説明

車内音制御装置、車内音響装置、車内音響制御システム、および車内音制御方法

【課題】車両の外部へ出力される車外音情報のうち車室内に伝達される車外音情報を制御部の負荷を低減しつつ低騒音化する技術を提供する。
【解決手段】車両の車室内に伝達された車外音情報を打消すために予めメモリ22に記録された車外音情報に対応した打消音情報をメモリ32から読み出し、車室内に打消音情報を出力する。これにより、車両外部へ出力される車外音情報の出力に伴い打消音情報を生成する車内音制御装置の処理負荷が減少し、ユーザへの静粛性の高い車両の提供が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の音響情報の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のエンジンの振動音およびロードノイズなどの車両走行音は低騒音となっている。特に電気自動車やハイブリッド車などの車両が走行する際には車両走行音は車外の人が車両の接近に気づかないほどに低騒音となっており、車両と人との接触事故が発生する場合がある。そのため、車両の走行時には擬似的に車両走行音を出力し、車両の接近を車外に通知するという技術がある。なお、本発明と関連する技術を説明する資料としては特許文献1がある。しかしながら車両外部へ出力する擬似走行音が車内のユーザに対する新たな騒音となってしまい車内の快適な居住性を阻害するという問題があった。
【0003】
また、このような問題は擬似走行音だけではなく、車外に車両の接近を警告する場合に出力される警告音の場合も同様の問題があった。
【0004】
なお、車両からの出力音に対してはたとえば車室内に伝達された音響情報を打消すための音響情報を車室内に出力して、車室内の車外音情報を低騒音化する技術としてANC(Active Noise Control)の技術が知られている。このANCは車両に備えられたエンジンから発せられる音響情報のうち車室内に伝達された音響情報を打ち消す技術である。すなわち、車両走行時のエンジンの回転数に応じて波の振幅や周波数などの音響特性が変化する音響情報を車室内に設けられたマイクを用いて収集し、この音響情報の収集に伴い打消し音となる音響情報の生成および出力制御を行うという技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−21667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように車両走行時のエンジン音の音響特性の変化に伴って打消し音となる音響情報の生成および出力制御を行うことは、制御部の処理負荷が非常に大きくなるという問題があった。本発明は、車両の外部へ出力される車外音情報のうち車室内に伝達される車外音情報を制御部の負荷を低減しつつ低騒音化ができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、車両から車両外部へ出力される車外音情報の出力情報を検知する出力情報検知手段と、前記出力情報に基づいて、前記車両の車室内に伝達された車外音情報を打消すために予めメモリに記録された前記車外音情報に対応した打消音情報を前記メモリから読み出す打消音情報読出手段と、前記出力情報に基づいて、前記打消音情報を前記車室内に出力する打消音情報出力手段と、を備える。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の車内音制御装置において、前記打消音情報は固有の振幅、周波数、および、位相を含む複数の音響特性を備え、前記打消音情報出力手段は、前記車両の各座席ごとに少なくとも1以上の音響特性が異なる打消音情報を出力する。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の車内音制御装置において、前記打消音情報の音響特性は、前記各座席に着座するユーザの耳の位置に到達する前記車外音情報の音響特性に応じて定まる。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項2または3に記載の車内音制御装置において、前記打消音情報の音響特性は、所定の座席に対して前記打消音情報が出力された場合に前記所定の座席とは異なる座席に伝達される前記打消音情報の振幅が所定値以下となる。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項2乃至4のいずれかに記載の車内音制御装置において、前記打消音情報出力手段は、前記車両の走行方向に応じた前記車外音情報の出力位置に対応した座席について前記各座席ごとの打消音情報を出力する。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項2乃至4のいずれかに記載の車内音制御装置において、前記打消音情報出力手段は、前記車両に備えられた着座センサによりユーザが着座していることを検知した座席について前記各座席ごとの打消音情報を出力する。
【0013】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の車内音制御装置と、前記打消音情報を前記車室内に出力するスピーカと、を備える。
【0014】
また、請求項8の発明は、請求項7に記載の車内音響装置と、前記車両外部へ車外音情報を出力する車外音響装置と、を備える。
【0015】
さらに、請求項9の発明は、車両から車両外部へ出力される車外音情報の出力情報を検知する工程と、前記出力情報に基づいて、前記車両の車室内に伝達された車外音情報を打消すために予めメモリに記録された前記車外音情報に対応した打消音情報を前記メモリから読み出す工程と、前記出力情報に基づいて、前記打消音情報を前記車室内に出力する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1ないし9の発明によれば、車両外部へ出力される車外音情報の出力情報に基づいて、車両の車室内に伝達された車外音情報を打ち消すために予めメモリに記録された打消音情報を車室内に出力することで、車両外部へ出力される車外音情報の出力に伴い打消音情報を生成する車内音制御装置の処理負荷が減少し、ユーザへの静粛性の高い車両の提供が可能となる。
【0017】
また、特に請求項2の発明によれば、打消音情報出力手段が、車両の各座席ごとに少なくとも1以上の音響特性が異なる打消音情報を出力することで、車室内の各座席に伝達される車外音情報を低騒音化できる。
【0018】
また、特に請求項3の発明によれば、車両の各座席ごとに少なくとも1以上の音響特性が異なる打消音情報は、各座席に着座するユーザの耳の位置に到達する車外音情報の音響特性に応じて定まることで、車室内に伝達される車外音情報を適正に低騒音化できる。
【0019】
また、特に請求項4の発明によれば、打消音情報の音響特性は、所定の座席に対して前記打消音情報が出力された場合に前記所定の座席とは異なる座席に伝達される前記打消音情報の振幅が所定値以下となることで、所定の座席ごとに出力した打消音情報が別の座席に着座するユーザへの新たな騒音となることを防止できる。
【0020】
また、特に請求項5の発明によれば、打消音情報出力手段は、前記車両の走行方向に応じた前記車外音情報の出力位置に対応した座席について前記各座席ごとの打消音情報を出力することで、車外音情報の出力に伴い車室内に伝達される車外音女王による影響の大きい座席に着座しているユーザへの低騒音化を図ると同時に、影響の小さいユーザへの打消音情報の出力を行わないことで、車内音制御部の処理負荷を低減できる。
【0021】
さらに、特に請求項6の発明によれば、打消音情報出力手段は、車両に備えられた着座センサによりユーザが着座していることを検知した座席について、所定の座席に対応して出力する打消音情報を出力することで、車室内の車外音情報で所定の座席に着座しているユーザに影響を与える車外音情報の低騒音化が可能であり、着座していない座席の打消音情報は出力しないため、車内音制御部の処理負荷が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、第1の車両音響制御システムを示した図である。
【図2】図2は、車内音制御部の処理フローチャートである。
【図3】図3は、車両に備えれた車外音スピーカと車内音スピーカの配置を示した図である。
【図4】図4は、運転席の車外音情報および打消音情報の音波を示した図である。
【図5】図5は、助手席側の後部座席の車外音情報および打消音情報の音波を示した図である。
【図6】図6は、第2の車両音制御システムを示した図である。
【図7】図7は、着座センサからの信号を受信する車内音響制御部の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
<実施の形態1>
<1.第1の車内音響制御システムの構成>
図1は、第1の車両音響制御システム1を示した図である。第1の車両音響制御システム1は、車両100(図3に示す車両100)の走行音を擬似的に再現する擬似走行音情報221や車外への車両の接近を警告する警告音情報222などの車外音情報を車両外部へ出力する車外音響装置2と、車両内部(車室内)に伝達された車外音を打ち消す打消音情報(擬似走行音の打消音情報321、および、警告音の打消音情報322)を車室内に出力する車内音響装置3とを備えている。
【0025】
車外音響装置2は、車外へ出力する車外音情報の制御を行う車外音制御部21と、擬似走行音情報221、および、警告音情報222を含む車外音情報を記録する車外音メモリ22と、出力する車外音情報を所定の利得に基づいて増幅する車外音アンプ23と、車外音情報を車外へ出力する車外音スピーカ24とを備えている。
【0026】
車外音制御部21は、車外音メモリ22に記録されている各種の車外音情報を読み出す車外音情報読出機能211と、車外音情報を出力する車外音情報出力機能212と、車外音制御部21が車外音メモリ22から読み出して、車外音スピーカ24へ出力する車外音情報の種類(以下、「車外音情報の種類」ともいう。)、および、車外音制御部21が車外音メモリ22から読み出して、車外音スピーカ24へ車外音情報を出力するタイミング(以下、「出力タイミング」ともいう。)の情報を含む出力音情報信号として車内音制御部31へ通知する出力音情報通知機能213とを備えている。
【0027】
車外音情報読出機能211は、後述する車速センサ4からの車速パルスに基づいて、車両100が所定速度以下例えば20km/h以下)で走行していると検知された場合に、車外音メモリ22から車外音情報の擬似走行音情報221を読み出す。
【0028】
なお、以下では、車両100の速度が所定速度以下となった場合に車外音メモリ22から擬似走行音情報221を読み出す場合について説明するが、車外音メモリ22から擬似走行音情報221を読み出す条件は、車両100の速度が所定速度以下となった場合以外にも、車両100に備えられるカメラやレーダ装置などにより車両外部の近傍に人の存在を検知した場合であったり、車室内に設けられた車外音を出力するスイッチなどをユーザが操作した場合としてもよい。
【0029】
なお、車外音情報読出機能211は、ユーザの操作により後述するホーンSW5が操作された場合の警告音出力指示信号を車外音制御部21が受信した場合に、車外音メモリ22から警告音情報222を読み出す。
【0030】
車外音出力機能212は、車外音メモリ22から読み出された擬似走行音情報221、および、警告音情報222などの車外音情報を車外音アンプ23を介して車外音スピーカ24から出力する。
【0031】
出力音情報通知機能213は、車外音情報の種類、および、出力タイミングの情報を含む出力音情報信号として送信し車内音制御部31に通知する。
【0032】
車外音メモリ22は、車両100の走行音を擬似的に再現する擬似走行音情報221、および、車両外部へ車両100の接近を警告する警告音情報222を含む車外音情報を記録している。
【0033】
なお、本実施の形態の警告音情報222はデジタルデータとして車外音メモリ22に記録され、ユーザの操作によるホーンSW5の操作に伴い警告音情報222が車外音情報読出機能211により読み出され、車外音情報出力機能212により車外音制御部21から車内音アンプ33に出力されることについて述べたが、この警告音情報222の車外音メモリ22の記録に替えて、車外音響装置2内にホーン回路を設ける構成としてもよい。
【0034】
ホーン回路を設けた構成では、車外音制御部21がホーンSW5からの警告音出力指示信号を受信すると、車外音制御部21からホーン回路へ警告音出力指示信号を送信し、ホーン回路内の振動板が電磁石に引き寄せされたり、電磁石から離れたりする作用でホーン音を車外音スピーカ24から出力する。このホーン回路へ警告音出力指示信号を出力する場合も出力音情報通知機能213を用いて車内音制御部31へ車外音情報の種類(ホーン回路からの警告音情報)および車外音制御部21からホーン回路への警告音出力指示信号の出力タイミングを送信し、この出力情報に応じて対応した打消音情報を出力する。
【0035】
車外音アンプ23は、車外音制御部21からの車外音情報の信号レベルを所定の利得に基づいて増幅し、増幅した車外音情報を車外音スピーカ24へ出力する。
【0036】
車外音スピーカ24は、車外音制御部21から車外音アンプ23を介して送信された車外音情報を車両外部へ出力する。
【0037】
車外音響装置2の車外音制御部21へ信号を送信する車速センサ4は車両内部に設けられており、車両100の速度に応じた車速パルスを車外音制御部21へ出力する。
【0038】
ホーンSW5は、ユーザの操作によりの車外音制御部21へ警告音出力指示信号を送信するものであり、例えば車両100のステアリング中央付近に設けられている。
【0039】
次に、車両音響制御システム1内の車内音響装置3について説明する。車内音響装置3は、車室内に伝達された車外出力音を打ち消す打消音情報の制御を行う車内音制御部31と、車室内に伝達された擬似走行音を打ち消す擬似走行音の打消音情報321、および、車室内に伝達された警告音を打ち消す警告音の打消音情報322を含む打消音情報を記録している車内音メモリ32と、出力する打消音情報を所定の利得に基づいて増幅する車内音アンプ33と、打消音情報を車室内に出力する車内音スピーカ34とを備えている。
【0040】
車内音制御部31は、車外音響装置2の車外音制御部21から通知された車外音情報の種類、および、出力タイミングの情報を検知する出力音情報検知機能311と、車内音メモリ32から打消音情報を読み出す車内音情報読出機能312と、車内音メモリ32から読み出した打消音情報を車室内に出力する車内音情報出力機能313とを備えている。
【0041】
出力音情報検知機能311は、車外音制御部21の出力音情報通知機能213により通知された車外音情報の種類および出力タイミングの情報を含む出力音情報信号を検知する。
【0042】
車内音制御部31は、出力音情報信号に含まれる車外音情報の種類および出力タイミングの情報に基づいて、以下で説明する車内音情報読出機能312による車内音メモリ32から読み出す打消音情報の種類を決定したり、車内音情報出力機能313による打消音情報の出力タイミングを決定する。
【0043】
車内音情報読出機能312は、出力音情報検知機能311が検知した車外音情報の種類に基づいて、車内音メモリ32から打消音情報を読み出す。すなわち、車外音情報が擬似走行音情報221の場合は、擬似走行音の打消音情報321が車内音メモリ32から読み出される。また、車外音情報が警告音情報222の場合は、警告音の打消音情報322が車内音メモリ32から読み出される。このように車外音情報と打消音情報とは予め対応付けがなされて各メモリに記録されており、車外音制御部21から出力される車外音情報の種類に対応した打消音情報が車内音情報読出機能312により車内音メモリ32から読み出される。
【0044】
車外音情報と打消音情報の対応付けについては、車外音情報は波の振幅、周波数、および、位相を含む複数の音響特性を備えており、車外音情報の種類に応じて固有の音響特性を備えている。これらの車外音情報の音響特性を予め解析し、車外音情報を打ち消す波の振幅、周波数、および、位相を含む複数の音響特性を備える打消音情報を予め生成する。その結果、車両走行前に固有の音響特性を有する車外音情報は車外音メモリ22に記録され、車外音情報の種類に対応付けられた打消音情報は車内音メモリ32に記録される。これにより、車両100の走行中に車内音制御部31が車外音制御部21からの車外音情報の音響特性を解析して、打消音情報を生成する処理負荷がなくなる。
【0045】
車内音情報出力機能は、車外音制御部21から出力される車外音情報の出力タイミングに応じて車内音メモリ32から読み出した打消音情報の出力を行う。
【0046】
車内音制御部31からの打消音情報の出力タイミングは、予め音響試験などを行って算出しておく。たとえば、車外音制御部21から出力された車外音情報が車室内に伝達され、車室内の座席に着座するユーザの耳の位置に到達する時間、および、車外音情報がユーザの耳の位置に到達する際の音響特性と、車室内の座席ごとに設けられたスピーカから出力される打消音情報がユーザの耳の位置に到達する時間、および、打消音情報がユーザの耳の位置に到達する際の音響特性などの車外音情報および打消音情報の出力タイミングに関する情報を予め音響試験で求めておく。
【0047】
そして、車外音制御部21からの車外音情報の出力に対して最適なタイミングで車内音制御部31からの打消音情報の出力を行えるようにする。
【0048】
このように打消音情報の最適な出力タイミングを予め音響試験で算出し、この出力タイミングの情報に基づいて車外音制御部21および車内音制御部31の制御を行うことで、車両100の座席に着座するユーザの耳の位置に到達する車外音情報に応じて打消音情報の出力タイミングが定まり、車外音情報の位相とこれに対応する打消音情報の位相とが逆相πradの状態となり車室内の低騒音化が図れる。
【0049】
また、車外音制御部21から出力する車外音情報のうち、たとえば擬似走行音情報221は、200Hz〜2000Hzの中から4〜8個の周波数を合成した和音である。また警告音情報は420Hzおよび510Hzの和音である。このように例示した周波数よりも高い周波数の場合には、車外音情報と打消音情報との位相を逆相とするそれぞれの出力タイミングを合わせることが困難となる。また、位相が逆相とならずにずれると、車外音情報の振幅を増幅することとなりユーザに対する騒音となる。そのため、車外音情報の周波数を上記に例示した周波数またはそれよりも低い周波数とすることで、打消音情報の出力により車外音情報と打消音情報の位相が逆相とならずに位相がずれても車外音情報の振幅を増幅することなくなる。これにより、車外音情報の音波の振幅の値を所定の割合で低減することができ、車室内のユーザに対する低騒音化が可能となる。
【0050】
車内音メモリ32は、擬似走行音情報221を打ち消す擬似走行音の打消音情報321、および、警告音情報222を打ち消す警告音の打消音情報322を含む打消音情報を記録している。
【0051】
なお、車内音メモリ32に記録される打消音情報は、固有の音響特性を備えた音響情報そのものであってもよいし、固有の音響特性を備えた打消音情報を算出するための演算式であってもよい。
【0052】
さらに、車内音響装置3の内部の車内音メモリ32に記録されている打消音情報は、車内音響装置3の外部のメモリに記録されていてもよい。
【0053】
車内音アンプ33は、車内音制御部31からの打消音情報の信号レベルを所定の利得に基づいて増幅し、増幅した打消音情報を車内音スピーカ34へ出力する。
【0054】
車内音スピーカ34は、車内音制御部31から車内音アンプ33を介して送信された打消音情報を車室内へ出力する。
<2.車内音制御部31の処理>
図2は、車内音制御部31の処理フローチャートである。車内音制御部31の出力音情報検知機能311が、車外音制御部21の出力音情報通知機能213により送信された車外音情報の種類および出力タイミングの情報を含む出力音情報信号を受信すると(ステップS101がYes)、車内音情報読出機能312により、車外音情報の種類に対応した打消音情報を車内音メモリ32から読み出す(ステップS102)。
【0055】
つまり、車外音情報の種類が擬似走行音情報221の場合は、擬似走行音の打消音情報321を読出し、車外音情報の種類が警告音情報222の場合は、警告音の打消音情報322を読み出して、ステップS103の処理に進む。なお、車内音制御部31が車外音制御部21からの出力音情報信号を受信していない場合(ステップS101がNo)は処理を終了する。
【0056】
ステップS103に戻って、車内音メモリ32から読み出された打消音情報が車内音情報出力機能313により車内音制御部31から出力される(ステップS103)。そして、車内音アンプ33を介して車内音スピーカ34から打消音情報が出力される。
【0057】
このように、車外音情報の出力タイミングに合わせて、予め車内音メモリ32に記録した車外音情報に対応した打消音情報を出力することで、車両外部へ出力される車外音情報の出力に伴い、打消音情報を生成する車内音制御装置の処理負荷が減少し、ユーザへの静粛性の高い車両の提供が可能となる。
<3車外音スピーカと車内音スピーカの配置>
図3は車両100に備えられた車外音スピーカと車内音スピーカの配置を示した図である。車両前方に設けられている車外音スピーカOSP11、および、車両後方に設けられている車外音スピーカOSP12は図1および図6の車外音スピーカ24に対応している。また、運転席D1側のドアに設けられている車内音スピーカISP1、助手席S1側のドアに設けられている車内音スピーカISP2、運転席D1の後部座席D2側ドアに設けられている車内音スピーカISP3、および、助手席S1の後部座席S2側ドアに設けられている車内音スピーカISP4は、図1および図6の車内音スピーカ34に対応している。
【0058】
そして、車外音スピーカOSP11から車外音情報が出力される場合は、音響試験などで予め算出された音響特性に基づいたタイミングで打消音情報が車内音スピーカISP1、ISP2、ISP3、および、ISP4から出力される。この場合、音源となる車外音スピーカOSP11から各座席に着座するユーザの耳の位置に到達する時間、および、車外音情報がユーザの耳の位置に到達する際の音響特性が座席の位置ごとに異なるため、車内音制御部31から出力される打消音情報の音響特性も各座席ごとに異なる。
【0059】
つまり、車外音制御部21の車外音情報出力機能212による車外音スピーカOSP11から出力される一の車外音情報に対して、車内音制御部31の車内音情報出力機能313により出力される打消音情報の各車内音スピーカISP1〜ISP4の出力タイミングが異なる。
【0060】
そのため、車内音メモリ32には、1つの種類の車外音情報に対して、各座席ごとの打消音情報が記録されている。そして、車内音制御部31の車内音情報出力機能313により出力される打消音情報の音響特性は車両100の各座席ごとに少なくとも1以上の音響特性が異なっており、これらの打消音情報を車外音制御部21の車外音情報の出力とタイミングを合わせて、各車内音スピーカISP1〜ISP4の全ての座席のスピーカから出力することで、車室内の各座席に伝達される擬似走行音情報や警告音情報などの車外音情報を適正に低騒音化することができる。
【0061】
また、車内音制御部31から出力される打消音情報のうち所定の座席に対して出力される打消音情報の音響特性は、所定の座席(例えば運転席D1)に対して打消音情報が出力された場合にこの運転席D1とは異なる座席(例えば助手席S1)に伝達される打消音情報の音響特性のうち振幅が所定値以下となるような音響特性とする。これにより、所定の座席ごとに出力した打消音情報が別の座席に着座するユーザへの新たな騒音となることを防止できる。
【0062】
また、上記説明では、車両100前方のバンパー部分に設けられる車外音スピーカOSP11について述べたが、このように車両100に備えられる車外音スピーカを1つとしてもよいし複数設けるようにしてもよい。車外音スピーカを複数設ける例としては、車外音スピーカOSP11を車両100の前方のバンパー部分に設け、車外音スピーカOSP12を車両100の後方のバンパー部分に設ける。
【0063】
そして、車両100が前進する場合には、車外音情報が車外音スピーカOSP11から車両外部へ出力される。この場合、車室内での車外音情報の伝達は主に運転席D1と助手席S1に着座するユーザであり、運転席側の後部座席D2、および、助手席側の後部座席S2のユーザは運転席D1や助手席S1などが遮蔽物となり、車外音情報が伝達される音量は小さい。
【0064】
そのため、車外音スピーカOSP11からの距離が近い前方の席の運転席D1および助手席S1の各ドアに設けられた車内音スピーカISP1およびISP2からは打消音情報を出力し、車外音スピーカOSP11との距離が遠く、前方の座席などが遮蔽部となる車両後方の席の運転席側の後部座席D2、および、助手席側の後部座席S2の各ドアに設けられた車内音スピーカISP3およびISP4からは打消音情報を出力しないようにする。これにより、車外音情報の出力に伴い車室内に伝達される車外音情報による影響の大きい座席に着座しているユーザへの低騒音化を図ると同時に、影響の小さいユーザへの打消音情報の出力を行わないことで車内音制御部31の処理負荷を低減できる。
【0065】
また、車両100が後退する場合には車外音情報が車両100の後方バンパー部分に設けられた車外音スピーカOSP12から車両外部へ出力される。この場合は、車室内での車外音情報の伝達は主に車外音スピーカOSP12からの距離が近い運転席側の後部座席D2、および、助手席側の後部座席S2であり、これらの各ドアに設けられた車内音スピーカISP3およびISP4からは打消音情報を出力する。
【0066】
また、車外音スピーカOSP12との距離が遠く、後部座席や前方の座席などが遮蔽物となる前方の席の運転席D1および助手席S1のユーザには車外音情報の出力に伴う車室内の車外音情報の影響は小さいため、各ドアに設けられた車内音スピーカISP1およびISP2からは打消音情報を出力しないようにする。これにより、車外音情報の出力に伴い車室内に伝達される車外音情報による影響の大きい座席に着座しているユーザへの低騒音化を図ると同時に、影響の小さいユーザへの打消音情報出力を行わないことで車内音制御部31の処理負荷を低減できる。
【0067】
さらに、本実施の形態の車内音スピーカは各座席ごとに設けられたドアスピーカについて述べたが、これに限定されず各座席のヘッドレストの左右に設けられたシートスピーカーなどでもよく、各座席ごとのユーザの耳の位置で車室内に伝達された車外音情報を打ち消すことができる打消音情報を出力できる車室内に設けられたスピーカであればよい他のスピーカでも適用は可能である。
【0068】
図4は、運転席D1の車外音情報および打消音情報の音波を示した図であり、縦軸は電圧(単位[v])、横軸は時間(単位[ms])である。図4の音波W11は車外音スピーカOSP11からの車外出力音の波であり、その音響特性は振幅a[v]で所定の周波数の正弦波である。この音波W11の車外音情報が車両100の車室内に伝達され、図3に示すように運転席D1に着座するユーザの耳の位置(以下、「運転席D1のユーザの位置」ともいう。)に到達した場合、その車外音情報の音波W12は音源の位置の音波W11と比べて位相がφ1[rad]遅れている。また、音源から運転席D1のユーザの位置までの車外音情報の伝達に伴う遮蔽物により音波W11の音圧が減衰し、音波W12の振幅が小さくなっている。つまり、音波W11の振幅の値a[v]よりも音波W12の振幅b[v]が小さい値となっている。なお、音波W11と音波W12とを比べた場合周波数の変化はなく、音波W11および音波W12の周波数は同じである。
【0069】
そして、運転席D1のドアに設けられた車内音スピーカISP1からの打消音情報の音波は、運転席D1のユーザの位置での音波がW13となるように車内音制御部31から出力された打消音情報が車内音スピーカ34により出力される。打消音情報の音波W13は、音波W12とは振幅および周波数が同じで、位相が逆相(π[rad])となっている。これにより、車室内の各座席ごとに伝達される車外音情報を低騒音化できる。
【0070】
図5は、助手席側の後部座席S2の車外音情報および打消音情報の音波を示した図であり、縦軸は電圧(単位[v])、横軸は時間(単位[ms])である。図5において上記図4で説明した内容と異なる点は、図4では運転席D1のユーザの位置での車外音情報と打消音情報とについて述べたが、図5では助手席側の後部座席S2に着座するユーザの耳の位置(以下、「後部座席S2のユーザの位置」ともいう。)での車外音情報と打消音情報であり、図3に示すように運転席D1と助手席側の後部座席S2とでは音源となる車外音スピーカOSP11との距離や遮蔽物の位置が異なる。
【0071】
この違いにより、図5では、音源である車外音スピーカOSP11から出力される車外音情報の音波W11は、助手席側の後部座席S2のユーザの位置における車外音情報の音波W22の音波W11との位相差がφ2[rad]となる。つまり、この位相差は運転席D1のユーザの位置の音波W12の位相差φ1[rad]よりも大きくなる。
【0072】
また、音波W22の振幅c[v]は音波W11の振幅a[v]よりも小さい。さらに、音波W22の振幅c[v]は運転席D1の車外音情報である音波W12の振幅b[v]よりも小さい。これは音源の車外音スピーカOSP11から運転席D1のユーザの位置の間よりも、車外音スピーカOSP11から後部座席S2のユーザの位置の間のほうが、遮蔽物(例えば助手席S1など)が多く、音波W22の音圧の減衰量が大きいためである。
【0073】
そして、後部座席S2のユーザの位置の車外音情報である音波W22を打ち消すための打消音情報の音波W23は、音波W22と振幅および周波数が同じで、位相が逆相(π[rad])となっている。また、この助手席側の後部座席S2の打消音情報の音波W23の音波W11との位相差φ2は、運転席D1のユーザの位置の打消音情報の音波W13の音波W11との位相差φ1よりも大きい。これにより、車室内の各座席ごとの打消音情報を各座席のスピーカから出力することができ、車室内の各座席ごとに伝達される車外音情報を低騒音化できる。
【0074】
また、打消音情報を出力する各座席のスピーカは車両100に予め設けれたスピーカを用いることで打消音情報を出力するために新たなスピーカを設ける必要がなく、製造費用の削減につながる。
【0075】
<実施の形態2>
<1.第2の車内音響制御システムの構成>
図6は、第2の車両音制御システム1aを示した図である。図6に示す車両音響制御システム1aと図1で示した車両音響制御システム1との違いは、図6の車両音響制御システム1aの車内音制御部31aが車両100内部に設けられた着座センサ6からの着座信号を受信して、ユーザが着座していることを検知した座席について、各座席ごとの打消音情報を出力することである。
【0076】
そのため、図6では車内音制御部31aは、車外音制御部21の出力音情報通知機能213からの車外音情報の種類および出力タイミングの情報を含む出力音情報信号を出力音情報検知機能311aから受信した場合に、着座センサ6からの着座信号に基づいてユーザの着座している座席を検知する。
【0077】
そして、車内音情報読出機能312aにより、ユーザの着座を検知した座席の打消音情報を車内音メモリ32から読み出し、車内音メモリ32から読み出されたユーザの着座を検知した座席の打消音情報が車内音情報出力機能313aにより車内音制御部31aから出力される。そして、車内音アンプ33を介して各座席の車内音スピーカ34から打消音情報を出力する。
【0078】
なお、その他の車両音響制御システム1aの構成は、図1で説明した車両音響制御システム1と同じ構成である。
<2.車内音制御部31aの処理>
図7は、着座センサ6からの信号を受信する車内音響制御部31aの処理フローチャートである。車内音制御部31aは、車外音制御部21の出力音情報通知機能213からの車外音情報の種類および出力タイミングの情報を含む出力音情報信号を出力音情報検知機能311aにより受信した場合(ステップS201がYes)に、着座センサ6からの着座信号によりユーザの着座している座席を検知して(ステップS202)、ステップS203の処理へ進む。なお、車内音制御部31aが車外音制御部21からの出力音情報信号を受信していない場合(ステップS201がNo)は処理を終了する。
【0079】
ステップS303に戻って、車内音情報読出機能312aにより、ユーザの着座を検知した座席の打消音情報を車内音メモリ32から読み出し(ステップS203)、車内音メモリ32から読み出されたユーザの着座を検知した座席の打消音情報が車内音情報出力機能313aにより車内音制御部31aから出力される(ステップS204)。そして、車内音アンプ33を介して各座席の車内音スピーカ34から打消音情報を出力する。
【0080】
これにより、車室内の車外音情報で所定の座席に着座しているユーザに影響を与える車外音情報の低騒音化が可能であり、着座していない座席の打消音情報は出力しないため、車内音制御部31aの処理負荷が減少する。
【符号の説明】
【0081】
1・・・・車両音響制御システム
2・・・・車外音響装置
3・・・・車内音響装置
4・・・・車速センサ
5・・・・ホーンSW
6・・・・着座センサ
21・・・車外音制御部
22・・・車外音メモリ
23・・・車外音アンプ
24・・・車外音スピーカ
31・・・車内音制御部
32・・・車内音メモリ
33・・・車内音アンプ
34・・・車外音スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から車両外部へ出力される車外音情報の出力情報を検知する出力情報検知手段と、
前記出力情報に基づいて、前記車両の車室内に伝達された車外音情報を打消すために予めメモリに記録された前記車外音情報に対応した打消音情報を前記メモリから読み出す打消音情報読出手段と、
前記出力情報に基づいて、前記打消音情報を前記車室内に出力する打消音情報出力手段と、
を備えることを特徴とする車内音制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車内音制御装置において、
前記打消音情報は固有の振幅、周波数、および、位相を含む複数の音響特性を備え、
前記打消音情報出力手段は、前記車両の各座席ごとに少なくとも1以上の音響特性が異なる打消音情報を出力すること、
を特徴とする車内音制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車内音制御装置において、
前記打消音情報の音響特性は、前記各座席に着座するユーザの耳の位置に到達する前記車外音情報の音響特性に応じて定まること、
を特徴とする車内音制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車内音制御装置において、
前記打消音情報の音響特性は、所定の座席に対して前記打消音情報が出力された場合に前記所定の座席とは異なる座席に伝達される前記打消音情報の振幅が所定値以下となること、
を特徴とする車内音制御装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の車内音制御装置において、
前記打消音情報出力手段は、前記車両の走行方向に応じた前記車外音情報の出力位置に対応した座席について前記各座席ごとの打消音情報を出力すること、
を特徴とする車内音制御装置。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれかに記載の車内音制御装置において、
前記打消音情報出力手段は、前記車両に備えられた着座センサによりユーザが着座していることを検知した座席について前記各座席ごとの打消音情報を出力すること、
特徴とする車内音制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の車内音制御装置と、
前記打消音情報を前記車室内に出力するスピーカと、
を備えたことを特徴とする車内音響装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車内音響装置と、
前記車両外部へ車外音情報を出力する車外音響装置と、
を備えたことを特徴とする車両音響制御システム。
【請求項9】
車両から車両外部へ出力される車外音情報の出力情報を検知する工程と、
前記出力情報に基づいて、前記車両の車室内に伝達された車外音情報を打消すために予めメモリに記録された前記車外音情報に対応した打消音情報を前記メモリから読み出す工程と、
前記出力情報に基づいて、前記打消音情報を前記車室内に出力する工程と、
を備えることを特徴とする車内音制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−251587(P2011−251587A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125248(P2010−125248)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】