説明

車体構造

【課題】グリルの撓みを抑制し、グリルに加わる衝撃を吸収する車体構造を提供する。
【解決手段】車体構造11は横長の開口を形成しているフロントグリル111を備え、フロントグリル111の背面に配置され、且つ車体18側に支持されている支持ステー125に上下方向(矢印b1の方向)に延びる縦ステー126が設けられているグリルブラケット112を備えている。縦ステー126は、左右を連結する連結ステー127で連結されている。支持ステー125は、フロントバルクヘッド16に連結して延びる座屈ステー部131と、座屈ステー部131に連なり縦ステー126に連結した横ステー部132と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両正面にフロントグリルを配置した車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両は、前面に一般的に見られるように、空気を取り入れる網状のグリルが設けられ、歩行者と接触した際に変形することで、歩行者の受ける負荷を軽減するようにしている(例えば、特許文献1(図10)参照、特許文献2(図2)参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1、2)では、グリルの中央に歩行者が接触して中央に衝撃が入力されると、中央のみが車両後方へ撓み、車体側(例えばラジエータ)への荷重伝達が早期に行われないという課題と、グリル自体の衝撃吸収量が少ないという課題がある。
特に、車両の車高が高いと、グリルの位置も高く、グリルの中央に衝撃が直接加わることが多くなり、通気開口面積が大きく強度が小さい中央の撓み量が大きくなるとともに、グリルでの衝撃吸収量が少なくなるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−81034号公報
【特許文献2】特開2007−283990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、グリルの撓みを抑制し、グリルに加わる衝撃を吸収する車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の外面に横長の開口を少なくとも2個形成している枠体であるグリルを備えた車体構造において、グリルの背面に配置され、且つ車体側に支持されている支持ステーに上下方向に延びる縦ステーが設けられているグリルブラケットを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明では、縦ステーは、左右一対で、左右間距離を設定することで、グリルの強度を変化させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、縦ステーは、左右を連結する連結ステーで連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明では、支持ステーは、車体側に含まれるフロントバルクヘッドに連結してグリル近傍まで延びる座屈ステー部と、座屈ステー部のグリル近傍に連なり縦ステーに連結した横ステー部と、からなることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明では、グリルブラケットは、グリルの下方にバンパフェイスを設けたときには、連結ステーが背面のうちグリルの上部に設けられるとともに、縦ステーの下端がバンパフェイスを支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、車両の外面に開口を形成している枠体であるグリルを備えた車体構造において、グリルの背面に配置され、且つ車体側に支持されている支持ステーに上下方向に延びる縦ステーが設けられているグリルブラケットを備えているので、車両外方からグリルに入力される衝撃に対して、グリルブラケットの縦ステーによって、車両後方へ撓むグリルを受けることでグリルの強度を向上させることができ、グリルの撓みを抑制することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、縦ステーは、左右一対で、左右間距離を設定することで、グリルの強度を変化させるので、グリルの後方に配置された硬く強度の大きい部材、例えば、車体の前端の骨格に含まれるフロントバルクヘッドやラジエータに当接しないようにグリルの撓み量(バックリング量)を調節することができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、縦ステーは、左右を連結する連結ステーで連結されているので、車幅方向の力に対する強度を向上させて衝撃吸収の効率を高めることができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、支持ステーは、車体側に含まれるフロントバルクヘッドに連結してグリル近傍まで延びる座屈ステー部と、座屈ステー部に連なり縦ステーに連結した横ステー部と、からなるので、座屈ステー部の座屈によって衝撃を吸収することができ、つまりグリルブラケット自身で衝撃を吸収することができる。
【0015】
請求項5に係る発明では、グリルブラケットは、グリルの下方にバンパフェイスを設けたときには、連結ステーが背面のうちグリルの上部に設けられるため、連結ステーによるバンパフェイス及びグリルの衝突反力の低減ができ衝突ストローク量も増大できる。
さらに、縦ステーの下端がバンパフェイスを支持しているので、従来のバンパフェイスの上面を支持してバンパフェイスの形状保持をしていた支持部材を廃止でき、衝突反力の低減と、衝突ストローク量を増大できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係る車体構造の斜視図である。
【図2】実施例1に係る車体構造の断面図である。
【図3】車体構造のグリルブラケットの斜視図である。
【図4】車体構造のグリルブラケットの平面図である。
【図5】車体構造のグリルブラケットの背面図である。
【図6】実施例1に係る車体構造のグリルの撓みを抑制する機構を説明する図(1/3)である。
【図7】実施例1に係る車体構造のグリルの撓みを抑制する機構を説明する図(2/3)である。
【図8】実施例2に係る車体構造のグリルの撓みを抑制する機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、実施例1及び実施例2で詳細に説明する。なお、図面を複数指定するときに、図面の範囲(図〜から図〜まで)を「−」で示した。例えば、図1、図2、図3の場合は、図1−3とした。
【実施例1】
【0018】
図1、2に示した実施例1に係る車体構造11は、車両12の前部に採用され、障害物、例えば歩行者と接触したときに、歩行者を保護するとともに車両12のフロントグリル111の撓みを抑えるようにしたもので、フロントグリル111の裏にグリルブラケット112を備えている。以降で具体的に説明していく。
【0019】
車両12は、車室21の前に連なるエンジンルーム22と、フロントボデー14に取付けられたバンパビーム24と、バンパビーム24に支持されたバンパフェイス114と、フロントボデー14に取付けられたフロントバルクヘッド16と、フロントバルクヘッド16の下方に配置されたフロントロアクロスメンバ27と、フードロック装置31と、エンジンルーム22の前端に支持されているラジエータ32、コンデンサ33と、フロントバルクヘッド16にラジエータ32とコンデンサ33の上端を支持する支持ブラケット44と、フロントグリル111とフロントバルクヘッド16の間に配置されたグリルブラケット112と、を備える。
フロントグリル111は、上グリル116と、下グリル117と、からなる。
【0020】
フロントバルクヘッド16は(図3)、車体18側に連なるバルクヘッドコーナ部52と、バルクヘッドコーナ部52の先端部51に連なり上方へ延在させたバルクヘッドサイド部53と、バルクヘッドサイド部53の上端を車両12後方へ延ばした後退部54に取付けられたバルクヘッドアッパ部55と、を備える。
【0021】
フロントバルクヘッド16は、具体的には、バルクヘッドコーナ部52を角管状の中空(閉断面)に形成し、バルクヘッドコーナ部52の端(先端部51)を封じるように、板状に形成したバルクヘッドサイド部53の下部を取付け、バルクヘッドコーナ部52の下面にバルクヘッドサイドフレーム38の一端を接合している。
【0022】
車体構造11は(図1−5)、車両12の外面121に横長の開口122を少なくとも2個形成している枠体であるフロントグリル111を備え、フロントグリル111の背面124に配置され、且つ車体18側に支持されている支持ステー125に上下方向(矢印b1の方向)に延びる縦ステー126が設けられているグリルブラケット112を備えている。
【0023】
縦ステー126は、左右一対で、左右間距離Wsを設定することで、フロントグリル111の強度を変化させる。すなわち、左右間距離Wsが大きくなると、フロントグリル111がラジエータ32やコンデンサ33に接触するまでの変形量が大きくなり、結果的にフロントグリル111の強度は小さくなる。
【0024】
縦ステー126は、左右を連結する連結ステー127で連結されている。
支持ステー125は、車体18側に含まれるフロントバルクヘッド16に連結してフロントグリル111近傍まで延びる座屈ステー部131と、座屈ステー部131のフロントグリル111近傍に連なり縦ステー126に連結した横ステー部132と、からなる。
【0025】
グリルブラケット112は、フロントグリル111の下方にバンパフェイス114を設けたときには、連結ステー127が背面124のうちフロントグリル111の上部134に設けられるとともに、縦ステー126の下端であるところの前延出部148がバンパフェイス114を支持する。
【0026】
グリルブラケット112は、中心線C(図4)を基準に左右がほぼ対称である。図5のグリルブラケット112の左側を主体に詳しく説明する。
グリルブラケット112は、前述したフロントバルクヘッド16の立設したバルクヘッドサイド部53の上部に座屈ステー部131の上ステー136の一端(固定端)が固定され、座屈ステー部131の上ステー136の他端(先端)がフロントグリル111の裏に近接し、他端(先端)に連ねてフロントグリル111の中央部137の近傍へ向かって横ステー部132の上横ステー141が延び、且つ上横ステー141がフロントグリル111に沿って対称基準位置(中心線C)までの距離の約半分(距離W1)の位置まで延びて内側端142を形成し、内側端142に縦ステー126が上部を固定されることで垂下され、左の内側端142と右の内側端142を連結ステー127が連結している。
【0027】
また、バルクヘッドサイド部53の下部に座屈ステー部131の下ステー144の一端(固定端)が固定され、座屈ステー部131の下ステー144の他端(先端)がフロントグリル111の裏に近接し、他端(先端)に連ねてフロントグリル111の中央部137の近傍へ向かって横ステー部132の下横ステー145が延び、且つ下横ステー145がフロントグリル111に沿って対称基準位置(中心線C)までの距離の約半分まで延びて内側端146を形成し、内側端146に垂下している縦ステー126が下部を固定している。
【0028】
縦ステー126は(図3、5)、上縁に連ねて車両12後方へ延出させた後延出部147が形成され、後延出部147の先端を上グリル116の裏の下方へ向いている下面に固定し、下縁に連ねて車両12前方へ延出させた下端(前延出部148)が形成され、下端(前延出部148)の先端を下グリル117の下面およびバンパフェイス上面部114a(図2)に固定している。
なお、縦ステー126の後延出部147から前延出部148までの間は、上グリル116、下グリル117に固定していないが、この間を必要に応じて上グリル116、下グリル117に固定する。
【0029】
次に本発明の実施例1に係る車体構造11の作用を図6、7で説明する。
実施例1の車体構造11は、図6、7に示すように、車両12と障害物(例えば歩行者)が矢印b2のように接触したときに、グリルブラケット112が変形しつつフロントグリル111を矢印b3のように保持することで、フロントグリル111の撓みを抑える。
【0030】
具体的には、車両12の正面の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、フロントグリル111(上グリル116、下グリル117)が車両12後方へ変形しつつ、グリルブラケット112を押圧する。グリルブラケット112は、変形が進行しているフロントグリル111をフロントグリル111の中央から左右にそれぞれ距離W1だけ離した縦ステー126で支持するので、フロントグリル111の中央を変形させつつ、衝撃吸収をも確保し、且つフロントグリル111の撓みを抑制することができる。
【0031】
縦ステー126は、図7に示すように左右間距離Wsを設定することで、フロントグリル111を補強する強度を変化させるものなので、左右間距離をWsに設定した場合、一例の条件下において車両12の正面の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、フロントグリル111の撓み量(バックリング量)をEに抑制することができる。
つまり、フロントグリル111が後方に位置するフロントバルクヘッド16やラジエータ32に当接しないという利点がある。
【0032】
縦ステー126は、車両12の正面の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、図6の連結している連結ステー127に荷重が伝達・分散されるので、車幅方向(矢印b4の方向)の力に対する強度を向上させて衝撃吸収の効率を高めることができる。
【0033】
支持ステー125では、車両12の正面の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、座屈ステー部131に圧縮荷重が矢印b5のように加わり、座屈ステー部131が座屈するので、座屈ステー部131の座屈によって衝撃を吸収することができる。
【実施例2】
【0034】
次に、図8(a)、(b)に示した実施例2に係る車体構造11Bを説明する。(a)は図5に対応する背面図、(b)は図7に対応するグリルの撓みをより抑制する機構を説明する図である。上記図1−7に示す実施例1と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0035】
実施例2に係る車体構造11Bは、グリルブラケット112B(支持ステー125Bを備える。)を有し、グリルブラケット112Bは縦ステー126の左右間距離がWbである。左右間距離Wbは、図5の実施例1の車体構造11の左右間距離Wsに比べ、小さいことを特徴とする。
【0036】
(b)に示すように、グリルブラケット112Bでは、縦ステー126は左右間距離Wb(Wb<Ws)なので、一例の条件下において車両12の正面の中央が障害物(例えば歩行者)に接触(衝突)すると、フロントグリル111の撓み量(バックリング量)をEb(Eb<E)に抑えることができる。従って、フロントグリル111の撓み量をより抑制することができる。
【0037】
尚、本発明の車体構造は、実施の形態では車両の前部に採用されているが、後部や車両以外にも採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の車体構造は、車両の前部に好適である。
【符号の説明】
【0039】
11…車体構造、12…車両、16…フロントバルクヘッド、18…車体、111…フロントグリル、114…バンパフェイス、121…車両の外面、122…開口、124…背面、125…支持ステー、126…縦ステー、127…連結ステー、131…座屈ステー部、132…横ステー部、134…フロントグリルの上部、Ws…左右間距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外面に横長の開口を少なくとも2個形成している枠体であるグリルを備えた車体構造において、
前記グリルの背面に配置され、且つ車体側に支持されている支持ステーに上下方向に延びる縦ステーが設けられているグリルブラケットを備えていることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記縦ステーは、左右一対で、左右間距離を設定することで、グリルの強度を変化させることを特徴とする請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記縦ステーは、左右を連結する連結ステーで連結されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体構造。
【請求項4】
前記支持ステーは、前記車体側に含まれるフロントバルクヘッドに連結して前記グリル近傍まで延びる座屈ステー部と、該座屈ステー部の前記グリル近傍に連なり前記縦ステーに連結した横ステー部と、からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体構造。
【請求項5】
前記グリルブラケットは、前記グリルの下方にバンパフェイスを設けたときには、前記連結ステーが前記背面のうち前記グリルの上部に設けられるとともに、前記縦ステーの下端が前記バンパフェイスを支持することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−167990(P2010−167990A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14219(P2009−14219)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】