説明

車載カメラシステム

【課題】車載カメラシステムにおいて、機械的な可動部を有することなく、単一のカメラで、ドライブレコーダ用と車上荒らし等抑止用との両方に用いるものとする。
【解決手段】撮像領域のうち第一の領域には車外の像(V1)が撮像され、第二の領域には車内の像(V2)が撮像されるように、車両200に取り付けられるカメラ装置10と、カメラ装置10により撮像された全体の像(V0)のうち車外の像V1と車内の像V2とを互いに独立した像として切り出すトリミング部20と、トリミング部20によって切り出された車外の像V1および車内の像V2のうち、記憶しようとするいずれか一方の像V1またはV2を、所定の条件に応じて選択する像選択部30と、像選択部30により選択された車外の像V1または車内の像V2を、記憶媒体50に記憶させる記憶部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載カメラシステムに関し、詳細には、車内と車外とを撮像するカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛行機に搭載されて、事故時の状況を後に分析・立証するのに役立てられていたフライトレコーダと同様に、車両に搭載されて事故時の映像を記録するドライブレコーダと称される技術が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このドライブレコーダは、走行時における車両状況をカメラで撮影し、その撮影された像をエンドレスで記録し、事故発生による衝突センサの作動により、エンドレスの記録を保存するものであり、車両状況を撮影するカメラの他に、運転状況を撮影する車室カメラをさらに備えた構成も提案されている。
【特許文献1】特開2000−006854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、駐車中の車上荒らしや車両盗難(以下、車上荒らし等という。)を抑止する目的で、車両にカメラを搭載することが提案されており、上述したドライブレコーダ用のカメラを、車上荒らし等の抑止にも利用することが考えられる。
【0005】
ここで、ドライブレコーダ用のカメラは車外の像を撮影対象としており、一方、車両荒らし等を抑止するカメラは車内の像を撮影対象としているため、特許文献1に開示されているように、車外撮影用のカメラと車内撮影用のカメラとをそれぞれ設けるか、1台のカメラの撮影方向を車外と車内とにそれぞれ向けることができるもの(例えば、特開2005−014686号公報等)とする必要がある。
【0006】
しかし、カメラを複数備える構成(特許文献1)は、コストの上昇を招くため好ましくなく、また、カメラの撮影方向を切り替えるものでは、機械的な可動部を有するため、切替え完了までに時間がかかり、瞬時の切替えを実現するのが困難であるとともに、機械的な構造の複雑化や動作音の発生などの問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、機械的な可動部を有することなく、単一のカメラで、ドライブレコーダ用と車上荒らし等抑止用との両方に用いることができる車載カメラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車載カメラシステムは、単一のカメラの撮像領域の一部に車外の像、他の一部の領域に車内の像がそれぞれ撮像され、車外の像と車内の像とが、それぞれトリミングされて(切り出されて)別個の独立した像とされ、これらのうち条件に応じた一方の像を記憶媒体に記憶させることで、機械的な可動部を有することなく、単一のカメラで、ドライブレコーダ用の像と車上荒らし等抑止用の像とを適切に得るものである。
【0009】
すなわち、本発明に係る車載カメラシステムは、撮像領域のうち、第一の領域には車外の像が撮像され、前記第一の領域とは異なる第二の領域には車内の像が撮像されるように、車両に取り付けられるカメラ装置と、前記カメラ装置により撮像された像のうち、前記第一の領域に撮像された車外の像と前記第二の領域に撮像された車内の像とを、互いに独立した像として切り出すトリミング手段と、前記トリミング手段によって切り出された前記車外の像および前記車内の像のうち、記憶しようとする(記憶の対象とする)いずれか一方の像を、所定の条件に応じて選択する像選択手段と、前記像選択手段により選択された前記車外の像または前記車内の像を、記憶媒体に記憶させる記憶手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、車外の像は、主として車両の走行方向に向かって前方の像を意味し、車内の像は、主として車室内の像であり、いずれの像も、車体自体の像を含むものであってもよい。
【0011】
カメラ装置は、撮像デバイスとしてのカメラ自体と、この撮像デバイスの撮像面に像を結像させる光学系とを備えた構成であり、撮像デバイスの撮像面には、車外の像と車内の像とが同時に撮像されるように、光学系として、広角のレンズ(例えば、35mmフィルム換算でf35mm以下(画角60°以上))を適用するか、または凸面鏡若しくは所定の交差角度(0°および180°を除いた角度)を有する2枚(3枚以上であってもよい)のミラーなど広画角を確保することができる光学系を適用することができる。
【0012】
トリミング手段は、カメラ装置によって撮像されたフレーム単位の各像について、各像を構成する全領域の像のうち、互いに異なる2つの部分領域(第一の領域および第二の領域)を切り出す作用を奏するものであるが、この切り出される2つの部分領域は、一部分においても領域が重複しないものである必要はなく、一部分においては重複したものであってもよいが、これら2つの部分領域の全部が重複するものであってはならない。
【0013】
所定の条件は、予め設定されたプログラムによるものであってもよいし、ユーザ(運転者等の乗員)による入力指示によるものであってもよい。ユーザによる入力指示によるものであるときは、像選択手段が、そのような指示の入力を受け付ける選択指示入力手段を備える。
【0014】
記憶媒体としては、RAM(フレームメモリ等)等の一時記憶メモリの他、SD、CF、MMC、MS等のフラッシュメモリや、ハードデスク、テープ等であってもよい。
【0015】
記憶手段による記憶媒体への記憶動作は、記憶状態の安定性が比較的高い記憶媒体へのダイレクトかつエンドレスな記憶動作だけでなく、例えば、RAM等の一時格納メモリにエンドレスで記憶(時系列的に古いものから順次上書きを繰り返すことで、エンドレスな記憶を実現する)させつつ、この一時記憶メモリに記憶されている像のうち、所定のトリガがあったときに、所定の範囲だけを、より記憶状態の安定性が比較的高い他の記憶媒体に保存し直す動作であってもよい。
【0016】
このように構成された本発明に係る車載カメラシステムによれば、単一のカメラ装置によって撮像された各撮像領域(各フレーム)内に、車外の像(第一の領域)と車内の像(第二の領域)とが同時に撮像されており、トリミング手段が、これら車外の像と車内の像とをそれぞれ互いに独立した像として切り出すことで、2つのカメラを用いることなく、しかも機械的な可動部を有することなく、車外の像と車内の像とをそれぞれ独立した像として得ることができる。
【0017】
そして、像選択手段が、所定の条件に従って車外の像を選択している期間中は、記憶手段はその選択された車外の像を記憶媒体に記憶させるため、その記憶された車外の像を後の分析に用いることで、ドライブレコーダとしての機能を発揮させることができる。
【0018】
一方、像選択手段が、所定の条件に従って車内の像を選択している期間中は、記憶手段はその選択された車内の像を記憶媒体に記憶させるため、その記憶された車内の像を後の分析に用いることで、車上荒らしの状況を特定するのに役立つとともに、車両盗難や車上荒らしを抑止することもでき、車上荒らし等抑止の機能を発揮させることができる。
【0019】
なお、記憶媒体には、車外の像または車内の像だけが記憶されるため、カメラ装置で撮像された像全体が記憶されるものに比べて、記憶媒体に記憶されるデータ量を低減することができ、記憶媒体の記憶容量を節約することができる。
【0020】
本発明に係る車載カメラシステムにおいては、前記像選択手段は、前記車両のキースイッチ(イグニッションスイッチ)のACC信号がONの期間中(キースイッチがACCポジション、ONポジション、スタートポジションのとき)は前記車外の像を選択し、前記ACC信号がOFFの期間中(キースイッチがOFFポジションおよびLOCKポジションのとき)は前記車内の像を選択すること(前記所定の条件がそのように設定されていること)が好ましい。
【0021】
車両のキースイッチのACC信号がONの期間中は、車両に乗員が乗車している状態(または乗車している確率が高い状態)であるため、車上荒らし等抑止のための車内の像の必要性は乏しい一方、ドライブレコーダとして機能する車外の像の必要性は高い。したがって、この期間中は、像選択手段が車外の像を自動的に選択することで、必要性に適応した像を自動的に記憶させることができ、利便性を高めることができる。
【0022】
これに対して、車両のキースイッチのACC信号がOFFの期間中は、車両に乗員が乗車していない状態(または乗車していない確率が高い状態)であるため、ドライブレコーダとして機能する車外の像の必要性よりも、車上荒らし等抑止のための車内の像の必要性が高い。したがって、この期間中は、像選択手段が車内の像を自動的に選択することで、必要性に適応した像を自動的に記憶させることができ、利便性を高めることができる。
【0023】
本発明に係る車載カメラシステムにおいては、前記像選択手段は、前記記憶媒体に記憶させようとする一方の像を選択する指示が入力される選択指示入力手段を有し、前記像選択手段は、前記選択指示入力手段に前記指示が入力されたときは、前記ACC信号のONまたはOFFの期間中に拘わらず、前記指示にしたがった像を選択することが好ましい。
【0024】
このように好ましい構成の車載カメラシステムによれば、像選択手段が、記憶媒体に記憶させる像の選択を、キースイッチのACC信号に応じて自動的に切り替えるものであっても、ユーザの任意の意志に基づいた選択の指示が手動で選択指示入力手段に入力されたときは、その入力された選択の指示を優先して像の選択を行うことができる。
【0025】
例えば、キースイッチがOFFポジションやLOCKポジションのとき(駐車状態)であっても、乗員が乗車している期間中のように、車上荒らし等抑止の必要性が乏しいときは、ユーザが車外の像を選択する指示を選択指示入力手段に入力することで、像選択手段は車外の像を選択するため、駐車中における他車からの不測の衝突の際の像を記憶させることができる。
【0026】
なお、選択指示入力手段に入力された選択指示に基づく優先的な像の選択は、選択指示入力手段に選択指示が入力されてからの一定の時間だけ有効に働き、その一定の時間が経過した後は、像選択手段が、ACC信号に応じた自動的な選択に自動復帰するのが、より好ましい。ユーザによる切替えの戻し操作(手動選択から自動選択に戻す操作)忘れを防止することができるからである。
【0027】
本発明に係る車載カメラシステムにおいては、前記像選択手段は、前記記憶媒体に記憶させようとする一方の像を選択する指示が入力される選択指示入力手段を有し、前記像選択手段は、前記選択指示入力手段に前記指示が入力されたときは、前記指示にしたがった像を選択することが好ましい。
【0028】
このように好ましい構成の車載カメラシステムによれば、選択指示入力手段に、ユーザの任意の意志に基づいた選択の指示が入力され、その入力された選択の指示にしたがって像の選択を行うことができるため、ユーザの意志を反映したものとすることができる。
【0029】
なお、像選択手段が、初期的に設定された自動的の選択を行うものの場合は、選択指示入力手段に入力された選択指示に基づく像の選択は、選択指示入力手段に選択指示が入力されてからの一定の時間だけ有効に働き、その一定の時間が経過した後は、像選択手段による自動的な選択に自動復帰するようにしてもよい。ユーザによる切替えの戻し操作(手動選択から自動選択に戻す操作)忘れを防止することができるからである。
【0030】
本発明に係る車載カメラシステムにおいては、前記像選択手段は、前記車両が走行している期間中は前記車外の像を選択し、前記車両が停止している期間中は前記車内の像を選択することが好ましい。
【0031】
車両が走行している期間中は、車両に乗員が乗車している状態であるため、車上荒らし等抑止のための車内の像の必要性は乏しい一方、ドライブレコーダとして機能する車外の像の必要性は高い。したがって、この期間中は、像選択手段が車外の像を自動的に選択することで、必要性に適応した像を自動的に記憶させることができ、利便性を高めることができる。
【0032】
これに対して、車両が停止している期間中は、車両に乗員が乗車していない状態(または乗車していない確率が高い状態)であるため、ドライブレコーダとして機能する車外の像の必要性よりも、車上荒らし等抑止のための車内の像の必要性が高い。したがって、この期間中は、像選択手段が車内の像を自動的に選択することで、必要性に適応した像を自動的に記憶させることができ、利便性を高めることができる。
【0033】
なお、車両が走行している期間中であるか停止している期間中であるかの判定は、車両に既存の車速センサ等の出力やGPS(全地球測位システム)による位置データの出力等を利用して行ってもよいし、カメラ装置によって撮像された第一の領域における車外の像の動きを、画像処理により略リアルタイムに分析して行うようにしてもよい。
【0034】
カメラ装置によって撮像された第一の領域における車外の像の動きに基づいて判定する場合、その車外の像の動きの分析用の画像処理部は本発明に係る車載カメラシステムが備えるものであってもよいし、車両に画像分析用の画像処理部を既に有しているものでは、その画像処理部において判定させるようにしてもよい。
【0035】
本発明に係る車載カメラシステムにおいては、前記記憶手段は、前記車外の像が選択されている期間中であって、前記車両に作用する減速の加速度(速度が低下する加速度)が所定値以上(加速度の値を大きさ(絶対値)で捉えた場合。これに対して減速の加速度を負の値と定義した場合は、「所定値以上」を「所定値以下」と読み替えるものとする。)となったときは、その後の所定時間経過後に、前記記憶媒体への記憶を停止することが好ましい。
【0036】
ここで、上記所定値は、車両の衝突の際に当該車両に作用する減速加速度に相当する値であり、この値は実験等に基づいて予め設定される。
【0037】
そして、車両に作用する減速の加速度が所定値以上となったときは、車両が衝突等の衝撃を受けたときであり、その衝撃を受けた後の所定時間経過後まで車外の像の記憶を行わせることで、ドライブレコーダとしての役割は必要十分であるため、所定時間経過後に記憶媒体への記憶を停止して記憶媒体の記憶容量を節約することができる。
【0038】
また、記憶媒体への記憶をエンドレスで繰り返し行う態様のものにおいては、所定時間経過後もエンドレスで記憶され続けると、記憶された衝突時における車外の像が上書きされて消失してしまうが、所定時間経過後に記憶媒体への記憶を停止することで、衝突時の車外の像が上書きされるのを確実に防ぐことができる。
【0039】
なお、車両に作用する減速の加速度が所定値以上か否かの判定は、車両に予め設けられた加速度センサ(Gセンサ)からの出力を利用してもよいし、そのような加速度センサと同様の出力を得ることができる検出手段を、車載カメラシステム自体が備えてもよい。
【0040】
また、所定時間経過の判定は、像選択手段がタイマを備え、このタイマによる計時結果に基づいて像選択手段が判定を行うものとすればよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る車載カメラシステムによれば、機械的な可動部を有することなく、単一のカメラで、ドライブレコーダ用と車上荒らし等抑止用との両方に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明に係る車載カメラシステムの最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0043】
図1は、本発明の実施例である車載カメラシステム100の構成を示すブロック図、図2は、図1に示した車載カメラシステム100のうちカメラ装置10の撮像領域を模式的に示す図をそれぞれ表す。
【0044】
図示の車載カメラシステム100は、図2に示すように、その撮像領域(視野角θに対応)のうち第一の領域(視野角αに対応)には車外の像V1が撮像され、第一の領域とは異なる第二の領域には車内の像V2が撮像されるように、車両200に取り付けられるカメラ装置10と、カメラ装置10により撮像された像V0(視野角θの撮像領域に撮像されたフレーム全体の像)のうち、第一の領域に撮像された車外の像V1と第二の領域に撮像された車内の像V2とを、互いに独立した像として切り出すトリミング部20(トリミング手段)と、トリミング部20によって切り出された車外の像V1および車内の像V2のうち、記憶しようとするいずれか一方の像V1またはV2を、所定の条件に応じて選択する像選択部30(像選択手段)と、像選択部30により選択された車外の像V1または車内の像V2を、記憶媒体50に記憶させる記憶部40(記憶手段)とを備え、カメラ装置10を除いた部分は、車両200の例えばダッシュボード210の背面側に隠して配設されている。
【0045】
カメラ装置10は、車室内の前方上部に設置され、画角120°程度の広角レンズ12と、この広角レンズ12の焦点面に撮像面が配置されたCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサからなる撮像デバイス11とを備えている。
【0046】
そして、視野角αの第一の領域には、車両200が通常の走行状態における走行方向前方Fの車外の像V1が撮像され、視野角βの第二の領域には、ダッシュボード、ハンドルおよび前席など車内の像V2が撮像される。
【0047】
なお、広角レンズ12に代えて、凸面鏡(特開昭60−102079号公報の図1,2に示された凸面鏡1等)や、交差角度を有する2枚(3枚以上であってもよい)のミラーなどを適用することもできる。
【0048】
トリミング部20は、カメラ装置10によって撮像されたフレーム単位の各像について、各像を構成する全領域の像V0のうち、互いに異なる2つの部分領域(第一の領域および第二の領域)を切り出す作用を奏するものであるが、この切り出される2つの部分領域は、一部分においても領域が重複しないものである必要はなく、一部分においては重複したものであってもよいが、これら2つの部分領域の全部が重複するものであってはならない。なお、本実施形態(図2参照)においては、第一の領域と第二の領域とは重複領域がない。
【0049】
また、トリミング部20は、カメラ装置10により得られた像(例えばNTSC規格に準拠したアナログ信号)をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ21と、このA/Dコンバータ21によりデジタル信号化された像V0に対して、像の視点変換等の処理(拡縮に伴う補間処理や、ノイズ除去等画質向上処理など)を施す画質生成部22と、画質生成部22により処理された後の像V0から、車外の像V1と車内の像V2とを互いに独立した像として切り出す画像切出部23とを備えている。
【0050】
なお、カメラ装置10から出力された時点で、像V0の信号がデジタル化されているものでは、A/Dコンバータ21を省略することができる。
【0051】
像選択部30は、トリミング部20によって切り出された車外の像V1および車内の像V2のうち、記憶媒体50に記憶しようとするいずれか一方の像V1またはV2を、所定の条件に応じて選択する制御を行う画像制御部32と、この画像制御部32による選択にしたがって、トリミング部20から入力された車外の像V1または車内の像V2を出力する画像出力部31と、車両の乗員であるユーザによるマニュアルでの像の選択指示が入力されるON/OFFスイッチ33(選択指示入力手段)と、を備えている。
【0052】
ここで、画像制御部32による所定の条件にしたがった像の選択は、車両200のキースイッチ(イグニッションスイッチ)220のACC信号がONの期間中(キースイッチ220がACCポジション、ONポジション、スタートポジションのとき)は車外の像V1を、ACC信号がOFFの期間中(キースイッチ220がOFFポジションおよびLOCKポジションのとき)は車内の像V2を、それぞれ自動的に選択するものである。
【0053】
ただし、上述した所定の条件は自動的な選択を行う場合の条件であり、ON/OFFスイッチ33にユーザからのマニュアルでの選択指示が入力されたときは、ACC信号のONまたはOFFの期間中に拘わらず、ON/OFFスイッチ33に入力された指示にしたがった像を選択する。
【0054】
すなわち、ユーザの操作により、ON/OFFスイッチ33がONに切り替えられてON信号が入力されたときは、画像制御部32は、入力されているACC信号のONまたはOFFの別に拘わらず、車外の像V1を選択するように画像出力部31を制御し、一方、ON/OFFスイッチ33がOFFに切り替えられているときはON信号は出力されず、画像制御部32は、入力されているACC信号のONまたはOFFの別にしたがって、車外の像V1(ACC信号がONのとき)または車内の像V2(ACC信号がOFFのとき)を選択するように画像出力部31を制御する。
【0055】
さらに、画像制御部32には、車両に既設の加速度センサ(Gセンサ)230に作用する減速の加速度(速度が低下する加速度)が所定値以上(加速度の値を大きさ(絶対値)で捉えた場合。これに対して減速の加速度を負の値と定義した場合は、「所定値以上」を「所定値以下」と読み替えるものとする。)となったとき、このGセンサ230から出力されるGセンサ信号が入力されている。
【0056】
このGセンサ230は、例えば車両に既設のエアバッグシステムを起動させるトリガ信号となるGセンサ信号を出力するために設置されているものを、そのまま流用することができる。
【0057】
記憶部40は、画像出力部31から選択的に出力された車外の像V1または車内の像V2を、例えばJPEG形式で圧縮処理する画像圧縮部41と、画像圧縮部41で圧縮処理された後の像V1′(車外の像V1を圧縮処理したもの)またはV2′(車内の像V2を圧縮処理したもの)を、記憶媒体50に記憶させる圧縮画像記憶部42と、を備えている。
【0058】
ここで、画像圧縮部41による圧縮形式は、上述したJPEG形式に限定されるものではなく、GIF形式やPNG形式等公知の種々の形式を適用することができる。また、記憶媒体50の記憶容量に余裕がある場合には、記憶させる像V1,V2を圧縮する必要はなく、この場合、画像圧縮部41を備える必要はない。なお、像V1,V2を非圧縮で記憶媒体50に記憶させる際の像の形式も種々の形式を適用することができ、例えば非圧縮のTIFF形式やBMP形式等を適用することができる。
【0059】
圧縮画像記憶部42は、車外の像の圧縮像V1′を記憶媒体50に記憶させる場合、像選択部30の画像制御部32からの制御を受けており、Gセンサ230から出力されたGセンサ信号が画像制御部32に入力されたとき、すなわち、車両200に作用する減速の加速度が所定値以上となったとき、そのGセンサ信号の入力から所定時間経過後に、記憶媒体50への像V1′の記憶を停止するように、画像制御部32が圧縮画像記憶部42を制御している。
【0060】
ここで、Gセンサ信号が出力される減速加速度の所定値は、車両200の衝突の際に当該車両200に作用する減速加速度に相当する値であり、この値は実験等に基づいて予め設定される。
【0061】
なお、圧縮画像記憶部42は、車外の像の圧縮像V1′を記憶媒体50に記憶させる場合、ON/OFFスイッチ33がユーザによりONに切り替えられたとき、そのONに切り替えられてから所定時間経過後に、記憶媒体50への像V1′の記憶を停止するように、画像制御部32が圧縮画像記憶部42を制御してもよい。
【0062】
次に本実施形態に係る車載カメラシステム100の作用について説明する。
【0063】
まず、カメラ装置10は、視野角θに対応した全体の撮像領域に像V0を撮像し、トリミング部20に出力する。
【0064】
トリミング部20のA/Dコンバータ21に入力された像V0はデジタル信号化され、画質生成部22において画像処理を施され、画像切出部23において、この全体の像V0から車外の像V1と車内の像V2とを切り出され、これら車外の像V1および車内の像V2は画像出力部31に入力される。
【0065】
画像出力部31は、画像制御部32による制御にしたがって、車外の像V1および車内の像V2のうち一方を画像圧縮部41に出力する。
【0066】
すなわち、車両200が通常の運転状態(走行状態および信号等によって一時停止している状態)にあるとき、キースイッチ220のACC信号はON(キースイッチ220はONポジション)であるため、画像制御部32は、車外の像V1を自動的に選択し、これにより、画像出力部31は、車外の像V1を画像圧縮部41に出力する。
【0067】
画像圧縮部41は、入力された車外の像V1をJPEG形式で圧縮処理して像V1のデータサイズを小さくし、得られた圧縮像V1′を圧縮画像記憶部42に出力し、圧縮画像記憶部42は記憶媒体50に、車外の像V1の圧縮像V1′を記憶させる。
【0068】
これにより、運転中に事故等が発生した場合に、記憶媒体50に記憶された車外の像V1′を、後に記憶媒体50から読み出して、事故時の車外の像V1を分析することで、ドライブレコーダとしての機能を発揮させることができる。
【0069】
一方、車両200が駐車中のときなど、運転者(ユーザ)が車両200から離れているとき、キースイッチ220のACC信号はOFF(キースイッチ220はLOCKポジション)であるため、画像制御部32は、車内の像V2を自動的に選択し、これにより、画像出力部31は、車内の像V2を画像圧縮部41に出力する。
【0070】
画像圧縮部41は、入力された車内の像V2をJPEG形式で圧縮処理して像V2のデータサイズを小さくし、得られた圧縮像V2′を圧縮画像記憶部42に出力し、圧縮画像記憶部42は記憶媒体50に、車内の像V2の圧縮像V2′を記憶させる。
【0071】
これにより、駐車中に車上荒らし等が発生した場合に、記憶媒体50に記憶された車内の像V2′を、後に記憶媒体50から読み出して、車内の像V2を分析することで、車上荒らしの状況を特定するのに役立てることができる。また、カメラ装置10の存在により、車両盗難や車上荒らしを威嚇し、これらの犯罪行為を抑止する効果もある。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る車載カメラシステム100によれば、単一のカメラ装置10によって撮像された各撮像領域(各フレーム)内に、車外の像V1と車内の像V2とが同時に撮像されており、トリミング部20が、これら車外の像V1と車内の像V2とをそれぞれ互いに独立した像として切り出すことで、2つのカメラ装置を用いることなく、しかも機械的な可動部を有することなく、車外の像V1と車内の像V2とをそれぞれ独立した像として得ることができる。
【0073】
また、記憶媒体50には、車外の像V1または車内の像V2だけが記憶されるため、カメラ装置10で撮像された全体の像V0が記憶されるものに比べて、記憶媒体50に記憶されるデータ量を低減することができ、記憶媒体50の記憶容量を節約することができる。
【0074】
上述した実施形態の車載カメラシステム100において、ON/OFFスイッチ33にユーザからのマニュアルでの選択指示が入力されたときは、画像制御部32は、ACC信号のONまたはOFFの期間中に拘わらず、すなわち車両が運転中であるか駐車中であるかを問わず、ON/OFFスイッチ33に入力された指示にしたがった像を選択する。
【0075】
したがって、ユーザの操作により、ON/OFFスイッチ33がONに切り替えられてON信号が入力されたときは、画像制御部32は、入力されているACC信号がOFFであっても、優先的に車外の像V1を選択するように画像出力部31を制御するため、駐車中における他車からの不測の衝突の際の像(車外の像V1)を記憶させることができ、後の分析に役立てることができる。
【0076】
なお、ON/OFFスイッチ33がONに切り替えられて、マニュアルでの選択指示に基づく優先的な車外の像V1の選択は、ON/OFFスイッチ33がONに切り替えられてからの一定の時間だけ有効に働き、その一定の時間が経過した後は、ACC信号に応じた自動的な選択に自動復帰するのが好ましい。ユーザによる切替えの戻し操作(マニュアルによる選択から自動選択に戻す操作)忘れを防止することができるからである。
【0077】
また、画像制御部32は、画像出力部31からの出力対象として車外の像V1を選択している期間中に、Gセンサ230からのGセンサ信号が入力されたときは、そのGセンサ信号が入力されてから所定時間の経過後に、圧縮画像記憶部42による記憶媒体50への記憶操作を停止させるように、圧縮画像記憶部42を制御している。
【0078】
この結果、車両200に作用する減速の加速度が所定値以上となったときは、車両200が衝突等の衝撃を受けたときであり、その衝撃を受けた後の所定時間経過後まで車外の像V1の記憶を行わせることで、ドライブレコーダとしての役割は必要十分であるため、所定時間経過後に記憶媒体50への記憶を停止して記憶媒体50の記憶容量を節約することができる。
【0079】
また、記憶媒体50への記憶をエンドレスで繰り返し行わせるタイプの記憶部40の場合は、所定時間経過後もエンドレスで記憶され続けると、記憶媒体50に記憶された衝突時における車外の像V1が上書きされて消失してしまう虞があるが、所定時間経過後に記憶媒体50への記憶を停止することで、衝突時の車外の像V1が上書きされるのを確実に防ぐことができる。
【0080】
なお、所定時間経過の判定は、画像制御部32がタイマを備え、このタイマによる計時結果に基づいて画像制御部32が判定を行うものとすればよい。
【0081】
上述した実施形態において、記憶部40は、記憶媒体50に対して、車外の像V1または車内の像V2を常時記憶させていることとなるが、記憶媒体50の記憶容量を節約する観点から、常時記憶に代えて、例えば0.5秒間隔など間欠的な記憶を行わせるようにしてもよい。特に、ACC信号がOFFの場合には、車載バッテリの消費を抑制する観点からも、間欠的な記憶を行わせるのが好ましい。
【0082】
また、Gセンサ230以外にも、振動センサ(不正解錠や車両200への攻撃などを検知するセンサ)や動きセンサ(車両200に近付く不審者等を検知するセンサ)などのセンサを備えて、これらのセンサが作動して検知信号を画像制御部32に出力したときは、画像制御部32は、画像出力部31からの出力対象として車内の像V2を選択している期間中に、これらセンサの検知信号が入力されてから所定時間の経過後に、圧縮画像記憶部42による記憶媒体50への記憶操作を停止させるように、圧縮画像記憶部42を制御してもよい。
【0083】
このように制御したものでは、駐車中に振動センサや動きセンサによる検知信号が出力されたときは、車上荒らし等が発生したときであり、その検知信号の入力後の所定時間経過後まで車内の像V2の記憶を行わせれば、車上荒らし等の状況を記憶させるのに必要十分であるため、所定時間経過後に記憶媒体50への記憶を停止して記憶媒体50の記憶容量を節約することができる。
【0084】
また、記憶媒体50への記憶をエンドレスで繰り返し行わせるタイプの記憶部40の場合は、所定時間経過後もエンドレスで記憶され続けると、記憶媒体50に記憶された車上荒らし等発生時における車内の像V2が上書きされて消失してしまう虞があるが、所定時間経過後に記憶媒体50への記憶を停止することで、車上荒らし等発生時の車内の像V2が上書きされるのを確実に防ぐことができる。
【0085】
上述した実施形態の車載カメラシステム100は、ACC信号のONまたはOFFの別に応じて、画像制御部32が、画像出力部31からの出力対象の像V1またはV2を、自動的に選択する制御を前提としたものであるが、本発明に係る車載カメラシステム100は、そのような自動選択を前提とするものに限定されるものではない。
【0086】
すなわち、ON/OFFスイッチ33に、ユーザによるマニュアルの選択が入力されたか(ON信号発生)否か(ON信号発生せず)のみ応じて、画像選択部32が画像出力部31からの出力対象の像V1またはV2を選択するように制御してもよい。
【0087】
つまり、ユーザがON/OFFスイッチ33を操作してON信号を発生させたときは、画像選択部32は画像出力部31から出力される像として車外の像V1を選択するように、ユーザがON/OFFスイッチ33を操作せずにON信号を発生させないときは、画像選択部32は画像出力部31から出力される像として車内の像V2を選択するように、画像出力部31を制御すればよい。
【0088】
また、上述した実施形態の車載カメラシステム100は、ACC信号がONのとき、車両200が運転状態にあるとみなし、ACC信号がOFFのとき、車両200が駐車状態にあるとみなしたものであるが、ACC信号がONであっても、エンジンを掛けたまま駐車している場合もあり、この場合には、車上荒らしを警戒するのが適切である。
【0089】
したがって、画像制御部32は、車両200が実際に走行している期間中は車外の像V1を選択し、車両200が停止している期間中は車内の像V2を選択するものとすればよい。
【0090】
なお、車両200が実際に走行している期間中であるか停止している期間中であるかの判定は、車両200に既存の車速センサ等の出力やGPS(全地球測位システム)による位置データの出力等を利用して行ってもよいし、カメラ装置10によって撮像された第一の領域における車外の像V1の動きを、画像処理により略リアルタイムに分析して行うようにしてもよい。
【0091】
カメラ装置10によって撮像された第一の領域における車外の像V1の動きに基づいて判定する場合、その車外の像V1の動きの分析用の画像処理部は、本実施形態に係る車載カメラシステム100における像選択部30などが備えるものであってもよいし、車両200に画像分析用の画像処理部を既に有しているものでは、その画像処理部において判定させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施例である車載カメラシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した車載カメラシステムの車載例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0093】
10 カメラ装置
20 トリミング部(トリミング手段)
30 像選択部(像選択手段)
40 記憶部(記憶手段)
50 記憶媒体
100 車載カメラシステム
200 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像領域のうち、第一の領域には車外の像が撮像され、前記第一の領域とは異なる第二の領域には車内の像が撮像されるように、車両に取り付けられるカメラ装置と、
前記カメラ装置により撮像された像のうち、前記第一の領域に撮像された車外の像と前記第二の領域に撮像された車内の像とを、互いに独立した像として切り出すトリミング手段と、
前記トリミング手段によって切り出された前記車外の像および前記車内の像のうち、記憶しようとするいずれか一方の像を、所定の条件に応じて選択する像選択手段と、
前記像選択手段により選択された前記車外の像または前記車内の像を、記憶媒体に記憶させる記憶手段と、を備えたことを特徴とする車載カメラシステム。
【請求項2】
前記像選択手段は、前記車両のキースイッチのACC信号がONの期間中は前記車外の像を選択し、前記ACC信号がOFFの期間中は前記車内の像を選択することを特徴とする請求項1に記載の車載カメラシステム。
【請求項3】
前記像選択手段は、前記記憶媒体に記憶させようとする一方の像を選択する指示が入力される選択指示入力手段を有し、
前記像選択手段は、前記選択指示入力手段に前記指示が入力されたときは、前記ACC信号のONまたはOFFの期間中に拘わらず、前記指示にしたがった像を選択することを特徴とする請求項2に記載の車載カメラシステム。
【請求項4】
前記像選択手段は、前記記憶媒体に記憶させようとする一方の像を選択する指示が入力される選択指示入力手段を有し、
前記像選択手段は、前記選択指示入力手段に前記指示が入力されたときは、前記指示にしたがった像を選択することを特徴とする請求項1に記載の車載カメラシステム。
【請求項5】
前記像選択手段は、前記車両が走行している期間中は前記車外の像を選択し、前記車両が停止している期間中は前記車内の像を選択することを特徴とする請求項1に記載の車載カメラシステム。
【請求項6】
前記記憶手段は、前記車外の像が選択されている期間中であって、前記車両に作用する減速の加速度が所定値以上となったときは、その後の所定時間経過後に、前記記憶媒体への記憶を停止することを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載の車載カメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−305189(P2008−305189A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151950(P2007−151950)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】