収部材27で吸収する。
衝撃吸収部材27が潰れる(変形する)ことで、荷重伝達部材28が貫通部(貫通孔)40を経て車体後方に向けて矢印Aの如く押し出される。
【0094】
押し出された荷重伝達部材28が第1突当部38aおよび第2突当部46aに当接する。
この状態で、入力荷重F1の残りの荷重F2が、荷重伝達部材28を経て第1突当部38aおよび第2突当部46a(図11参照)に伝えられる。
【0095】
ここで、第1突当部38aおよび第2突当部46aは前ドアビーム52の前端部52a近傍に設けられている。
よって、第1突当部38aおよび第2突当部46aに伝えられた荷重F2は、前ドアビーム52の前端部52aに効率よく伝えられる。
【0096】
これにより、前輪12から作用した入力荷重F1を前ドア15に効率よく分散することができ、サイドシル18に伝わる荷重F4を抑えることができる。
したがって、サイドシル18の剛性を抑えることが可能になり、サイドシル18の重量軽減を図ることができる。
【0097】
そして、前ドアビーム52に伝えられた荷重F3は、後ヒンジ16を経て後ドアビーム81(後ドア17)に伝えられる。
このように、前輪12から作用した入力荷重F1を前後2枚のドア15,17に効率よく伝えることで、後ドアビーム81(後ドア17)に伝わった荷重F2をラッチ82およびストライカ83を経て後車体開口部24の後部24bに荷重F3として伝えることができる。
【0098】
よって、後車体開口部24の後部24bに伝えられた荷重F2をリヤピラー25で好適に支えることができる。
これにより、前輪12から作用した入力荷重F1のうち、比較的大きな荷重を前後2枚のドア15,17に伝えることができる。
したがって、車体11(特に、サイドシル18)に分散する荷重を減らして、車体重量を抑えることができる。
【0099】
ここで、荷重伝達部材28を前受部42の前壁42aおよび前ドアビーム52の前端部52a間に介在させた状態において、前ドア15を開放する際に、前ドア15の前ヒンジ14(前結合部38)が荷重伝達部材28に車幅方向から干渉することが考えられる。
そこで、前述したように、荷重伝達部材28の耐力特性を、車体前後方向の入力荷重F1に対する耐力より車幅方向の荷重に対する耐力を弱くした。
【0100】
よって、前ドア15の開放により前ヒンジ14(前結合部38)が水平方向に回動して荷重伝達部材28に車幅方向から干渉した際に、前ヒンジ14(前結合部38)の押付力で荷重伝達部材28を変形させることができる。
これにより、車体前方から入力荷重F1が作用した後、前ドア15を容易に開放して車室内の乗員を車室外に速やかに降ろすことができる。
【0101】
つぎに、実施例1の変形例1、2を図14および図15に基づいて説明する。
(変形例1)
図14に示すように、変形例1の摩擦力発生手段88は、実施例1のテーパ壁40aに代えて前受部42の前壁42aに脆弱部88を形成したものである。
脆弱部88は、荷重伝達部材28の外形に対応させて円形に形成されている。
荷重伝達部材28を車体後方に移動する際に脆弱部88を破断することで入力荷重F1の一部を吸収する。
【0102】
加えて、破断した脆弱部88に荷重伝達部材28の外周壁28aを摺接させながら移動することで、外周壁28aおよび脆弱部88間に摩擦力を発生させることができる。
外周壁28aおよび脆弱部88間に摩擦力を発生させることで入力荷重F1の一部を摩擦力として吸収することができる。
入力荷重F1の一部を吸収することで、例えば、第1突当部38aおよび第2突当部46aの剛性を必要以上に高める必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。
すなわち、変形例1の脆弱部88(摩擦力発生手段)によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0103】
(変形例2)
図15に示すように、変形例2の摩擦力発生手段89は、実施例1のテーパ壁40aに代えて前受部42の前壁42aに切込部(スリット)89を形成したものである。
切込部89は、荷重伝達部材28の外形に対応する部位にクロス状に形成されている。
前壁42aに切込部89を形成することで、前壁42aに脆弱部(摩擦力発生手段)89aが形成される。
荷重伝達部材28を車体後方に移動する際に切込部89(すなわち、脆弱部89a)を変形することで入力荷重F1の一部を吸収する。
【0104】
加えて、変形させた切込部89(脆弱部89a)に荷重伝達部材28の外周壁28aを摺接させながら移動することで、外周壁28aおよび切込部89(脆弱部89a)間に摩擦力を発生させることができる。
外周壁28aおよび切込部89(脆弱部89a)間に摩擦力を発生させることで入力荷重F1の一部を摩擦力として吸収することができる。
入力荷重F1の一部を吸収することで、例えば、第1突当部38aおよび第2突当部46aの剛性を必要以上に高める必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。
すなわち、変形例2の切込部89(摩擦力発生手段)によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0105】
つぎに、実施例2および実施例3を図16〜図23に基づいて説明する。
なお、実施例2および実施例3の荷重伝達ユニットにおいて実施例1の荷重伝達ユニット13と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0106】
実施例2に係る荷重伝達ユニット90について説明する。
図16に示すように、荷重伝達ユニット90は、衝撃吸収部材27と、第2荷重伝達手段92とを備えている。
すなわち、荷重伝達ユニット90は、実施例1の荷重伝達部材28に代えて第2荷重伝達手段92を設けたもので、その他の構成は実施例1の荷重伝達ユニット13と同様である。
【0107】
第2荷重伝達手段92は、前ドアビーム52の内部空間(内部)58に収容された荷重伝達部材28と、荷重伝達部材28の後端部に設けられたピストン94と、ピストン94に設けられたロック手段95と、ロック手段95の車体後方に設けられたアクチュエータ96と、車両に作用(入力)した入力荷重を検知する検知センサー(検知手段)97と、検知センサー97からの検知信号に基づいてアクチュエータ96を作動させる制御部98とを備えている。
【0108】
前ドアビーム52は、一例として、中空状の円筒管(パイプ)で形成されることで内部空間58を備えている。
前ドアビーム52の内部空間58に荷重伝達部材28が同軸上に収容されている。
荷重伝達部材28は、前ドアビーム52の内部空間58に同軸上に収容され、前ドアビーム52の長手方向に移動自在に円柱状に形成されている。
【0109】
図17に示すように、前ドア15の前端部15aのうち、荷重伝達部材28の前端部28eに対峙する部位に貫通孔101が形成されている。
貫通孔101は、荷重伝達部材28が貫通可能な孔である。
荷重伝達部材28が貫通孔101を貫通することで、荷重伝達部材28を前ドアビーム52の内部空間58から車体前方に向けて突出させることが可能である。
【0110】
前ドアビーム52の内部空間58から突出した荷重伝達部材28は、前受部42(前壁42a)および前ドアビーム52(前端部52a)間に移動する。
すなわち、荷重伝達部材28は、前ドアビーム52の内部空間58に収容可能で、かつ、内部空間58から前壁42aまで移動(突出)可能なエクステンションビームである。
荷重伝達部材28を前壁42aまで移動することで、荷重伝達部材28を前壁42aおよび前端部52a間に介在させることができる。
【0111】
ピストン94は、円筒形の前ドアビーム52の内部空間58に同軸上に収容されるとともに荷重伝達部材28の後端部28bに設けられ、前ドアビーム52の長手方向に移動自在に円柱状に形成されている。
このピストン94は、アクチュエータ96の作動により車体前方に向けて押し出される部材である。
【0112】
ロック手段95は、荷重伝達部材28を突出させた状態にピストン94を保持する手段である。
このロック手段95は、ピストン94の後端部94aに設けられた一対の係止爪(係止爪)103と、一対の係止爪103をスライド移動自在に支持する一対のガイド部104と、一対の係止爪103間に設けられた圧縮ばね(付勢手段)105と、一対の係止爪103が係止可能な一対の被係止孔106とを備えている。
【0113】
一対の係止爪103は、前ドアビーム52の内部空間58に収容され、前ドアビーム52の半径方向外側に向けて放射状に配置されている。
一対の係止爪103は、一対のガイド部104にそれぞれスライド自在に支持されている。
一対の係止爪103間に圧縮ばね105が設けられ、圧縮ばね105で一対の係止爪103が半径方向外向き(前ドアビーム52の短手方向外側)に付勢されている。
【0114】
一対の係止爪103、一対のガイド部104および圧縮ばね105はピストン94に支持されている。
よって、ピストン94が移動して一対の係止爪103が一対の被係止孔106に対峙(対向)したとき、一対の係止爪103の先端部103aを一対の被係止孔106に係止させることができる。
一対の被係止孔106は、前ドアビーム52の周壁部52cに設けられている。
【0115】
一対の係止爪103を圧縮ばね105で付勢して一対の被係止孔106に係止することで荷重伝達部材28を突出させた状態に保持できる。
このように、ロック手段95を一対の係止爪103や一対の被係止孔106などの簡単な部材で構成することでロック手段95の簡素化を図ることができる。
【0116】
図16に示すように、アクチュエータ96は、前ドアビーム52の内部空間58に収容され、制御部98からの作動信号に基づいてピストン94およびアクチュエータ96間の内部空間58aにガスを充填するものである。
ピストン94およびアクチュエータ96間の内部空間58aにガスを充填することで、ピストン94を前ドアビーム52の長手方向に沿わせて車体前方に向けて移動させることができる。
【0117】
検知センサー97は、車両に入力荷重が作用(入力)した場合に入力荷重を検知して検知信号を制御部98に伝えるセンサーである。
【0118】
制御部98は、検知センサー97からの検知信号に基づいてアクチュエータ96に作動信号を伝えるものである。
制御部98からアクチュエータ96に作動信号を伝えることでアクチュエータ96を作動させることができる。
【0119】
つぎに、前輪12(図1参照)から作用した入力荷重F1を車体側部構造10で支える例を図18、図19に基づいて説明する。
図18(a)に示すように、車体11の前端部に車体前方から入力荷重が作用することにより、検知センサー97で入力荷重を検知して検知信号を制御部98に伝える。
検知信号に基づいて制御部98からアクチュエータ96に作動信号を伝える。
制御部98からアクチュエータ96に作動信号を伝えることでアクチュエータ96が作動してピストン94およびアクチュエータ96間の内部空間58aにガスを充填する。
【0120】
図18(b)に示すように、内部空間58aにガスを充填することで、内部空間58aにガス圧P1が発生する。発生したガス圧P1でピストン94を前ドアビーム52の長手方向に沿わせて車体前方に向けて矢印Dの如く移動する。
ピストン94が車体前方に向けて移動することで、荷重伝達部材28が貫通孔101を貫通してピストン94とともに車体前方に向けて矢印Dの如く移動する。
荷重伝達部材28の前端部28eが前受部42の前壁42aに当接することで、荷重伝達部材28を前ヒンジ14の前壁42aおよび前ドアビーム52の前端部52a間に迅速に介在させることができる。
【0121】
図19(a)に示すように、荷重伝達部材28の前端部28eが前壁42aに当接した状態において、一対の係止爪103が一対の被係止孔106に対峙(対向)する。
一対の係止爪103が一対の被係止孔106に対峙(対向)することにより、一対の係止爪の先端部103aが圧縮ばね105の付勢力で一対の被係止孔106に係止する。
よって、荷重伝達部材28の前端部28eが前受部42の前壁42aに当接した状態に保持される。
【0122】
図19(b)に示すように、前輪から衝撃吸収部材27に入力荷重F1が作用し、作用した入力荷重F1で潰れる(変形する)ことにより入力荷重F1の一部を吸収する。
入力荷重F1の残りの荷重F2が、衝撃吸収部材27および荷重伝達部材28を介して前ドアビーム52の前端部52aに矢印の如く効率よく伝えられる。
前ドアビーム52の前端部52aに荷重F2が伝えられることで、前端部52aに伝えられた荷重F2が、前ドアビーム52を経て車体後方に矢印の如く伝えられる。
【0123】
さらに、荷重伝達部材28を前ドアビーム52の内部空間58に収容することで、荷重伝達部材28に伝えられた荷重F2を前ドアビーム52に直接伝えることができる。
これにより、入力荷重F1が作用した際に、入力荷重F1を前ドアビーム52に効率よく伝えることができ、前ドアビーム52が負担する荷重伝達量を増すことができる。
【0124】
このように、実施例2の荷重伝達ユニット90によれば、実施例1の荷重伝達ユニット13と同様の効果を得ることができる。
【0125】
実施例3に係る荷重伝達ユニット110について説明する。
図20に示すように、荷重伝達ユニット110は、実施例2の第2荷重伝達手段92に代えて第2荷重伝達手段112を設けたもので、その他の構成は実施例2の荷重伝達ユニット90と同様である。
【0126】
第2荷重伝達手段112は、実施例2の第2荷重伝達手段92に備えたピストン94およびロック手段95をピストン114およびロック手段115に代えたもので、その他の構成は実施例2と同様である。
【0127】
ピストン114は、荷重伝達部材28の後端部28bに、アクチュエータ96の作動により車体前方に向けて押し出される部材である。
【0128】
図21に示すように、ロック手段115は、荷重伝達部材28を突出させた状態にピストン114を保持する手段である。
このロック手段115は、ピストン114の外周に設けられた斜面部116と、斜面部116に沿って移動自在に配置された複数の球体(移動規制部材)117とを備えている。
斜面部116は、ピストン114の前端部114aから後端部114bに向かうにつれて徐々に縮径する円錐台状の傾斜面である。
【0129】
このロック手段115は、斜面部116の後端部116a側に複数の球体117が配置されることでピストン114の車体前方への移動を許容する。
球体117は金属製のボールである。
一方、ロック手段115は、斜面部116の前端部116b側に複数の球体117が配置されることで前ドアビーム52の周壁部(内壁部)52cに当接し、複数の球体117でピストン114の車体後方への移動を阻止する。
【0130】
このように、ロック手段115を斜面部116や球体117などの簡単な部材で構成することでロック手段115の簡素化を図ることができる。
さらに、ロック手段115を前ドアビーム52に設ける必要がなくピストン114側にまとめることができるので、ロック手段115の組付けの容易化を図ることができる。
【0131】
つぎに、前輪12(図1参照)から作用した入力荷重F1を車体側部構造10で支える例を図22、図23に基づいて説明する。
図22(a)に示すように、車体11の前端部に車体前方から入力荷重が作用することにより、検知センサー97で入力荷重を検知して検知信号を制御部98に伝える。
検知信号に基づいて制御部98からアクチュエータ96に作動信号を伝える。
制御部98からアクチュエータ96に作動信号を伝えることでアクチュエータ96が作動してピストン114およびアクチュエータ96間の内部空間58aにガスを充填する。
【0132】
図22(b)に示すように、内部空間58aにガスを充填することで、内部空間58aにガス圧P2が発生する。発生したガス圧P2でピストン114を前ドアビーム52の長手方向に沿わせて車体前方に向けて矢印Eの如く移動する。
ピストン114が車体前方に向けて移動することで、荷重伝達部材28が貫通孔101を貫通してピストン114とともに車体前方に向けて矢印Eの如く移動する。
【0133】
荷重伝達部材28の前端部28eが前受部42の前壁42aに当接する。
荷重伝達部材28の前端部28eが前受部42の前壁42aに当接することで、荷重伝達部材28を前ヒンジ14の前壁42aおよび前ドアビーム52の前端部52a間に迅速に介在させることができる。
【0134】
図23(a)に示すように、荷重伝達部材28の前端部28eが前壁42aに当接した状態において、荷重伝達部材28に前壁42aから反作用が作用する。
荷重伝達部材28に前壁42aから反作用が作用することで、荷重伝達部材28が車体後方に移動する。
荷重伝達部材28が車体後方に移動することで、ロック手段115の斜面部116の前端部116b側に複数の球体117が配置されることで前ドアビーム52の周壁部52cに当接し、複数の球体117でピストン114の車体後方への移動を阻止する。
よって、荷重伝達部材28の前端部28eが前受部42の前壁42aに当接した状態に保持される。
【0135】
図23(b)に示すように、前輪から衝撃吸収部材27に入力荷重F1が作用し、作用した入力荷重F1で潰れる(変形する)ことにより入力荷重F1の一部を吸収する。
入力荷重F1の残りの荷重F2が、衝撃吸収部材27および荷重伝達部材28を介して前ドアビーム52の前端部52aに矢印の如く効率よく伝えられる。
前ドアビーム52の前端部52aに荷重F2が伝えられることで、前端部52aに伝えられた荷重F2が、前ドアビーム52を経て車体後方に矢印の如く伝えられる。
【0136】
さらに、荷重伝達部材28を前ドアビーム52の内部空間58に収容することで、荷重伝達部材28に伝えられた荷重F2を前ドアビーム52に直接伝えることができる。
これにより、入力荷重F1が作用した際に、入力荷重F1を前ドアビーム52に効率よく伝えることができ、前ドアビーム52が負担する荷重伝達量を増すことができる。
【0137】
このように、実施例3の荷重伝達ユニット110によれば、実施例1の荷重伝達ユニット13と同様の効果を得ることができる。
【0138】
なお、本発明に係る車体側部構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1〜3では、ヒンジおよびドアとして前ヒンジ14および前ドア15に本発明を適用した例について説明したが、これに限らないで、後ヒンジ16および後ドア17に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【0139】
また、前記実施例1では、荷重伝達部材28の後端部28bを第1突当部38aおよび第2突当部46aの二部材に突き当てる例について説明したが、これに限らないで、後端部28bの全域を第1突当部38aおよび第2突当部46aのいずれか一方(一部材)に突き当てるように構成することも可能である。
【0140】
さらに、前記実施例2,3では、アクチュエータ96からガスを供給してピストン94,114を移動させる例について説明したが、これに限らないで、例えばピストン94,114を機械的に移動させる他のアクチュエータを用いることも可能である。
【0141】
また、前記実施例3では、移動規制部材として金属製の球体117を例示したが、これに限らないで、金属製の球体117に代えて弾性部材などの他の移動規制部材を用いることも可能である。
【0142】
さらに、前記実施例1〜3で示した前後のヒンジ14,16、前後のドア15,17、前後の車体開口部22,24、衝撃吸収部材27、荷重伝達部材28、繊維状部材29、前後の取付部37,71、前後の結合部38,72、第1突当部38a、貫通部40、…テーパ壁40a、前受部42、第2突当部46a、前後のドアビーム52,81、脆弱部88,89a、切込部89、ピストン94,114、ロック手段95,115、アクチュエータ96、検知センサー97、係止爪103、圧縮ばね105、被係止孔106、斜面部116および球体117などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、車体開口部の前部にヒンジを介してドアが設けられ、ドアの内部にドアビームが車体前後方向に向いて設けられた車体側部構造を備えた車両への適用に好適である。
【符号の説明】
【0144】
10…車体側部構造、11…車体、14…前ヒンジ(ヒンジ)、15…前ドア(ドア)、16…後ヒンジ(ヒンジ)、17…後ドア(ドア)、22…前車体開口部(車体開口部)、24…後車体開口部(車体開口部)、27…衝撃吸収部材、28…荷重伝達部材、29…繊維状部材、37…前取付部(取付部)、38…前結合部(結合部)、38a…第1突当部(突当部)、40…貫通部、40a…テーパ壁(摩擦力発生手段)、42…前受部(受部)、46a…第2突当部(突当部)、52…前ドアビーム(ドアビーム)、52a…前ドアビームの前端部(一端部)、52c…前ドアビームの周壁部、58…内部空間(内部)、71…後取付部(取付部)、72…後結合部(結合部)、81…後ドアビーム(ドアビーム)、81a…後ドアビームの前端部(一端部)、88,89a…脆弱部(摩擦力発生手段)、89…切込部(摩擦力発生手段)、94,114…ピストン、95,115…ロック手段、96…アクチュエータ、97…検知センサー(検知手段)、103…一対の係止爪(係止爪)、105…圧縮ばね(付勢手段)、106…一対の被係止孔、114a…ピストンの前端部、114b…ピストンの後端部、116…斜面部、116a…斜面部の後端部、116b…斜面部の前端部、117…球体(移動規制部材)、F1…入力荷重。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に形成された車体開口部にヒンジを介して開閉自在に設けられたドアと、
前記ドアの内部に車体前後方向に沿って設けられ、一端部が前記ヒンジに結合されたドアビームと、を備え、
前記ヒンジは、
前記車体に設けられた取付部と、
前記取付部の後端部に回転自在に支持されるとともに、前記ドアビームに結合された結合部と、を備え、
前記取付部は、
前端部から車幅方向外側に向かって張り出された受部を有し、
前記受部で車体前方から作用した入力荷重を受ける車体側部構造であって、
前記受部の車体前方側に設けられ、前記入力荷重を受けることにより前記受部および前記ドアビームの一端部間に移動可能な荷重伝達部材を備え、
前記荷重伝達部材は、車体前後方向の入力荷重に対する耐力より車幅方向の入力荷重に対する耐力が弱い耐力特性を有することを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記荷重伝達部材は、
車体前後方向の入力荷重に対する耐力が、車体前後方向の入力荷重に対する前記ヒンジの耐力よりも強い耐力特性を有することを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記荷重伝達部材は、
車体前後方向に延長された複数の繊維状部材を束ねた部材であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記受部は、
前記荷重伝達部材が貫通可能な貫通部を備え、
前記ヒンジは、
前記一端部近傍に、前記貫通部を貫通した前記荷重伝達部材が突き当たる突当部を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記貫通部は、
前記荷重伝達部材が摺接しながら貫通することで摩擦力を発生する摩擦力発生手段を有することを特徴とする請求項4記載の車体側部構造。
【請求項6】
前記荷重伝達部材に隣接し、かつ、前記貫通部に対してオフセットした部位に、車体前方からの入力荷重を前記受部に伝える衝撃吸収部材を備えたことを特徴とする請求項4または請求項5記載の車体側部構造。
【請求項7】
前記衝撃吸収部材は、
車体前後方向の入力荷重に対する耐力が、車体前後方向の入力荷重に対する前記ヒンジの耐力よりも弱い耐力特性を有することを特徴とする請求項6記載の車体側部構造。
【請求項8】
前記入力荷重を検知する検知手段と、前記検知手段の検知信号に基づいて作動するアクチュエータと、を備え、
前記荷重伝達部材を前記ドアビームの内部に収容可能なエクステンションビームとし、
前記荷重伝達部材を前記アクチュエータの作動に基づいて前記ドアビームの内部から前記受部まで突出可能とし、
前記荷重伝達部材を突出させた状態に保持するロック手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車体側部構造。
【請求項9】
前記荷重伝達部材の後端部に、前記アクチュエータの作動により車体前方に向けて押し出されるピストンを備え、
前記荷重伝達部材を突出させた状態に前記ピストンを保持するロック手段を備え、
前記ロック手段は、
前記ピストンに設けられた係止爪と、
前記係止爪を前記ドアビームの短手方向外側に向けて付勢する付勢手段と、
前記ドアビームに設けられて前記係止爪が係止される被係止孔と、
を備えたことを特徴とする請求項8記載の車体側部構造。
【請求項10】
前記荷重伝達部材の後端部に、前記アクチュエータの作動により車体前方に向けて押し出されるピストンを備え、
前記荷重伝達部材を突出させた状態に前記ピストンを保持するロック手段を備え、
前記ロック手段は、
前記ピストンの外周に設けられ、前記ピストンの前端部から後端部に向かうにつれて徐々に縮径する斜面部と、
前記斜面部に沿って移動自在に配置された移動規制部材と、を備え、
前記斜面部の後端部側に前記移動規制部材が配置されることで前記ピストンの移動を許容し、
前記斜面部の前端部側に前記移動規制部材が配置されることで前記ドアビームに当接し、前記移動規制部材で前記ピストンの移動を阻止することを特徴とする請求項8記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−30751(P2012−30751A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173901(P2010−173901)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】