説明

車体構造

【課題】
フロアパネルの車室側にフロアサイドメンバを延設しても、スペイサを用いることなく車室の床面にフロアサイドメンバによる段差が生じることを抑制することができ、かつフロアサイドメンバを補強する部材を効果的な位置に配置することが可能な車体構造を提供する。
【解決手段】
車室38の床面39を構成するフロアパネル11の車室38側に閉断面を形成するフロアサイドメンバ15が車両10の前後方向に沿って延設される車体構造である。フロアパネル11には、車室38の外方に向けて突出しかつ車両10の前後方向に沿って延在する溝部33が設けられ、フロアサイドメンバ15は、溝部33の内方に収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、車体の剛性を高めるために、車室の床面を構成するフロアパネルに、閉断面を形成するフロアサイドメンバが車両の前後方向に沿って延設された車体構造を有するものがある。このものでは、フロアサイドメンバが、フロアパネルから見て車室側すなわちフロアパネルの上側に設けられているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような車体構造では、フロアパネルが車室の床面を構成することから、フロアサイドメンバがフロアパネルから車室側に向けて突出していると車室の床面に段差が生じてしまう。そこで、フロアパネル上のフロアサイドメンバが延設されていない個所にフロアサイドメンバと同じ高さ寸法のスペイサを設け、スペイサの上面およびフロアサイドメンバの上面で車室の床面を構成し、フロアサイドメンバによる段差が床面に生じることを防止することが考えられている。
【0004】
ところが、フロアサイドメンバによる段差をなくすためにスペイサを設けることは、例えば、部品点数および組み付け工数の増加を招き、自動車の製造コスト等の上昇を招く。このため、フロアサイドメンバをフロアパネルの下側に延設することが考えられている(例えば、特許文献2参照。)。このものでは、フロアサイドメンバがフロアパネルから車室側に向けて突出されていないので、スペイサを用いることなく車室の床面にフロアサイドメンバによる段差が生じることを防止することができる。
【特許文献1】実開平4−42478号公報(第1−2頁、第1図)
【特許文献2】特開2002−46653号公報(第2−6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フロアパネルの下方にフロアサイドメンバを延設する車体構成においては、フロアサイドメンバを補強するための部材を最も効果的な位置に延設することが困難である。これは、フロアパネルの下方の空間は、車高の確保および種々の配管が配置される等の観点から、利用可能な範囲がフロアパネルの上方に比較して大幅に制限されていることによる。このため、所望の補強効果を得るために、効率が低減する位置であっても補強部材を配置してフロアサイドメンバを補強しなければならない場合があり、補強部材を最も効果的な位置に配置することと比較して、補強部材の重量および大きさ等の増加を招いてしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、フロアパネルの車室側にフロアサイドメンバを延設しても、スペイサを用いることなく車室の床面にフロアサイドメンバによる段差が生じることを抑制することができ、かつフロアサイドメンバを補強する部材を効果的な位置に配置することが可能な車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明に係る車体構造は、車室の床面を構成するフロアパネルに車室の外方に向けて突出しかつ車両の前後方向に沿って延在する溝部を設け、この溝部の内方に、閉断面を形成するフロアサイドメンバを収容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車体構造によれば、フロアパネルの車室側に延設されるフロアサイドメンバは、フロアパネルに形成された溝部の内方に収容されているので、フロアパネルから車室側に突出することを抑制することができる。このため、スペイサを用いることなく、車室の床面にフロアサイドメンバによる段差が生じることを抑制することができる。また、フロアサイドメンバは、フロアパネルから見て車室側に延設されていることから、補強部材を効果的な位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を図1ないし図9に示した実施例に沿って詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明に係る車体構造が採用された車両10を模式的に示す部分斜視図であり、図2は、図1のI−I線に沿って得られた部分的な斜視図である。なお、各図には、車両10の幅方向の左側を示す矢印Lおよび右側を示す矢印Rと、車両10の高さ方向を示す矢印Hと、車両10の前後方向を示す矢印Fとが記載されている。以下上記各方向に合わせて説明する。
【0011】
車両10は、その下部にフロアパネル11を備える。フロアパネル11は、全体に略平板状を呈する板部材からなり、平坦部12とダッシュロアパネル部13(図2参照。)とフロアトンネル部14とを有する。ダッシュロアパネル部13は、図2に示すように、フロアパネル11の前方側に位置し、平坦部12から湾曲し上方に向けて立ち上がっている。フロアトンネル部14は、車幅方向の中央位置で平坦部12から上方へ向けて突出しかつ前後方向に沿って延在している。
【0012】
フロアパネル11の上側には、一対のフロアサイドメンバ15、15が設けられている。各フロアサイドメンバ15、15は、断面が略コ字状(図6参照。)に形成された長尺の板部材であり、フロアトンネル部14を中心とする線対称の位置で前後方向に沿って延設されている。各フロアサイドメンバ15、15は、フロアパネル11と協働して閉断面を形成しており(図6参照。)、車両10の剛性、特に前後方向の荷重に対する車両10の剛性を高めている。各フロアサイドメンバ15、15には、フロアパネル11への接合のためのフロアフランジ部16が設けられており(図6参照。)、フロアフランジ部16は、各フロアサイドメンバ15、15のコ字状断面の両下端から外方(車幅方向)へ向けて突出しその両下端に沿って延在している。
【0013】
本実施例の各フロアサイドメンバ15、15では、コ字状の断面が前端部17および後端部18で暫時的に変化している。前端部17は、図3に示すように、前端フランジ部分19と前端傾斜面部分20とを有する。前端フランジ部分19は、各フロアサイドメンバ15、15の前端から突出する板状部分であり、フロアパネル11のダッシュロアパネル部13への接合個所となる。前端傾斜面部分20は、ダッシュロアパネル部13の湾曲よりも緩やかな傾斜で上方に向かう傾斜面であり、ダッシュロアパネル部13と協働して形成する断面の面積を前端フランジ部分19に向けて徐々に減少させている。
【0014】
後端部18は、後端フランジ部分21と後端傾斜面部分22とを有する。後端フランジ部分21は、各フロアサイドメンバ15、15の後端から突出しており、フロアパネル11への接合個所となる。後端傾斜面部分22は、緩やかな傾斜で下方に向かう傾斜面であり、フロアパネル11と協働して形成する断面の面積を前端フランジ部分19に向けて徐々に減少させている。
【0015】
フロアパネル11の上側には、一対のクロスメンバ23、23が設けられている(図2参照。)。各クロスメンバ23、23は、前壁部24と後壁部25と上壁部26とを有する長尺の板部材である。前壁部24は、高さ方向に沿って立ち上がりかつ車幅方向に沿って延在している。後壁部25は、前壁部24よりも後方位置で前壁部24に対向して延在している。上壁部26は、前壁部24の上端および後壁部25の上端を掛け渡している。このように、各クロスメンバ23、23は、車幅方向に沿う断面が略コ字状を呈しており、フロアパネル11と協働して閉断面を形成する。各クロスメンバ23、23は、フロアトンネル部14を中心とした線対称な位置でかつ同一直線上に位置するように、車幅方向に沿って延設される(図2参照。)。各クロスメンバ23、23は、車両10の剛性、特に車幅方向の荷重に対する車両10の剛性を高めている。
【0016】
各クロスメンバ23、23には、図2に示すように、前縁フランジ部分27と後縁フランジ部分28と内側端フランジ部29とが設けられている。前縁フランジ部分27は、前壁部24の下方で前壁部24に沿って延在し、前方へ向けて突出する板状部分であり、フロアパネル11への接合個所となる。後縁フランジ部分28は、後壁部25の下方で後壁部25に沿って延在し、後方へ向けて突出する板状部分であり、フロアパネル11への接合個所となる。内側端フランジ部29は、車幅方向に延在する各クロスメンバ23、23のフロアトンネル部14側の端部で前壁部24、後壁部25および上壁部26からフロアトンネル部14に沿って立ち上がる板状部分であり、フロアトンネル部14への接合個所となる。また、図示はしないが、各クロスメンバ23、23には、外側端フランジ部が設けられており、車幅方向に位置するフロアパネル11の両端に設けられるサイドシル40(図1参照。)への接合個所となる。
【0017】
各クロスメンバ23、23には、その前壁部24に接合凹所30が設けられている。接合凹所30は、図3に示すように、前壁部24を下端側から切り欠いて形成されており、フロアサイドメンバ15の後端部18の受け入れを許す。接合凹所30には、後端部18への接合個所となる凹所フランジ部分31が設けられている。
【0018】
さらに、フロアパネル11には、フロントサイドメンバ32が設けられている。フロントサイドメンバ32は、フロアパネル11のダッシュロアパネル部13から前方へ向けてフロアサイドメンバ15と同一直線上に位置するようにフロアパネル11に取り付けられている。各フロントサイドメンバ32、32は、閉断面構造を有する筒状部材であり、上端がダッシュロアパネル部13に接合され、下端がフロアパネル11の下方位置に接合されている。各フロントサイドメンバ32、32は、車両10の剛性、特に前後方向の荷重に対する車両10の剛性を高めている。
【0019】
本発明に係る車体構造では、図2に示すように、フロアパネル11に一対の溝部33、33が設けられ、該溝部33、33に各フロアサイドメンバ15、15が収容されている。両溝部33、33は、フロアトンネル部14を中心とした線対称であること以外は等しい構成であるので、車両10の左側の溝部33について説明し、右側の溝部33の説明は省略する。
【0020】
溝部33は、図4に示すように、フロアパネル11の平坦部12から下方へ突出しかつ前後方向に沿って延在する長尺の凹所であり、ダッシュロアパネル部13の下部からフロアパネル11の後端へ向けて延在している。溝部33は、フロアパネル11の平坦部12に平行な底面部分34と、底面部分34および平坦部12を繋ぐ両縁部分35とを有する。本実施例では、両縁部分35は、急激な形状変化による応力集中を回避するために斜面とされている。
【0021】
溝部33は、フロアサイドメンバ15の高さ寸法に略等しい深さ寸法に形成されており、底面部分34が、両フロアフランジ部16を含むフロアサイドメンバ15の幅寸法を受け入れ可能な幅寸法に形成されている(図6参照。)。なお、溝部33の深さ寸法は、15mm程度であることが望ましい。底面部分34は、前方へ向かうにつれてダッシュロアパネル部13に暫時的に接近しており、この接近に伴って両縁部分35の高さ寸法が暫減している。このように、溝部33は、ダッシュロアパネル部13では後方に向かうにつれて深さ寸法が漸増し、平坦部12では深さ寸法が一定に保たれている。
【0022】
図5に示すように、この溝部33にフロアサイドメンバ15が収容されている。この収容状態で、フロアサイドメンバ15の前端部17の前端フランジ部分19がダッシュロアパネル部13に接合され、フロアサイドメンバ15のフロアフランジ部16がフロアパネル11の溝部33の底面部分34に接合される。溝部33の深さ寸法はフロアサイドメンバ15の高さ寸法に等しくされているので、フロアサイドメンバ15の上面15aがフロアパネル11の平坦部12と同一平面を構成している(図6参照。)。
【0023】
図2に示すように、本発明に係る車体構造では、各溝部33、33に各フロアサイドメンバ15、15が収容された状態のフロアパネル11に各クロスメンバ23、23が延設される。このため、各クロスメンバ23、23には、突起部36が形成されている。突起部36は、前壁部24と後壁部25とに設けられており、それぞれが溝部33に嵌合可能な矩形状を呈している。この前壁部24の突起部36に、前述した接合凹所30が形成されており、前壁部24の前縁フランジ部分27および後壁部25の後縁フランジ部分28は、前壁部24および後壁部25の各突起部36、36の縁部に沿う形状とされている。
【0024】
各クロスメンバ23、23は、各フロアサイドメンバ15、15の後端部18を跨ぐ位置で、各溝部33、33に各突起部36、36を嵌合させ、前壁部24の突起部36の接合凹所30に各フロアサイドメンバ15、15を嵌合させ、かつ各フロアサイドメンバ15、15の後端部18の後端フランジ部分21の上に後壁部25の後縁フランジ部分28を重ねた状態で車幅方向に沿ってフロアパネル11に配置される。各クロスメンバ23、23は、この状態で、前端フランジ部分19および後端フランジ部分21がフロアパネル11の平坦部12に接合され、接合凹所30の凹所フランジ部分31が各フロアサイドメンバ15、15の上面15aに接合され、内側端フランジ部29がフロアトンネル部14に接合される。さらに、各クロスメンバ23、23の後縁フランジ部分28と、各フロアサイドメンバ15、15の後端部18の後端フランジ部分21とは、上下方向で3枚打ちされてフロアパネル11に接合されている(図3参照。)。
【0025】
このように、本発明に係る車体構造では、各フロアサイドメンバ15、15の上面15aがフロアパネル11の平坦部12と同一平面を構成し、各クロスメンバ23、23が各フロアサイドメンバ15、15およびフロアパネル11との間に隙間を生じさせることなく接合されている。このため、図6に二点鎖線で示すように、カーペット37をフロアパネル11の平坦部12上に敷くと、各フロアサイドメンバ15、15が延設されている個所では、その上面15aが平坦部12と同一平面上でカーペット37を支えることとなるので、スペイサを用いることなく車室38の床面39を平坦なものとすることができる。
【0026】
また、本発明の車体構造では、以下のような効果を得ることができる。
【0027】
(1)各フロアサイドメンバ15、15が、フロアパネル11の上方すなわちフロアパネル11の車室38側に延設されているので、補強部材を設ける必要が生じた場合であっても、効果的な位置に補強部材を配置することが可能である。このことは、次のような場合に効果的である。フロアパネル11は、そのダッシュロアパネル部13が上方に向けて立ち上がる構成とされていることから、車両10の前方からの荷重がフロントサイドメンバ32に入力された場合、フロアパネル11および各フロアサイドメンバ15、15では、車室38側へ向かう曲げ方向への力(図3矢印A参照。)が生じ、床面39側に圧縮応力が発生する。この圧縮応力が発生する側に補強部材を設けるとき、車室38側の空間を使うことができ、効果的な位置に補強部材を配置することができる。
【0028】
(2)各フロアサイドメンバ15、15の後端部18が、各クロスメンバ23、23により形成される閉断面の内方に位置しているので、各フロアサイドメンバ15、15の後壁部25に接合凹所を形成する必要がなくなり、各クロスメンバ23、23の断面係数を大きくすることができる。このため、各フロアサイドメンバ15、15の後壁部25に接合凹所が形成された車体構造に比較して、車幅方向の強度が低下せず側面からの荷重に対する剛性が確保されているので、各クロスメンバ23、23の板厚を厚く設定したり補強部材を追加したりする必要が無くなり、製造コスト及び重量の増大を抑制することができる。
【0029】
(3)各フロアサイドメンバ15、15の後端部18が、各クロスメンバ23、23の閉断面内に位置されるので、後端部18およびその近傍のフロアパネル11の剛性を各クロスメンバ23、23によって補うことができる。このため、例えば、前方から荷重が入力されたときに荷重が集中してフロアパネル11が屈曲し易くなる虞が減少し、フロアパネル11の板厚を厚く設定したり、補強部材の追加を行ったりする必要が無くなり、製造コストおよび重量の増大を抑制することができる。
【0030】
(4)各フロアサイドメンバ15、15の後端部18では、その後端傾斜面部分22により、各クロスメンバ23、23の前壁部24からフロアパネル11に接合される後端フランジ部分21の間で断面積が徐々に減少されているので、各フロアサイドメンバ15、15に荷重集中が起こり難くなり、フロアパネル11の剛性を高めることができる。
【0031】
(5)各フロアサイドメンバ15、15の後端部18が、各クロスメンバ23、23の後壁部25の下方位置まで延設されているので、前方から入力された荷重を広い範囲で受け止めることが出来る。
【0032】
(6)各フロアサイドメンバ15、15の後端部18に形成された後端フランジ部分21が、各クロスメンバ23、23に形成された後縁フランジ部分28と共にフロアパネル11に接合されているので、各クロスメンバ23、23の断面係数を低下させることなく、各フロアサイドメンバ15、15と、各クロスメンバ23、23との間の接合強度を向上させることができる。
【0033】
(7)各フロアサイドメンバ15、15の後端フランジ部分21が、各クロスメンバ23、23の後縁フランジ部分28と共に上下方向に3枚打ちされ、かつ各フロアサイドメンバ15、15のフロアフランジ部16と、各クロスメンバ23、23の前縁フランジ部分27および後縁フランジ部分28とが上下方向でフロアパネル11に接合されている。このように、フロアパネル11上で、各フロアサイドメンバ15、15と、各クロスメンバ23、23との間で方向を一致させて接合させることができるので、組み付け作業性を良好なものとすることが出来る。
【0034】
(8)フロアパネル11の下方へ突出する各溝部33、33は、車両10の前後方向に沿って延在しているので、車両10の空力性能の低下を招くことなく各フロアサイドメンバ15、15および各クロスメンバ23、23の閉断面積を確保することができ、車両10の剛性を高めることができる。
【0035】
(9)図2および図6に示すように、車幅方向で見て各溝部33、33の内側に配管41を設けると、車両10に側方から荷重が入力された場合、各溝部33、33および該溝部33、33に収容された各フロアサイドメンバ15、15で配管41を保護することができる。このため、配管41を保護するだけの部材、例えば配管カバー(図示せず。)を設ける必要がなくなり、製造コストおよび重量が増加することを防止することができる。
【0036】
よって、本発明の車体構造では、フロアパネル11の車室38側にフロアサイドメンバ15を延設しても、スペイサを用いることなく車室38の床面39にフロアサイドメンバ15による段差が生じることを抑制することができ、かつフロアサイドメンバ15を補強する部材を効果的な位置に配置することができる。
【0037】
各フロアサイドメンバ15、15の後端部18は、上記した実施例の構成に限定されるものではない。図7ないし図9は、各フロアサイドメンバ15、15の後端部18の異なる構成の例を示す図3と同様の部分的な断面図である。
【0038】
図7では、各フロアサイドメンバ15、15の後端部18に設けられた後端フランジ部分21´が、前後方向で見て各クロスメンバ23、23の閉断面内の中間位置で、フロアパネル11に接合されている。また、後端傾斜面部分22´は、上記した実施例の後端傾斜面部分22よりも緩やかな角度の傾斜面とされている。このため、各クロスメンバ23、23の前壁部24に設けられた接合凹所30´の接合フランジ部分31´は、後端傾斜面部分22´の略中間位置に接合されている。これにより、接合凹所30´の開口面積を上記した実施例の接合凹所30の開口面積よりも小さくすることができるので、各クロスメンバ23、23が形成する断面を大きく設定することができかつ各クロスメンバ23、23の断面係数を大きくすることが可能であり、車幅方向からの荷重に対する車両10の剛性を高めることができる。
【0039】
また、図7のように、後端傾斜面部分22´に接合凹所30´の接合フランジ部分31´を接合する構成であれば、各フロアサイドメンバ15、15を大きな断面積に設定した場合であっても、接合凹所30´の開口面積を変化させることなく、各フロアサイドメンバ15、15の後端フランジ部分21´を各クロスメンバ23、23の閉断面の内方でフロアパネル11に接合させることができる。
【0040】
さらに、図8に示すように、各フロアサイドメンバ15、15の後端フランジ部分28´´を各クロスメンバ23、23の閉断面内の略中央位置でフロアパネル11と当接し、かつ各クロスメンバ23、23の後壁部25の後縁フランジ部分28´´の下方まで延在するように形成し、後縁フランジ部分28´´と共に上下方向で3枚打ちされてフロアパネル11に接合される構成とすることができる。
【0041】
図9に示すように、後端傾斜面部分22´´´の中間位置に各クロスメンバ23、23の接合凹所30´´´の接合フランジ部分31´´´が接合され、後端フランジ部分28´´´が各クロスメンバ23、23の後縁フランジ部分28´´´と共に上下方向で3枚打ちされてフロアパネル11に接合される構成とすることができる。図8および図9に示した構成であっても、図7の構成と同様の効果を得ることができる。
【0042】
上記した実施例では、各溝部33、33の深さ寸法と、各フロアサイドメンバ15、15の厚さ寸法(車両10の高さ方向の寸法。)とが等しく設定されていたが、各溝部33、33は、各フロアサイドメンバ15、15を収容できるものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る車体構造を模式的に示す部分的な斜視図である。
【図2】図1のI−I線に沿って得られた部分的な斜視図である。
【図3】図2のII−II線に沿って得られた断面図である。
【図4】フロアパネルの溝部を示す図2と同様の斜視図である。
【図5】溝部にフロアサイドメンバが収容されたフロアパネルを示す図2と同様の斜視図である。
【図6】図2に示されたIII−III線に沿って得られた断面図である。
【図7】図3とは異なる例を示すフロアサイドメンバの後端部を部分的に拡大した断面図である。
【図8】図7と異なる例を示す図7と同様の断面図である。
【図9】図7および図8と異なる例を示す図7と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 車両
11 フロアパネル
15 フロアサイドメンバ
18 後端部
21 後端フランジ部分
22 後端傾斜面部分
23 クロスメンバ
24 前壁部
25 後壁部
28 後縁フランジ部分
33 溝部
38 車室
39 床面
41 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の床面を構成するフロアパネルの前記車室の内方に閉断面を形成するフロアサイドメンバが車両の前後方向に沿って延設される車体構造であって、
前記フロアパネルには、前記車室の外方に向けて突出しかつ前記車両の前後方向に沿って延在する溝部が設けられ、前記フロアサイドメンバは、前記溝部の内方に収容されていることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記フロアサイドメンバの高さ寸法と、前記溝部の深さ寸法とが略等しく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記フロアパネルには、前記車室の外方でかつ前記車両の中心位置から見て前記溝部よりも内側に配管が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記フロアパネルの上には、車幅方向に沿って延在する前壁部および該前壁部よりも前記車両の後方側で前記前壁部に沿って延在する後壁部を有し閉断面を構成するクロスメンバが延設され、前記フロアサイドメンバの後端部は、前記前壁部と前記後壁部との間で前記クロスメンバの閉断面内に位置されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車体構造。
【請求項5】
前記フロアサイドメンバの前記後端部は、前記溝部の内方で前記フロアパネルに当接される後端フランジ部分と、該後端フランジ部および前記クロスメンバの前記前壁部を繋ぐ傾斜面部分とを有することを特徴とする請求項4に記載の車体構造。
【請求項6】
前記クロスメンバの前記後壁部には、後縁フランジ部分が設けられ、前記フロアサイドメンバの前記後端部は、前記後壁部の下方位置まで延在し、前記後端部の前記後端フランジ部分は、前記後縁フランジ部分と共に前記フロアパネルに接合されていることを特徴とする請求項5に記載の車体構造。
【請求項7】
前記フロアサイドメンバの前記傾斜面部分は、前記車両の前後方向で見て前記クロスメンバの前記前壁部よりも前方まで延在していることを特徴とする請求項5または6に記載の車体構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−83868(P2007−83868A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275009(P2005−275009)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】