説明

車線認識装置及び車線認識方法

【課題】ノイズを区画線と判断する誤りを低減する技術を提供する。
【解決手段】車線認識装置は、時系列的な複数の原画像を入力する。その原画像の各々に対して、路上に描かれた区画線の候補となる候補位置が検出され、区画線候補位置履歴として蓄積される。時系列的な複数の原画像を合成することによって合成鳥瞰画像が作成される。所定の時点での合成鳥瞰画像の候補位置を中心として、区間線候補位置履歴が最も多数蓄積されている方向が、区画線が描かれている可能性が高い領域として推定される。より正確な区画線候補を狙った探索領域を設定することにより、ノイズを除外できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載向けの車線認識装置に関し、特に車両の安全性向上をするため画像認識時におけるノイズを抑制する車線認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性を向上させるために搭載されるシステムが多様化している。それに伴い、画像認識装置も車両の中に多く使われるようになってきた。しかしながら画像認識は状況(環境等)に左右され、照度が低い場合やレンズのノイズ等により十分な認識率を上げることが難しい。より安全な走行をするために性能の改善が求められている。特に車載ナビでの撮像画像認識を利用した自車走行状況判定機能の一般化に伴い、車線区画線等を対象とした画像認識精度向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、車線を認識するための技術が記載されている。本願の添付図面の図6A〜図6Cは、この文献における車線の認識方法を示す。この技術では、走行中の道路を撮影した原画像R1910に画像処理を施して鳥瞰画像R1920に変換する。この鳥瞰画像R1920の画素値を走行方向に積分することにより、図6Cに示すように車線R1930の位置にピークが得られる。このピークにより車線R1930を認識することができる。
【0004】
特許文献2には、車線を認識するための他の技術が記載されている。この文献によれば、特許文献1記載の技術には以下のような問題がある。たとえば画像入力装置に雨滴や異物が付着した場合、原画像R1910にはそのような雨滴や異物に起因する点状のノイズが発生する。これを鳥瞰画像R1920に変換すると、縦方向の白線状のノイズとなり、車線との区別が付きにくくなる。そのため誤認識が発生しやすくなる。その一方で、鳥瞰画像R1920への変換を行わず、原画像R1910の輝度プロファイルを用いて車線を検出しようとする場合、画像入力装置から遠い距離の映像が不鮮明になりやすいので、車線を正確に認識することが難しい。
【0005】
特許文献2記載の技術は、こうした問題を解決し、原画像と鳥瞰画像のそれぞれで発生しやすいノイズを抑制し、車線の認識精度を向上することを目的としている。
【0006】
図7は、特許文献2記載の車線認識装置の構成を示すブロック図である。車線認識装置R10は、制御部R100と、画像入力装置R110とから構成されている。制御部R100は、CPU、RAM、およびOSなどによって構成されるコンピュータ装置の主要部であり、区画線候補検出手段R120、合成鳥瞰画像作成手段R130、区画線候補検定手段R140、区画線位置推定手段R150、区画線位置出力手段R160という各機能を実行する。
【0007】
図8は、この技術で使用される合成鳥瞰画像を示す。以下、特許文献2の記載に基づいて合成鳥瞰画像について説明する。合成鳥瞰画像は、複数の異なる時刻において撮影された原画像を用い、それぞれの原画像の部分領域を鳥瞰画像化した部分鳥瞰画像をつなぎ合わせることにより作成される。図8に示した例では、画像入力装置110は自車の進行方向と反対向きに設置され、自車の後ろ方向を撮影している。図8(a)は時刻T−1の時点での原画像、図8(b)は時刻Tの時点での原画像である。図8(b)の下部には、時刻T−1では撮影されていず、時刻Tで初めて原画像の撮影範囲に入った部分が斜線部として示されている(これを手前領域R21という)。図8(a)および(c)中の矢印は、自車の進行方向を表す。
【0008】
図8(c)は時刻T−1の時点で、図8(a)の原画像から生成された鳥瞰画像である。図8(d)は、図8(c)の鳥瞰画像の画素を、時刻T−1から時刻Tの間に自車の移動した距離の分だけ垂直方向に移動させた画像である。図8(c)の鳥瞰画像には、図8(b)の手前領域R21に該当する部分は含まれていないので、図8(d)の画像ではその部分は空白部R22となる。
【0009】
ここで合成鳥瞰画像作成手段は、図8(b)を鳥瞰画像化して得られた画像と、図8(d)の画像とを合成することにより、図8(d)の空白部R22(図8(b)の手前領域R21に該当する部分)を埋めて、図8(e)の合成鳥瞰画像を生成する。
【0010】
図9は、図7で示した車線認識装置R10が実行する処理の概要について書き表したフローチャートである。処理を開始すると、まず画像入力装置R110により車線区画線検出の対象となる原画像が入力される(ステップR2001)。次に、区画線候補検出手段R120が車線区画線の候補を検出し(ステップR2002)、合成鳥瞰画像作成手段R130が合成鳥瞰画像を作成する(ステップR2003)。
【0011】
さらに、未検定の車線区画線候補が存在する間は以下に示すステップR2005〜2007を、未検定の車線区画線が存在しなくなるまで繰り返す(ステップR2004)。ステップR2005では、区画線候補検定手段R140が、合成鳥瞰画像内の検定対象車線区画線候補周辺の情報に基づいて、検定対象車線区画線が車線区画線として適しているか否かを検定する。
【0012】
ステップR2006において、検定に合格していれば区画線候補検定手段R140が検定対象車線区画線候補を検定合格候補に加え(ステップR2007)、不合格であればステップR2004に戻る。さらに、区画線位置推定手段R150が、検定に合格した車線区画線候補の位置を基に、現時刻における車線区画線位置を推定する(ステップR2008)。最後に、区画線位置出力手段R160がステップR2008において推定された車線区画線位置を出力する(ステップR2009)。
【0013】
図10はステップR2005における「検定」の概念図である。原画像内区画線候補位置R820は、検出した区画線候補位置から変換された、合成鳥瞰画像R810での区画線候補の位置である。原画像内区画線候補位置R820を合成鳥瞰画像の手前切片とし、角度を区画線角度範囲R830内のいずれかであるとすることにより、合成鳥瞰画像内での合成鳥瞰画像内区画線候補位置R840を表現する。
【0014】
区画線の角度は、以下のように決定される。合成鳥瞰画像内区画線候補位置R840から設定された角度で合成鳥瞰画像R810の遠方側に一定の長さの線分を引き、その線分もしくはその周辺における画素値の和を計算する。設定された角度を一定のピッチで変更することにより、各角度での画素値の和を計算する。その和が最大になる角度を、区画線の角度として決定する。
【0015】
たとえば、区画線角度範囲R830を±30度とし、1度刻みで角度を変化させる。その場合の合成鳥瞰画像内区画線候補位置R840における合成鳥瞰画像内の画素値の和をそれぞれ計算する。そして最大の画素値の和をとる角度を、区画線の角度として決定する。もしくは合成鳥瞰画像内区画線候補位置R840を中心線とした周辺、例えば左右20cmの範囲の画素値を用いても同様に、区画線の角度を決定することができる。
【0016】
合成鳥瞰画像内区画線候補位置もしくはその周辺における合成鳥瞰画像内の画素に基づいて、各区画線候補が区画線として適しているか否かを検定する。すなわち、画素値の和が予め定められた閾値以上である場合、対象各区画線候補が区画線として適しているとして検定に合格であるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−145852号公報
【特許文献2】特開2009−169510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献2に記載の技術においては、以下に説明する条件の場合に、水滴等によるノイズを車線区画線と誤認識してしまうという問題がある。
【0019】
図11の合成鳥瞰画像の例では、探索開始位置R940を中心とした跨ぎ線の延長上にノイズR920がのっている。このような場合に、ステップR2005の処理にて、原画像上での区画線候補検出結果を基に、合成鳥瞰画像上の現在時の候補線探索開始位置R940が設定される。探索開始位置R940からの垂線を中心とした左右対称な扇形領域R910が放射状に探索される。この処理においては、ノイズR920が探索領域内に含まれてしまう。
【0020】
白色特徴の多いノイズ(水滴や後続車ライトなど)が合成鳥瞰画像作成時の参照域に定常的に存在していると、そのノイズR920が放射状探索のラインR930上に乗る場合がある。区画線候補検出及び検定においては、扇形領域R910内で経路上の白色特徴が最大となるものを単純に区画線と判断する。そのため、実際の区画線よりもノイズの方が区画線らしいと判断されてしまう場合がある。
【0021】
ノイズを区画線と判断する誤りを低減する技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一側面において、車線認識装置は、車両の外部を撮影することによって生成された時系列的な複数の原画像を入力する原画像入力部と、時系列的な複数の原画像の各々に対して、路上に描かれた区画線の候補となる候補位置を検出して、区画線候補位置履歴として蓄積する区画線候補履歴蓄積部と、時系列的な複数の原画像を合成することによって合成鳥瞰画像を作成する合成鳥瞰画像作成部と、所定の時点での合成鳥瞰画像の候補位置を中心として、区間線候補位置履歴が最も多数蓄積されている方向を、区画線が描かれている可能性が高い領域として推定する推定部とを備える。
【0023】
本発明の他の側面において、車線認識方法は、車両の外部を撮影することによって生成された時系列的な複数の原画像を入力する工程と、時系列的な複数の原画像の各々に対して、路上に描かれた区画線の候補となる候補位置を検出して、区画線候補位置履歴として蓄積する工程と、時系列的な複数の原画像を合成することによって合成鳥瞰画像を作成する工程と、所定の時点での合成鳥瞰画像の候補位置を中心として、区間線候補位置履歴が最も多数蓄積されている方向を、区画線が描かれている可能性が高い領域として推定する工程とを備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ノイズを区画線と判断する誤りを低減する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における車線認識装置のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態における車線認識装置が実行する処理を示したフローチャートである。
【図3】図3は、区画線候補履歴の説明図である。
【図4】図4は、合成鳥瞰画像上の探索領域を示す。
【図5A】図5Aは、合成鳥瞰画像上の探索領域幅の説明図である。
【図5B】図5Bは、合成鳥瞰画像上の探索領域幅の説明図である。
【図6A】図6Aは、車線認識手段の一例を示す。
【図6B】図6Bは、車線認識手段の一例を示す。
【図6C】図6Cは、車線認識手段の一例を示す。
【図7】図7は、参考技術における車線認識装置のブロック図である。
【図8】図8は、合成鳥瞰画像を説明するための図である。
【図9】図9は、参考技術における車線認識装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、参考技術における合成鳥瞰画像における区画線候補の位置の計算方法を示す。
【図11】図11は、参考技術における区画線候補の誤認識を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を説明する。本実施形態における車線認識装置は、車載カメラ等から画像を取り込んで車線区画線等を認識する。車線認識装置は、画像を鳥瞰画像に変換し、車両が移動した距離に応じて鳥瞰画像の一部を切り出して合成した画像(合成鳥瞰画像)をつくる。区画線候補履歴蓄積部は、取り込んだ原画像に基づいて、現時刻の車線区画線候補の検出位置情報を区画線候補履歴として蓄積する。扇形探索領域位置調整部は、車線区画線候補位置周辺を示す扇形探索領域の中心位置を決定する。扇形探索領域幅調整部は、決定された中心位置より扇形探索領域の範囲情報を作成する。
【0027】
区画線候補履歴を用いて合成鳥瞰画像内に設定される区画線候補探索領域を調整し、より正確な区画線候補を狙った探索領域を設定することにより、ノイズを低減できる。かつ探索領域を制限することで更にノイズを低減できる。その結果、水滴等によるノイズを車線区画線と誤認識しにくくなり、安全性が向上する効果がある。
【0028】
以下、図面を参照して、より具体的に本実施形態を説明する。図1は、本発明の車線認識装置20の構成図である。車線認識装置20は、画像入力装置110と制御部200とを備える。画像入力装置110と制御部200とは、有線または無線通信によって接続される。画像入力装置110は、カメラが車両の外部を撮影することによって生成された時系列的な複数の画像(以降、原画像と称す)を入力する。入力された原画像は、車線区画線を検出する対象となる。画像入力装置110は、原画像を制御部200に出力する。
【0029】
制御部200は、区画線候補検出部120、区画線候補履歴蓄積部210、合成鳥瞰画像作成部130、扇形探索領域位置調整部220、扇形探索領域幅調整部230、区画線候補検定部140、区画線位置推定部150、及び区画線位置出力部160を備える。車種認識装置20は、演算制御装置、入出力装置、及び記憶装置を備えたコンピュータによって実現することができる。制御部200が有する各部は、記憶装置に格納されたプログラムを演算制御装置が読み出して実行することによって実現される機能ブロックである。
【0030】
区画線候補検出部120は、画像入力装置110から出力される原画像を入力する。区画線候補検出部120は、車線区画線の候補となる線の位置を検出して区画線候補履歴蓄積部210に検出情報を出力する。区画線候補履歴蓄積部210は、区画線候補検出部120から出力される車線区画線の候補となる線の位置の検出情報を入力する。区画線候補履歴蓄積部210は、現時刻の車線区画線候補の検出位置情報(以降、区画線候補検出位置情報と称す)を区画線候補履歴として蓄積する。すなわち区画線候補履歴蓄積部210は、時系列的な複数の原画像の各々に対して、路上に描かれた区画線の候補となる候補位置を検出して、区画線候補位置履歴として蓄積する。
【0031】
合成鳥瞰画像作成部130は、画像入力装置110から出力される時系列的な複数の原画像(互いに異なる時刻において撮影された原画像)を入力する。合成鳥瞰画像作成部130は、それらの原画像を合成することによって鳥瞰画像(以降、合成鳥瞰画像と称す)を生成する。合成鳥瞰画像は、車両の進行方向に沿って複数の帯状の領域からなる。合成鳥瞰画像作成部130は、時系列的な複数の原画像を複数の鳥瞰画像にそれぞれ変換する。この複数の鳥瞰画像を、合成鳥瞰画像を構成する複数の帯状の領域に時系列的に順次に嵌め込むことによって、合成鳥瞰画像が作成される。合成鳥瞰画像は、扇形探索領域位置調整部220に出力される。
【0032】
扇形探索領域位置調整部220は、以下の処理を行う。合成鳥瞰画像作成部130から出力される合成鳥瞰画像に、区画線候補履歴蓄積部210で蓄積した区画線候補履歴の分布を重ね合わせる。扇形探索領域位置調整部220は、区画線候補位置履歴が最も多数蓄積されている方向を中心として決定する。その方向を中心として所定の角度幅の領域が扇形探索領域として設定される。決定された中心位置情報は、扇形探索領域幅調整部230に出力される。
【0033】
扇形探索領域幅調整部230は、扇形探索領域の中心位置情報を軸とする扇形探索領域の範囲を決定する。具体的には、扇形探索領域幅調整部230は、扇形の周方向の区画線候補位置履歴の分散が小さいほど扇形探索領域の幅が小さくなるように調整する。
【0034】
決定された範囲情報は、区画線候補検定部140に出力される。区画線候補検定部140は、入力した範囲情報に対して、車線区画線として適しているか否かを検定する。具体的には、区画線候補検定部140は、扇形探索領域の半径方向に画素値を累積した値が周方向にピークとなる角度の線を、区画線として推定する。検定結果は、区画線位置推定部150に出力される。
【0035】
区画線位置推定部150は、検定結果に従って、車線区画線候補の位置に基づいて車線区画線の現時刻の位置を推定する。推定結果は、区画線位置出力部160に出力される。区画線位置出力部160は、推定結果に従って、現時刻の車線区画線位置をカーナビゲーション装置等の外部装置へ出力する。
【0036】
扇形探索領域位置調整部220、扇形探索領域幅調整部230、区画線候補検定部140、及び区画線位置推定部150は、区画線を推定するための推定部として機能する。推定部は、所定の時点(典型的には現時点、すなわち最新の原画像を取得し処理する時点)での合成鳥瞰画像の候補位置を中心として、区画線候補位置履歴が最も多数蓄積されている方向を、区画線が描かれている可能性が高い領域として推定する。
【0037】
図2は、本発明を車線認識装置が実行する処理を示したフローチャートである。図2を用いて図1の車線認識装置の動作を説明する。
【0038】
画像入力装置110は、車線区画線を検出する対象となる画像(以降、原画像と称す)を車体に設置されたカメラ等より入力する(ステップS2001)。原画像は、例えば車両の前方または後方の道路の路面を所定の時間間隔で撮影した画像である。
【0039】
区画線候補検出部120は、原画像を画像認識することにより、区画線らしい輝度の特徴(アスファルト上の白線の場合、通常は輝度が高い)を有する線分もしくは直線を車線区画線候補として検出する(ステップS2002)。
【0040】
区画線候補履歴蓄積部210は、現時刻における全ての車線区画線候補の位置情報を区画線候補履歴310に蓄積する(ステップS4001)。この時点で、車線区画線候補が車線の右側の区画線か左側の区画線かを区別する必要はない。
【0041】
合成鳥瞰画像作成部130は、複数の異なる時刻において撮影された原画像を基に合成された鳥瞰画像を生成する(ステップS2003)。この合成鳥瞰画像は、例えば図8を参照して説明した手段を用いて作成することができる。
【0042】
区画線候補検定部140は、区画線候補検出部120が検出した車線区画線候補について、全ての車線区画線候補に対してステップS2005の検定を実施したかどうかを判断(ステップS2004)する。未検定の車線区画線候補があれば処理はステップS4002へ進み、検定済であればステップS2008へ進む。
【0043】
扇形探索領域位置調整部220は、合成鳥瞰画像作成部130が生成した合成鳥瞰画像と、区画線候補履歴蓄積部210が蓄積した区画線候補履歴310とに基づいて、車線区画線候補位置周辺を示す扇形探索領域の中心位置420を決定する(ステップS4002)。
【0044】
扇形探索領域幅調整部230は、合成鳥瞰画像作成部130で生成された合成鳥瞰画像と、区画線候補履歴蓄積部210で蓄積された区画線候補履歴310とに基づいて、車線区画線候補位置周辺を示す扇形探索領域520の範囲を決定する(ステップS4003)。
【0045】
区画線候補検定部140は、ステップS2002で検出した車線区画線候補が区画線として適しているか否かを検定する(ステップS2005)。検定は、検定対象の画素値の和が予め定められた閾値以上である場合、対象区画線候補が区画線として適しているという基準で行われる。区画線候補検定部140は、対象区画線候補が検定に合格したか否かを判断(ステップS2006)する。合格であれば処理はステップS2007へ進む。不合格であればステップS2004へ戻って処理を繰り返す。
【0046】
区画線候補検定部140は、ステップS2005の検定に合格した車線区画線候補を検定合格候補とする(ステップS2007)。区画線位置推定部150は、区画線候補検定部140で選定された検定合格候補に基づいて左右車線区画線位置を推定する(ステップS2008)。区画線位置出力部160は、区画線候補推定部150で推定された推定区画線位置をカーナビゲーション装置等の外部装置へ出力(ステップS2009)して車線区画線認識処理を終了する。
【0047】
次に、以上の処理によってノイズを低減することができる理由を説明する。本実施形態の車線認識方法によって、図11に示したようなノイズを抑制することができる。図3、図4、図5を用いてそのメカニズムを説明する。
【0048】
図3(a)は、過去から現時刻までの原画像を示す。これらを基にした鳥瞰画像を作成する。履歴0が現時刻の鳥瞰画像であり、履歴nまでの過去の鳥瞰画像が存在する。各時刻の鳥瞰画像は、区画線候補の位置情報x(x=a、x=b・・・)を持つ。この位置情報は、例えば図6A〜図6Cを参照して説明した手段によって、各鳥瞰画像に対して計算することができる。それぞれの画像上には、区画線Lだけでなく、水滴Dも写っているものとする。
【0049】
図3(b)は、区画線候補の位置情報履歴を格納したテーブル(区画線候補履歴310)を示す。このテーブルは、履歴0〜nで示す過去から現時刻までの区画線候補の位置情報を格納する。区画線候補位置情報は、各時刻の履歴に対して複数個、生成されることが検出精度の向上のために望ましい。区画線候補履歴310には、履歴nから履歴1までの位置情報が格納されている。新たな原画像が得られる毎に、新たに現時刻を示す履歴0の位置情報が格納される。
【0050】
画像入力装置110より入力された原画像(ステップS2001)は、区画線候補検出部120で中央付近に映る実際の車線区画線を車線区画線候補として検出(ステップS2002)する。区画線候補履歴蓄積部210では履歴0(現時刻)の中央付近に検出した1本の車線区画線候補の位置情報hを、図3(b)に示す区画線候補履歴310に位置情報として格納(ステップS4001)する。
【0051】
図4は、合成鳥瞰画像作成部130が生成する合成鳥瞰画像の例を示す。合成鳥瞰画像は、過去の画像蓄積間隔(原画像を取得した時間間隔)に応じた車両走行方向の幅を有する複数の帯状の領域Sによって形成される。図11の合成鳥瞰画像に、区画線候補履歴の各時刻での位置情報(図面上の逆三角マークで示す点)が付加されている。図4では、既に履歴nから履歴1までの鳥瞰画像が合成された画像に対して、現時刻である履歴0が示す部分の鳥瞰画像が合成されている。車両が区画線を跨ぎ越して他の車線に移った場合に、図4のような合成鳥瞰画像が生成される。
【0052】
扇形探索領域位置調整部220は、現時刻の車線区画線候補位置430を起点として、候補履歴探索領域410内の区画線候補履歴310の位置情報を放射状に探索する。扇形探索領域位置調整部220は、車線区画線候補位置430を中心とする半径(半径方向に延長する線分)Rに沿って区画線候補履歴が密に分布している領域を探索する。この探索は、例えば車線区画線候補位置430を中心とする周方向に度数分布のピークを調べ、各ピークのまわりの度数や分散を計算することによって行うことができる。図4の例では、区画線候補履歴が密に分布している左上方向への直線が扇形探索領域の中心位置420として決定される(ステップS4002)。
【0053】
履歴1から履歴nまでの過去の原画像において、ノイズ440周辺の履歴分布は疎であり、正しい区画線が強調される。そのため扇形探索領域の中心位置420を適切に決定できる。さらに扇形探索領域の範囲を適切に決定できる(ステップS4003)。
【0054】
図5A、図5Bは、それぞれ図4と同一の合成鳥瞰画像である。扇形探索領域の中心位置510は図5A、図5Bともに扇形探索領域位置調整部220で決定した中心位置420と同一である。
【0055】
扇形探索領域幅調整部230は、図5Aに示す扇形探索領域位置調整部220で決定した扇形探索領域の中心位置510を規準に区画線候補履歴310の分布を判定する。この判定は、例えば中心位置510からの左右方向の区画線候補履歴の分散を計算することにより行うことができる。履歴の分布が集中している場合は、図5Bに示す扇形探索領域530のように扇形探索領域を縮小する。履歴の分布が分散している場合は扇形探索領域を拡大する。この処理により、検定対象となる扇形探索領域を実際の区画線近辺に限定することができる。
【0056】
合成鳥瞰画像内での検定対象となる車線区画線候補の位置を求める際、扇形探索領域520内の半径Rに沿った画素値の和の計算を、扇形探索領域520の周方向に走査して実行する。このような放射状の探索に基づいて、和が最大となる半径Rを検定対象として決定する。
【0057】
例えば、1度刻みで半径Rの角度を変化させる。各半径Rについて、合成鳥瞰画像内区画線候補位置(または扇形探索領域520における合成鳥瞰画像内)の画素値の和を計算する。最大の画素値の和をとる半径Rが検定対象として決定される。
【0058】
区画線候補検定部140は、図5Bの扇形探索領域530を放射状に探索する。その結果、現時刻の車線区画線候補位置550から左上方向へ伸びる実際の車線区画線上を正確に捉えることができる。この実際の車線区画線に対して、検定(ステップS2005)が行われる。
【0059】
図5Bの例では、水滴によるノイズ540は、検定を実施する時点で完全に探索領域530外に排除できている。その為、誤って水滴によるノイズを参照することはない。
【0060】
区画線位置推定部150は、検定後の正確な車線区画線候補を基に車線区画線位置推定を行う(ステップS2008)。区画線位置出力部160は、推定された車線区画線を、検知した区画線として出力(ステップS2009)する。
【0061】
区画線位置推定部150では、左右車線区画線のそれぞれについて、最も適した車線区画線候補を、前時刻位置からの近さや、検定時の評価値の大きさを用いて選択する。続けて左右車線区画線のそれぞれについて、選択した車線区画線候補の位置や、前時刻での左右車線区画線の位置等から、現時刻での左右車線区画線の位置を推定する。
【0062】
以上説明した通り、本実施形態では、区画線候補履歴を用いて合成鳥瞰画像での区画線候補探索領域を調整する。この処理により、より正確な区画線候補を狙った探索領域を設定することにより、ノイズを除外できる。また探索領域を制限することで、更にノイズを除外できる。その結果、水滴等によるノイズを車線区画線と誤認識しにくくなる効果がある。
【符号の説明】
【0063】
20 車線認識装置
110 画像入力装置
120 区画線候補検出部
130 合成鳥瞰画像作成部
140 区画線候補検定部
150 区画線位置推定部
160 区画線位置出力部
200 制御部
210 区画線候補履歴蓄積部
220 扇形探索領域位置調整部
230 扇形探索領域幅調整部
310 区画線候補履歴
410 候補履歴探索領域
420 中心位置
430 車線区画線候補位置
440 ノイズ
510 中心位置
520 扇形探索領域
530 扇形探索領域
540 ノイズ
550 車線区画線候補位置
D 水滴
L 区画線
R 半径
S 帯状の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部を撮影することによって生成された時系列的な複数の原画像を入力する原画像入力部と、
前記時系列的な複数の原画像の各々に対して、路上に描かれた区画線の候補となる候補位置を検出して、区画線候補位置履歴として蓄積する区画線候補履歴蓄積部と、
前記時系列的な複数の原画像を合成することによって合成鳥瞰画像を作成する合成鳥瞰画像作成部と、
所定の時点での前記合成鳥瞰画像の前記候補位置を中心として、前記区間線候補位置履歴が最も多数蓄積されている方向を、前記区画線が描かれている可能性が高い領域として推定する推定部
とを具備する車線認識装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車線認識装置であって、
前記推定部は、
前記区間線候補位置履歴が最も多数蓄積されている方向を中心として所定の角度幅の領域を扇形探索領域として設定する扇形探索領域位置調整部と、
前記扇形探索領域の半径方向に画素値を累計した値が周方向にピークとなる角度の線を、前記区画線として推定する区画線候補検定部とを具備する
車線認識装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車線認識装置であって、
前記推定部は更に、
前記区間線候補位置履歴の分散が小さいほど前記扇形探索領域の幅が小さくなるように調整する扇形探索領域幅調整部を具備する
車線認識装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載された車線認識装置であって、
前記合成鳥瞰画像は前記車両の進行方向に沿って複数の帯状の領域からなり、
前記合成鳥瞰画像作成部は、
前記時系列的な複数の原画像を複数の鳥瞰画像にそれぞれ変換し、前記複数の帯状の領域に対して前記複数の鳥瞰画像をそれぞれ嵌め込むことによって前記合成鳥瞰画像を作成する
車線認識装置。
【請求項5】
車両の外部を撮影することによって生成された時系列的な複数の原画像を入力する工程と、
前記時系列的な複数の原画像の各々に対して、路上に描かれた区画線の候補となる候補位置を検出して、区画線候補位置履歴として蓄積する工程と、
前記時系列的な複数の原画像を合成することによって合成鳥瞰画像を作成する工程と、
所定の時点での前記合成鳥瞰画像の前記候補位置を中心として、前記区間線候補位置履歴が最も多数蓄積されている方向を、前記区画線が描かれている可能性が高い領域として推定する工程
とを具備する車線認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−175483(P2012−175483A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36582(P2011−36582)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】