説明

車載器、路側装置、制御方法及びプログラム

【課題】ITS車載器17は、DSRCのデータ送受に対応しており、路側機11の通信エリア内への進入に伴い、路側機11から有益な広告情報の配信を受けることができるようになっている。ITS車載器17が路側機11から受信する広告情報が、ITS車載器17の各ユーザに一層、適合したものとなるように、する。
【解決手段】ITS車載器17は、路側機11の通信エリア内への進入に伴い、路側機11からの広告情報の配信に先立ち、ITS車載器17のユーザの嗜好情報及び/又は過去立寄り地情報を路側機11へ送信する。路側機11は、ユーザ嗜好情報に過去立寄り地情報を加味して選択した広告情報を選別して、ITS車載器17へ配信する結果、広告情報に関するユーザの満足度が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)等の無線通信を利用して路車間通信を行う車載器、路側装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はDSRCを利用する路車間通信システムを開示する(特許文献1の図1)。該路車間通信システムでは、路側機の通信エリア内に進入した自動車の車載器は、路側機から広告情報を電波で受信して、ナビ部のディスプレイに表示するようにしている(特許文献1の段落0024)。また、車載器では、広告情報に含まれる位置情報、URL及び電話番号に基づき自動的に目的地設定、HP接続及びダイヤルが実施されるようになっている(特許文献1の図4のS12,S14,S16)。
【0003】
特許文献2は、車載情報端末装置が情報センタから広告情報と共に、該広告情報に対応付けられた地域情報及び時間帯情報を電波で受信し(特許文献2の図1)、該広告情報(特許文献2の図4)を該地域情報に係る地域及び該時間帯情報に係る時間帯に表示することを開示する(特許文献2の図5のS14〜S16)。
【0004】
特許文献3はDSRCを利用した広告配信システムを開示する(特許文献3の図1)。該広告配信システムでは、嗜好情報が車載器から路側装置へ通知され(特許文献3の段落0017)、路側装置は該嗜好情報に基づき選別した広告情報を車載器へ送信し、車載器がこれを再生するようになっている(特許文献3の段落0028,0029)。
【0005】
路車間のデータ伝送形式は、基本的には5.8GHz帯DSRC通信における個別通信によるプッシュ型情報配信方式で配信され、ダウンリンク情報には広告情報が含められているとともに、アップリンク情報には車載器搭載自動車の過去立寄り地情報が含められている。路側装置は、過去立寄り地情報に基づきユーザごとに適切な広告情報を選別し、これを車載器へ送信する。
【0006】
従来の過去立寄り地情報では、エンジンスイッチが切になった時、すなわち車載器の電源が切られた時に、その時の現在地が立寄り地として登録されるようになっている。電源が切られた時に、立ち寄り地が登録できない場合、次に電源を投入されたときに登録しても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−101578号公報
【特許文献2】特開2004−279509号公報
【特許文献3】特開2005−134707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
環境問題への関心の高まりに伴い、信号待ちや一時停車時にエンジンを切るアイドリングストップが増えている。従来の車載器では、このようなアイドリングストップが行われた地点も、車載器の電源が切られる結果として過去立寄り地として過去立寄り地情報に登録されてしまう。アイドリングストップの地点はユーザが自動車から降りて買物等を行う実質的な駐車ではないので、アイドリングストップの地点が含まれた過去立寄り地情報は、ユーザごとに有益な広告情報を選別する場合の基にすることの弊害となってしまう。また、ユーザは自動車を自宅、知人宅、勤務場所等で駐車するが、このような自宅等は、すでに会員情報として知得済みとなっていたり、配信コンテンツの選別の参考情報として役立たなかったりする。また、過去立寄り地情報の登録数制限のために大事な駐車地点の情報が不要な駐車地点の情報により上書きされてしまい、大事な過去立寄り地の情報が減ってしまう問題がある。
【0009】
特許文献1〜3は、広告情報の配信について言及するものの、過去立寄り地情報についてなんらの示唆も行っていない。
【0010】
本発明の目的は、アイドリングストップ等に対処して価値の高い過去立寄り地情報を生成することができる車載器、路側装置、制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、車載器の電源が切られた地点について、それが広告情報の選別等の基にする立寄り地として適正であるか否かを判定する。そして、適正でないものについては、アップリンク情報に含めないようにしたり、路側装置において過去立寄り地情報から除外されるようにする。適正か否かは、具体的には、(a)車載器の電源が切られた地点における駐車時間が所定時間以内であるか否か、(b)該地点を地図データと照合して交差点手前の道路等、駐車地点として常識上、あり得ない地点であるか、又は(c)ユーザが予め立寄り地として除外する設定の地点、地域範囲若しくは時間帯に含まれている駐車地点であるか否かに基づき判定される。
【0012】
本発明の車載器は、路側無線装置の通信エリアへの進入に伴い、過去の立寄り地を含むアップリンク情報を前記路側装置へ無線で送信するものであって、次のものを備える。
前記車載器の電源が切られた地点を駐車地点として検出する駐車地点検出手段、
検出した駐車地点がアップリンク情報の過去の立寄り地として適正なものであるか否かを判定する判定手段、及び
検出した駐車地点がアップリンク情報の過去の立寄り地として適正なものであれば該駐車地点を前記アップリンク情報の過去の立寄り地として登録する過去立寄り地登録手段。
【0013】
本発明の路側装置は、路側装置の通信エリアへ進入して来た車載器から、過去立寄り地を含むアップリンク情報を無線で受信するものであって、次のものを備えている。
アップリンク情報の過去の立寄り地が、前記車載器のユーザへのコンテンツ配信の基にするユーザ情報として適正なものであるか否かを判定する判定手段、及び
アップリンク情報の過去の立寄り地が立寄り地として不適正なものであれば該過去立寄り地を前記ユーザ情報から除外する除外手段。
【0014】
本発明の制御方法は、路側機の通信エリアへの進入に伴い、過去立寄り地を含むアップリンク情報を前記路側機へ無線で送信する車載器の制御方法であって、次のステップを備えている。
前記車載器の電源が切られた地点を駐車地点として検出する駐車地点検出ステップ、
検出した駐車地点がアップリンク情報の過去立寄り地として適正なものであるか否かを判定する判定ステップ、及び
検出した駐車地点がアップリンク情報の過去立寄り地として適正なものであれば該駐車地点を前記アップリンク情報の過去立寄り地として登録する過去立寄り地登録ステップ。
【0015】
本発明の制御方法は、路側無線装置の通信エリアへの進入に伴い、過去の立寄り地を含むアップリンク情報を前記路側装置へ無線で送信する車載器の制御方法であって、次のステップを備えている。
前記車載器の電源が切られた地点を駐車地点として検出する駐車地点検出ステップ、
検出した駐車地点がアップリンク情報の過去の立寄り地として適正なものであるか否かを判定する判定ステップ、及び
検出した駐車地点がアップリンク情報の過去の立寄り地として適正なものであれば該駐車地点を前記アップリンク情報の過去の立寄り地として登録する過去立寄り地登録ステップ。
【0016】
本発明のプログラムは前述の本発明の車載器の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車載器がアップリンク情報に含める過去立寄り地や路側装置が受信したアップリンク情報に含まれる過去立寄り地を選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】路車間DSRCシステムの概略図である。
【図2】データ伝送態様の説明図である。
【図3】ダウンリンクで使用する各IDに割り当てる分類表である。
【図4】路側装置−ITS車載器間のトランザクションで実施される各機器間の通信及び処理を示す図である。
【図5】ITS車載器から路側装置へ送られるアップリンク情報のデータ概略説明図である。
【図6】車載器のブロック図である。
【図7】路側装置のブロック図である。
【図8】車載器制御方法のフローチャートである。
【図9】路側装置制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1はタウンカーライフナビマルチコンテンツ形式のデータに基づく路車間DSRCシステム10の概略図である。路側機11は、サーバ12と共に路側装置15を構成し、有線又は無線でサーバ12へ接続されている。サーバ12は、さらに、インタネット等のネットワークを介して別のサーバとデータを送受自在になっている。路側機11は、長さが数m〜30mのエリアに存在する自動車13に搭載されているITS車載器17とは5.8GHz帯の電波を使ってデータを送受する。ITS車載器17はDSRC部18及びナビ部19を有している。
【0020】
図2はデータ伝送態様の説明図である。ダウンリンクでは、データをその種類に応じて分類し、分類ごとにIDコード"00","01","02",〜を割り振っている。マルチコンテンツ形式のデータ伝送では、データが情報グループを単位に括られ、各情報グループは先頭にID="00"の分類データをもつ。ID="00"の分類データは、その情報グループに含まれているIDにはどのようなものがあるかの構成情報となっている。
【0021】
図3はダウンリンクで使用する各IDに割り当てる分類表である。ID=00は構成ID情報(データを構成するIDを記述する領域)の分類となっている。ID=01は事業者の分類となっており、サービス事業者コード(サービス事業者を特定できる事業者コード)、サービス事業者表示テキスト(ナビ表示用サービス事業社名(サービス名)テキスト情報)、及びサービス事業者表音文字列(ナビ発話用サービス事業社名(サービス名)表音文字列情報)が含まれる。
【0022】
ID=02はコンテンツの分類となっており、企業コード(コンテンツの情報提供元を特定できるコード)、企業表示テキスト(ナビ表示用情報提供企業名テキスト情報)、企業表音文字列(ナビ発話用情報提供企業名表音文字列情報)、情報コード(コンテンツを特定できる情報コード)、情報表示テキスト(ナビ表示用コンテンツ内容テキスト情報)、情報表音文字列(ナビ発話用コンテンツ内容表音文字列情報)、及び嗜好データカテゴリー(情報が該当する情報カテゴリーを示すカテゴリーコード)が含まれる。
【0023】
ID=03は、ID=02と同様に、コンテンツの分類となっており、即時再生/蓄積コード(受信後のコンテンツ再生動作を表すコード)、及び再生条件コード(情報提供エリアでのコンテンツ再生条件を示すコード)が含まれる。
【0024】
ID=04は、有効期限の分類となっており、開始年月日時分秒(コンテンツの有効期限)、及び終了年月日時分秒(コンテンツの有効期限)が含まれる。ID=05は、提供時間の分類となっており、営業時間(コンテンツ提供元の営業時間)、及び情報提供時間(コンテンツ提供時間)が含まれる。
【0025】
ID=10は、対象地点の分類となっており、対象地点座標(サービス提供可能な地点の緯度経度情報)、対象地点表示用テキスト(サービス名称(店舗名称等))、提携駐車場情報(対象地点以外の提携駐車場情報)、アイコン表示画像データ(サービス提供可能な場所を表すアイコンのデータ)、表示用文字データ(サービスの説明用テキスト情報)、表示画像データ(サービスを表す静止画情報)、表音文字列データ(サービスを表す表音文字列情報)、圧縮音声データ(圧縮音声データ情報)、音声再生順(表音文字列と圧縮音声の再生順序を表す)、ビデオデータ(ビデオデータ情報)、及びURL(サービスを表すURL情報)が含まれる。
【0026】
ID=20は、情報提供地点の分類となっており、計5個の情報提供地点について、情報提供中心座標(ポップアップ情報を再生する緯度経度情報)、情報提供エリア(ポップアップ情報を再生するエリアを定義する中心座標からの半径情報)、情報提供方向コード(ポップアップ情報を再生する情報提供方向情報)、情報提供道路種別(ポップアップ情報を再生する道路種別情報)、表示画像データ(ポップアップ再生する静止画のデータ)、表音文字列データ(ポップアップ再生する表音文字列情報)、圧縮音声データポップアップ再生する圧縮音声のデータ)、及び音声再生順(ポップアップ再生する音声データの再生順番を表すコード)が含まれる。
【0027】
ID=30は、遷移情報の分類となっており、計8個の次再生情報コード( 画面遷移情報)が含まれる。ID=40は、詳細情報の分類となっており、計8個の各詳細情報について、表示用文字データ(ナビ表示用詳細情報テキスト情報)、及び発話用表音文字列(ナビ発話用詳細情報表音文字列情報)が含まれる。
【0028】
ID=50は、駐車場情報の分類となっており、計127個の駐車情報について、駐車場ID(駐車場を特定できるID)、詳細情報(駐車場の動的詳細情報)、特記事項(駐車場の特記事項)、及び特記事項表音文字列(ナビ発話用特記事項表音文字列)が含まれる。ID=60は、運転支援の分類であり、運転支援画像データ(運転支援画像情報)、運転支援表音文字列(データ運転支援表音文字列情報)、運転支援圧縮音声(データ運転支援圧縮音声情報)、及び音声再生順(表音文字列と圧縮音声の再生順序を表す)が含まれる。
【0029】
ID=80は、嗜好データの分類であり、計127個の各嗜好データのテーブルについて、嗜好データバージョン(嗜好データのテーブルのバージョン情報)、嗜好データテーブル( 嗜好データのテーブルの表示用テキスト情報)、表音文字列(嗜好データのテーブルの発話用表音文字列情報)、及び詳細情報(嗜好データのテーブルの詳細情報)が含まれる。
【0030】
図4は路側装置15−ITS車載器17間のトランザクションで実施される各機器間の通信及び処理を示している。路側機11及びサーバ12は路側装置15を構成する。ITS車載器17はDSRC部18及びナビ部19を有している。時間順に説明する。なお、路側機11−DSRC部18間の通信はDSRCの電波で行われ、路側機11−サーバ12間及びDSRC部18−ナビ部19間の通信は通常、ケーブルで行われる。
【0031】
ITS車載器17において電源が投入されるのに伴い、S10では、ナビ部19からDSRC部18へクライアントインフォメーションデータが書き込まれる。ITS車載器17を搭載する自動車13が路側機11との通信可能な距離(例:約30m)の電波到達エリアに進入するのに伴い、S11では、路側機11−DSRC部18間でDSRC接続処理が実施される。
【0032】
S11のDSRC接続処理が終了すると、S12,S13でDSRC接続通知が行われる。S12の接続通知は路側機11からサーバ12へのものであり、S13の接続通知はDSRC部18からナビ部19へのものである。S14では、クライアントインフォメーションがDSRC部18から路側機11を経てサーバ12へ通知される。
【0033】
サーバ12は、DSRC部18の一意に付番された車載器IDを読み取りITS車載器17のユーザが会員か非会員かを判別したり、通信確立後にDSRC部18から通知されるクライアントインフォメーションに基づき、ITS車載器17でコンテンツを適正に再生するためのITS車載器17のハードウェア情報を知得する。S18では、サーバ12から路側機11及びDSRC部18を経てナビ部19へWelcome画面等のコンテンツを送信する。該コンテンツはマルチコンテンツフォーマットで編成されている。ナビ部19は、マルチコンテンツフォーマットからサービス事業者を判断する。
【0034】
サーバ12は、S18後、ナビ部19がアップリンク情報をDSRC部18に書き込むまで、S19でDSRC部18に対して定期的にポーリングを行う。S20では、ナビ部19は、ITS車載器17のユーザが該サービス事業者の会員と判断すると、アップリンク情報をDSRC部18に書き込むのに対し、会員でなければ、何もしない。
【0035】
S24では、サーバ12は、路側機11及びDSRC部18を経由してデフォルトのコンテンツ(例:公共サービス情報等)をナビ部19へ送る。S29では、サーバ12は、DSRC部18に対してメモリアクセスポーリングを実施する。これに対して、S30では、DSRC部18は、ユーザが会員であれば、アップリンク情報をサーバ12へ通知する。
【0036】
S33では、サーバ12は、アップリンク情報から取得した会員情報に基づき会員趣向に適した蓄積型コンテンツをマルチコンテンツフォーマット(図2)で編成してITS車載器17へ配信する。S34では、蓄積型コンテンツの配信終了を通知する。ITS車載器17を搭載する自動車13は、配信終了に伴い路側機11との通信エリアから退出する。
【0037】
図5はITS車載器17から路側装置15へ送られるアップリンク情報のデータ概略説明図である。アップリンク情報は、複数のタグで送られる。タグ1には、サービス事業者コード、目的地(緯度経度)、経由地(緯度経度)1〜5、累計走行距離、嗜好ジャンルデータバージョン、嗜好ジャンルデータ、会員情報1〜8が含められる。タグ2には、サービス事業者コード、過去立寄り地(緯度経度)1〜41が含められる。タグ3には、サービス事業者コード、過去立寄り地(緯度経度)42〜82が含められる。
【0038】
タグ4には、サービス事業者コード、受信/再生履歴(受信情報コード及び再生識別フラグ)1〜123が含められる。タグ5には、サービス事業者コード、受信/再生履歴(受信情報コード及び再生識別フラグ)124〜246が含められる。
【0039】
図5から明らかなように、過去立寄り地情報は、利用者が契約したサービス事業者毎に複数保持可能になっている。過去立寄り地情報では、各過去立寄り地情報当たり直近計82個の過去立寄り地が登録される。過去立寄り地が82個を超えた場合には、最古の過去立寄り地が最新の過去立寄り地に上書きされる。また、ITS車載器17内の過去立寄り地情報は、路側機11への送信に伴い、全部、リセットされる。各過去立寄り地は、緯度経度により表され、その駐車時刻も併せて登録される。ITS車載器17は、サービス事業者の通信エリアに進入すると、該サービス事業者に対応する過去立寄り地情報を路側機11へ送信するようにしている。
【0040】
ITS車載器17は、それへの自動車バッテリからの給電が切れた時にその時の地点を過去立寄り地として過去立寄り地情報に登録する。エンジンキーが、抜かれることなく、オン位置からアクセサリ位置へ切替えられて該アクセサリ位置に維持されている期間は、自動車バッテリからITS車載器17への給電は維持されているので、その時点では、停止地点は過去立寄り地情報に過去立寄り地として登録されていない。しかし、その状態で、運転者が発進のために、エンジンキーをアクセサリ位置からスタート位置に切替えて、エンジンを始動すると、ITS車載器17への自動車バッテリからの給電は一時的に切れるので、その時に該地点が過去立寄り地情報に過去立寄り地として登録される場合がある。
【0041】
ITS車載器17では、過去立寄り地情報の適正化のために、過去立寄り地情報に登録する駐車地点を選別する。過去立寄り地情報への登録外とする駐車地点は、アイドリングストップに伴う駐車地点と推測されるものを含む。駐車時間が所定値以下である駐車地点や、ナビ部19の地図データと照合して交差点信号機近くの道路上である駐車地点や、ビーコンシステム等から受信した渋滞情報と照合して大渋滞中の道路上である駐車地点は過去立寄り地情報への登録外とする。
【0042】
さらに、ITS車載器17はユーザが登録外を適宜、設定することができる仕様にすることもできる。ユーザは個別の地点、地域範囲又は時間帯を設定して、該個別の地点、該地域範囲に含まれる地点又は該時間帯に駐車時刻が含まれる地点を過去立寄り地情報の登録外にすることができる。
【0043】
図6は車載器50のブロック図である。車載器50は、路側機の通信エリアへの進入に伴い、過去立寄り地を含むアップリンク情報を路側機へ無線で送信する。車載器50の具体例はITS車載器17である。車載器50及び後述の路側装置60(図7)は、DSRCでデータを送受するものに限定されない。その他の通信規格やデータ形式に対応するものであってもよい。車載器50は、駐車地点検出手段51、判定手段52及び過去立寄り地登録手段53を備えている。
【0044】
駐車地点検出手段51は、車載器50の電源が切られた地点を駐車地点として検出する。判定手段52は、検出した駐車地点がアップリンク情報の過去立寄り地として適正なものであるか否かを判定する、過去立寄り地登録手段53は、検出した駐車地点がアップリンク情報の過去立寄り地として適正なものであれば該駐車地点をアップリンク情報の過去立寄り地として登録する。
【0045】
具体例として、(a)駐車地点検出手段51が検出した駐車地点は、一旦すべて過去立寄り地情報に過去立寄り地として登録し、アップリンク前までに過去立寄り地情報から不適正な過去立寄り地を除去し、それをアップリンク情報として路側機へ送信する場合と、(b)適正な駐車地点だけを選別して過去立寄り地情報に登録し、該過去立寄り地情報をそのままアップリンク情報として路側機へ送信する場合とがある。過去立寄り地登録手段53は、(a)の場合では、過去立寄り地情報から適正な過去立寄り地だけを選別してアップリンク情報に登録するものとなり、(b)の場合では、過去立寄り地情報の作成に関与する。過去立寄り地情報の登録数に制約がある場合、(a)の場合では、不適正な過去立寄り地も過去立寄り地情報に登録されてしまい、その中から選別したものだけをアップリンク情報に含めることになるので、アップリンク情報内の過去立寄り地の個数が減少してしまう。これに対し、(b)の場合には、この弊害を抑制することができる。
【0046】
典型的には、(u1)駐車時間が所定時間以内である駐車地点、(u2)ナビゲーション装置に自宅として地点登録されている駐車地点、(u3)ユーザが立寄り地として登録禁止している地点である駐車地点、(u4)ユーザが立寄り地として登録禁止している所定の地域範囲内に含まれる駐車地点、又は(u5)ユーザが立寄り地として登録禁止している時間帯に駐車時刻が含まれる駐車地点がある。判定手段52は、(u1)〜(u5)の駐車地点はいずれもアップリンク情報の過去立寄り地として不適正であると、判定する。
【0047】
(u1)〜(u5)について、逆に言うと、(v1)駐車時間が所定時間を超える駐車地点、(v2)ナビゲーション装置に自宅としては地点登録されていない駐車地点、(v3)ユーザが立寄り地として登録許容している地点である駐車地点、(v4)ユーザが立寄り地として登録許容している所定の地域範囲内に含まれる駐車地点、又は(v5)ユーザが立寄り地として登録許容している時間帯に駐車時刻が含まれる駐車地点がある場合には、判定手段52は、これら(v1)〜(v5)の駐車地点はいずれもアップリンク情報の過去立寄り地として適正であると、判定するということである。
【0048】
上述(u1)の場合として、所定時間を例えば3分に設定し、これにより、ほとんどのアイドリングストップ地点をアップリンク情報から排除することができる。(u1)の変形例として、駐車時間が別の所定時間(例えば1日)以上となっている駐車地点を不適正な過去立寄り地と判定することもできる。(u2)について、自宅は、通常、ユーザがサービス事業者と契約してその会員になる時にサービス事業者へ提出した会員情報の住所に含まれているので、コンテンツ配信のサービス事業者はこれを再度知る必要はなく、また、自宅以外の過去立寄り地をより多く知りたいので、自宅を登録から排除することには意義がある。
【0049】
(u3)〜(u5)の駐車地点は、ユーザ設定により過去立寄り地の登録から排除できるようにしたものである。登録排除の駐車地点を個別に設定できるようにしたり、所定の地域内の駐車地点はすべて登録から排除したり、深夜や特定の曜日に係る所定の時間帯の駐車地点は登録から排除したりできるようにする。なお、前述の図6の過去立寄り地情報に関連して説明したように、路側装置60へ送信する典型的な過去立寄り地情報には、駐車地点の緯度経度の他に、駐車した年月日時分も含めるようになっており、それらに基づき駐車時刻の属する曜日や時間帯を支障なく割り出すことができる。
【0050】
通常のカーライフの生活圏は、自宅から半径5km圏内とされている。判定手段52は、過去立寄り地に基づきユーザの活動圏を割り出し、例えば活動圏が自宅から2km以内のユーザには、2kmを超える地域範囲の広告情報等は必要性が小さいと判断し、これに基づき(u4)の地域範囲、すなわち自宅から半径2km範囲の外の地域範囲を登録不適正の地域範囲に設定することができる。
【0051】
判定手段52は、地図データとの照合に基づき駐車地点がアップリンク情報の過去立寄り地として適正なものであるか否かを判定することができる。具体的には、例えば、駐車地点をカーナビゲーション装置の地図データと照合したら、交差点手前の道路上等、常識上駐車とは考えられないような地点になっているような場合、該駐車地点はアイドリングストップ地点とかエンスト地点と判断することができる。その際、立寄り地点は、緯度経度情報(図6)に対応する地点を地図データの緯度経度情報と照合して、そこがどのような場所かを判断する。
【0052】
アップリンク情報の過去立寄り地に登録するか否かの判定については、さらに、次のようなことも可能になる。過去立寄り地点について統計をとり、立寄り地が密になっていたり、疎になっていたりする地域範囲を抽出する。そして、特定の地域範囲内又は外の駐車地点を選別して、アップリンク情報の過去立寄り地として登録したり又はしなかったりする。
【0053】
過去立寄り地について車載器50により選別されたアップリンク情報を受信した路側装置は、例えば該アップリンク情報を車載器50へ配信するコンテンツの選別に利用する。該コンテンツには例えば広告情報に係るコンテンツが含まれる。路側装置は、過去立寄り地について価値の高いアップリンク情報を入手して、これに基づきコンテンツ選別等の処理を適正化することができる。
【0054】
図7は路側装置60のブロック図である。路側装置60は、路側機の通信エリアへ進入して来た車載器50から、過去立寄り地を含むアップリンク情報を路側機へ無線で受信するものである。路側装置60の具体例は路側装置15(図2)である。路側装置60は判定手段61及び除外手段62を備えている。この路側装置60は、車載器50のような登録選別処理を行っていない車載器に対応するものである。車載器が車載器50のような登録選別処理を行っていれば、路側装置60に代えて従来の路側装置を採用することができる。
【0055】
判定手段61は、アップリンク情報の過去立寄り地が、車載器50のユーザへのコンテンツ配信の基にするユーザ情報として適正なものであるか否かを判定する。除外手段62は、アップリンク情報の過去立寄り地が立寄り地として不適正なものであれば該過去立寄り地をユーザ情報から除外する。
【0056】
典型的には、判定手段61は、路側装置60が装備する地図データとの照合に基づき駐車地点がアップリンク情報の過去立寄り地として適正なものであるか否かを判定する。
【0057】
路側装置60は、こうして、車載器50から収集した過去立寄り地の情報を該車載器50のユーザへの広告等のコンテンツ配信に利用する。配信するコンテンツを含むダウンリンク情報のID=10やID=20は、該コンテンツに関係する対象地点や情報提供地点の緯度経度情報を含むので、路側装置60は、車載器50からの過去立寄り地に関連深いコンテンツを選別して、それらを該車載器50へ送る。
【0058】
図8は車載器制御方法70のフローチャートである。車載器制御方法70は車載器50に適用される。S71では、車載器50の電源が切られた地点を駐車地点として検出する。S72では、検出した駐車地点がアップリンク情報の過去立寄り地として適正なものであるか否かを判定し、判定が正であれば、S73へ進み、否であれば、車載器制御方法70を終了する。S73では、該駐車地点をアップリンク情報の過去立寄り地として登録する。
【0059】
S71〜S73の処理は、車載器50(図6)の駐車地点検出手段51〜過去立寄り地登録手段53の機能にそれぞれ対応している。したがって、駐車地点検出手段51〜過去立寄り地登録手段53の機能について述べた具体的態様はS71〜S73の処理についての具体的態様としても適用可能である。
【0060】
図9は路側装置制御方法80のフローチャートである。路側装置制御方法80は路側装置60に適用される。S81では、アップリンク情報の過去立寄り地が、車載器50のユーザへのコンテンツ配信の基にするユーザ情報として適正なものであるか否かを判定し、判定が正であれば、路側装置制御方法80を終了し、否であれば、S82へ進む。S82では、該過去立寄り地をユーザ情報から除外する。
【0061】
S81,S82の処理は、路側装置60(図7)の判定手段61及び除外手段62の機能にそれぞれ対応している。したがって、判定手段61及び除外手段62の機能について述べた具体的態様はS81,S82の処理についての具体的態様としても適用可能である。
【0062】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを車載器50の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、車載器制御方法70の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0063】
本明細書は様々な範囲及びレベルの発明を開示している。それら発明は、本明細書で説明した様々な技術的範囲及び具体的レベルの各装置及び各方法だけでなく、当業者の自明の範囲内で、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を自明の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【符号の説明】
【0064】
50:車載器、51:駐車地点検出手段、52:判定手段、53:過去立寄り地登録手段、60:路側装置、61:判定手段、62:除外手段、70:車載器制御方法、80:路側装置制御方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信エリアへ進入して来た車載器へ該車載器のユーザの予め設定した嗜好情報に応じたコンテンツ情報を無線配信するコンテンツ情報配信手段、
前記車載器から、駐車地点が過去の立寄り地として適正なものと判断された過去の立寄り地に係る過去の立寄り地情報を受信する立寄り地情報受信手段、及び
前記コンテンツ情報配信手段が前記車載器へ配信するコンテンツ情報を嗜好情報と前記過去の立寄り地情報とに基づく配信情報に関連付けるコンテンツ情報関連付け手段、
を設けたことを特徴とする路側装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−186480(P2010−186480A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40676(P2010−40676)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【分割の表示】特願2008−40731(P2008−40731)の分割
【原出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】