説明

車体前部構造

【課題】フロントサイドフレームの前端及びアッパメンバの前端の結合効率を向上することを可能にするとともに、前突荷重及び斜め衝突荷重を、フロントサイドフレームとアッパメンバとに適正に分散することを可能にする。
【解決手段】車体前後方向に延ばされるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の前端に設けられるバンパビームエクステンション21と、バンパビームエクステンション21の前端に設けられるバンパビーム24と、フロントサイドフレーム16の外側に、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパメンバ17と、を備えた車体前部構造において、フロントサイドフレーム16の前端側壁46と、アッパメンバ17の前端側壁47とが連結部材28で連結され、連結部材28が、フロントサイドフレーム16側に連結されるフレーム側連結部材91と、アッパメンバ17側に連結されるメンバ側連結部材92と、に分割構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後方向にフロントサイドフレームが延ばされ、フロントサイドフレームの外側に、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパメンバが設けられた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造には、車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、フロントサイドフレームの外側にアッパメンバを配置し、フロントサイドフレーム及びアッパメンバの前端部に、それぞれ内側及び外側の衝撃吸収部(バンパビームエクステンション)を設け、内側及び外側の衝撃吸収部の前端部にバンパビームを設けたものが知られる。
【0003】
この車体前部構造によれば、車体前方斜めから作用する衝撃荷重で、内側及び外側の衝撃吸収部が車体中心に曲げ変形することを阻止することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−137359公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の車体前部構造では、アッパメンバの前端内側から上及び下の延出部が延ばされ、この上及び下の延出部がフロントサイドフレーム前端の上壁及び下壁に結合されている。
アッパメンバの上及び下の延出部がフロントサイドフレーム前端の上壁及び下壁に結合されているだけなので、フロントサイドフレームの前端とアッパメンバの前端との結合が不十分である。従って、バンパビームからの前突荷重及び斜め衝突荷重を、内側の衝撃吸収部からアッパメンバに伝達しにくく、外側の衝撃吸収部からフロントサイドフレームに伝達しにくい。すなわち、フロントサイドフレームとアッパメンバとに適正に分散することが難しい。
【0006】
本発明は、フロントサイドフレームの前端及びアッパメンバの前端の結合効率を向上することができ、バンパビームからの前突荷重及び斜め衝突荷重を、フロントサイドフレームとアッパメンバとに適正に分散可能となる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延ばされるフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームの前端に設けられるバンパビームエクステンションと、バンパビームエクステンションの前端に設けられるバンパビームと、フロントサイドフレームの外側に、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパメンバと、を備えた車体前部構造において、フロントサイドフレームの前端側壁と、アッパメンバの前端側壁とが連結部材で連結され、連結部材が、フロントサイドフレーム側に連結されるフレーム側連結部材と、アッパメンバ側に連結されるメンバ側連結部材と、に分割構成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、連結部材が、側面視で断面略コ字形状に形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、フレーム側連結部材とメンバ側連結部材とが、フレーム側連結部材とメンバ側連結部材との中央部で結合することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、連結部材が、バンパビームエクステンションを取付けるナットを逃がすナット逃げ部を有し、ナット逃げ部に、補強のための折返しフランジが形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、連結部材の前方に、バンパビームエクステンションが車幅方向に関して重なるように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体前後方向に延ばされるフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームの前端に設けられるバンパビームエクステンションと、バンパビームエクステンションの前端に設けられるバンパビームと、フロントサイドフレームの外側に、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパメンバと、を備える。
フロントサイドフレームの前端側壁と、アッパメンバの前端側壁とが連結部材で連結されたので、側壁間結合により、フロントサイドフレームの前端及びアッパメンバの前端の結合効率を向上することができる。この結果、バンパビームからの前突荷重及び斜め衝突荷重を、フロントサイドフレームとアッパメンバとに適正に分散可能となる。
連結部材が、フロントサイドフレーム側に連結されるフレーム側連結部材と、アッパメンバ側に連結されるメンバ側連結部材と、に分割構成されたので、例えば、予めフロントサイドフレームにフレーム側連結部材を結合し、アッパメンバにメンバ側連結部材を結合しておき、フロントサイドフレーム及びアッパメンバを配置した後に、フレーム側連結部材とメンバ側連結部材とを結合することができる。この結果、フロントサイドフレーム及びアッパメンバが配置される狭い空間に連結部材を配置することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、連結部材が、側面視で断面略コ字形状に形成されたので、断面略コ字形状の上下の稜線により、フロントサイドフレームの前端及びアッパメンバの前端のさらなる結合効率を向上できる。この結果、さらに荷重分散の効率を向上することができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、フレーム側連結部材とメンバ側連結部材とが、フレーム側連結部材とメンバ側連結部材との中央部で結合するので、例えば、フレーム側連結部材とメンバ側連結部材との結合の組立誤差を吸収することができる。これにより、組立性の向上を図ることができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、連結部材が、バンパビームエクステンションを取付けるナットを逃がすナット逃げ部を有し、ナット逃げ部に、補強のための折返しフランジが形成されるので、ナット逃げ部の強度低下を抑制することができる。
【0016】
請求項5に係る発明では、連結部材の前方に、バンパビームエクステンションが車幅方向に関して重なるように配置されるので、バンパビームからの前突荷重及び斜め衝突荷重の荷重分散効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車体前部構造の車体後方からの斜視図である。
【図2】図1に示された車体前部構造の車体前方からの斜視図である。
【図3】図1に示された車体前部構造の平面図である。
【図4】図1に示された車体前部構造のバンパエクステンションを外した状態の正面図である。
【図5】図1に示された車体前部構造の要部を示す平面図である。
【図6】図1に示された車体前部構造の後方からの斜視図である。
【図7】図1に示された車体前部構造の連結部材の正面図である。
【図8】図1に示された車体前部構造の連結部材の平面図である。
【図9】図1に示された車体前部構造の連結部材の後方から見た斜視図である。
【図10】図1に示された車体前部構造の連結部材の側面図である。
【図11】図1に示された車体前部構造の組立手順の前半を示す説明図である。
【図12】図1に示された車体前部構造の組立手順の後半を示す説明図である。
【図13】本発明に係る実施例2の車体前部構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0019】
図1〜図3に示されたように、車体10の前部には、車体前後方向に延ばされるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の外側に並設され、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパメンバ17と、フロントサイドフレーム16の前端に設けられ、車体内側に湾曲するバンパビームエクステンション(内側バンパビームエクステンション)21と、このバンパビームエクステンション21の外側に且つアッパメンバ17の前端に設けられ、中心軸が車体前後方向に直線状の外側バンパビームエクステンション22と、バンパビームエクステンション21及び外側バンパビームエクステンション22が車幅方向に連結される連結プレート23と、バンパビームエクステンション21及び外側バンパビームエクステンション22の前端に設けられるバンパビーム24と、バンパビーム24とバンパビームエクステンション21とを連結する連結ブラケット25と、フロントサイドフレーム16の前端側壁(前端外壁)46とアッパメンバ17の前端側壁(前端内壁)47とを連結する連結部材28と、車体前後方向に関してフロントサイドフレーム16とアッパメンバ17との中間位置に設けられるダンパハウス33と、が設けられる。
【0020】
図1に示された車体前部構造は、フロントサイドフレーム16の前端側壁(前端外壁)46、アッパメンバ17の前端側壁(前端内壁)47、及び連結部材28で構成される部分の構造である。以下、詳細に説明する。
【0021】
図2〜図4に示されたように、フロントサイドフレーム16の前端には、フレーム側取付プレート48が設けられ、このフレーム側取付プレート48に、連結プレート23を介してバンパビームエクステンション21が設けられる。フレーム側取付プレート48には、連結プレート23をボルト締めする複数のナット51が溶接され、フロントサイドフレーム16の内部を臨む開口48aが形成され、この開口48aにフロントサイドフレーム16のフレーム本体41にスポット溶接される延出片48b,48bが形成されている。
【0022】
フロントサイドフレーム16の後端は、サイドフレームエクステンション(不図示)を介して車体前後方向に延ばされるサイドシル(不図示)及びトンネルフレーム(不図示)に接続される。
【0023】
フロントサイドフレーム16は、鋼板にて形成され、断面視コ字断面に形成されるフレーム本体41と、鋼板にて形成され、フレーム本体41に被せるフレーム蓋体(蓋部材)42と、から構成される閉断面構造の部材である。
【0024】
アッパメンバ17は、フロントサイドフレーム16の外側に並設され、車体後方に向けて上方に湾曲する。アッパメンバ17の前端に、メンバ側取付プレート49が設けられ、このメンバ側取付プレート49に、連結プレート23を介して中心軸が車体前後方向に直線状の外側バンパビームエクステンション22が設けられる。メンバ側取付プレート49には、連結プレート23をボルト締めする複数のナット52が溶接され、アッパメンバ17の内部を臨む開口49aが形成され、この開口49aにアッパメンバ17のメンバ本体43にスポット溶接される延出片49bが形成されている。
【0025】
アッパメンバ17は、鋼板にて形成され、断面視コ字断面に形成されるメンバ本体43と、鋼板にて形成され、メンバ本体43に被せるメンバ蓋体(蓋部材)44と、から構成される閉断面構造の部材である。
【0026】
バンパビーム24は、前面中央部に前方からの歩行者への衝撃を吸収する中央衝撃吸収部材(セーフティプレート)54と、端部衝撃吸収部材(セーフティプレート)55とが設けられる。
【0027】
バンパビーム24の後方端部が、バンパビームエクステンション21及び外側バンパビームエクステンション22の前端に取付けられる。さらに、バンパビーム24の後面は、バンパビームエクステンション21に連結ブラケット25を介して連結されている。
【0028】
バンパビームエクステンション21は、断面視多角形断面の筒状に形成される。
また、バンパビームエクステンション21では、先端が車体外方に指向させた湾曲構造(若しくはバナナ構造)が採用されたものである。
【0029】
バンパビームエクステンション21では、板厚は1mmの鋼板が採用される。これにより、連結プレート23に直接MIG溶接が可能になる。すなわち、バンパビームエクステンション21の連結プレート23側の端部21aを、連結プレート23の前面23aに当接させ、バンパビームエクステンション21の断面視多角形断面の筒状の端部21aのほぼ全周を連結プレート23にMIG溶接している。これにより、湾曲する稜線61を連結プレート23の前面23aに着地させることができる。この結果、荷重伝達ロスの低減を図ることができる。
【0030】
外側バンパビームエクステンション22は、断面視多角形断面の筒状に形成される。詳細には、断面矩形筒体の4つのコーナが面取りされた断面視8角形断面の筒状に形成される。
【0031】
外側バンパビームエクステンション22では、板厚1mm以下の鋼板が採用される。従って、連結プレート23側に複数の接合フランジ72a〜72dが形成され、複数の接合フランジが連結プレート23にスポット溶接される。従って、外側バンパビームエクステンション22では、それぞれの稜線71は、連結プレート23の前面23aに接地されてはいない。
また、中心軸が車体前後方向に直線状に形成されている。バンパビームエクステンション21より短く設定される。
【0032】
連結プレート23は、一体的に形成された1枚プレートであり、バンパビームエクステンション(内側バンパビームエクステンション)21及び外側バンパビームエクステンション22を連結する(取付ける)板部材である。
【0033】
バンパビームエクステンション(内側バンパビームエクステンション)21及び外側バンパビームエクステンション22が取付けられた連結プレート23は、フロントサイドフレーム16のフレーム側取付プレート48及びアッパメンバ17のメンバ側取付プレート49にボルト結合される。
【0034】
図2、図3に示されたように、連結ブラケット25は、バンパビーム24内の車幅方向における振動を規制する部材であり、振動を低減することで不快に感じる音(エンジンルーム内にこもる音)を抑制し、車室内の静粛性を向上させる役目をなす。
【0035】
図3〜図6に示されたように、連結部材28は、フロントサイドフレーム16側に連結されるフレーム側連結部材91と、アッパメンバ17側に連結されるメンバ側連結部材92と、に分割構成される。連結部材28は、側面視で断面略コ字形状に形成される。
フレーム側連結部材91は、フロントサイドフレーム16の前端側壁46に連結され、メンバ側連結部材92は、アッパメンバ17の前端側壁47に連結され、フレーム側連結部材91及びメンバ側連結部材92が互いに連結される。
【0036】
すなわち、フロントサイドフレーム16とアッパメンバ17とを結合する連結部材28を、分割構成(左右に分割)するとともに、分割構成したフレーム側連結部材91とメンバ側連結部材92とを結合することで、フロントサイドフレーム16及びアッパメンバ17の結合効率を向上させることができる。この結果、前突が発生したときにフロントサイドフレーム16とアッパメンバ17とに適正に荷重分配することができる構造となる。これにより、軽量化しつつ、衝突性能と剛性性能とを向上させることができる。
【0037】
図7〜図10に示されたように、フレーム側連結部材91は、上壁93a、下壁93b及び縦壁93cから略コ字状に形成される本体部93と、本体部93に形成され、メンバ側連結部材92に接合されるフレーム側結合部94と、本体部93のフロントサイドフレーム16側が折り曲げ形成され、フロントサイドフレーム16のフレーム蓋体42にスポット溶接される側面フランジ95と、本体部93の上面側部から折り曲げ形成され、フロントサイドフレーム16のフレーム蓋体42にスポット溶接される上面側部フランジ96と、本体部93の上面端部から折り曲げ形成され、フロントサイドフレーム16のフレーム側取付プレート48にスポット溶接される上前フランジ97と、本体部93の下面側部から折り曲げ形成され、フロントサイドフレーム16のフレーム蓋体42にスポット溶接される下面側部フランジ98と、本体部93の下面端部から折り曲げ形成され、フロントサイドフレーム16のフレーム側取付プレート48にスポット溶接される下前フランジ99と、からなる。
【0038】
メンバ側連結部材92は、上壁103a、下壁103b及び縦壁103cから略コ字状に形成される本体部103と、本体部103に形成され、フレーム側連結部材91に接合されるメンバ側結合部104と、本体部103のアッパメンバ17側が折り曲げ形成され、アッパメンバ17のメンバ本体43にスポット溶接される側面フランジ105と、本体部103の上面側部から延ばされ、アッパメンバ17のメンバ本体43にスポット溶接される上面側部フランジ106と、上面側部フランジ106から折り曲げ形成され、アッパメンバ17のメンバ側取付プレート49にスポット溶接される上前フランジ107と、本体部103の下面側部から延ばされ、アッパメンバ17のメンバ本体43にスポット溶接される下面側部フランジ108と、下面側部フランジ108から折り曲げ形成され、アッパメンバ17のメンバ側取付プレート49にスポット溶接される下前フランジ109と、連結プレート23をフレーム側取付プレート48及びメンバ側取付プレート49に締結するためのナット52を逃げるナット逃げ部111(図6参照)と、このナット逃げ部111の廻りを補強する折返しフランジ112(図6参照)と、が形成される。
【0039】
図6に示されたように、折返しフランジ112により、ナット逃げ部111の強度が補完される。なお、ナット逃げ部111及び折返しフランジ112は、メンバ側連結部材92の略コ字状の本体部103、側面フランジ105及び上前フランジ107廻りに形成される。
【0040】
図9、図10において、一点鎖線の丸印は、スポット溶接箇所を示す。すなわち、フレーム側結合部94とメンバ側結合部104とは、それぞれの上壁93a,103a同士で1箇所、下壁93b,103b同士で1箇所、縦壁93c,103c同士で2箇所のスポット溶接がされる。なお、フレーム側連結部材91とメンバ側連結部材92とが、フレーム側連結部材91とメンバ側連結部材92との中央部で結合する。
【0041】
フレーム側連結部材91の側面フランジ95は、2箇所のスポット溶接がされ、フレーム側連結部材91の上面側部フランジ96、上前フランジ97、下面側部フランジ98及び下前フランジ99では1箇所のスポット溶接がされる。
【0042】
メンバ側連結部材92の側面フランジ105は、3箇所のスポット溶接がされ、メンバ側連結部材92の上前フランジ107及び下前フランジ109では、2箇所のスポット溶接がされ、メンバ側連結部材92の上面側部フランジ106及び下面側部フランジ108(一点鎖線の丸印は不図示)では1箇所のスポット溶接がされる。
【0043】
フレーム側連結部材91の本体部93及びメンバ側連結部材92の本体部103は、略コ字状に形成される。それぞれの本体部93,103をスポット溶接することで、フロントサイドフレーム16とアッパメンバ17との間に、略コ字状断面の連続させた本体部93,103を配置することができる。すなわち、フレーム側連結部材91の本体部93及びメンバ側連結部材92の本体部103の上下の稜線113,114(図6参照)によって、フロントサイドフレーム16とアッパメンバ17とが強固に支持される。
【0044】
さらに、フレーム側連結部材91の側面フランジ95、上面側部フランジ96及び下面側部フランジ98をフロントサイドフレーム16のフレーム蓋体42に結合し、メンバ側連結部材92の側面フランジ105、上面側部フランジ106及び下面側部フランジ108をアッパメンバ17のメンバ本体43に結合することで、フロントサイドフレーム16とアッパメンバ17とを強固に固定することができる。
【0045】
例えば、連結部材28を、フロントサイドフレーム16側に連結されるフレーム側連結部材91と、アッパメンバ17側に連結されるメンバ側連結部材92と、に分割構成しない場合には、フロントサイドフレーム16及びアッパメンバ17組立後には、フロントサイドフレーム16及びアッパメンバ17との空間が小さく、フレーム側連結部材91の側面フランジ95をフロントサイドフレーム16のフレーム蓋体(蓋部材)42にスポット溶接することはできない。また、メンバ側連結部材92の側面フランジ105がアッパメンバ17のメンバ本体43にスポット溶接することはできない。
【0046】
そこで、連結部材28を、フレーム側連結部材91とメンバ側連結部材92とに分割構成する必要性がある。以下、フレーム側連結部材91及びメンバ側連結部材92の組手順を説明する。
【0047】
図7、図8、図11で、フロントサイドフレーム16、アッパメンバ17、フレーム側連結部材91及びメンバ側連結部材92の組立手順の一例を説明する。
予め、フロントサイドフレーム16にフレーム側連結部材91の側面フランジ95、上面側部フランジ96及び下面側部フランジ98を溶接する。アッパメンバ17にメンバ側連結部材92の側面フランジ105、上面側部フランジ106及び下面側部フランジ108を溶接する。
フレーム側連結部材91を組立済みのフロントサイドフレーム16と、メンバ側連結部材92を組立済みのアッパメンバ17とを組立てる。
【0048】
図4,図12に示されたように、フロントサイドフレーム16及びアッパメンバ17の組立後、アッパメンバ17にメンバ側取付プレート49をスポット溶接する。詳細には、メンバ側取付プレート49に設けられた開口からスポット溶接用ガンを挿入し、開口49aの縁に設けられた延出片49bを前端側壁47の内側にスポット溶接する。
【0049】
同様に、フロントサイドフレーム16にフレーム側取付プレート48をスポット溶接する。詳細には、フレーム側取付プレート48に設けられた開口48aからスポット溶接用ガンを挿入し、開口48aの縁に設けられた複数の延出片48bをフレーム蓋体42若しくはフレーム本体41にスポット溶接する。
【0050】
メンバ側取付プレート49及びフレーム側取付プレート48をスポット溶接後、フレーム側結合部94とメンバ側結合部104とを結合し、フレーム側連結部材91の上前フランジ97及び下前フランジ99を、フレーム側取付プレート48にスポット溶接し、メンバ側連結部材92の上前フランジ107及び下前フランジ109を、メンバ側取付プレート49にスポット溶接する。
【0051】
図3に示されたように、車体前部構造では、フロントサイドフレーム16側に連結されるフレーム側連結部材91と、アッパメンバ17側に連結されるメンバ側連結部材92と、に分割構成された連結部材28が設けられる。矢印c1の如く斜め衝突が発生した場合には、外側バンパビームエクステンション22に矢印c2の如く伝達され、連結部材28に矢印c3の如く衝突荷重を伝達することができ、アッパメンバ17よりも強度の高いフロントサイドフレーム16に矢印c4の如く伝達することができる。
【0052】
図1、図2に示された車体前部構造では、車体前後方向に延ばされるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の前端に設けられるバンパビームエクステンション21と、バンパビームエクステンション21の前端に設けられるバンパビーム24と、フロントサイドフレーム16の外側に、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパメンバ17と、を備える。
【0053】
フロントサイドフレーム16の前端側壁46と、アッパメンバ17の前端側壁47とが連結部材28で連結されたので、側壁46,47間結合により、フロントサイドフレーム16の前端及びアッパメンバ17の前端の結合効率を向上することができる。この結果、バンパビーム24からの前突荷重及び斜め衝突荷重を、フロントサイドフレーム16とアッパメンバ17とに適正に分散可能となる。
【0054】
連結部材28が、フロントサイドフレーム16側に連結されるフレーム側連結部材91と、アッパメンバ17側に連結されるメンバ側連結部材92と、に分割構成されたので、例えば、予めフロントサイドフレーム16にフレーム側連結部材91を結合し、アッパメンバ17にメンバ側連結部材92を結合しておき、フロントサイドフレーム16及びアッパメンバ17を配置した後に、フレーム側連結部材91とメンバ側連結部材92とを結合することができる。この結果、フロントサイドフレーム16及びアッパメンバ17が配置される狭い空間に連結部材28を配置することができる。
【0055】
図6、図10に示されたように、車体前部構造では、連結部材28が、側面視で断面略コ字形状に形成されたので、断面略コ字形状の上下の稜線113,114により、フロントサイドフレーム16の前端及びアッパメンバ17の前端のさらなる結合効率を向上できる。この結果、さらに荷重分散の効率を向上することができる。
【0056】
図6に示されたように、車体前部構造では、フレーム側連結部材91とメンバ側連結部材92とが、フレーム側連結部材91とメンバ側連結部材92との中央部で結合するので、例えば、フレーム側連結部材91とメンバ側連結部材92との結合の組立誤差を吸収することができる。これにより、組立性の向上を図ることができる。
【0057】
図6に示されたように、車体前部構造では、連結部材28が、バンパビームエクステンション21を取付けるナット52を逃がすナット逃げ部111を有し、ナット逃げ部111に、補強のための折返しフランジ112が形成されるので、ナット逃げ部111の強度低下を抑制することができる。
【実施例2】
【0058】
図13には、実施例2の車体前部構造が示される。実施例1の車体前部構造(図3参照)と同一部品は同一符号を用い、詳細な説明は省略した。
実施例2の車体前部構造では、実施例1の車体前部構造のバンパビームエクステンション21及び外側バンパビームエクステンション22の2つのエクステンションから、車幅方向に広い1つのバンパビームエクステンション121に置き換えたものである。
【0059】
すなわち、車体120の前部には、車体前後方向に延ばされるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の外側に並設され、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパメンバ17と、フロントサイドフレーム16の前端に設けられ、中心線A2から車体内側が外側に向けに湾曲し、中心線A2から車体外側が直線状のバンパビームエクステンション121と、バンパビームエクステンション121が支持される支持プレート123と、バンパビームエクステンション121の前端に設けられるバンパビーム24と、フロントサイドフレーム16の前端側壁(前端外壁)46とアッパメンバ17の前端側壁(前端内壁)47とを連結する連結部材28と、が設けられる。
【0060】
連結部材28は、フロントサイドフレーム16側に連結されるフレーム側連結部材91と、アッパメンバ17側に連結されるメンバ側連結部材92と、に分割構成される。
【0061】
実施例2の車体前部構造では、バンパビームエクステンション121は、断面視八角形断面の筒状に形成される。筒状断面の中心線の一点鎖線A2の内側が湾曲し、外側が直線状に形成されている。車幅方向に関してフロントサイドフレーム16内側から連結部材28の外側、且つアッパメンバ17の前端側壁(内壁)47とラップするまで拡幅した。すなわち、バンパビームエクステンション121が連結部材28及びアッパメンバ17の前端側壁(内壁)47と車幅方向に関して重なるように配置される。
【0062】
図13に示されたように、第2実施例の車体前部構造では、フロントサイドフレーム16側に連結されるフレーム側連結部材91と、アッパメンバ17側に連結されるメンバ側連結部材92と、に分割構成された連結部材28が設けられ、図13の矢印d1の如く斜め衝突が発生した場合には、内側の湾曲形状に沿ってフロントサイドフレーム16に伝達される矢印d4に示される伝達荷重の他に、バンパビームエクステンションに矢印d2の如く伝達され、連結部材28に矢印d3の如く衝突荷重を伝達することができ、アッパメンバ17に矢印d4の如く伝達することができる。
【0063】
図13に示されたように、第2実施例の車体前部構造では、バンパビームエクステンション121を拡幅し、図3に示された外側バンパビームエクステンション22を廃止し、連結部材28の前方に、バンパビームエクステンション121が車幅方向に関して重なるように配置されるので、バンパビーム24からの前突荷重及び斜め衝突荷重を、フロントサイドフレーム16及びアッパメンバ17へ分散することができ、荷重分散効率の向上を図ることができる。
【0064】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図9に示すように、フレーム側連結部材91とメンバ側連結部材92とが、フレーム側連結部材91とメンバ側連結部材92との中央部にて、上壁93a,103a同士で1箇所、縦壁93c,103c同士で2箇所、下壁93b,103b同士で1箇所のスポット溶接がされたが、スポット溶接箇所は適宜増減することを妨げるものではない。その他のスポット溶接箇所についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る車体前部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0066】
10…車両、16…フロントサイドフレーム、17…アッパメンバ、21…バンパビームエクステンション(内側バンパビームエクステンション)、22…外側バンパビームエクステンション、28…連結部材、46…前端側壁(前端外壁)、47…前端側壁(前端内壁)、91…フレーム側連結部材、92…メンバ側連結部材、111…ナット逃げ部、112…折返しフランジ、120…車両、121…バンパビームエクステンション。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延ばされるフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームの前端に設けられるバンパビームエクステンションと、バンパビームエクステンションの前端に設けられるバンパビームと、前記フロントサイドフレームの外側に、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパメンバと、を備えた車体前部構造において、
前記フロントサイドフレームの前端側壁と、前記アッパメンバの前端側壁とが連結部材で連結され、
前記連結部材は、前記フロントサイドフレーム側に連結されるフレーム側連結部材と、前記アッパメンバ側に連結されるメンバ側連結部材と、に分割構成されたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記連結部材は、側面視で断面略コ字形状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記フレーム側連結部材と前記メンバ側連結部材とは、該フレーム側連結部材と該メンバ側連結部材との中央部で結合することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記連結部材は、前記バンパビームエクステンションを取付けるナットを逃がすナット逃げ部を有し、該ナット逃げ部は、補強のための折返しフランジが形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記連結部材の前方に、前記バンパビームエクステンションが車幅方向に関して重なるように配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−35704(P2012−35704A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176569(P2010−176569)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】