説明

車体後部構造

【課題】車体後部の軽量化と剛性アップとの両立を図った車体後部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】ヒンジ取付座面110を有するルーフパネル102と、ルーフパネル102の車内側を車幅方向に延びるルーフバックインナメンバ112とで形成される第1の閉断面114内に配置され、ルーフバックインナメンバ112とクォータインナ部材116との接合部118に跨って取り付けられ、ヒンジ取付座面110の車内側に接する第1の座面122を有するルーフバックインナリンフォース120と、ルーフバックインナリンフォース120とルーフバックインナメンバ112とで形成される第2の閉断面130内に配置され、第1の座面122の車内側に接する矩形波状の第2の座面134を有するヒンジリンフォース132とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックドアを回動可能に支持するヒンジを有する車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からハッチバック式の車両の車体後部には、車幅方向の回動軸を有するヒンジを介してバックドアが回動可能に取り付けられている。このヒンジにはバックドアからの荷重が集中するため、ヒンジの土台となるヒンジ取付部には、集中する荷重に耐えられる十分な剛性が必要となる。このため例えば特許文献1には、ヒンジ取付部を、ルーフパネルとリヤルーフレールアウタとヒンジリンフォースの3枚のパネル重ね部で構成した技術が開示されている。
【0003】
そして、リヤルーフレールアウタは、車幅方向に長い板状部材であり、ヒンジ取付部は、このリヤルーフレールアウタの左右両側部に設けられている(特許文献1の図2および図5参照)。また、ヒンジリンフォースは、周囲に略環状の下側重合部を有し、中央に上向きに突出した凸状部(ヒンジ受け面)を有している(特許文献1の図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−32497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のリヤルーフレールアウタは、車幅方向に細長く延びる板状部材である。このため、このリヤルーフレールアウタにヒンジを介してバックドアからの荷重が加わることで、剛性が最も必要な車幅方向の両端部分にあわせて、中央部分の厚みまでも大きくする必要がある。これにより、リヤルーフレールアウタは中央部分を含む全体の重量が増加するとともに、材料コストが増大する。
【0006】
また、特許文献1のヒンジリンフォースは、中央に上向きに突出した凸状部(ヒンジ受け面)を有しているが、このような形状の部品を製造するには、例えば深絞り成型(深絞り加工)によらなければならない。しかし深絞り成型では、絞り部分に割れやしわが発生しないよう、凸状部の角部を大きな曲率半径で成型し、なだらかに突出する形状としなければならない。突出した凸状部が再び平坦になるまでは一定の距離を必要とするため、このような形状のヒンジリンフォースを車体に固定するには、突出した凸状部から距離の離れた平坦な部分で固定しなければならず、レイアウト上の制約が大きかった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑み、軽量化とバックドア取付部の剛性向上とを両立させる、あるいはヒンジ取付部のレイアウト上の制約を解消する車体後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体後部構造の代表的な構成は、バックドアを回動可能に支持するヒンジを有する車体後部構造において、車室上部を覆い、ヒンジが取り付けられるヒンジ取付座面を有するルーフパネルと、ルーフパネルの車内側を車幅方向に延びてルーフパネルと第1の閉断面を形成するルーフバックインナ部材と、ルーフバックインナ部材の車幅方向の両側にそれぞれ接合され湾曲して車体下方に延びるクォータインナ部材と、第1の閉断面内に配置され、接合の行なわれた接合部に跨ってルーフバックインナ部材およびクォータインナ部材の両方に取り付けられ、ヒンジ取付座面の車内側に接する第1の座面を有する2つの第1の補強部材と、第1の補強部材とルーフバックインナ部材とで形成される第2の閉断面内に配置され、第1の座面の車内側に接する周囲より突出した第2の座面を有する第2の補強部材とを有することを特徴とする。
【0009】
上記構成により、第1の補強部材を2つに分割したことで、部品点数は増えるが長手方向の中央部分は削除されたので軽量化を図ることができる。従来は、剛性が最も必要な両端部分にあわせて、中央部分も厚みを大きくする必要があったが、これが無駄な材料コストになっていた。また、第1の補強部材は、バックドア開口部の車体剛性を向上するのに重要な部品となるので、関連部品の要求性能に合わせて板厚等を自由に設定することができる。すなわち本発明によれば、軽量化とバックドア取付部の剛性向上が両立できる。
【0010】
また、本発明にかかる車体後部構造の他の代表的な構成は、バックドアを回動可能に支持するヒンジを有する車体後部構造において、車室上部を覆い、ヒンジが取り付けられるヒンジ取付座面を有するルーフパネルと、ルーフパネルの車内側を車幅方向に延びてルーフパネルと第1の閉断面を形成するルーフバックインナ部材と、ルーフバックインナ部材の車幅方向の両側にそれぞれ接合され湾曲して車体下方に延びるクォータインナ部材と、第1の閉断面内に配置され、車幅方向に延び、ヒンジ取付座面に車内側から接する第1の座面を有する単一の第1の補強部材と、第1の補強部材とルーフバックインナ部材とで形成される第2の閉断面内に配置され、第1の座面の車内側に接する矩形波状に周囲より突出した第2の座面を有する第2の補強部材とを有することを特徴とする。
【0011】
上記構成により、第2の補強部材の第2の座面を矩形波状に周囲より突出させ、曲げ角度を直角に近づけたので、ヒンジ取付部を車幅方向のさらに外側へ移動させてヒンジ間の距離(ヒンジピッチ)を広げることが可能となる。これにより、ヒンジ取付部のレイアウトの自由度が増す。また、ヒンジピッチが広いヒンジによってバックドア(図示せず)を安定して強固に取り付けることができる。
【0012】
その一方、クォータインナ部材とルーフバックインナ部材と第2の補強部材とを共締めしている結合ボルトは、車幅方向の内側へ移動することができる。このため、この共締め部分から湾曲して車体下方に延びるクォータインナ部材の曲げ半径を大にして剛性アップを図ることができる。ヒンジピッチが広がると、通常、クォータインナ部材の曲げ半径は却って小さくなってしまうが、本発明によれば第2の座面がほとんど矩形波に近い形状で突出するので、クォータインナ部材が車両内側に張り出す上記のような形状が実現できる。
【0013】
また、第2の座面を矩形波状にして曲げ角度を直角に近づけたので、ハット形状のつば部と突出部の境界部分と結合ボルトの締結位置とを近づけることができる。このため、第2の座面を含む第2の補強部材の剛性を高めることができる。
【0014】
また、第2の補強部材は、フォーム成型で部品が作れる形状であるので、成型しやすく型費を抑えることができる。
【0015】
さらに、本発明にかかる車体後部構造の他の代表的な構成は、バックドアを回動可能に支持するヒンジを有する車体後部構造において、車室上部を覆い、ヒンジが取り付けられるヒンジ取付座面を有するルーフパネルと、ルーフパネルの車内側を車幅方向に延びてルーフパネルと第1の閉断面を形成するルーフバックインナ部材と、ルーフバックインナ部材の車幅方向の両側にそれぞれ接合され湾曲して車体下方に延びるクォータインナ部材と、第1の閉断面内に配置され、接合の行なわれた接合部に跨ってルーフバックインナ部材およびクォータインナ部材の両方に取り付けられ、ヒンジ取付座面の車内側に接する第1の座面を有する2つの第1の補強部材と、第1の補強部材とルーフバックインナ部材とで形成される第2の閉断面内に配置され、第1の座面の車内側に接する矩形波状に周囲より突出した第2の座面を有する第2の補強部材とを有することを特徴とする。
【0016】
上記構成により、まず、第1の補強部材を2つに分割したことで、部品点数は増えるが軽量化と剛性向上の両立を図ることができる。次に、第2の補強部材の第2の座面を矩形波状に周囲より突出させ曲げ角度を直角に近づけたことによる、上述の種々の効果も得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車体後部の軽量化とバックドア取付部の剛性向上とを両立させる、あるいはヒンジ取付部のレイアウト上の制約を解消する車体後部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の車体後部構造が適用された車両を左後方から見た斜視図である。
【図2】図1からサイドボディアウタとルーフパネルの表示を省略した斜視図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図2の変形例を示す斜視図である。
【図5】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図4からルーフバックインナリンフォースを省略した部分拡大図である。
【図7】図5のB方向矢視断面図である。
【図8】比較例と本実施形態とを対比して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0020】
なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態の車体後部構造が適用された車両を左後方から見た斜視図であり、板金部品のみを表示している。図1において、例えばハッチバックタイプまたはワゴンタイプの車両100では、車両100の後部開口部を開閉するバックドア(図示せず)が、上下に回動可能に支持されている。このバックドアを取り付けるべく、車室上部と車室側面をそれぞれ覆うルーフパネル102とサイドボディアウタ104、105の車体後端部に、バックドア取付用の左右一対のヒンジ106(図5参照)が固定されている。
【0022】
また、ルーフパネル102の車体後端部には、下方に深い段差を介して平坦部108が形成されている。この平坦部108の車幅方向の両端近傍には、一対のヒンジ106を取り付けるヒンジ取付座面110、111が所定間隔で配設されている。このヒンジ取付座面110、111は、平坦部108から上方に台形状に突出した突出部の上端面に形成されている。
【0023】
図2は、図1からサイドボディアウタとルーフパネルの表示を省略した斜視図である。図2に示すように、ルーフパネル102の車内側を車幅方向に延びるルーフバックインナメンバ(ルーフバックインナ部材)112が設けられている。このルーフバックインナメンバ112は、前端フランジ部112aと、この前端フランジ部112aから低い段差を介して後方に下降傾斜する傾斜面112bと、この傾斜面112bの後方に形成された後端フランジ部112cとを有している。また、このルーフバックインナメンバ112の傾斜面112bには、軽量化のために複数の矩形状の開口部112dが設けられている。本実施形態では、複数の開口部を代表して1個の開口部112dに符号を付している。
【0024】
上記のルーフパネル102とルーフバックインナメンバ112とは、必要な剛性を確保するために第1の閉断面114(図5参照)を形成している。また、このルーフバックインナメンバ112の車幅方向の両側には、それぞれクォータインナ部材116、117が接合部118、119を介して溶接等により接合されている。この接合部118、119は、クォータインナ部材116(および117)とルーフバックインナメンバ112との突き当て面である。
【0025】
なお、車体左側のクォータインナ部材116は、車体上下に延びるクォータインナアッパエクステンション116aとクォータインナパネル116bとを接合したものである。同様に、車体右側のクォータインナ部材117も、車体上下に延びるクォータインナアッパエクステンション117aとクォータインナパネル117bとを接合したものである。このクォータインナ部材116、117は、接合部118、119から湾曲して車体下方に延びている。
【0026】
また、図2および図3に示すように、第1の閉断面114(図5参照)内には、第1の座面122、123を有する2つのルーフバックインナリンフォース(第1の補強部材)120、121が配置されている。なお、他の部材と区別するために、ルーフバックインナリンフォース120、121の輪郭は太線で示している。
【0027】
第1の座面122、123は、ルーフパネル102に形成されたヒンジ取付座面110、111(図1参照)の車内側に接するように設けられている。このルーフバックインナリンフォース120、121は、ルーフバックインナメンバ112とクォータインナ部材116、117との接合部118、119に跨って、その両方にスポット溶接により取り付けられている。
【0028】
なお、ルーフバックインナリンフォース120、121は左右対称であるので、以下、一方(左側)のルーフバックインナリンフォース120についてのみ説明する。
【0029】
図3は図2の部分拡大図である。図3に示すように、ルーフバックインナリンフォース120は、平面視略矩形状をなし、前端フランジ部120aと、この前端フランジ部120aに続く略平坦な前面部120bと、この前面部120bに続く下方に深い段差を介して後方に延びる下面部120cとを有している。この下面部120cの車幅方向の略中央には、上方に突出する突出部126が設けられている。この突出部126の上端に、前述した第1の座面122が形成されている。
【0030】
また、ルーフバックインナリンフォース120は、第1の座面122から後方に下降傾斜する第1の延長部120dを有している。この第1の延長部120dは、後述するヒンジリンフォース132の舌片136に接合される。なお、前面部120bには、軽量化のために矩形状の開口部124、125が設けられている。
【0031】
このルーフバックインナリンフォース120は、ルーフバックインナメンバ112の車幅方向の左端部付近において、ルーフバックインナメンバ112とクォータインナ部材116との接合部118に跨ってボルト128およびスポット溶接(図3の複数の×点)等により固定されている。
【0032】
この第1の座面122は、車内側から接することで、ヒンジ取付座面110に加わる荷重に対して車内側からルーフパネル102を補強する役目を有している。
【0033】
このように、本実施形態では、分割した2つのルーフバックインナリンフォース120および121を設けた。これにより、単一の部材とした場合に比較して部品点数は増えるが、長手方向の中央部分は削除されたので、軽量化を図ることができる。すなわち、従来は、剛性が最も必要な両端部分にあわせて、中央部分も厚みを大きくする必要があったが、これが無駄な材料コストになっていた。
【0034】
また、この2つのルーフバックインナリンフォース120(および121)は、バックドア開口部の車体剛性を向上させるのに重要な部品となるので、関連部品の要求性能に合わせて板厚等を自由に設定することができる。また、ルーフバックインナリンフォース120(および121)が2つに分割されているので、取付時の調整もしやすいという効果を有する。すなわち、本実施形態によれば、軽量化とバックドア取付部の剛性向上を両立させることができる。
【0035】
図4は図2の変形例を示す斜視図である。図2の実施形態では軽量化のために別々のルーフバックインナリンフォース120、121を設けた場合について説明した。しかし、これに限らず、例えば図4に示すように、単一のルーフバックインナリンフォース170によって軽量化を図ってもよい。この場合のルーフバックインナリンフォース170には、軽量化のために複数の矩形状の開口部170a、170bが設けられている。本実施形態では、複数の開口部を代表して前後部にそれぞれ1個ずつの開口部170a、170bに符号を付している。
【0036】
図5は、図1のA−A線に沿う断面図である。図5(および図2)に示すように、ルーフバックインナリンフォース120とルーフバックインナメンバ112とで形成される第2の閉断面130内に、車体前後方向に延びるヒンジリンフォース(第2の補強部材)132、133が配置されている。また、このヒンジリンフォース132、133は左右対称であるので、以下、一方のヒンジリンフォース132についてのみ説明する。
【0037】
また、図5において、ルーフバックインナリンフォース120の前端フランジ部120aと、ヒンジリンフォース132の前端フランジ部132aと、ルーフバックインナメンバ112の前端フランジ部112aは、マスチックシーラー150によってルーフパネル102に接着固定されている。
【0038】
また、ルーフバックインナメンバ112には、ヒンジ取付座面110と舌片136(図6参照)に平面視で跨る位置に、スポット溶接に用いる作業孔112eが形成されている。この作業孔112eは、ルーフバックインナリンフォース120の第1の延長部120dとヒンジリンフォース132の舌片136とをスポット溶接する際に用いられる。
【0039】
図6は、図3からルーフバックインナリンフォース120を省略した部分拡大図である。なお、他の部材と区別するために、ヒンジリンフォース132の輪郭は太線で示している。
【0040】
同図6に示すように、ヒンジリンフォース132は、それぞれ連続して形成された前端フランジ部132aと左側フランジ部132b、および右側フランジ部132cを有している。また、これら各フランジ部の中央側には、車体前後方向に延び、矩形波状に周囲より突出した側壁部137、138が形成されている。この側壁部137、138の上端後部に、若干の段差を介して第2の座面134が形成されている。
【0041】
すなわち、第2の座面134は、矩形波状に周囲より突出した側壁部137、138を含む。なお、側壁部137、138の上端中央には、凹状部139が形成されている。この凹状部139は、剛性の強化を目的として形成された下向きの突起(ビード)である。
【0042】
第2の座面134は、ルーフバックインナリンフォース120の第1の座面122の車内側に接するように形成されている。また、この第2の座面134は、ヒンジ取付座面110に加わる荷重に対して車内側から第1の座面122とともにルーフパネル102を補強する役目を有する。なお、その他、第2の座面134を矩形波状に形成した効果については、後述の比較例で説明する。
【0043】
第2の座面134の後端側には、車体後方に下降傾斜して延びる舌片136が形成されている。この舌片136は、ルーフバックインナリンフォース120の第1の延長部120dにスポット溶接によって接合される(図5参照)。
【0044】
こうして、ヒンジリンフォース132の左側フランジ部132bは、ルーフバックインナメンバ112の車幅方向の左端部近傍において、クォータインナ部材116およびルーフバックインナメンバ112と一体的に共締めされている。共締めには、結合ボルト140a、140bが用いられる。接合としてこの他に、スポット溶接(図6の複数の×点)等が用いられる。
【0045】
図7は、図5のB方向矢視断面図である。同図7において、ヒンジ106は、ルーフパネル102のヒンジ取付座面110と、ルーフバックインナリンフォース120の第1の座面122と、ヒンジリンフォース132の第2の座面134とに支持されている。そして、これらの座面110、122、134を貫通するヒンジ取付ボルト142とナット144により締結されている。なお、ヒンジ106とヒンジ取付座面110との間には、ワッシャ146が設けられている。
【0046】
(比較例)
次に、図8を参照しながら比較例と本実施形態とを対比して説明する。図8は、上方の図が比較例の車体後部構造を車体後方から見た断面図であり、下方の図が本実施形態の車体後部構造を車体後方から見た断面図である。
【0047】
比較例では、単一のルーフバックインナリンフォース20が車幅方向に延びている。そして、ルーフバックインナリンフォース20の第1の座面22、23が、ルーフパネル2のヒンジ取付座面10、11に車内側から接している。これに対し、本実施形態では、2つに分割されたルーフバックインナリンフォース120、121が、車幅方向に延びるルーフバックインナメンバ112と左右端側のクォータインナ部材116、117の接合部118、119に跨ってそれぞれ取り付けられている。
【0048】
比較例では、単一のルーフバックインナリンフォース20が車幅方向に繋がっていて、剛性が最も必要な両端部分にあわせて、中央部分も厚みを大きくする必要がある。このため、無駄な材料コストになるとともに、重量が大きい。これに対し、本実施形態では、2つに分割したルーフバックインナリンフォース120、121を用いている。このため、部品点数は増えるが、中央部分の無駄な材料を省いて低コスト化と軽量化を図ることができる。
【0049】
また、比較例では、ヒンジリンフォース32、33に形成された第2の座面34、35が、周囲よりも突出した絞り加工により成型された形状である。このため、絞り成型条件を考慮すると、突出部分の曲げ半径Rを小さくすることは困難であった。これにより、ヒンジ取付部(10、22、34)(11、23、35)を車幅方向の外側に配置することはできなかった。これは、ヒンジリンフォース32、33の曲げ半径Rを大きくしなければならないためである。このため、結合ボルト40、41の位置を車幅方向の内側に配置することが難しかった。こうして、比較例ではヒンジ取付部のレイアウト上の制約が厳しかった。
【0050】
これに対し、本実施形態では、ヒンジリンフォース132、133に形成された第2の座面134、135が、角部が略直角の矩形波状に周囲から突出するため、プレス加工可能である。すなわち、矩形波形状をハット(hat)に見立てた場合のつば部と突出部の境界部分の曲げ半径rを小さくすることができる。これにより、ヒンジ取付部(110、122、134)(111、123、135)を、比較例よりも車幅方向の外側へL1だけ移動させて左右のヒンジピッチを広くすることができる。こうして、ヒンジ取付部のレイアウトの自由度が増し、また、ヒンジピッチが広いヒンジによって、バックドア(図示せず)を安定して強固に取り付けることができる。
【0051】
その一方、第2の座面134、135を矩形波状にして曲げ角度を直角に近づけたので、クォータインナ部材116、117とルーフバックインナメンバ112とヒンジリンフォース132、133とを共締めしている結合ボルト140、141は、車幅方向の内側へL2だけ移動することができる。このため、この共締め部分から湾曲して車体下方に延びるクォータインナ部材116、117の曲げ半径ρを大にして剛性アップを図ることができる。ヒンジピッチが広がると、通常、クォータインナ部材116、117の曲げ半径は却って小さくなってしまうが、本実施形態によれば第2の座面134、135がほとんど矩形波に近い形状で突出するので、クォータインナ部材116、117が車両内側に張り出す上記のような形状を実現することができる。
【0052】
これにより、本実施形態では、クォータインナ部材116、117の曲げ半径ρを大にして剛性アップを図ることができる。すなわち、クォータインナ部材116、117が外力を受けたときにも曲がらず、その力を他の場所に逃がすことができる。こうして、直角に近かった従来の曲げ形状よりも剛性を増大することができる。
【0053】
また、第2の座面134、135は、矩形波状に略直角に突出(傾斜角度が鋭い)しているので、ハット形状のつば部と突出部の境界部分と結合ボルト140、141の締結位置とを近づけることができる。これにより、第2の座面134、135を有するヒンジリンフォース132、133の剛性を高くすることができる。また、第2の座面134、135を直角に近いハット形状に形成したので、ヒンジリンフォース132、133を一層小型化することができる。
【0054】
さらに、このヒンジリンフォース132、133は、ヒンジ取付部の剛性をアップさせるために重要な部品となるので、各部品からの要求性能に合わせて板厚等を自由に設定することができる。また、第2の補強部材132、133を、フォーム成型によって製造することができるので、成型しやすく型費を抑えることができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、バックドアを回動可能に支持するヒンジを有する車体後部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
100…車両、102…ルーフパネル、104、105…サイドボディアウタ、106…ヒンジ、110、111…ヒンジ取付座面、112…ルーフバックインナメンバ(ルーフバックインナ部材)、112a…前端フランジ部、112b…傾斜面、112c…後端フランジ部、112d…開口部、112e…作業孔、114…第1の閉断面、116、117…クォータインナ部材、118、119…接合部、120、121、170…ルーフバックインナリンフォース(第1の補強部材)、120a…前端フランジ部、120b…前面部、120c…下面部、120d…第1の延長部、122、123…第1の座面、124、125…開口部、126…突出部、128…ボルト、130…第2の閉断面、132、133…ヒンジリンフォース(第2の補強部材)、132a…前端フランジ部、132b…左側フランジ部、132c…右側フランジ部、134、135…第2の座面、136…舌片、137、138…側壁部、139…凹状部、140a、140b…結合ボルト、141a、141b…結合ボルト、142…ヒンジ取付ボルト、144…ナット、146…ワッシャ、150…マスチックシーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックドアを回動可能に支持するヒンジを有する車体後部構造において、
車室上部を覆い、前記ヒンジが取り付けられるヒンジ取付座面を有するルーフパネルと、
前記ルーフパネルの車内側を車幅方向に延びて該ルーフパネルと第1の閉断面を形成するルーフバックインナ部材と、
前記ルーフバックインナ部材の車幅方向の両側にそれぞれ接合され湾曲して車体下方に延びるクォータインナ部材と、
前記第1の閉断面内に配置され、前記接合の行なわれた接合部に跨って前記ルーフバックインナ部材および前記クォータインナ部材の両方に取り付けられ、前記ヒンジ取付座面の車内側に接する第1の座面を有する2つの第1の補強部材と、
前記第1の補強部材と前記ルーフバックインナ部材とで形成される第2の閉断面内に配置され、前記第1の座面の車内側に接する周囲より突出した第2の座面を有する第2の補強部材とを有することを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
バックドアを回動可能に支持するヒンジを有する車体後部構造において、
車室上部を覆い、前記ヒンジが取り付けられるヒンジ取付座面を有するルーフパネルと、
前記ルーフパネルの車内側を車幅方向に延びて該ルーフパネルと第1の閉断面を形成するルーフバックインナ部材と、
前記ルーフバックインナ部材の車幅方向の両側にそれぞれ接合され湾曲して車体下方に延びるクォータインナ部材と、
前記第1の閉断面内に配置され、車幅方向に延び、前記ヒンジ取付座面に車内側から接する第1の座面を有する単一の第1の補強部材と、
前記第1の補強部材と前記ルーフバックインナ部材とで形成される第2の閉断面内に配置され、前記第1の座面の車内側に接する矩形波状に周囲より突出した第2の座面を有する第2の補強部材とを有することを特徴とする車体後部構造。
【請求項3】
バックドアを回動可能に支持するヒンジを有する車体後部構造において、
車室上部を覆い、前記ヒンジが取り付けられるヒンジ取付座面を有するルーフパネルと、
前記ルーフパネルの車内側を車幅方向に延びて該ルーフパネルと第1の閉断面を形成するルーフバックインナ部材と、
前記ルーフバックインナ部材の車幅方向の両側にそれぞれ接合され湾曲して車体下方に延びるクォータインナ部材と、
前記第1の閉断面内に配置され、前記接合の行なわれた接合部に跨って前記ルーフバックインナ部材および前記クォータインナ部材の両方に取り付けられ、前記ヒンジ取付座面の車内側に接する第1の座面を有する2つの第1の補強部材と、
前記第1の補強部材と前記ルーフバックインナ部材とで形成される第2の閉断面内に配置され、前記第1の座面の車内側に接する矩形波状に周囲より突出した第2の座面を有する第2の補強部材とを有することを特徴とする車体後部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−218691(P2012−218691A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89550(P2011−89550)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】