説明

車椅子と自転車の連結装置

【課題】車椅子と自転車の各々に特別な加工を施すことなく、車椅子と自転車を自在に一体化および分離できるようにする。
【解決手段】車椅子5と自転車7とを一体化させるときは、第1連結部材20の台座部材21の孔30L,30R内に車椅子5のティッピングレバー12L,12Rを挿入し、第1連結部材20を前方に押し込んでノブボルト32L,32Rにより止める。また、第1連結部材20の軸収容部材23の孔30L,30Rとフロントフォーク18のエンド99L,99Rにクイックレリース36の軸を挿入してその先端にナットnt1を締結する。さらに、車椅子5のハンドグリップ14L,14Rの間にパイプ51を連結し、パイプ51と自転車7のハンドル17とをパイプロック部材54L,54Rにより連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身障者を乗せた車椅子の移動の労力を軽減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車椅子と自転車を一体化し、自転車の推進力を利用して車椅子を前進させる技術の開示がある。同文献に開示された手押し車付き自転車では、以下のような構成によって車椅子と自転車とが一体化されている。まず、車椅子の背もたれの後側のフレームにはボックス状の取付部が締着され、この取付部をなす上下の板には2つの孔が穿設されている。一方、自転車のフレームからはヘッドパイプが取り除かれ、その取り除かれた部分には取付部における2つの孔と同じ直径の孔を有する筒状体が溶接されている。そして、この筒状体を取付部における2つの孔の間に嵌め込み、それら2つの孔と筒状体を貫通するようにボルトとナットを締結することにより、車椅子と自転車とが一体化される。以上の構成によって車椅子と自転車とが一体化された状態において、介助者が自転車のサドルに跨ってそのペダルを踏み込むと、車椅子が自転車の推進力を受けて前方に進む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−142926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術の場合、自転車のフレームにそのヘッドパイプを取り除くための加工を施す必要があり、加工を施した後はもはや自転車単体として利用することができない。また、車椅子の側にも、車椅子本来の機能からすれば不要な部材である取付部が締着されており、車椅子をそれ単体として利用するたびに取付部を分離する作業をするのは煩わしい。
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、車椅子と自転車の各々に特別な加工を施すことなく、車椅子と自転車を容易に一体化および分離できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車椅子の左右のティッピングレバーと自転車のフロントフォークとを分離自在に連結する第1の連結部材と、前記車椅子の左右のハンドグリップと前記自転車のハンドルとを分離自在に連結する第2の連結部材とを有する連結装置を提供する。
本発明では、第1の連結部材は車椅子のティッピングレバーと自転車のフロントフォークとを、第2の連結部材は車椅子のハンドグリップと自転車のハンドルとを各々分離自在に連結する。よって、本発明によると、車椅子と前輪を外した自転車とを溶接などの加工を施すことなく容易に一体化させることができるだけでなく、一体化した車椅子と自転車を分離し、分離した車椅子と自転車を各々単体として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】この発明の一実施形態である連結装置によって連結された車椅子と自転車の左側面図である。
【図2】同連結装置によって連結された車椅子と自転車の上面図である。
【図3】同連結装置における第1連結部材の構成を示す図である。
【図4】同連結装置における継手の構成を示す図である。
【図5】同連結装置における継手の構成を示す図である。
【図6】同連結装置における継手の構成を示す図である。
【図7】同連結装置における継手とパイプロック部材の構成を示す図である。
【図8】同連結装置における第1連結部材のティッピングレバーへの装着の仕方を示す図である。
【図9】同連結装置における第1連結部材のフロントフォークへの装着の仕方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態である連結装置1によって連結された車椅子5と自転車7の左側面図である。また、図2は、連結装置1によって連結された車椅子5と自転車7の上面図である。連結装置1は、第1連結部材20と第2連結部材50とを有する。以降の説明において、連結装置1、車椅子5、自転車7の各々における左右一対となる要素については、左側の要素の番号の後にLの文字を付し、右側の要素の番号の後にRの文字を付することによって両者を区別する。第1連結部材20は、車椅子5の下部フレーム11L,11Rの後端部分によって形成されたティッピングレバー12L,12Rと自転車7のフロントフォーク18とを連結する役割を果たす部材である。第2連結部材50は、車椅子5の背もたれフレーム13L,13Rの上端部が後方に折れ曲がって形成されたハンドグリップ14L,14Rと自転車7のハンドル17とを連結する役割を果たす部材である。
【0008】
図3に示すように、第1連結部材20は、台座部材21、支持部材22、および軸収容部材23を有する。
台座部材21は、同寸法の2本のパイプ24,25を平行に並べて継手26C,26L,26R,27L,27Rにより連結したものである。図4に示すように、継手26C,26L,26Rの各々は、一対の半割状部材28,29からなる。継手26C,26L,26Rの各々における一対の半割状部材28,29は、パイプ24,25の外周のほぼ中央とその外周における中央から左右に僅かに離れた位置を上下から挟み込んで合体することにより、パイプ24,25と一体化されている。半割状部材28,29の合体は、パイプ24,25を挟んで対向させた半割状部材28,29間にボルトbtを貫通させてその先端にナットntを締結することにより行う(後述する継手27L,27R,52L,52R,53L,53Rも同様)。
【0009】
図5に示すように、継手27L,27Rは、一対の半割状部材38,39からなる。継手27L,27Rの各々における一対の半割状部材38,39は、パイプ24,25の左右の各々の端部を上下から挟み込みんで合体することにより、パイプ24,25と一体化されている。そして、図3に示すように、継手27L,27Rの各々における一対の半割状部材38,39がパイプ24,25に固定された状態において、パイプ24,25の左右の端の外側にはそれらの延在方向と直交する孔30L,30Rが形成される。孔30L,30Rの間の距離はティッピングレバー12L,12R間の距離と同じであり、孔30L,30Rの直径はティッピングレバー12L,12Rの直径よりも僅かに大きい。よって、これらの孔30L,30Rにはティッピングレバー12L,12Rを挿通可能である。また、継手27L,27Rにおける孔30L,30Rの上の位置にはネジ穴31L,31R(図8参照)が穿設されており、このネジ穴31L,31Rにはノブボルト32L,32Rが螺合される。
【0010】
図3において、台座部材21における継手26C,26L,26Rの上方には支持部材22が固定されている。支持部材22は、2枚の板62,63を重ねて固定したものである。板62は、長方形における短辺を外側に湾曲させたような形状をなしている。板63は、長方形における短辺に三角形の底辺を繋げ、三角形の部分をその底辺に沿って上方に折り曲げたような形状をなしている。
【0011】
支持部材22の板63における上方に折り曲がった三角形状の面の先端には軸収容部材23が固定されている。軸収容部材23は、筒状の部材である。軸収容部材23には、その左端面と右端面の間を左右方向に貫く孔35が穿設されている。この孔35の直径は、自転車7のフロントフォーク18の先端部分であるエンド99L,99R(図9参照)と自転車7の前輪との連結に用いる軸部材であるクイックレリース36(図9参照)の軸の直径より僅かに大きい。
【0012】
図2に示すように、第2連結部材50は、パイプ51、継手52L,52R,53L,53R、およびパイプロック部材54L,54Rからなる。パイプ51は、車椅子5の左右のハンドグリップ14L,14R間の距離と同じ長さをもったパイプである。
【0013】
図6に示すように、継手52L,52Rの各々は、一対の半割状部材40,41からなる。継手52L,52Rの各々における一対の半割状部材40,41は、車椅子5のハンドグリップ14L,14Rとパイプ51の左右の各々の端部とをT字状に交差させた状態で、その交差箇所を挟み込んで合体している。継手52L,52Rの各々の半割状部材40,41の合体により、ハンドグリップ14L,14Rとパイプ51の左右の各々の端部が交差接合される(図2)。
【0014】
図2において、継手53L,53Rの各々は、継手52L,52Rのものと同じ一対の半割状部材40,41からなる。そして、図7(A)に示すように、継手53L,53Rの各々の一対の半割状部材40,41は、パイプロック部材54L,54Rの胴部81とハンドル17とを挟み込んで合体している。この半割状部材40,41の合体により、パイプロック部材54L,54Rと継手53L,53Rとを繋げた棒状部材が形成され、この棒状部材とハンドル17とが交差接合される。
【0015】
パイプロック部材54L,54Rの胴部81における継手53L,53Rにより挟まれた側の反対側にはクランク部82が設けられている。クランク部82は、断面L字状の枠83と断面U字状の枠84の一端同士をヒンジ79により連結したものである。クランク部82の枠84におけるヒンジ79と反対側の先端部は折り返すように湾曲して掛合部85を構成している。クランク部82の枠83の底面は胴部81の端面に固定されている。
【0016】
また、胴部81の外周面からは枠83,84の連結部位のある方向と反対の方向に向かって一対の支持板86L,86Rが起立しており、ロックレバー87がこの支持板86L,86Rによって支持されている。より詳細に説明すると、ロックレバー87は上面88とその左右両端から支持板86L,86Rを覆うようにして延在する側面89L,89Rとを有している。支持板86L,86Rの各々には孔(不図示)が穿設されている。また、ロックレバー87の側面89Lには孔90L,91Lが、その側面89Rには孔90R,91Rが各々穿設されている。そして、ロックレバー87の孔90L,90R、支持板86L,86Rの各々の孔(不図示)にはネジ98が貫通している。また、ロックレバー87の側面89L,89Rの孔91L,91Rには掛合環92が嵌め込まれている。ロックレバー87は、孔90L,90Rを回動軸とする回動が自在である。また、掛合環92は、孔91L,91Rを回動軸とする回動が自在である。
【0017】
以上が、第1連結部材20および第2連結部材50の構成の詳細である。介助者は、この第1連結部材20と第2連結部材50により、車椅子5と自転車7を以下のようにして連結する。
まず、第1連結部材20の台座部材21における2つの孔30L,30Rの開口にティッピングレバー12L,12Rの後端29L,29R(図1、図3)を挿入する。そして、図8に示すように、車輪15L,15Rの車軸19L,19Rが枢着された縦中間フレーム16L,16R(図1)と接する位置まで第1連結部材20を前方に押し込み、ネジ穴31L,31Rにノブボルト32L,32Rを螺合する。ネジ穴31L,31Rにノブボルト32L,32Rが螺合されると、その下端が孔30L,30R内のティッピングレバー12L,12Rを締め付ける。この締め付けによって孔30L,30R内におけるティッピングレバー12L,12Rの摺動が規制され、第1連結部材20がティッピングレバー12L,12Rに固定される。
【0018】
次に、前輪を外した自転車7のフロントフォーク18を第1連結部材20の上方から第1連結部材20に近づけていく。そして、図9に示すように、自転車7のフロントフォーク18をそのエンド99L,99Rと軸収容部材23の孔35とが重なる位置まで第1連結部材20に近づけたところでエンド99L,99Rと孔35にクイックレリース36の軸を挿通し、その先端にナットnt1を螺合する。これにより車椅子5のティッピングレバー12L,12Rと自転車7のフロントフォーク18とが連結された状態となる。
【0019】
次に、車椅子5のハンドグリップ14L,14Rに連結されているパイプ51をパイプロック部材54L,54Rのクランク部82における枠83,84の内側に挟み込む。さらに、ロックレバー87をネジ98を支点としてクランク部82の側に折り返し、その側面89L,89Rに嵌め込まれている掛合環92を掛合部85に引っ掛ける。そして、図7(B)に示すように、掛合環92を掛合部85に引っ掛けたままロックレバー87を継手53L,53Rの側に折り返す。これより、パイプ51とパイプロック部材54L,54Rとが接合され、車椅子5のハンドグリップ14L,14Rと自転車7のハンドル17とが連結された状態となる。
【0020】
以上説明した実施形態では、第1連結部材20および第2連結部材50を用いることにより、車椅子5と前輪を外した自転車7とを各々に加工を施すことなく一体化することができる。そして、車椅子5と自転車7を一体化した状態において、介助者が自転車7のサドルに跨ってペダルを漕ぐことにより、自転車7と車椅子5を前進させることができる。また、介助者は、自転車7のペダルを漕いでいる間にそのハンドル17を左(右)に切ることにより、自転車7と車椅子5の前進の方向を左(右)に旋回させることもできる。
【0021】
また、第1連結部材20は、車椅子5のティッピングレバー12L,12Rと自転車7のフロントフォーク18とを分離自在に連結できるような構成を有しており、第2連結部材50は、車椅子5のハンドグリップ14L,14Rと自転車7のハンドル17とを分離自在に連結できるような構成を有している。よって、一体化した車椅子5と自転車7とを分離し、分離した自転車7のフロントフォーク18に前輪を装着することにより、自転車7をそれ単体として利用することができる。
【0022】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば、以下の通りである。
(1)上記実施形態において、第1連結部材20の台座部材21を上下2枚の板体により構成し、それら2枚の板体によりティッピングレバー12L,12Rを上下から挟み込み、ボルトbt2とナットnt2の螺合の締め付け力によって第1連結部材20をティッピングレバー12L,12Rにおける所望の位置に固定するようにしてもよい。
(2)上記実施形態では、第2連結部材50は、パイププロック部材54L,54Rと継手53L,53Rとを有し、パイプブロック部材54Lと継手53Lおよびパイプブロック部材54Rと継手53Rを各々繋げた2つの棒状部材によってハンドル17とパイプ51が連結されていた。しかし、棒状部材の数を3つ以上にし、それらの棒状部材によってハンドル17とパイプ51を連結してもよい。
(3)上記実施形態において、第1連結部材20を台座部材21と軸収容部材23により構成してもよい。この場合、軸収容部材23を台座部材21の上面中央に固定するとよい。
【符号の説明】
【0023】
1…連結装置 5…車椅子、7…自転車、12L,12R…ティッピングレバー、20…第1連結部材、21…台座部材、22…支持部材、23…軸収容部材、24,25…パイプ、26C,26L,26R,27L,27R,52L,52R,53L,53R…継手、28,29,38,39…半割状部材、50…第2連結部材、54L,54R…パイプロック部材、81…胴部、82…クランク部、83,84…枠、85…掛合部、88…ロックレバー、92…掛合環、98…ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子の左右のティッピングレバーと自転車のフロントフォークとを分離自在に連結する第1の連結部材と、
前記車椅子の左右のハンドグリップと前記自転車のハンドルとを分離自在に連結する第2の連結部材と
を有することを特徴とする車椅子と自転車の連結装置。
【請求項2】
前記第1の連結部材は、
前記左右のティッピングレバーを挿入するための2つの孔が前後方向に穿設された台座部材と、
前記台座部材の上方に固定された筒状の部材であって、当該部材と前記フロントフォークのエンドとを連結する軸部材を挿入するための孔が左右方向に穿設された軸収容部材と
を有することを特徴とする請求項1に記載の連結装置。
【請求項3】
前記第2の連結部材は、
前記左右のハンドグリップに一端と他端が各々交差接合されたパイプと、
前記パイプと前記ハンドルに一端と他端が各々交差接合された複数本の棒状の部材と
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の連結装置。
【請求項4】
前記第1の連結部材は、
前記左右のティッピングレバーを挿入するための2つの孔が前後方向に穿設された台座部材と、
前記台座部材の上方に固定された筒状の部材であって、当該部材と前記フロントフォークのエンドとを連結する軸部材を挿入するための孔が左右方向に穿設された軸収容部材と
を有し、
前記第2の連結部材は、
前記左右のハンドグリップに一端と他端が各々交差接合されたパイプと、
前記パイプと前記ハンドルに一端と他端が各々交差接合された複数本の棒状の部材と
を有することを特徴とする請求項1に記載の連結装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−16403(P2011−16403A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161246(P2009−161246)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(509191986)
【Fターム(参考)】