説明

車載用アンテナ装置

【課題】取付け位置を制限することなく取付け作業を容易に行うことができ、また、フロントガラスに使用される際の視認性を向上しつつアンテナ特性を良好な状態に維持し、加えて取付け作業の作業効率向上を実現させることができる車載用アンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置本体20は、互いに係合可能な長板形状のアンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12と、アンテナ下部筐体11内の略中央部に配置される回路基板15と、アンテナ下部筐体11に配置され、回路基板15に接続されるGND側アンテナエレメント16,給電側アンテナエレメント17とを備える。アンテナ下部筐体11は、回路基板設置部110を有して剛性体を構成する第1セクションと、アンテナ下部筐体11の長手方向に関して第1セクションに隣接して弾性体を構成する第2セクションからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載用アンテナ装置に関し、特に、地上波デジタル放送等のUHF帯域伝送に対応可能な車載用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アナログテレビ放送から地上波デジタル放送への移行に伴い、自動車等の車両に搭載される地上波デジタル放送受信用アンテナ装置の開発が進められている。一方、乗用車等の高機能化に伴い、車両内には、数多くの電装品が配置されるようになった。そのため、各電装品に与えられる搭載スペースを小さくする必要があることから、アンテナ装置を適切な位置に設置する要望が高まっている。
【0003】
図11(a)〜(c)は、従来の車載用アンテナ装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【0004】
図11(a)に示す車載用アンテナ装置では、透明絶縁フイルム201の表面に長方形のループアンテナ202が設けられている。ループアンテナ202には、長辺の一方側に2つの給電接続端子203が設けられる。ループアンテナ202の内側には、2つの給電接続端子203が設けられた側の長辺に沿って平行に且つ近接させて間隔hで線状の無給電素子204が配設されている。ループアンテナ202、給電接続端子203,203及び無給電素子204は、導電薄膜等で形成されている。
【0005】
図11(b)の車載用アンテナ装置は、支持板301を備え、支持板301が自動車の天井内張りとフロントガラスとの隙間に挿入され、天井内張りと梁とに挟持されることにより取付けられる。アンテナ基板302には、信号を受信するための長さの異なる2本のアンテナエレメント303が配設されている。このうち長い方はアンテナ基板2の上においてアンテナ基板302の一側面に沿って配設された上で直角に折曲され、さらに底辺に沿って往復して配設されている。その更に内側には、短い方のアンテナエレメント303がアンテナ基板302の一側面及び底辺に沿って配設されている。
【0006】
また、図11(c)の車載用アンテナ装置は、台座401と、台座401の上部に取り付けられた板状アンテナ402とを備える。板状アンテナ402は導体プリント403が施された透明の平板402aにより形成されている。平板402aには軸402bが一体に形成されている。軸402bは台座401に回動位置調節可能に支持されており、台座401の中にブースタ404が設けられている。ブースタ404の入力側には導体プリント403が導線405,405を介して接続されており、ブースタ404の出力側は導線406と差込端子407,407により車載用電子機器に接続可能となっている。また、導線408,408により電源に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2007−67884号公報
【特許文献2】特開2005−341460号公報
【特許文献3】特開2001−284929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図11(a)〜(c)のアンテナ装置では、以下のような問題がある。すなわち、ループアンテナ及び無給電素子で構成されるエレメント部とアンプ部とが別体であるため、エレメント部及びアンプ部を個別に車両に取り付けなければならず、取付け作業が二段階となって煩雑である。また、エレメント部を、透明絶縁フイルムに設けた粘着層でフロントガラスに貼り付けてしまうと、その後にエレメント部を貼り替えることは非常に困難であるため、エレメント部の位置合わせ・取付け作業が非常にシビアとなり、作業時間の増大を招くことにもなる。
【0009】
また、アンテナ特性については、フロントガラス等のガラス面に貼り付けることで電気的性能を確保しているため、ガラス面以外の場所に貼り付けることができず、アンテナ装置の取付け位置が制限される。仮に本アンテナ装置をガラス面以外の場所に貼り付けることができたとしても、アンテナ特性が大幅に変化してしまうという問題がある。
【0010】
さらに、法規上、エレメント部が約0.5〜1.0mm程の幅細であれば、車載用アンテナのエレメント部をドライバーの視界に容易に入る領域まで設置することが許容されるが、エレメント部をフロントガラスに取付けた場合、たとえエレメント部が幅細であったとしても、ドライバーがエレメント部の存在を気にして運転に集中できない可能性がある。
【0011】
図11(b)のアンテナ装置では、透明絶縁フイルムを使用しないため作業性はある程度改善される。しかしながら、取付け固定のためには自動車の天井内張りとフロントガラスとの隙間に支持板を挿入し、該支持板を天井内張りと梁とで挟持させなければならないことから、依然として車載用アンテナの取付け位置が制限される。また、本アンテナの取付け作業は依然として煩雑であり、作業効率が悪くなるという問題が生じる。
【0012】
図11(c)のアンテナ装置でも、図11(b)の構成と同様、透明絶縁フイルムを使用しないため作業性はある程度改善される。また、エレメント部がフロントガラス以外の場所に取付けられるため、視認性が悪化することもない。しかしながら、このアンテナ装置の構成では、板状アンテナが取り付けられる台座が必須の構成要素であり、台座を固定可能な場所にしか設置することができず、やはりアンテナ装置の取付け位置が制限されることとなる。
【0013】
本発明の目的は、取付け位置の制限を低減しつつ取付け作業を容易に行うことができ、また、フロントガラスに使用される際の視認性を向上しつつアンテナ特性を良好な状態に維持し、加えて取付け作業の作業効率向上を実現させることができる車載用アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題を解決するために、本発明に係る車載用アンテナ装置は、互いに係合して一体化され、可撓性を有する長尺状の第1アンテナ筐体及び第2アンテナ筐体と、一体化される前記第1アンテナ筐体及び前記第2アンテナ筐体に内包される回路基板と、前記回路基板に接続され、一体化される前記第1アンテナ筐体及び前記第2アンテナ筐体に内包されるアンテナエレメントとを備え、前記第1アンテナ筐体は、剛性体を構成する第1セクションと、前記第1アンテナ筐体の長手方向に関して前記第1セクションに隣接して弾性体を構成する第2セクションからなり、前記第1セクションは、前記回路基板を設置する回路基板設置部を有することを特徴とする。
【0015】
また、前記第1アンテナ筐体は、第1基部と、前記第1基部の長手方向に沿って設けられる一対の第1側壁とを有し、前記一対の第1側壁には前記第1基部の長手方向に沿って配設された溝部が形成され、前記第2アンテナ筐体は、第2基部と、前記第2基部の長手方向に沿って設けられる一対の第2側壁とを有し、前記一対の第2側壁には前記第2基部の長手方向に沿って配設された突出部が形成され、前記突出部は、前記溝部の長手方向寸法より小さい長手方向寸法であり、前記溝部の長手方向に移動可能となるように前記溝部に嵌合することを特徴とする。
【0016】
また、前記第1アンテナ筐体は、前記回路基板設置部に隣接して配置されたリブ受け部を有すると共に、前記第2アンテナ筐体は、前記リブ受け部に受容されるリブを有し、前記第1セクション及び前記第2セクションの間に、前記リブ受け部及び前記リブが配置され、前記リブが前記リブ受け部に受容されることにより、前記第1セクションが剛性体を構成することを特徴とする。
【0017】
また、前記回路基板設置部は、前記第1基部の厚さより大きい厚さである肉厚部を有することを特徴とする。
【0018】
さらに、前記リブ及び前記リブ受け部は、それぞれ前記第1アンテナ筐体及び前記第2アンテナ筐体の幅方向に延設されていることを特徴とする。
【0019】
さらに、前記第1セクションが前記第1基部の長手方向略中央に設けられると共に、前記第2セクションが前記第1セクションの両側に設けられ、前記第1アンテナ筐体は、該第1アンテナ筐体の長手方向に関して前記回路基板設置部の両側に隣接して配置された一対のリブを有し、前記第2アンテナ筐体は、前記一対のリブを受容する一対のリブ受け部を有し、前記一対のリブがそれぞれ前記一対のリブ受け部に受容されることにより、前記第1セクションが剛性体を構成することを特徴とする。
【0020】
また、前記アンテナエレメントは、一体化された前記第1アンテナ筐体及び前記第2アンテナ筐体の厚さ方向に関して略中央に配置されることを特徴とする。
【0021】
また、車載用アンテナ装置は、前記第1アンテナ筐体の端部に配置され、前記第1アンテナ筐体端部と前記第2アンテナ筐体端部とを接着する弾性質の粘着部材を更に有し、前記粘着部材の粘着面により、前記アンテナエレメントが、一体化された前記第1アンテナ筐体及び前記第2アンテナ筐体の厚さ方向に関して略中央に位置決めされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、一体化される可撓性の長尺状第1アンテナ筐体及び第2アンテナ筐体に、回路基板及びアンテナエレメントが内包されるので、回路基板とアンテナエレメントの取付けを一度に行うことができ、取付け作業を容易に行うことができる。また、アンテナエレメントは、第1アンテナ筐体及び第2アンテナ筐体に内包されるため、取付け面に接触することがなく、加えて取付け面と一定間隔を確保することにより、アンテナ特性を良好な状態に維持することができる。さらに、一体化される第1アンテナ筐体及び第2アンテナ筐体が長尺状の部材であるため、幅細な本アンテナ装置を車両のフロントガラスに取付ける場合に、運転者が殆ど気にならない位置に取り付けることができ、視認性を向上することができる。
【0023】
また、第1アンテナ筐体は、剛性体を構成する第1セクションと、第1アンテナ筐体の長手方向に関して第1セクションに隣接して弾性体を構成する第2セクションからなり、第1セクションは回路基板を設置する回路基板設置部を有している。すなわち、回路基板設置部を有する第1セクションに剛性を持たせて回路基板を保護する一方、回路基板が設置されない第2セクションには弾性を持たせて取付け面のプロファイルに追従させることができる。これにより、回路基板の破損を防止しつつ取付け位置を自由に選択することができる。これに加え、アンテナ装置は、一体化される第1アンテナ筐体及び第2アンテナ筐体に回路基板とアンテナエレメントとを内包させてなる、部品点数の少ない構成であり、且つフロントガラス等の取付け面に張り付けることが可能となるので、取付け作業の作業効率向上を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る車載用アンテナ装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1のアンテナ装置本体の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】図2におけるアンテナ下部筐体の構成を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
【図4】図2におけるアンテナ上部筐体の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図である。
【図5】図2におけるアンテナエレメントの構成を概略的に示す図であり、(a)はグランド側(GND)アンテナエレメント、(b)は給電側アンテナエレメントである。
【図6】図2の回路基板及びアンテナエレメントがアンテナ下部筐体に固定された状態を示す斜視図である。
【図7】図3(b)におけるアンテナ下部筐体の線A−Aに沿う断面図である。
【図8】図2におけるアンテナ装置本体の嵌合機構を説明する図であり、(a)は図3の線B−B断面図及び図4の線C−C断面図、(b)は長手方向の部分側面図、(c)はアンテナ装置本体が基部に対して、アンテナ筐体の厚さ方向に歪みを生じた状態を示す部分平面図である。
【図9】図4のアンテナ上部筐体の長手方向端部の構成を概略的に示す部分平面図である。
【図10】本実施の形態に係る車載用アンテナ装置が車両に搭載された状態の一例を示す図である。
【図11】従来の車載用アンテナ装置の各構成の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)及び(c)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る車載用アンテナ装置の構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、図1におけるアンテナ装置本体の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【0027】
図1において、車載用アンテナ装置1は、ハーネスアッセンブリ10と、該ハーネスアッセンブリの一方の端部に取付けられたアンテナ装置本体20とを備えている。ハーネスアッセンブリ10の一方の端部には、後述する回路基板にケーブル31を保持させるためのケーブルホルダ32が、他方の端部には不図示の受信装置等に接続されるカプラ33がそれぞれ設けられている。
【0028】
アンテナ装置本体20は、図2に示すように、互いに係合可能な長板形状のアンテナ下部筐体11(第1アンテナ筐体)及びアンテナ上部筐体12(第2アンテナ筐体)と、アンテナ下部筐体11内の長手方向両端部に配置される弾性質の肉厚粘着テープ13,14(粘着部材)と、アンテナ下部筐体11内の長手方向略中央部に配置されハーネスアッセンブリ10の一方の端部が固定される回路基板15と、アンテナ下部筐体11に配置され、回路基板15に接続されるGND(グランド)側アンテナエレメント16,給電側アンテナエレメント17とを備えている。
【0029】
アンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12は、例えばABS樹脂製であり、例えば長さ194mm、幅15mmである。すなわち、本実施形態におけるアンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12は、スティック状の一対の可撓性部材であり、回路基板15とアンテナエレメント16,17とを一対の筐体内に内包して一体化されている。尚、アンテナ装置本体20の筐体は、説明の便宜上、アンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12と称されるが、上下、或いは表裏の区別なく使用することが可能に構成される。よってアンテナ下部筐体11が取付け面側となるように設置してもよいし、アンテナ上部筐体12を取付け面側となるように設置してもよい。
【0030】
肉厚粘着テープ13,14は、両面に粘着層を有する両面テープであり、直上に載置されるアンテナエレメント16,17をアンテナ下部筐体11に固着する。肉厚粘着テープ13,14は、例えば低誘電率の発砲基材からなる。このとき、肉厚粘着テープ13,14は、アンテナエレメント16,17を一体化されたアンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12の厚み方向略中央に位置決め固定されている。さらに、肉厚粘着テープ13,14は、アンテナ下部筐体11とアンテナ上部筐体12との間の接着用スペーサとしての機能も果たしている。接着用スペーサとしての機能については図9を用いて後述する。
【0031】
図3は、図2におけるアンテナ下部筐体11の構成を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
【0032】
図3において、アンテナ下部筐体11は、該アンテナ下部筐体の底面を形成する基部101(第1基部)と、基部101の横方向における両側端部から上方に延出し、且つ該基部の長手方向に沿って設けられる側壁102,103(第1側壁)とを有している。基部101の長手方向における両端部には側面部が形成されておらず、アンテナ上部筐体12の両端部に形成される後述の当接面と当接する当接面104,105が形成されている。基部101の内側面には、肉厚粘着テープ13,14、回路基板15及びアンテナエレメント16,17等の部材を固定するための複数の突起が設けられている。
【0033】
側壁102には、その外側面に基部101の長手方向に沿って配設された複数の溝部102aが形成されている。同様にして、側壁103にはその外側面に長手方向に沿って配設された複数の溝部103aが形成されている。
【0034】
また、アンテナ下部筐体11は、長手方向に関して略中央部に設けられた回路基板設置部110と、該回路基板設置部の近傍に設けられケーブルホルダ32を固定するケーブルホルダ固定部107とを有し、ケーブルホルダ固定部107は側壁103と連結するように成形されている。また、ケーブルホルダ固定部107の一端側にはケーブル取出部106が形成されており、ケーブルホルダ32をケーブルホルダ固定部107に固定してケーブル31をケーブル取出部106から取出すことにより、回路基板15が外部と電気的に接続されることとなる。
【0035】
さらに、アンテナ下部筐体11は、回路基板設置部110の隣接位置に、アンテナ上部筐体に設けられた後述のリブをそれぞれ受容するリブ受け部108,109(一対のリブ受け部)を有している。本実施形態では、リブ受け部108,109は、それぞれ第1セクション及び第2セクションの間に配置され、アンテナ下部筐体11の長手方向に関して回路基板設置部110の両側に配置されている。このリブ受け部108,109は、断面略凹形状であり、アンテナ下部筐体11の横方向に延設されている。
【0036】
ここで、アンテナ装置本体20が取付けられる取付け面は、スペースの制約の関係上、平面であるとは限らず、例えば所定の曲率で縦方向或いは横方向に緩やかに湾曲している自動車のフロントガラス面や、段差が形成されているような面が想定される。よって、取付け面が平面でない場合であってもアンテナ装置本体20の取付けを可能にする必要がある。また、アンテナ装置本体20における回路基板設置部110には、外力による回路基板15の破損を防止するべくある程度の剛性を与える必要がある。
【0037】
そこで本実施形態では、アンテナ下部筐体11は、長手方向略中央部に設けられ且つ回路基板設置部110を有して剛性体を構成する第1セクションと、アンテナ下部筐体11の長手方向に関して第1セクションに隣接して弾性体を構成する第2セクションからなる。すなわち、アンテナ装置本体20において、回路基板設置部110を有する第1セクションには剛性を持たせて回路基板15を保護する一方、回路基板5が設置されない第2セクションには弾性を持たせ、取付け面のプロファイルに追従するように構成している。
【0038】
図4は、図2におけるアンテナ上部筐体12の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図である。
【0039】
図4において、アンテナ上部筐体12は、該アンテナ上部筐体の上面を形成する基部121(第2基部)と、基部121の横方向における両側端部から上方に延出し、且つ該基部の長手方向に沿って設けられる側壁122,123(第2側壁)とを有している。基部121の長手方向における両端部には、側壁122,123と連結され肉厚粘着テープ13,14と当接することによりアンテナエレメント16,17を厚み方向略中央に位置決する凸部124,125が設けられている。
【0040】
側壁122には、その内側面に長手方向に沿って配設された複数の突出部122aが形成されている。また、側壁123にはその外側面に長手方向に沿って配設された複数の突出部123aが形成されている。
【0041】
また、アンテナ上部筐体12は、アンテナ下部筐体11のリブ受け部108,109のそれぞれに対応する位置に配置されたリブ128,129(一対のリブ)を有している。リブ128,129は、共に断面略凸形状であり、アンテナ上部筐体12の横方向に延設されている。
【0042】
図5は、図2におけるアンテナエレメント16,17の構成を示す平面図であり、(a)はGND側アンテナエレメント、(b)は給電側アンテナエレメントである。
【0043】
GND側アンテナエレメント16は、回路基板15と接続される接地部161と、接地部161に接続されアンテナ下部筐体11に固定される固定部162とを有している(図5(a))。
【0044】
固定部162には孔162a,162aが、固定部164には孔164aがそれぞれ設けられており、アンテナ下部筐体11の対応する2つの突起が嵌入されることによりアンテナエレメント16がアンテナ下部筐体11に固定される。
【0045】
一方、給電側アンテナエレメント17は、回路基板15と接続される給電部171と、給電部171に接続されアンテナ下部筐体11に固定される固定部172とを有している(図5(b))。固定部172には孔172a,172aが設けられており、アンテナ下部筐体11の対応する2つの突起が嵌入されることによりアンテナエレメント17がアンテナ下部筐体11に固定される。
【0046】
このアンテナエレメント16,17は、アンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12が互いに係合して一体化された際、該一体化された筐体の厚さ方向に関して略中央に配置されている。よってアンテナエレメントが取付け面等の外部と接触することがなく、また取付け面から一定距離を確保することができるので、アンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12のいずれを取付け面に張り付けた場合でもアンテナ特性を良好な状態に維持することが可能となっている。
【0047】
また、アンテナエレメント16,17は、アンテナ下部筐体11の横方向に関して、ケーブル取出部106が形成されている側の反対側に配置されている(図2)。アンテナエレメント16,17をケーブル31から所定距離を隔てて設置されるので、アンテナ特性に対するケーブル31からの影響を低減することができる。
【0048】
図6は、図2の回路基板15及びアンテナエレメント16,17がアンテナ下部筐体11に固定された状態を示す部分斜視図である。
【0049】
図6において、アンテナ下部筐体11の基部101には、回路基板15を固定するための突起111,111、アンテナエレメント16を固定するための突起112,112,113及びアンテナエレメント17を固定するための突起114,114がそれぞれ設けられている。
【0050】
ケーブルホルダ固定部107は、ケーブル31のケーブル軸がアンテナ下部筐体11の長手方向に対して所定角度α(0≦α≦90°)となるようにケーブル31をガイドするガイド部115を有しており、本実施の形態では所定角度αは45°に設定されている。所定角度αが45°の場合、α=0°の場合と比較してアンテナ特性をより向上させることができ、また、車両の内装材にケーブルを入れつつ、アンテナ本体を設置しなければならないα=90°の場合と比較して、車両への取付け作業をより容易にすることが可能となる。
【0051】
また、リブ受け部108,109は、アンテナ下部筐体11の長手方向に関して回路基板15を挟み込むように該回路基板の側方に形成されており、その高さは例えば2.0mmである。また、リブ128,129の高さは、例えば2.0mmである。本実施形態では、リブ受け部108にリブ128が、リブ受け部109にリブ129がそれぞれ受容されることにより、回路基板設置部110の長手方向或いは横方向についての曲げ剛性が高くなる。したがって、アンテナ装置本体20が歪んだとしても、回路基板設置部110の歪みが低減され、該回路基板設置部に固定された回路基板15が歪むのを防止することができる。
【0052】
図7は、図3(b)におけるアンテナ下部筐体11の線A−Aに沿う断面図である。
【0053】
図7において、回路基板設置部110は、アンテナ下部筐体11の長手方向に関してリブ受け部108及び109の間に設けられており、基部101の一部を構成している。本実施形態では、上記構成による曲げ剛性向上に加え、回路基板設置部110において基部101の厚さより所定量厚くした肉厚部117が設けられている。この肉厚部117により、回路基板設置部110の長手方向或いは横方向に関する曲げ剛性が更に高くなる。よって回路基板15が歪むのを更に防止することができる。
【0054】
図8は、図2におけるアンテナ装置本体20の嵌合機構を説明する図であり、(a)は図3の線B−B断面図及び図4の線C−C断面図、(b)は長手方向の部分側面図、(c)はアンテナ装置本体20が基部101に対して、アンテナ筐体の厚さ方向に歪みを生じた状態を示す部分平面図である。
【0055】
図8(a)において、アンテナ下部筐体11の溝部102aは、側壁102の外側面102cから内方に向かって形成され、溝部103aは、側壁103の外側面103cから内方に向かって形成されている。また、アンテナ上部筐体12の突出部122aは、側壁122の内側面122cから内方に延出しており、同様にして、突出部123aは、側壁123の内側面123cから内方に延出している。アンテナ下部筐体11とアンテナ下部筐体11とが一体化される際、側壁102,103及び側壁122,123はそれぞれアンテナ装置本体20の横方向で且つ互いに離間する方向に弾性変形し、突出部122aが溝部102aと嵌合すると共に、突出部123aが溝部103aと嵌合する。このように、突出部122aと溝部102a、並びに突起部123aと溝部103aがフック構造をなし、これによりアンテナ下部筐体11とアンテナ上部筐体12とが一体化される。
【0056】
また、側壁122における突出部122aの長手方向寸法(A2)は、対応する溝部102aの長手方向寸法(B2)より所定量小さくなるように設計されている(図8(b))。例えば、突出部122aの長手方向寸法(A2)は4.0〜5.5mm、溝部102aの長手方向の寸法(B2)は6.0〜8.0mmである。また同様にして、突出部123aの長手方向寸法は溝部103aの長手方向寸法より所定量小さくなるように設計されている。すなわち、アンテナ下部筐体11とアンテナ上部筐体12とを一体化する場合、突出部122a,123aは、それぞれ溝部102a,103aの長手方向に移動可能となるように溝部102a,103aに嵌合する。
【0057】
また、アンテナ下部筐体11とアンテナ上部筐体12とが一体化された状態にて基部101に対して、アンテナ筐体の厚さ方向に外力が加えられた場合、アンテナ下部筐体11とアンテナ上部筐体12は外力の付与方向に沿って弾性変形する。このとき、アンテナ上部筐体12は、アンテナ下部筐体11との嵌合状態を維持しながらアンテナ下部筐体11に対して、図8(c)に図示されるようにA2とB2嵌合位置が長手方向にずれる。すなわち、外力によって生じた内部応力が、アンテナ上部筐体12の移動によって緩和されることとなり、第2セクションがより弾性変形し易くなる。また、これにより、剛性体たる第1セクションに生じる歪みを低減し、結果として回路基板15を保護することが可能となる。
【0058】
図9は、図4のアンテナ上部筐体12の長手方向端部の構成を概略的に示す部分平面図である。
【0059】
図9において、アンテナ上部筐体12は、ケーブルホルダ固定部107に対応する位置に設けられたケーブル挿通部127と、ケーブル取出部106に対応する位置に形成されたケーブル取出部126と、アンテナ上部筐体12の横方向に沿って並設された複数の凸部からなり、肉厚粘着テープ13と当接する当接部131とを有している。アンテナ下部筐体11とアンテナ上部筐体12とが一体化されると、当接部131の端面が肉厚粘着テープ13と当接し、肉厚粘着テープ13の弾性変形により、当該肉厚粘着テープ13の変形量分、当接部131が肉厚粘着テープ13に対して長手方向に移動可能に貼着される。よって、アンテナ上部筐体12がアンテナ下部筐体に対して移動可能である嵌合状態を維持しつつ、肉厚粘着テープ13により嵌合力を高めている。当接部132の構成は当接部131と同様であるので、その説明を省略する。
【0060】
また、凸部124は一体成形された複数のリブで構成され、各リブは肉厚粘着テープ13或いはアンテナエレメント16と面接触する当接面を有している。この凸部124が肉厚粘着テープ13と面接触することにより、アンテナ上部筐体12とアンテナ下部筐体11の間に隙間が生じるのを防止することができる。またこのとき、アンテナエレメント16が凸部124の当接面と肉厚粘着テープ13の粘着面とに挟持されるので、アンテナエレメント16を両筐体の厚み方向略中央に確実に位置決め固定することができる。凸部125の構成は凸部124と同様であるので、その説明を省略する。
【0061】
図10は、本実施の形態に係る車載用アンテナ装置1が車両に搭載された状態の一例を示す図である。
【0062】
図10において、車載用アンテナ装置1は、例えばアンテナ装置本体20を自動車の車内から見てフロントガラス190の上端に不図示の両面テープで取付け、ハーネスアッセンブリ10を天井内張りとフロントガラスとの隙間に挿入して布設する。自動車用フロントガラスの外周端部には、通常、黒セラと呼ばれる暗色セラミックペーストの焼成体192が所定幅で形成されているが、アンテナ装置本体20の幅は15mmと幅細であり、本アンテナ本体を焼成体192と重ねて配置する際に、アンテナ装置本体20の焼成体192から内側へのはみ出し量の最小化を図っている。よってドライバーはアンテナ本体の存在を気にすることなく運転に集中することが可能となる。
【0063】
以上詳述したように、本実施形態によれば、一体化される可撓性の長尺状アンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12に、回路基板15及びアンテナエレメント16,17が内包されるので、回路基板15とアンテナエレメント16,17の取付けを一度に行うことができ、取付け作業を容易に行うことができる。また、アンテナエレメント16,17は、アンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12に内包されるため、フロントガラス等の取付け面に接触することがなく、加えて取付け面と一定間隔を確保することにより、アンテナ特性を良好な状態に維持することができる。さらに、一体化されるアンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12が長尺状の部材であるため、幅細なアンテナ装置本体20を車両のフロントガラスに取付ける場合に、運転者が殆ど気にならない位置に取り付けることができ、視認性を向上することができる。
【0064】
また、アンテナ下部筐体11は、剛性体を構成する第1セクションと、アンテナ下部筐体の長手方向に関して第1セクションに隣接して弾性体を構成する第2セクションからなり、第1セクションは回路基板15を設置する回路基板設置部110を有している。すなわち、回路基板設置部110を有する第1セクションに剛性を持たせて回路基板15を保護する一方、回路基板15が設置されない第2セクションには弾性を持たせて取付け面のプロファイルに追従させることができる。これにより、回路基板15の破損を防止しつつ取付け位置を自由に選択することができる。これに加え、アンテナ装置本体20は、一体化されるアンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12に回路基板15とアンテナエレメント16,17とを内包させてなる、部品点数の少ない構成であり、且つフロントガラス等の取付け面に張り付けることが可能となるので、取付け作業の作業効率向上を実現させることが可能となる。
【0065】
尚、本実施形態では、回路基板設置部110がアンテナ下部筐体11の略中央部に設けられるが、これに限るものではなく、回路基板設置部がアンテナ下部筐体11のいずれか一方の端部に設けられてもよい。この場合、二組のリブ及びリブ受け部は必要なく、その一組のリブ及びリブ受け部が回路基板設置部の側方に設けられる。本構成によっても、本実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0066】
また、アンテナ下部筐体11は、1つの材料で成形される可撓性部材であるが、これに限るものではなく、互いに剛性の異なる2種類の材料で成形される部材であってもよい。すなわち、アンテナ下部筐体は、回路基板設置部を有する第1セクションを、回路基板を保護するのに十分な剛性が得られる一の材料で構成し、第2セクションを上記一の材料より剛性の低い、或いは弾性を有する他の材料で構成するものであってもよい。
【0067】
また、本実施形態では、リブ128,129は平面視において略矩形であるが(図4)、これに限るものではなく、他の多角形、円形、或いは楕円形であってもよい。
【0068】
また、本実施形態では、アンテナ下部筐体11が溝部102,103を有し、アンテナ上部筐体12が突出部122,123を有しているが、これに限るものではなく、アンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12のうち一方が突出部を有し、他方が溝部を有していればよい。
【0069】
本実施形態では、アンテナ下部筐体11がリブ受け部108,109を有し、アンテナ上部筐体12がリブ128,129を有しているが、これに限るものではなく、アンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12のうち一方が少なくとも1つのリブ受け部を有し、他方が少なくとも1つのリブを有していればよい。
【0070】
また、本実施形態では、アンテナ下部筐体11及びアンテナ上部筐体12が一体化された状態の断面形状は略矩形であるが、これに限るものではなく、長円形、楕円形等の他の形状であってもよい。
【0071】
また、本実施形態では、アンテナ装置本体20はフロントガラスに取り付けられるが、これに限るものではなく、車内のダッシュボード等、樹脂製の取付け面に取付けられてもよい。
【0072】
また、本実施形態は、本発明に係る車載用アンテナ装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における車載用アンテナ装置の細部構成に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 車載用アンテナ装置
10 ハーネスアッセンブリ
11 アンテナ下部筐体
12 アンテナ上部筐体
13,14 肉厚粘着テープ
15 回路基板
16 GND側アンテナエレメント
17 給電側アンテナエレメント
20 アンテナ装置本体
101 基部
102,103 側壁
102a,103a 複数の溝部
104,105 当接面
108,109 リブ受け部
110 回路基板設置部
121 基部
122,123 側壁
122a,123a 複数の突出部
124,125 凸部
128,129 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに係合して一体化され、可撓性を有する長尺状の第1アンテナ筐体及び第2アンテナ筐体と、
一体化される前記第1アンテナ筐体及び前記第2アンテナ筐体に内包される回路基板と、
前記回路基板に接続され、一体化される前記第1アンテナ筐体及び前記第2アンテナ筐体に内包されるアンテナエレメントとを備え、
前記第1アンテナ筐体は、剛性体を構成する第1セクションと、前記第1アンテナ筐体の長手方向に関して前記第1セクションに隣接して弾性体を構成する第2セクションからなり、
前記第1セクションは、前記回路基板を設置する回路基板設置部を有することを特徴とする車載用アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1アンテナ筐体は、第1基部と、前記第1基部の長手方向に沿って設けられる一対の第1側壁とを有し、前記一対の第1側壁には前記第1基部の長手方向に沿って配設された溝部が形成され、
前記第2アンテナ筐体は、第2基部と、前記第2基部の長手方向に沿って設けられる一対の第2側壁とを有し、前記一対の第2側壁には前記第2基部の長手方向に沿って配設された突出部が形成され、
前記突出部は、前記溝部の長手方向寸法より小さい長手方向寸法であり、前記溝部の長手方向に移動可能となるように前記溝部に嵌合することを特徴とする請求項1記載の車載用アンテナ装置。
【請求項3】
前記第1アンテナ筐体は、前記回路基板設置部に隣接して配置されたリブ受け部を有すると共に、前記第2アンテナ筐体は、前記リブ受け部に受容されるリブを有し、
前記リブ受け部は前記第1セクション及び前記第2セクションの間に配置され、
前記リブが前記リブ受け部に受容されることにより、前記第1セクションが剛性体を構成することを特徴とする請求項1又は2記載の車載用アンテナ装置。
【請求項4】
前記回路基板設置部は、前記第1基部の厚さより大きい厚さである肉厚部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項5】
前記リブ及び前記リブ受け部は、それぞれ前記第1アンテナ筐体及び前記第2アンテナ筐体の幅方向に延設されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項6】
前記第1セクションが前記第1基部の長手方向略中央に設けられると共に、前記第2セクションが前記第1セクションの両側に設けられ、
前記第1アンテナ筐体は、該第1アンテナ筐体の長手方向に関して前記回路基板設置部の両側に隣接して配置された一対のリブを有し、
前記第2アンテナ筐体は、前記一対のリブを受容する一対のリブ受け部を有し、
前記一対のリブがそれぞれ前記一対のリブ受け部に受容されることにより、前記第1セクションが剛性体を構成することを特徴とする請求項1記載の車載用アンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナエレメントは、一体化された前記第1アンテナ筐体及び前記第2アンテナ筐体の厚さ方向に関して略中央に配置されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項8】
前記第1アンテナ筐体の端部に配置され、前記第1アンテナ筐体端部と前記第2アンテナ筐体端部とを接着する弾性質の粘着部材を更に有し、
前記粘着部材の粘着面により、前記アンテナエレメントが、一体化された前記第1アンテナ筐体及び前記第2アンテナ筐体の厚さ方向に関して略中央に位置決めされることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の車載用アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−216945(P2012−216945A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79978(P2011−79978)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】