車体前部構造
【課題】衝撃吸収領域の拡大を図り、衝撃吸収量を増大することを可能にするとともに、モードコントロールの安定化を図ることを可能にする。
【解決手段】車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の後方に配置されるフロントピラー19と、フロントサイドフレーム16の上方でフロントピラー19から前方に向けて延び、フロントサイドフレーム16の車幅外側に配置されるアッパフレーム17と、下端33b側がフロントサイドフレーム16に結合され、上端33a側がアッパフレーム17に結合されるダンパ部33と、を備えた車体前部構造であって、ダンパ部33とアッパフレーム17との結合部(サイド結合部)93に、車幅方向に屈曲した屈曲部94を備える。
【解決手段】車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の後方に配置されるフロントピラー19と、フロントサイドフレーム16の上方でフロントピラー19から前方に向けて延び、フロントサイドフレーム16の車幅外側に配置されるアッパフレーム17と、下端33b側がフロントサイドフレーム16に結合され、上端33a側がアッパフレーム17に結合されるダンパ部33と、を備えた車体前部構造であって、ダンパ部33とアッパフレーム17との結合部(サイド結合部)93に、車幅方向に屈曲した屈曲部94を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームの後方にフロントピラーを配置し、フロントサイドフレームの上方でフロントピラーから前方に向けて延びるアッパフレームを配置し、フロントサイドフレーム及びアッパフレームに結合されるダンパ部(ダンパハウジング)を配置した車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、車室の前壁をなすダッシュボードロアの下部に連なるダッシュボードクロスメンバと、ダッシュボードクロスメンバから車両前方へ延設しエンジンルームの左右に配置されたフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームに取付けられているダンパハウジング(ダンパ部)と、を備える。
【0003】
ダンパハウジング(ダンパ部)には、車両前方へ向いている前壁部に連なりフロントサイドフレーム内を仕切る仕切壁(バルクヘッド)を備える。フロントサイドフレームには、バルクヘッドより車両前方に設けた前部変形部と、バルクヘッドより車両後方で内側壁部に設けた内脆弱と、ダンパハウジングより車両後方で外側壁部に凹状に形成した外脆弱と、を備えている。
【0004】
この車体前部構造によれば、前突エネルギーの大半を、フロントサイドフレームの変形で吸収することが可能である。これにより、前突時のフロントサイドフレームの変形モードを安定化することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−255883公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、キャビン領域拡大のために、エンジンルームの前後長を短くするショートオーバハング化の傾向がある。エンジンルームの前後長を短くすることは、前突荷重の吸収領域を縮小することとなり、より効率的な前突エネルギーの吸収性能が求められる。
特許文献1の車体前部構造では、前突エネルギーの大半はフロントサイドフレームの変形で吸収する構造となっているため、前突エネルギー吸収性能がフロントサイドフレームの剛性に依存する。従って、他の部位を利用したより効率的な前突エネルギーの吸収ができない。
【0007】
さらに、フロントサイドフレームの変形モードを安定化するために、ダンパハウジング(ダンパ部)のフロントサイドフレームへの設置部が、開ロを有する二股の脚形状となっている。すなわち、ダンパハウジングのダンパ支持剛性の低下が考えられる。
また、フロントサイドフレームへの設置部を開ロのない面形状にすればダンパ支持剛性は向上できるものの、変形モードの安定化が困難である。従って、ダンパハウジング前端の前方領域を衝撃吸収領域に設定するしか、前突エネルギー吸収性能を向上させることができない。
【0008】
本発明は、衝撃吸収領域の拡大が図れるとともに、衝撃吸収量を増大できる車体前部構造を提供することを課題とする。また、モードコントロールの安定化を図ることができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延びるフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームの後方に配置されるフロントピラーと、フロントサイドフレームの上方でフロントピラーから前方に向けて延び、フロントサイドフレームの車幅外側に配置されるアッパフレームと、下端側がフロントサイドフレームに結合され、上端側がアッパフレームに結合されるダンパ部と、を備えた車体前部構造であって、ダンパ部とアッパフレームとの結合部に、車幅方向に屈曲した屈曲部を備えることを特徴とする。
なお、ダンパ部は、ダンパ(ダンパユニット)が取付けられるダンパベースと、このダンパベースの廻りに形成されるダンパハウジングと、から構成される。
【0010】
請求項2に係る発明は、アッパフレームに、ダンパ部が結合される領域を補強する補強板を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、補強板に、ダンパ部の屈曲部に対応する位置に補強板側屈曲部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、アッパフレームが、後端に向かうに連れて下方に湾曲し、ホイールアーチ形状に沿わせるアーチ形状部を備え、補強板に、アーチ形状部の前方に配置され、アッパフレームの長手方向に沿って延びる補強板側ビードを備え、補強板側ビードが、後端側が前端側よりも上方側に位置してアーチ形状部から離間するよう配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、フロントピラーとアッパフレームとの間に設けられ、車幅方向に延びる断面コ字状のカウルボックスを備え、カウルボックスに、車幅方向外側に指向する側面を備え、側面に、カウルボックスの閉断面潰れを防止するスティフナを配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、スティフナに前後方向に延びるスティフナ側ビードを備え、スティフナ側ビードを、補強板側ビードに連続するように配置することを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、ダンパ部が、屈曲部の車幅中央側部位に、車幅方向に突出して上下に延在する縦ビードを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明は、フロントサイドフレームに、縦ビードと車体前後方向で略同位置に配置される変形容易部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体前後方向に延びるフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームの後方に配置されるフロントピラーと、フロントサイドフレームの上方でフロントピラーから前方に向けて延び、フロントサイドフレームの車幅外側に配置されるアッパフレームと、下端側がフロントサイドフレームに結合され、上端側がアッパフレームに結合されるダンパ部と、を備える。
ダンパ部とアッパフレームとの結合部に、車幅方向に屈曲した屈曲部を備えるので、屈曲部の前方領域を衝撃吸収領域とすることができる。これにより、衝撃吸収領域の拡大を図ることができる。また、ダンパ部とアッパフレームとの結合部に、車幅方向に屈曲した屈曲部を備えるので、例えば、厚板で形成されたダンパ部を衝撃吸収部材として利用でき、衝撃吸収量の増大を図ることができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、アッパフレームに、ダンパ部が結合される領域を補強する補強板を備える。すなわち、補強板の強度を変えることで、ダンパ部の屈曲変形よりも先にアッパフレームを変形するようモードコントロールすることができる。この結果、アッパフレームの潰れ残りがなくなり、衝撃吸収効率が向上する。
【0019】
請求項3に係る発明では、補強板に、ダンパ部の屈曲部に対応する位置に補強板側屈曲部を備えるので、ダンパ部の屈曲変形よりも先にアッパフレームを変形するようモードコントロールしつつ、ダンパ部の屈曲変形をより確実なものにすることができる。この結果、衝撃吸収効率の向上を図ることができるとともに、モードコントロールの安定化を図ることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、アッパフレームが、後端に向かうに連れて下方に湾曲し、ホイールアーチ形状に沿わせるアーチ形状部を備え、補強板に、アーチ形状部の前方に配置され、アッパフレームの長手方向に沿って延びる補強板側ビードを備える。
補強板側ビードが、後端側が前端側よりも上方側に位置してアーチ形状部から離間するよう配置されるので、アッパフレームの後端部のアーチ形状部に前突荷重が集中して折れが発生し、フロントピラーに荷重が上手く伝達されず(モードコントロールが安定せず)にキャビンを変形させる虞れを排除することができる。すなわち、アーチ形状部から離間側となる上方側へ荷重伝達することができ、アッパフレームの後端部の折れの発生を防止することができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、フロントピラーとアッパフレームとの間に設けられ、車幅方向に延びる断面コ字状のカウルボックスを備える。カウルボックスには、車幅方向外側に指向する側面を備え、側面に、カウルボックスの閉断面潰れを防止するスティフナを配置した。
カウルボックスの断面潰れが発生するとアッパフレームからフロントピラーに荷重が上手く伝達されず(モードコントロールが安定せず)にキャビンを変形させる虞れを排除し、アッパフレーム、ダンパ部が変形した後のカウルボックスの断面潰れをスティフナで防止することで、断面形状を維持したまま荷重を確実にフロントピラーへ伝達させることができ、キャビン(客室)の変形を防止することができる。
【0022】
請求項6に係る発明では、スティフナに前後方向に延びるスティフナ側ビードを備え、スティフナ側ビードを、補強板側ビードに連続するように配置するので、補強板からスティフナへの荷重伝達量を増やし、アーチ形状部への荷重伝達量を減らすことができる。
【0023】
請求項7に係る発明では、ダンパ部が、屈曲部の車幅中央側部位に、車幅方向に突出して上下に延在する縦ビードを備えるので、ダンパ部の屈曲変形をより確実なものとすることができ、衝撃吸収領域の拡大、衝撃吸収量の増大が図れる。
【0024】
請求項8に係る発明では、フロントサイドフレームに、縦ビードと車体前後方向で略同位置に配置される変形容易部を備えるので、さらに、ダンパ部の屈曲変形をより確実なものとすることができ、さらなる衝撃吸収領域の拡大及び衝撃吸収量の増大が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
【図2】図1に示された車体前部構造の車体内方からの側面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図1に示された車体前部構造の車体内方上部からの斜視図である。
【図6】図1に示された車体前部構造の車体外方からの側面図である。
【図7】図6に示された車体前部構造の変形区間の説明図である。
【図8】図6に示された車体前部構造の要部を拡大した側面図である。
【図9】図1に示された車体前部構造の説明図である。
【図10】図1に示された車体前部構造のカウルボックスを示す斜視図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0027】
図1〜図6に示されたように、車体10の前部には、正面視矩形状に形成されるフロントバルクヘッド31と、フロントバルクヘッド31の車幅外側で前後方向に延びるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の外側に並設され、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパフレーム(アッパメンバ)17と、フロントサイドフレーム16の後方に配置されるフロントピラー19と、エンジンルーム13とキャビン(車室)12とを仕切るダッシュボード14と、下端33b側が前記フロントサイドフレーム16に結合されるとともに、上端33a側がアッパフレーム17に結合され、ダンパユニット(不図示)が支持するダンパ部33と、フロントサイドフレーム16の前端に設けられた内側の衝撃吸収部材(内側バンパビームエクステンション)21と、このバンパビームエクステンション21の外側に且つアッパフレーム17の前端に設けられた外側の衝撃吸収部材(外側バンパビームエクステンション)22と、内側の衝撃吸収部材21及び外側の衝撃吸収部材22が車幅方向に連結される連結プレート23と、内側の衝撃吸収部材21及び外側の衝撃吸収部材22の前端に設けられるバンパビーム24と、図10に示されるダッシュボード14のダッシュロアパネル(ダッシュボードロア)37の上部に構成され、ワイパユニット(不図示)の駆動部分が収納されるカウルボックス34と、が設けられる。
【0028】
図1に示される車体前部構造は、フロントサイドフレーム16、フロントピラー19、アッパフレーム17、ダンパ部33及びカウルボックス34廻りの補強及び結合構造である。以下、詳細に説明する。
【0029】
フロントサイドフレーム16、アッパフレーム17、フロントピラー19、内側の衝撃吸収部材21、外側の衝撃吸収部材22、連結プレート23、ダンパ部33は、車幅方向に関して左右対称に一対設けられている。
また、ダンパ部33は、不図示のダンパ(ダンパユニット)が取付けられるダンパベース55と、このダンパベース55の廻りに形成されるダンパハウジング56と、から構成される。さらに、ダンパ部33の上端33aは、ダンパベース55の端部に相当する位置(アッパフレーム17の結合部位)をいう。ダンパ部33の下端33bは、ダンパハウジング56の下部に相当する位置(フロントサイドフレーム16の結合部位)をいう。図1では車体10の右側を示す。
【0030】
フロントサイドフレーム16の前端部16aは、アッパフレーム17の前端部17aと同一面となるよう結合されている。すなわち、フロントサイドフレーム16の前端部16aにフロントサイドフレーム16側のフランジ53を備え、アッパフレーム17の前端部17aにアッパフレーム17のフランジ54を備え、フランジ53,54は連続的に且つ同一面になるように設けられる。
【0031】
フロントサイドフレーム16側のフランジ53は、車幅内側に延出され、フロントバルクヘッド31の左右を構成するサイドステー47の閉断面と車体前後方向で且つ車幅方向にラップする。符号53aは、サイドステー47にラップするオーバラップ部である。
フロントサイドフレーム16は、閉断面形状に形成される。
【0032】
フロントサイドフレーム16は、後端がダッシュボード14に結合されて前方側に延びる部材であるともいえる。フロントサイドフレーム16とダッシュボード14との結合部71は、結合部71を補強する補強用ブラケット72を備える。
【0033】
フロントサイドフレーム16は、フロントサイドフレーム16の長手途中に、長手方向に沿って延びる横ビード73,73と、ダンパ部33のダンパハウジング56が接地する範囲内に、前後入力に対する耐力がフロントサイドフレーム16の他の部位に比較して低くされた変形容易部75と、が形成される。
なお、図2、図7に示されたように、横ビード73,73は、フロントサイドフレーム16の内側及び外側に、且つ車体前後方向に関して同位置に形成されている。
【0034】
図2に示されたように、変形容易部75は、横ビード73の後端部73bより後方に設定される。変形容易部75は、折れ線が形成される。その他、他の部分に比べて縮小した断面に形成してもよく、ノッチや切り欠きを形成したものであってもよい。変形容易部75は、ダンパ部33とフロントサイドフレーム16の折れの起点としての作用をなす。なお、変形容易部75は、横ビード73の前端部73aより前方に形成されたものであってもよい。また、S2はフロントサイドフレーム16にダンパ部33のダンパハウジング56が接地するダンパハウジング接地範囲を示す。
さらに、変形容易部75は、後述するダンパ部33のダンパハウジング56の縦ビード76と車体前後方向で略同位置に配置される。
【0035】
図7、図9に示されたように、アッパフレーム17は、ダンパ部33が結合される領域(結合領域)S3を補強する補強板91を備え、アッパフレーム17の下部に、後端に向かうに連れて下方に湾曲し、ホイールアーチ35形状に沿わせるアーチ形状部92を備える。
【0036】
図1、図9に示されたように、ダンパ部33のダンパベース55は、アッパフレーム17との結合部(サイド結合部)93に、車幅方向外側に屈曲した屈曲部94を備える。
【0037】
図1、図8に示されたように、補強板91は、ダンパベース55の屈曲部94に対応する位置に形成した補強板側屈曲部95と、アーチ形状部92の前方に配置され、アッパフレーム17の長手方向に沿って延びる補強板側ビード96と、が形成される。
補強板側ビード96は、後端96b側が前端96a側よりも上方側に位置してアーチ形状部92から離間するよう配置される。
【0038】
図1に示されたように、内側の衝撃吸収部材21は、フロントサイドフレーム16の前端部16aに設けられ、フロントバルクヘッド31よりも前方に延びる。さらに、先端が車幅外方に指向するように湾曲して形成される。これにより、バンパビーム24に車幅外方から斜めに前突荷重が作用する場合に、内側の衝撃吸収部材21に円滑に潰れを発生させ、衝撃の吸収を促進することができる。
【0039】
外側の衝撃吸収部材22は、アッパフレーム17の前端部17aに設けられるとともに、車体前方に直線的に延ばされている。これにより、バンパビーム24に前突荷重が作用する場合に、外側の衝撃吸収部材22に円滑に潰れを発生させ、衝撃の吸収を促進することができる。
【0040】
連結プレート23は、車幅方向に延ばされた部材であり、内側の衝撃吸収部材21と外側の衝撃吸収部材22を一体的に載置する部材である。
【0041】
フロントバルクヘッド31は、車幅方向に延びるアッパステー45及びロアステー(不図示)と、車体上下方向に延びる左右一対のサイドステー47(図1参照)と、から構成される。
【0042】
図9(a),(b)に示されたように、ダンパ部33のダンパベース55は、厚板で形成されている。さらに、ダンパ部33は、屈曲部94の車幅中央側部位に、車幅方向に凸形状に突出させ上下方向に延びる(車幅方向に突出して上下に延在する)縦ビード76を備える。
【0043】
縦ビード76は、フロントサイドフレーム16の変形容易部75と車体前後方向で同一位置に配置され、前側の稜線76aと後側の稜線76bとを備える。詳細には、縦ビード76の前側の稜線76aが、フロントサイドフレーム16の変形容易部75と車体前後方向で同一位置に配置されている。なお、縦ビード76は、ダンパ部33のダンパハウジング56に形成されている。
【0044】
前側の稜線76aは、変形容易部75に向かって延び、後側の稜線76bは、フロントサイドフレーム16とダッシュボード14との結合部71に向かって延びるよう形成される。前側の稜線76aと後側の稜線76bとの間の幅は、フロントサイドフレーム16に結合される下方部位に向かうに連れて徐々に広がるよう末広がり形状に形成される。
【0045】
図1、図10に示されたように、ダッシュボード14は、キャビン(車室)12内とエンジンルーム13を仕切るダッシュロアパネル37と、ダッシュロアパネル37の上部に設けられるダッシュアッパパネル38とから構成されている。
【0046】
図8、図10、図11に示されたように、カウルボックス34は、側面視でフロントピラー19の前側とアッパフレーム17後側との間に設けられ、車幅方向に延びる断面コ字状の前方が開口された空間部104を有する。
【0047】
カウルボックス34は、ダッシュロアパネル(ダッシュボードロア)37の上部に設けられるダッシュアッパパネル(ダッシュボードアッパ)38と、フロントガラス(不図示)を支持するウインドシールド101と、ダッシュアッパパネル38の上部に設けられ、ダッシュアッパパネル38を補強するダッシュクロスメンバ102と、これらのダッシュロアパネル37、ウインドシールド101及びダッシュクロスメンバ102の側面に設けられる左右の側面(サイドパネル)103,103と、から構成される。
【0048】
さらに、カウルボックス34は、ダッシュロアパネル37の上部に設けられる。空間部(内部)104には、ワイパユニット(不図示)を構成するリンク、ピボット及びモータなどが収納されている。
【0049】
サイドパネル(カウルサイドパネル)103,103には、カウルボックス34の閉断面潰れを防止するスティフナ105が配置される。
スティフナ105は、前後方向に延びるスティフナ側ビード106(図8参照)を備える。スティフナ側ビード106は、補強板側ビード96に連続するように配置される。
【0050】
図7に、前突荷重が作用したときのエンジンルーム13内の変形区間B1〜B4が示される。変形区間B1では、フロントサイドフレーム16及びアッパフレーム17が車体前後方向に延ばされているので圧縮変形が促進される。変形区間B2では、アッパフレーム17が車体後方に向かうに連れて斜め上方に屈曲しているので折れ変形が促進される。変形区間B3では、フロントサイドフレーム16及びアッパフレーム17が概ね車体前後方向に延ばされているので圧縮変形が促進される。変形区間B4では、フロントサイドフレーム16に変形容易部75、ダンパ部33に屈曲部94及び補強板91に補強板側屈曲部95が形成されているので折れ変形が促進される。
【0051】
図8及び図9(a),(b)に示されたように、ダンパ部33のダンパベース55の前後中間位置に屈曲部94を設け、この屈曲部94をダンパ部33の折れ点とする。これにより、ダンパ部33の屈曲部(折れ点)94に相当する前後中間位置よりも前方の領域が衝撃吸収領域D1とする。例えば、屈曲部94がない場合には、ダンパ部33の前方が衝撃吸収領域D2となる(D1>D2)。従って、衝撃吸収領域D2の拡大が図れる。また、厚板のダンパベース55を衝撃吸収部材に利用して、衝撃吸収量の増大を図る。
【0052】
アッパフレーム17のダンパ部33が結合される領域(結合領域)に補強板91を付設する。これにより、ダンパ部33の屈曲変形よりも先にアッパフレーム17を変形するように、モードコントロールする。すなわち、アッパフレーム17の潰れ残りをなくし、衝撃吸収効率の向上を図る。
【0053】
ダンパ部33の屈曲部94に合わせて補強板91に補強板側屈曲部95を設ける。これにより、ダンパ部33の屈曲変形よりも先に、アッパフレーム17を変形するようモードコントロールしつつも、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものとする。すなわち、衝撃吸収効率の向上と、モードコントロールの安定化との両立を図る。
【0054】
アッパフレーム17の長手方向に沿って延ばされた補強板側ビード96を、後端96b側が前端96a側よりも上方に位置するように配置する。例えば、アッパフレーム17の後端のアーチ形状部92に前突荷重が集中して折れが発生し、フロントピラー19に荷重が上手く伝達されずに(モードコントロールが安定せずに)、図6に示されたキャビン(車室)12を変形させる虞れがある。補強板側ビード96を、後端96b側が前端96a側よりも上方に位置するように配置することで、上方側へ荷重伝達することが可能になり、アーチ形状部92の折れの発生を防止できる。
【0055】
図8に示されたように、アッパフレーム17の後部に位置するカウルボックス34の側面103にスティフナ105を配置する。これにより、カウルボックス34の断面潰れの防止を図る。例えば、カウルボックス34の断面潰れが発生するとアッパフレーム17からフロントピラー19に荷重が上手く伝達されずに(モードコントロールが安定せずに)、図6に示されたキャビン(車室)12を変形させる虞れがある。そこで、アッパフレーム17、ダンパ部33が変形した後のカウルボックス34の断面潰れをスティフナ105で防止した。すなわち、カウルボックス34の断面形状を維持したまま、荷重を確実にフロントピラー19へ伝達させ、キャビンの変形を防止する。
【0056】
スティフナ105に前後方向に延びるスティフナ側ビード106を設け、このスティフナ側ビード106と補強板側ビード96とが連続するよう配置する。これにより、補強板91からスティフナ105への荷重伝達量を増やし、アーチ形状部92への荷重伝達量を減らす。
【0057】
図9(a),(b)に示されたように、ダンパ部33の車幅中央側の面に、屈曲部94と前後方向で略同位置に配置される縦ビード76を配置する。これにより、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものとする。すなわち、さらなる衝撃吸収領域の拡大、衝撃吸収量の増大を図る。
【0058】
フロントサイドフレーム16に、屈曲部94及び縦ビード76と前後方向で略同位置に配置される変形容易部75を備える。これにより、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものとする。なお一層の衝撃吸収領域の拡大、衝撃吸収量の増大を図る。
【0059】
図1に示されたように、車体前部構造では、車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の後方に配置されるフロントピラー19と、フロントサイドフレーム16の上方でフロントピラー19から前方に向けて延び、フロントサイドフレーム16の車幅外側に配置されるアッパフレーム17と、下端33b側がフロントサイドフレーム16に結合され、上端33a側がアッパフレーム17に結合されるダンパ部33と、を備える。
【0060】
ダンパ部33とアッパフレーム17との結合部(サイド結合部)93に、車幅方向に屈曲した屈曲部94を備えるので、屈曲部94の前方領域を衝撃吸収領域とすることができる。これにより、衝撃吸収領域の拡大を図ることができる。また、ダンパ部33とアッパフレーム17との結合部(サイド結合部)93に、車幅方向に屈曲した屈曲部94を備えるので、例えば、厚板で形成されたダンパベース55を衝撃吸収部材として利用でき、衝撃吸収量の増大を図ることができる。
【0061】
図7に示されたように、車体前部構造では、アッパフレーム17に、ダンパ部33が結合される領域を補強する補強板91を備える。すなわち、補強板91の強度を変えることで、ダンパ部33の屈曲変形よりも先にアッパフレーム17を変形するようモードコントロールすることができる。この結果、アッパフレームの潰れ残りがなくなり、衝撃吸収効率が向上する。
【0062】
図1、図7に示されたように、車体前部構造では、補強板91に、ダンパ部33のダンパベース55の屈曲部94に対応する位置に補強板側屈曲部95を備えるので、ダンパ部33の屈曲変形よりも先にアッパフレームを変形するようモードコントロールしつつ、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものにすることができる。この結果、衝撃吸収効率の向上を図ることができるとともに、モードコントロールの安定化を図ることができる。
【0063】
図6、図7に示されたように、車体前部構造では、アッパフレーム17が、後端に向かうに連れて下方に湾曲し、ホイールアーチ35形状に沿わせるアーチ形状部92を備え、補強板91に、アーチ形状部92の前方に配置され、アッパフレーム17の長手方向に沿って延びる補強板側ビード96備える。
【0064】
補強板側ビード96が、後端96b側が前端96a側よりも上方側に位置してアーチ形状部92から離間するよう配置されるので、アッパフレーム17の後端部のアーチ形状部92に前突荷重が集中して折れが発生し、フロントピラー19に荷重が上手く伝達されず(モードコントロールが安定せず)に、車室(キャビン)12を変形させる虞れを排除することができる。すなわち、アーチ形状部92から離間側となる上方側へ荷重伝達することができ、アッパフレーム17の後端部の折れの発生を防止することができる。
【0065】
図8に示されたように、車体前部構造では、フロントピラー19とアッパフレーム17との間に設けられ、車幅方向に延びる断面コ字状の空間部104を有するカウルボックス34を備える。カウルボックス34には、車幅方向外側に指向する側面(サイドパネル)103を備え、側面103に、カウルボックス34の閉断面潰れを防止するスティフナ105を配置した。
【0066】
カウルボックス34の断面潰れが発生するとアッパフレーム17からフロントピラー19に荷重が上手く伝達されず(モードコントロールが安定せず)にキャビンを変形させる虞れがあるため、その虞れをを排除し、アッパフレーム17、ダンパ部33が変形した後のカウルボックス34の断面潰れをスティフナ105で防止することで、断面形状を維持したまま荷重を確実にフロントピラー19へ伝達させることができ、キャビン(客室)の変形を防止することができる。
【0067】
図8に示されたように、車体前部構造では、スティフナ105に前後方向に延びるスティフナ側ビード106を備え、スティフナ側ビード106を、補強板側ビード96に連続するように配置するので、補強板91からスティフナ105への荷重伝達量を増やし、アーチ形状部92への荷重伝達量を減らすことができる。
【0068】
図9(a),(b)に示されたように、車体前部構造では、ダンパ部33が、屈曲部94の車幅中央側部位に、車幅方向に突出して上下に延在する縦ビード76を備えるので、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものとすることができ、衝撃吸収領域の拡大、衝撃吸収量の増大が図れる。
【0069】
図9(a),(b)に示されたように、車体前部構造では、フロントサイドフレーム16に、縦ビード76と車体前後方向で略同位置に配置される変形容易部75を備えるので、さらに、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものとすることができ、さらなる衝撃吸収領域の拡大及び衝撃吸収量の増大が図れる。
【0070】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図2に示すように、変形容易部75は、横ビード73の後端部73bより後方に設定されたが、これに限るものではなく、変形容易部75は、横ビード73の前端部73aより前方に形成されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、フロントサイドフレームの後方にフロントピラーが配置され、下端側がフロントサイドフレームに結合され、上端側が前記アッパフレームに結合されるダンパ部(ダンパハウジング)が設けられた車体前部構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0072】
10…車体、16…フロントサイドフレーム、17…アッパフレーム、19…フロントピラー、33…ダンパ部、33a…上端、33b…下端、34…カウルボックス、75…変形容易部、76…縦ビード、91…補強板、92…アーチ形状部、93…結合部(サイド結合部)、94…屈曲部、95…補強板側屈曲部、96…補強板側ビード、105…スティフナ、106…スティフナ側ビード。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームの後方にフロントピラーを配置し、フロントサイドフレームの上方でフロントピラーから前方に向けて延びるアッパフレームを配置し、フロントサイドフレーム及びアッパフレームに結合されるダンパ部(ダンパハウジング)を配置した車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、車室の前壁をなすダッシュボードロアの下部に連なるダッシュボードクロスメンバと、ダッシュボードクロスメンバから車両前方へ延設しエンジンルームの左右に配置されたフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームに取付けられているダンパハウジング(ダンパ部)と、を備える。
【0003】
ダンパハウジング(ダンパ部)には、車両前方へ向いている前壁部に連なりフロントサイドフレーム内を仕切る仕切壁(バルクヘッド)を備える。フロントサイドフレームには、バルクヘッドより車両前方に設けた前部変形部と、バルクヘッドより車両後方で内側壁部に設けた内脆弱と、ダンパハウジングより車両後方で外側壁部に凹状に形成した外脆弱と、を備えている。
【0004】
この車体前部構造によれば、前突エネルギーの大半を、フロントサイドフレームの変形で吸収することが可能である。これにより、前突時のフロントサイドフレームの変形モードを安定化することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−255883公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、キャビン領域拡大のために、エンジンルームの前後長を短くするショートオーバハング化の傾向がある。エンジンルームの前後長を短くすることは、前突荷重の吸収領域を縮小することとなり、より効率的な前突エネルギーの吸収性能が求められる。
特許文献1の車体前部構造では、前突エネルギーの大半はフロントサイドフレームの変形で吸収する構造となっているため、前突エネルギー吸収性能がフロントサイドフレームの剛性に依存する。従って、他の部位を利用したより効率的な前突エネルギーの吸収ができない。
【0007】
さらに、フロントサイドフレームの変形モードを安定化するために、ダンパハウジング(ダンパ部)のフロントサイドフレームへの設置部が、開ロを有する二股の脚形状となっている。すなわち、ダンパハウジングのダンパ支持剛性の低下が考えられる。
また、フロントサイドフレームへの設置部を開ロのない面形状にすればダンパ支持剛性は向上できるものの、変形モードの安定化が困難である。従って、ダンパハウジング前端の前方領域を衝撃吸収領域に設定するしか、前突エネルギー吸収性能を向上させることができない。
【0008】
本発明は、衝撃吸収領域の拡大が図れるとともに、衝撃吸収量を増大できる車体前部構造を提供することを課題とする。また、モードコントロールの安定化を図ることができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延びるフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームの後方に配置されるフロントピラーと、フロントサイドフレームの上方でフロントピラーから前方に向けて延び、フロントサイドフレームの車幅外側に配置されるアッパフレームと、下端側がフロントサイドフレームに結合され、上端側がアッパフレームに結合されるダンパ部と、を備えた車体前部構造であって、ダンパ部とアッパフレームとの結合部に、車幅方向に屈曲した屈曲部を備えることを特徴とする。
なお、ダンパ部は、ダンパ(ダンパユニット)が取付けられるダンパベースと、このダンパベースの廻りに形成されるダンパハウジングと、から構成される。
【0010】
請求項2に係る発明は、アッパフレームに、ダンパ部が結合される領域を補強する補強板を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、補強板に、ダンパ部の屈曲部に対応する位置に補強板側屈曲部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、アッパフレームが、後端に向かうに連れて下方に湾曲し、ホイールアーチ形状に沿わせるアーチ形状部を備え、補強板に、アーチ形状部の前方に配置され、アッパフレームの長手方向に沿って延びる補強板側ビードを備え、補強板側ビードが、後端側が前端側よりも上方側に位置してアーチ形状部から離間するよう配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、フロントピラーとアッパフレームとの間に設けられ、車幅方向に延びる断面コ字状のカウルボックスを備え、カウルボックスに、車幅方向外側に指向する側面を備え、側面に、カウルボックスの閉断面潰れを防止するスティフナを配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、スティフナに前後方向に延びるスティフナ側ビードを備え、スティフナ側ビードを、補強板側ビードに連続するように配置することを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、ダンパ部が、屈曲部の車幅中央側部位に、車幅方向に突出して上下に延在する縦ビードを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明は、フロントサイドフレームに、縦ビードと車体前後方向で略同位置に配置される変形容易部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体前後方向に延びるフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームの後方に配置されるフロントピラーと、フロントサイドフレームの上方でフロントピラーから前方に向けて延び、フロントサイドフレームの車幅外側に配置されるアッパフレームと、下端側がフロントサイドフレームに結合され、上端側がアッパフレームに結合されるダンパ部と、を備える。
ダンパ部とアッパフレームとの結合部に、車幅方向に屈曲した屈曲部を備えるので、屈曲部の前方領域を衝撃吸収領域とすることができる。これにより、衝撃吸収領域の拡大を図ることができる。また、ダンパ部とアッパフレームとの結合部に、車幅方向に屈曲した屈曲部を備えるので、例えば、厚板で形成されたダンパ部を衝撃吸収部材として利用でき、衝撃吸収量の増大を図ることができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、アッパフレームに、ダンパ部が結合される領域を補強する補強板を備える。すなわち、補強板の強度を変えることで、ダンパ部の屈曲変形よりも先にアッパフレームを変形するようモードコントロールすることができる。この結果、アッパフレームの潰れ残りがなくなり、衝撃吸収効率が向上する。
【0019】
請求項3に係る発明では、補強板に、ダンパ部の屈曲部に対応する位置に補強板側屈曲部を備えるので、ダンパ部の屈曲変形よりも先にアッパフレームを変形するようモードコントロールしつつ、ダンパ部の屈曲変形をより確実なものにすることができる。この結果、衝撃吸収効率の向上を図ることができるとともに、モードコントロールの安定化を図ることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、アッパフレームが、後端に向かうに連れて下方に湾曲し、ホイールアーチ形状に沿わせるアーチ形状部を備え、補強板に、アーチ形状部の前方に配置され、アッパフレームの長手方向に沿って延びる補強板側ビードを備える。
補強板側ビードが、後端側が前端側よりも上方側に位置してアーチ形状部から離間するよう配置されるので、アッパフレームの後端部のアーチ形状部に前突荷重が集中して折れが発生し、フロントピラーに荷重が上手く伝達されず(モードコントロールが安定せず)にキャビンを変形させる虞れを排除することができる。すなわち、アーチ形状部から離間側となる上方側へ荷重伝達することができ、アッパフレームの後端部の折れの発生を防止することができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、フロントピラーとアッパフレームとの間に設けられ、車幅方向に延びる断面コ字状のカウルボックスを備える。カウルボックスには、車幅方向外側に指向する側面を備え、側面に、カウルボックスの閉断面潰れを防止するスティフナを配置した。
カウルボックスの断面潰れが発生するとアッパフレームからフロントピラーに荷重が上手く伝達されず(モードコントロールが安定せず)にキャビンを変形させる虞れを排除し、アッパフレーム、ダンパ部が変形した後のカウルボックスの断面潰れをスティフナで防止することで、断面形状を維持したまま荷重を確実にフロントピラーへ伝達させることができ、キャビン(客室)の変形を防止することができる。
【0022】
請求項6に係る発明では、スティフナに前後方向に延びるスティフナ側ビードを備え、スティフナ側ビードを、補強板側ビードに連続するように配置するので、補強板からスティフナへの荷重伝達量を増やし、アーチ形状部への荷重伝達量を減らすことができる。
【0023】
請求項7に係る発明では、ダンパ部が、屈曲部の車幅中央側部位に、車幅方向に突出して上下に延在する縦ビードを備えるので、ダンパ部の屈曲変形をより確実なものとすることができ、衝撃吸収領域の拡大、衝撃吸収量の増大が図れる。
【0024】
請求項8に係る発明では、フロントサイドフレームに、縦ビードと車体前後方向で略同位置に配置される変形容易部を備えるので、さらに、ダンパ部の屈曲変形をより確実なものとすることができ、さらなる衝撃吸収領域の拡大及び衝撃吸収量の増大が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す平面図である。
【図2】図1に示された車体前部構造の車体内方からの側面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図1に示された車体前部構造の車体内方上部からの斜視図である。
【図6】図1に示された車体前部構造の車体外方からの側面図である。
【図7】図6に示された車体前部構造の変形区間の説明図である。
【図8】図6に示された車体前部構造の要部を拡大した側面図である。
【図9】図1に示された車体前部構造の説明図である。
【図10】図1に示された車体前部構造のカウルボックスを示す斜視図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0027】
図1〜図6に示されたように、車体10の前部には、正面視矩形状に形成されるフロントバルクヘッド31と、フロントバルクヘッド31の車幅外側で前後方向に延びるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の外側に並設され、車体後方に向けて上方に湾曲されるアッパフレーム(アッパメンバ)17と、フロントサイドフレーム16の後方に配置されるフロントピラー19と、エンジンルーム13とキャビン(車室)12とを仕切るダッシュボード14と、下端33b側が前記フロントサイドフレーム16に結合されるとともに、上端33a側がアッパフレーム17に結合され、ダンパユニット(不図示)が支持するダンパ部33と、フロントサイドフレーム16の前端に設けられた内側の衝撃吸収部材(内側バンパビームエクステンション)21と、このバンパビームエクステンション21の外側に且つアッパフレーム17の前端に設けられた外側の衝撃吸収部材(外側バンパビームエクステンション)22と、内側の衝撃吸収部材21及び外側の衝撃吸収部材22が車幅方向に連結される連結プレート23と、内側の衝撃吸収部材21及び外側の衝撃吸収部材22の前端に設けられるバンパビーム24と、図10に示されるダッシュボード14のダッシュロアパネル(ダッシュボードロア)37の上部に構成され、ワイパユニット(不図示)の駆動部分が収納されるカウルボックス34と、が設けられる。
【0028】
図1に示される車体前部構造は、フロントサイドフレーム16、フロントピラー19、アッパフレーム17、ダンパ部33及びカウルボックス34廻りの補強及び結合構造である。以下、詳細に説明する。
【0029】
フロントサイドフレーム16、アッパフレーム17、フロントピラー19、内側の衝撃吸収部材21、外側の衝撃吸収部材22、連結プレート23、ダンパ部33は、車幅方向に関して左右対称に一対設けられている。
また、ダンパ部33は、不図示のダンパ(ダンパユニット)が取付けられるダンパベース55と、このダンパベース55の廻りに形成されるダンパハウジング56と、から構成される。さらに、ダンパ部33の上端33aは、ダンパベース55の端部に相当する位置(アッパフレーム17の結合部位)をいう。ダンパ部33の下端33bは、ダンパハウジング56の下部に相当する位置(フロントサイドフレーム16の結合部位)をいう。図1では車体10の右側を示す。
【0030】
フロントサイドフレーム16の前端部16aは、アッパフレーム17の前端部17aと同一面となるよう結合されている。すなわち、フロントサイドフレーム16の前端部16aにフロントサイドフレーム16側のフランジ53を備え、アッパフレーム17の前端部17aにアッパフレーム17のフランジ54を備え、フランジ53,54は連続的に且つ同一面になるように設けられる。
【0031】
フロントサイドフレーム16側のフランジ53は、車幅内側に延出され、フロントバルクヘッド31の左右を構成するサイドステー47の閉断面と車体前後方向で且つ車幅方向にラップする。符号53aは、サイドステー47にラップするオーバラップ部である。
フロントサイドフレーム16は、閉断面形状に形成される。
【0032】
フロントサイドフレーム16は、後端がダッシュボード14に結合されて前方側に延びる部材であるともいえる。フロントサイドフレーム16とダッシュボード14との結合部71は、結合部71を補強する補強用ブラケット72を備える。
【0033】
フロントサイドフレーム16は、フロントサイドフレーム16の長手途中に、長手方向に沿って延びる横ビード73,73と、ダンパ部33のダンパハウジング56が接地する範囲内に、前後入力に対する耐力がフロントサイドフレーム16の他の部位に比較して低くされた変形容易部75と、が形成される。
なお、図2、図7に示されたように、横ビード73,73は、フロントサイドフレーム16の内側及び外側に、且つ車体前後方向に関して同位置に形成されている。
【0034】
図2に示されたように、変形容易部75は、横ビード73の後端部73bより後方に設定される。変形容易部75は、折れ線が形成される。その他、他の部分に比べて縮小した断面に形成してもよく、ノッチや切り欠きを形成したものであってもよい。変形容易部75は、ダンパ部33とフロントサイドフレーム16の折れの起点としての作用をなす。なお、変形容易部75は、横ビード73の前端部73aより前方に形成されたものであってもよい。また、S2はフロントサイドフレーム16にダンパ部33のダンパハウジング56が接地するダンパハウジング接地範囲を示す。
さらに、変形容易部75は、後述するダンパ部33のダンパハウジング56の縦ビード76と車体前後方向で略同位置に配置される。
【0035】
図7、図9に示されたように、アッパフレーム17は、ダンパ部33が結合される領域(結合領域)S3を補強する補強板91を備え、アッパフレーム17の下部に、後端に向かうに連れて下方に湾曲し、ホイールアーチ35形状に沿わせるアーチ形状部92を備える。
【0036】
図1、図9に示されたように、ダンパ部33のダンパベース55は、アッパフレーム17との結合部(サイド結合部)93に、車幅方向外側に屈曲した屈曲部94を備える。
【0037】
図1、図8に示されたように、補強板91は、ダンパベース55の屈曲部94に対応する位置に形成した補強板側屈曲部95と、アーチ形状部92の前方に配置され、アッパフレーム17の長手方向に沿って延びる補強板側ビード96と、が形成される。
補強板側ビード96は、後端96b側が前端96a側よりも上方側に位置してアーチ形状部92から離間するよう配置される。
【0038】
図1に示されたように、内側の衝撃吸収部材21は、フロントサイドフレーム16の前端部16aに設けられ、フロントバルクヘッド31よりも前方に延びる。さらに、先端が車幅外方に指向するように湾曲して形成される。これにより、バンパビーム24に車幅外方から斜めに前突荷重が作用する場合に、内側の衝撃吸収部材21に円滑に潰れを発生させ、衝撃の吸収を促進することができる。
【0039】
外側の衝撃吸収部材22は、アッパフレーム17の前端部17aに設けられるとともに、車体前方に直線的に延ばされている。これにより、バンパビーム24に前突荷重が作用する場合に、外側の衝撃吸収部材22に円滑に潰れを発生させ、衝撃の吸収を促進することができる。
【0040】
連結プレート23は、車幅方向に延ばされた部材であり、内側の衝撃吸収部材21と外側の衝撃吸収部材22を一体的に載置する部材である。
【0041】
フロントバルクヘッド31は、車幅方向に延びるアッパステー45及びロアステー(不図示)と、車体上下方向に延びる左右一対のサイドステー47(図1参照)と、から構成される。
【0042】
図9(a),(b)に示されたように、ダンパ部33のダンパベース55は、厚板で形成されている。さらに、ダンパ部33は、屈曲部94の車幅中央側部位に、車幅方向に凸形状に突出させ上下方向に延びる(車幅方向に突出して上下に延在する)縦ビード76を備える。
【0043】
縦ビード76は、フロントサイドフレーム16の変形容易部75と車体前後方向で同一位置に配置され、前側の稜線76aと後側の稜線76bとを備える。詳細には、縦ビード76の前側の稜線76aが、フロントサイドフレーム16の変形容易部75と車体前後方向で同一位置に配置されている。なお、縦ビード76は、ダンパ部33のダンパハウジング56に形成されている。
【0044】
前側の稜線76aは、変形容易部75に向かって延び、後側の稜線76bは、フロントサイドフレーム16とダッシュボード14との結合部71に向かって延びるよう形成される。前側の稜線76aと後側の稜線76bとの間の幅は、フロントサイドフレーム16に結合される下方部位に向かうに連れて徐々に広がるよう末広がり形状に形成される。
【0045】
図1、図10に示されたように、ダッシュボード14は、キャビン(車室)12内とエンジンルーム13を仕切るダッシュロアパネル37と、ダッシュロアパネル37の上部に設けられるダッシュアッパパネル38とから構成されている。
【0046】
図8、図10、図11に示されたように、カウルボックス34は、側面視でフロントピラー19の前側とアッパフレーム17後側との間に設けられ、車幅方向に延びる断面コ字状の前方が開口された空間部104を有する。
【0047】
カウルボックス34は、ダッシュロアパネル(ダッシュボードロア)37の上部に設けられるダッシュアッパパネル(ダッシュボードアッパ)38と、フロントガラス(不図示)を支持するウインドシールド101と、ダッシュアッパパネル38の上部に設けられ、ダッシュアッパパネル38を補強するダッシュクロスメンバ102と、これらのダッシュロアパネル37、ウインドシールド101及びダッシュクロスメンバ102の側面に設けられる左右の側面(サイドパネル)103,103と、から構成される。
【0048】
さらに、カウルボックス34は、ダッシュロアパネル37の上部に設けられる。空間部(内部)104には、ワイパユニット(不図示)を構成するリンク、ピボット及びモータなどが収納されている。
【0049】
サイドパネル(カウルサイドパネル)103,103には、カウルボックス34の閉断面潰れを防止するスティフナ105が配置される。
スティフナ105は、前後方向に延びるスティフナ側ビード106(図8参照)を備える。スティフナ側ビード106は、補強板側ビード96に連続するように配置される。
【0050】
図7に、前突荷重が作用したときのエンジンルーム13内の変形区間B1〜B4が示される。変形区間B1では、フロントサイドフレーム16及びアッパフレーム17が車体前後方向に延ばされているので圧縮変形が促進される。変形区間B2では、アッパフレーム17が車体後方に向かうに連れて斜め上方に屈曲しているので折れ変形が促進される。変形区間B3では、フロントサイドフレーム16及びアッパフレーム17が概ね車体前後方向に延ばされているので圧縮変形が促進される。変形区間B4では、フロントサイドフレーム16に変形容易部75、ダンパ部33に屈曲部94及び補強板91に補強板側屈曲部95が形成されているので折れ変形が促進される。
【0051】
図8及び図9(a),(b)に示されたように、ダンパ部33のダンパベース55の前後中間位置に屈曲部94を設け、この屈曲部94をダンパ部33の折れ点とする。これにより、ダンパ部33の屈曲部(折れ点)94に相当する前後中間位置よりも前方の領域が衝撃吸収領域D1とする。例えば、屈曲部94がない場合には、ダンパ部33の前方が衝撃吸収領域D2となる(D1>D2)。従って、衝撃吸収領域D2の拡大が図れる。また、厚板のダンパベース55を衝撃吸収部材に利用して、衝撃吸収量の増大を図る。
【0052】
アッパフレーム17のダンパ部33が結合される領域(結合領域)に補強板91を付設する。これにより、ダンパ部33の屈曲変形よりも先にアッパフレーム17を変形するように、モードコントロールする。すなわち、アッパフレーム17の潰れ残りをなくし、衝撃吸収効率の向上を図る。
【0053】
ダンパ部33の屈曲部94に合わせて補強板91に補強板側屈曲部95を設ける。これにより、ダンパ部33の屈曲変形よりも先に、アッパフレーム17を変形するようモードコントロールしつつも、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものとする。すなわち、衝撃吸収効率の向上と、モードコントロールの安定化との両立を図る。
【0054】
アッパフレーム17の長手方向に沿って延ばされた補強板側ビード96を、後端96b側が前端96a側よりも上方に位置するように配置する。例えば、アッパフレーム17の後端のアーチ形状部92に前突荷重が集中して折れが発生し、フロントピラー19に荷重が上手く伝達されずに(モードコントロールが安定せずに)、図6に示されたキャビン(車室)12を変形させる虞れがある。補強板側ビード96を、後端96b側が前端96a側よりも上方に位置するように配置することで、上方側へ荷重伝達することが可能になり、アーチ形状部92の折れの発生を防止できる。
【0055】
図8に示されたように、アッパフレーム17の後部に位置するカウルボックス34の側面103にスティフナ105を配置する。これにより、カウルボックス34の断面潰れの防止を図る。例えば、カウルボックス34の断面潰れが発生するとアッパフレーム17からフロントピラー19に荷重が上手く伝達されずに(モードコントロールが安定せずに)、図6に示されたキャビン(車室)12を変形させる虞れがある。そこで、アッパフレーム17、ダンパ部33が変形した後のカウルボックス34の断面潰れをスティフナ105で防止した。すなわち、カウルボックス34の断面形状を維持したまま、荷重を確実にフロントピラー19へ伝達させ、キャビンの変形を防止する。
【0056】
スティフナ105に前後方向に延びるスティフナ側ビード106を設け、このスティフナ側ビード106と補強板側ビード96とが連続するよう配置する。これにより、補強板91からスティフナ105への荷重伝達量を増やし、アーチ形状部92への荷重伝達量を減らす。
【0057】
図9(a),(b)に示されたように、ダンパ部33の車幅中央側の面に、屈曲部94と前後方向で略同位置に配置される縦ビード76を配置する。これにより、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものとする。すなわち、さらなる衝撃吸収領域の拡大、衝撃吸収量の増大を図る。
【0058】
フロントサイドフレーム16に、屈曲部94及び縦ビード76と前後方向で略同位置に配置される変形容易部75を備える。これにより、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものとする。なお一層の衝撃吸収領域の拡大、衝撃吸収量の増大を図る。
【0059】
図1に示されたように、車体前部構造では、車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム16と、フロントサイドフレーム16の後方に配置されるフロントピラー19と、フロントサイドフレーム16の上方でフロントピラー19から前方に向けて延び、フロントサイドフレーム16の車幅外側に配置されるアッパフレーム17と、下端33b側がフロントサイドフレーム16に結合され、上端33a側がアッパフレーム17に結合されるダンパ部33と、を備える。
【0060】
ダンパ部33とアッパフレーム17との結合部(サイド結合部)93に、車幅方向に屈曲した屈曲部94を備えるので、屈曲部94の前方領域を衝撃吸収領域とすることができる。これにより、衝撃吸収領域の拡大を図ることができる。また、ダンパ部33とアッパフレーム17との結合部(サイド結合部)93に、車幅方向に屈曲した屈曲部94を備えるので、例えば、厚板で形成されたダンパベース55を衝撃吸収部材として利用でき、衝撃吸収量の増大を図ることができる。
【0061】
図7に示されたように、車体前部構造では、アッパフレーム17に、ダンパ部33が結合される領域を補強する補強板91を備える。すなわち、補強板91の強度を変えることで、ダンパ部33の屈曲変形よりも先にアッパフレーム17を変形するようモードコントロールすることができる。この結果、アッパフレームの潰れ残りがなくなり、衝撃吸収効率が向上する。
【0062】
図1、図7に示されたように、車体前部構造では、補強板91に、ダンパ部33のダンパベース55の屈曲部94に対応する位置に補強板側屈曲部95を備えるので、ダンパ部33の屈曲変形よりも先にアッパフレームを変形するようモードコントロールしつつ、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものにすることができる。この結果、衝撃吸収効率の向上を図ることができるとともに、モードコントロールの安定化を図ることができる。
【0063】
図6、図7に示されたように、車体前部構造では、アッパフレーム17が、後端に向かうに連れて下方に湾曲し、ホイールアーチ35形状に沿わせるアーチ形状部92を備え、補強板91に、アーチ形状部92の前方に配置され、アッパフレーム17の長手方向に沿って延びる補強板側ビード96備える。
【0064】
補強板側ビード96が、後端96b側が前端96a側よりも上方側に位置してアーチ形状部92から離間するよう配置されるので、アッパフレーム17の後端部のアーチ形状部92に前突荷重が集中して折れが発生し、フロントピラー19に荷重が上手く伝達されず(モードコントロールが安定せず)に、車室(キャビン)12を変形させる虞れを排除することができる。すなわち、アーチ形状部92から離間側となる上方側へ荷重伝達することができ、アッパフレーム17の後端部の折れの発生を防止することができる。
【0065】
図8に示されたように、車体前部構造では、フロントピラー19とアッパフレーム17との間に設けられ、車幅方向に延びる断面コ字状の空間部104を有するカウルボックス34を備える。カウルボックス34には、車幅方向外側に指向する側面(サイドパネル)103を備え、側面103に、カウルボックス34の閉断面潰れを防止するスティフナ105を配置した。
【0066】
カウルボックス34の断面潰れが発生するとアッパフレーム17からフロントピラー19に荷重が上手く伝達されず(モードコントロールが安定せず)にキャビンを変形させる虞れがあるため、その虞れをを排除し、アッパフレーム17、ダンパ部33が変形した後のカウルボックス34の断面潰れをスティフナ105で防止することで、断面形状を維持したまま荷重を確実にフロントピラー19へ伝達させることができ、キャビン(客室)の変形を防止することができる。
【0067】
図8に示されたように、車体前部構造では、スティフナ105に前後方向に延びるスティフナ側ビード106を備え、スティフナ側ビード106を、補強板側ビード96に連続するように配置するので、補強板91からスティフナ105への荷重伝達量を増やし、アーチ形状部92への荷重伝達量を減らすことができる。
【0068】
図9(a),(b)に示されたように、車体前部構造では、ダンパ部33が、屈曲部94の車幅中央側部位に、車幅方向に突出して上下に延在する縦ビード76を備えるので、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものとすることができ、衝撃吸収領域の拡大、衝撃吸収量の増大が図れる。
【0069】
図9(a),(b)に示されたように、車体前部構造では、フロントサイドフレーム16に、縦ビード76と車体前後方向で略同位置に配置される変形容易部75を備えるので、さらに、ダンパ部33の屈曲変形をより確実なものとすることができ、さらなる衝撃吸収領域の拡大及び衝撃吸収量の増大が図れる。
【0070】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図2に示すように、変形容易部75は、横ビード73の後端部73bより後方に設定されたが、これに限るものではなく、変形容易部75は、横ビード73の前端部73aより前方に形成されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、フロントサイドフレームの後方にフロントピラーが配置され、下端側がフロントサイドフレームに結合され、上端側が前記アッパフレームに結合されるダンパ部(ダンパハウジング)が設けられた車体前部構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0072】
10…車体、16…フロントサイドフレーム、17…アッパフレーム、19…フロントピラー、33…ダンパ部、33a…上端、33b…下端、34…カウルボックス、75…変形容易部、76…縦ビード、91…補強板、92…アーチ形状部、93…結合部(サイド結合部)、94…屈曲部、95…補強板側屈曲部、96…補強板側ビード、105…スティフナ、106…スティフナ側ビード。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びるフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームの後方に配置されるフロントピラーと、前記フロントサイドフレームの上方で前記フロントピラーから前方に向けて延び、前記フロントサイドフレームの車幅外側に配置されるアッパフレームと、下端側が前記フロントサイドフレームに結合され、上端側が前記アッパフレームに結合されるダンパ部と、を備えた車体前部構造であって、
前記ダンパ部と前記アッパフレームとの結合部に、車幅方向に屈曲した屈曲部を備えることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記アッパフレームは、前記ダンパ部が結合される領域を補強する補強板を備えることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記補強板は、前記ダンパ部の屈曲部に対応する位置に補強板側屈曲部を備えることを特徴とする請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記アッパフレームは、後端に向かうに連れて下方に湾曲し、ホイールアーチ形状に沿わせるアーチ形状部を備え、
前記補強板は、前記アーチ形状部の前方に配置され、前記アッパフレームの長手方向に沿って延びる補強板側ビードを備え、
該補強板側ビードは、後端側が前端側よりも上方側に位置して前記アーチ形状部から離間するよう配置されることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記フロントピラーと前記アッパフレームとの間に設けられ、車幅方向に延びる断面コ字状のカウルボックスを備え、
前記カウルボックスは、車幅方向外側に指向する側面を備え、該側面に、前記カウルボックスの閉断面潰れを防止するスティフナを配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記スティフナに前後方向に延びるスティフナ側ビードを備え、
該スティフナ側ビードは、前記補強板側ビードに連続するように配置することを特徴とする請求項5記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記ダンパ部は、前記屈曲部の車幅中央側部位に、車幅方向に突出して上下に延在する縦ビードを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の車体前部構造。
【請求項8】
前記フロントサイドフレームは、前記縦ビードと車体前後方向で略同位置に配置される変形容易部を備えることを特徴とする請求項7記載の車体前部構造。
【請求項1】
車体前後方向に延びるフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームの後方に配置されるフロントピラーと、前記フロントサイドフレームの上方で前記フロントピラーから前方に向けて延び、前記フロントサイドフレームの車幅外側に配置されるアッパフレームと、下端側が前記フロントサイドフレームに結合され、上端側が前記アッパフレームに結合されるダンパ部と、を備えた車体前部構造であって、
前記ダンパ部と前記アッパフレームとの結合部に、車幅方向に屈曲した屈曲部を備えることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記アッパフレームは、前記ダンパ部が結合される領域を補強する補強板を備えることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記補強板は、前記ダンパ部の屈曲部に対応する位置に補強板側屈曲部を備えることを特徴とする請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記アッパフレームは、後端に向かうに連れて下方に湾曲し、ホイールアーチ形状に沿わせるアーチ形状部を備え、
前記補強板は、前記アーチ形状部の前方に配置され、前記アッパフレームの長手方向に沿って延びる補強板側ビードを備え、
該補強板側ビードは、後端側が前端側よりも上方側に位置して前記アーチ形状部から離間するよう配置されることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記フロントピラーと前記アッパフレームとの間に設けられ、車幅方向に延びる断面コ字状のカウルボックスを備え、
前記カウルボックスは、車幅方向外側に指向する側面を備え、該側面に、前記カウルボックスの閉断面潰れを防止するスティフナを配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記スティフナに前後方向に延びるスティフナ側ビードを備え、
該スティフナ側ビードは、前記補強板側ビードに連続するように配置することを特徴とする請求項5記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記ダンパ部は、前記屈曲部の車幅中央側部位に、車幅方向に突出して上下に延在する縦ビードを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の車体前部構造。
【請求項8】
前記フロントサイドフレームは、前記縦ビードと車体前後方向で略同位置に配置される変形容易部を備えることを特徴とする請求項7記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−61901(P2012−61901A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206110(P2010−206110)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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