説明

車群走行制御装置

【課題】車群内の一部の車両が車群を離脱する場合にも、車群を維持することができる車群走行制御装置を提供する。
【解決手段】
車群内順序決定部106により、各車両は、車群内の自車両の順序である車群内順序を決定し、走行計画とともに、車両IDおよび車群内順序を送信機から同報送信する。追従車両は、複数の先頭車両走行計画を取得した場合、先頭車両走行計画とともに送信されてくる車両IDと車群内順序に基づいて、それら複数の先頭車両走行計画を送信した各先頭車両の車群内順序を決定し、且つ、その決定した各先頭車両の車群内順序と自車両の車群内順序とに基づいて、自車両の走行計画を決定するために用いる先頭車両走行計画を選択する(先頭車両選択部108)。これにより、自車両が追従すべき先頭車両走行計画を誤らずに用いて追従車両走行計画を決定することができるので、車群内の一部の車両が車群を離脱する場合にも車群が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車群走行制御装置に関し、特に、車群走行を円滑に分断、離脱することができる車群走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の走行計画を決定し、その決定した走行計画に基づいて車両を走行させる技術が知られている。たとえば、特許文献1に記載の走行制御計画生成システムがそれである。この特許文献1の走行制御計画生成システムでは、快適性や燃費性などの走行方針に沿う上位計画を生成し、かつ、その上位計画を達成するための下位計画として、走行軌跡を含む計画を生成している。さらに周辺車両の下位計画を取得し、その取得した周辺車両の下位計画を考慮して、自車両の下位計画を選定している。このように、走行計画を階層に分けて、かつ、周辺車両の下位計画を考慮して自車両の下位計画を選定することで、周辺環境の状況変化に柔軟に対応することを可能としている。また、この周辺環境の状況変化には、車群(隊列)の編成、車群からの離脱も含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−129804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものは、周辺車両の下位計画を考慮して自車両の下位計画を選定することで、周辺環境の状況変化に柔軟に対応するとしており、また、周辺環境の状況変化には、車群(隊列)の編成、車群からの離脱も含まれている。よって、車群の編成、車群からの離脱にも柔軟に対応できることになる。
【0005】
しかし、周辺車両の下位計画は、一般的に同報送信(ブロードキャスト送信)により送信される。そのため、車群の途中に位置している車両がそれまでの車群から離脱して、新たな先頭車両となる状況においては、車群中の他の車両は、車群の先頭の車両から先頭車両としての計画を受信できるだけでなく、離脱する車両からも先頭車両としての走行計画を受信する可能性がある。すなわち、複数の先頭車両としての走行計画を受信する可能性があり、複数の先頭車両としての走行計画を受信した場合、どちらの計画を考慮して自車両の計画を立てるかが不明となってしまう。よって、新たな先頭車両となる車両のみならず、他の車両までも車群が維持できなくなってしまう恐れがある。
【0006】
また、車群の途中の車両が信号によって停止しなければならない場合も、車群が分かれてしまうことから、車群の途中に位置している車両が離脱する場合と同様の問題が生じる。
【0007】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、車群内の一部の車両が車群を離脱する場合にも、車群を維持することができる車群走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その目的を達成するための請求項1記載の発明によれば、車群内順序決定部により、各車両は、車群内の自車両の順序である車群内順序を決定し、走行計画送信処理部の処理により、走行計画とともに、車両IDおよび車群内順序を送信機から同報送信する。自車両状態が追従車両である場合には、先頭車両から送信された先頭車両走行計画に基づいて追従車両走行計画を決定するが、複数の先頭車両走行計画を取得した場合、その先頭車両走行計画とともに送信されてくる車両IDと車群内順序に基づいて、それら複数の先頭車両走行計画を送信した各先頭車両の車群内順序を決定し、且つ、その決定した各先頭車両の車群内順序と自車両の車群内順序とに基づいて、自車両の走行計画を決定するために用いる先頭車両走行計画を選択する。よって、自車両が追従すべき先頭車両の先頭車両走行計画を誤らずに用いて追従車両走行計画を決定することができるので、車群内の一部の車両が車群を離脱する場合にも車群が維持される。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、それまでとは異なる車両の先頭車両走行計画を用いて追従車両走行計画を決定したことに基づいて、車群が分断されたと判断する車群分断判断部を備えており、その車群分断判断部が、車群が分断されたと判断した場合、分断前の各車両の車群内順序に基づいて、分断後の車群内順序を決定するから、分断後の車群内順序を迅速に決定することができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、最後尾車両が変更になる毎に車群形成台数を増加させることにより車群形成台数を逐次更新する。また、自車両状態判断部が最後尾車両であると判断した場合、他車両から送信された車群形成台数に基づいて自車両の車群内順序を決定する。このようにして車群内順序を決定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車群走行制御装置100を含む車載車群走行制御システム10の概略構成を示すブロック図である。
【図2】車群走行制御装置100の制御機能を示すブロック図である。
【図3】自車両状態判断部104の処理を説明する図である。
【図4】先頭車両選択部108の処理を示すフローチャートである。
【図5】先頭車両選択部108の処理を示すフローチャートである。
【図6】自車両走行計画選択/修正部110において先頭車両走行計画を修正して最終自車両走行計画を決定する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態で用いる「車群」とは、複数の車両が互いに情報通信を行って一つの群を形成した状態を指し、「車群走行」とは、いわゆる「隊列走行」であって、車群を形成する各車両が類似の挙動を示すようにまとまった状態で走行することを示す。図1は、この実施形態の車群走行制御装置100を含む車載車群走行制御システム10の概略構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、車載車群走行制御システム10は、車群走行制御装置100の他に、自律センサ20、無線機30、挙動情報センサ40、加減速部50を備えている。
【0014】
自律センサ20は、本システム10を搭載している車両(以下、自車両ということもある)の前後の他車両の存在およびその他車両との間の距離を検出するセンサであり、前方用センサと後方用センサとを含んでいる。本実施形態では、前方用センサとして、前方ミリ波センサ21および前方カメラ23を備え、後方用センサとして、後方ミリ波22、後方カメラ24を備えている。このように、本実施形態では、前方用および後方用としてそれぞれ2種類のセンサを備えているが、1種類のみでもよく、また、レーザセンサ等、ミリ波、カメラ以外のものを備えてもよい。
【0015】
無線機30は、特許請求の範囲の送信機および受信機として機能するものであり、車車間通信機としての機能と路車間通信機としての機能の2つの機能を備えている。車車間通信機としては、DSRC(Dedicated ShortRange Communication、狭域通信とも呼ばれる)により、他車両との間で情報の送受信が可能であり、また、通信領域内のすべての車両に同じ情報を送信する同報通信と、相手を特定して送信する個別通信とが可能となっている。路車間通信機としては、ビーコン等の路上に設置された路側機との間で情報の送受信を行う。この無線機30は、上記車車間通信機および路車間通信機としての機能により、他車両情報(他車両から送信される走行計画など)や、インフラ情報を受信する。なお、車車間通信機と路車間通信機とを別々に設けてもよい。
【0016】
挙動情報センサ40は、自車両の加減速に関する情報(たとえば、加速度、速度、加加速度など)の決定に必要な物理量を検出するセンサである。この挙動情報センサ40としては、たとえば、加速度センサ、車速センサなどを用いる。
【0017】
加減速部50は、自車両を加減速させる部分であり、駆動部として、エンジン51、モータ52を備え、制動部としてブレーキ53を備えている。なお、駆動部51として、エンジン51、モータ52のいずれか一方のみを備えていてもよい。また、モータ52は制動部としても機能してもよい。
【0018】
車群走行制御装置100は、CPU、ROM、RAM等(何れも図示せず)を備えたコンピュータであり、CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、無線機30、加減速部50を制御し、これらを制御することで車群走行制御を行う。この車群走行制御は走行計画を決定し、決定した走行計画に基づいて走行制御を行うものである。詳しくは後述するが、走行計画は、自律センサ20、無線機30、挙動情報センサ40から得られる情報や、ナビゲーション装置から供給される情報(予定走行経路の情報)などから決定する。また、決定した走行計画は無線機30から送信する。走行制御は、加減速部50を構成するエンジン51等から実際の状態を逐次取得するとともに、挙動情報センサ40からの検出値を逐次取得し、挙動情報センサ40からの検出値が走行計画に基づいて定まる車両挙動となるように、エンジン51等の実際の状態を制御する。
【0019】
図2は、車群走行制御装置100の制御機能を示すブロック図である。図2に示すように、車群走行制御装置100は、自車両走行計画立案部102、自車両状態判断部104、車群内順序決定部106、先頭車両選択部108、自車両走行計画選択/修正部110、送信処理部112を備えている。
【0020】
自車両走行計画立案部102は、自車両の今後の走行計画である自車両走行計画を立案する。この自車両走行計画は、車群走行制御装置100に供給される種々の情報に基づいて立案する。たとえば、自律センサ20から供給される前後の車両との間の車間距離情報、ナビ情報に含まれる予定走行経路情報、路車間通信や車車間通信によって得られる他車両の走行計画情報や挙動情報、自車両の挙動情報のうち一つまたは複数の情報を用いて自車両の走行計画を立案する。なお、車群を形成して走行している場合には、上記種々の情報に基づいて、前後の車間距離が予め設定された距離を維持するように自車両走行計画を立案する。
【0021】
自車両状態判断部104は、自車両が先頭車両であるか、車群走行中の追従車両であるか、車群走行中の最後尾車両であるか、車群を形成していない車両(サービスアウト車両という)であるかを判断する。この自車両状態判断部104の処理を図3を用いて説明する。
【0022】
図3には、先頭車両、追従車両、最後尾車両、サービスアウトの4つの自車両状態を意味するブロックが示されている。また、これら各ブロックには、各状態を示す符号も示してある。また、A〜Gは各状態間の遷移する条件である。
【0023】
まず、条件Fについて説明する。条件Fは、車群走行しないという条件である。車群走行するか否かはドライバの意思に基づいて決定し、このドライバの意思は、たとえば、車群走行制御実行・停止を指示する所定のスイッチを設け、そのスイッチが操作されたか否かに基づいて判断する。この条件Fが成立した場合には、サービスアウトの状態となる。
【0024】
サービスアウトの状態において条件Gが成立すると、自車両状態が先頭車両となったと判断する。条件Gは、車群走行してもよい(或いは車群走行を開始する)というドライバの意思が確認できたという条件である。この条件が成立したか否かも、前述の車群走行制御実行・停止を指示する所定のスイッチの操作に基づいて判断する。
【0025】
自車両状態が先頭車両である場合に条件Aが成立すると、自車両状態が追従車両になったと判断する。(なお、本実施形態においては、自車両状態として最後尾車両を設けているので、本実施形態における追従車両は最後尾車両以外の追従車両を意味する。)条件Aは、車群走行中であって自車両状態が先頭車両でない、という条件である。車群走行中かどうかの判断は、たとえば、自車両走行計画を先頭車両走行計画に基づいて立案しているか否かにより判断する。この判断は、より具体的には、自車両走行計画立案部102から供給される自車両走行計画と、先頭車両(あるいは単に他車両)の走行計画とを比較することで行う。
【0026】
自車両状態が追従車両である場合に条件Bが成立すると、自車両状態が最後尾車両になったと判断する。条件Bは、車群走行中であって自車両状態が最後尾であるという条件である。車群走行中か否かの判断は条件Aと同様にして行う。最後尾かどうかの判断は、自律センサ20からの情報を用いて行い、自車両の後方の所定距離以内に、自車両の走行に追従して走行する車両が存在するか否かにより行う。また、単に、自車両の後方の所定距離以内に車両が存在するか否かにより最後尾かどうかを判断してもよい。
【0027】
一方、自車両状態が追従車両である場合に条件Dが成立すると、自車両状態が先頭車両になったと判断する。条件Dは、車群走行中であって自車両状態が先頭車両であるという条件である。車群走行中か否かは、周辺の車両から送信される走行計画と、自車両の走行計画とを比較して、周辺の車両が自車両の走行計画に基づいて作成されているか否かを判断することにより行う。先頭車両であるか否かは、自律センサ20からの情報を用いて行い、自車両の前方の所定距離以内に、自車両の走行計画に類似の走行計画で走行している車両が存在するか否かにより判断する。また、単に、自車両の前方の所定距離以内に車両が存在するか否かにより先頭車両かどうかを判断してもよい。
【0028】
また、自車両状態が最後尾車両である場合に条件Cが成立すると、自車両状態が追従車両となったと判断する。条件Cは、車群走行中であって、自車両状態が最後尾車両でなく、また、先頭車両でもないという条件である。条件Cにおける車群走行中であるか否か、および、最後尾車両でない、先頭車両でないという判断は、条件B、Dと同じようにして判断する。
【0029】
また、自車両状態が最後尾車両である場合に条件Eが成立すると、自車両状態が先頭車両となったと判断する。条件Eは、車群走行中であって、自車両状態が先頭車両であるという条件である。
【0030】
以上の条件A〜Gにより、自車両状態は常に、サービスアウト、先頭車両、追従車両、最後尾車両の4つの状態のいずれかの状態となる。自車両状態判断部104は、逐次、自車両状態がこれら4つの状態のいずれであるかを示す符号、すなわち、本実施形態では、サービスアウトは「0」、先頭車両は「1」、追従車両は「2」、最後尾車両は「3」を、自車両走行計画選択/修正部110、送信処理部112に出力する。
【0031】
図2に戻り、車群内順序決定部106は、自車両の車群走行中の順序である車群内順序を決定する。たとえば、車群を形成している各車両は、自車両の位置を逐次同報送信するようにしておく。そして、車群内順序決定部106は、車群を形成している各車両の位置を逐次受信して、その受信した各車両の位置に基づいて各車両の前後関係を決定することで、自車両の車群中順序を決定する。
【0032】
また、自車両状態判断部104においては、前述のように、先頭車両、追従車両、最後尾車両の判断ができる。これを利用して、車群内の各車両の順序を決定してもよい。詳しくは、最初の車群形成時は、追従車両のない先頭車両に、一台の車両が追従する状態である。この追従した車両は、最後尾車両となり、また、車群形成台数を2台と決定することもできる。次に、この2台の車群に、後方からさらに1台の車両が追従すると、それまで最後尾であった車両は追従車両に自車両状態が遷移する。それと同時に、車群形成台数を3台と決定することができる。よって、最後尾車両は、車群中順序が3番目であると決定することができる。これら車群形成台数は、最後尾車両が、逐次、同報送信するようにしておけば、車群中のすべての車両が取得することができる。なお、1台のみが追従する場合に限らず、ある車群に別の車群が追従することも考えられるが、この場合にも、新たな車群が形成される前においては、それぞれの車群を形成する台数、および、各車両の車群内順序が分かるため、それらから、新たに形成された車群における各車両の車群内順序も決定することができる。
【0033】
また、各車両は、路上に設置された路側器(たとえばビーコン)との間で通信する。そこで、ビーコンは、各車両がビーコンを通過したことを判断し、ビーコンの通過順に各車両に対する車群内順序を決定して、その決定した車群内順序をビーコンから各車両に送信してもよい。この場合、車群内順序決定部106はビーコンからの情報に基づいて車群内順序を決定する。なお、各車両から、その車両が位置するエリア情報(交差点間を1つのエリアとする情報)を送信し、同一のエリアに位置する車両に限定して、ビーコンは、車群内位置を決定するようにしてもよい。
【0034】
先頭車両選択部108は、特許請求の範囲の走行計画選択部に対応するものであり、先頭車両走行計画(自車両状態が先頭車両である車両からの走行計画)を複数受信した場合に、その複数の先頭車両走行計画のうちから、自車両走行計画選択/修正部110において用いる先頭車両走行計画を選択する。
【0035】
先頭車両走行計画を複数受信する場合とは、それまで追従車両あるいは最後尾車両であった車両が新たに先頭車両として走行する場合である。たとえば、車群の2台目以降の車両が車群から離脱して車群とは別ルートを走行する場合や、信号により車群が途中で途切れてしまう場合などに、車群内の複数の車両が先頭車両走行計画を送信することがある。この先頭車両走行計画は同報通信により送信される。そのため、複数の先頭車両走行計画を受信することがある。先頭車両選択部108の処理の詳細を図4、5を用いて説明する。
【0036】
図4において、ステップS2では、先頭車両走行計画を複数受信したか否かを判断する。この判断が否定判断である場合には処理を終了する。一方、肯定判断である場合には、ステップS4に進み、先頭車両走行計画を3つ以上受信したか否かを判断する。この判断が肯定判断である場合には図5に進む。図5については後述する。
【0037】
ステップS4が否定判断である場合(すなわち先頭車両走行計画を2つ受信した場合)にはステップS6へ進む。ステップS6では、2台の先頭車両のIDと、前回(先頭車両走行計画を複数受信する直前)までの車群内順序(ここではx1、x2とする)とを取得する。これらは、後述する送信処理部112における処理により、各車両の無線機30から同報送信されて、他の車両に受信される情報である。なお、2台の先頭車両の前回までの車群内順序としては、今回取得した先頭車両のIDに対応する前回までの車群内順序を取得する。
【0038】
続くステップS8では、自車両のIDと、前回までの自車両の車群内順序(ここではaとする)とを取得する。自車両IDは、所定の記憶装置(たとえば車群走行制御装置のROM)に記憶されており、その記憶装置から読み出すことにより取得する。また、前回までの自車両の車群内順序は、車群内順序決定部106から取得する。
【0039】
続くステップS10では、ステップS6で取得した先頭車両の車群内順序x1、x2と、ステップS8で取得した自車両の車群内順序aとを比較する。そして、自車両の前方であって、自車両に近い側の先頭車両を、自車両が追従すべき先頭車両であると決定する。具体的には、aが、x1より大きくかつx2よりは小さいか否かの判断を行う。この判断が肯定判断である場合にはステップS12へ進み、自車両が追従すべき先頭車両はx1に対応する車両IDの車両であると決定する。一方、否定判断である場合にはステップS14へ進み、自車両が追従すべき先頭車両はx2に対応する車両IDの車両であると決定する。
【0040】
次に、図5を説明する。前述のように、図5は、先頭車両走行計画を3つ以上受信した場合に実行する。図5のステップS16は、図4のステップS6と同様の処理であり、先頭車両走行計画を受信した先頭車両のIDと、前回(先頭車両走行計画を複数受信する直前)までの車群内順序(ここではx1、x2、x3の3つとする)とを取得する。また、ステップS18は、図4のステップS8と同様の処理であり、自車両のIDと、前回までの自車両の車群内順序(ここではaとする)とを取得する。
【0041】
続くステップS20では、先頭車両を車群内順序の若い順に並び替える。ここでは、x1<x2<x3とする。続くステップS22では、自車両の車群内順序が、先頭車両のうち最も若い車群内順序(x1)と2番目に若い車群内順序(x2)との間か否かを判断する。この判断が肯定判断である場合には、ステップS24へ進み、自車両が追従すべき先頭車両はx1に対応する車両IDの車両であると決定する。
【0042】
一方、ステップS22が否定判断である場合にはステップS26へ進む。ステップS26では、先頭車両の2番目に若い車群内順序(x2)と3番目に若い車群内順序(x3)との間か否かを判断する。この判断が肯定判断である場合にはステップS28へ進み、自車両が追従すべき先頭車両はx2に対応する車両IDの車両であると決定する。一方、ステップS26が否定判断である場合にはステップS30へ進み、自車両が追従すべき先頭車両はx3に対応する車両IDの車両であると決定する。
【0043】
なお、図5には示していないが、ステップS22やステップS24に示す判断を、先頭車両走行計画を受信した数よりも1回少ない数だけ繰り返して実行する。これにより、自車両の前方において最も自車両に近い先頭車両を決定する。
【0044】
自車両走行計画選択/修正部110は、自車両走行計画立案部102で立案した自車両走行計画と、自車両状態判断部104で判断した自車両状態と、1つまたは複数受信した先頭車両走行計画と、先頭車両選択部108が選択した先頭車両とに基づいて、最終自車両走行計画を決定する。
【0045】
より具体的には、自車両状態が先頭車両またはサービスアウトである場合には、自車両走行計画立案部102で立案した走行計画を最終自車両走行計画とする。一方、自車両走行状態が追従車両または最後尾車両である場合には、先頭車両走行計画に基づいて自車両走行計画を決定する。ここで、先頭車両走行計画を複数受信した場合には、先頭車両選択部108で選択した先頭車両の走行計画を用いる。
【0046】
先頭車両走行計画を用いる場合、単純に、その先頭車両走行計画を自車両走行計画として選択してもよいし、また、その先頭車両走行計画を修正して最終自車両走行計画を決定してもよい。
【0047】
先頭車両走行計画を修正して最終自車両走行計画を決定する場合としては、今回から自車両走行計画を決定するために用いる先頭車両走行計画の加速度増減方向が、前回まで自車両走行計画を決定するために用いていた先頭車両走行計画のそれとは異なる場合がある。
【0048】
これを図6を用いて説明する。図6の(a)は前回までの先頭車両走行計画60を示し、図6(b)は、この前回までの先頭車両走行計画60と、今回からの先頭車両走行計画62とを示している。また、図6(a)、(b)においてt1は、最終自車両走行計画の決定に用いる先頭車両走行計画を切り替えた時点を示している。
【0049】
t1時点まで最終自車両走行計画の決定に用いている先頭車両走行計画60は、そのt1時点まで加速度は増加している。そのため、図示していないが、この時点までの最終自車両走行計画も加速度が増加する計画となっている。一方、t1時点以降において最終自車両走行計画の決定に用いる先頭車両走行計画62は、加速度が減少する計画となっている。
【0050】
この先頭車両走行計画62で走行する新たな先頭車両に追従して車群走行する場合、それまでもこの先頭車両に追従して走行していれば、最終自車両走行計画を先頭車両走行計画62と同じにすればよい。しかし、前述のように、最終自車両走行計画を決定する自車両にとっては、t1時点までは別な先頭車両に追従しており、加速度の増減傾向もt1時点までは、新たに追従する先頭車両とは異なる。よって、t1時点以降の最終自車両走行計画を単純に先頭車両走行計画62と同じにすると、車両の応答が遅れ、また、通信遅れも考えられることから、車群が形成できない可能性がある。
【0051】
そこで、このような場合には、上記遅れを考慮して、先頭車両走行計画62よりも、t1からt2時点までの加速度の傾きを大きくした最終自車両走行計画64とする。また、加速度の傾きの大きさには、制駆動源の性能も考慮する。たとえば、自車両がトラック等、制動、駆動の応答性能が低い車両である場合には、その応答性能も考慮して、傾きをさらに大きくする。t3からt4時点においても、最終自車両走行計画が先頭車両走行計画62と異なっているのはこのためである。なお、このようにして決定する最終自車両走行計画には、当然、車間距離も考慮する。
【0052】
また、この例に限らず、最終自車両走行計画の決定に用いる先頭車両走行計画を変更することが事前に分かっている場合には、先頭車両走行計画を変更する前において、先頭車両走行計画をそのまま最終自車両走行計画とせず、変更後の先頭車両走行計画に追従しやすいように、変更前の先頭車両走行計画を修正して最終自車両走行計画を決定してもよい。
【0053】
先頭車両走行計画を変更することが事前に分かっている場合とは、たとえば、車群の途中の追従車両がある地点から車群を離脱して車群とは別の経路を走行することを事前に送信しており、且つ、自車両も、その別の経路を走行する予定である場合が考えられる。より具体的な例としては、車群は交差点を直進するが、車群の途中の追従車両がその交差点を右折するため、交差点の手前のある地点から車群を離脱することを事前に送信しており、自車両もその交差点を右折する予定である場合が考えられる。
【0054】
また、他の例としては、車群が通過する途中で交差点の信号が青から赤に変わることが、路車間通信により得られる信号機情報により事前に分かっている場合が考えられる。この場合、交差点において新たに先頭車両となる車両は、交差点の手前のある地点からは、前の車両に追従せずに、先頭車両として交差点で停止するための走行計画を立案することになる。この交差点で停止するための走行計画を事前に送信するようにすれば、後続車両は、最終自車両走行計画の決定に用いる先頭車両走行計画を変更することが事前に分かることになる。そこで、先頭車両変更前から、変更後の先頭車両走行計画に追従しやすいように、変更前の先頭車両走行計画を修正する。
【0055】
これらの処理により自車両走行計画選択/修正部110が決定した最終自車両走行計画は、図2に示すように、加減速部50に出力されて、この最終自車両走行計画に基づいて加減速制御が行われる。なお、この自車両走行計画選択/修正部110と自車両走行計画立案部102により特許請求の範囲の走行計画決定部が構成される。
【0056】
送信処理部112は、特許請求の範囲の走行計画送信処理部および台数送信処理部に相当し、上記最終自車両走行計画は、車群内順序決定部106が決定した車群内順序、車群形成台数、自車両状態判断部104が判断した自車両状態、車両IDを、無線機30から、逐次、同報送信する。前述のように、このようにして送信された情報は、他の車両の無線機30によって受信されて、その車両の自車両走行計画の立案に用いられる。
【0057】
以上、説明した本実施形態によれば、自車両状態が追従車両である場合には、先頭車両から送信された先頭車両走行計画に基づいて追従車両走行計画を決定するが、複数の先頭車両走行計画を取得した場合、その先頭車両走行計画とともに送信されてくる車両IDと、その車両IDに対応する前回までの車群内順序とから、それら複数の先頭車両走行計画を送信した先頭車両の現時点での車群内順序を決定する。そして、この先頭車両の車群内順序と自車両の車群内順序とに基づいて、自車両の走行計画を決定するために用いる先頭車両走行計画を選択する。よって、自車両が追従すべき先頭車両の先頭車両走行計画を誤らずに用いて追従車両走行計画を決定することができるので、車群内の一部の車両が車群を離脱する場合にも車群が維持される。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0059】
たとえば、前述の実施形態では、前後の車間距離を、自律センサ20によって検出していたが、路車間通信による情報と、車車間通信による情報とから前後の車間距離を算出してもよい。具体的には、各車両は、路車間通信により、ビーコン下を通過したタイミングを取得するようにし、且つ、自車両は、車車間通信により、前方車両から、ビーコン下を通過した時刻、速度、加速度を取得するようにする。そして、この前方車両から取得した情報と、自車両がビーコン下を通過した時刻、自車両の速度、加速度から、前方の車間距離を算出してもよい。
【0060】
また、前述の実施形態において、それまでとは異なる車両の先頭車両走行計画を用いて追従車両走行計画を決定した場合、すなわち、先頭車両選択部108にてそれまでとは異なる先頭車両走行計画を選択した場合、車群が分断したと判断する車群分断判断部をさらに備えるようにしてもよい。そして、車群内順序決定部106は、車群分断判断部が、車群が分断したと判断した場合、分断前の各車両の車群内順序に基づいて、分断後の車群内順序を決定するようにしてもよい。たとえば、前述の実施形態において、分断前の車群内順序がx2の車両が新たに先頭車両となったことにより、分断前の車群内順序がx2よりも後ろの車両は、分断前の自車両の車群内順序から(x2−1)を引いた数を、分断後の車群内順序に決定する。なお、x2よりも前の車群は、車群形成台数をx2−1とする。
【符号の説明】
【0061】
10:車群走行制御システム、 20:自律センサ、 21:前方ミリ波、 22:後方ミリ波、 23:前方カメラ、 24:後方カメラ、 30:無線機、 40:挙動情報センサ、 50:加減速部、 51:エンジン、 52:モータ、 53:ブレーキ、 60:(前回までの)先頭車両走行計画、 62:(今回からの)先頭車両走行計画、 64:自車両走行計画、 100:車群走行制御装置、 102:自車両走行計画立案部、 104:自車両状態判断部、 106:車群内順序決定部、 108:先頭車両選択部(走行計画選択部)、 110:自車両走行計画選択/修正部、 112:送信処理部(走行計画送信処理部、台数送信処理部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行計画を同報送信することで、車群内の各車両は車群内の他車両の走行計画を取得し、自車両が車群内の追従車両である場合には先頭車両の走行計画に基づいて自車両の走行計画を決定することで、車群を維持する走行制御を行う車群走行制御装置であって、
自車両状態が、車群を形成していない車両であるか、車群の先頭車両であるか、追従車両であるかを逐次判断する自車両状態判断部と、
前記自車両状態が先頭車両である場合には、先頭車両としての走行計画である先頭車両走行計画を決定する一方、前記自車両状態が追従車両である場合には、追従車両としての走行計画である追従車両走行計画を決定する走行計画決定部と、
その決定した走行計画を、車両に搭載された送信機から同報送信する走行計画送信処理部と、
自車両の車群内の順序である車群内順序を決定する車群内順序決定部と、を備え、
前記走行計画送信処理部は、前記走行計画とともに、車両IDおよび前記車群内順序を前記送信機から同報送信し、
前記走行計画決定部は、前記自車両状態が追従車両である場合には、車両に搭載された受信機によって受信された前記先頭車両走行計画に基づいて前記追従車両走行計画を決定し、
前記先頭車両走行計画を複数受信した場合、先頭車両走行計画とともに送信されている車群内順序および車両IDに基づいて、それら複数の先頭車両走行計画を送信した各先頭車両の車群内順序を決定し、且つ、その決定した各先頭車両の車群内順序と自車両の車群内順序とに基づいて、自車両の走行計画を決定するために用いる先頭車両走行計画を選択する走行計画選択部をさらに備え、
前記走行計画決定部は、前記自車両状態が追従車両であって前記走行計画選択部が先頭車両走行計画を選択した場合、走行計画選択部が選択した先頭車両走行計画に基づいて前記追従車両走行計画を決定することを特徴とする車群走行制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記走行計画決定部において、それまでとは異なる車両の先頭車両走行計画を用いて追従車両走行計画を決定したことに基づいて、車群が分断したと判断する車群分断判断部をさらに備え、
前記車群内順序決定部は、前記車群分断判断部が、車群が分断したと判断した場合、分断前の各車両の車群内順序に基づいて、分断後の車群内順序を決定することを特徴とする車群走行制御装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記自車両状態判断部は、前記自車両状態の追従車両として、最後尾車両であるか、最後尾車両以外の追従車両であるかも判断し、
前記車群内順序決定部は、最後尾車両が変更になる毎に車群形成台数を増加させることにより車群形成台数を逐次更新し、かつ、前記自車両状態判断部が最後尾車両であると判断した場合、他車両から送信され、前記受信機によって受信された車群形成台数に基づいて自車両の車群内順序を決定するようになっており、
前記車群形成台数を前記送信機から同報送信する台数送信処理部をさらに備えることを特徴とする車群走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−227728(P2011−227728A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97214(P2010−97214)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】